説明

車両の前部構造

【課題】 エンジンルーム内における車両部品レイアウトの自由度が制限されることのない車両の前部構造を提供する。
【解決手段】
車両前端に、外気からのエアを導入する外気導入ダクト11を設け、該外気導入ダクト11の後側にエアクリーナボックス9を接続した車両の前部構造において、前記外気導入ダクト11とエアクリーナボックス9との接続部分69を、上下方向に嵌合することにより互いに接続される上下嵌合構造に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関し、更に詳しくは、エンジンルーム内の外気導入ダクトとエアクリーナボックスとの接続部分の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車の前部には、外気エアを取り込む外気導入ダクトと、該外気導入ダクトに接続されてエアを清浄するエアクリーナボックスとが配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これらの外気導入ダクト及びエアクリーナボックスの組付手順は、フロントバンパの背面側に外気導入ダクトを配設し、該外気導入ダクトの後端部に、車両後方から前方に向けてエアクリーナボックスを移動させて嵌合させている。
【特許文献1】特開平8−135533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来例では、エアクリーナボックスを、車両後方側から前方に向けて移動させて外気導入ダクトに嵌合させているため、エアクリーナボックスの車両後方側には、例えばストラットハウジング等の車体部品を配置することが困難であり、車体部品をレイアウトする際の自由度が制限されるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンルーム内における部品レイアウトの自由度が制限されることのない車両の前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る車両の前部構造は、車両前端に、外気からのエアを導入する外気導入ダクトを設け、該外気導入ダクトの後側にエアクリーナボックスを接続した車両の前部構造において、前記外気導入ダクトとエアクリーナボックスとの接続部分を、上下方向に嵌合することにより互いに接続される上下嵌合構造に構成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両の前部構造によれば、エアクリーナボックスの後方に近接した位置に、車体部品を配設することができ、レイアウト自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態による車体前部構造を採用した車両のエンジンルームを示す平面図である。
【0010】
車両前部1には、エンジンルーム3が配設されており、該エンジンルーム3の略中央部には、エンジン5が配置されている。このエンジン5の後部の左右両側から左右一対の吸気ダクト7,7が前方に向けて延び、エアクリーナボックス9の後面に接続されている。エアクリーナボックス9の前側には外気導入ダクト11が配置され、これら左右の外気導入ダクト11の間には、ラジエータ13及びコンデンサ15がラジエータコアサポート17を介して設けられている。これらのラジエータ13及びコンデンサ15は、外気導入ダクト11に近接して配置され、吸気ダクト7には、スロットルチャンバー19が配設されている。
【0011】
また、バンパ21の車幅方向中央部には、外気からのエアaを導入する開口22が形成されており、この開口22から導入されたエアaは、外気導入ダクト11からエアクリーナボックス9及び吸気ダクト7を介して、エンジン5に送られる。
【0012】
さらに、エアクリーナボックス9は、ストラットハウジング23よりも車両前方側で、モーターファン43の後部の側方でできるだけ車幅方向中央側に近い部位に配置されている。エアクリーナボックス9の車幅方向内側には、車両前後方向に延びる遮蔽板25が配設されている。
【0013】
図2は、図1のラジエータコアサポートを車両前方から見た正面図である。
【0014】
ラジエータコアサポート17は、正面視略T字状に形成され、車幅方向中央側には、矩形状の開口部27が2つ形成されている。これらの開口部27,27の背面側には、ラジエータ13及びコンデンサ15が配設されている。
【0015】
図3は図1の外気導入ダクトとエアクリーナボックスとの接続部分を拡大した斜視図、図4は図3のA−A線による断面図、図5は外気導入ダクトにエアクリーナを接続している状態を示す斜視図である。
【0016】
外気導入ダクト11は、上下方向に細長く延びる略楕円状の筒状部材であるダクト本体部31と、該ダクト本体部31の後端に形成された、上部側が開放されたU字状の受け部33とから構成されている。該受け部33は、ダクト本体部31の後端から左右方向及び下方向に向けて延びる縦壁面35と、該縦壁面35から屈曲して車両後方に延びる側壁面39とから一体形成されている。また、受け部33は、縦壁面35と側壁面39とで断面L字状に形成されている。
【0017】
一方、エアクリーナボックス9の内部には、前後方向の中央側にプレート状のエアクリーナエレメント45が挿入されている。また、エアクリーナボックス9の前面には、前記外気導入ダクト11のダクト本体部31と同一形状に形成された筒状の接続口本体部49と、該接続口本体部49の上部の前端から車両前方に延びる延設部51とからなる接続口47が設けられている。この延設部51は、前記受け部33を上下逆に配置したものと同様の逆U字状に形成されており、左右方向及び上方向に延びる縦壁面37と、該縦壁面37から車両前方に屈曲して延びる側壁面41とから、断面L字状に形成されている。
【0018】
そして、断面矩形状の長いシール材53が、外気導入ダクト11に形成された受け部33の側壁面39の内周側と、エアクリーナエレメントの延設部の側壁面41の内周側とにそれぞれ貼り付けられている。なお、図3に示すように、外気導入ダクト11との接続部分69は、エアクリーナボックス9の車幅方向中央部に配置されている。
【0019】
図6は、外気導入ダクトとエアクリーナとの接続部分を拡大して示す斜視図である。
【0020】
ラジエータコアサポート17の上面55には、フードロック用挿入孔57が穿設され、該フードロック用挿入孔57の下方には、フードロック59が配設されている。また、ラジエータコアサポート17の上部には、外気導入ダクト11が挿入されるダクト用貫通孔61が穿設され、該ダクト用貫通孔61の車幅方向外側には、エアコン配管用挿通孔63が形成されている。ダクト用貫通孔61には、外気導入ダクト11が嵌合されている。ここで、外気導入ダクト11をラジエータコアサポート17に一体化しても良いが、サブアッセンブリして固定しても良い。
【0021】
また、エアコン配管65,65は、上下に間隔をおいて配索され、ラジエータコアサポート17の背面側からエアコン配管用挿通孔63を挿通し、外気導入ダクト11の前側を回り込んで車両後方に延びている。
【0022】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
車両前端に、外気からのエアを導入する外気導入ダクト11を設け、該外気導入ダクト11の後側にエアクリーナボックス9を接続した車両の前部構造において、前記外気導入ダクト11とエアクリーナボックス9との接続部分69を、上下方向に嵌合することにより互いに接続される上下嵌合構造に構成している。
【0024】
このため、エアクリーナボックス9を、上方位置から下降させることによって外気導入ダクト11に嵌合させて接続できるので、エアクリーナボックス9の後方に近接した位置に、車体部品を配設することができ、レイアウト自由度が向上する。
【0025】
前記外気導入ダクト11の後端の下部に受け部33を形成する一方、エアクリーナボックス9の前端に、上部に延設部51を有する接続口47を形成し、前記外気導入ダクト11の上方からエアクリーナボックス9を下降させて、前記受け部33に延設部51を嵌合させるように構成している。
【0026】
このため、エアクリーナボックス9を外気導入ダクト11に接続する際に、この接続部分69が、外気導入ダクト11側の受け部33とエアクリーナボックス側の延設部51とで覆われるので、接続部分69のシール性が向上する。
【0027】
前記受け部33は、上部が開放されてエアクリーナボックス9側に突出するU字状に形成され、前記延設部51は、下部が開放されて外気導入ダクト11側に突出する逆U字状に形成されている。
【0028】
このため、エアクリーナボックス9を下降させる際に、エアクリーナボックス9が外気導入ダクト11に干渉しないので、接続作業を簡単かつ確実に行うことができる。
【0029】
前記受け部33及び延設部51の少なくともいずれかの内周面にシール材53を設けているため、エアクリーナボックス9と外気導入ダクト11との接続部分69におけるシール性が更に向上する。
【0030】
なお、本実施形態によれば、車両前端部にラジエータ13及びコンデンサ15を配設すると共に、これらのラジエータ13及びコンデンサ15の側方に、前記外気導入ダクト11を近接して配置しているため、外気導入ダクト11、エアクリーナボックス9から吸気ダクト7をほぼ直線状に配置することができ、通気抵抗を低減させることにより、出力向上が図れる。
【0031】
また、外気導入ダクト11をラジエータコアサポート17に一体化又はサブアッセンブリすることができ、外気導入ダクト11の上方にダブルフードロッックを配置することができ、車体部品のレイアウトの自由度及び外気導入ダクト11のコスト低減を図ることができる。
【0032】
さらに、遮蔽板25によって、モーターファン43からエンジンルーム3内に流れ込むエアa’をガイドし、乱流を発生させずに後方側に排出させることができ、通気率が向上して冷却性能が向上する。
【0033】
また、ヘッドランプ67は、車両前端の左右両側部に左右一対に配置されている。このヘッドランプ67は、左右両側部から車両後方に廻り込むように配置されているため、フロントオーバーハングの短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態による前部構造を採用した車両のエンジンルームを示す平面図である。
【図2】図1のラジエータコアサポートを車両前方から見た正面図である。
【図3】図1の外気導入ダクトとエアクリーナボックスとの接続部分を拡大した斜視図である。
【図4】図3のA−A線による断面図である。
【図5】外気導入ダクトにエアクリーナを接続している状態を示す斜視図である。
【図6】外気導入ダクトとエアクリーナとの接続部分を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…車両前部
9…エアクリーナボックス
11…外気導入ダクト
33…受け部
47…接続口
51…延設部
53…シール材
69…接続部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前端に、外気からのエアを導入する外気導入ダクトを設け、該外気導入ダクトの後側にエアクリーナボックスを接続した車両の前部構造において、
前記外気導入ダクトとエアクリーナボックスとの接続部分を、上下方向に嵌合することにより互いに接続される上下嵌合構造に構成したことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
前記外気導入ダクトの後端の下部に受け部を形成する一方、エアクリーナボックスの前端に、上部に延設部を有する接続口を形成し、前記外気導入ダクトの上方からエアクリーナボックスを下降させて、前記受け部に延設部を係合させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記受け部は、上部が開放されてエアクリーナボックス側に突出するU字状に形成され、前記延設部は、下部が開放されて外気導入ダクト側に突出する逆U字状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記受け部及び延設部の少なくともいずれかの内周面にシール材を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−291846(P2006−291846A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113431(P2005−113431)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】