説明

車両の制御装置

【課題】アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた場合にエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する車両において、出力制限制御の実行時の安全性を高める。
【解決手段】アクセルセンサ31とブレーキスイッチ32の出力信号に基づいて、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になったと判断した場合に、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。その際、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御としてハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる制御を実行する。これにより、出力制限制御による車両の急減速の可能性がある特殊な状況であることを周囲(例えば後続車両)に気付かせることができ、出力制限制御の実行時に後続車両の追突を未然に防止することができる。尚、車両の運転状態(例えば加速度や車速)に応じて報知制御を実行するタイミングを切り換えても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になった場合に駆動源の出力を制限する機能を備えた車両の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
運転者が間違えてアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏み込むことに起因する車両の暴走を防ぐことを目的として、例えば、特許文献1(特開2005−291030号公報)には、ブレーキペダルの踏み込み量が所定値(意図的なアクセルペダル及びブレーキペダルの同時踏み込みに対応した値)以上であるときに、エンジンを強制的にアイドル状態にすることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特表平2−502558号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときに駆動出力を所定の小さい値に減少させる安全回路において、ブレーキの操作が検出されても、運転者が新たにアクセルペダルを踏み込んだことをアクセルセンサの出力の時間微分値により検出したときには、安全回路を作動させないようにすることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3(US6881174号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときにそれぞれの操作量に基づいてブレーキ要求がアクセル要求より大きいと判断した場合に、エンジン出力を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291030号公報
【特許文献2】特表平2−502558号公報
【特許文献3】US6881174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になった場合にエンジンの出力を制限する出力制限制御を実行する機能を備えた車両では、通常のブレーキ踏み込み時(ブレーキのみが踏み込まれたとき)と、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれて出力制限制御が実行されたとき)とで、車両の減速挙動が異なってくる。つまり、通常のブレーキ踏み込み時には、ブレーキが踏み込まれると、それに伴って車両が減速し始める。一方、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時には、まず、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた段階では、ブレーキが踏み込まれていてもアクセルの踏み込みによるエンジンの出力増加によって車両があまり減速しないが、その後、出力制限制御の実行条件が成立して出力制限制御が実行されると、エンジンの出力が低下して車両が急減速する可能性がある。
【0007】
しかし、従来技術では、このような事情が全く考慮されておらず、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時でも、通常のブレーキ踏み込み時と同じようにブレーキランプが点灯するだけであるため、出力制限制御による車両の急減速の可能性がある特殊な状況であることを周囲(特に後続車両)に気付かせることができず、最悪の場合、後続車両に追突されてしまう可能性があり、出力制限制御の実行時の安全性を十分に高めることができない。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、出力制限制御が実行されたときに後続車両の追突を防止することができ、出力制限制御の実行時の安全性を高めることができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合に駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御を実行する報知制御手段とを備えた構成としたものである。
【0010】
この構成では、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御を実行することで、出力制限制御による車両の急減速の可能性がある特殊な状況であることを周囲(例えば後続車両)に気付かせることができる。これにより、出力制限制御が実行されたときに後続車両の追突を未然に防止することができ、出力制限制御の実行時の安全性を高めることができる。
【0011】
本発明は、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知するための専用の報知装置を設けて報知制御を実行するようにしても良いが、請求項2のように、報知制御としてハザードランプとブレーキランプとクラクションのうちの少なくとも1つを報知動作させる制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、ハザードランプの報知動作(例えば点灯又は点滅)やブレーキランプの報知動作(例えば点滅)やクラクションの報知動作(例えば鳴動)によって、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知することができると共に、専用の報知装置を新たに設ける必要がなく、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0012】
また、報知制御を実行するタイミングとしては、例えば、請求項3のように、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態)になった時点で報知制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、出力制限制御が実行される前の早いタイミングで報知制御を実行することができる。
【0013】
或は、請求項4のように、出力制限制御が実行される時点(例えば出力制限制御の実行条件が成立した時点)で報知制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、出力制限制御の実行が確定してから報知制御を実行することができる。
【0014】
また、請求項5のように、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった時点で報知制御を実行する処理と、出力制限制御が実行される時点で報知制御を実行する処理とを、車両の運転状態に応じて切り換えるようにしても良い。このようにすれば、車両の運転状態(例えば加速度や車速)に応じて報知制御を実行するタイミングを切り換えることができ、車両の運転状態に応じた適正なタイミングで報知制御を実行することができる。
【0015】
例えば、車両の加速度が大きいときや車速が高いときには、報知制御を早めに実行しないと、安全性を確保する(後続車両の追突を防止する)ことが困難になると判断して、アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態になった時点で報知制御を実行する。これにより、出力制限制御が実行される前の早いタイミングで報知制御を実行することができ、確実に安全性を確保することができる。
【0016】
一方、車両の加速度が小さいときや車速が低いときには、報知制御をあまり早めに実行しなくても、安全性を確保できる(後続車両の追突を防止できる)と判断して、出力制限制御が実行される時点(例えば出力制限制御の実行条件が成立した時点)で報知制御を実行する。これにより、出力制限制御の実行が確定してから報知制御を実行することができ、安全性を確保しながら報知制御の信用性を高めることができる。
【0017】
また、報知制御を停止するタイミングとしては、例えば、請求項6のように、アクセル操作とブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点で報知制御を停止するようにしても良い。このようにすれば、アクセルとブレーキの両踏みが解除された時点で報知制御を停止することができる。
【0018】
或は、請求項7のように、出力制限制御が停止される時点(例えば出力制限制御の停止条件が成立した時点)で報知制御を停止するようにしても良い。このようにすれば、出力制限制御の停止が確定してから報知制御を停止することができる。
【0019】
また、請求項8のように、車速が所定値以下になった時点で報知制御を停止するようにしても良い。このようにすれば、車速が所定値以下になった時点(例えば車両が停止した時点又は車両が停止すると予測される低車速になった時点)で報知制御を停止することができる。
【0020】
また、請求項9のように、アクセル操作とブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点で報知制御を停止する処理と、出力制限制御が停止される時点で報知制御を停止する処理と、車速が所定値以下になった時点で報知制御を停止する処理のうちの少なくとも2つの処理を、車両の運転状態に応じて切り換えるようにしても良い。このようにすれば、車両の運転状態(例えば加速度や車速)に応じて報知制御を停止するタイミングを切り換えることができ、車両の運転状態に応じた適正なタイミングで報知制御を停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2はエンジン出力制御を説明する図である。
【図3】図3は出力制限制御及び報知制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】図4は出力制限制御及び報知制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図5】図5は出力制限制御及び報知制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
車両には、駆動源として内燃機関であるエンジン11が搭載されている。このエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0023】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ吸気ポートに向けて燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0024】
一方、エンジン11の排気管23には、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ24(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられ、この排出ガスセンサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0025】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、ノッキングを検出するノックセンサ27が取り付けられている。また、クランク軸28の外周側には、クランク軸28が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ29が取り付けられ、このクランク角センサ29の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0026】
車両には、アクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ31(アクセル操作検出手段)と、ブレーキ操作/解除に応じてオン/オフするブレーキスイッチ32(ブレーキ操作検出手段)と、車速を検出する車速センサ33等が搭載されている。
【0027】
これら各種センサやスイッチの出力は、電子制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。その際、ECU30は、アクセルセンサ31で検出したアクセル開度(アクセル操作量)に基づいて制御用アクセル開度を設定し、この制御用アクセル開度に基づいてスロットル開度(吸入空気量)等を制御してエンジン11の出力を制御する。
【0028】
本実施例では、ECU30により後述する図4及び図5の各ルーチンを実行することで、アクセルセンサ31とブレーキスイッチ32の出力信号に基づいて、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になったと判断した場合に、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。本実施例では、出力制限制御として、制御用アクセル開度(エンジン11の制御に使用するアクセル開度)を制限するアクセル開度制限制御を実行する。
【0029】
以下、図2及び図3を用いて、本実施例のエンジン出力制御について具体的に説明する。尚、以下の説明で「ブレーキON」はブレーキスイッチ32の出力信号に基づいてブレーキが踏み込まれたと判定した状態(ブレーキ操作を検出した状態)を意味し、「ブレーキOFF」はブレーキスイッチ32の出力信号に基づいてブレーキの踏み込みが解除されたと判定した状態(ブレーキ解除を検出した状態)を意味する。
【0030】
図2及び図3に示すように、ECU30の起動直後は、まず、通常モード(Mode1)に設定される。
(1)通常モード(Mode1)では、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのまま制御用アクセル開度として採用し、この制御用アクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0031】
この通常モード(Mode1)の場合には、次の(a) と(b) の条件が成立しているか否かを判定する。
(a) 車速が所定値V1 以上であること
(b) 実アクセル開度が所定値A1 よりも大きいこと
ここで、上記(b) の条件の所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0032】
上記(a) と(b) の2つの条件が両方とも成立していると判定された場合、つまり、車速が所定値V1 以上であると判定され、且つ、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルが踏み込まれている)と判定された場合には、その時点t1 (図3参照)で、スタンバイモード(Mode2)に移行する。
【0033】
(2)スタンバイモード(Mode2)では、通常モード(Mode1)と同じように、実アクセル開度(アクセルセンサ31で検出したアクセル開度)を、そのまま制御用アクセル開度として採用し、この制御用アクセル開度(=実アクセル開度)を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0034】
このスタンバイモード(Mode2)の場合には、次の(d) の条件が成立しているか否かを判定する。
(d) ブレーキON且つブレーキONの継続時間が所定のディレイ時間T2 以上であること
ここで、上記(d) の条件のディレイ時間T2 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0035】
上記(d) の条件が成立していると判定された場合、つまり、ブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)で且つブレーキONの継続時間がディレイ時間T2 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してからディレイ時間T2 以上が経過した)と判定された場合には、その時点t2 (図3参照)で、制限制御モード(Mode3)に移行する。
【0036】
一方、上記(d) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(e) 又は(f) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(d) の条件よりも次の(e) と(f) の条件の方が優先度が低い。
(e) 実アクセル開度が所定値A2 以下であること
(f) 車速が所定値V2 よりも低いこと
【0037】
ここで、上記(e) の条件の所定値A2 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。また、上記(f) の条件の所定値V2 は、上記(a) の条件の所定値V1 よりも小さい値に設定されている。
【0038】
上記(e) 又は(f) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A2 以下であると判定された場合、又は、車速が所定値V2 よりも低いと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0039】
(3)制限制御モード(Mode3)では、制御用アクセル開度を制限値(例えばアイドル運転時よりも少し大きいアクセル開度)まで減少させて、制御用アクセル開度を制限値で制限するアクセル開度制限制御を実行し、この制御用アクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。ここで、制限値は、予め設定した固定値としても良いし、出力制限制御開始時(アクセル開度制限制御開始時)の車速に応じて設定するようにしても良い。
【0040】
更に、出力制限制御(アクセル開度制限制御)を実行する際には、出力制限制御開始時(アクセル開度制限制御開始時)の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、出力制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。そして、制御用アクセル開度が制限値に減少するまで、所定の演算周期毎に前回の制御用アクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返すことで、出力制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)で制御用アクセル開度を制限値まで減少させる。
【0041】
この制限制御モード(Mode3)の場合には、次の(g) 又は(h) の条件が成立しているか否かを判定する。
(g) 実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいこと
(h) ブレーキOFF且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上であること
【0042】
上記(g) の条件が成立していると判定された場合、つまり、出力制限制御の実行中に実アクセル開度の所定時間当りの増加量が所定値ΔA3 よりも大きいと判定された場合には、運転者が意図的にアクセル開度を増加させた(アクセルを踏み込んだ)ため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、その時点で、復帰制御モード(Mode4)に移行する。
【0043】
また、上記(h) の条件が成立していると判定された場合、つまり、出力制限制御の実行中にブレーキOFF(ブレーキの踏み込みが解除された状態)で且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上である(ブレーキの踏み込みが解除されたと判定してから所定時間T3 以上が経過した)と判定された場合には、運転者が意図的にブレーキの踏み込みを解除したため、エンジン出力を抑制する必要はないと判断して、その時点t3 (図3参照)で、復帰制御モード(Mode4)に移行する。
【0044】
一方、上記(g) と(h) の条件が両方とも不成立であると判定された場合には、次の条件(i) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(g) と(h) の条件よりも次の(i) の条件の方が優先度が低い。
【0045】
(i) 実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいこと
ここで、上記(i) の条件の所定値A3 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。上記(i) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A3 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、通常モード(Mode1)に戻る。
【0046】
(4)復帰制御モード(Mode4)では、制御用アクセル開度を実アクセル開度に戻すアクセル開度復帰制御を実行し、この制御用アクセル開度を用いてエンジン11の出力を制御する。
【0047】
更に、アクセル開度復帰制御を実行する際には、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。そして、制御用アクセル開度が実スロットル開度に増加するまで、所定の演算周期毎に前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返すことで、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又は出力制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)で制御用アクセル開度を実アクセル開度まで増加させる。その際、制御用アクセル開度を実アクセル開度まで増加させるときの変化速度を所定の上限値で制限する。
【0048】
この復帰制御モード(Mode4)の場合には、次の(j) の条件が成立しているか否かを判定する。
(j) ブレーキON且つブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上であること
【0049】
上記(j) の条件が成立していると判定された場合、つまり、アクセル開度復帰制御の実行中にブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)で且つブレーキONの継続時間が所定時間T4 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してから所定時間T4 以上が経過した)と判定された場合には、その時点で、制限制御モード(Mode3)に戻って、出力制限制御を実行する。
【0050】
一方、上記(j) の条件が不成立であると判定された場合には、次の条件(k) が成立しているか否かを判定する。つまり、上記(j) の条件よりも次の(k) の条件の方が優先度が低い。
(k) 制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であること
【0051】
上記(k) の条件が成立していると判定された場合、つまり、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であると判定された場合には、制御用アクセル開度が実アクセル開度まで増加したと判断して、その時点t4 (図3参照)で、アクセル開度復帰制御を終了して、スタンバイモード(Mode2)に戻る。
【0052】
更に、上記(k) の条件が不成立であると判定された場合には、次の(l) の条件が成立しているか否かを判定する。つまり上記(k) の条件よりも次の(l) の条件の方が優先度が低い。
(l) 実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいこと
【0053】
ここで、上記(l) の条件の所定値A4 は、上記(b) の条件の所定値A1 よりも小さい値に設定されている。上記(l) の条件が成立していると判定された場合、つまり、実アクセル開度が所定値A4 よりも小さいと判定された場合には、その時点で、アクセル開度復帰制御を終了して、通常モード(Mode1)に戻る。
【0054】
以上の処理により、上記(a),(b),(d) の3つ条件を出力制限制御の実行条件とし、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった場合に、制御用アクセル開度を制限するアクセル開度制限制御を実行することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0055】
ところで、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になった場合に、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行するシステムでは、通常のブレーキ踏み込み時(ブレーキのみが踏み込まれたとき)と、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれて出力制限制御が実行されたとき)とで、車両の減速挙動が異なってくる。つまり、通常のブレーキ踏み込み時には、ブレーキが踏み込まれると、それに伴って車両が減速し始める。一方、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時には、まず、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた段階では、ブレーキが踏み込まれていてもアクセルの踏み込みによるエンジン11の出力増加によって車両があまり減速しないが、その後、出力制限制御の実行条件が成立して出力制限制御が実行されると、エンジン11の出力が低下して車両が急減速する可能性がある。
【0056】
しかし、アクセルとブレーキの両踏みによる出力制限制御の実行時に、通常のブレーキ踏み込み時と同じようにブレーキランプが点灯するだけでは、出力制限制御による車両の急減速の可能性がある特殊な状況であることを周囲(特に後続車両)に気付かせることができず、最悪の場合、後続車両に追突されてしまう可能性があり、出力制限制御の実行時の安全性を十分に高めることができない。
【0057】
この対策として、ECU30は、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御を実行する。本実施例では、報知制御としてハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる制御を実行することで、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する。
【0058】
また、本実施例では、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になった時点で報知制御を実行する処理と、出力制限制御が実行される時点(例えば出力制限制御の実行条件が成立した時点)で報知制御を実行する処理とを、車両の運転状態(例えば加速度又は車速)に応じて切り換えることで、車両の運転状態に応じて報知制御を実行するタイミングを切り換える。
【0059】
具体的には、まず、車両の加速度が所定値K以上であるか否かを判定する。ここで、所定値Kは、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。尚、「車両の加速度が所定値K以上であるか否かを判定する処理」を「車速が所定値以上であるか否かを判定する処理」に変更しても良い。
【0060】
図3に示すように、車両の加速度が所定値K以上の場合(又は車速が所定値以上の場合)には、報知制御を早めに実行しないと、安全性を確保する(後続車両の追突を防止する)ことが困難になると判断して、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった時点ta で、ハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる報知制御を実行する。これにより、出力制限制御が実行される前の早いタイミングで報知制御を実行することができ、確実に安全性を確保することができる。その後、車速が所定値(例えば0又はそれよりも少し大きい値)以下になった時点tb で、車両が停止した又は車両が停止すると予測される低車速になったと判断して、ハザードランプ34を消灯して報知制御を停止する。
【0061】
一方、車両の加速度が所定値Kよりも小さい場合(又は車速が所定値よりも低い場合)には、報知制御をあまり早めに実行しなくても、安全性を確保できる(後続車両の追突を防止できる)と判断して、出力制限制御が実行される時点tc (例えば出力制限制御の実行条件が成立した時点)で、ハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる報知制御を実行する。これにより、出力制限制御の実行が確定してから報知制御を実行することができ、安全性を確保しながら報知制御の信用性を高めることができる。その後、車速が所定値(例えば0又はそれよりも少し大きい値)以下になった時点tb で、車両が停止した又は車両が停止すると予測される低車速になったと判断して、ハザードランプ34を消灯して報知制御を停止する。
【0062】
以上説明した本実施例の出力制限制御と報知制御に関する処理は、ECU30によって図4及び図5の各ルーチンに従って実行される。以下、これらの各ルーチンの処理内容を説明する。
【0063】
[出力制限制御及び報知制御ルーチン]
図4及び図5に示す出力制限制御及び報知制御ルーチンは、ECU30の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう出力制御手段及び報知制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、車速が所定値V1 以上であるか否かを判定する。
【0064】
このステップ101で、車速が所定値V1 以上であると判定された場合には、ステップ102に進み、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルが踏み込まれている)か否かを判定する。ここで、所定値A1 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0065】
このステップ102で、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きい(アクセルが踏み込まれている)と判定された場合には、ステップ103に進み、ブレーキON(ブレーキが踏み込まれた状態)であるか否かを判定する。
上記ステップ101〜103のいずれかで「No」と判定された場合には、上記ステップ101に戻る。
【0066】
一方、上記ステップ101〜103で全て「Yes」と判定された場合には、ステップ104に進み、車両の加速度が所定値K以上であるか否かを判定する。ここで、所定値Kは、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。尚、このステップ104の処理(車両の加速度が所定値K以上であるか否かを判定する処理)を「車速が所定値以上であるか否かを判定する処理」に変更しても良い。
【0067】
このステップ104で、車両の加速度が所定値K以上であると判定された場合(又は車速が所定値以上であると判定された場合)には、報知制御を早めに実行しないと、安全性を確保する(後続車両の追突を防止する)ことが困難になると判断して、この時点(アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった時点)で、ステップ105に進み、ハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる報知制御を実行する。
【0068】
一方、上記ステップ104で、車両の加速度が所定値Kよりも小さいと判定された場合(又は車速が所定値よりも低いと判定された場合)には、報知制御をあまり早めに実行しなくても、安全性を確保できる(後続車両の追突を防止できる)と判断して、この時点では、報知制御を実行しない。
【0069】
この後、ステップ106に進み、ブレーキONの継続時間が所定のディレイ時間T2 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してからディレイ時間T2 以上が経過した)か否かを判定する。ここで、ディレイ時間T2 は、予め設定した固定値としても良いし、車速に応じて設定するようにしても良い。
【0070】
このステップ106で、ブレーキONの継続時間がディレイ時間T2 よりも短いと判定された場合には、ステップ107に進み、車速が所定値V1 以上であるか否かを判定し、車速が所定値V1 以上であると判定された場合には、ステップ108に進み、実アクセル開度が所定値A1 よりも大きいか否かを判定する。
【0071】
上記ステップ107,108のいずれかで「No」と判定された場合には、上記ステップ101に戻る。一方、上記ステップ107,108の両方で「Yes」と判定された場合には、上記ステップ106に戻る。
【0072】
その後、ステップ106で、ブレーキONの継続時間がディレイ時間T2 以上である(ブレーキが踏み込まれたと判定してからディレイ時間T2 以上が経過した)と判定された場合には、出力制限制御の実行条件が成立したと判断して、ステップ109に進み、ハザードランプ34が報知動作(例えば点灯又は点滅)しているか否かを判定し、ハザードランプ34が報知動作していないと判定された場合(つまり上記ステップ104で車両の加速度が所定値Kよりも小さいと判定された場合又は車速が所定値よりも低いと判定された場合)には、この時点(出力制限制御の実行条件が成立して出力制限制御が実行される時点)で、ステップ110に進み、ハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる報知制御を実行する。
【0073】
この後、図5のステップ111に進み、アクセル開度制限制御(出力制限制御)を次のようにして実行する。まず、ステップ111で、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた減算量をマップ等により算出する。ここで、減算量のマップは、例えば、アクセル開度制限制御開始時の車速が低くなるほど減算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(減少速度)が遅くなるように設定されている。
【0074】
この後、ステップ112に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回の制御用アクセル開度(初期値は実アクセル開度)から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める。
今回の制御用アクセル開度=前回の制御用アクセル開度−減算量
【0075】
この後、ステップ113に進み、制御用アクセル開度が制限値以下であるか否かを判定する。ここで、制限値は、予め設定した固定値としても良いし、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じて設定するようにしても良い。
【0076】
このステップ113で、制御用アクセル開度が制限値よりも大きいと判定されれば、上記ステップ111に戻り、前回の制御用アクセル開度から減算量だけ減算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返す。
【0077】
その後、上記ステップ113で、制御用アクセル開度が制限値以下であると判定されたときに、ステップ114に進み、制御用アクセル開度を制限値に設定する。以上の処理により、アクセル開度制限制御開始時の車速に応じた変化速度(減少速度)で制御用アクセル開度を制限値まで減少させて、制御用アクセル開度を制限値で制限するアクセル開度制限制御を実行することで、エンジン11の出力を制限する出力制限制御を実行する。
【0078】
この後、ステップ115に進み、車速が所定値(例えば0又はそれよりも少し大きい値)以下であるか否かを判定し、車速が所定値以下であると判定されたときに、車両が停止した又は車両が停止すると予測される低車速になったと判断して、ステップ116に進み、ハザードランプ34を消灯して報知制御を停止する。
【0079】
この後、ステップ117に進み、ブレーキOFF(ブレーキの踏み込みが解除された状態)で且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上である(ブレーキの踏み込みが解除されたと判定してから所定時間T3 以上が経過した)か否かを判定する。
【0080】
このステップ117で「No」と判定された場合(つまりブレーキON又はブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 よりも短いと判定された場合)には、上記ステップ111に戻る。
【0081】
その後、上記ステップ117で、ブレーキOFFで且つブレーキOFFの継続時間が所定時間T3 以上であると判定された時点で、ステップ118に進み、アクセル開度復帰制御を次のようにして実行する。まず、ステップ118で、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた加算量をマップ等により算出する。ここで、加算量のマップは、例えば、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)が低くなるほど加算量が小さくなって制御用アクセル開度の変化速度(増加速度)が遅くなるように設定されている。
【0082】
この後、ステップ119に進み、本ルーチンの演算周期毎に前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める。
今回の制御用アクセル開度=前回の制御用アクセル開度+加算量
【0083】
この後、ステップ120に進み、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であるか否かを判定し、制御用アクセル開度が実アクセル開度よりも小さいと判定されれば、上記ステップ118に戻り、前回の制御用アクセル開度に加算量だけ加算して今回の制御用アクセル開度を求める処理を繰り返す。これにより、アクセル開度復帰制御開始時の車速(又はアクセル開度制限制御開始時の車速)に応じた変化速度(増加速度)で制御用アクセル開度を増加させて、制御用アクセル開度を実アクセル開度まで戻すアクセル開度復帰制御を実行する。
【0084】
その後、上記ステップ120で、制御用アクセル開度が実アクセル開度以上であると判定されたときに、アクセル開度復帰制御を終了して、本ルーチンを終了する。
【0085】
以上説明した本実施例では、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御を実行するようにしたので、出力制限制御による車両の急減速の可能性がある特殊な状況であることを周囲(例えば後続車両)に気付かせることができる。これにより、出力制限制御が実行されたときに後続車両の追突を未然に防止することができ、出力制限制御の実行時の安全性を高めることができる。
【0086】
また、本実施例では、報知制御としてハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる制御を実行するようにしたので、ハザードランプ34の報知動作(例えば点灯又は点滅)によって、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知することができると共に、専用の報知装置を新たに設ける必要がなく、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0087】
更に、本実施例では、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態(アクセル操作とブレーキ操作の両方が検出された状態)になった時点で報知制御を実行する処理と、出力制限制御が実行される時点(例えば出力制限制御の実行条件が成立した時点)で報知制御を実行する処理とを、車両の運転状態(例えば加速度や車速)に応じて切り換えるようにしたので、車両の運転状態に応じて報知制御を実行するタイミングを切り換えることができ、車両の運転状態に応じた適正なタイミングで報知制御を実行することができる。
【0088】
尚、上記実施例では、車両の運転状態に応じて報知制御を実行するタイミングを切り換えるようにしたが、これに限定されず、例えば、車両の運転状態に関係なく常にアクセルとブレーキの両方が踏み込まれた状態になった時点で報知制御を実行するようにしても良い。或は、車両の運転状態に関係なく常に出力制限制御が実行される時点で報知制御を実行するようにしても良い。
【0089】
また、上記実施例では、車速が所定値以下になった時点で報知制御を停止するようにしたが、これに限定されず、例えば、アクセル操作とブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点(アクセルとブレーキの両踏みが解除された時点)で報知制御を停止するようにしても良い。或は、出力制限制御が停止される時点(例えば出力制限制御の停止条件が成立した時点)で報知制御を停止するようにして、出力制限制御の停止が確定してから報知制御を停止するようにしても良い。
【0090】
また、アクセル操作とブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点で報知制御を停止する処理と、出力制限制御が停止される時点で報知制御を停止する処理と、車速が所定値以下になった時点で報知制御を停止する処理のうちの2つ又は3つの処理を、車両の運転状態(例えば加速度や車速)に応じて切り換えるようにしても良い。このようにすれば、車両の運転状態に応じて報知制御を停止するタイミングを切り換えることができ、車両の運転状態に応じた適正なタイミングで報知制御を停止することができる。
【0091】
また、上記実施例では、報知制御としてハザードランプ34を報知動作(例えば点灯又は点滅)させる制御を実行するようにしたが、これに限定されず、報知制御として、例えば、ブレーキランプを報知動作(例えば点滅)させる制御やクラクションを報知動作(例えば鳴動)させる制御を実行するようにしても良い。或は、報知制御としてハザードランプとブレーキランプとクラクションのうちの2つ又は3つを同時に報知動作させる制御を実行するようにしても良い。いずれも場合も、専用の報知装置を新たに設ける必要がなく、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0092】
しかしながら、本発明は、出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知するための専用の報知装置(例えば、音声出力装置、文字や図柄を表示する表示装置等)を設けて報知制御を実行するようにしても良い。
【0093】
また、上記実施例では、モータ等のスロットルアクチュエータでスロットルバルブの開度を制御する電子スロットルを備えたシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、アクセルペダルとスロットルバルブを機械的に連結したメカスロットルを備えたシステムに本発明を適用しても良く、この場合、出力制限制御の際には、例えば、燃料噴射量や点火時期等によりエンジン11の出力を制限すると良い。
【0094】
さらに、近年ではアクセルペダル開度に応じてスロットル開度のみならず、動弁系の制御や空燃比/点火時期等、トルクの観点での制御を実施するシステムも増加しており、これらのシステムに適用する際には直接要求トルク量を調整する様に構成すれば、同等の実施効果を得ることができる。
【0095】
また、上記実施例では、ブレーキ操作検出手段として、ブレーキスイッチを備えたシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、ブレーキスイッチに代えて、ブレーキ操作量を検出するブレーキセンサを備えたシステムに本発明を適用しても良い。
【0096】
また、上記実施例では、エンジンのみを駆動源とする車両に本発明を適用したが、これに限定されず、モータのみを駆動源とする電気自動車やエンジンとモータの両方を駆動源とするハイブリッド車にも本発明を適用して実施できる。
【符号の説明】
【0097】
11…エンジン(駆動源)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管、30…ECU(出力制御手段,報知制御手段)、31…アクセルセンサ(アクセル操作検出手段)、32…ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出手段)、33…車速センサ、34…ハザードランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった場合に前記駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制御手段と、
前記出力制限制御による車両の急減速の可能性があることを周囲に報知する報知制御を実行する報知制御手段と
を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記報知制御手段は、前記報知制御としてハザードランプとブレーキランプとクラクションのうちの少なくとも1つを報知動作させる制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記報知制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった時点で前記報知制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記報知制御手段は、前記出力制限制御が実行される時点で前記報知制御を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記報知制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作の両方が検出された状態になった時点で前記報知制御を実行する処理と、前記出力制限制御が実行される時点で前記報知制御を実行する処理とを、車両の運転状態に応じて切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記報知制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点で前記報知制御を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記報知制御手段は、前記出力制限制御が停止される時点で前記報知制御を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記報知制御手段は、車速が所定値以下になった時点で前記報知制御を停止することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記報知制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作のうちの少なくとも一方が解除された時点で前記報知制御を停止する処理と、前記出力制限制御が停止される時点で前記報知制御を停止する処理と、車速が所定値以下になった時点で前記報知制御を停止する処理のうちの少なくとも2つの処理を、車両の運転状態に応じて切り換えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−184737(P2012−184737A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49657(P2011−49657)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】