車両の前部車体構造
【課題】強度バランスを損なわずに衝撃エネルギー量を向上させる技術とその適用部材を提供する。
【解決手段】支持本体部7bに入力された衝突荷重は、上下方向に亙って延びる前後2本のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝突荷重が小さな場合、前側のビード部32が潰れ変形して衝突荷重を吸収し、前側のビード部32の変形によっても吸収されない衝突荷重は、後側のビード部32の変形によって衝突荷重を吸収している。
【解決手段】支持本体部7bに入力された衝突荷重は、上下方向に亙って延びる前後2本のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝突荷重が小さな場合、前側のビード部32が潰れ変形して衝突荷重を吸収し、前側のビード部32の変形によっても吸収されない衝突荷重は、後側のビード部32の変形によって衝突荷重を吸収している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に関し、特にバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込み等の二次障害を防止することを目的として、衝突時に歩行者の下脚部を払って歩行者をボンネットの上に跳ね上げることが行われている。この具体的な構成として、バンパレインフォースメントの下方位置にシュラウドロアメンバに支持された車幅方向に延びた車幅方向部材、所謂脚払い部材を備えた前部車体構造が公知である。
【0003】
脚払い部材は、歩行者との衝突時に車体後方へ向かって潰れながら衝突エネルギーを吸収するため、脚払い部材が潰れるための前後長の確保が必要とされている。
しかし、車両の低ボンネット化に伴ってラジエータを前方に傾斜した前傾姿勢にした場合、シュラウドロアメンバが車体後方に配置され、脚払い部材が長尺化し車体重量が増す虞がある。
【0004】
特許文献1に記載された車体構造においては、左右1対のフロントサイドフレームに固定された1対の支持部材と、これらの支持部材に支持された車幅方向に延びる車幅方向部材としての脚払い部材をバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置に設け、この脚払い部材を歩行者との衝突エネルギーに応じて変形可能に構成されている。この車体構造では、脚払い部材をフロントサイドフレームに強固に支持することができ、脚払い部材の変形によって衝突による衝撃荷重を吸収して歩行者の脚部の安全を確保することができる。
【0005】
一方、車両の前面衝突時の乗員に対する衝撃荷重を低減する為に、フロントサイドフレームに入力される衝突エネルギーによりフロントサイドフレームを所定の変形モードで変形させることで衝突エネルギーを吸収する変形モード制御も実用化されている。 例えば、衝突初期にフロントサイドフレームの先端に配置されたクラッシュカンを潰れ変形させ、衝突中期以降では、フロントサイドフレームを、ダッシュパネルとの結合部を中心として平面視で見て車幅方向外側へ向かうように屈曲変形させることで、衝突初期に車体減速度を大きくし、その後の車体減速度を維持するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−88634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記車体構造では、脚払い部材を剛性の高いブラケットやタイダウンフック等の支持部材によってフロントサイドフレームに強固に固定している。しかし、これらの支持部材は、フロントサイドフレームの板厚を増して強度を高くするため、フロントサイドフレームの潰れ変形を阻害し、変形モード制御による所望の衝突エネルギー吸収の効果を得られないという虞がある。しかも、剛性の高い支持部材は、車体重量の増加を招く虞がある。
【0008】
また、前記脚払い部材は、衝突エネルギーに応じて変形可能に構成されているため、衝撃荷重を受けて潰れ変形するための前後長の確保が必要となり、脚払い部材を後退変形可能にするためのエネルギー吸収機構を備えた脚払い部材自体が大型化するという虞もある。脚払い部材が大型化した場合、脚払い部材の前後長を考慮してフロントサイドフレームに固定する必要が生じることから支持部材のフロントサイドフレームに対する取付け位置等のレイアウト性に対する制限を生じ、しかも、車体重量の増加を招く虞がある。
【0009】
本発明の目的は、バンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両において、フロントサイドフレームの潰れ変形と車幅方向部材の支持剛性の確保を両立できる前部車体構造、車幅方向部材を軽量化できる前部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両の前部車体構造は、ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイスと、前記バンパレインフォースメントの下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメントよりも前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材と、この車幅方向部材を前記1対のフロントサイドフレームに支持する支持部材を備えた車両の前部車体構造において、前記支持部材は、前記車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴としている。
【0011】
この前部車体構造においては、車両と歩行者との衝突時に、歩行者の下脚部に衝突する車幅方向部材を支持する支持部材を用いることによって、車幅方向部材に入力された車体前後方向の衝撃荷重を吸収することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記車幅方向部材は、前記衝撃荷重を前記支持部材へ伝達して前記支持部材の変形を促進させるように、前記支持部材よりも高い剛性によって形成されたことを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記支持部材は、支持部材を前記フロントサイドフレームに取付けるための取付部と、前記衝撃吸収部を備えた支持本体部と、この支持本体部へ前記衝撃荷重を伝達可能で且つ前記車幅方向部材を装着するための衝撃伝達部を備え、前記衝撃伝達部は、前記支持本体部の下端部から車体前後方向前方に延設されたことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記1 対のフロントサイドフレームは、その前端部分に前記バンパレインフォースメントに入力した車体前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカンを備え、前記取付部は、前記クラッシュカンに取付けられると共に前記クラッシュカンの変形を許容する脆弱部を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1つの発明において、前記支持部材よりも後方において前記1 対のフロントサイドフレームの間に配置された熱交換器と、前記バンパフェイスの車幅方向中央領域に形成され走行風を車両内部に導入可能な導入開口とを備え、前記支持部材は、前記導入開口から導入された走行風を前記熱交換器へ案内する走行風案内部を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記支持部材は、前記導入開口から導入され前記フロントサイドフレームの下方を流れる走行風を前記走行風案内部によって前記熱交換器へ案内するように前記フロントサイドフレームに取付けられたことを特徴としている。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5または6の発明において、前記車幅方向部材に支持された第2熱交換器と、前記支持部材に形成され且つ走行風を前記フロントサイドフレームより車幅方向外側へ排出可能な排出口を備え、前記第2熱交換器を通過した走行風を前記排出口へ案内する案内流路を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、支持部材によって車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収するため、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止しつつ車幅方向部材の前後長を短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。また、支持部材をフロントサイドフレームを介して車体に取付けたため、支持部材の支持剛性を確保でき、走行中の振動や歩行者との衝突時に入力される荷重による車幅方向部材への影響を低減できるので、歩行者の車体下方への巻き込みを確実に防止することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、車幅方向部材が衝突時の衝撃荷重を支持部材へ伝達して支持部材の変形を促進させるため、衝撃吸収量の調節を支持部材の調整のみによって行うことができ、所望の衝撃吸収量への設定を容易に行うことができる。それ故、車幅方向に延びる車幅方向部材の前後長を短縮化することができる。
請求項3の発明によれば、衝撃吸収部を支持本体部に設けたため、車幅方向部材を車体前後方向に短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、脆弱部を備えた支持部材の取付部をクラッシュカンに取付けたため、脆弱部によってクラッシュカンの潰れ変形を阻害することなく車幅方向部材を車体前側で支持することができ、車幅方向部材を車体前後方向に更に短くすることができる。
請求項5の発明によれば、走行風案内部を支持部材に設けたため、部品点数を増すことなく、熱交換器の冷却性能を高めることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、正面視で見て熱交換器よりも外側で且つフロントサイドフレームの下方を流れる走行風を熱交換器へ案内できるため、更に熱交換器の冷却性能を高めることができる。
請求項7の発明によれば、第2熱交換器と熱交換を行った走行風をフロントサイドフレームの外側に排出するため、両方の熱交換器の熱交換効率を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係る前部車体の平面図である。
【図2】シュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である(図1のII−II線断面)。
【図3】バンパフェイスを外した車体の正面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】支持部材の斜視図である。
【図6】衝突後の図2相当図である。
【図7】衝突後の図4相当図である。
【図8】衝突後の図5相当図である。
【図9】実施例2に係る図4相当図である。
【図10】実施例3に係る図2相当図である。
【図11】実施例3に係る図3相当図である。
【図12】実施例3に係る図4相当図である。
【図13】実施例4に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部を斜め下方から見た要部斜視図である。
【図14】実施例4に係る図3相当図である。
【図15】実施例4に係る図4相当図である。
【図16】実施例5に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部を斜め前方から見た要部斜視図である。
【図17】実施例5に係る図4相当図である。
【図18】実施例5に係る前部車体の右側の平面図である。
【図19】実施例6に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図20】走行風の流れを説明する説明図である。
【図21】実施例7に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図22】実施例7に係る図5相当図である。
【図23】実施例8に係る支持部材と一体形成されたクラッシュカンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
尚、以下の実施例において、車両の前後方向を前後方向とし、車両の左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例について図1〜図8に基づいて説明する。
車両Vの前部車体1は、エンジンルームEの上部を覆うボンネット2と、車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、前部車体1の外表面を形成するバンパフェイス5と、車幅方向に延びた脚払い部材6(車幅方向部材)と、脚払い部材6を左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7と、エンジン(図示略)の冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータ8(熱交換器)等から構成されている。
【0025】
ボンネット2の前端部分には、外縁形状に沿って車幅方向に延びるボンネットレインフォースメント2aが配置されている。ボンネットレインフォースメント2aは、ボンネット2と閉断面部を形成している。
【0026】
左右1対のフロントサイドフレーム3は、車室の前端部を仕切るダッシュパネル(図示略)の前側においてエンジンルームEの左右両側に前後方向に延びるように形成されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、車両Vの前側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネルの縦壁部に接合されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、同様の構成であるため、右側のフロントサイドフレーム3を主に説明する。
【0027】
図2,図4に示すように、フロントサイドフレーム3は、車幅方向外側のアウタパネルと、車幅方向内側のインナパネルとから構成され、これらのアウタパネルとインナパネルによって断面が略矩形形状の閉断面部を形成している。フロントサイドフレーム3には、上下方向に延びる複数のビード部3aがアウタパネルとインナパネルの夫々に形成されている。各々のビード部3aのビード深さとビード幅と上下長は、前面衝突時、フロントサイドフレーム3が所定の方向へ折れ変形するように設定されている。
【0028】
フロントサイドフレーム3の前端部分には、シュラウドパネル(図示略)を介してクラッシュカン9を取付けるためのフランジ部3bが形成されている。角筒状のクラッシュカン9は、車体前後方向に直交し且つクラッシュカン9の内方に凹入した環状の前後2列の溝部9aが形成されている。クラッシュカン9は、ボルトによって後端部分をフランジ部3bに締結固定されている。
【0029】
クラッシュカン9の前端部分には、バンパレインフォースメント4が連結されている。バンパレインフォースメント4は、左右方向に延びる閉断面形状に構成されている。クラッシュカン9の前端部は、バンパレインフォースメント4の閉断面内部に嵌入されるように形成されている。従って、クラッシュカン9が嵌入する部分では、バンパレインフォースメント4の断面はコ字形状になっている。以上により、左右1対のクラッシュカン9は、車両衝突初期にバンパレインフォースメント4を介して前方から衝撃荷重が入力され、この衝撃荷重により溝部9a等が圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収する。
【0030】
バンパレインフォースメント4の前方には、発泡合成樹脂製の衝撃吸収体10がバンパフェイス5の車幅方向全域に亙って配置されている。衝撃吸収体10は、車両衝突時にバンパフェイス5を介して前方からの衝撃荷重により圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収し、所望のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ、形状に構成されている。衝撃吸収体10は、発泡合成樹脂に限ることなく、複数のリブを組み合わせて構成された合成樹脂構造体等で構成することも可能である。
【0031】
バンパフェイス5は、左右両側にヘッドライトを格納可能な1対のヘッドライト用開口5aと、車幅方向中央領域にエンジンルームE内へ走行風を導入可能な導入開口5bと、導入開口5bの下方位置に形成された走行風を導入可能な導入開口5c等を備えている。バンパフェイス5の左右側後端部には、バンパフェイス5に連続して車体側部の外表面を形成する左右1対のフロントフェンダ11が装着されている。
【0032】
図4に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8の上部を支持するシュラウドアッパ12と、シュラウドアッパ12に比べて下側且つ後側位置にラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13と、シュラウドアッパ12の左右端部とシュラウドロア13の左右端部を夫々連結する左右1対のシュラウドサイド(図示略)が配置されている。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドは、前傾姿勢になるように配置されると共に、中央領域に開口を備えた矩形枠形状を形成している。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドによって形成された開口は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向するように配置されている。以上により、ラジエータ8は、前傾姿勢になるように配置され、ボンネット高さを低く抑えることができる。
【0033】
シュラウドアッパ12とシュラウドロア13の間には、ラジエータ8とラジエータ8用のファン14が配置されている。シュラウドアッパ12には、ラジエータ8の上部を支持するためのブラケット(図示略)がボルト締めによって取付けられている。シュラウドロア13には、ラジエータ8の下部を支持するためのブラケット(図示略)が取付けられている。以上により、ラジエータ8は、導入開口5b等から導入された走行風によってエンジンの冷却水を冷却可能に構成されている。
【0034】
合成樹脂製の脚払い部材6(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側且つ前側位置、つまり衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近にその前端がバンパレインフォースメント4よりも前方に位置するように配置されている。脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等から構成され、車幅方向に延びた閉断面部構造とされている。前面部6cの下部には、前方に突出して車幅方向に延びる突出部6eが形成されている。脚払い部材6は、左右の支持部材7に左右端部分がボルト15によって取付けられている。尚、脚払い部材6は、閉断面部構造に限られるものではなく、所望の剛性に応じて中実構造にすることも可能である。尚、図1において、脚払い部材6は、衝撃吸収体10と略同一の位置に設けられるため、図示を省略する。
【0035】
図2,図4,図5に示すように、鋼板製の支持部材7は、支持部材7をクラッシュカン9に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等によって一体的に構成されている。これら支持部材7は、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7は、同様の構成のため、右側の支持部材7について説明する。
【0036】
図5に示すように、取付部7aは、前側部分と後側部分にボルト16が貫通可能な1対のボルト穴30と、車体前後方向に直交し且つ前後2列の溝部9aに対向すると共に各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びた前後2列のビード部31(脆弱部)等から構成されている。支持部材7がクラッシュカン9の下端面に固定されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部31は車体前後方向に対して直交状に前後配置されている。
【0037】
以上により、車両Vの衝突によってクラッシュカン9の溝部9a等が圧縮変形して潰れたとき、ボルト16によってクラッシュカン9の下端面に固定された取付部7aは、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形され、車体前後方向に潰れることができる。それ故、取付部7aは、クラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができる。
【0038】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に下方へ屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32(衝撃吸収部)等を備えている。前側のビード部32は、前側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部32aを備え、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、後側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部32aを備え、支持本体部7bの前後方向中間位置まで形成されている。前側のビード部32と後側のビード部32の上側部分は上下方向に略平行状に延設され、夫々の下端部分は車体上下方向で見て略同じ高さ位置まで形成されている。
【0039】
各々のビード部32のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。以上により、歩行者へ衝突時に加わる衝撃荷重を極力低くでき、効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。
【0040】
衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲させて形成されている。
衝撃伝達部7cは、衝撃伝達部7cの前端部分を車幅方向内側に屈曲して形成された脚払い部材6を装着可能な装着部33と、装着部33を貫通可能に設けられた1対のボルト穴34等を備えている。装着部33の前側表面に固定される脚払い部材6は、1対のボルト穴34を介してボルト15によって支持部材7へ固着されている。
【0041】
図2,図4に示すように、エンジンルームEの前部の下方には、合成樹脂製のアンダカバー17が配置されている。アンダカバー17は、バンパフェイス5の下端部からラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13の下方位置まで延びている。アンダカバー17の前端部は、車幅方向中央位置において脚払い部材6に設けられた取付けブラケット(図示略)に連結されている。
【0042】
次に、車両Vの衝突時のフロントサイドフレーム3による変形モード制御を説明する。
車両Vの前面衝突が発生した場合、バンパフェイス5と衝撃吸収体10によって吸収されない衝撃荷重は、クラッシュカン9に伝達される。この荷重は、クラッシュカン9の溝部9aを押し潰すことによって吸収される。このクラッシュカン9の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム3の前端部から入力され、後方に向かって伝達される。
【0043】
フロントサイドフレーム3の前端部分に入力された衝撃荷重は、複数のビード部3aに作用して、各々のビード部3aの折れ変形が開始される。このとき、ビード部3aは凹入状に形成されるため、この部位におけるフロントサイドフレーム3の断面係数はその前後の部位の断面係数よりも小さく、ビード部3aが車幅方向外側に対する折れ部になる。以上により、前面衝突における衝突エネルギーを吸収している。
【0044】
ここで、支持部材7は、取付部7aによってクラッシュカン9に固定されているが、各溝部9aに対応して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31を設けたため、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形して車体前後方向に潰され、衝突初期におけるクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害しない。
【0045】
次に、脚払い部材6による歩行者の脚払い制御について説明する。
図6,図7に示すように、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。突出部6eに入力した衝撃荷重は、上面部6aと下面部6bの潰れ変形によって吸収される。
【0046】
上面部6aと下面部6bの潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、装着部33から衝撃伝達部7cに伝達される。衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部を車体前側に湾曲形成した平板形状に構成されているため、車体前後方向の衝撃荷重を殆ど減衰させることなく支持本体部7bに伝達する。
【0047】
支持本体部7bに入力された衝撃荷重は、上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重が小さな場合、図8に示すように、前側のビード部32の前部部分が潰れ変形して衝撃荷重を吸収している。衝撃荷重が大きくなる程、前側のビード部32の潰れ変形する領域Aが後方且つ上方に拡大している。前側のビード部32の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側のビード部32の潰れ変形によって吸収される。尚、衝撃伝達部7cの前端部分が上方へ向かって変位する場合、各ビード部32は潰れ変形を行い、衝撃伝達部7cが下方へ向かって変位する場合、各ビード部32は延び変形を行うことで、衝撃荷重を吸収している。
【0048】
以上により、歩行者と車両Vの衝突時、脚払い部材6の突出部6eが歩行者の下脚部と最も早く衝突するため、歩行者の上半身がバンパレインフォースメント4と衝突する前に歩行者の下脚部を払って効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。しかも、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は各ビード部32の潰れ変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。
【0049】
次に、前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造は、ボンネット2の下方において車両前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、これら1対のフロントサイドフレーム3の前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイス5と、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメント4よりも前方に配置された車幅方向に延びる脚払い部材6と、この脚払い部材6を1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7を備えているため、車両Vと歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止することができる。
【0050】
支持部材7は脚払い部材6に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部32を備えているため、脚払い部材6は十分な衝撃吸収機能を備える必要がなく脚払い部材6を車体前後方向に短く形成することができ、車体重量を軽量化することができる。脚払い部材6を車体前後方向に短縮化したため、支持部材7のフロントサイドフレーム3に対する取付け自由度を増すことができる。また、脚払い部材6を軽量化できるため、支持部材7の剛性を低くすることができ、フロントサイドフレーム3の衝突時の変形モード制御を阻害することなくフロントサイドフレーム3に取付けることができる。
【0051】
脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d,突出部6e等から構成され、車幅方向に延びた閉断面構造とされているため、衝撃荷重を支持部材7へ伝達して支持部材7の変形を促進することができる。しかも、支持部材7の変形を促進させるため、衝撃吸収の調節を支持部材7の設定によって容易に行うことができる。それ故、脚払い部材6に入力した車両前後方向の衝撃荷重を支持部材7によって吸収しつつ脚払い部材6の前後長を短くでき、小型化することができる。
【0052】
支持部材7は、支持部材7をフロントサイドフレーム3に取付けるための取付部7aと、ビード部32を備えた支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7cを備え、衝撃伝達部7cは支持本体部7bの下端部から車体前方に向けて延設されたため、脚払い部材6を車体前後方向に短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。
【0053】
左右1対のフロントサイドフレーム3は前端部分にバンパレインフォースメント4に入力した車両前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカン9を備え、取付部7aはクラッシュカン9の下端面に取付けられると共にクラッシュカン9の変形を許容可能なビード部31を備えているため、クラッシュカン9の各ビード部9aの潰れ変形を阻害することなく脚払い部材6を車体前側で支持することができ、脚払い部材6を車体前後方向に短くすることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る車両の前部車体構造について図9に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、鋼板製の脚払い部材6Aは、車幅方向に延びた閉断面構造とされ、脚払い部材6Aの車体前後方向の剛性は支持部材7の車体前後方向の剛性よりも高く設定されている。脚払い部材6Aは、上面部6aと、下面部6bと、前面部6cと、後面部6dと、前面部6cの下部に位置し前側に突出する突出部6e等を備えている。脚払い部材6Aは、左右の支持部材7に左右端部分がボルト15によって取付けられている。
【0056】
次に、実施例2に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、脚払い部材6Aを支持部材7の車体前後方向の剛性よりも高い剛性を有する部材に構成したため、支持部材7のみによって衝突エネルギーの吸収を行うことができる。それ故、支持部材7の材質等による剛性とビード部32の設定のみによって衝撃吸収の調節を容易に行うことができる。しかも、脚払い部材6Aの高剛性化に伴って、脚払い部材6Aの前後長を一層短くすることができ、車体の軽量化を図ることができる。
【実施例3】
【0057】
次に、実施例3に係る車両の前部車体構造について図10〜図12に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8とラジエータ8の後側のファン14がシュラウドアッパ12とシュラウドロア13に支持されている。車体前方に向けて前傾姿勢になるようにスラント配置されたラジエータ8は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向する位置に配置されている。
【0059】
鋼板製の支持部材7Aは、支持部材7Aをクラッシュカン9の下端面に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等から一体的に構成されている。左右の支持部材7Aは、同様の構成のため、右側の支持部材7Aについて説明する。
【0060】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32と、ビード部32の後方に延設された板状の張出部35等を備えている。
前側のビード部32は、支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前部まで形成されている。前側のビード部32と後側のビード部32の上側部分は上下方向に略平行状に延設されている。
【0061】
張出部35は、後側のビード部32の後方からフランジ部3bよりも後方に配置されたラジエータ8の上部側方位置まで延設され、フロントサイドフレーム3の下方にフロントサイドフレーム3と略平行状に形成されている。張出部35の後端部は、上部から下部に向かって車体前側に向かって湾曲するように構成され、その前後幅は、上部に比べて下部が幅狭になるように形成されている。
【0062】
張出部35は、上端部分に支持部材7Aをフロントサイドフレーム3の下端面に取付けるための取付部36を備えている。それ故、左右1対の支持部材7Aは、左右のクラッシュカン9及びフロントサイドフレーム3の下端面にボルト16によって夫々固定されている。衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲して形成されている。
【0063】
左右1対の走行風案内部18は、導入開口5b,5cとラジエータ8の間に配置され、導入開口5b,5cから導入された走行風をラジエータ8へ案内するように構成されている。走行風案内部18は、合成樹脂板によって形成され、フロントサイドフレーム3よりも下方に配置されている。走行風案内部18は、前側端部分をボルトによって張出部35に締結され、張出部35との締結部から後方に向かう程、車幅方向中央へ移行するように傾斜して形成されている。尚、左側の走行風案内部18は、右側の走行風案内部18と同様に構成されている。
【0064】
次に、実施例3に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、走行風案内部18の取付け部材を新設することなく左右1対の走行風案内部18を各支持部材7Aに夫々固定したため、導入開口5b,5cから導入された走行風をラジエータ8へ効果的に案内することができ、ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。しかも、ラジエータ8よりも車幅方向外側、所謂フロントフレーム3の下方を通過する走行風を車幅方向中央側に案内するため、一層ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。
【実施例4】
【0065】
次に、実施例4に係る車両の前部車体構造について図13〜図15に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
鋼板製の支持部材7Bは、前側支持部7dと、後側支持部7eと、前側支持部7dと後側支持部7eの間に形成された中間部7f等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Bは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7Bは、同様の構成のため、右側の支持部材7Bについて説明する。
【0067】
前側支持部7dは、支持部材7Bをクラッシュカン9に取付けるための取付部37と、脚払い部材6をボルト締結するための装着部38と、取付部37と装着部38の間を一体的に連結する前側本体部39等を有している。
取付部37は、クラッシュカン9の下端面の車幅方向外側位置にボルト16によって固定されている。前側本体部39は、取付部37の車幅方向外側端部を下方に向かって屈曲して形成されている。装着部38は、前側本体部39の下端部の前端部分を車幅方向内側に屈曲させて形成している。
【0068】
後側支持部7eは、支持部材7Bをクラッシュカン9に取付けるための取付部40と、取付部40の下側に位置する後側本体部41等を有している。取付部40は、クラッシュカン9の下端面の車幅方向内側位置にボルト16によって固定されている。後側本体部41は、取付部40の車幅方向内側端部を下方へ屈曲させて形成している。
【0069】
中間部7fは、フロントサイドフレーム3の直下位置に配置され、後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように形成されている。中間部7fは、前側支持部7dとの境界部分に相当すると共に車幅方向内側に面し且つ上下方向に延びる谷折れ部42(衝撃吸収部)と、後側支持部7eとの境界部分に相当すると共に車幅方向外側に面し且つ上下方向に延びる谷折れ部43(衝撃吸収部)と、取付部37と取付部40の間において中間部7fの上端部に形成された上部開口部44等から構成されている。
【0070】
以上により、取付部37と取付部40の間の位置に上部開口部44と、車幅方向に対して傾斜して形成された中間部7fが形成されたため、車両Vの衝突によってクラッシュカン9が圧縮変形して潰れるのに伴って、谷折れ部42,43を起点として中間部7fが潰れるため、クラッシュカン9の圧縮変形の阻害を防止することができる。それ故、支持部材7Bはクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができる。
【0071】
また、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。衝撃荷重は、装着部38から前側支持部7dに入力する。このとき、谷折れ部42を折れ変形の節として、前側支持部7dが車幅方向外側へ移動して衝突荷重を吸収している。前側支持部7dの変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側支持部7eが谷折れ部43を折れ変形の節として車幅方向内側へ移動して衝撃荷重を吸収している。これにより、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は谷折れ部42と谷折れ部43の座屈変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を小さくすることができる。
【0072】
しかも、中間部7fが後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように傾斜して設置されたため、新たに走行風案内部を新設することなく導入開口5b,5cから導入されたフロントフレーム3の下側を通過する走行風をラジエータ8へ案内することができ、一層ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。
【実施例5】
【0073】
次に、実施例5に係る車両の前部車体構造について図16〜図18に基づいて説明する。尚、前記実施例4の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
鋼板製の支持部材7Cは、前側支持部7dと、後側支持部7eと、前側支持部7dと後側支持部7eの間に位置する中間部7f等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Cは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。
【0075】
中間部7fは、クラッシュカン9の下端面の直下の位置に配置され、後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように傾斜して設置されている。中間部7fは、谷折れ部42と、谷折れ部43と、上部開口部44と、上部開口部44の下方に形成された中央開口部45等から構成されている。中央開口部45の大きさは、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を谷折れ部42,43と協働して吸収できるように設定されている。
【0076】
以上により、支持部材7Cはクラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができ、谷折れ部42と谷折れ部43の座屈変形によって衝撃荷重を吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。しかも、中央開口部45の形成によって支持部材7Cの軽量化を図ることができ、車体重量を軽減することができる。
【実施例6】
【0077】
次に、実施例6に係る車両の前部車体構造について図19,図20に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
車両Vの前部車体1は、ボンネット2と、左右1対のフロントサイドフレーム3と、バンパレインフォースメント4と、バンパフェイス5と、脚払い部材6B(車幅方向部材)と、脚払い部材6Bを左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7Dと、ラジエータ8と、圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ19(第2熱交換器)等を備えている。
【0079】
鋼板製の脚払い部材6Bは、衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの下部後方に配置されている。脚払い部材6Bの車体前後方向の剛性は支持部材7Dの車体前後方向の剛性よりも高く設定されている。脚払い部材6Bは、断面略ハット状に形成され、左右の支持部材7Dに左右端部分をボルト15によって取付けられている。
【0080】
鋼板製の支持部材7Dは、取付部7aと、支持本体部7bと、衝撃伝達部7c等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Dは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。取付部7aは、車体前後方向に直交し且つ前後2ヶ所の溝部9aに対向して各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31等を備えている。支持部材7Dがクラッシュカン9の下端面に固着されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部31は車体前後方向に対して直交状に前後に配置されている。
【0081】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32と、開口部46(排出口)等を備えている。前側のビード部32は、前側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に向かって延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、後側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲している。略長方形形状の開口部46は、前後ビード部32の間において支持本体部7bを貫通するように形成されている。
【0082】
インタークーラ19は、脚払い部材6Bの右側端部近傍部に配置され、取付けブラケット(図示略)によって固定されている。インタークーラ19の後方には、インタークーラ19によって熱交換された走行風をホイールハウス20に導くための合成樹脂製のダクト21(案内流路)が配置されている。角筒状のダクト21は、インタークーラ19の背面と開口部46を連結するように構成されている。
【0083】
図20に矢印で示すように、インタークーラ19によって熱交換された走行風はダクト21を通過してホイールハウス20に誘導され、車両Vの外部へ放出される。それ故、ラジエータ8へ熱交換を行う前の走行風を供給することができ、且つラジエータ8へ昇温した走行風を案内することも防げるため、各熱交換器の冷却性能を高く維持することができる。尚、ダクト21は、合成樹脂製であるため、支持部材7Dの潰れ変形に影響を与えないように構成されている。
【0084】
以上により、基本的に実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
また、脚払い部材6Bを支持部材7Dの車体前後方向の剛性よりも高い剛性によって構成したため、衝撃吸収の調節を支持部材7Dのビード部32等の設定のみによって容易に行うことができる。しかも、ラジエータ8の冷却性能とインタークーラ19の冷却性能を高く維持することができる。
【実施例7】
【0085】
次に、実施例7に係る車両の前部車体構造について図21,図22に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
左右1対のフロントサイドフレーム3のフランジ部3bには、左右1対のクラッシュカン9Aが夫々取付けられている。各クラッシュカン9Aには、脚払い部材6を支持可能な支持部材7Eが一体的に形成されている。左右1対のクラッシュカン9Aは、同様の構成のため、右側のクラッシュカン9Aについて説明する。
【0087】
クラッシュカン9Aは、アッパパネル23とロアパネル24によって構成され、両パネル23,24によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。アッパパネル23は、車幅方向内側の鉛直面部23aと、鉛直面部23aの上側端部と鉛直面部23bの下側端部を連結する水平面部23eと、水平面部23eの外側端部と水平面部23fの内側端部を連結する鉛直面部23bと、鉛直面部23bの上側端部と鉛直面部23cの上側端部を連結する水平面部23f、水平面部23fの外側端部と水平面部23gの内側端部を連結する鉛直面部23cと、鉛直面部23cの下側端部と鉛直面部23dの上側端部を連結する水平面部23gと、水平面部23gの外側端部から下方に延びる鉛直面部23d等から形成されている。
【0088】
水平面部23gには、車体前後方向に直行し且つクラッシュカン9A内部に凹入する前後2列のビード部23hが形成されている。鉛直面部23dには、各ビード部23hと夫々連続すると共に車幅方向内側に凹入して上端から下端に亙って延びる前後2列のビード部23iが形成されている。
【0089】
ロアパネル24は、車幅方向内側の鉛直面部24aと、鉛直面部24a下側端部と鉛直面部24bの上側端部を連結する水平面部24eと、水平面部24eの外側端部と水平面部24fの内側端部を連結する鉛直面部24bと、鉛直面部24bの下側端部と鉛直面部24cの下側端部を連結する水平面部24fと、水平面部24fの外側端部と水平面部24gの内側端部を連結する鉛直面部24cと、鉛直面部24cの上側端部と鉛直面部24dの下側端部を連結する水平面部24gと、水平面部24gの外側端部から上方に延びる鉛直面部24d等から形成されている。
【0090】
支持部材7Eは、鉛直面部23dの下端を下方に延設することによってクラッシュカン9Aと一体的に形成されている。支持部材7Eは、支持本体部47aと、衝撃伝達部47bとから構成されている。支持本体部47aには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部48が形成されている。
【0091】
前側のビード部48は、前側のビード部23iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部47aの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部47aの前端部まで形成されている。後側のビード部48は、後側のビード部23iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部47bの下部において前方に向かって湾曲している。各々のビード部48のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。
【0092】
衝撃伝達部47bは、支持本体部47aの下端部を車体前側に湾曲させて形成されている。衝撃伝達部47bは、衝撃伝達部47bの前端部分を車幅方向内側に屈曲して形成された脚払い部材6の装着部49と、装着部49を貫通可能に設けられた1対のボルト穴50等から構成されている。装着部49の前側表面に配置された脚払い部材6は、1対のボルト穴50の後方からボルト(図示略)によって支持部材7Eへ固着されている。
【0093】
以上により、基本的に実施例1と同様の効果を奏することができる。
しかも、クラッシュカン9Aの鉛直面部23dを延長して脚払い部材6を支持する支持部材7Eを一体的に形成したため、支持部材7Eの取付部を省略することができ、車体重量の軽減、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。
【実施例8】
【0094】
次に、図23に基づいて、脚払い部材6を支持する支持部材と一体形成されたクラッシュカン9Aの変形例について説明する。尚、前記実施例7のクラッシュカン9Aと異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。また、左右1対のクラッシュカンは、同様の構成のため、右側のクラッシュカンについて説明する。
【0095】
図23に示すように、クラッシュカン9Bは、アウタパネル25とインナパネル26によって構成され、両パネル25,26によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。
【0096】
アウタパネル25は、水平面部25aと、鉛直面部25eと、水平面部25bと、鉛直面部25fと、水平面部25cと、鉛直面部25gと、水平面部25d等から形成されている。インナパネル26は、水平面部26aと、鉛直面部26eと、水平面部26bと、鉛直面部26fと、水平面部26cと、鉛直面部26gと、水平面部26d等から形成されている。クラッシュカン7Fの前後方向に延びた閉断面部は、水平面部25aと水平面部26aを溶接し、水平面部25dと水平面部26dを溶接することで形成している。
【0097】
支持部材7Fは、アウタパネル25と一体的に形成され、水平面部25dの車幅方向内側端部を屈曲し、下方に延びるように構成されている。支持部材7Fは、支持本体部47aと、衝撃伝達部47bとから構成されている。支持本体部47aには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部48が形成されている。
尚、クラッシュカン9Bの各面部25a〜25g,26a〜26gに、必要に応じて車体前後方向に直交するビード部を形成することも可能である。
【0098】
以上により、クラッシュカン9Bの水平面部25dを屈曲して脚払い部材6を支持する支持部材7Fを一体的に形成したため、支持部材7Fの取付部を省略することができ、車体重量の軽減、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。しかも、支持部材7F及び脚払い部材6の装着部を車幅方向内側に配置することができ、車両デザインの自由度を拡大できる。
【0099】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、支持部材を鋼板によって形成した例を説明したが、少なくとも、支持部材によって、歩行者との衝突時、歩行者をボンネットの上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できれば良く、樹脂等他の材質を用いることも可能であり、同様の効果を奏することができる。
【0100】
2〕前記実施例においては、衝撃伝達部が車体前後方向の衝撃荷重を減衰させることなく支持本体部に伝達する例を説明したが、少なくとも、支持部材によって衝撃荷重を吸収できれば良く、衝撃伝達部に車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部等の衝撃吸収部を設けることも可能である。
【0101】
3〕前記実施例においては、衝撃吸収部としてのビード部と脆弱部としてのビード部が連続して形成された例を説明したが、夫々のビード部を独立して設けることも可能である。また、衝撃吸収部と脆弱部を支持部材に形成した開口によって構成することも可能である。
【0102】
4〕前記実施例においては、走行風案内部を支持部材の張出部に固定した例を説明したが、張出部自体を後方に向かう程、車幅方向中央に近接するように構成して、張出部を走行風案内部と兼ねることも可能である。
【0103】
5〕前記実施例においては、第2熱交換器としてインタークーラを脚払い部材の一端側に配置する例を説明したが、少なくとも、走行風と熱交換を行うものであれば良く、オイルクーラ等を配置することも可能である。また、インタークーラやオイルクーラ等を脚払い部材の両端に配置することも可能である。
【0104】
6〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、バンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両において、フロントサイドフレームの潰れ変形と車幅方向部材の支持剛性の確保を両立することができる。
【符号の説明】
【0106】
V 車両
1 前部車体
2 ボンネット
3 フロントサイドフレーム
4 バンパレインフォースメント
5 バンパフェイス
5b,5c 導入開口
6,6A,6B 脚払い部材
7,7A〜7F 支持部材
7a 取付部
7b,47a,52a 支持本体部
7c,47b,52b 衝撃伝達部
8 ラジエータ
9,9A〜9B クラッシュカン
18 走行風案内部
19 インタークーラ
21 ダクト
32,48 ビード部
33,38,49 装着部
42,43 谷折れ部
46 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部車体構造に関し、特にバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込み等の二次障害を防止することを目的として、衝突時に歩行者の下脚部を払って歩行者をボンネットの上に跳ね上げることが行われている。この具体的な構成として、バンパレインフォースメントの下方位置にシュラウドロアメンバに支持された車幅方向に延びた車幅方向部材、所謂脚払い部材を備えた前部車体構造が公知である。
【0003】
脚払い部材は、歩行者との衝突時に車体後方へ向かって潰れながら衝突エネルギーを吸収するため、脚払い部材が潰れるための前後長の確保が必要とされている。
しかし、車両の低ボンネット化に伴ってラジエータを前方に傾斜した前傾姿勢にした場合、シュラウドロアメンバが車体後方に配置され、脚払い部材が長尺化し車体重量が増す虞がある。
【0004】
特許文献1に記載された車体構造においては、左右1対のフロントサイドフレームに固定された1対の支持部材と、これらの支持部材に支持された車幅方向に延びる車幅方向部材としての脚払い部材をバンパレインフォースメントの下方且つ前方位置に設け、この脚払い部材を歩行者との衝突エネルギーに応じて変形可能に構成されている。この車体構造では、脚払い部材をフロントサイドフレームに強固に支持することができ、脚払い部材の変形によって衝突による衝撃荷重を吸収して歩行者の脚部の安全を確保することができる。
【0005】
一方、車両の前面衝突時の乗員に対する衝撃荷重を低減する為に、フロントサイドフレームに入力される衝突エネルギーによりフロントサイドフレームを所定の変形モードで変形させることで衝突エネルギーを吸収する変形モード制御も実用化されている。 例えば、衝突初期にフロントサイドフレームの先端に配置されたクラッシュカンを潰れ変形させ、衝突中期以降では、フロントサイドフレームを、ダッシュパネルとの結合部を中心として平面視で見て車幅方向外側へ向かうように屈曲変形させることで、衝突初期に車体減速度を大きくし、その後の車体減速度を維持するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−88634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記車体構造では、脚払い部材を剛性の高いブラケットやタイダウンフック等の支持部材によってフロントサイドフレームに強固に固定している。しかし、これらの支持部材は、フロントサイドフレームの板厚を増して強度を高くするため、フロントサイドフレームの潰れ変形を阻害し、変形モード制御による所望の衝突エネルギー吸収の効果を得られないという虞がある。しかも、剛性の高い支持部材は、車体重量の増加を招く虞がある。
【0008】
また、前記脚払い部材は、衝突エネルギーに応じて変形可能に構成されているため、衝撃荷重を受けて潰れ変形するための前後長の確保が必要となり、脚払い部材を後退変形可能にするためのエネルギー吸収機構を備えた脚払い部材自体が大型化するという虞もある。脚払い部材が大型化した場合、脚払い部材の前後長を考慮してフロントサイドフレームに固定する必要が生じることから支持部材のフロントサイドフレームに対する取付け位置等のレイアウト性に対する制限を生じ、しかも、車体重量の増加を招く虞がある。
【0009】
本発明の目的は、バンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両において、フロントサイドフレームの潰れ変形と車幅方向部材の支持剛性の確保を両立できる前部車体構造、車幅方向部材を軽量化できる前部車体構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両の前部車体構造は、ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイスと、前記バンパレインフォースメントの下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメントよりも前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材と、この車幅方向部材を前記1対のフロントサイドフレームに支持する支持部材を備えた車両の前部車体構造において、前記支持部材は、前記車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴としている。
【0011】
この前部車体構造においては、車両と歩行者との衝突時に、歩行者の下脚部に衝突する車幅方向部材を支持する支持部材を用いることによって、車幅方向部材に入力された車体前後方向の衝撃荷重を吸収することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記車幅方向部材は、前記衝撃荷重を前記支持部材へ伝達して前記支持部材の変形を促進させるように、前記支持部材よりも高い剛性によって形成されたことを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記支持部材は、支持部材を前記フロントサイドフレームに取付けるための取付部と、前記衝撃吸収部を備えた支持本体部と、この支持本体部へ前記衝撃荷重を伝達可能で且つ前記車幅方向部材を装着するための衝撃伝達部を備え、前記衝撃伝達部は、前記支持本体部の下端部から車体前後方向前方に延設されたことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記1 対のフロントサイドフレームは、その前端部分に前記バンパレインフォースメントに入力した車体前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカンを備え、前記取付部は、前記クラッシュカンに取付けられると共に前記クラッシュカンの変形を許容する脆弱部を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1つの発明において、前記支持部材よりも後方において前記1 対のフロントサイドフレームの間に配置された熱交換器と、前記バンパフェイスの車幅方向中央領域に形成され走行風を車両内部に導入可能な導入開口とを備え、前記支持部材は、前記導入開口から導入された走行風を前記熱交換器へ案内する走行風案内部を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記支持部材は、前記導入開口から導入され前記フロントサイドフレームの下方を流れる走行風を前記走行風案内部によって前記熱交換器へ案内するように前記フロントサイドフレームに取付けられたことを特徴としている。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5または6の発明において、前記車幅方向部材に支持された第2熱交換器と、前記支持部材に形成され且つ走行風を前記フロントサイドフレームより車幅方向外側へ排出可能な排出口を備え、前記第2熱交換器を通過した走行風を前記排出口へ案内する案内流路を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、支持部材によって車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収するため、車両と歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止しつつ車幅方向部材の前後長を短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。また、支持部材をフロントサイドフレームを介して車体に取付けたため、支持部材の支持剛性を確保でき、走行中の振動や歩行者との衝突時に入力される荷重による車幅方向部材への影響を低減できるので、歩行者の車体下方への巻き込みを確実に防止することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、車幅方向部材が衝突時の衝撃荷重を支持部材へ伝達して支持部材の変形を促進させるため、衝撃吸収量の調節を支持部材の調整のみによって行うことができ、所望の衝撃吸収量への設定を容易に行うことができる。それ故、車幅方向に延びる車幅方向部材の前後長を短縮化することができる。
請求項3の発明によれば、衝撃吸収部を支持本体部に設けたため、車幅方向部材を車体前後方向に短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、脆弱部を備えた支持部材の取付部をクラッシュカンに取付けたため、脆弱部によってクラッシュカンの潰れ変形を阻害することなく車幅方向部材を車体前側で支持することができ、車幅方向部材を車体前後方向に更に短くすることができる。
請求項5の発明によれば、走行風案内部を支持部材に設けたため、部品点数を増すことなく、熱交換器の冷却性能を高めることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、正面視で見て熱交換器よりも外側で且つフロントサイドフレームの下方を流れる走行風を熱交換器へ案内できるため、更に熱交換器の冷却性能を高めることができる。
請求項7の発明によれば、第2熱交換器と熱交換を行った走行風をフロントサイドフレームの外側に排出するため、両方の熱交換器の熱交換効率を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1に係る前部車体の平面図である。
【図2】シュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である(図1のII−II線断面)。
【図3】バンパフェイスを外した車体の正面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】支持部材の斜視図である。
【図6】衝突後の図2相当図である。
【図7】衝突後の図4相当図である。
【図8】衝突後の図5相当図である。
【図9】実施例2に係る図4相当図である。
【図10】実施例3に係る図2相当図である。
【図11】実施例3に係る図3相当図である。
【図12】実施例3に係る図4相当図である。
【図13】実施例4に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部を斜め下方から見た要部斜視図である。
【図14】実施例4に係る図3相当図である。
【図15】実施例4に係る図4相当図である。
【図16】実施例5に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部を斜め前方から見た要部斜視図である。
【図17】実施例5に係る図4相当図である。
【図18】実施例5に係る前部車体の右側の平面図である。
【図19】実施例6に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図20】走行風の流れを説明する説明図である。
【図21】実施例7に係るシュラウドパネルを省略した前部車体の右半分内部の要部斜視図である。
【図22】実施例7に係る図5相当図である。
【図23】実施例8に係る支持部材と一体形成されたクラッシュカンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
尚、以下の実施例において、車両の前後方向を前後方向とし、車両の左右方向を左右方向として説明する。
【実施例1】
【0024】
以下、本発明の実施例について図1〜図8に基づいて説明する。
車両Vの前部車体1は、エンジンルームEの上部を覆うボンネット2と、車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、前部車体1の外表面を形成するバンパフェイス5と、車幅方向に延びた脚払い部材6(車幅方向部材)と、脚払い部材6を左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7と、エンジン(図示略)の冷却水と走行風との熱交換を行うラジエータ8(熱交換器)等から構成されている。
【0025】
ボンネット2の前端部分には、外縁形状に沿って車幅方向に延びるボンネットレインフォースメント2aが配置されている。ボンネットレインフォースメント2aは、ボンネット2と閉断面部を形成している。
【0026】
左右1対のフロントサイドフレーム3は、車室の前端部を仕切るダッシュパネル(図示略)の前側においてエンジンルームEの左右両側に前後方向に延びるように形成されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、車両Vの前側位置から後方へ向かって略水平状に延び且つ後端側途中部がダッシュパネルの縦壁部に接合されている。左右1対のフロントサイドフレーム3は、同様の構成であるため、右側のフロントサイドフレーム3を主に説明する。
【0027】
図2,図4に示すように、フロントサイドフレーム3は、車幅方向外側のアウタパネルと、車幅方向内側のインナパネルとから構成され、これらのアウタパネルとインナパネルによって断面が略矩形形状の閉断面部を形成している。フロントサイドフレーム3には、上下方向に延びる複数のビード部3aがアウタパネルとインナパネルの夫々に形成されている。各々のビード部3aのビード深さとビード幅と上下長は、前面衝突時、フロントサイドフレーム3が所定の方向へ折れ変形するように設定されている。
【0028】
フロントサイドフレーム3の前端部分には、シュラウドパネル(図示略)を介してクラッシュカン9を取付けるためのフランジ部3bが形成されている。角筒状のクラッシュカン9は、車体前後方向に直交し且つクラッシュカン9の内方に凹入した環状の前後2列の溝部9aが形成されている。クラッシュカン9は、ボルトによって後端部分をフランジ部3bに締結固定されている。
【0029】
クラッシュカン9の前端部分には、バンパレインフォースメント4が連結されている。バンパレインフォースメント4は、左右方向に延びる閉断面形状に構成されている。クラッシュカン9の前端部は、バンパレインフォースメント4の閉断面内部に嵌入されるように形成されている。従って、クラッシュカン9が嵌入する部分では、バンパレインフォースメント4の断面はコ字形状になっている。以上により、左右1対のクラッシュカン9は、車両衝突初期にバンパレインフォースメント4を介して前方から衝撃荷重が入力され、この衝撃荷重により溝部9a等が圧縮変形して潰れることで衝突エネルギーを吸収する。
【0030】
バンパレインフォースメント4の前方には、発泡合成樹脂製の衝撃吸収体10がバンパフェイス5の車幅方向全域に亙って配置されている。衝撃吸収体10は、車両衝突時にバンパフェイス5を介して前方からの衝撃荷重により圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収し、所望のエネルギー吸収機能を達成し得るサイズ、形状に構成されている。衝撃吸収体10は、発泡合成樹脂に限ることなく、複数のリブを組み合わせて構成された合成樹脂構造体等で構成することも可能である。
【0031】
バンパフェイス5は、左右両側にヘッドライトを格納可能な1対のヘッドライト用開口5aと、車幅方向中央領域にエンジンルームE内へ走行風を導入可能な導入開口5bと、導入開口5bの下方位置に形成された走行風を導入可能な導入開口5c等を備えている。バンパフェイス5の左右側後端部には、バンパフェイス5に連続して車体側部の外表面を形成する左右1対のフロントフェンダ11が装着されている。
【0032】
図4に示すように、左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8の上部を支持するシュラウドアッパ12と、シュラウドアッパ12に比べて下側且つ後側位置にラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13と、シュラウドアッパ12の左右端部とシュラウドロア13の左右端部を夫々連結する左右1対のシュラウドサイド(図示略)が配置されている。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドは、前傾姿勢になるように配置されると共に、中央領域に開口を備えた矩形枠形状を形成している。シュラウドアッパ12とシュラウドロア13と1対のシュラウドサイドによって形成された開口は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向するように配置されている。以上により、ラジエータ8は、前傾姿勢になるように配置され、ボンネット高さを低く抑えることができる。
【0033】
シュラウドアッパ12とシュラウドロア13の間には、ラジエータ8とラジエータ8用のファン14が配置されている。シュラウドアッパ12には、ラジエータ8の上部を支持するためのブラケット(図示略)がボルト締めによって取付けられている。シュラウドロア13には、ラジエータ8の下部を支持するためのブラケット(図示略)が取付けられている。以上により、ラジエータ8は、導入開口5b等から導入された走行風によってエンジンの冷却水を冷却可能に構成されている。
【0034】
合成樹脂製の脚払い部材6(車幅方向部材)は、バンパレインフォースメント4の下側且つ前側位置、つまり衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近にその前端がバンパレインフォースメント4よりも前方に位置するように配置されている。脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d等から構成され、車幅方向に延びた閉断面部構造とされている。前面部6cの下部には、前方に突出して車幅方向に延びる突出部6eが形成されている。脚払い部材6は、左右の支持部材7に左右端部分がボルト15によって取付けられている。尚、脚払い部材6は、閉断面部構造に限られるものではなく、所望の剛性に応じて中実構造にすることも可能である。尚、図1において、脚払い部材6は、衝撃吸収体10と略同一の位置に設けられるため、図示を省略する。
【0035】
図2,図4,図5に示すように、鋼板製の支持部材7は、支持部材7をクラッシュカン9に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等によって一体的に構成されている。これら支持部材7は、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7は、同様の構成のため、右側の支持部材7について説明する。
【0036】
図5に示すように、取付部7aは、前側部分と後側部分にボルト16が貫通可能な1対のボルト穴30と、車体前後方向に直交し且つ前後2列の溝部9aに対向すると共に各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びた前後2列のビード部31(脆弱部)等から構成されている。支持部材7がクラッシュカン9の下端面に固定されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部31は車体前後方向に対して直交状に前後配置されている。
【0037】
以上により、車両Vの衝突によってクラッシュカン9の溝部9a等が圧縮変形して潰れたとき、ボルト16によってクラッシュカン9の下端面に固定された取付部7aは、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形され、車体前後方向に潰れることができる。それ故、取付部7aは、クラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができる。
【0038】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に下方へ屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32(衝撃吸収部)等を備えている。前側のビード部32は、前側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部32aを備え、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、後側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲する湾曲部32aを備え、支持本体部7bの前後方向中間位置まで形成されている。前側のビード部32と後側のビード部32の上側部分は上下方向に略平行状に延設され、夫々の下端部分は車体上下方向で見て略同じ高さ位置まで形成されている。
【0039】
各々のビード部32のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。以上により、歩行者へ衝突時に加わる衝撃荷重を極力低くでき、効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。
【0040】
衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲させて形成されている。
衝撃伝達部7cは、衝撃伝達部7cの前端部分を車幅方向内側に屈曲して形成された脚払い部材6を装着可能な装着部33と、装着部33を貫通可能に設けられた1対のボルト穴34等を備えている。装着部33の前側表面に固定される脚払い部材6は、1対のボルト穴34を介してボルト15によって支持部材7へ固着されている。
【0041】
図2,図4に示すように、エンジンルームEの前部の下方には、合成樹脂製のアンダカバー17が配置されている。アンダカバー17は、バンパフェイス5の下端部からラジエータ8の下部を支持するシュラウドロア13の下方位置まで延びている。アンダカバー17の前端部は、車幅方向中央位置において脚払い部材6に設けられた取付けブラケット(図示略)に連結されている。
【0042】
次に、車両Vの衝突時のフロントサイドフレーム3による変形モード制御を説明する。
車両Vの前面衝突が発生した場合、バンパフェイス5と衝撃吸収体10によって吸収されない衝撃荷重は、クラッシュカン9に伝達される。この荷重は、クラッシュカン9の溝部9aを押し潰すことによって吸収される。このクラッシュカン9の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、フロントサイドフレーム3の前端部から入力され、後方に向かって伝達される。
【0043】
フロントサイドフレーム3の前端部分に入力された衝撃荷重は、複数のビード部3aに作用して、各々のビード部3aの折れ変形が開始される。このとき、ビード部3aは凹入状に形成されるため、この部位におけるフロントサイドフレーム3の断面係数はその前後の部位の断面係数よりも小さく、ビード部3aが車幅方向外側に対する折れ部になる。以上により、前面衝突における衝突エネルギーを吸収している。
【0044】
ここで、支持部材7は、取付部7aによってクラッシュカン9に固定されているが、各溝部9aに対応して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31を設けたため、各溝部9aの圧縮変形に応じて各ビード部31が圧縮変形して車体前後方向に潰され、衝突初期におけるクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害しない。
【0045】
次に、脚払い部材6による歩行者の脚払い制御について説明する。
図6,図7に示すように、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。突出部6eに入力した衝撃荷重は、上面部6aと下面部6bの潰れ変形によって吸収される。
【0046】
上面部6aと下面部6bの潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、装着部33から衝撃伝達部7cに伝達される。衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部を車体前側に湾曲形成した平板形状に構成されているため、車体前後方向の衝撃荷重を殆ど減衰させることなく支持本体部7bに伝達する。
【0047】
支持本体部7bに入力された衝撃荷重は、上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32の変形によって吸収される。支持本体部7bに入力された衝撃荷重が小さな場合、図8に示すように、前側のビード部32の前部部分が潰れ変形して衝撃荷重を吸収している。衝撃荷重が大きくなる程、前側のビード部32の潰れ変形する領域Aが後方且つ上方に拡大している。前側のビード部32の潰れ変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側のビード部32の潰れ変形によって吸収される。尚、衝撃伝達部7cの前端部分が上方へ向かって変位する場合、各ビード部32は潰れ変形を行い、衝撃伝達部7cが下方へ向かって変位する場合、各ビード部32は延び変形を行うことで、衝撃荷重を吸収している。
【0048】
以上により、歩行者と車両Vの衝突時、脚払い部材6の突出部6eが歩行者の下脚部と最も早く衝突するため、歩行者の上半身がバンパレインフォースメント4と衝突する前に歩行者の下脚部を払って効果的に歩行者をボンネット2の上に案内することができる。しかも、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は各ビード部32の潰れ変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。
【0049】
次に、前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造は、ボンネット2の下方において車両前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレーム3と、これら1対のフロントサイドフレーム3の前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメント4と、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイス5と、バンパレインフォースメント4の下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメント4よりも前方に配置された車幅方向に延びる脚払い部材6と、この脚払い部材6を1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7を備えているため、車両Vと歩行者との衝突時に歩行者の車体下方への巻き込みを防止することができる。
【0050】
支持部材7は脚払い部材6に入力した車両前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部32を備えているため、脚払い部材6は十分な衝撃吸収機能を備える必要がなく脚払い部材6を車体前後方向に短く形成することができ、車体重量を軽量化することができる。脚払い部材6を車体前後方向に短縮化したため、支持部材7のフロントサイドフレーム3に対する取付け自由度を増すことができる。また、脚払い部材6を軽量化できるため、支持部材7の剛性を低くすることができ、フロントサイドフレーム3の衝突時の変形モード制御を阻害することなくフロントサイドフレーム3に取付けることができる。
【0051】
脚払い部材6は、上面部6aと、下面部6bと、前面部6c、後面部6d,突出部6e等から構成され、車幅方向に延びた閉断面構造とされているため、衝撃荷重を支持部材7へ伝達して支持部材7の変形を促進することができる。しかも、支持部材7の変形を促進させるため、衝撃吸収の調節を支持部材7の設定によって容易に行うことができる。それ故、脚払い部材6に入力した車両前後方向の衝撃荷重を支持部材7によって吸収しつつ脚払い部材6の前後長を短くでき、小型化することができる。
【0052】
支持部材7は、支持部材7をフロントサイドフレーム3に取付けるための取付部7aと、ビード部32を備えた支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7cを備え、衝撃伝達部7cは支持本体部7bの下端部から車体前方に向けて延設されたため、脚払い部材6を車体前後方向に短くすることができ、車体重量を軽量化することができる。
【0053】
左右1対のフロントサイドフレーム3は前端部分にバンパレインフォースメント4に入力した車両前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカン9を備え、取付部7aはクラッシュカン9の下端面に取付けられると共にクラッシュカン9の変形を許容可能なビード部31を備えているため、クラッシュカン9の各ビード部9aの潰れ変形を阻害することなく脚払い部材6を車体前側で支持することができ、脚払い部材6を車体前後方向に短くすることができる。
【実施例2】
【0054】
次に、実施例2に係る車両の前部車体構造について図9に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、鋼板製の脚払い部材6Aは、車幅方向に延びた閉断面構造とされ、脚払い部材6Aの車体前後方向の剛性は支持部材7の車体前後方向の剛性よりも高く設定されている。脚払い部材6Aは、上面部6aと、下面部6bと、前面部6cと、後面部6dと、前面部6cの下部に位置し前側に突出する突出部6e等を備えている。脚払い部材6Aは、左右の支持部材7に左右端部分がボルト15によって取付けられている。
【0056】
次に、実施例2に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、脚払い部材6Aを支持部材7の車体前後方向の剛性よりも高い剛性を有する部材に構成したため、支持部材7のみによって衝突エネルギーの吸収を行うことができる。それ故、支持部材7の材質等による剛性とビード部32の設定のみによって衝撃吸収の調節を容易に行うことができる。しかも、脚払い部材6Aの高剛性化に伴って、脚払い部材6Aの前後長を一層短くすることができ、車体の軽量化を図ることができる。
【実施例3】
【0057】
次に、実施例3に係る車両の前部車体構造について図10〜図12に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
左右1対のフロントサイドフレーム3の間には、ラジエータ8とラジエータ8の後側のファン14がシュラウドアッパ12とシュラウドロア13に支持されている。車体前方に向けて前傾姿勢になるようにスラント配置されたラジエータ8は、バンパフェイス5の導入開口5b,5cに対向する位置に配置されている。
【0059】
鋼板製の支持部材7Aは、支持部材7Aをクラッシュカン9の下端面に取付けるための取付部7aと、支持本体部7bと、この支持本体部7bへ衝撃荷重を伝達可能で且つ脚払い部材6を装着するための衝撃伝達部7c等から一体的に構成されている。左右の支持部材7Aは、同様の構成のため、右側の支持部材7Aについて説明する。
【0060】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32と、ビード部32の後方に延設された板状の張出部35等を備えている。
前側のビード部32は、支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前部まで形成されている。前側のビード部32と後側のビード部32の上側部分は上下方向に略平行状に延設されている。
【0061】
張出部35は、後側のビード部32の後方からフランジ部3bよりも後方に配置されたラジエータ8の上部側方位置まで延設され、フロントサイドフレーム3の下方にフロントサイドフレーム3と略平行状に形成されている。張出部35の後端部は、上部から下部に向かって車体前側に向かって湾曲するように構成され、その前後幅は、上部に比べて下部が幅狭になるように形成されている。
【0062】
張出部35は、上端部分に支持部材7Aをフロントサイドフレーム3の下端面に取付けるための取付部36を備えている。それ故、左右1対の支持部材7Aは、左右のクラッシュカン9及びフロントサイドフレーム3の下端面にボルト16によって夫々固定されている。衝撃伝達部7cは、支持本体部7bの下端部分を車体前側に湾曲して形成されている。
【0063】
左右1対の走行風案内部18は、導入開口5b,5cとラジエータ8の間に配置され、導入開口5b,5cから導入された走行風をラジエータ8へ案内するように構成されている。走行風案内部18は、合成樹脂板によって形成され、フロントサイドフレーム3よりも下方に配置されている。走行風案内部18は、前側端部分をボルトによって張出部35に締結され、張出部35との締結部から後方に向かう程、車幅方向中央へ移行するように傾斜して形成されている。尚、左側の走行風案内部18は、右側の走行風案内部18と同様に構成されている。
【0064】
次に、実施例3に係る前記前部車体構造の作用、効果について説明する。
この前部車体構造では、走行風案内部18の取付け部材を新設することなく左右1対の走行風案内部18を各支持部材7Aに夫々固定したため、導入開口5b,5cから導入された走行風をラジエータ8へ効果的に案内することができ、ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。しかも、ラジエータ8よりも車幅方向外側、所謂フロントフレーム3の下方を通過する走行風を車幅方向中央側に案内するため、一層ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。
【実施例4】
【0065】
次に、実施例4に係る車両の前部車体構造について図13〜図15に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
鋼板製の支持部材7Bは、前側支持部7dと、後側支持部7eと、前側支持部7dと後側支持部7eの間に形成された中間部7f等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Bは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。左右の支持部材7Bは、同様の構成のため、右側の支持部材7Bについて説明する。
【0067】
前側支持部7dは、支持部材7Bをクラッシュカン9に取付けるための取付部37と、脚払い部材6をボルト締結するための装着部38と、取付部37と装着部38の間を一体的に連結する前側本体部39等を有している。
取付部37は、クラッシュカン9の下端面の車幅方向外側位置にボルト16によって固定されている。前側本体部39は、取付部37の車幅方向外側端部を下方に向かって屈曲して形成されている。装着部38は、前側本体部39の下端部の前端部分を車幅方向内側に屈曲させて形成している。
【0068】
後側支持部7eは、支持部材7Bをクラッシュカン9に取付けるための取付部40と、取付部40の下側に位置する後側本体部41等を有している。取付部40は、クラッシュカン9の下端面の車幅方向内側位置にボルト16によって固定されている。後側本体部41は、取付部40の車幅方向内側端部を下方へ屈曲させて形成している。
【0069】
中間部7fは、フロントサイドフレーム3の直下位置に配置され、後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように形成されている。中間部7fは、前側支持部7dとの境界部分に相当すると共に車幅方向内側に面し且つ上下方向に延びる谷折れ部42(衝撃吸収部)と、後側支持部7eとの境界部分に相当すると共に車幅方向外側に面し且つ上下方向に延びる谷折れ部43(衝撃吸収部)と、取付部37と取付部40の間において中間部7fの上端部に形成された上部開口部44等から構成されている。
【0070】
以上により、取付部37と取付部40の間の位置に上部開口部44と、車幅方向に対して傾斜して形成された中間部7fが形成されたため、車両Vの衝突によってクラッシュカン9が圧縮変形して潰れるのに伴って、谷折れ部42,43を起点として中間部7fが潰れるため、クラッシュカン9の圧縮変形の阻害を防止することができる。それ故、支持部材7Bはクラッシュカン9の衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができる。
【0071】
また、歩行者と衝突した場合、脚払い部材6は衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの後方付近に配置されているため、バンパフェイス5を介して突出部6eが歩行者の下脚部に衝突する。衝撃荷重は、装着部38から前側支持部7dに入力する。このとき、谷折れ部42を折れ変形の節として、前側支持部7dが車幅方向外側へ移動して衝突荷重を吸収している。前側支持部7dの変形によっても吸収されない衝撃荷重は、後側支持部7eが谷折れ部43を折れ変形の節として車幅方向内側へ移動して衝撃荷重を吸収している。これにより、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重は谷折れ部42と谷折れ部43の座屈変形によって吸収されるため、歩行者へ加わる衝撃荷重を小さくすることができる。
【0072】
しかも、中間部7fが後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように傾斜して設置されたため、新たに走行風案内部を新設することなく導入開口5b,5cから導入されたフロントフレーム3の下側を通過する走行風をラジエータ8へ案内することができ、一層ラジエータ8の冷却性能を高めることができる。
【実施例5】
【0073】
次に、実施例5に係る車両の前部車体構造について図16〜図18に基づいて説明する。尚、前記実施例4の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
鋼板製の支持部材7Cは、前側支持部7dと、後側支持部7eと、前側支持部7dと後側支持部7eの間に位置する中間部7f等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Cは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。
【0075】
中間部7fは、クラッシュカン9の下端面の直下の位置に配置され、後方に向かう程、車幅方向中央側へ移行するように傾斜して設置されている。中間部7fは、谷折れ部42と、谷折れ部43と、上部開口部44と、上部開口部44の下方に形成された中央開口部45等から構成されている。中央開口部45の大きさは、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を谷折れ部42,43と協働して吸収できるように設定されている。
【0076】
以上により、支持部材7Cはクラッシュカン9による衝突エネルギーの吸収を阻害することなく、脚払い部材6をフロントサイドフレーム3に支持することができ、谷折れ部42と谷折れ部43の座屈変形によって衝撃荷重を吸収するため、歩行者へ加わる衝撃荷重を低くすることができる。しかも、中央開口部45の形成によって支持部材7Cの軽量化を図ることができ、車体重量を軽減することができる。
【実施例6】
【0077】
次に、実施例6に係る車両の前部車体構造について図19,図20に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
車両Vの前部車体1は、ボンネット2と、左右1対のフロントサイドフレーム3と、バンパレインフォースメント4と、バンパフェイス5と、脚払い部材6B(車幅方向部材)と、脚払い部材6Bを左右1対のフロントサイドフレーム3に支持する支持部材7Dと、ラジエータ8と、圧縮されて高温となった吸気を冷却するためのインタークーラ19(第2熱交換器)等を備えている。
【0079】
鋼板製の脚払い部材6Bは、衝撃吸収体10の下方で歩行者の下脚部高さに相当する導入開口5cの下部後方に配置されている。脚払い部材6Bの車体前後方向の剛性は支持部材7Dの車体前後方向の剛性よりも高く設定されている。脚払い部材6Bは、断面略ハット状に形成され、左右の支持部材7Dに左右端部分をボルト15によって取付けられている。
【0080】
鋼板製の支持部材7Dは、取付部7aと、支持本体部7bと、衝撃伝達部7c等から一体的に構成されている。左右1対の支持部材7Dは、左右のクラッシュカン9の下端面にボルト16によって夫々固定されている。取付部7aは、車体前後方向に直交し且つ前後2ヶ所の溝部9aに対向して各溝部9aと反対側に凹入して左右方向に亙って延びる前後2列のビード部31等を備えている。支持部材7Dがクラッシュカン9の下端面に固着されたとき、取付部7aは車体上下方向に対して直交する面と平行に配置され、各ビード部31は車体前後方向に対して直交状に前後に配置されている。
【0081】
支持本体部7bは、取付部7aの車幅方向外側端部を直交方向に屈曲して形成され、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部32と、開口部46(排出口)等を備えている。前側のビード部32は、前側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に向かって延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部7bの前端部まで形成されている。後側のビード部32は、後側のビード部31の車幅方向外側端部から連続して下方に延びると共に支持本体部7bの下部において前方に向かって湾曲している。略長方形形状の開口部46は、前後ビード部32の間において支持本体部7bを貫通するように形成されている。
【0082】
インタークーラ19は、脚払い部材6Bの右側端部近傍部に配置され、取付けブラケット(図示略)によって固定されている。インタークーラ19の後方には、インタークーラ19によって熱交換された走行風をホイールハウス20に導くための合成樹脂製のダクト21(案内流路)が配置されている。角筒状のダクト21は、インタークーラ19の背面と開口部46を連結するように構成されている。
【0083】
図20に矢印で示すように、インタークーラ19によって熱交換された走行風はダクト21を通過してホイールハウス20に誘導され、車両Vの外部へ放出される。それ故、ラジエータ8へ熱交換を行う前の走行風を供給することができ、且つラジエータ8へ昇温した走行風を案内することも防げるため、各熱交換器の冷却性能を高く維持することができる。尚、ダクト21は、合成樹脂製であるため、支持部材7Dの潰れ変形に影響を与えないように構成されている。
【0084】
以上により、基本的に実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
また、脚払い部材6Bを支持部材7Dの車体前後方向の剛性よりも高い剛性によって構成したため、衝撃吸収の調節を支持部材7Dのビード部32等の設定のみによって容易に行うことができる。しかも、ラジエータ8の冷却性能とインタークーラ19の冷却性能を高く維持することができる。
【実施例7】
【0085】
次に、実施例7に係る車両の前部車体構造について図21,図22に基づいて説明する。尚、前記実施例1の前部車体構造と異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
左右1対のフロントサイドフレーム3のフランジ部3bには、左右1対のクラッシュカン9Aが夫々取付けられている。各クラッシュカン9Aには、脚払い部材6を支持可能な支持部材7Eが一体的に形成されている。左右1対のクラッシュカン9Aは、同様の構成のため、右側のクラッシュカン9Aについて説明する。
【0087】
クラッシュカン9Aは、アッパパネル23とロアパネル24によって構成され、両パネル23,24によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。アッパパネル23は、車幅方向内側の鉛直面部23aと、鉛直面部23aの上側端部と鉛直面部23bの下側端部を連結する水平面部23eと、水平面部23eの外側端部と水平面部23fの内側端部を連結する鉛直面部23bと、鉛直面部23bの上側端部と鉛直面部23cの上側端部を連結する水平面部23f、水平面部23fの外側端部と水平面部23gの内側端部を連結する鉛直面部23cと、鉛直面部23cの下側端部と鉛直面部23dの上側端部を連結する水平面部23gと、水平面部23gの外側端部から下方に延びる鉛直面部23d等から形成されている。
【0088】
水平面部23gには、車体前後方向に直行し且つクラッシュカン9A内部に凹入する前後2列のビード部23hが形成されている。鉛直面部23dには、各ビード部23hと夫々連続すると共に車幅方向内側に凹入して上端から下端に亙って延びる前後2列のビード部23iが形成されている。
【0089】
ロアパネル24は、車幅方向内側の鉛直面部24aと、鉛直面部24a下側端部と鉛直面部24bの上側端部を連結する水平面部24eと、水平面部24eの外側端部と水平面部24fの内側端部を連結する鉛直面部24bと、鉛直面部24bの下側端部と鉛直面部24cの下側端部を連結する水平面部24fと、水平面部24fの外側端部と水平面部24gの内側端部を連結する鉛直面部24cと、鉛直面部24cの上側端部と鉛直面部24dの下側端部を連結する水平面部24gと、水平面部24gの外側端部から上方に延びる鉛直面部24d等から形成されている。
【0090】
支持部材7Eは、鉛直面部23dの下端を下方に延設することによってクラッシュカン9Aと一体的に形成されている。支持部材7Eは、支持本体部47aと、衝撃伝達部47bとから構成されている。支持本体部47aには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部48が形成されている。
【0091】
前側のビード部48は、前側のビード部23iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部47aの下部において前方に向かって湾曲し、支持本体部47aの前端部まで形成されている。後側のビード部48は、後側のビード部23iの下端と連結され下方に向かって延びると共に支持本体部47bの下部において前方に向かって湾曲している。各々のビード部48のビード深さとビード幅等は、歩行者との衝突時、歩行者をボンネット2の上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できるように設定されている。
【0092】
衝撃伝達部47bは、支持本体部47aの下端部を車体前側に湾曲させて形成されている。衝撃伝達部47bは、衝撃伝達部47bの前端部分を車幅方向内側に屈曲して形成された脚払い部材6の装着部49と、装着部49を貫通可能に設けられた1対のボルト穴50等から構成されている。装着部49の前側表面に配置された脚払い部材6は、1対のボルト穴50の後方からボルト(図示略)によって支持部材7Eへ固着されている。
【0093】
以上により、基本的に実施例1と同様の効果を奏することができる。
しかも、クラッシュカン9Aの鉛直面部23dを延長して脚払い部材6を支持する支持部材7Eを一体的に形成したため、支持部材7Eの取付部を省略することができ、車体重量の軽減、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。
【実施例8】
【0094】
次に、図23に基づいて、脚払い部材6を支持する支持部材と一体形成されたクラッシュカン9Aの変形例について説明する。尚、前記実施例7のクラッシュカン9Aと異なる構成についてのみ説明し、前記実施例と同一の部材に、同一符号を付して説明を省略する。また、左右1対のクラッシュカンは、同様の構成のため、右側のクラッシュカンについて説明する。
【0095】
図23に示すように、クラッシュカン9Bは、アウタパネル25とインナパネル26によって構成され、両パネル25,26によって車体前後方向に延びると共に正面視で見て十字状の閉断面部を形成している。
【0096】
アウタパネル25は、水平面部25aと、鉛直面部25eと、水平面部25bと、鉛直面部25fと、水平面部25cと、鉛直面部25gと、水平面部25d等から形成されている。インナパネル26は、水平面部26aと、鉛直面部26eと、水平面部26bと、鉛直面部26fと、水平面部26cと、鉛直面部26gと、水平面部26d等から形成されている。クラッシュカン7Fの前後方向に延びた閉断面部は、水平面部25aと水平面部26aを溶接し、水平面部25dと水平面部26dを溶接することで形成している。
【0097】
支持部材7Fは、アウタパネル25と一体的に形成され、水平面部25dの車幅方向内側端部を屈曲し、下方に延びるように構成されている。支持部材7Fは、支持本体部47aと、衝撃伝達部47bとから構成されている。支持本体部47aには、車幅方向内側に凹入して上下方向に亙って延びる前後2列のビード部48が形成されている。
尚、クラッシュカン9Bの各面部25a〜25g,26a〜26gに、必要に応じて車体前後方向に直交するビード部を形成することも可能である。
【0098】
以上により、クラッシュカン9Bの水平面部25dを屈曲して脚払い部材6を支持する支持部材7Fを一体的に形成したため、支持部材7Fの取付部を省略することができ、車体重量の軽減、クラッシュカン9Aの潰れ変形制御の容易化を図ることができる。しかも、支持部材7F及び脚払い部材6の装着部を車幅方向内側に配置することができ、車両デザインの自由度を拡大できる。
【0099】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、支持部材を鋼板によって形成した例を説明したが、少なくとも、支持部材によって、歩行者との衝突時、歩行者をボンネットの上に案内するために必要な衝突エネルギー以上の衝撃荷重を吸収できれば良く、樹脂等他の材質を用いることも可能であり、同様の効果を奏することができる。
【0100】
2〕前記実施例においては、衝撃伝達部が車体前後方向の衝撃荷重を減衰させることなく支持本体部に伝達する例を説明したが、少なくとも、支持部材によって衝撃荷重を吸収できれば良く、衝撃伝達部に車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能なビード部等の衝撃吸収部を設けることも可能である。
【0101】
3〕前記実施例においては、衝撃吸収部としてのビード部と脆弱部としてのビード部が連続して形成された例を説明したが、夫々のビード部を独立して設けることも可能である。また、衝撃吸収部と脆弱部を支持部材に形成した開口によって構成することも可能である。
【0102】
4〕前記実施例においては、走行風案内部を支持部材の張出部に固定した例を説明したが、張出部自体を後方に向かう程、車幅方向中央に近接するように構成して、張出部を走行風案内部と兼ねることも可能である。
【0103】
5〕前記実施例においては、第2熱交換器としてインタークーラを脚払い部材の一端側に配置する例を説明したが、少なくとも、走行風と熱交換を行うものであれば良く、オイルクーラ等を配置することも可能である。また、インタークーラやオイルクーラ等を脚払い部材の両端に配置することも可能である。
【0104】
6〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、バンパレインフォースメントの下方且つ前方位置にフロントサイドフレームに支持された車幅方向部材を備えた車両において、フロントサイドフレームの潰れ変形と車幅方向部材の支持剛性の確保を両立することができる。
【符号の説明】
【0106】
V 車両
1 前部車体
2 ボンネット
3 フロントサイドフレーム
4 バンパレインフォースメント
5 バンパフェイス
5b,5c 導入開口
6,6A,6B 脚払い部材
7,7A〜7F 支持部材
7a 取付部
7b,47a,52a 支持本体部
7c,47b,52b 衝撃伝達部
8 ラジエータ
9,9A〜9B クラッシュカン
18 走行風案内部
19 インタークーラ
21 ダクト
32,48 ビード部
33,38,49 装着部
42,43 谷折れ部
46 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイスと、前記バンパレインフォースメントの下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメントよりも前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材と、この車幅方向部材を前記1対のフロントサイドフレームに支持する支持部材を備えた車両の前部車体構造において、
前記支持部材は、前記車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記車幅方向部材は、前記衝撃荷重を前記支持部材へ伝達して前記支持部材の変形を促進させるように、前記支持部材よりも高い剛性によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記支持部材は、支持部材を前記フロントサイドフレームに取付ける為の取付部と、前記衝撃吸収部を備えた支持本体部と、この支持本体部へ前記衝撃荷重を伝達可能で且つ前記車幅方向部材を装着する為の衝撃伝達部を備え、
前記衝撃伝達部は、前記支持本体部の下端部から車体前後方向前方に延設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記1対のフロントサイドフレームは、その前端部分に前記バンパレインフォースメントに入力した車体前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカンを備え、
前記取付部は、前記クラッシュカンに取付けられると共に前記クラッシュカンの変形を許容する脆弱部を備えたことを特徴とする請求項3記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記支持部材よりも後方において前記1対のフロントサイドフレームの間に配置された熱交換器と、
前記バンパフェイスの車幅方向中央領域に形成され走行風を車両内部に導入可能な導入開口とを備え、
前記支持部材は、前記導入開口から導入された走行風を前記熱交換器へ案内する走行風案内部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記支持部材は、前記導入開口から導入され前記フロントサイドフレームの下方を流れる走行風を前記走行風案内部によって前記熱交換器へ案内するように前記フロントサイドフレームに取付けられたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記車幅方向部材に支持された第2熱交換器と、
前記支持部材に形成され且つ走行風を前記フロントサイドフレームより車幅方向外側へ排出可能な排出口を備え、
前記第2熱交換器を通過した走行風を前記排出口へ案内する案内流路を形成したことを特徴とする請求項5または6に記載の車両の前部車体構造。
【請求項1】
ボンネットの下方において車体前後方向に延びた左右1対のフロントサイドフレームと、これら1対のフロントサイドフレームの前端部に取付けられ車幅方向に延びたバンパレインフォースメントと、車体前端部分の外表面を形成するバンパフェイスと、前記バンパレインフォースメントの下側位置で且つ前端がバンパレインフォースメントよりも前方に配置された車幅方向に延びる車幅方向部材と、この車幅方向部材を前記1対のフロントサイドフレームに支持する支持部材を備えた車両の前部車体構造において、
前記支持部材は、前記車幅方向部材に入力した車体前後方向の衝撃荷重を吸収可能な衝撃吸収部を備えたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記車幅方向部材は、前記衝撃荷重を前記支持部材へ伝達して前記支持部材の変形を促進させるように、前記支持部材よりも高い剛性によって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記支持部材は、支持部材を前記フロントサイドフレームに取付ける為の取付部と、前記衝撃吸収部を備えた支持本体部と、この支持本体部へ前記衝撃荷重を伝達可能で且つ前記車幅方向部材を装着する為の衝撃伝達部を備え、
前記衝撃伝達部は、前記支持本体部の下端部から車体前後方向前方に延設されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記1対のフロントサイドフレームは、その前端部分に前記バンパレインフォースメントに入力した車体前後方向の衝撃荷重を変形によって吸収可能なクラッシュカンを備え、
前記取付部は、前記クラッシュカンに取付けられると共に前記クラッシュカンの変形を許容する脆弱部を備えたことを特徴とする請求項3記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記支持部材よりも後方において前記1対のフロントサイドフレームの間に配置された熱交換器と、
前記バンパフェイスの車幅方向中央領域に形成され走行風を車両内部に導入可能な導入開口とを備え、
前記支持部材は、前記導入開口から導入された走行風を前記熱交換器へ案内する走行風案内部を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記支持部材は、前記導入開口から導入され前記フロントサイドフレームの下方を流れる走行風を前記走行風案内部によって前記熱交換器へ案内するように前記フロントサイドフレームに取付けられたことを特徴とする請求項5に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記車幅方向部材に支持された第2熱交換器と、
前記支持部材に形成され且つ走行風を前記フロントサイドフレームより車幅方向外側へ排出可能な排出口を備え、
前記第2熱交換器を通過した走行風を前記排出口へ案内する案内流路を形成したことを特徴とする請求項5または6に記載の車両の前部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−63039(P2011−63039A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212677(P2009−212677)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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