説明

車両の前端構造

【課題】 簡易にメンテナンスを行うことができる車両の前端構造を提供する。
【解決手段】 冷凍サイクル内を循環する冷媒を冷却するコンデンサ2と、コンデンサ2が組み付けられるフロントエンドパネル4と、コンデンサ2とフロントエンドパネル4との間に配置される車両前端部品1、31とを備える車両の前端構造であって、コンデンサ2に、冷凍サイクルを構成する機器と接続させるための2つの冷媒配管を同一側面に取り付ける。これにより、コンデンサ2を冷媒配管5で保持した状態で揺動させることができるため、コンデンサ2から冷媒配管5を取り外すことなく、コンデンサ2とフロントエンドパネル4との間にある車両前端部品1、31を脱着することができる。したがって、冷媒配管5の脱着およびガスの抜き取り・充填の工程を行うことなく、簡易な工程でメンテナンスを行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体前端部を構成する車両の前端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前端構造は、図5に示すように、ラジエータJ1、コンデンサJ2、ファンJ31、フロントエンドパネルJ4等から構成されている(例えば、特許文献1参照)。そして、ラジエータJ1およびファンJ31は、コンデンサJ2とフロントエンドパネルJ4との間に配置されている。このような車両の前端構造において、コンデンサJ2の両端には、図6に示すように、冷凍サイクルを構成する機器と接続させるための冷媒配管J5が取り付けられている。
【特許文献1】特開2002−139294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両の前端構造(フロントエンドモジュール)において、交換や修理等のメンテナンスを行うためにラジエータおよびファンを取り外す場合、ラジエータおよびファンは、コンデンサとフロントエンドパネルとの間に配置されているため、先にコンデンサを取り外す必要がある。このため、コンデンサの冷媒配管の脱着およびガスの抜き取り・充填が必要となり、工程が複雑になるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、簡易にメンテナンスを行うことができる車両の前端構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷凍サイクル内を循環する冷媒を冷却するコンデンサ(2)と、コンデンサ(2)が組み付けられるフロントエンドパネル(4)と、コンデンサ(2)とフロントエンドパネル(4)との間に配置される車両前端部品(1、31)とを備える車両の前端構造であって、コンデンサ(2)には、冷凍サイクルを構成する機器と接続させるための2つの冷媒配管(5)が同一側面に取り付けられていることを特徴としている。
【0006】
これにより、コンデンサ(2)を冷媒配管(5)で保持した状態で揺動させることができるため、コンデンサ(2)から冷媒配管(5)を取り外すことなく、コンデンサ(2)とフロントエンドパネル(4)との間にある車両前端部品(1、31)を脱着することができる。したがって、冷媒配管(5)の脱着およびガスの抜き取り・充填の工程を行うことなく、簡易な工程でメンテナンスを行うことが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、フロントエンドパネル(4)におけるコンデンサ(2)が組み付けられた際に2つの冷媒配管(5)に対応する部位には、冷媒配管(5)に対応した形状の2つの配管固定部(4e)が設けられており、2つの冷媒配管(5)は、2つの配管固定部(4e)によりそれぞれ保持されていることを特徴としている。これにより、冷媒配管(5)が配管固定部(4e)により保持されている部位を中心に、コンデンサ(2)を揺動させることができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、2つの冷媒配管(5)は、弾性部材からなる弾性配管部(52)をそれぞれ有しており、2つの冷媒配管(5)を、弾性配管部(52)において配管固定部(4e)にそれぞれ保持されていることを特徴としている。弾性配管部(52)は柔軟性があるため、コンデンサ(2)をより容易に揺動させることが可能となる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る車両の前端構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、本実施形態の車両の前端構造は、ラジエータ1、コンデンサ2、送風機3およびフロントエンドパネル4から構成されている。
【0011】
ラジエータ1は、エンジン冷却水と外気とを熱交換してエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。ラジエータ1は、冷却水が流通する複数本のラジエータチューブからなるラジエータコア1a、およびラジエータチューブの長手方向両端側に配設されて各ラジエータチューブに連通するラジエータタンク1b等から構成された周知のマルチフロー型の熱交換器である。
【0012】
コンデンサ2は、冷凍サイクル(図示せず)内を循環する冷媒と外気とを熱交換して冷媒を冷却する熱交換器である。コンデンサ2もラジエータ1と同様に、冷媒が流通する複数本のコンデンサチューブからなるコンデンサコア2a、およびコンデンサチューブの長手方向両端側に配設されて各コンデンサチューブに連通するコンデンサタンク2b等から構成された周知のマルチフロー型の熱交換器である。
【0013】
送風機3は、ラジエータ1およびコンデンサ2に冷却風を送風する送風手段である。送風機3は、ファン31と、ファン31を回転駆動するモータ32から構成されている。
【0014】
そして、本実施形態では、コンデンサ2がラジエータ1より車両前方側、つまりコンデンサ2がラジエータ1より冷却風流れ上流側に位置し、かつ、ラジエータチューブおよびコンデンサチューブの長手方向が水平方向に一致するように配置され、ラジエータタンク1bおよびコンデンサタンク2bの長手方向が上下方向(鉛直方向)に一致するように車両に搭載されている。なお、ラジエータ1およびファン31が本発明の車両前端部品に相当している。
【0015】
フロントエンドパネル4は、ラジエータ1およびコンデンサ2等が組み付け固定されるもので、文献によってはキャリア又はラジエータサポートとも呼ばれる。また、フロントエンドパネル4は、上方側に位置して水平方向に延びる上方側梁部材4a、下方側に位置して水平方向に延びる下方側梁部材4b、および上下方向に延びて両梁部材4a、4bを連結する支柱部4cからなる矩形枠状のパネル本体部を有している。
【0016】
フロントエンドパネル4には、ファンシュラウド4dが一体に成形されている。ファンシュラウド4eは、送風機3とラジエータ1との隙間を閉塞して送風機3にて誘起された空気流が熱交換器を迂回して流れることを防止する機能と、送風機3を支持する機能とを有している。
【0017】
フロントエンドパネル4における2つの支柱部4cいずれか一方(本実施形態では図1における右側)の外側には、ホースクランプ部4eが上下方向に2つ設けられている。ホースクランプ部4eは、樹脂の弾性力を利用して後述する冷媒配管5を挟持するものである。なお、ホースクランプ部4eが本発明の配管固定部に相当している。
【0018】
なお、本実施形態では、上方側梁部材4a、下方側梁部材4b、支柱部4c、ファンシュラウド4dおよびホースクランプ部4eは、炭素繊維やガラス繊維等により引張り強度が強化された強化樹脂にて一体成形されている。
【0019】
図2は本実施形態に係るコンデンサ2を示す斜視図で、図3はコンデンサ2が組み付けられたフロントエンドパネル4を示す斜視図で、図4は図3のA−A断面図である。図2〜図4に示すように、ホースクランプ部4eに対応する側(本実施形態では図2における右側)のコンデンサタンク2bには、圧縮機や膨張弁等の冷凍サイクルを構成する機器(図示せず)とコンデンサ2とを繋ぐ冷媒配管5が2つ接続されている。
【0020】
冷媒配管5は、例えばアルミニウムなどの金属からなる金属配管部51と、ゴムからなるゴム配管部52から構成されており、金属配管部51の一端が、コンデンサタンク2bに接続されている。冷媒配管5の金属配管部51は略コの字形状に形成されており、コンデンサ2をフロントエンドパネル4に組み付けた際に、コの字形状の凹部にフロントエンドパネル4の支柱部4cが入り込むようになっている。
【0021】
冷媒配管5は、ゴム配管部52においてフロントエンドパネル4のホースクランプ部4eに支持されている。ゴム配管部52には柔軟性があるため、ゴム配管部53におけるホースクランプ4eによって支持されている部位を中心に、コンデンサ2を揺動させることができるようになっている。なお、ゴム配管部52が本発明の弾性配管部に相当している。
【0022】
また、コンデンサ2のコンデンサタンク2bの上下端部には、コンデンサ2をフロントエンドパネル4に組み付けるための取付用突起部をなす取付ピン2cが設けられている。フロントエンドパネル4に設けられた係止部6とクリップ7とにより取付ピン2cを挟み込んで、コンデンサ2をフロントエンドパネル4に固定するようになっている。また、クリップ6を取り外すことで、コンデンサ2をホースクランプ部4eに支持されている部位を中心に揺動させて、内部のラジエータ1やファン31を露出させるようになっている。なお、図3において、冷媒配管5が接続されている側の係止部6およびクリップ7は、図示を省略している。
【0023】
以上説明したように、コンデンサ2の一端に冷媒配管5を2つ取り付けることで、冷媒配管5がホースクランプ部4eにより保持されている部位を中心に、コンデンサ2を揺動させることができる。これにより、コンデンサ2から冷媒配管5を取り外すことなく、コンデンサ2とフロントエンドパネル4との間に配置されているラジエータ1およびファン31を脱着することができる。したがって、冷媒配管5の脱着およびガスの抜き取り・充填の工程を行うことなく、簡易な工程でラジエータ1およびファン31等のメンテナンスを行うことができる。
【0024】
さらに、ゴム配管部52をホースクランプ部4により保持することで、ゴム配管部52は柔軟性があるため、コンデンサ2をより容易に揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の前端構造を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るコンデンサ2を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るコンデンサ2が組み付けられたフロントエンドパネル4を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】従来の車両の前端構造を示す分解斜視図である。
【図6】従来のコンデンサJ2を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ラジエータ(車両前端部品)、2…コンデンサ、4…フロントエンドパネル、
4e…ホースクランプ(配管固定部)、5…冷媒配管、31…ファン(車両前端部品)、52…ゴム配管部(弾性配管部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクル内を循環する冷媒を冷却するコンデンサ(2)と、前記コンデンサ(2)が組み付けられるフロントエンドパネル(4)と、前記コンデンサ(2)と前記フロントエンドパネル(4)との間に配置される車両前端部品(1、31)とを備える車両の前端構造であって、
前記コンデンサ(2)には、前記冷凍サイクルを構成する機器と接続させるための2つの冷媒配管(5)が同一側面に取り付けられていることを特徴とする車両の前端構造。
【請求項2】
前記フロントエンドパネル(4)における前記コンデンサ(2)が組み付けられた際に前記2つの冷媒配管(5)に対応する部位には、前記冷媒配管(5)に対応した形状の2つの配管固定部(4e)が設けられており、
前記2つの冷媒配管(5)は、前記2つの配管固定部(4e)によりそれぞれ保持されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の前端構造。
【請求項3】
前記2つの冷媒配管(5)は、弾性部材からなる弾性配管部(52)をそれぞれ有しており、
前記2つの冷媒配管(5)は、前記弾性配管部(52)において前記配管固定部(4e)にそれぞれ保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前端構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−315490(P2006−315490A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138608(P2005−138608)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】