説明

車両の制御装置

【課題】アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた両踏み状態になった場合の安全性を確保しながらブレーキ先踏みの両踏み時の坂道発進を実施できるようにする。
【解決手段】アクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれて両踏み状態になった場合(アクセル先踏みの両踏み時)には、通常通りに出力制限制御(エンジン11の出力を制限する制御)を実行する。また、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ先踏みの両踏み時)には、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御を実行する。更に、ブレーキの踏み込みと同時にアクセルが踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時)には、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になった場合に駆動源の出力を制限する機能を備えた車両の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
運転者が間違えてアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏み込むことに起因する車両の暴走を防ぐことを目的として、例えば、特許文献1(特開2005−291030号公報)には、ブレーキペダルの踏み込み量が所定値(意図的なアクセルペダル及びブレーキペダルの同時踏み込みに対応した値)以上であるときに、エンジンを強制的にアイドル状態にすることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2006−233870号公報)には、アクセルペダルの操作とブレーキペダルの操作とを同時に検出すると、ブレーキペダルの操作に応じてエンジンの運転状態を所定出力内に制限し、クラッチペダルの操作を検出すると、その所定出力を増大させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−291030号公報
【特許文献2】特開2006−233870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、坂道発進時(特に牽引時の坂道発進や急勾配の坂道発進時)には、車両の後退を防ぐために、運転者がブレーキを踏み込みながらアクセルを踏み込んで坂道発進する場合があるが、従来技術では、坂道発進時に運転者が意図的にブレーキを踏み込みながらアクセルを踏み込んだ場合でも、運転者の意図に反して出力制限制御が実行されてエンジンの出力が抑制されてしまう可能性があり、ブレーキ先踏みの両踏み時(ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった場合)の坂道発進を実施できない可能性がある。
【0006】
この対策として、アクセル先踏みの両踏み時(アクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった場合)にのみ出力制限制御を実行するようにすることが考えられる。
【0007】
しかし、例えば、ブレーキペダルの下側に潜り込んだフロアマットの一部がアクセルペダルに被さったような状態では、ブレーキが踏み込まれたときに、ブレーキペダルに押されたフロアマットでアクセルペダルが押されてアクセルが踏み込まれた状態になるといった事象が発生する可能性があり、このような場合、ブレーキの踏み込みと同時か又はブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になるため、アクセル先踏みの両踏み時にのみ出力制限制御を実行するシステムでは、安全性を十分に確保することができない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になった場合の安全性を確保しながらブレーキ先踏みの両踏み時の坂道発進を実施することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合に駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段とを備え、この出力制御手段は、ブレーキ操作が検出された後にアクセル操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して出力制限制御を実行し、ブレーキ操作と同時にアクセル操作が同位相で検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、出力制限緩和処理を実施せずに出力制限制御を実行するようにしたものである。
【0010】
この構成では、アクセル操作が検出された後にブレーキ操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合(アクセル先踏みの両踏み時)には、通常通りに出力制限制御を実行することができるため、フロアマットの引っ掛かり等によってアクセルが戻らなくなってアクセルの踏み込み状態のままでブレーキが踏み込まれた場合の安全性を確保することができる。
【0011】
また、ブレーキ操作が検出された後にアクセル操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合(ブレーキ先踏みの両踏み時)には、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して出力制限制御を実行することで、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御を実行することができるため、ブレーキ先踏みの両踏み時の坂道発進を実施することができると共に、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保することができる。
【0012】
更に、ブレーキ操作と同時にアクセル操作が同位相で検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合(ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時)には、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御を実行することができるため、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込みとほぼ同時にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保することができる。
【0013】
この場合、請求項2のように、ブレーキ操作検出手段は、ブレーキストローク量(例えばブレーキペダルの踏み込み量)とブレーキ油圧(例えばブレーキマスターシリンダ内の油圧)とブレーキ踏力(例えばブレーキペダルの踏み込み力)のうちの少なくとも1つをブレーキ操作量として検出するようにしても良い。このようにすれば、ブレーキ操作を精度良く判定することができる。
【0014】
また、請求項3のように、ブレーキ操作が検出された後にアクセル操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、ブレーキ操作量と路面勾配のうちの少なくとも一方に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしても良い。このようにすれば、ブレーキ先踏みの両踏み時に、ブレーキ操作量や路面勾配に応じて運転者の要求ブレーキ力や坂道発進に必要な出力が変化するのに対応して、出力制限制御による出力低下度合を変化させて、出力制限制御による出力低下度合を適正値に設定することができる。
【0015】
更に、請求項4のように、ブレーキ操作と同時にアクセル操作が同位相で検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、ブレーキ操作量に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしても良い。このようにすれば、ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時に、ブレーキ操作量に応じて運転者の要求ブレーキ力が変化するのに対応して、出力制限制御による出力低下度合を変化させて、出力制限制御による出力低下度合を適正値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2はエンジン出力制御を説明する図である。
【図3】図3はアクセル先踏みの両踏み時の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】図4はブレーキ先踏みの両踏み時の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図5】図5はブレーキ・アクセル先踏みの両踏み時の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図6】図6は出力制限制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図7】図7は出力制限制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
車両には、駆動源として内燃機関であるエンジン11が搭載されている。このエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0018】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0019】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0020】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0021】
車両には、アクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ31(アクセル操作検出手段)と、ブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ32(ブレーキ操作検出手段)と、車速を検出する車速センサ33等が搭載されている。ブレーキセンサ32は、ブレーキ操作量として、ブレーキストローク量(例えばブレーキペダルの踏み込み量やブレーキブースタの動作量)を検出する。或は、ブレーキ油圧(例えばブレーキマスターシリンダ内の油圧)やブレーキ踏力(例えばブレーキペダルの踏み込み力)を検出するようにしても良い。
【0022】
これら各種センサやスイッチの出力は、電子制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU30は、アクセルセンサ31で検出したアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて制御用アクセル開度を設定し、この制御用アクセル開度に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジン11の出力を制御する。
【0023】
また、ECU30は、後述する図6及び図7の出力制限制御ルーチンを実行することで、アクセルセンサ31とブレーキセンサ32の出力信号に基づいて、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた両踏み状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になったと判断した場合に、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。本実施例では、出力制限制御として、制御用アクセル開度(エンジン11の制御に使用するアクセル開度)を制限するアクセル開度制限制御を実行する。
【0024】
その際、アクセル操作が検出された後にブレーキ操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合、つまり、アクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれて両踏み状態になった場合(アクセル先踏みの両踏み時)には、通常通りに出力制限制御を実行する。これにより、フロアマットの引っ掛かり等によってアクセルが戻らなくなってアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保する。
【0025】
また、ブレーキ操作が検出された後にアクセル操作が検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合、つまり、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ先踏みの両踏み時)には、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御を実行する。これにより、ブレーキ先踏みの両踏み時の坂道発進を実施可能にすると共に、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保する。
【0026】
更に、ブレーキ操作と同時にアクセル操作が同位相で検出されてアクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合、つまり、ブレーキの踏み込みと同時にアクセルが同位相で踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時)には、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御を実行する。これにより、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込みとほぼ同時にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保する。
【0027】
以下、図2乃至図5を用いて、本実施例のエンジン出力制御について具体的に説明する。尚、以下の説明で「ブレーキON」はブレーキセンサ32で検出したブレーキ操作量が所定のON/OFF判定値以上になってブレーキが踏み込まれたと判定した状態(ブレーキ操作を検出した状態)を意味し、「ブレーキOFF」はブレーキセンサ32で検出したブレーキ操作量がON/OFF判定値未満になってブレーキの踏み込みが解除されたと判定した状態(ブレーキ解除を検出した状態)を意味する。
【0028】
図2及び図3に示すように、ECU30の起動直後は、まず、通常モード(Mode1)に設定される。
【0029】
(1)通常モード(Mode1)では、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのまま制御用アクセル開度として採用し、この制御用アクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
この通常モード(Mode1)の場合には、次の(b) と(c1)〜(c3)の条件が成立しているか否かを判定する。
【0030】
(b) 実アクセル開度が所定値A1 よりも大きいこと
(c1)ブレーキOFF又はブレーキONの継続時間が所定時間T1 以下であること
(c2)ブレーキ操作量が所定値B1 以上であること
(c3)ブレーキ操作量の変化量ΔBr (例えば今回値と前回値との差又は所定期間の変化量)が所定値以上で且つアクセル開度の変化量ΔAc (例えば今回値と前回値との差又は所定期間の変化量)が所定値以上が成立してから所定時間以内であること
【0031】
ここで、上記(b) の条件の所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。また、上記(c2)の条件の所定値B1 は、ON/OFF判定値よりも大きい値に設定されている。
【0032】
上記(b) の条件が成立していると判定され、且つ、上記(c1)〜(c3)の3つの条件のうちのいずれか1つが成立していると判定された場合には、その時点t1 (図3参照)で、スタンバイモード(Mode2)に移行する。
【0033】
(2)スタンバイモード(Mode2)では、通常モード(Mode1)と同じように、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのまま制御用アクセル開度として採用し、この制御用アクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0034】
このスタンバイモード(Mode2)の場合には、次の(d) の条件が成立しているか否かを判定する。
(d) ブレーキON且つブレーキONの継続時間が所定のディレイ時間T2 以上であること
ここで、上記(d) の条件のディレイ時間T2 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0035】
上記(d) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)で且つブレーキONの継続時間がディレイ時間T2 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してからディレイ時間T2 以上が経過した)と判定された場合には、その時点t2 (図3参照)で、制限制御モード(Mode3)に移行する。
【0036】
一方、上記(d) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(e) 又は(f) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(d) の条件よりも次の(e) と(f) の条件の方が優先度が低い。
(e) 実アクセル開度が所定値A2 以下であること
(f) 車速が所定値V2 よりも低いこと
ここで、上記(e) の条件の所定値A2 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定される。
【0037】
上記(e) 又は(f) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A2 以下であると判定された場合、又は、車速が所定値V2 よりも低いと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0038】
(3)制限制御モード(Mode3)では、制御用アクセル開度を制限値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)まで減少させて、制御用アクセル開度を制限値で制限するアクセル開度制限制御を実行し、この制御用アクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。ここで、制限値は、予め設定した固定値としても良いし、出力制限制御開始時(アクセル開度制限制御開始時)の車速に応じて設定するようにしても良い。
【0039】
更に、出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行する際には、出力制限制御開始時(アクセル開度制限制御開始時)の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、出力制限制御開始時の車速が高くなるほど減算量が大きくなって制御用アクセル開度の変化速度(減少速度)が速くなるように設定されている。そして、制御用アクセル開度が制限値に減少するまで、所定の演算周期毎に前回の制御用アクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返すことで、出力制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)で制御用アクセル開度を制限値まで減少させる。
【0040】
その際、上記(b),(c1),(d)の条件が成立して制限制御モード(Mode3)に移行した場合、つまり、図3に示すように、アクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれて両踏み状態になった場合(アクセル先踏みの両踏み時)には、制御用アクセル開度の制限値を通常値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)に設定して、通常通りに出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行する。
【0041】
また、上記(b),(c2),(d)の条件が成立して制限制御モード(Mode3)に移行した場合、つまり、図4に示すように、ブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ先踏みの両踏み時)には、制御用アクセル開度の制限値を通常値よりも大きい緩和値に設定することで、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行する。
【0042】
この場合、ブレーキ操作量と路面勾配に応じた緩和値をマップ等により算出して、ブレーキ操作量と路面勾配に応じて緩和値(=制限値)を変化させることで、ブレーキ操作量と路面勾配に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させる。ここで、緩和値のマップは、例えば、ブレーキ操作量が大きくなるほど緩和値(=制限値)が小さくなって出力低下度合が大きくなると共に、路面勾配が大きくなる(上り傾斜がきつくなる)ほど緩和値(=制限値)が大きくなって出力低下度合が小さくなる(出力制限しない状態に近くなる)ように設定されている。
【0043】
更に、上記(b),(c3),(d)の条件が成立して制限制御モード(Mode3)に移行した場合、つまり、図5に示すように、ブレーキの踏み込みと同時にアクセルが同位相で踏み込まれて両踏み状態になった場合(ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時)には、制御用アクセル開度の制限値を通常値に設定することで、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行する。
【0044】
この場合、ブレーキ操作量に応じた通常値をマップ等により算出して、ブレーキ操作量に応じて通常値(=制限値)を変化させることで、ブレーキ操作量に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させる。ここで、通常値のマップは、例えば、ブレーキ操作量が大きくなるほど通常値(=制限値)が小さくなって出力低下度合が大きくなるように設定されている。
【0045】
この制限制御モード(Mode3)の場合には、次の(g) 又は(h) の条件が成立しているか否かを判定する。
(g) 実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいこと
(h) ブレーキOFF且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上であること
【0046】
上記(g) の条件が成立していると判定された場合、つまり、出力制限制御の実行中に実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいと判定された場合には、運転者が意図的にアクセル開度を増加させた(アクセルを踏み込んだ)ため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、その時点で、復帰制御モード(Mode4)に移行する。
【0047】
また、上記(h) の条件が成立していると判定された場合、つまり、出力制限制御の実行中にブレーキOFF(ブレーキの踏み込みが解除された状態)で且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上である(ブレーキの踏み込みが解除されたと判定してから所定時間T3 以上が経過した)と判定された場合には、運転者が意図的にブレーキの踏み込みを解除したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、その時点t3 (図3参照)で、復帰制御モード(Mode4)に移行する。
【0048】
一方、上記(g) と(h) の条件が両方とも不成立であると判定された場合には、次の条件(i) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(g) と(h) の条件よりも次の(i) の条件の方が優先度が低い。
【0049】
(i) 実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいこと
ここで、上記(i) の条件の所定値A3 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定される。上記(i) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0050】
(4)復帰制御モード(Mode4)では、制御用アクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行し、この制御用アクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0051】
更に、アクセル開度復帰制御を実行する際には、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。そして、制御用アクセル開度が実スロットル開度に増加するまで、所定の演算周期毎に前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返すことで、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)で制御用アクセル開度を実アクセル開度まで増加させる。その際、制御用アクセル開度を実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限する。
【0052】
この復帰制御モード(Mode4)の場合には、次の(j) の条件が成立しているか否かを判定する。
(j) ブレーキON且つブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上であること
上記(j) の条件が成立していると判定された場合、つまり、アクセル開度復帰制御の実行中にブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)で且つブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してから所定時間T4 以上が経過した)と判定された場合には、その時点で、制限制御モード(Mode3)に戻って、出力制限制御を実行する。
【0053】
一方、上記(j) の条件が不成立であると判定された場合には、次の条件(k) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(j) の条件よりも次の(k) の条件の方が優先度が低い。
【0054】
(k) 制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であること
上記(k) の条件が成立していると判定された場合、つまり、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であると判定された場合には、制御用アクセル開度が実アクセル開度まで増加したと判断して、その時点t4 (図3参照)で、アクセル開度復帰制御を終了して、スタンバイモード(Mode2)に戻る。
【0055】
更に、上記(k) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(l) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり上記(k) の条件よりも次の(l) の条件の方が優先度が低い。
(l) 実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいこと
【0056】
ここで、上記(l) の条件の所定値A4 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定される。上記(l) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、アクセル開度復帰制御を終了して、通常モード(Mode1)に戻る。
【0057】
以上の処理により、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった場合に、制御用アクセル開度を制限するアクセル開度制限制御を実行することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0058】
以上説明した本実施例の出力制限制御に関する処理は、ECU30によって図6及び図7の出力制限制御ルーチンに従って実行される。以下、この出力制限制御ルーチンの処理内容を説明する。
【0059】
[出力制限制御ルーチン]
図6及び図7に示す出力制限制御ルーチンは、ECU30の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう出力制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルが踏み込まれている)か否かを判定する。ここで、所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0060】
このステップ101で、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルが踏み込まれている)と判定された場合には、ステップ102に進み、ブレーキOFFであるか否かを判定する。
【0061】
このステップ102で、ブレーキOFFであると判定された場合には、アクセル先踏みの両踏みになる可能性があると判断して、ステップ106に進み、制御用アクセル開度の制限値を通常値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)に設定して、通常通りに出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行できるようにする。
【0062】
一方、上記ステップ102で、ブレーキONであると判定された場合には、ステップ103に進み、ブレーキ操作量の変化量ΔBr (例えば今回値と前回値との差又は所定期間の変化量)を算出した後、ステップ104に進み、アクセル開度の変化量ΔAc (例えば今回値と前回値との差又は所定期間の変化量)を算出する。この後、ステップ105に進み、ブレーキ操作量の変化量ΔBr が所定値以上で且つアクセル開度の変化量ΔAc が所定値以上であるか否かを判定する。
【0063】
このステップ105で、ブレーキ操作量の変化量ΔBr が所定値以上で且つアクセル開度の変化量ΔAc が所定値以上ではないと判定された場合(つまりブレーキ操作量の変化量ΔBr が所定値よりも小さい又はアクセル開度の変化量ΔAc が所定値よりも小さいと判定された場合)には、ブレーキ先踏みの両踏み時であると判断して、ステップ107に進み、ブレーキ操作量が所定値B1 以上であるか否かを判定し、ブレーキ操作量が所定値B1 よりも小さいと判定されれば、上記ステップ101に戻る。
【0064】
一方、上記ステップ107で、ブレーキ操作量が所定値B1 以上であると判定された場合には、ステップ108に進み、制御用アクセル開度の制限値を通常値よりも大きい緩和値に設定することで、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行できるようにする。
【0065】
この場合、ブレーキ操作量と路面勾配に応じた緩和値をマップ等により算出して、ブレーキ操作量と路面勾配に応じて緩和値(=制限値)を変化させることで、ブレーキ操作量と路面勾配に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させる。ここで、緩和値のマップは、例えば、ブレーキ操作量が大きくなるほど緩和値(=制限値)が小さくなって出力低下度合が大きくなると共に、路面勾配が大きくなる(上り傾斜がきつくなる)ほど緩和値(=制限値)が大きくなって出力低下度合が小さくなるように設定されている。
【0066】
一方、上記ステップ105で、ブレーキ操作量の変化量ΔBr が所定値以上で且つアクセル開度の変化量ΔAc が所定値以上であると判定された場合には、ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時であると判断して、ステップ106に進み、制御用アクセル開度の制限値を通常値に設定することで、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行できるようにする。
【0067】
この場合、ブレーキ操作量に応じた通常値をマップ等により算出して、ブレーキ操作量に応じて通常値(=制限値)を変化させることで、ブレーキ操作量に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させる。ここで、通常値のマップは、例えば、ブレーキ操作量が大きくなるほど緩和値(=制限値)が小さくなって出力低下度合が大きくなるように設定されている。
【0068】
この後、ステップ109に進み、実アクセル開度が所定値A2 よりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値A2 は、所定値V1 よりも小さい値に設定される。このステップ109で、実アクセル開度が所定値A2 以下であると判定された場合には、上記ステップ101に戻る。一方、上記ステップ109で、実アクセル開度が所定値A2 よりも大きいと判定された場合には、ステップ110に進み、ブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)で且つブレーキONの継続時間がディレイ時間T2 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してからディレイ時間T2 以上が経過した)か否かを判定する。
【0069】
このステップ110で「No」と判定された場合(つまりブレーキOFF又はブレーキONの継続時間が所定時間T2 よりも短いと判定された場合)には、上記ステップ109に戻る。
【0070】
その後、上記ステップ110で、ブレーキONで且つブレーキONの継続時間がディレイ所定時間T2 以上であると判定された時点で、図7のステップ111に進み、アクセル開度制限制御(出力制限制御)を次のようにして実行する。まず、ステップ111で、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。
【0071】
この後、ステップ112に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回の制御用アクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める。
今回の制御用アクセル開度=前回の制御用アクセル開度−減算量
【0072】
この後、ステップ113に進み、制御用アクセル開度が制限値以下であるか否かを判定し、制御用アクセル開度が制限値よりも大きいと判定されれば、上記ステップ111に戻り、前回の制御用アクセル開度から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0073】
その後、上記ステップ113で、制御用アクセル開度が制限値以下であると判定されたときに、ステップ114に進み、制御用アクセル開度を制限値に設定する。以上の処理により、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)で制御用アクセル開度を制限値まで減少させて、制御用アクセル開度を制限値で制限するアクセル開度制限制御を実行することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0074】
この後、ステップ115に進み、ブレーキOFF(ブレーキの踏み込みが解除された状態)で且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上である(ブレーキの踏み込みが解除されたと判定してから所定時間T3 以上が経過した)か否かを判定する。
【0075】
このステップ115で「No」と判定された場合(つまりブレーキON又はブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 よりも短いと判定された場合)には、上記ステップ111に戻る。
【0076】
その後、上記ステップ115で、ブレーキOFFで且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上であると判定された時点で、ステップ116に進み、アクセル開度復帰制御を次のようにして実行する。まず、ステップ116で、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。
【0077】
この後、ステップ117に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める。
今回の制御用アクセル開度=前回の制御用アクセル開度+加算量
【0078】
この後、ステップ118に進み、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であるか否かを判定し、制御用アクセル開度が実アクセル開度よりも小さいと判定されれば、上記ステップ116に戻り、前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返す。これにより、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)で制御用アクセル開度を増加させて、制御用アクセル開度を実アクセル開度まで戻すアクセル開度復帰制御を実行する。
【0079】
その後、上記ステップ118で、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であると判定されたときに、アクセル開度復帰制御を終了して、本ルーチンを終了する。
【0080】
以上説明した本実施例では、アクセル先踏みの両踏み時には、通常通りに出力制限制御を実行するようにしたので、フロアマットの引っ掛かり等によってアクセルが戻らなくなってアクセルの踏み込み後にブレーキが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保することができる。
【0081】
また、ブレーキ先踏みの両踏み時には、アクセル先踏みの両踏み時に比べて出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して、坂道発進に必要な出力を確保できる程度に出力制限制御を実行するようにしたので、ブレーキ先踏みの両踏み時の坂道発進を実施することができると共に、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込み後にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保することができる。
【0082】
更に、ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時には、出力制限緩和処理を実施せずに通常通りに出力制限制御を実行するようにしたので、ブレーキに押されたフロアマット等でアクセルが押されてブレーキの踏み込みと同時にアクセルが踏み込まれた状態になった場合の安全性を確保することができる。
【0083】
また、本実施例では、ブレーキ先踏みの両踏み時には、ブレーキ操作量と路面勾配に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしたので、ブレーキ先踏みの両踏み時に、ブレーキ操作量や路面勾配に応じて運転者の要求ブレーキ力や坂道発進に必要な出力が変化するのに対応して、出力制限制御による出力低下度合を変化させて、出力制限制御による出力低下度合を適正値に設定することができる。
【0084】
更に、本実施例では、ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時には、ブレーキ操作量に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしたので、ブレーキ・アクセル同時踏みの両踏み時に、ブレーキ操作量に応じて運転者の要求ブレーキ力が変化するのに対応して、出力制限制御による出力低下度合を変化させて、出力制限制御による出力低下度合を適正値に設定することができる。
【0085】
尚、上記実施例では、ブレーキ先踏みの両踏み時に、ブレーキ操作量と路面勾配の両方に応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしたが、これに限定されず、ブレーキ操作量と路面勾配のうちの一方のみに応じて出力制限制御による出力低下度合を変化させるようにしても良い。
【0086】
また、上記実施例では、モータ等のスロットルアクチュエータでスロットルバルブの開度を制御する電子スロットルを備えたシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、アクセルペダルとスロットルバルブを機械的に連結したメカスロットルを備えたシステムに本発明を適用しても良く、この場合、出力制限制御の際には、例えば、燃料噴射量や点火時期等によりエンジン11の出力を制限すると良い。
【0087】
また、上記実施例では、エンジンのみを駆動源とする車両に本発明を適用したが、これに限定されず、モータのみを駆動源とする電気自動車やエンジンとモータの両方を駆動源とするハイブリッド車にも本発明を適用して実施できる。
【符号の説明】
【0088】
11…エンジン(駆動源)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、30…ECU(出力制御手段)、31…アクセルセンサ(アクセル操作検出手段)、32…ブレーキセンサ(ブレーキ操作検出手段)、33…車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合に前記駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段とを備え、
前記出力制御手段は、前記ブレーキ操作が検出された後に前記アクセル操作が検出されて前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、前記出力制限制御による出力低下度合を小さくする出力制限緩和処理を実施して前記出力制限制御を実行し、前記ブレーキ操作と同時に前記アクセル操作が同位相で検出されて前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、前記出力制限緩和処理を実施せずに前記出力制限制御を実行することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ操作検出手段は、ブレーキストローク量とブレーキ油圧とブレーキ踏力のうちの少なくとも1つをブレーキ操作量として検出することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記出力制御手段は、前記ブレーキ操作が検出された後に前記アクセル操作が検出されて前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、前記ブレーキ操作量と路面勾配のうちの少なくとも一方に応じて前記出力制限制御による出力低下度合を変化させることを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記出力制御手段は、前記ブレーキ操作と同時に前記アクセル操作が同位相で検出されて前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合には、前記ブレーキ操作量に応じて前記出力制限制御による出力低下度合を変化させることを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−167553(P2012−167553A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26791(P2011−26791)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】