説明

車両の前部車体構造

【課題】パワートレインを車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させるとともに、エンジンルーム内に配設された車両用補機が車両の衝突時に損傷するのを効果的に防止できるようにする。
【解決手段】車室1とエンジンルーム2とを区画するダッシュパネル3に車体の後方側へ凹入する凹入部5が設けられるとともに、この凹入部5内に車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記エンジンルーム2の下方には前部車輪用のサスペンションクロスメンバ24が設置され、このサスペンションクロスメンバ24にはパワートレイン11の前方部位を前後に区画する隔壁部材19が取り付けられて車幅方向に延設された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルに車体の後方側へ凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1〜3に示されるように、車室と、その前方にダッシュパネルにより区画されたエンジンルームとが設けられ、上記エンジンルーム内にエンジン本体およびトランスミッション等からなるパワートレインが配設された車両において、上記ダッシュパネルの車幅方向中央部に、その両側部より車両後方に向けて凹入する凹入部を設け、この凹入部内に上記エンジン本体の後端部およびトランスミッション等を配設し、このパワートレインを車体の後方側に位置させることにより、車両の走行時におけるヨー慣性モーメントを低減して操縦安定性を向上させることが行われている。
【特許文献1】特開2003−326981号公報
【特許文献2】特開2005−028911号公報
【特許文献3】特開2005−029057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1〜3に開示されているようにダッシュパネルに形成された凹入部内に上記パワートレインを配設した場合には、車両の走行時における操縦安定性を向上させることができるとともに、エンジンルーム内の有効スペースを効果的に拡大することが可能であるため、このスペースを効果的に利用して前部車体の剛性を向上させ、車両の走行時における操縦安定性を向上させ得るようにすることが望まれていた。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、エンジンルーム内の有効スペースを効果的に利用して前部車体の剛性を向上させ、車両の走行時における操縦安定性を向上させることができる車両の前部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルに車体の後方側へ凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記エンジンルームの下方には前部車輪用のサスペンションクロスメンバが設置され、このサスペンションクロスメンバにはパワートレインの前方部位を前後に区画する隔壁部材が取り付けられて車幅方向に延設されたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、上記隔壁部材の少なくとも一部により、サスペンションクロスメンバの前面部が覆われるように構成されたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の前部車体構造において、上記エンジンルーム内に左右一対のフロントサイドフレームが車体の前後方向に延びるように配設されるとともに、この左右のフロントサイドフレームを連結するように上記隔壁部材が配設されたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記隔壁部材が、上下に分割された上方部材と下方部材とにより構成されたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の前部車体構造において、上記隔壁部材の下方部材がサスペンションクロスメンバに着脱可能に取り付けられたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記隔壁部材が遮熱性を有する素材により形成されるとともに、この隔壁部材の前方側に排気ガス浄化用キャタライザーからなるパワートレイン用補機が配設されたものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記パワートレインが、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記パワートレインの一部をダッシュパネル凹入部内に配設することにより、エンジンルーム内の重量物である上記パワートレインを、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。また、上記エンジンルームの下方に設置された前部車輪用のサスペンションクロスメンバに、パワートレインの前方部位を前後に区画する隔壁部材を取り付けて車幅方向に延設することによりサスペンションクロスメンバを効果的に補強するように構成したため、車両の走行時に、前部車輪からサスペンションアーム等を介して入力された大きな荷重に応じて上記サスペンションクロスメンバが変形するのを抑制し、これによって車両の操縦安定性を効果的に向上できる等の利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、隔壁部材の少なくとも一部により、サスペンションクロスメンバの前面部を覆うように構成したため、このサスペンションクロスメンバに対する上記隔壁部材の取付作業を容易に行うことができるとともに、この隔壁部材により上記サスペンションクロスメンバを効果的に補強して車両の操縦安定性を充分に向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、エンジンルーム内に配設された左右一対のフロントサイドフレームを上記隔壁部材によって互いに連結するように構成したため、上記フロントサイドフレームの前後方向中間部を上記隔壁部材により効果的に補強することができ、車両の走行時に上記フロントサイドフレームに前部車輪からサスペンション部材を介して大きな荷重が入力された場合等に、前部車体が変形するのを抑制して操縦安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0015】
請求項4に係る発明では、上下に分割された上方部材と下方部材とにより上記隔壁部材を構成したため、上記上方部材および下方部材を容易に製造することができるとともに、その搬送作業および組付作業等を容易に行うことができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、隔壁部材の下方部材をサスペンションクロスメンバに着脱可能に取り付けたため、サスペンションクロスメンバにサスペンションアーム等と上記下方部材とを組み付けた状態で、上記サスペンションクロスメンバの左右両端部をフロントサイドフレームに固定する等により、上記サスペンションアーム等と下方部材とを同時に前部車体に組み付けることができるとともに、エンジンルーム内に配設された各種機器の保守または点検作業を行う際に、上記サスペンションクロスメンバから下方部材を取り外すことにより、エンジンルーム内に配設された各種機器の点検作業等を容易に行うことができる。
【0017】
請求項6に係る発明では、遮熱性を有する素材により上記隔壁部材を形成するとともに、この隔壁部材の前方側に排気ガス浄化用キャタライザーからなるパワートレイン用補機を配設したため、車両の走行時にエンジンルーム内に導入された走行風によって上記排気ガス浄化用のキャタライザーを効果的に冷却することができるとともに、この排気ガス浄化用のキャタライザーにおいて発生した反応熱がエンジンルーム内の後方部に及ぶのを、上記隔壁部材により効果的に抑制できるという利点がある。
【0018】
請求項7に係る発明では、エンジンルーム内において縦置き式に配設された重量物であるエンジン本体およびトランスミッションを有するパワートレインを可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図4は、本発明に係る車両の前部車体構造の実施形態を示している。この車両には、車室1とエンジンルーム2とを区画するダッシュパネル3が設けられるとともに、このダッシュパネル3の下端部にフロアパネル4の前端部が接続されている。上記ダッシュパネル3の車幅方向中央部に、車体の後方側へ凹入する凹入部5が形成されるとともに、上記フロアパネル4の車幅方向中央部に、上方に向けて膨出するトンネル部6が形成され、かつその左右に、運転席シート7および助手席シート8が配設されている。
【0020】
上記エンジンルーム2内には、左右一対のフロントサイドフレーム9,9が車体の前後方向に延びるように配設されるとともに、その先端部にバンパレインフォースメント10が車幅方向に延びるように設置されている。また、上記エンジンルーム2の後方部には、縦置き式に配設されたロータリエンジン等からなるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを有するパワートレイン11が配設されている。
【0021】
そして、上記エンジン本体12の後部が、ダッシュパネル3に形成された凹入部5内に配設されるとともに、上記トランスミッション13およびこれに接続されたプロペラシャフト14と、パワープラントフレーム15とが上記トンネル部6内に配設されている。そして、上記パワートレイン11の駆動力がプロペラシャフト14を介して図外の後部車輪に伝達されることにより、この後部車輪が駆動されるように構成されている。
【0022】
また、上記パワートレイン11の前方部には、左右のフロントサイドフレーム9,9を互いに連結するように車幅方向に延設されて上記パワートレイン11の前方部位を前後に区画する隔壁部材19が設けられている。この隔壁部材19は、所定の剛性と遮熱性とを有する素材、例えばカーボンファイバー樹脂またはアルミニウム合金等により形成されるとともに、図5に示すように、上下に分割された上方部材20と下方部材21とにより構成されている。
【0023】
すなわち、上記フロントサイドフレーム9の車内側壁面と、その上方に配設されたエプロンレインフォースメント22の車内側壁面には、上方部材20の左右両端部が取付ボルト等を介して脱着可能に取り付けられる取付ブラケット23,23が設けられている。また、図示を省略したサスペンションアーム等が取り付けられる前部車輪用のサスペンションクロスメンバ24の前面に取付ボルト等を介して上記下方部材21の左右両端部が脱着可能に取り付けられることにより、この下方部材21により上記サスペンションクロスメンバ24の前面が覆われるように構成されている。
【0024】
そして、上記取付ブラケット23,23に上方部材20の左右両端部が取り付けられることにより、上記フロントサイドフレーム9およびエプロンレインフォースメント22を連結するように上方部材20が設置された状態で、上記下方部材21が前面に取り付けられたサスペンションクロスメンバ24がフロントサイドフレーム9に固定されることにより、上記上方部材20の下端部と下方部材21の上端部とが突き合わされてパワートレイン11の前方部位を前後に区画する隔壁部材19が形成されるようになっている。
【0025】
上記隔壁部材19の前方側には、排気ガス浄化用のキャタライザー等からなるパワートレイン用補機25と、ラジエータ等からなるパワートレイン冷却用の熱交換器本体16および冷却ファン17を有する熱交換器18とが配設されている。また、上記下方部材21の上端部には、上記パワートレイン用補機25をパワートレイン11に接続する排気管26が挿通される挿通孔27,28と、上記熱交換器本体16に対する冷却水供給管の挿通孔(図示せず)とが形成されている。
【0026】
上記排気管26は、エンジン本体12の一側面部から車体の前方側に延びる前方延長部29と、その前端部からエンジン本体12の他側辺部側に向けて車幅方向に延びる側方延長部30と、その側端部から車体の後方側に延びる後方延長部31とを有している。そして、上記排気管26の前方延長部29および後方延長部31が、上記上方部材20と下方部材21との接続部に形成された挿通孔27,28からなる挿通部を挿通した状態で設置されることにより、上記排気管26の側方延長部30に設けられたパワートレイン用補機25が隔壁部材19の前方側に配設されるようになっている。
【0027】
また、上記隔壁部材19とダッシュパネル3との間には、車両の走行に必要な機能を有する重要部品、例えば車載バッテリ35、アンチロックブレーキシステム用の油圧制御装置(ハイドロリックユニット)36および燃料ポンプ等からなる車両用補機が、上記パワートレイン11の側方位置であって上記隔壁部材19の側端部と正面視で重複する位置に配設されている。
【0028】
上記のように車室1とエンジンルーム2とを区画するダッシュパネル3に車体の後方側へ凹入する凹入部5が設けられるとともに、この凹入部5内に車輪を駆動するパワートレイン11の一部が配設された車両において、上記エンジンルーム2の下方に前部車輪用のサスペンションクロスメンバ24を設置し、このサスペンションクロスメンバ24にパワートレイン11の前方部位を前後に区画する隔壁部材19を取り付けて車幅方向に延設したため、パワートレイン11を車両の後方側に配設して操縦安定性を向上させることができるとともに、エンジンルーム2内のスペースを有効に利用して車体の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0029】
すなわち、上記パワートレイン11を構成するエンジン本体12の後部等を上記ダッシュパネル3の凹入部5内に配設することにより、エンジンルーム2内において縦置き式に配設された重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を有するパワートレイン11を、可及的に車両の後方側に配設することができるため、車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性および走行安定性を向上させることができる。
【0030】
そして、上記のようにパワートレイン11を車両の後方側に配設することによりスペース的に余裕か生じたエンジンルーム2内に、上記パワートレイン11の前方部位を前後に区画する隔壁部材19を配設し、この隔壁部材19をサスペンションクロスメンバ24に取り付けて車幅方向に延設するように構成したため、エンジンルーム2の下方部に沿って車幅方向に延びるように設置されたサスペンションクロスメンバ24を上記隔壁部材19により効果的に補強することができる。したがって、車両の走行時に、前部車輪からサスペンションアーム等を介して入力された大きな荷重より上記サスペンションクロスメンバ24が変形するのを抑制して車両の操縦安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0031】
また、上記実施形態では、隔壁部材19の少なくとも一部、つまり隔壁部材19の下方部材21により、サスペンションクロスメンバ24の前面部を覆うように構成したため、このサスペンションクロスメンバ24に取り付けられるサスペンションアーム等の設置スペースを確保しつつ、上記隔壁部材19の取付作業を容易に行うことができるとともに、この隔壁部材19により上記サスペンションクロスメンバ24を効果的に補強して車両の操縦安定性を充分に向上させることができる。
【0032】
また、上記実施形態に示すように前部車体の剛性を確保するためにエンジンルーム2内に配設された左右一対のフロントサイドフレーム9,9を上記隔壁部材19の上方部材20によって互いに連結するように構成した場合には、ダッシュパネル3を介して基端部が互いに連結されるとともに、バンパレインフォースメント10を介して先端部が互いに連結された上記フロントサイドフレーム9,9の前後方向中間部を上記隔壁部材19により効果的に補強することができる。したがって、車両の走行時に、上記フロントサイドフレーム9,9に前部車輪からサスペンション部材を介して大きな荷重が入力された場合等においても、前部車体が変形するのを抑制して操縦安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0033】
なお、上記隔壁部材19を上下に分割された上方部材20と下方部材21とにより構成した上記実施形態に代え、上記隔壁部材19を一枚の板材で形成することも可能であるが、この場合には、隔壁部材19の製造コストが高く付くとともに、その搬送作業および組付作業を容易に行うことができないという問題がある。このため、上記隔壁部材19を設けることによる前部車体の補強機能を維持しつつ、隔壁部材19の搬送作業および組付作業等を容易に行うことができるようにするためには、上下に分割された上方部材20および下方部材21により上記隔壁部材19を構成することが好ましい。
【0034】
そして、上記実施形態に示すように、隔壁部材19の下方部材21をサスペンションクロスメンバ24に対して着脱可能に取り付けるように構成した場合には、上記サスペンションクロスメンバ24に図外のサスペンションアーム等と上記下方部材21とを組み付けた状態で、上記サスペンションクロスメンバ24の左右両端部をフロントサイドフレーム9の下面に固定することにより、上記サスペンションアーム等と下方部材21とを同時に前部車体に組み付けることができる。しかも、エンジンルーム2内に配設された各種機器の保守または点検作業を行う際には、上記サスペンションクロスメンバ24から隔壁部材19の下方部材21を取り外すことにより、上記各種機器の点検作業等を容易に行うことができる。
【0035】
特に、上記実施形態に示すように、フロントサイドフレーム9およびエプロンレインフォースメント22等に、隔壁部材19の上方部材20が脱着可能に取り付けられる取付ブラケット23,23からなる取付部材を設け、エンジンルーム2内に配設された各種機器の保守または点検作業を行う際に、上記取付部材から隔壁部材19の上方部材20を取り外すことできるように構成した場合には、エンジンルーム2内に配設された各種機器の点検作業等を、より容易に行うことができる。
【0036】
また、上記実施形態では、遮熱性を有する素材により上記隔壁部材19を形成するとともに、この隔壁部材19の前方側に排気ガス浄化用キャタライザーからなるパワートレイン用補機25を配設したため、このパワートレイン用補機25において発生した反応熱や騒音が、エンジンルーム2内の後方部または車室内等に伝播するのを上記隔壁部材19により効果的に阻止できるという利点がある。しかも、フロントグリルの開口部等からなるエンジンルーム2内に導入された走行風によって上記パワートレイン用補機25を効果的に冷却できるため、このパワートレイン用補機25がその反応熱に応じて過度に加熱されることにより早期に熱劣化するのを防止できるとともに、パワートレイン用補機25の温度が適正値以上となって排気ガスの浄化機能が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0037】
さらに、上記実施形態では、隔壁部材19とダッシュパネル3との間に車両の走行に必要な機能を有する重要部品である車載バッテリ35およびアンチロックブレーキシステム用の油圧制御装置36等からなる車両用補機を、正面視で上記隔壁部材19と重複する位置で上記パワートレイン11の側方位置に配設したため、車両の衝突時に、上記隔壁部材19の前方部に位置するフロントサイドフレーム9の前方部等を変形させることにより衝撃荷重を効果的に吸収しつつ、この衝撃荷重が上記車両用補機の設置部に及ぶのを上記隔壁部材19により抑制することできる。したがって、車両の衝突時に作用する衝撃荷重により上記車載バッテリ35および油圧制御装置36等からなる車両用補機が破壊されて車両の走行が不可能になったり、所定の重量を有するこれらの車両用補機が車両の後方側に押動されて車室1内に進入したりするという事態の発生を効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
また、上記実施形態では、エンジンルーム2内に縦置き式に配設されるエンジン本体12と、その後方に接続されたトランスミッション13とを備えたパワートレイン11の一部を、ダッシュパネル3に形成された後方側への凹入部5内に配設したため、重量物である上記エンジン本体12およびトランスミッション13を、可及的に車両の後方側に配設して車両の重心を車体の中心部側に位置させることにより、車両の走行時に作用するヨー慣性モーメントを効果的に低減して操縦安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る車両の前部車体構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記前部車体構造の実施形態を示す平面断面図である。
【図3】上記前部車体構造の実施形態を示す正面断面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】隔壁部材等の具体的構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 車室
2 エンジンルーム
3 ダッシュパネル
5 凹入部
9 フロントサイドフレーム
11 パワートレイン
12 エンジン本体
13 トランスミッション
19 隔壁部材
20 上方部材
21 下方部材
24 サスペンションクロスメンバ
25 パワートレイン用補機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とエンジンルームとを区画するダッシュパネルに車体の後方側へ凹入する凹入部が設けられるとともに、この凹入部内に車輪を駆動するパワートレインの一部が配設された車両において、上記エンジンルームの下方には前部車輪用のサスペンションクロスメンバが設置され、このサスペンションクロスメンバにはパワートレインの前方部位を前後に区画する隔壁部材が取り付けられて車幅方向に延設されたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記隔壁部材の少なくとも一部により、サスペンションクロスメンバの前面部が覆われるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記エンジンルーム内に左右一対のフロントサイドフレームが車体の前後方向に延びるように配設されるとともに、この左右のフロントサイドフレームを連結するように上記隔壁部材が配設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記隔壁部材が、上下に分割された上方部材と下方部材とにより構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記隔壁部材の下方部材がサスペンションクロスメンバに着脱可能に取り付けられたことを特徴とする請求項4に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記隔壁部材が遮熱性を有する素材により形成されるとともに、この隔壁部材の前方側に排気ガス浄化用キャタライザーからなるパワートレイン用補機が配設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
上記パワートレインは、エンジンルーム内に縦置き式に配設されるエンジン本体と、その後方に接続されたトランスミッションとを備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−96392(P2009−96392A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271435(P2007−271435)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】