説明

車両の前部車体構造

【課題】アッパノーズ部による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図り、詳しくは、アッパノーズ部とエアバッグとで歩行者を保護する領域を前後方向に分担して、コンパクトなエアバッグによりフードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図る車両の前部車体構造を提供する。
【解決手段】フロントノーズ部50と、中間ノーズ部51と、フロントウインド52とを備え、フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、アッパノーズ部56とフロントノーズ部50の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグ71を配設したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、このフロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、この中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラスと同意)と、を備えたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の空力特性を向上させるためには、車両前方から後方に傾斜して延びるノーズパネルの高さ位置を低く設定すると共に、このノーズパネルの前端部上方にスポイラを配設するとよいことが知られている。
すなわち、特許文献1に開示されているように、傾斜した上面を有して配設されたノーズパネルと、このノーズパネルの傾斜上面から上方に離間して配設されたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)とを具備し、このバンパ部材がスポイラ機能を有するように形成したものがある。
【0003】
この特許文献1に開示された従来構造によれば、車両前部構造を低ノーズ化して、ボンネットラインを低く抑え、上記バンパ部材にスポイラとしての機能を発揮させながら、ノーズパネルとバンパ部材との間の開口から導入した走行風を、ボンネット、フロントウインドガラス、ルーフに沿って流し、空力抵抗の低減を図って、空力特性の向上を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ノーズパネルと、該ノーズパネルの上方に配置されスポイラ機能を備えたバンパ部材(フローティングタイプのスポイラ)との間に開口を有する車両において、上述のバンパ部材の下側に、走行風導入用の開口を設け、走行風を有効利用して、エンジンルームの冷却、またはオイルクーラの冷却、あるいは、エンジンへの吸気導入を行なうように構成したものが開示されている。
この特許文献2に開示された従来構造によれば、空力特性の向上と、走行風の有効利用とを両立させることができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、車両の前端ノーズ部より上方に離間して車幅方向に延びるスポイラが配設された車両の前部車体構造において、上記スポイラには上方からの荷重を緩衝する緩衝部が設けられ、かつ、上記スポイラの下面と前端ノーズ部上面との間に走行風流入用の開口部を形成した構造が開示されている。
この特許文献3に開示された従来構造によれば、スポイラによる空力特性の確保と、緩衝部による歩行者保護との両立を図ることができる。
【0006】
しかし、この特許文献3に開示された従来構造においては、緩衝部が設けられたスポイラの配設部位としての前端ノーズ対応部においては、車両と歩行者との接触時に、スポイラに傾倒する歩行者を確実に保護することができるが、歩行者(特に、子供に対して身長が相対的に高い大人の頭部)がスポイラ後端よりもさらに後方に傾倒した場合には、歩行者保護性能が低くなる。
このような車両の前部車体構造においては、空力特性のさらなる向上が要請されると共に、これと併せて、車両が歩行者と接触、衝突した場合、フード(ボンネットと同意)全域において当該歩行者を適切に保護するという安全性(歩行者保護性能)のさらなる向上が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−69861号公報
【特許文献2】特開平9−86449号公報
【特許文献3】特開2001−138963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を設け、このアッパノーズ部とフロントノーズ部の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグを配設することで、アッパノーズ部による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図ることができ、詳しくは、アッパノーズ部とエアバッグとで歩行者を保護する領域を前後方向に分担することができて、コンパクトなエアバッグによりフードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図ることができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、該アッパノーズ部と上記フロントノーズ部の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグを配設したものである。
【0010】
上記構成によれば、アッパノーズ部の下面とフロントノーズ部の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者と接触した際、車両前部上側に倒れる歩行者を上記アッパノーズ部にて受け止めるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0011】
しかも、車両と歩行者との接触が検出、または、予知された時、上記エアバッグが展開して、車両前部を覆うので、このエアバッグにて歩行者を保護することができる。
要するに、アッパノーズ部による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図ることができ、詳しくは、アッパノーズ部とエアバッグとで歩行者を保護する領域を前後方向に分担することができ、コンパクトなエアバッグにより、フードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記エアバッグは、上記アッパノーズ部より後方に展開し、少なくとも上記中間ノーズ部を含む後方部を覆うよう展開可能に構成されたものである。
【0013】
上記構成によれば、上記アッパノーズ部でノーズ全体の前方部において歩行者を保護することができ、上記エアバッグで中間ノーズ部を含む後方部において歩行者を保護することができる。
因に、アッパノーズ部では主として子供の頭部を適切に保護することができ、エアバッグでは主として子供よりも身長が高い大人の頭部を適切に保護することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記アッパノーズ部は、上下方向の荷重に対してエネルギ吸収可能に形成されたものである。
上記構成によれば、アッパノーズ部が上下方向の衝撃エネルギ(荷重)を吸収するので、特に、フロント側において歩行者の頭部を適切に保護することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記エアバッグは、上記中間ノーズ部後部と上記フロントウインドパネルとの間のカウル部を上方から覆うよう展開可能に構成されたものである。
上記構成によれば、カウル部は剛性が高いので、このカウル部をエアバッグで上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記エアバッグは、上記カウル部に設けられたワイパ装置の回動軸を上方から覆うよう展開可能に構成されたものである。
上記構成によれば、剛性が高い突出物としてのワイパ装置の回動軸(いわゆる、ワイパピボット)を、エアバッグで上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記エアバッグは、上記フロントウインドパネルの側部に設けられたフロントピラーを上方から覆うよう展開可能に構成されたものである。
上記構成によれば、フロントピラーは剛性が高いので、このフロントピラーをエアバッグで上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記エアバッグは、左右のフロントピラーに対応して分割配置されたものである。
上記構成によれば、エアバッグのコンパクト化を図りつつ、左右のフロントピラーに対するエアバッグ展開性の向上を図ることができ、フロントピラーをエアバッグで上方からより一層適確に覆うことができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成したものである。
上述の所定の角度は、水平面に対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定してもよい。
【0020】
上記構成によれば、整流通路の形成と併せて、整流下部面部、中間ノーズ部上面およびフロントウインドパネル前面を所定角度で連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度により、ノーズライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに、低ノーズ化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設されたものである。
上記構成によれば、中間ノーズ部の下方にパワートレインを配設したので、該パワートレイン前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を設け、このアッパノーズ部とフロントノーズ部の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出、もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグを配設したので、アッパノーズ部による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図ることができ、詳しくは、アッパノーズ部とエアバッグとで歩行者を保護する領域を前後方向に分担することができて、コンパクトなエアバッグによりフードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
空力性能向上と歩行者保護性能向上との両立を図り、かつ、コンパクトなエアバッグにて歩行者保護性能を保障するという目的を、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造において、上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、該アッパノーズ部と上記フロントノーズ部の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグを配設するという構成にて実現した。
【実施例1】
【0024】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示すが、まず、図1〜図3を参照して、車両の全体構造について詳述する。ここで、図1は車両の側面図、図2は車両の平面図、図3は車両の正面図である。
【0025】
図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュパネルとしてのダッシュロアパネル3を設け、このダッシュロアパネル3の下部には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を、一体または一体的に連設している。上記フロアパネル4は車室2の床面を形成するパネルであって、該フロアパネル4の後部には、上方に立上がるキックアップ部5および側面視凹形状のリヤシートパン6を形成し、このリヤシートパン6にはバルクヘッド7を介してリヤフロア8(フロアパネル)を連設している。
【0026】
上述のフロアパネル4の車幅方向中央部には、図1、図2に示すように、車室2内へ突出して、車両の前後方向に延びるトンネル部9を設けている。このトンネル部9は、上述のダッシュロアパネル3とバルクヘッド7との間を車両の前後方向に延びていて、該トンネル部9(フロアトンネル)は車体剛性の中心となるものである。
なお、上記トンネル部9の上部には、該トンネル部9の上部に沿って、車両の前後方向に延びるトンネルメンバ(いわゆる、ハイマウント・バックボーン・フレーム)を設けて、下部車体剛性の向上を図るように構成してもよい。
【0027】
また、上述のフロアパネル4の左右両サイドには、図2、図3に示すように、車両の前後方向に延びるサイドシル10を接合固定している。このサイドシル10は、サイドシルインナ11と、サイドシルアウタ12とを接合して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面13を有する車体剛性部材である。なお、必要に応じて該サイドシル閉断面13にはサイドシルレインフォースメントを設けてもよい。
【0028】
さらに、図1、図2に示すように、上述のダッシュロアパネル3とキックアップ部5との前後方向中間部において、上述のフロアパネル4上には、トンネル部9の縦壁と、サイドシルインナ11の縦壁と、の間を車幅方向に連結する左右のフロアクロスメンバ14,14を設け、このフロアクロスメンバ14とフロアパネル4との間には、車幅方向に延びる閉断面15を形成している。
【0029】
図2に示すように、上述のトンネル部9とサイドシル10との間の車幅方向の中間部において、フロアパネル4の下部には、車両の前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム16,16を接合固定して、このフロアフレーム16と上述のフロアパネル4との間には、車両の前後方向に延びる閉断面を形成している。
【0030】
また、リヤフロア8の下部両サイドには、図1、図2に示すように、車両の前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム17,17(リヤフレーム)を接合固定して、このリヤサイドフレーム17とリヤフロア8との間には、車両の前後方向に延びる閉断面を形成すると共に、これら左右一対のリヤサイドフレーム17,17の前部を、左右一対のサイドシル10,10の後部と車両前後方向にオーバラップする位置まで延設させている。
【0031】
一方、エンジンルーム1の左右両サイドを車両の前後方向に延びるフロントフレームとしての左右一対のフロントサイドフレーム18,18を設けている。これら左右のフロントサイドフレーム18,18は、図1に示すように、その後部がダッシュロアパネル3の前面に沿って下方に延び、該フロントサイドフレーム18の後端部は上述のフロアフレーム16の前端部に連結されていて、このフロントサイドフレーム18とフロアフレーム16とは、図2に示すように、車両の前後方向に連続するものである。
ここで、上述のサイドシル10、フロアクロスメンバ14、フロアフレーム16、リヤサイドフレーム17、フロントサイドフレーム18はそれぞれ車体剛性部材であって、これらの各車体剛性部材により、車体剛性を確保すべく構成している。
【0032】
また、図2に示すように、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、車幅方向に延びる閉断面構造のフロントクロスメンバ19(いわゆるNo.1.5クロスメンバ)を設ける一方、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方には、クラッシュカン20,20(衝突エネルギ吸収部材)を介して、車幅方向に延びるバンパレイン21を設けている。
【0033】
このバンパレイン21の車幅方向中間部には、後方に後退する中間後退部21Aを形成すると共に、バンパレイン21の両端部にも後方に後退するサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを形成し、該バンパレイン21の平面から見た全体形状をW字状と成している。上述のサイド後退部21B,21Cを設けることで、車両前部のデザイン性の自由度を確保するように構成している。
さらに、バンパレイン21の中間後退部21Aと上述のフロントクロスメンバ19の中央部との間を、クラッシュカン22(衝突エネルギ吸収部材)で連結している。
【0034】
図1〜図3に示すように、上述のフロントクロスメンバ19の近傍において、左右一対のフロントサイドフレーム18,18間には、後部にファン23を備えたラジエータ24を前低後高状に傾斜させてスラント配設している。このラジエータ24は後述するエンジン25の前方に配設されたものである。
【0035】
ところで、図1、図2に示すように、エンジンルーム1内の後部およびトンネル部9の車外側(つまり下側)には、エンジン25とトランスミッション26とから成るパワートレイン27を配設し、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心部に後退配置して、所謂フロント・ミッドシップ・エンジン車と成している。
【0036】
また、上述のトンネル部9の車外側には、トランスミッション26の出力を、リヤディファレンシャル装置28に伝達するプロペラシャフト29を設け、上述のリヤディファレンシャル装置28の差動出力を左右のドライブシャフト30,30(図2参照)を介して左右の後輪31,31に差動伝達すべく構成して、FR(前部機関後輪駆動)タイプの車両と成している。
【0037】
一方、図2に示すように、車室2内において、フロアクロスメンバ14と上下方向に対応する位置には、運転席シート32と助手席シート33とを車幅方向に並設している。これらの前列シートは、シートクッション34とシートバック35とをそれぞれ備えたバケットシート(セパレート・シート)である。この実施例では、運転席シート32を左側に配設して、左ハンドル車と成しているが、右ハンドル車と成してもよいことは勿論である。
【0038】
また、車室2内において、リヤシートパン6に対応する位置には、リヤシート36を配設している。この後列シートは、シートクッション37とシートバック38とを備えたベンチタイプのシートであるが、リヤシート36は、セパレートシートで構成してもよい。
なお、図中、39はステアリングホイール、40はインストルメントパネル、41はステアリングラック、42はフロントサスペンション(図示せず)を支持するサブフレーム、43は前輪、44はリヤシートパン6の下部およびバルクヘッド7の後部に設けられた燃料タンクである。
【0039】
次に、車両の前部車体構造について詳述する。
図4は図1の要部拡大側面図、図5は車両前部の外観斜視図であって、この車両は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、このフロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、この中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネル(フロントウインドガラスと同意、但し、ガラス製、合成樹脂の何れでもよく、以下単にフロントウインドと略記する)52と、を備えている。
【0040】
図3、図4に示すように、上述のフロントウインド52は、左右のフロントピラー53と、ルーフ部54の前端と、カウル部70上端との間に形成されたフロントウインド開口を覆うもので、このフロントウインド52の下端部は、カウル部70で支持される一方、図2に示すように、フロントウインド52の下方には該フロントウインド52を払拭する一対のワイパ装置55,55が設けられている。
【0041】
図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を設けている。
このアッパノーズ部56は、エネルギ吸収可能なEA部材(エネルギ・アブソーバ部材)としての発泡ウレタン部材57と、この発泡ウレタン部材57の外部を覆う樹脂製の外皮58とから構成されていて、上下方向の荷重に対してエネルギ吸収可能に形成されている。
【0042】
図3に示すように、上述のアッパノーズ部56は、その車幅方向中央が上方に位置するなだらかな曲面形状に形成されており、該アッパノーズ部56の車幅方向両サイド部は、上述のフロントノーズ部50を介して、左右のフロントフェンダ59,59と連続するように構成されている。
【0043】
図2に示すように、このアッパノーズ部56は、その中央部前端が上述の中間後退部21Aよりも前方に位置し、その中央部後端が前輪43の中心と略対応する部位に位置するように設定されている。
【0044】
また図3、図4に示すように、上述のフロントノーズ部50とアッパノーズ部56との間には、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成している。すなわち、この実施例のアッパノーズ部56は、バンパ機能と、スポイラ機能と、歩行者保護機能とを兼ねるように構成している。
【0045】
さらに、図4に示すように、上述の整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上述の中間ノーズ部51上面と、上述のフロントウインド52前面とを、所定の角度θで略連続した形状に形成している。
【0046】
この実施例では、上述の整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、図4に示すように、水平面(HOR)に対して約20度から25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させている。
ここで上記角度θは20〜25度のうちで、22度が最も好ましい。また、上記角度θを20〜25度の範囲内に設定すると、空気抗力係数をCd=0.27だけ改善することができ、空力特性の向上を図ることができた。
【0047】
一方、車両を駆動するパワートレイン27、特にそのエンジン25は上述の中間ノーズ部51の下方に配設されており、エンジン25前方のスペース自由度の拡大を図るように構成している。すなわち、中間ノーズ部51の下方にエンジン25を配設することで、重量物としてのエンジン25を可及的車両中心側に寄せてレイアウトして、ヨー慣性モーメントの低減を図ることができるのは勿論、エンジン25よりも前方のスペース自由度の拡大を図って、フロントノーズ部50の高さや、傾斜角度などのレイアウトの自由度を確保すべく構成している。
【0048】
また、図3、図4に示すように、上述の一対のフロントサイドフレーム18,18は、フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方に設けられており、一対のフロントサイドフレーム18,18の前方に設けられたバンパレイン21における中間後退部21Aは、上述のフロントノーズ部50の下方において後方に後退するように形成されており、この後退構造により、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定して、低ノーズ化を図ると共に、フロントオーバハングの短縮を図るように構成している。
さらに、図2で示したように、バンパレイン21の両端部にも後方に後退する左右のサイド後退部21B,21Cをそれぞれ形成することで、車両前部のデザインの自由度向上を図るように構成している。
【0049】
ところで、上述のアッパノーズ部56とフロントノーズ部50の何れか一方(この実施例1では、フロントノーズ部50)に、エアバッグユニット71(いわゆる、フードエアバッグ装置)を配設している。
このエアバッグユニット71は、インフレータ72(inflator、ガス発生器)と、エアバッグ73(図面では図示の便宜上、展開した状態で示している)とを備え、車両と歩行者との接触を検出、もしくは予知した時に、エアバッグ73が展開して、車両前部を覆うように構成している。
【0050】
また、上述のエアバッグユニット71は、図4に示すように、アッパノーズ部56とフロントノーズ部50との間に形成された整流通路60を通過する走行風(図4の点線矢印参照)の抵抗とならないように、ユニット上面がフロントノーズ部50上面と面一状になるように、車幅方向の中央部において、該フロントノーズ部50の下部にエアバッグユニット71が設けられている。
さらに、エアバッグ73の展開時に、このエアバッグ73がアッパノーズ部56と干渉することなく、円滑に展開されるように、上記エアバッグユニット71はフロントノーズ部50の後部に設けられている。
【0051】
図1〜図4にエアバッグ73の展開状態を示すように、このエアバッグ73はアッパノーズ部56よりも後方に展開し、少なくとも上述の中間ノーズ部51を含む後方部を覆うように展開するものである。
詳しくは、上述のエアバッグ73は図1〜図4に示すように、中間ノーズ部51の後部と、フロントウインド52と、の間のカウル部70を上方から覆うように展開すると共に、該カウル部70に設けられたワイパ装置55,55の回動軸としてのワイパピボット74,74を上方から覆うように展開するものである。
【0052】
ここで、上述のエアバッグユニット71は、車両と歩行者との接触を、センサ(図示せず)で検出、または予知した時、イグナイタ(igniter)に引火し、インフレータ72に内蔵させた化学物質に着火し、この化学物質から発生するガスを、フィルタを通過させてエアバッグ73内に入れて、図1〜図4に仮想線で示すように、該エアバッグ73を展開させることで、歩行者を保護するものである。
なお、図5において、75はリトラクタブル式のヘッドランプである。
【0053】
このように構成した車両の前部車体構造の作用について説明する。
車両の前進走行時、該車両には前方からの走行風が相対的に吹付けられ、この走行風は車体前部に当って、アッパノーズ部56の上側を吹抜ける風と、整流通路60内を吹抜ける風(図4の点線矢印参照)とに分れ、翼理論から風の吹抜け長さの短い面から長い面に向けて、押下げ力(いわゆる、ダウンフォース)が発生する。
【0054】
このため、アッパノーズ部56を備えた車両の前部車体構造は、全体的に路面に対して押付けられるような力を受け、前輪43,43の接地力が増加し、走行安定性が増す。このように上述のアッパノーズ部56による空力特性が確保され、車両の走行安定性の向上によって、走行性能が改善される。
【0055】
しかも、整流下部面部60aと、中間ノーズ部51上面と、フロントウインド52前面とを、水平面(HOR)に対して約20〜25度の間の角度θで前低後高状に傾斜させたので、空気抗力係数の改善により、空力特性をさらに向上させることができた。
【0056】
一方、車両と歩行者との接触が検出、もしくは、予知された際には、エアバッグユニット71のエアバッグ73が図1〜図4に仮想線で示すように展開するので、このエアバッグ73と、上下方向の荷重に対してエネルギ吸収可能に形成されたアッパノーズ部56と、の双方により歩行者を保護することができる。
【0057】
このように、図1〜図5で示した実施例の車両の前部車体構造は、車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部50と、該フロントノーズ部50と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部51と、該中間ノーズ部51の後方に設けられた車室2の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインド52と、を備えた車両の前部車体構造であって、上記フロントノーズ部50より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部56を備え、該アッパノーズ部56と上記フロントノーズ部50の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出、もしくは、予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグ(エアバッグユニット71,エアバッグ73参照)を配設したものである(図4参照)。
【0058】
この構成によれば、アッパノーズ部56の下面とフロントノーズ部50の上面との間には、走行風の通過が可能な通路が形成され、該アッパノーズ部56がスポイラとして作用するので、空力特性の向上を図ることができる。
また、車両が歩行者と接触した際、車両前部上側に倒れる歩行者を上記アッパノーズ部56にて受け止めるので、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0059】
しかも、車両と歩行者との接触が検出、または、予知された時、上記エアバッグ73が展開して、車両前部を覆うので、このエアバッグ73にて歩行者を保護することができる。
要するに、アッパノーズ部56による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図ることができ、詳しくは、アッパノーズ部56とエアバッグ73とで歩行者を保護する領域を前後方向に分担することができ、コンパクトなエアバッグユニット71により、フードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図ることができる。
【0060】
また、上記エアバッグ73は、上記アッパノーズ部56より後方に展開し、少なくとも上記中間ノーズ部51を含む後方部を覆うよう展開可能に構成されたものである(図4参照)。
【0061】
この構成によれば、上記アッパノーズ部56でノーズ全体の前方部において歩行者を保護することができ、上記エアバッグ73で中間ノーズ部51を含む後方部において歩行者を保護することができる。
因に、アッパノーズ部56では、主として大人よりも身長が低い子供の頭部を適切に保護することができ、展開されたエアバッグ73では、主として子供よりも身長が高い大人の頭部を適切に保護することができる。換言すれば、アッパノーズ部56で子供保護エリアを形成し、展開されたエアバッグ73で大人保護エリアを形成することができる。
【0062】
さらに、上記アッパノーズ部56は、上下方向の荷重に対してエネルギ吸収可能に形成されたものである(図4参照)。
この構成によれば、アッパノーズ部56が上下方向の衝撃エネルギ(荷重)を吸収するので、特に、フロント側において歩行者の頭部(特に、大人に対して身長が相対的に低い子供の頭部)を適切に保護することができる。
【0063】
しかも、上記エアバッグ73は、上記中間ノーズ部51後部と上記フロントウインド52との間のカウル部70を上方から覆うよう展開可能に構成されたものである(図4参照)。
この構成によれば、カウル部70は剛性が高いので、このカウル部70をエアバッグ73で上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0064】
また、上記エアバッグ73は、上記カウル部70に設けられたワイパ装置55の回動軸(ワイパピボット74参照)を上方から覆うよう展開可能に構成されたものである(図2、図4参照)。
この構成によれば、剛性が高い突出物としてのワイパ装置55の回動軸(いわゆる、ワイパピボット74)を、エアバッグ73で上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0065】
さらに、上記フロントノーズ部50と上記アッパノーズ部56との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路60を形成し、該整流通路60の下面部を形成する整流下部面部60aと、上記中間ノーズ部51上面と、上記フロントウインド52前面と、を所定の角度θで略連続した形状に形成したものである(図4参照)。
上述の所定の角度θは、水平面(HOR)に対して約20度から25度の範囲、望ましくは、22度に設定している。
【0066】
この構成によれば、整流通路60の形成と併せて、整流下部面部60a、中間ノーズ部51上面およびフロントウインド52前面を所定角度θで連続させたので、空力特性の向上を図ることができ、また、上記所定角度θにより、ノーズライン全体を低く設定することができ、前方視認性の向上を図ることができ、さらに、低ノーズ化によりフロントオーバハングの短縮を図ることもできる。
【0067】
加えて、上記中間ノーズ部51の下方には車両を駆動するパワートレイン27(特に、エンジン25参照)が配設されたものである(図4参照)。
この構成によれば、中間ノーズ部51の下方にパワートレイン27(特に、エンジン25)を配設したので、該パワートレイン27前方のスペース自由度が拡大し、フロントノーズ部50の高さや傾斜角度などのレイアウトの自由度が確保できる。
【0068】
また、実施例で開示したように、上記フロントノーズ部50および中間ノーズ部51の下方には、車幅方向で離間して車両の前後方向に延びるフロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)が一対設けられ、該フロントフレーム(フロントサイドフレーム18参照)の前方には車幅方向に延びるバンパレイン21が設けられると共に、該バンパレイン21の中間部には上記フロントノーズ部50下方において後方に後退する後退部(中間後退部21A参照)が形成される、という構成を採用すると、フロントノーズ部50の先端部の高さを低く設定することができ、より一層良好な低ノーズ化を図ることができる。
【0069】
すなわち、後退部を設けない場合には、フロントノーズ部50の先端部、特に、先端中央を下げると、バンパレイン21とフロントノーズ部50の先端部とが干渉するが、実施例で開示したように、バンパレイン21に上記後退部(中間後退部21A参照)を形成すると、フロントノーズ部50の先端を下げても、両者(バンパレイン21とフロントノーズ部50)の干渉を回避することができる。
【0070】
図6はエアバッグユニット71によるエアバッグ73展開構造の他の実施例を示す平面図であって、上記エアバッグ73の展開時に、該エアバッグ73で中間ノーズ部51、カウル部70、ワイパピボット74に加えて、左右のフロントピラー53,53の上下方向の中間部およびそれよりも前側の部分を上方から一体的に覆うように構成したものである。
【0071】
このように構成すると、フロントピラー53は剛性が高い車体剛性部材であるが、このフロントピラー53のうち、歩行者接触時に該歩行者との当接度合が多いと見込まれるフロントピラー53の上下方向の中間部およびそれよりも前側の部分をエアバッグ73で上方から覆うことができるので、歩行者保護性能のさらなる向上を図ることができる。
【0072】
図6で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、図1〜図5で示した先の実施例と同様であるから、図6において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
図7〜図11は車両の前部車体構造の他の実施例を示すものであり、図7は側面図、図8は平面図、図9は正面図、図10は図7の要部拡大図、図11は車両前部の外観形状を示す斜視図である。
先の各実施例(図1〜図6参照)においては、エアバッグユニット71を車幅方向中央においてフロントノーズ部50に1つのみ設けたが、図7〜図11で示すこの実施例においては、複数、例えば、合計2つのエアバッグユニット71,71を設け、これらの各エアバッグユニット71,71を、図8、図9、図11に示すように、左右のフロントピラー53,53に対応して左右に分割して配置したものである。
【0074】
この実施例においても、上述の各エアバッグユニット71,71は、図10に示すように、アッパノーズ部56とフロントノーズ部50との間に形成された整流通路60を通過する走行風(図10の点線矢印参照)の抵抗とならないように、該エアバッグユニット71の上面がフロントノーズ部50上面と面一状になるように該フロントノーズ部50下部に各エアバッグユニット71,71がそれぞれ設けられている。
また、エアバッグ73の展開時に、このエアバッグ73がアッパノーズ部56と干渉することなく、円滑に展開されるように、上記エアバッグユニット71はフロントノーズ部50の後部に設けられている。
【0075】
さらに、2つのエアバッグユニット71,71は、図8に示すように左右のフロントピラー53,53と対向するように、フロントノーズ部50の車両前後方向に対してスラント配置されている。
しかも、この実施例においては、図7〜図10にエアバッグ73を展開した状態で示すように、該エアバッグ73は、フロントウインド52の左右両側部に設けられた左右のフロントピラー53,53を、その全長にわたって上方から覆うように展開するものである。
【0076】
また、車両左側のエアバッグ73は、図8に示すように、同側のフロントピラー53の全体を上方から覆うのみならず、2つのワイパピボット74,74を同時に上方から覆う展開形状に構成されている。
【0077】
このように、図7〜図11で示した実施例の車両の前部車体構造においては、上記エアバッグ73は、上記フロントウインド52の左右両側部に設けられた左右のフロントピラー53,53をその上方から覆うよう展開可能に構成されたものである(図8、図9参照)。
この構成によれば、フロントピラー53は剛性が高いので、このフロントピラー53をエアバッグ73で上方から覆うことにより、歩行者保護を図ることができる。
【0078】
また、上記エアバッグユニット71は、左右のフロントピラー53,53に対応して分割配置されたものである(図8参照)。
この構成によれば、エアバッグユニット71のコンパクト化を図りつつ、左右のフロントピラー53,53に対するエアバッグ73の展開性の向上を図ることができ、フロントピラー53,53をエアバッグ73,73で上方からより一層適確に覆うことができる。
【0079】
因に、1つのエアバッグユニット71により左右のフロントピラー53,53の全体を同時に覆うためには、該エアバッグユニット71およびエアバッグ73の展開形状が極めて大型化し、実用上難点が発生するが、エアバッグユニット71を左右の各フロントピラー53,53に対応して、合計2つ設けることにより、コンパクトな左右のエアバッグユニット71,71にて左右の両フロントピラー53,53の全体を、その上方から適確に覆うことができるものである。
図7〜図11で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の各実施例と同様であるから、図7〜図11において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0080】
図12、図13は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものであり、図12は側面図、図13は車両前部の外観形状を示す斜視図である。
先の各実施例(図1〜図11参照)においては、エアバッグユニット71をフロントノーズ部50の下面に配設したが、図12、図13に示すこの実施例では、1つのエアバッグユニット71をアッパノーズ部56中央の後部に一体的に配設したものである。
【0081】
この場合、アッパノーズ部56の樹脂製の外皮58で、エアバッグユニット71のハウジングを兼ねると共に、該エアバッグユニット71の配設により、アッパノーズ部56の上下を通過する走行風に対して空気抵抗が増加しないように、アッパノーズ部56の前部から後部にかけて外皮58に段差が形成されないように構成している。
【0082】
このように構成しても、車両と歩行者との接触が検出、または、予知された時、インフレータ72の作用によりエアバッグ73が図12に仮想線で示すように展開され、このエアバッグ73で、中間ノーズ部51、カウル部70、ワイパピボット74をその上方から覆うので、該エアバッグ73により歩行者を保護することができる。
【0083】
つまり、この実施例においても、アッパノーズ部56による空力性能向上と、歩行者保護性能向上との両立を図ることができ、さらに詳しくは、アッパノーズ部56とエアバッグ73とで歩行者を保護する領域を前後方向に分担することができ、コンパクトなエアバッグユニット71により、フードの略全域において歩行者を適切に保護して、歩行者保護性能の向上を図ることができる。この実施例において、平面から見たエアバッグ73の展開形状は、図2と同等である。
【0084】
図12、図13で示したこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例とほぼ同様であるから、図12、図13において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
なお、図13で示すエアバッグユニット71の配設構造に代えて、図14に示すように、アッパノーズ部56の後部に、左右のフロントピラー53,53と対応すべく合計2つのエアバッグユニット71,71を内設し、図7〜図10で示したように各エアバッグ73,73で左右のフロントピラー53,53の全体をその上方から覆うように構成してもよい。
【0085】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントウインドパネルは、実施例のフロントウインド52に対応し、
以下同様に、
エアバッグは、エアバッグユニット71、エアバッグ73に対応し、
ワイパ装置の回動軸は、ワイパピボット74に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の車両の前部車体構造を示す側面図
【図2】車両の前部車体構造を示す平面図
【図3】車両の前部車体構造を示す正面図
【図4】図1の要部拡大側面図
【図5】車両前部の外観形状を示す概略斜視図
【図6】エアバッグ展開構造の他の実施例を示す平面図
【図7】車両の前部車体構造の他の実施例を示す側面図
【図8】図7の平面図
【図9】図7の正面図
【図10】図7の要部拡大側面図
【図11】図7の車両前部の外観形状を示す概略斜視図
【図12】車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示す拡大側面図
【図13】図12の車両前部の外観形状を示す概略斜視図
【図14】エアバッグユニットの配設構造の他の実施例を示す車両前部の外観斜視図
【符号の説明】
【0087】
2…車室
27…パワートレイン
50…フロントノーズ部
51…中間ノーズ部
52…フロントウインド(フロントウインドパネル)
53…フロントピラー
55…ワイパ装置
56…アッパノーズ部
60…整流通路
60a…整流下部面部
70…カウル部
71…エアバッグユニット
73…エアバッグ
74…ワイパピボット(ワイパ装置の回動軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方から後方に傾斜して延びるフロントノーズ部と、該フロントノーズ部と連続して後方に延びて車体前方外面を形成する中間ノーズ部と、該中間ノーズ部の後方に設けられた車室の前方を車外が視認可能となるように覆ったフロントウインドパネルと、を備えた車両の前部車体構造であって、
上記フロントノーズ部より上方に所定間隔離間して車幅方向に延びるアッパノーズ部を備え、
該アッパノーズ部と上記フロントノーズ部の何れか一方に、車両と歩行者との接触を検出もしくは予知した時に、車両前部を覆うように展開するエアバッグを配設した
車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記エアバッグは、上記アッパノーズ部より後方に展開し、少なくとも上記中間ノーズ部を含む後方部を覆うよう展開可能に構成された
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記アッパノーズ部は、上下方向の荷重に対してエネルギ吸収可能に形成された
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記エアバッグは、上記中間ノーズ部後部と上記フロントウインドパネルとの間のカウル部を上方から覆うよう展開可能に構成された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記エアバッグは、上記カウル部に設けられたワイパ装置の回動軸を上方から覆うよう展開可能に構成された
請求項4記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記エアバッグは、上記フロントウインドパネルの側部に設けられたフロントピラーを上方から覆うよう展開可能に構成された
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
上記エアバッグは、左右のフロントピラーに対応して分割配置された
請求項6記載の車両の前部車体構造。
【請求項8】
上記フロントノーズ部と上記アッパノーズ部との間に、走行風を通過させて整流可能な整流通路を形成し、
該整流通路の下面部を形成する整流下部面部と、上記中間ノーズ部上面と、上記フロントウインドパネル前面と、を所定の角度で略連続した形状に形成した
請求項1〜7の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項9】
上記中間ノーズ部の下方には車両を駆動するパワートレインが配設された
請求項1〜8の何れか1に記載の車両の前部車体構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−166746(P2009−166746A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8662(P2008−8662)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】