車両の前部車体構造
【課題】この発明は、車両衝突時の衝撃を受け難い位置に手動ポンプを配設することによって、燃料系の損傷をより確実に防止する車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車両前部のエンジンルームER内に燃料タンクFTから燃料ポンプFPに対して手動で燃料を供給するプライミングポンプ14aが設けられた車両の前部車体構造であって、プライミングポンプ14aを、エンジンルームERの後部に設けられたカウルフロントメンバ62の下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域A1の外に配設した。
【解決手段】車両前部のエンジンルームER内に燃料タンクFTから燃料ポンプFPに対して手動で燃料を供給するプライミングポンプ14aが設けられた車両の前部車体構造であって、プライミングポンプ14aを、エンジンルームERの後部に設けられたカウルフロントメンバ62の下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域A1の外に配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンでは、生産ラインでの組付け後最初に車両を始動させる時や、燃料切れ(燃欠)時等において燃料通路にエアが混入している場合、エンジンを始動するために、混入エアを燃料通路から除去しつつ、燃料タンクから燃料ポンプに対して燃料を供給する所謂プライミング作業を行う必要がある。
【0003】
通常のディーゼルエンジンでは、燃料タンクと、燃料タンク内の燃料をインジェクタへ供給する燃料ポンプ(インジェクションポンプ)との間に、例えば、下記特許文献1に開示されているような手動ポンプを設け、乗員等の作業者が手動ポンプを操作することにより、プライミング作業を行えるようにしている。
【特許文献1】特開2006−199102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1では、上述した手動ポンプをプロテクタ部材内に収納するとともに、車両衝突時、プロテクタ部材に車体後方への衝撃が作用した場合には、プロテクタ部材の後方への移動を許容する構成となっている。
【0005】
前記特許文献1によれば、プロテクタ部材のこの後方への移動により、燃料系への衝撃を緩衝してその損傷を効果的に防止できる。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されているものは、あくまでも燃料系に作用する衝撃を緩衝することを重視しているに過ぎず、手動ポンプのエンジンルーム内におけるレイアウトについては十分考慮されていない。
【0007】
実際、車両衝突時における燃料系の損傷を確実に抑制するには、そのレイアウトが重要であり、例えば、車両衝突時においてエンジンが後退する範囲(エンジン後退領域という)や、障害物が車両に対して斜め前方から衝突した場合に前側方から作用する衝撃等を考慮した上で燃料系をレイアウトしなければならない。
【0008】
この発明は、車両衝突時の衝撃を受け難い位置に手動ポンプを配設することによって、燃料系の損傷をより確実に防止する車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両の前部車体構造は、車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造であって、前記手動ポンプを、前記エンジンルームの後部に設けられたカウルメンバの下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域外に配設したものである。
【0010】
この構成によれば、車両衝突時に衝撃を受け難いカウルメンバ下方のエンジン後退領域外に手動ポンプを配設することにより、燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記手動ポンプを、前記カウルメンバの下方におけるダッシュパネルとサスペンションタワーとの間に配設したものである。
【0012】
この構成によれば、サスペンション装置を支持するサスペンションタワー等、元々高剛性とされている車体部材に手動ポンプを配設することにより、車両衝突時の衝撃の影響を最小限に留めることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に押圧可能な可撓性シール部材を設け、該可撓性シール部材を介して前記手動ポンプを押圧可能に構成したものである。
【0014】
この構成によれば、手動ポンプがカウルメンバの下方に配設されているにも関わらず、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方に前記開口部を設けるとともに、この開口部に、シール機能を備えつつ、該開口部から取外し可能な蓋部材を設けたものである。
【0016】
この構成によれば、手動ポンプがカウルメンバの下方に配設されているにも関わらず、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの上部にカウルグリルを設け、該カウルグリルの手動ポンプ上方位置に、部分的に取外し可能な窓部材を設けたものである。
【0018】
この構成によれば、カウルグリルの窓部材を取外すことで、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、車両衝突時に衝撃を受け難いカウルメンバ下方のエンジン後退領域外に手動ポンプを配設することにより、燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、この発明の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す平面図であり、図2は、図1のX−X線矢視断面図、図3は、図1においてカウルグリルを取外した状態を示す図、図4は、セジメンタユニット周辺を前方かつ上方から見た要部拡大斜視図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示し、矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0021】
図1は、エンジンルームERを覆うボンネットを取外した状態を示しており、図1に示す車体前部構造では、左右一対の車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム1、1と、そのフロントサイドフレーム1、1の前端部を車幅方向に延びて連結するバンパーフレーム2と、そのフロントサイドフレーム1、1の中間部外側側方で略上下方向に立設するサスペンションタワー(以下、サスタワーと略記する)3、3と、そのサスタワー3、3の上端外側側方で車体前後方向に延びるエプロンレインフォースメント4、4と、フロントサイドフレーム1、1の後方で車幅方向かつ上下方向に広がってエンジンルームERと車室CBとを仕切るダッシュパネル5と、ダッシュパネル5の上端で車幅方向に延びるカウルボックス6と、を備えている。
【0022】
エンジンルームERは、上述したフロントサイドフレーム1、1、バンパーフレーム2、サスタワー3、3、及びエプロンレインフォースメント4、4により区画され、そこにはエンジンEが搭載されている。本実施形態では、エンジンEとしてディーゼル式のエンジンを想定している。
【0023】
また、図1に示すものは、車室CBの前席の左側(図1における右側)に運転席を配設した場合を想定しており、エンジンルームER内には、エンジンEの車幅方向一方側、具体的には運転席(車体左)側にブレーキの真空倍力装置8が配設され、その前方には、バッテリ9や、不図示のエアクリーナー、ヒューズボックス等が配設される。
【0024】
また、エンジンルームERの後部においては、図2に示すようなダッシュロアパネル51を設け、このダッシュロアパネル51の上端部にはダッシュアッパパネル52の下端部を接合固定し、このダッシュアッパパネル52とダッシュロアパネル51の両者とで、ダッシュパネル5を構成している。
【0025】
上述のダッシュアッパパネル52は車幅方向に延びるパネルであって、このダッシュアッパパネル52の上端部には、車幅方向に延び、カウルボックス6を形成するカウルパネル61後端部を接合固定している。
【0026】
また、エンジンルームERの後部には、ダッシュロアパネル51から前方に向けて延びるカウルフロントメンバ62を設けている。このカウルフロントメンバ62は、ダッシュロアパネル51の上端部の対応部位から前方に向けて延びる横壁部62a(いわゆる底壁部)と、この横壁部62aの前端から上方に向けて延びる縦壁部62bと、この縦壁部62bの上端から前方に延びる水平フランジ部62cと、を一体に形成した車幅方向に延びるメンバとなっている。
【0027】
さらに、上述のカウルフロントメンバ62の前部には、車幅方向に延びるカウルフロントクロスメンバ63を設け、上述のカウルフロントメンバ62と、このカウルフロントクロスメンバ63との間には、車幅方向に延びる閉断面64を形成している。
【0028】
このカウルフロントクロスメンバ63は、その前端が上述のカウルフロントメンバ62の水平フランジ部62cにボルト、ナット等の取付部材10により締結されるとともに、後端部を上述のカウルフロントメンバ62の横壁部62a上面に接合固定しており、これによって上述の閉断面64を形成している。
【0029】
本実施形態では、上述のダッシュアッパパネル52と、カウルパネル61と、カウルフロントメンバ62と、カウルフロントクロスメンバ63とにより、上方が開放された所謂オープンカウル構造の略樋形状のカウルボックス6が構成されている。
【0030】
そして、このカウルボックス6には、後端部がフロントガラス(不図示)の下部に支持されるとともに、前端部がカウルフロントクロスメンバ63に取付けられたカウルグリル11を設けている。
【0031】
このカウルグリル11は、オープンカウル構造のカウルボックス6の上方開口部を、外気導入可能に覆う合成樹脂製のグリルであって、このカウルグリル6は、その一部に図1に示すような多数の通気孔11aを備えている。
【0032】
ここで、カウルグリル11が通気孔11aを備えることで、雨水等がカウルボックス6内に浸入することが考えられるが、カウルボックス6が略樋形状をなしていることで、浸入した雨水等は、カウルフロントメンバ62の横壁部62a上に沿って車幅方向両端部に案内され、最終的には車外へ排出されるようになっている。
【0033】
また、本実施形態では、このカウルグリル11の一部に開口部11bを形成しており、この開口部11bには、通気孔11aと略同型の通気孔12aを備えた窓部材12が嵌め込まれている。
【0034】
窓部材12は、爪嵌合等によりカウルグリル11に固定される一方、作業者によって、図2中二点鎖線で示すようにカウルグリル11から取外すことが可能であり、これによって開口部11bは開閉可能となっている。
【0035】
また、開口部11bの下方には、図2〜図4に示すように、カウルフロントメンバ62の横壁部62aにおいて開口部62dが形成されており、これが、例えばゴム等により構成された可撓性を有するシール部材13によってシールされている。
【0036】
図5は、エンジンと燃料系との接続を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、燃料系フィルタ装置としてのセジメンタユニット14を備えており、これを構成するプライミングポンプ14aが、図2〜図4に示すようにエンジンルームER内の、カウルフロントメンバ62の下方に配設されている。ここで、図3にて斜線で示す領域A1は、車両前面衝突時においてエンジンEが後退する際の後退領域を示しており、上述したプライミングポンプ14aは、エンジン後退領域A1の外側で、かつエンジンEの車幅方向他方側、具体的には助手席(車体右)側に配設されており、具体的には、サスタワー3とダッシュパネル5との間に配設されている。
【0037】
なお、上述した真空倍力装置8やバッテリ9等についても、セジメンタユニット14と同様、図3に示すようにエンジン後退領域A1の外側に配設されており、これらはエンジンEを挟んでプライミングポンプ14aと反対側に配設されている。
【0038】
セジメンタユニット14は、図5に示す燃料タンクFTからの燃料をろ過して燃料ポンプFPへ供給するものであり、主に胴部14bと、胴部14bの上部に設けられたプライミングポンプ14aと、胴部14bの下部に設けられた水抜き用のドレーン14cとを備える。
【0039】
胴部14bには燃料をろ過するろ材等が収納されており、導入管14d(図5参照)から導入される燃料はろ過された後、排出管14e(図5参照)から排出される。プライミングポンプ14aは燃料切れ等が生じた場合に手動でその上部のボタン14fを押圧操作するプライミング作業により燃料ポンプFPへ燃料を供給するためのものである。また、ドレーン14cは、燃料から分離されて胴部14b内に貯留された水分を排出するためのものである。
【0040】
ここで、エンジンEの各気筒には、図5に示すようなインジェクタEaが設けられており、各インジェクタEaは、燃料ポンプFPに接続されている。
【0041】
燃料タンクFT内の燃料は、上述したプライミング作業により燃料ポンプFP内へと送られ蓄圧された後、インジェクタEaには燃料ポンプFP内の高圧燃料が供給される。
【0042】
なお、図5中符号OFRで示す部材は、オーバーフロー通路であり、それぞれセジメンタユニット14、燃料ポンプFPに接続されている。そして、このOFRにより、セジメンタユニット14、燃料ポンプFPの余剰分の燃料が燃料タンクFTへと戻されるようになっている。
【0043】
ところで、本実施形態では、図2〜図4に示すように、プライミングポンプ14a、特にボタン14fの上方に、カウルフロントメンバ62の開口部62d、及びカウルグリル11の開口部11b、窓部材12が位置するようにセジメンタユニット14が配置されている。
【0044】
図6は、カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図であり、図7は、セジメンタユニット周辺を前方かつ車幅方向内方側から見た斜視図である。セジメンタユニット14は、図2、図6、図7に示すように、胴部14bの上方において、その車幅方向の側部に取付部14gが設けられており、L字型のブラケット15を介してプロテクタ部材16に取付けられている。セジメンタユニット14は、その胴部14bがこれを取り囲むプロテクタ部材16と空隙S(図2参照)を有するようにプロテクタ部材16に取付けられている。
【0045】
ここで、プロテクタ部材16は、平面視で略円弧状をなしており、その前端部には、前方及び上方に延びる2つの締結片16a、16bが形成される一方、後端部には、ダッシュロアパネル51に略沿うように車幅方向に延びる締結片16cが形成されている。
【0046】
プロテクタ部材16の前端部では、締結片16a、16bが図6、図7に示すように、ボルト、ナット等の取付部材17、17によりサスタワー3の車幅方向内側側面に締結される一方、後端部では、図7に示すように締結片16cがボルト、ナット等の上下2つ取付部材18、18によりダッシュロアパネル51の前面に締結されている。
【0047】
本実施形態では、プライミングポンプ14aがエンジン後退領域A1の外側に配設されることで、車両が前面衝突した時、プライミングポンプ14aが後退するエンジンEから衝撃を受けることを防止できる。
【0048】
さらに、障害物が車両に対して斜め前方から衝突した時には、図3にて斜線で示す領域A2、つまり、バンパーフレーム2からエプロンレインフォースメント4にかけて広がる領域が主に衝撃を受けると想定されるが、本実施形態では、プライミングポンプ14aがカウルフロントメンバ62の下方に配設されることで、これを領域A2の外側に配置することができ、プライミングポンプ14aが斜め前方から衝撃を受けることを防止できる。
【0049】
このように、車両衝突時において衝撃を受け難いカウルフロントメンバ62下方の、エンジン後退領域A1の外側にプライミングポンプ14aを配設することで、セジメンタユニット14等の燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【0050】
また、プライミングポンプ14aがサスタワー3とダッシュパネル5との間に配設されているが、このように、サスペンション装置(不図示)を支持するサスタワー3等、元々高剛性とされている車体部材間にプライミングポンプ14aを配設することにより、車両衝突時の衝撃の影響を最小限に留めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、作業者がボンネットを開け、図8に示すように、窓部材12を取外すことで、カウルボックス15内に手Hを延ばすことが可能である。そして、ボタン14fの上方にシール部材13やカウルグリル11の開口部11bが位置していることにより、シール部材13を押圧してこれを可撓性変形させると、シール部材13を介してボタン14fを押圧操作することができる。
【0052】
ここで、燃料切れ等が生じた場合には、上述したようにプライミングポンプ14a上部のボタン14fを手動で押圧操作することによりプライミング作業を行うこととなるが、開口部11b、窓部材12、及びシール部材13により、プライミングポンプ14aがカウルフロントメンバ62の下方に配設されているにも関わらず、プライミングポンプ14aの作業性を確保することができる。
【0053】
また、開口部62dをシール部材13によって塞ぐことで、カウルグリル11から浸入した雨水等がカウルフロントメンバ62の横壁部62a上を通過する際、この雨水等がエンジンルームER側へ落下することを確実に防止できる。
【0054】
但し、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、開口部62dの縁部に嵌合可能なゴム製のシール部113aを備えた蓋部材113を設けてもよい。
【0055】
図9に示す構成では、蓋部材113により開口部62dを塞いでいる時、シール部113aによってシール機能が発揮される一方、作業者が窓部材12を取外してカウルボックス15内に手Hを延ばすことにより、蓋部材113を開口部62dから取外すことも可能である。これにより、作業者は、プライミングポンプ14aのボタン14fに直接アクセスすることができ、プライミングポンプ14aの作業性を確保することができる。
【0056】
ここで、図9中に示す部材113bは、蓋部材113に取付けられた紐部材であり、蓋部材113を取外す際には、この紐部材113bに手Hをかけ、これを引き上げるようにすればよい。
【0057】
なお、その他の作用効果は、図1〜図8を参照して説明した最初の実施形態と同様である。また、図9に示す実施形態において、最初の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0058】
また、本発明は、上述した各実施形態のように、カウルグリル11に開口部11bを形成することには必ずしも限定されない。例えば、カウルグリル11を車幅方向において複数の部品により分割構成しつつ、プライミングポンプ14aの上方位置にあるものを取外し可能に構成してもよい。
【0059】
また、本発明は、上述した各実施形態のように、カウルフロントメンバ62の上方から手Hを延ばしてプライミング作業を行うことには必ずしも限定されない。例えば、図10、図11に示すプライミングポンプ214aのように、その軸線方向が略車体前後方向を向くように配設して、ボタン214fを車体後方に押圧操作できるように構成してもよい。
【0060】
この場合、カウルグリル11及びカウルフロントメンバ62では、図11に示すように、開口部11b(図1、図2等参照)、62d(図2、図3等参照)に相当するものが設けられていないものの、作業者は、図10に示すように、カウルフロントメンバ62よりも下方で前方から手Hを延ばすことにより、ボタン214fを車体後方に押圧操作することができる。
【0061】
なお、その他の作用効果は、図1〜図8を参照して説明した最初の実施形態と同様である。また、図10に示す実施形態において、最初の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の手動ポンプは、プライミングポンプ14a、214aに対応し、
以下同様に、
カウルメンバは、カウルフロントメンバ62に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す平面図。
【図2】図1のX−X線矢視断面図。
【図3】図1においてカウルグリルを取外した状態を示す図。
【図4】セジメンタユニット周辺を前方かつ上方から見た要部拡大斜視図。
【図5】エンジンと燃料系との接続を示す図。
【図6】カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図。
【図7】セジメンタユニット周辺を前方かつ車幅方向内方から見た斜視図
【図8】プライミング作業を説明するための説明図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す側断面図。
【図10】この発明のさらに他の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す図であり、カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図。
【図11】プライミング作業を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0064】
3…サスペンションタワー
5…ダッシュパネル
11…カウルグリル
12…窓部材
13…シール部材
14…セジメンタユニット
14a、214a…プライミングポンプ
62…カウルフロントメンバ
62d…開口部
113…蓋部材
A1…エンジン後退領域
FP…燃料ポンプ
ER…エンジンルーム
FT…燃料タンク
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンでは、生産ラインでの組付け後最初に車両を始動させる時や、燃料切れ(燃欠)時等において燃料通路にエアが混入している場合、エンジンを始動するために、混入エアを燃料通路から除去しつつ、燃料タンクから燃料ポンプに対して燃料を供給する所謂プライミング作業を行う必要がある。
【0003】
通常のディーゼルエンジンでは、燃料タンクと、燃料タンク内の燃料をインジェクタへ供給する燃料ポンプ(インジェクションポンプ)との間に、例えば、下記特許文献1に開示されているような手動ポンプを設け、乗員等の作業者が手動ポンプを操作することにより、プライミング作業を行えるようにしている。
【特許文献1】特開2006−199102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1では、上述した手動ポンプをプロテクタ部材内に収納するとともに、車両衝突時、プロテクタ部材に車体後方への衝撃が作用した場合には、プロテクタ部材の後方への移動を許容する構成となっている。
【0005】
前記特許文献1によれば、プロテクタ部材のこの後方への移動により、燃料系への衝撃を緩衝してその損傷を効果的に防止できる。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示されているものは、あくまでも燃料系に作用する衝撃を緩衝することを重視しているに過ぎず、手動ポンプのエンジンルーム内におけるレイアウトについては十分考慮されていない。
【0007】
実際、車両衝突時における燃料系の損傷を確実に抑制するには、そのレイアウトが重要であり、例えば、車両衝突時においてエンジンが後退する範囲(エンジン後退領域という)や、障害物が車両に対して斜め前方から衝突した場合に前側方から作用する衝撃等を考慮した上で燃料系をレイアウトしなければならない。
【0008】
この発明は、車両衝突時の衝撃を受け難い位置に手動ポンプを配設することによって、燃料系の損傷をより確実に防止する車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両の前部車体構造は、車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造であって、前記手動ポンプを、前記エンジンルームの後部に設けられたカウルメンバの下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域外に配設したものである。
【0010】
この構成によれば、車両衝突時に衝撃を受け難いカウルメンバ下方のエンジン後退領域外に手動ポンプを配設することにより、燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、前記手動ポンプを、前記カウルメンバの下方におけるダッシュパネルとサスペンションタワーとの間に配設したものである。
【0012】
この構成によれば、サスペンション装置を支持するサスペンションタワー等、元々高剛性とされている車体部材に手動ポンプを配設することにより、車両衝突時の衝撃の影響を最小限に留めることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に押圧可能な可撓性シール部材を設け、該可撓性シール部材を介して前記手動ポンプを押圧可能に構成したものである。
【0014】
この構成によれば、手動ポンプがカウルメンバの下方に配設されているにも関わらず、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方に前記開口部を設けるとともに、この開口部に、シール機能を備えつつ、該開口部から取外し可能な蓋部材を設けたものである。
【0016】
この構成によれば、手動ポンプがカウルメンバの下方に配設されているにも関わらず、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、前記カウルメンバの上部にカウルグリルを設け、該カウルグリルの手動ポンプ上方位置に、部分的に取外し可能な窓部材を設けたものである。
【0018】
この構成によれば、カウルグリルの窓部材を取外すことで、手動ポンプの作業性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、車両衝突時に衝撃を受け難いカウルメンバ下方のエンジン後退領域外に手動ポンプを配設することにより、燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、この発明の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す平面図であり、図2は、図1のX−X線矢視断面図、図3は、図1においてカウルグリルを取外した状態を示す図、図4は、セジメンタユニット周辺を前方かつ上方から見た要部拡大斜視図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示し、矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0021】
図1は、エンジンルームERを覆うボンネットを取外した状態を示しており、図1に示す車体前部構造では、左右一対の車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム1、1と、そのフロントサイドフレーム1、1の前端部を車幅方向に延びて連結するバンパーフレーム2と、そのフロントサイドフレーム1、1の中間部外側側方で略上下方向に立設するサスペンションタワー(以下、サスタワーと略記する)3、3と、そのサスタワー3、3の上端外側側方で車体前後方向に延びるエプロンレインフォースメント4、4と、フロントサイドフレーム1、1の後方で車幅方向かつ上下方向に広がってエンジンルームERと車室CBとを仕切るダッシュパネル5と、ダッシュパネル5の上端で車幅方向に延びるカウルボックス6と、を備えている。
【0022】
エンジンルームERは、上述したフロントサイドフレーム1、1、バンパーフレーム2、サスタワー3、3、及びエプロンレインフォースメント4、4により区画され、そこにはエンジンEが搭載されている。本実施形態では、エンジンEとしてディーゼル式のエンジンを想定している。
【0023】
また、図1に示すものは、車室CBの前席の左側(図1における右側)に運転席を配設した場合を想定しており、エンジンルームER内には、エンジンEの車幅方向一方側、具体的には運転席(車体左)側にブレーキの真空倍力装置8が配設され、その前方には、バッテリ9や、不図示のエアクリーナー、ヒューズボックス等が配設される。
【0024】
また、エンジンルームERの後部においては、図2に示すようなダッシュロアパネル51を設け、このダッシュロアパネル51の上端部にはダッシュアッパパネル52の下端部を接合固定し、このダッシュアッパパネル52とダッシュロアパネル51の両者とで、ダッシュパネル5を構成している。
【0025】
上述のダッシュアッパパネル52は車幅方向に延びるパネルであって、このダッシュアッパパネル52の上端部には、車幅方向に延び、カウルボックス6を形成するカウルパネル61後端部を接合固定している。
【0026】
また、エンジンルームERの後部には、ダッシュロアパネル51から前方に向けて延びるカウルフロントメンバ62を設けている。このカウルフロントメンバ62は、ダッシュロアパネル51の上端部の対応部位から前方に向けて延びる横壁部62a(いわゆる底壁部)と、この横壁部62aの前端から上方に向けて延びる縦壁部62bと、この縦壁部62bの上端から前方に延びる水平フランジ部62cと、を一体に形成した車幅方向に延びるメンバとなっている。
【0027】
さらに、上述のカウルフロントメンバ62の前部には、車幅方向に延びるカウルフロントクロスメンバ63を設け、上述のカウルフロントメンバ62と、このカウルフロントクロスメンバ63との間には、車幅方向に延びる閉断面64を形成している。
【0028】
このカウルフロントクロスメンバ63は、その前端が上述のカウルフロントメンバ62の水平フランジ部62cにボルト、ナット等の取付部材10により締結されるとともに、後端部を上述のカウルフロントメンバ62の横壁部62a上面に接合固定しており、これによって上述の閉断面64を形成している。
【0029】
本実施形態では、上述のダッシュアッパパネル52と、カウルパネル61と、カウルフロントメンバ62と、カウルフロントクロスメンバ63とにより、上方が開放された所謂オープンカウル構造の略樋形状のカウルボックス6が構成されている。
【0030】
そして、このカウルボックス6には、後端部がフロントガラス(不図示)の下部に支持されるとともに、前端部がカウルフロントクロスメンバ63に取付けられたカウルグリル11を設けている。
【0031】
このカウルグリル11は、オープンカウル構造のカウルボックス6の上方開口部を、外気導入可能に覆う合成樹脂製のグリルであって、このカウルグリル6は、その一部に図1に示すような多数の通気孔11aを備えている。
【0032】
ここで、カウルグリル11が通気孔11aを備えることで、雨水等がカウルボックス6内に浸入することが考えられるが、カウルボックス6が略樋形状をなしていることで、浸入した雨水等は、カウルフロントメンバ62の横壁部62a上に沿って車幅方向両端部に案内され、最終的には車外へ排出されるようになっている。
【0033】
また、本実施形態では、このカウルグリル11の一部に開口部11bを形成しており、この開口部11bには、通気孔11aと略同型の通気孔12aを備えた窓部材12が嵌め込まれている。
【0034】
窓部材12は、爪嵌合等によりカウルグリル11に固定される一方、作業者によって、図2中二点鎖線で示すようにカウルグリル11から取外すことが可能であり、これによって開口部11bは開閉可能となっている。
【0035】
また、開口部11bの下方には、図2〜図4に示すように、カウルフロントメンバ62の横壁部62aにおいて開口部62dが形成されており、これが、例えばゴム等により構成された可撓性を有するシール部材13によってシールされている。
【0036】
図5は、エンジンと燃料系との接続を示す図である。本実施形態では、図5に示すように、燃料系フィルタ装置としてのセジメンタユニット14を備えており、これを構成するプライミングポンプ14aが、図2〜図4に示すようにエンジンルームER内の、カウルフロントメンバ62の下方に配設されている。ここで、図3にて斜線で示す領域A1は、車両前面衝突時においてエンジンEが後退する際の後退領域を示しており、上述したプライミングポンプ14aは、エンジン後退領域A1の外側で、かつエンジンEの車幅方向他方側、具体的には助手席(車体右)側に配設されており、具体的には、サスタワー3とダッシュパネル5との間に配設されている。
【0037】
なお、上述した真空倍力装置8やバッテリ9等についても、セジメンタユニット14と同様、図3に示すようにエンジン後退領域A1の外側に配設されており、これらはエンジンEを挟んでプライミングポンプ14aと反対側に配設されている。
【0038】
セジメンタユニット14は、図5に示す燃料タンクFTからの燃料をろ過して燃料ポンプFPへ供給するものであり、主に胴部14bと、胴部14bの上部に設けられたプライミングポンプ14aと、胴部14bの下部に設けられた水抜き用のドレーン14cとを備える。
【0039】
胴部14bには燃料をろ過するろ材等が収納されており、導入管14d(図5参照)から導入される燃料はろ過された後、排出管14e(図5参照)から排出される。プライミングポンプ14aは燃料切れ等が生じた場合に手動でその上部のボタン14fを押圧操作するプライミング作業により燃料ポンプFPへ燃料を供給するためのものである。また、ドレーン14cは、燃料から分離されて胴部14b内に貯留された水分を排出するためのものである。
【0040】
ここで、エンジンEの各気筒には、図5に示すようなインジェクタEaが設けられており、各インジェクタEaは、燃料ポンプFPに接続されている。
【0041】
燃料タンクFT内の燃料は、上述したプライミング作業により燃料ポンプFP内へと送られ蓄圧された後、インジェクタEaには燃料ポンプFP内の高圧燃料が供給される。
【0042】
なお、図5中符号OFRで示す部材は、オーバーフロー通路であり、それぞれセジメンタユニット14、燃料ポンプFPに接続されている。そして、このOFRにより、セジメンタユニット14、燃料ポンプFPの余剰分の燃料が燃料タンクFTへと戻されるようになっている。
【0043】
ところで、本実施形態では、図2〜図4に示すように、プライミングポンプ14a、特にボタン14fの上方に、カウルフロントメンバ62の開口部62d、及びカウルグリル11の開口部11b、窓部材12が位置するようにセジメンタユニット14が配置されている。
【0044】
図6は、カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図であり、図7は、セジメンタユニット周辺を前方かつ車幅方向内方側から見た斜視図である。セジメンタユニット14は、図2、図6、図7に示すように、胴部14bの上方において、その車幅方向の側部に取付部14gが設けられており、L字型のブラケット15を介してプロテクタ部材16に取付けられている。セジメンタユニット14は、その胴部14bがこれを取り囲むプロテクタ部材16と空隙S(図2参照)を有するようにプロテクタ部材16に取付けられている。
【0045】
ここで、プロテクタ部材16は、平面視で略円弧状をなしており、その前端部には、前方及び上方に延びる2つの締結片16a、16bが形成される一方、後端部には、ダッシュロアパネル51に略沿うように車幅方向に延びる締結片16cが形成されている。
【0046】
プロテクタ部材16の前端部では、締結片16a、16bが図6、図7に示すように、ボルト、ナット等の取付部材17、17によりサスタワー3の車幅方向内側側面に締結される一方、後端部では、図7に示すように締結片16cがボルト、ナット等の上下2つ取付部材18、18によりダッシュロアパネル51の前面に締結されている。
【0047】
本実施形態では、プライミングポンプ14aがエンジン後退領域A1の外側に配設されることで、車両が前面衝突した時、プライミングポンプ14aが後退するエンジンEから衝撃を受けることを防止できる。
【0048】
さらに、障害物が車両に対して斜め前方から衝突した時には、図3にて斜線で示す領域A2、つまり、バンパーフレーム2からエプロンレインフォースメント4にかけて広がる領域が主に衝撃を受けると想定されるが、本実施形態では、プライミングポンプ14aがカウルフロントメンバ62の下方に配設されることで、これを領域A2の外側に配置することができ、プライミングポンプ14aが斜め前方から衝撃を受けることを防止できる。
【0049】
このように、車両衝突時において衝撃を受け難いカウルフロントメンバ62下方の、エンジン後退領域A1の外側にプライミングポンプ14aを配設することで、セジメンタユニット14等の燃料系の損傷をより確実に防止できる。
【0050】
また、プライミングポンプ14aがサスタワー3とダッシュパネル5との間に配設されているが、このように、サスペンション装置(不図示)を支持するサスタワー3等、元々高剛性とされている車体部材間にプライミングポンプ14aを配設することにより、車両衝突時の衝撃の影響を最小限に留めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、作業者がボンネットを開け、図8に示すように、窓部材12を取外すことで、カウルボックス15内に手Hを延ばすことが可能である。そして、ボタン14fの上方にシール部材13やカウルグリル11の開口部11bが位置していることにより、シール部材13を押圧してこれを可撓性変形させると、シール部材13を介してボタン14fを押圧操作することができる。
【0052】
ここで、燃料切れ等が生じた場合には、上述したようにプライミングポンプ14a上部のボタン14fを手動で押圧操作することによりプライミング作業を行うこととなるが、開口部11b、窓部材12、及びシール部材13により、プライミングポンプ14aがカウルフロントメンバ62の下方に配設されているにも関わらず、プライミングポンプ14aの作業性を確保することができる。
【0053】
また、開口部62dをシール部材13によって塞ぐことで、カウルグリル11から浸入した雨水等がカウルフロントメンバ62の横壁部62a上を通過する際、この雨水等がエンジンルームER側へ落下することを確実に防止できる。
【0054】
但し、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、開口部62dの縁部に嵌合可能なゴム製のシール部113aを備えた蓋部材113を設けてもよい。
【0055】
図9に示す構成では、蓋部材113により開口部62dを塞いでいる時、シール部113aによってシール機能が発揮される一方、作業者が窓部材12を取外してカウルボックス15内に手Hを延ばすことにより、蓋部材113を開口部62dから取外すことも可能である。これにより、作業者は、プライミングポンプ14aのボタン14fに直接アクセスすることができ、プライミングポンプ14aの作業性を確保することができる。
【0056】
ここで、図9中に示す部材113bは、蓋部材113に取付けられた紐部材であり、蓋部材113を取外す際には、この紐部材113bに手Hをかけ、これを引き上げるようにすればよい。
【0057】
なお、その他の作用効果は、図1〜図8を参照して説明した最初の実施形態と同様である。また、図9に示す実施形態において、最初の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0058】
また、本発明は、上述した各実施形態のように、カウルグリル11に開口部11bを形成することには必ずしも限定されない。例えば、カウルグリル11を車幅方向において複数の部品により分割構成しつつ、プライミングポンプ14aの上方位置にあるものを取外し可能に構成してもよい。
【0059】
また、本発明は、上述した各実施形態のように、カウルフロントメンバ62の上方から手Hを延ばしてプライミング作業を行うことには必ずしも限定されない。例えば、図10、図11に示すプライミングポンプ214aのように、その軸線方向が略車体前後方向を向くように配設して、ボタン214fを車体後方に押圧操作できるように構成してもよい。
【0060】
この場合、カウルグリル11及びカウルフロントメンバ62では、図11に示すように、開口部11b(図1、図2等参照)、62d(図2、図3等参照)に相当するものが設けられていないものの、作業者は、図10に示すように、カウルフロントメンバ62よりも下方で前方から手Hを延ばすことにより、ボタン214fを車体後方に押圧操作することができる。
【0061】
なお、その他の作用効果は、図1〜図8を参照して説明した最初の実施形態と同様である。また、図10に示す実施形態において、最初の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の手動ポンプは、プライミングポンプ14a、214aに対応し、
以下同様に、
カウルメンバは、カウルフロントメンバ62に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す平面図。
【図2】図1のX−X線矢視断面図。
【図3】図1においてカウルグリルを取外した状態を示す図。
【図4】セジメンタユニット周辺を前方かつ上方から見た要部拡大斜視図。
【図5】エンジンと燃料系との接続を示す図。
【図6】カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図。
【図7】セジメンタユニット周辺を前方かつ車幅方向内方から見た斜視図
【図8】プライミング作業を説明するための説明図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す側断面図。
【図10】この発明のさらに他の実施形態に係る車両の前部車体構造を示す図であり、カウルフロントメンバを取外した状態でセジメンタユニット周辺を上方かつ車幅方向内方から見た斜視図。
【図11】プライミング作業を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0064】
3…サスペンションタワー
5…ダッシュパネル
11…カウルグリル
12…窓部材
13…シール部材
14…セジメンタユニット
14a、214a…プライミングポンプ
62…カウルフロントメンバ
62d…開口部
113…蓋部材
A1…エンジン後退領域
FP…燃料ポンプ
ER…エンジンルーム
FT…燃料タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造であって、
前記手動ポンプを、前記エンジンルームの後部に設けられたカウルメンバの下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域外に配設した
車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記手動ポンプを、前記カウルメンバの下方におけるダッシュパネルとサスペンションタワーとの間に配設した
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に押圧可能な可撓性シール部材を設け、該可撓性シール部材を介して前記手動ポンプを押圧可能に構成した
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に、シール機能を備えつつ、該開口部から取外し可能な蓋部材を設けた
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記カウルメンバの上部にカウルグリルを設け、
該カウルグリルの前記手動ポンプ上方位置に、部分的に取外し可能な窓部材を設けた
請求項3または4記載の車両の前部車体構造。
【請求項1】
車両前部のエンジンルーム内に燃料タンクから燃料ポンプに対して手動で燃料を供給する手動ポンプが設けられた車両の前部車体構造であって、
前記手動ポンプを、前記エンジンルームの後部に設けられたカウルメンバの下方で、かつ衝突時のエンジン後退領域外に配設した
車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記手動ポンプを、前記カウルメンバの下方におけるダッシュパネルとサスペンションタワーとの間に配設した
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に押圧可能な可撓性シール部材を設け、該可撓性シール部材を介して前記手動ポンプを押圧可能に構成した
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記カウルメンバの前記手動ポンプ上方位置に開口部を設けるとともに、この開口部に、シール機能を備えつつ、該開口部から取外し可能な蓋部材を設けた
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記カウルメンバの上部にカウルグリルを設け、
該カウルグリルの前記手動ポンプ上方位置に、部分的に取外し可能な窓部材を設けた
請求項3または4記載の車両の前部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−115995(P2010−115995A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289631(P2008−289631)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]