説明

車両の制御装置

【課題】 十分に暖房可能な車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 外部電源、電池又は発電手段からの電力により発熱する電気ヒータと、発電手段の廃熱又は前記電気ヒータにより空気を加熱するヒータコアと、を備えた車両において、駐車時に、ヒータコアの熱源として発電手段の廃熱及び/又は電気ヒータを用いる制御を行うこととした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な空調用熱源を備えた車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、電気的加熱手段等を用いた空調装置を備えた電気自動車において、車両充電中にこれら熱源を用いた事前暖房を行なう技術が開示されている。具体的には、充電を終えた後に暖房を開始していては運転者の要求に間に合わない場合、充電と暖房の配分を適切に制御することで、最終的に充電と暖房を所望の通りに実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−230441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電源電力のみを用いて事前暖房を行っていたため、例えば外気温度が低い場合、空気を加熱するエネルギが不足することで十分な暖房ができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、十分に暖房可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、外部電源、電池又は発電手段からの電力により発熱する電気ヒータと、発電手段の廃熱又は前記電気ヒータにより空気を加熱するヒータコアと、を備えた車両において、駐車時に、ヒータコアの熱源として発電手段の廃熱及び/又は電気ヒータを用いる制御を行うこととした。
【発明の効果】
【0007】
よって、電気ヒータだけでなく、発電手段の廃熱を用いてヒータコアによる空気加熱を実現でき、十分な暖房を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の発電機搭載型電気自動車を表す概略図である。
【図2】実施例1の発電機搭載型電気自動車における制御構成を表す概略図である。
【図3】実施例1の充電暖房制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1の暖房方策演算処理を表すフローチャートである。
【図5】実施例1の充電中暖房処理を表すフローチャートである。
【図6】実施例1の非充電中暖房制御処理を表すフローチャートである。
【図7】実施例1の発電機搭載型電気自動車における一般的な駐車中充電の例を示すタイムチャートである。
【図8】実施例1の発電機搭載型電気自動車における充電と同時に暖房の完了をドライバが要求した場合を示すタイムチャートである。
【図9】実施例1の発電機搭載型電気自動車における発電機の廃熱を利用した場合を示すタイムチャートである。
【図10】エンジンの出力に対する発電機電力と暖房に使える廃熱の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1の発電機搭載型電気自動車を表す概略図である。ここでは発電手段として内燃機関であるエンジン10と発電機8とを組み合わせたものを使用しているが、これは燃料電池発電システムなどの別の手段であっても同様に成立するものである。図1中の駆動モータ1は車両を駆動する。インバータ2はこの駆動モータ1を駆動する電力を供給する。高電圧バッテリ制御装置17は、高電圧バッテリ3(電池に相当)の状態の検知、制御を行うと共に、他のコントローラとの情報の送受信が行なう。高電圧バッテリ3及び高電圧バッテリ制御装置17は、駆動モータ1を駆動するための電力を供給し、また、発電機8で発電した電力や駆動モータ1が減速時に回生した電力を吸収する役割を担う。
【0010】
冷却水ポンプ4は、駆動モータ1や発電機8、充電器5やインバータ9などの高電圧部品等を冷却するための水を循環させる。充電器5は高電圧バッテリ3へエネルギを充電する。接続装置6は、充電器5の系統電力を外部電源と接続するためのコンセントである。外部電源とは家庭用コンセントでもよいし、電気自動車専用の充電スタンドであってもよい。
【0011】
強電用ラジエータ7は強電機器を冷却するための水を冷却する。発電機8はエンジン10と組み合わせて発電を行なう。インバータ9は発電機8を駆動する。エンジン10は発電を行なうための内燃機関である。ヒータコア11は暖房を行なうための熱源である。電気ヒータ12は電気エネルギで暖房を行なうための電気的熱源である。
【0012】
ヒータコア11は、エンジン10の冷却水の温度(発電手段の廃熱に相当)と電気ヒータ12のエネルギの両方を使い分けて暖房を行なうことが可能な構造となっている。冷却ポンプ13はエンジン冷却水を流すためのポンプである。エンジン用ラジエータ14はエンジンを冷却するための水を冷却する。エンジン制御装置15は、エンジン10を制御するための制御装置であり、種々のセンサ情報や後述する車両コントローラ19からの指令に基づいて、エンジン10の燃料噴射量や吸入空気量、点火時期などのパラメータを制御する。
【0013】
発電機制御装置16は発電機8を制御するための制御装置であり、後述する車両コントローラ19からの指令に基づいて、電力を発電する発電状態や、エンジン10を負荷として回すことで電力を消費する消費状態などに応じて、発電機8を適切に制御する。モータ制御装置18は、駆動モータ1を制御するモータ制御装置であり、後述する車両コントローラ19からの指令に基づいて、トルクを出力して走行する力行状態や、減速時にエネルギを高電圧バッテリ3に吸収する回生状態などの車両状態に応じて、駆動モータ1を制御する。
【0014】
車両コントローラ19は、ドライバからの操作入力や車速、外気温検出手段により検出された外気温等の車両状態、および前述の各コントローラからの信号に基づいて車両全体を制御する。ドライバからの要求に応じて駆動モータ1を駆動する信号をモータ制御装置18へ出力するとともに、高電圧バッテリ制御装置17により検知された高電圧バッテリ3の電力量(SOC)などを読み取る。そして、この電力量がそのときの走行状態や今後の走行予定に対して適切となるような発電を行なうように、エンジン制御装置15や発電機制御装置16を介してエンジン10や発電機8を制御する。
また、車両駐車中に外部電源から充電する場合に、高電圧バッテリ制御装置17を介して高電圧バッテリ3の状態をモニタしながら、充電器5を制御して高電圧バッテリ3に適正な電力を充電する。また、ドライバの暖房要求がある場合には、エンジン冷却水の熱エネルギや電気ヒータ12の熱を用いて、ヒータコア11を制御することで適正な暖房状態を実現する(制御手段に相当)。
【0015】
図2は実施例1の発電機搭載型電気自動車における制御構成を表す概略図である。充電要求判断手段101は、ドライバの充電要求の有無とその内容を判断する。事前暖房要求判断手段102は、ドライバの事前暖房の要求有無とその内容(事前暖房完了予定時刻を含む)を判断する。車両状態検知手段103は、外気温などの環境情報や、パーキングブレーキのON/OFFなどの車両全体の状態を検知する。
充電・暖房方策判断手段104は、充電要求判断手段101による判断内容と、事前暖房要求判断手段102による判断内容と、車両状態検知手段103による判断内容と、に基づいて、充電や暖房の方策を判断する。外部充電制御手段105は、充電・暖房方策判断手段104の出力に基づいて外部充電の制御を行なう。発電機充電制御手段106は、発電機8を用いた充電を行なう。暖房制御手段107は、充電・暖房方策判断手段104の出力に基づいて暖房の制御を行なう。
【0016】
ここで、実施例1の発電機搭載型電気自動車であって、外部電源により充電及び暖房を可能とし、かつ、エンジン10により駆動する発電機8のように内部電源により充電及び暖房を可能とした車両の場合、以下に示す問題があった。すなわち、外部電源を用いるより発電手段である内部電源を用いるほうが高効率となる場合があっても、常に外部電源により充電及び暖房を実行すると、効率の低下やコストアップを招く。また、電源電力のみを用いて事前暖房を行うと、例えば外気温度が低い場合、空気を加熱するエネルギが不足することで十分な暖房ができないおそれがあった。そこで、実施例1では、高効率化及び低コスト化を達成し、また、外気温が低い場合であっても十分な暖房を達成できるよう、充電暖房制御処理を実施することとした。
【0017】
(充電暖房制御処理)
図3は実施例1の充電暖房制御処理を表すフローチャートである。
ステップ1001では、ドライバの充電要求を読み込む。
ステップ1002では、ドライバの暖房要求を読み込む。
ステップ1003では外気温やパーキングブレーキ、パークロックのON状態などの車両状態を検出する。
ステップ1004では、ステップ1003で検出した車両状態に基づいて車両が駐車中であるかどうかを判断し、駐車中の場合はステップ1005へ、駐車中でない場合はそのまま終了する。
【0018】
ステップ1005では、ステップ1002で読み込んだドライバの操作、設定により、暖房要求があるかどうかを判断し、暖房要求がある場合はステップ1006へ進み、暖房要求が無い場合はそのまま終了する。
ステップ1006では、ステップ1001で読み込んだドライバの操作、設定により、充電要求があるかどうかを判断し、充電要求がある場合はステップ1007へ進み、充電要求が無い場合はステップ1009へ進む。
ステップ1007では、充電中の暖房の実現方策を演算する。
ステップ1008では、ステップ1007で演算した暖房方策に基づいて充電中の暖房制御を実施し、終了する。
【0019】
ステップ1009では、ステップ1006で充電要求が無いと判断した結果に基づいて、非充電中の暖房の実現方策を演算する。
ステップ1010では、ステップ1009で演算した暖房方策に基づいて非充電中の暖房制御を実施し、終了する。
【0020】
図4は実施例1の暖房方策演算処理を表すフローチャートである。具体的には、図3のステップ1007、ステップ1009で行なう暖房方策の演算を表す。
ステップ1101では現在の設定と外気温等から、暖房要求に対応するための電力量Qを演算する。
ステップ1102では、充電中暖房の場合は、廃熱暖房を行なう場合の発電量を、図10の特性から演算する。尚、図10については後述する。また、非充電中暖房の場合は、充電電力から発電の動作点を決めることができないため、そのときのバッテリ受け入れ可能な電力や電力量に基づいて、発電量を演算する。
【0021】
ステップ1103では、ステップ1101とステップ1102の演算結果から、廃熱暖房に必要な継続時間T3を演算し、暖房終了時刻とT3に基づいて、廃熱暖房を開始する時刻を演算する。演算内容については後述する。
ステップ1104では、電気ヒータで必要な熱量を供給するために必要な継続時間T2と暖房終了時刻から、電気ヒータ暖房の開始時期を演算する。
ステップ1105では、電気ヒータ12のパワーと外気温から、電気ヒータのみで暖房を完了することが可能であるかどうかを判断する。電気ヒータ12のみでの暖房が可能である場合はステップ1106へ進み、不可能である場合はステップ1108へ進む。外気温が低く、電気ヒータ12のみでは十分な暖房を実現することが難しい極低温のような場合には、廃熱暖房を選択する。
電気ヒータ12のみでの暖房が可能な場合は、ステップ1106において、電気ヒータ12のみの場合と、廃熱暖房の場合の暖房コストを演算する(図8,9参照)。
【0022】
ステップ1107では、電気ヒータ12での暖房コストが廃熱暖房のコストより高いかどうかを判断し、電気ヒータ12での暖房コストが高い場合はステップ1108へ進み、安い場合はステップ1109へ進み、電気ヒータ12での暖房を選択し、終了する。
ステップ1108では、発電機の廃熱で暖房をする場合に、音を抑えるために発電量を抑えないといけない、などの発電制約がある場合(すなわち、発電性能を抑制する場合)にその制約を演算し、ステップ1110では、ステップ1108で求めた制約の範囲内で廃熱暖房が実現可能かどうかを判断する。廃熱暖房で実現可能な場合は、ステップ1111へ進み発電機の廃熱暖房を選択し終了する。この発電制約は、そのときの環境等に応じて適宜設定してもよいし、予め設定してもよい(発電性能抑制判断手段に相当)。
ステップ1110で廃熱暖房だけでは実現不可能な場合は、ステップ1112へ進み、廃熱暖房と電気ヒータ12での暖房を併用することを選択し、終了する。
【0023】
図5は、実施例1の充電中暖房処理を表すフローチャートである。具体的には、図3のフローチャートのステップ1008の手続きを表すフローチャートである。
ステップ1201では、電気ヒータ12のみでの暖房を選択しているかどうかを判断し、選択している場合はステップ1202へ、選択していない場合はステップ1212へ進む。
ステップ1202では充電の開始時期を読み込み、ステップ1203では図4のフローチャートで演算した電気ヒータ12での暖房開始時期を読み込む。
ステップ1204では充電開始と暖房開始で充電開始が先かどうかを判断し、充電開始が先の場合はステップ1205へ進み充電開始が先でない場合はステップ1209に進む。
ステップ1205では、充電開始の時期となっているかどうかを判断し、まだ充電開始時期でない場合は、そのままステップ1205を繰り返し、充電開始時期が訪れている場合はステップ1206へ進む。
ステップ1206では外部電源での充電を開始し、ステップ1207へ進む。
【0024】
ステップ1207では、ヒータ暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだヒータ暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1207を繰り返し、ヒータ暖房開始時期が訪れている場合はステップ1208へ進み、電気ヒータ12での暖房制御を開始し、終了する。
ステップ1204で充電開始が先でないと判断した場合には、ステップ1209でヒータ暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだヒータ暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1209を繰り返し、ヒータ暖房開始時期が訪れている場合はステップ1210へ進み、外部電源での充電を開始し、つぎにステップ1211で電気ヒータ12での暖房制御を開始し、終了する。
【0025】
ステップ1201で電気ヒータ12のみでの暖房を選択してない場合はステップ1212へ進み、ステップ1212では発電の廃熱のみでの暖房を選択しているかどうかを判断し、選択している場合はステップ1213へ進み、選択していない場合はステップ1221へ進む。
ステップ1213では充電の開始時期を読み込み、ステップ1214では図4のフローチャートで演算した廃熱暖房での暖房開始時期を読み込む。
ステップ1215では充電開始と暖房開始で充電開始が先かどうかを判断し、充電開始が先の場合はステップ1216へ進み充電開始が先でない場合はステップ1218に進む。
ステップ1216では、充電開始の時期となっているかどうかを判断し、まだ充電開始時期でない場合は、そのままステップ1216を繰り返し、充電開始時期が訪れている場合はステップ1217へ進む。
ステップ1217では外部電源での充電を開始し、ステップ1218へ進む。
【0026】
ステップ1218では、発電機の廃熱暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだ廃熱暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1218を繰り返し、廃熱暖房開始時期が訪れている場合はステップ1219へ進み、発電機8での発電制御を開始し、その後ステップ1220で発電機8の廃熱を用いた暖房制御を開始し、終了する。
ステップ1212で発電の廃熱のみでの暖房を選択していない場合はステップ1221へ進み、ステップ1221では充電の開始時期を読み込み、ステップ1222では図4のフローチャートで演算した廃熱暖房での暖房開始時期を読み込む。
ステップ1223では充電開始と暖房開始とのうち、充電開始が先かどうかを判断し、充電開始が先の場合はステップ1224へ進み充電開始が先でない場合はステップ1226に進む。
【0027】
ステップ1224では、充電開始の時期となっているかどうかを判断し、まだ充電開始時期でない場合は、そのままステップ1224を繰り返し、充電開始時期が訪れている場合はステップ1225へ進む。
ステップ1225では外部電源での充電を開始し、ステップ1226へ進む。
ステップ1226では、発電機の廃熱暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだ廃熱暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1226を繰り返し、廃熱暖房開始時期が訪れている場合はステップ1227へ進み、発電機での発電制御を開始し、その後ステップ1228で発電機の廃熱を用いた暖房制御を開始し、ステップ1229で併用する電気ヒータ12での暖房制御も開始し、終了する。
【0028】
図6は、実施例1の非充電中暖房制御処理を表すフローチャートである。具体的には、図3のフローチャートのステップ1010の手続きを表すフローチャートである。
ステップ1301では、電気ヒータ12のみでの暖房を選択しているかどうかを判断し、選択している場合はステップ1302へ、選択していない場合はステップ1305へ進む。ステップ1302では図4のフローチャートで演算した電気ヒータ12での暖房開始時期を読み込み、ステップ1303では、ヒータ暖房の開始時期となっているかどうかを判断する。
ステップ1303で、まだヒータ暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1303を繰り返し、ヒータ暖房開始時期が訪れている場合はステップ1304へ進み、電気ヒータ12での暖房制御を開始し、終了する。
ステップ1301で電気ヒータ12のみでの暖房を選択してない場合はステップ1305へ進み、ステップ1305では発電の廃熱のみでの暖房を選択しているかどうかを判断し、選択している場合はステップ1306へ進み、選択していない場合はステップ1310へ進む。
ステップ1306では図4のフローチャートで演算した廃熱暖房での暖房開始時期を読み込む。
【0029】
ステップ1307では、発電機の廃熱暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだ廃熱暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1307を繰り返し、廃熱暖房開始時期が訪れている場合はステップ1308へ進み、発電機での発電制御を開始し、その後ステップ1309で発電機の廃熱を用いた暖房制御を開始し、終了する。
ステップ1305で発電の廃熱のみでの暖房を選択していない場合はステップ1310へ進み、ステップ1310では図4のフローチャートで演算した廃熱暖房での暖房開始時期を読み込む。
【0030】
ステップ1311では、発電機の廃熱暖房の開始時期となっているかどうかを判断し、まだ廃熱暖房開始時期でない場合は、そのままステップ1311を繰り返し、廃熱暖房開始時期が訪れている場合はステップ1312へ進み、発電機での発電制御を開始し、その後ステップ1313で発電機の廃熱を用いた暖房制御を開始し、ステップ1314で併用する電気ヒータ12での暖房制御も開始し、終了する。
【0031】
図7は、実施例1の発電機搭載型電気自動車における一般的な駐車中充電の例を示すタイムチャートである。例えば、翌朝7:00以降に出発したいことをドライバが車両に設定する(ドライバの事前暖房意図に基づく事前暖房完了予定時刻)。これにより、車両コントローラ19は、充電器5を制御して夜23:00から充電を開始して朝7:00に充電完了するように制御する。ここでは充電電力P0一定で充電を行ない、系統電力の電気料金は安い夜間電力と通常の昼間電力などがあるため、電力P0と電気代の単価から、最下図のようなコスト経過をたどり、コストAで所望の充電を完了する例である。
【0032】
図8は、実施例1の発電機搭載型電気自動車における充電と同時に暖房の完了をドライバが要求した場合を示すタイムチャートである。この例では、必要な暖房を行なうために、最後のT2時間は暖房用の電力も使用するためコストが変わり、AではなくBだけの最終コストとなる場合である。ここで、発電機搭載型電気自動車では発電機8の熱源(エンジン冷却水)も暖房に使用可能であることから、電気ヒータ12の大きさは小さめに設定されることが一般的である。よって、この電気ヒータ12のみで所望の暖房を実現しようとすると、T2という比較的長い時間が必要となることが想定され、時間が長いとその間に外気に放熱される熱量も大きくなるため、効率も低くなり、電気代であるコストBは比較的高くなる。
【0033】
図9は、実施例1の発電機搭載型電気自動車における発電機の廃熱を利用した場合を示すタイムチャートである。充電と同時に暖房の完了をドライバが要求した場合であるのは図8と同様であるが、図9の場合、電気ヒータ12ではなく発電機8の廃熱(エンジン冷却水)を利用するため、暖房に要する時間は短くなり、最後のT3(<T2)だけ暖房を行なえばよいことになる。
ここで、発電機8がガソリン燃料によって作動するエンジン10で駆動されている場合、図9のように燃料代と電気代の単価を比較すると、燃料代の方が高い場合が多い。しかしながら、もともと外部電源から充電していたP0をエンジン10により駆動される発電機8で発電することにし、その時の廃熱を利用すれば、充電のための燃料代だけで暖房もまかなえる。これにより、コストが下がるシーンが増大し、また暖房に要する時間が短いことから放熱対策としても有利であり、トータルコストを下げられる。この例ではコストC(<B)で充電と暖房を完了することが可能となり、コスト低減が達成できる。尚、燃料代や電気代等の情報は、別途、通信手段等を用いて入手するが特に限定しない。
【0034】
図10は、エンジンの出力に対する発電機電力と暖房に使える廃熱の関係を示す。図9の最後のT3の期間は、図10のa=P0となるようなエンジン出力Peを選択し、そのときの廃熱bに対して、どれだけの時間暖房すれば必要な熱エネルギを供給できるかによって時間T3を決定する。
【0035】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)外部電源により充電可能な高電圧バッテリ3(電池)と、高電圧バッテリ3に対して充電可能なエンジン10及び発電機8(以下、発電手段と記載する)と、外部電源、高電圧バッテリ3又は発電手段からの電力により発熱する電気ヒータ12と、発電手段の廃熱又は電気ヒータ12により空気を加熱するヒータコア11と、駐車時に、ヒータコア11の熱源として発電手段の廃熱及び/又は電気ヒータ12を用いる制御を行う車両コントローラ19(制御手段)と、を備えた。
よって、電気ヒータ12よりも大きなエネルギを持つ発電手段の廃熱を用いて暖房することにより、十分な暖房効果を得ることができる。
【0036】
(2)車両コントローラ19は、発電手段を作動させ、ヒータコア11の熱源として発電手段の廃熱を用いる。
よって、暖房効果を短時間で得ることができる。
【0037】
(3)車両コントローラ19は、発電手段により高電圧バッテリ3を充電する。
よって、発電機8により必要な充電を行いながら、そのときの損失エネルギである廃熱を用いて暖房を行うことができ、効率よく、十分な暖房効果を短時間で得ることができる。
【0038】
(4)ドライバの事前暖房意図に基づく事前暖房完了予定時刻を判断する事前暖房要求判断手段102を設け、車両コントローラ19は、事前暖房完了予定時刻の所定時間前に前記発電手段を作動させる(ステップ1103参照)。
よって、暖房中の放熱を最小限に抑えつつ、駐車中に発電手段から音を発する時間も最小限にすることができ、短時間で十分な暖房効果を得ることができる。
【0039】
(5)ステップ1106において、発電手段の廃熱を熱源とした場合のエネルギコストと、前記外部電源からの電力を熱源とした場合のエネルギコストとを演算し(エネルギコスト演算手段)、車両コントローラ19は、エネルギコストが小さくなるように熱源を制御する。
よって、エネルギコストが小さい方の熱源を選択することで、コストダウンを図りつつ十分な暖房効果を得ることができる。
【0040】
(6)外気温度を検出する外気温検出手段を設け、車両コントローラ19は、ステップ1105において、外気温が所定温度より低いときは、ヒータコア11の熱源として発電手段の廃熱を用いる。
よって、外気温が低く、電気ヒータ12では十分な暖房を実現することが難しい極低温のような場合であっても、廃熱暖房を選択することで、十分な暖房効果を得ることができる。
【0041】
(7)ステップ1108において、発電手段の発電性能を抑制するか否かを判断し(発電性能抑制判断手段)、車両コントローラ19は、ステップ1110において、発電性能を抑制すると判断したときは、ヒータコア11の熱源として発電手段の廃熱と電気ヒータ12とを併用する。
電気ヒータ12だけでは十分な能力がなく、また、音なのど制約条件のために発電手段の廃熱暖房の性能も抑制する必要がある場合であっても、両方の熱源を選択することで、外気温が低い場合であっても、音を抑制しつつ十分な暖房効果を得ることができる。
【0042】
以上、ここまで説明した実施例では、発電した電力を充電しながら廃熱で暖房する例をもとに説明してきたが、これは、発電した電力を充電せずに、消費しながら廃熱での暖房のみを行なう方法でもよい。具体的には電気ヒータ12と廃熱暖房を併用する場合に、発電した電力すべてを電気ヒータ12に使用すれば、この方策を実現できる。
【0043】
また、本願で述べている電気ヒータ12や発電手段の廃熱による暖房は、ドライバの居室を暖めることだけでなく、システム部品(たとえばバッテリなど)を暖機することも当然のことながら含んでいる。
【0044】
また、事前暖房に限らず、事前空調の観点からは事前冷房も当然に含まれる。具体的には、冷凍サイクルに使用されるコンプレッサの動力エネルギ源として、電気エネルギと、発電手段であるエンジンの運動エネルギのどちらを用いるかを判断する制御装置であっても、本願発明の概念を用いて制御することができる。この場合、コンプレッサには電動モータとエンジンとがクラッチ等を介して接続され、適宜動力源を切り換えることとすればよい。
【符号の説明】
【0045】
1 駆動モータ
2 インバータ
3 高電圧バッテリ
4 冷却水ポンプ
5 充電器
6 接続装置
7 強電用ラジエータ
8 発電機
9 インバータ
10 エンジン
11 ヒータコア
12 電気ヒータ
13 冷却ポンプ
14 エンジン用ラジエータ
15 エンジン制御装置
16 発電機制御装置
17 高電圧バッテリ制御装置
18 モータ制御装置
19 車両コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源により充電可能な電池と、
前記電池に対して充電可能な発電手段と、
前記外部電源、前記電池又は前記発電手段からの電力により発熱する電気ヒータと、
前記発電手段の廃熱又は前記電気ヒータにより空気を加熱するヒータコアと、
駐車時に、前記ヒータコアの熱源として前記発電手段の廃熱及び/又は前記電気ヒータを用いる制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記発電手段を作動させ、前記ヒータコアの熱源として前記発電手段の廃熱を用いることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記発電手段により前記電池を充電することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両の制御装置において、
ドライバの事前暖房意図に基づく事前暖房完了予定時刻を判断する事前暖房要求判断手段を設け、
前記制御手段は、前記事前暖房完了予定時刻の所定時間前に前記発電手段を作動させることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記発電手段の廃熱を熱源とした場合のエネルギコストと、前記外部電源からの電力を熱源とした場合のエネルギコストとを演算するエネルギコスト演算手段を設け、
前記制御手段は、前記エネルギコストが小さくなるように前記熱源を制御することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1つに記載の車両の制御装置において、
外気温度を検出する外気温検出手段を設け、
前記制御手段は、外気温が所定温度より低いときは、前記ヒータコアの熱源として前記発電手段の廃熱を用いることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の車両の制御装置において、
前記発電手段の発電性能を抑制するか否かを判断する発電性能抑制判断手段を設け、
前記制御手段は、発電性能を抑制すると判断したときは、前記ヒータコアの熱源として前記発電手段の廃熱と前記電気ヒータとを併用することを特徴とする車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131439(P2012−131439A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286885(P2010−286885)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】