説明

車両の前部構造

【課題】車両と他の車両との衝突時に、フロントタイヤを利用してフロントアンダーランプロテクタ(FUP)の過度な変形を規制して他の車両のもぐり込みを防止する。
【解決手段】昇降用ステップ7は、前板12と後板13と下板15と連結板16とを有する。下板15と連結板16とは、車両1の衝突によってFUP5から前板12に対して前方からの荷重が作用し、昇降用ステップ7が後方へ移動して後板13がフロントタイヤ9の前面9aに押圧されたタイヤ当接状態で、前板12と後板13との相対移動を規制する。昇降用ステップ7の支持強度は、タイヤ当接状態において回転中のフロントタイヤ9から作用する下方への荷重によって昇降用ステップ7が所定位置から路面30上へ下降するように設定されている。下板15に対する連結板16の高さは、昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態でFUP5と前後で重なる高さ以上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−274300号公報には、大型トラック等の車両の前面下部に配置され、普通乗用車等の他の車両との正面衝突時に他の車両の車台下へのもぐり込みを防止するフロントアンダーランプロテクタの取付構造が記載されている。この構造では、車両のメインフレームに取付ステーが固定され、取付ステーの下部前側にフロントアンダーランプロテクタが固定される。取付ステーの下部後側には、昇降用ステップが固定され、昇降用ステップの後部は、フロントタイヤの前方に所定の間隔を置いて位置する。他の車両がフロントアンダーランプロテクタに衝突して取付ステーが後方に大きく変形すると、昇降用ステップの後部がフロントタイヤに衝突し、フロントタイヤの弾性力によって他の車両の衝撃が吸収される。また、同公報には、フロントアンダーランプロテクタに昇降用ステップを固定しても良いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
普通乗用車と大型トラックとの正面衝突事故は、どちらかの車両が対向車線にはみ出して互いの車両の一部が衝突する、いわゆるオフセット状態の衝突となり、普通乗用車は大型トラックのフロントアンダーランプロテクタ取付ステーの外側に衝突する場合が多い。特開2002−274300号公報記載の構造においては、フロントアンダーランプロテクタ取付ステーの外側に普通乗用車が衝突した場合、フロントアンダーランプロテクタの端部のみが変形してしまい、昇降用ステップの後部がフロントタイヤに衝突しない可能性がある。また、フロントアンダーランプロテクタに昇降用ステップを固定する場合であっても、昇降用ステップとフロントタイヤとの接触時にフロントタイヤが完全に停止せずに回転していると、昇降用ステップの後部とフロントタイヤとの間に動摩擦力が作用し、昇降用ステップの後部はフロントタイヤの回転方向への力を受けて下方へ変形し、落下する可能性がある。昇降用ステップの後部が落下すると、フロントアンダーランプロテクタの後方への移動が規制されず、フロントアンダーランプロテクタが過度に変形して他の車両のもぐり込みを十分に防止できない可能性がある。また、昇降用ステップの後部が落下すると、昇降用ステップの後部がフロントタイヤによって支持されず、フロントタイヤを利用した衝突エネルギの吸収が行われない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、車両と他の車両との衝突時に、フロントタイヤを利用してフロントアンダーランプロテクタの過度な変形を規制して他の車両のもぐり込みを防止できる車両の前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係わる車両の前部構造は、フロントアンダーランプロテクタと昇降用ステップとを備える。フロントアンダーランプロテクタは、車両の前端下部に支持されて車幅方向に延びる。昇降用ステップは、フロントアンダーランプロテクタと車両のフロントタイヤとの間で車両の側部の所定位置に支持されて車両のキャブへ昇降する乗員の足場となる。昇降用ステップは、フロントアンダーランプロテクタの後面に対向して上下方向に延びる前板と、車両のフロントタイヤの前面に対向して上下方向に延びる後板と、前後方向に延びて路面と対向し前板の下端縁と後板の下端縁とを連結する下板と、下板の上方で前後方向に延びて前板と後板とを連結する連結部材とを有する。下板と連結部材とは、車両の衝突によってフロントアンダーランプロテクタから前板に対して前方からの荷重が作用し、昇降用ステップが後方へ移動して後板がフロントタイヤの前面に押圧されたタイヤ当接状態で、前板と後板との相対移動を規制する。車両の側部に対する昇降用ステップの支持強度は、キャブへ昇降する乗員からの荷重によって昇降用ステップが所定位置から下降せず、且つタイヤ当接状態において回転中のフロントタイヤから作用する下方への荷重によって昇降用ステップが所定位置から路面上へ下降するように設定されている。下板に対する連結部材の高さは、昇降用ステップが路面上に下降した状態でフロントアンダーランプロテクタと前後で重なる高さ以上に設定されている。
【0007】
上記構成では、昇降用ステップの支持強度は、乗員からの荷重によって所定位置から下降しないように設定されるので、通常時、乗員は昇降用ステップを足場としてキャブへ昇降することができる。
【0008】
車両の前面に他の車両が衝突し、衝撃荷重がフロントアンダーランプロテクタを介して昇降用ステップの前板に作用し、昇降用ステップが車両後方に移動すると、昇降用ステップの後板がフロントタイヤの前面に当接して押圧される。このタイヤ当接状態において、車両が完全に停止せずフロントタイヤが回転していると、昇降用ステップの後板とフロントタイヤの前面との間に動摩擦力が作用し、昇降用ステップの後板はフロントタイヤの回転方向に下方への荷重を受ける。昇降用ステップの支持強度は、この下方への荷重によって所定位置から路面上に下降するように設定されているので、昇降用ステップは所定位置での姿勢を維持したまま路面上へ下降し、フロントアンダーランプロテクタとフロントタイヤとの間で挟まれた状態で路面上を摺動する。昇降用ステップが路面上に下降した後の連結部材は、フロントアンダーランプロテクタと前後で重なる高さ以上で前後方向に延びているので、前板と後板との相対移動は連結部材と下板とによって規制され、前板と後板との間の前後方向の距離の短縮が抑制される。従って、フロントアンダーランプロテクタの端部の後方への過度な変形が昇降用ステップによって抑制され、他の車両のもぐり込みを防止することができる。また、フロントタイヤの弾性力によってフロントアンダーランプロテクタに入力する衝突エネルギを吸収することができる。
【0009】
また、昇降用ステップの下板の下面には、路面との動摩擦係数を低減させる加工が施されてもよい。
【0010】
上記構成では、昇降用ステップの下板の下面が路面上を摺動する際に両者間に作用する動摩擦力が低減されるので、路面上に下降して摺動する昇降用ステップの姿勢が安定する。従って、他の車両のもぐり込みの防止やフロントタイヤを利用した衝突エネルギの吸収を確実に行うことができる。
【0011】
また、下板に対する連結部材の高さは、昇降用ステップが路面上に下降した状態でフロントアンダーランプロテクタと前後で重なる高さに設定されてもよい。
【0012】
上記構成では、昇降用ステップが路面上に下降した後の連結部材は、フロントアンダーランプロテクタと前後で重なるので、昇降用ステップの前板の前後において衝撃荷重の入力位置と連結部材とが近接する。従って、入力した衝撃荷重を連結部材に直接的に作用させることができ、前板と後板との相対移動を連結部材によって確実に規制して、前板と後板との間の前後方向の距離の短縮を確実に抑制することができる。従って、他の車両のもぐり込みの防止やフロントタイヤを利用した衝突エネルギの吸収を確実に行うことができる。
【0013】
また、昇降用ステップの下板の下面の前部は、前上方向に傾斜していてもよい。
【0014】
上記構成では、路面上に突起等の障害物が存在する場合、路面上に下降して摺動する昇降用ステップは、前上方向に傾斜する下板の下面に案内されて、障害物の上方を円滑に移動する。従って、路面上を摺動する昇降用ステップの姿勢が安定し、他の車両のもぐり込みの防止やフロントタイヤを利用した衝突エネルギの吸収を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、他の車両との衝突時において、フロントタイヤを利用してフロントアンダーランプロテクタの端部の後方への過度な変形を規制し他の車両のもぐり込みを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の車両の前部構造を示す側面図である。
【図2】図1の昇降用ステップがタイヤ当接状態である時の側面図である。
【図3】図1の昇降用ステップが路面上に下降した状態である時の側面図である。
【図4】図3の車両の上面図である。
【図5】昇降用ステップの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中のFRは車両前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の進行方向の前後を意味し、左右方向は車両の進行方向前方を向いた状態での左右を意味する。
【0018】
図1及び図4に示すように、本実施形態に係わるキャブオーバートラック(車両)1は、キャブ2と、メインフレーム3と、フロントアンダーランプロテクタ(以下、FUPと称する)5と、フロントアンダーランプロテクタブラケット6と、昇降用ステップ7と、ブラケット8と、フロントタイヤ9等を備えている。
【0019】
メインフレーム3は、車両1の車幅方向両側で車両前後方向に延びており、クロスメンバ4によって、左右各メインフレーム3の前端部間が連結されている。メインフレーム3の前端部には、下方へ延びる左右一対のフロントアンダーランプロテクタブラケット6が固定されている。FUP5は、矩形筒状であり、フロントアンダーランプロテクタブラケット6の前面に固定されて車幅方向に延びている。車両前部にはFUP5の前端部を覆うフロントバンパ10が設けられている。フロントタイヤ9は、メインフレーム3の車幅方向外側に配置されてメインフレーム3に支持され、キャブ2の下部に固定されたフェンダ11によって上半分を覆われている。
【0020】
昇降用ステップ7は、車幅方向外側が開口する箱形状であり、FUP5とフロントタイヤ9との間の所定位置に配置され、管状のブラケット8によって車体側に支持されている。なお、昇降用ステップ7とブラケット8とは、車両1の前端部の左右両側にそれぞれ配置されており、右側と左側とがそれぞれ同様の構成を有するため、以下ではその一方(右側)について説明し、他方(左側)についての説明を省略する。
【0021】
昇降用ステップ7は、板状の金属部材である前板12、後板13、上板14、下板15、連結板(連結部材)16及び側板17を有する。前板12は、FUP5の端部後面に近接して対向し上下方向に延びている。後板13は、フロントタイヤ9の前面9aと対向し上下方向に延びている。下板15の前端と後端とは、前板12の下端と後板13の下端とにそれぞれ溶接等によって固着され、下板15は、前板12の下端縁と後板13の下端縁とを連結している。下板15は、路面30と対向して前方向に延び、下板15の前部は、前上方向に傾斜している。連結板16は、下板15と上板14との間で前後方向に延び、その両端がそれぞれ前板12の内面と後板13の内面に固着され、前板12と後板13とを連結している。側板17は、前板12、後板13、上板14、下板15及び連結板16の車幅方向内側の端縁にそれぞれ固着されている。下板15の下面15aには、路面30との動摩擦係数を低減するための加工が施されている。本実施形態では、路面30よりも軟質な樹脂板18が下板15の外面を覆うように固着され、樹脂板18の下面(下方に露出する表面)が下板15の下面15aとして機能する。下面15a(樹脂板18の表面)の前部も、下板15の前部と同様に前上方に傾斜している。
【0022】
昇降用ステップ7の下板15と連結板16との間には、前後方向に延びる平板状の第1ステップ19が設けられている。第1ステップ19の両端部は、前板12の内面と後板13の内面とにそれぞれ溶接等によって固定され、第1ステップ19は、前板12と後板13とを連結している。昇降用ステップ7の上板14の上面には、前後に延びる平板状の第2ステップ20が固定されている。第1ステップ19と第2ステップ20とは、キャブ2へ昇降する乗員の足場として機能する。
【0023】
上板14、下板15、連結板16、側板17及び第1ステップ19は、車両1の衝突によってFUP5から前板12に対して前方からの荷重が作用し、昇降用ステップ7が後方へ移動して後板13がフロントタイヤ9の前面9aに押圧されたタイヤ当接状態において、前板12と後板13との相対移動を規制する強度を有し、昇降用ステップ7の変形を抑制する。
【0024】
ブラケット8は、フランジ状の一端8a及び他端8bを一体的に有している。ブラケット8の一端8aは、メインフレーム3の外側部に溶着等によって固着され、他端8bは、昇降用ステップ7の側板17にボルト及びナット(図示省略)によって締結固定されている。ブラケット8は、一端8aから他端8bへ向かって、車幅方向外側へ延び、曲折して斜め前下方へ延び、再び曲折して車幅方向外側へ延びている。
【0025】
ブラケット8による昇降用ステップ7の支持強度は、キャブ2へ昇降する乗員からの荷重によって昇降用ステップ7が所定位置から下降せず、タイヤ当接状態において回転中のフロントタイヤ9から作用する下方への荷重(乗員からの荷重よりも大きい荷重)によって昇降用ステップ7が所定位置から路面30上へ下降するように設定されている(図3参照)。本実施形態では、ブラケット8の他端8bと昇降用ステップ7の側板17との締結力(ボルトの剪断強度)は、乗員からの荷重が作用した場合には、ボルトが破断せずに両者の締結固定状態を確実に維持し、フロントタイヤ9から下方への荷重が作用した場合には、ボルトが破断して両者の締結固定状態を解除するように設定されている。従って、フロントタイヤ9から下方への荷重が作用すると、昇降用ステップ7は、ブラケット8から分離して下降する。なお、ブラケット8の一端8aとメインフレーム3の外側部との固着力は、フロントタイヤ9から下方への荷重が作用した場合であっても、両者の固着状態を確実に維持するように設定されている。
【0026】
昇降用ステップの下板15に対する連結板16の高さは、昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態で、FUP5と連結板16とが前後で重なる高さに設定されている。すなわち、昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態では、連結板16の下面16bは、FUP5の上面5aよりも下方に位置し、連結板16の上面16aは、FUP5の下面5bよりも上方に位置する(図3参照)。
【0027】
本実施形態では、乗員のキャブ2への昇降時に昇降用ステップ7に負荷される荷重に対して、昇降用ステップ7はブラケット8によって所定位置に支持されるので、通常時、乗員は昇降用ステップ7を足場としてキャブ2へ昇降することができる。
【0028】
車両1の前面に他の車両が衝突し、衝撃荷重がFUP5を介して昇降用ステップ7の前板12に作用し、昇降用ステップ7が車両後方に移動すると、昇降用ステップ7の後板13がフロントタイヤ9の前面9aに当接して押圧される。このタイヤ当接状態において、車両1が完全に停止せずフロントタイヤ9が回転していると、昇降用ステップ7の後板13とフロントタイヤ9の前面9aとの間に動摩擦力が作用し、昇降用ステップ7の後板はフロントタイヤ9の回転方向に下方への荷重を受ける。下方への荷重を受けた昇降用ステップ7は、ブラケット8から分離し、姿勢を維持したまま路面30上に下降し、FUP5とフロントタイヤ9との間で挟まれた状態で路面30上を摺動する。昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態において、上板14、下板15、連結板16、側板17及び第1ステップ19は、前板12と後板13との相対移動を規制し、昇降用ステップ7の変形を抑制するので、前板12と後板13との相対移動が規制され、前板12と後板13との間の前後方向の距離の短縮が抑制される。さらに、連結板16は、前板12を介してFUP5と前後で重なるので、昇降用ステップ7の前板12の前後において衝撃荷重の入力位置と連結板16とが近接する。このため、入力した衝撃荷重を連結板16に直接的に作用させることができ、前板12と後板13との相対移動を連結板16によって確実に規制して、前板12と後板13との間の前後方向の距離の短縮を確実に抑制することができる。従って、FUP5の端部の後方への過度な変形が昇降用ステップ7によって抑制され、他の車両のもぐり込みを防止することができる。また、フロントタイヤ9の弾性力によってFUP5に入力する衝突エネルギを吸収することができる。
【0029】
また、昇降用ステップ7の下板15の下面15aが路面30よりも軟質な樹脂板18によって覆われているので、昇降用ステップ7が路面30上を摺動する際に、樹脂板18の表面が路面30によって削り取られることによって、昇降用ステップ7と路面30との動摩擦係数が低減する。従って、昇降用ステップ7と路面30との間に作用する動摩擦力が低減し、昇降用ステップ7の姿勢が安定する。その結果、前板12と後板13との相対移動が昇降用ステップ7によって確実に規制され、前板12と後板13との間の前後方向の距離の短縮が確実に抑制され、他の車両のもぐり込みを防止することができる。
【0030】
また、昇降用ステップ7の下板15の下面15a(樹脂板18の前部の表面)は、前上方向に傾斜しているので、路面30上に突起等の障害物が存在する場合であっても、路面30上を摺動する昇降用ステップ7は、前上方向に傾斜する下板15の下面15aに案内されて、障害物の上方を円滑に移動する。従って、路面30上を摺動する昇降用ステップ7の姿勢が安定する。その結果、前板12と後板13との相対移動が連結板16によって確実に規制され、前板12と後板13との間の前後方向の距離の短縮が確実に抑制され、FUP5の端部の後方への過度な変形が昇降用ステップによって抑制され、他の車両のもぐり込みを防止することができる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、車両1と他の車両との衝突時において、フロントタイヤ9を利用して、FUP5の端部の過度な変形を規制し、他の車両のもぐり込みを防止できる。また、フロントタイヤ9の弾性力によってFUP5に入力する衝突エネルギを吸収することができる。
【0032】
なお、昇降用ステップ7の下板15の下面15aと路面30との動摩擦係数を低減するために下面15aに施す加工は本実施形態に限定されず、例えば下板15の下面15aを平滑に加工してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、下板15の前部全体が前上方向に傾斜しているが、下板15の前部の下面15aのみを前上方向に傾斜させてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、タイヤ当接状態において昇降用ステップ7の後板13がフロントタイヤ9の回転方向に下方への荷重を受けた際に、昇降用ステップ7をブラケット8から分離させて昇降用ステップ7を下降させたが、例えば、ブラケット8をメインフレーム3から分離させてもよく、ブラケット8を中間で破断させてもよい。また、乗員からの荷重では伸長せず、フロントタイヤ9から作用する下方への荷重によって伸長するようにブラケット8の強度を設定し、ブラケット8の下方への伸長によって昇降用ステップ7を下降させてもよい。
【0035】
また、連結部材(連結板16)の形状は板状に限定されず、例えば管状部材や矩形筒状部材等であってもよい。また、昇降用ステップ7を、複数の板状の金属部材を固着することによって形成しているが、例えば金属材の押し出し成形等により一体的に形成してもよい。
【0036】
また、昇降用ステップの下板15に対する連結板16の高さを、昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態でFUP5よりも上方に位置するように設定してもよい。
【0037】
また、昇降用ステップ7の前板12と後板13とを、5枚の板状部材(上板14、下板15、連結板16、側板17及び第1ステップ19)によって連結したが、これらの板状部材のうち、下板14の上方に配置される1つの板状部材(上板14と連結板16と第1ステップ19とのうちの1つ)と下板14とを除く他の板状部材は、適宜省略可能である。例えば、前板12と後板13とを上板14及び下板15のみによって連結する場合、下板15に対する上板14の高さを、昇降用ステップ7が路面30上に下降した状態でFUP5と前後で重なる高さ以上に設定することによって、上板14を連結部材として機能させればよい。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、貨物車両などの大型車両の前部構造として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:キャブオーバートラック(車両)
2:キャブ
3:メインフレーム
5:フロントアンダーランプロテクタ
7:昇降用ステップ
8:ブラケット
9:フロントタイヤ
9a:フロントタイヤの前面
12:前板
13:後板
15:下板
15a:下板の下面
16:連結板(連結部材)
17:側板
18:樹脂板
30:路面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端下部に支持されて車幅方向に延びるフロントアンダーランプロテクタと、
前記フロントアンダーランプロテクタと前記車両のフロントタイヤとの間で前記車両の側部の所定位置に支持されて前記車両のキャブへ昇降する乗員の足場となる昇降用ステップと、を備え、
前記昇降用ステップは、前記フロントアンダーランプロテクタの後面に対向して上下方向に延びる前板と、前記車両のフロントタイヤの前面に対向して上下方向に延びる後板と、前後方向に延びて路面と対向し前記前板の下端縁と前記後板の下端縁とを連結する下板と、該下板の上方で前後方向に延びて前記前板と前記後板とを連結する連結部材とを有し、
前記下板と前記連結部材とは、前記車両の衝突によって前記フロントアンダーランプロテクタから前記前板に対して前方からの荷重が作用し、前記昇降用ステップが後方へ移動して前記後板が前記フロントタイヤの前面に押圧されたタイヤ当接状態で、前記前板と前記後板との相対移動を規制し、
前記車両の側部に対する前記昇降用ステップの支持強度は、前記キャブへ昇降する乗員からの荷重によって前記昇降用ステップが前記所定位置から下降せず、且つ前記タイヤ当接状態において回転中の前記フロントタイヤから作用する下方への荷重によって前記昇降用ステップが前記所定位置から路面上へ下降するように設定され、
前記下板に対する前記連結部材の高さは、前記昇降用ステップが路面上に下降した状態で前記フロントアンダーランプロテクタと前後で重なる高さ以上に設定されている
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の前部構造であって、
前記昇降用ステップの下板の下面には、路面との動摩擦係数を低減させる加工が施されている
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の前部構造であって、
前記下板に対する前記連結部材の高さは、前記昇降用ステップが路面上に下降した状態で前記フロントアンダーランプロテクタと前後で重なる高さに設定されている
ことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の車両の前部構造であって、
前記昇降用ステップの下板の下面の前部は、前上方向に傾斜している
ことを特徴とする車両の前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−144130(P2012−144130A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3277(P2011−3277)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)