説明

車両の前部車体構造

【課題】フードパネル側から歩行者の頭部や大腿部等が衝突した際の抗力を抑制できるとともに、バンパ側からの軽衝突に対しては十分な抗力を確保することができる車両の前部車体構造を提供する。
【解決手段】ヘッドランプの上部側でラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9とを連結するラジエータサイドアッパ20を樹脂製の部材で構成し、ラジエータサイドアッパ20の各端部寄りにヘッドランプ11の固定部(上部側固定部25)を設定するとともに、ラジエータサイドアッパ20の中央部にヘッドランプ11への上方からの入力荷重を伝達可能なランプ荷重伝達部26を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータパネルの側方にヘッドランプが配設された車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両の車体前部には、ラジエータコアや冷却ファン等を収容するラジエータパネルが配設され、このラジエータパネルの上部は、車体の側部骨格を構成するフレームサイドアッパ等の側部骨格部材に、ラジエータサイドアッパ等の連結体を介して連結されている。ここで、ラジエータサイドアッパ等の連結体は、板金部材で構成されることが一般的であり、ラジエータパネルの側方に配設されたヘッドランプの上部側を支持するランプソケットとしても機能する。
【0003】
ここで、この種の前部車体構造において、フロントバンパ側からの軽衝突時にフードパネル等が損傷することを防止するため、ヘッドランプの支持構造には、車体前方からの衝撃荷重に対して十分な抗力を確保することが要求される。そこで、例えば、特許文献1には、閉じた状態のフードパネルの前側縁部の下方に位置する当接部をヘッドランプハウジングに設け、この当接部をシュラウド(ラジエータパネル)の側壁部の上部に設けた被当接部に当接させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−112322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その一方で、歩行者保護の観点からすると、ヘッドランプの支持構造には異なる要求がなされる。すなわち、フードパネル側から歩行者の頭部や大腿部等が衝突した際の傷害値を軽減するため、上方からの衝撃荷重に対しては、ヘッドランプまわりの抗力が小さく設定されていることが望ましい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、フードパネル側から歩行者の頭部や大腿部等が衝突した際の抗力を抑制できるとともに、フロントバンパ側からの軽衝突に対しては十分な抗力を確保することができる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体の前部に位置するラジエータパネルと、車体の側部に位置する側部骨格部材と、前記ラジエータパネルと前記側部骨格部材との間に配設されたヘッドランプと、を備えた車両の前部車体構造において、前記ヘッドランプの上部側で前記ラジエータパネルと前記側部骨格部材とを連結する樹脂製の上部連結体を備え、前記上部連結体の各端部寄りに、前記ヘッドランプの固定部を設定すると共に、前記上部連結体の中央部に、前記ヘッドランプへの上方からの入力荷重を伝達可能なランプ荷重伝達部を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両の前部車体構造によれば、フードパネル側から歩行者の頭部や大腿部等が衝突した際の抗力を抑制できるとともに、バンパ側からの軽衝突に対しては十分な抗力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両前部の外観を示す斜視図
【図2】ランプブラケット及びヘッドランプを取り外した状態の車体前部を示す分解斜視図
【図3】ヘッドランプを取り外した状態の車体前部を示す分解斜視図
【図4】ヘッドランプを取り付けた状態の車体前部を示す斜視図
【図5】ランプブラケット及びヘッドランプの斜視図
【図6】図1のVI−VI線に沿ってブラケットの取り付け状態を示す要部断面図
【図7】ランプブラケットとヘッドランプとの関係を図6のVII−VII線に沿って示す要部断面図
【図8】ランプブラケットとヘッドランプ及びバッファ部材との関係を図6のVIII−VIII線に沿って示す要部断面図
【図9】ランプブラケットの変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は車両前部の外観を示す斜視図、図2はランプブラケット及びヘッドランプを取り外した状態の車体前部を示す分解斜視図、図3はヘッドランプを取り外した状態の車体前部を示す分解斜視図、図4はヘッドランプを取り付けた状態の車体前部を示す斜視図、図5はランプブラケット及びヘッドランプの斜視図、図6は図1のVI−VI線に沿ってブラケットの取り付け状態を示す要部断面図、図7はランプブラケットとヘッドランプとの関係を図6のVII−VII線に沿って示す要部断面図、図8はランプブラケットとヘッドランプ及びバッファ部材との関係を図6のVIII−VIII線に沿って示す要部断面図、ランプブラケットの変形例を示す斜視図である。
【0011】
図2乃至図4に示すように、自動車等の車両1を構成する車体2の前部下方には、前後方向に延在する左右一対のフロントサイドフレーム5が配設され、これらフロントサイドフレーム5の前部には、ラジエータパネル6の左右側部が連結されている。さらに、フロントサイドフレーム5の前端部はラジエータパネル6よりも前方に突出されており、当該前端部には、フロントバンパ15(図1参照)を構成するバンパビーム7が固設されている。
【0012】
また、フロントサイドフレーム5よりも上方で車幅方向外側にオフセットした位置には、トーボード8側から前方に延在する側部骨格部材としてのフレームサイドアッパ9が配設され、これらフレームサイドアッパ9には図示しないブラケットを介してフェンダパネル16が支持されている(図1,6参照)。また、左右のフェンダパネル16の間には、エンジンルームを開閉するフードパネル17が配設されている。
【0013】
ラジエータパネル6は、ラジエータロアフレーム6lと、このラジエータロアフレーム6lの上方に略平行なラジエータアッパフレーム6uと、両フレーム6l,6uの両端部を連結する左右一対のラジエータサイドフレーム6sとを有して構成され、内部にラジエータコアや冷却ファン等(図示せず)を収容する。
【0014】
このラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9との間には、ランプブラケット10を介して、ヘッドランプ11が支持されている。
【0015】
図5,6に示すように、ランプブラケット10は、ヘッドランプ11の上部側でラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9との間に架設するラジエータサイドアッパ20と、ヘッドランプ11の下部側でラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9との間に架設するラジエータサイドロア21と、これらラジエータサイドアッパ20及びラジエータサイドロア21の車幅方向内側端部及び外側端部にそれぞれ連設する内側連結部22及び外側連結部23とが、樹脂成型によって一体形成された井桁状の部材で構成されている。
【0016】
そして、例えば、内側連結部22がボルト締結等によってラジエータパネル6のアッパフレーム6u及びサイドフレーム6sに連結され、外側連結部23がボルト締結等によってフレームサイドアッパ9に連結されることにより、ラジエータサイドアッパ20及びラジエータサイドロア21は上部連結体及び下部連結体として機能する。
【0017】
また、ラジエータサイドアッパ20上において、内側連結部22及び外側連結部23にそれぞれ近接する各端部寄りの領域は、ヘッドランプ11の上部側を固定するための上部側固定部25として設定され、これら上部側固定部25には上方に開口するネジ孔25aが穿設されている。
【0018】
また、ラジエータサイドアッパ20の中央部には、ヘッドランプ11への上方からの入力荷重を伝達可能なランプ荷重伝達部26が設定されている。さらに、ラジエータサイドアッパ20の中央部には、フードパネル17の前側縁辺部の内面側に固設されたフードバッファ17aが当接するバッファ当接部27が、ランプ荷重伝達部26に近接して設定されている。なお、ラジエータサイドアッパ20の中央部とは、厳密な中央部である必要はなく、例えば、入力荷重に対してラジエータサイドアッパ20の両端部に略同等のモーメントを生じさせ得る位置であればよい。
【0019】
一方、ラジエータサイドロア21上において、内側連結部22及び外側連結部23にそれぞれ近接する各端部寄りの領域は、ヘッドランプ11の下部側を固定するための下部側固定部28として設定され、これら下部側固定部28には前方に開口するネジ孔28aが穿設されている。
【0020】
ヘッドランプ11は、前照灯や方向指示灯が一体に組み込まれた所謂コンビネーションヘッドランプで構成されている。このヘッドランプ11は、発光ダイオードやHIDバルブ等を光源として収容するランプ本体30を有し、このランプ本体30の前面開口部がレンズ部31によって閉塞されている。
【0021】
また、ランプ本体30の裏面側の上縁からは、各上部側固定部25に対応する上部側取付片32が突設されている。本実施形態において、上部側取付片32は、先端側が後方に折曲された側面視略”逆L”字状をなす部材で構成され、この上部側取付片32の先端部には上部側固定部25のネジ孔25aに対応するネジ孔32aが穿設されている。そして、これらネジ孔25a,32aを通じた締結により、上部側取付片32は、対応する上部側固定部25に固定されている。ここで、各上部側取付片32の上面にはノッチ32bが刻設されており、これにより、上部側取付片32は、特に上方からの衝撃に対して脆弱な構成となっている。
【0022】
また、ランプ本体の裏面側上縁からは、ランプ荷重伝達部26に対応する荷重伝達部材34が突設されている。本実施形態において、この荷重伝達部材34は、先端側が後方に折曲された側面視略”逆L”字状をなす部材で構成され、先端部がランプ荷重伝達部26に対向されている。
【0023】
一方、ランプ本体30の裏面側の下縁からは、各下部側固定部28に対応する下部側取付片35が突設され、この下部側取付片35の先端部には下部側固定部28のネジ孔28aに対応するネジ孔35aが穿設されている。そして、これらネジ孔28a,35aを通じた締結により、下部側取付片35は、対応する下部側固定部28に固定されている。
【0024】
このような実施形態によれば、ヘッドランプ11の上部側でラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9とを連結するラジエータサイドアッパ20を樹脂製の部材で構成し、ラジエータサイドアッパ20の各端部寄りにヘッドランプ11の固定部(上部側固定部25)を設定するとともに、ラジエータサイドアッパ20の中央部にヘッドランプ11への上方からの入力荷重を伝達可能なランプ荷重伝達部26を設定することにより、フードパネル17側から歩行者の頭部や大腿部等が衝突した際の抗力を抑制できると共に、フロントバンパ15側からの軽衝突に対しては十分な抗力を確保することができる。
【0025】
すなわち、ラジエータサイドアッパ20を樹脂製の部材で構成し、ラジエータサイドアッパ20の中央部にランプ荷重伝達部26を設定することにより、例えば、図7に示すように、歩行者の頭部100等がフードパネル17側から衝突して、ヘッドランプ11に対して上方からの荷重が入力された場合には、当該入力荷重が荷重伝達部材34及びランプ荷重伝達部26を通じてラジエータサイドアッパ20の中央部に伝達される。これにより、ラジエータサイドアッパ20上には大きなモーメントが発生する。そして、ラジエータサイドアッパ20は、樹脂製の部材で構成されていることから、前記モーメントによって容易に破断される。従って、フードパネル17側から歩行者の頭部100等が衝突した際の抗力を抑制することができる。
【0026】
その一方で、ヘッドランプ11の上部側固定部25はラジエータサイドアッパ20の各端部寄り(すなわち、ラジエータパネル6及びフレームサイドアッパ9の近傍)に設定されていることから、ラジエータサイドアッパ20を樹脂製とした場合にも、フロントバンパ15側からの軽衝突に対しては十分な抗力を確保することができる。
【0027】
その際、フードバッファ17aが当接するバッファ当接部27についても、ランプ荷重伝達部26に近接してラジエータサイドアッパ20上に設定することにより、フードパネル17側から歩行者の頭部100等が衝突した際の抗力をより効果的に抑制することができる(図8参照)。
【0028】
また、ヘッドランプ11の下部側でラジエータパネル6とフレームサイドアッパ9とを連結するラジエータサイドロア21を樹脂製の部材で構成し、ヘッドランプ11の下部側固定部28をラジエータサイドロア21の各端部寄りに設定すると共に、当該ラジエータサイドロア21をラジエータサイドアッパ20と一体成型して井桁状のランプブラケット10を構成することにより、フロントバンパ15側からの軽衝突に対する抗力をより効果的に発生させることができると共に、部品点数を削減して組立性等を向上させることができる。
【0029】
ここで、上述の実施形態は、ラジエータパネル6と各ランプブラケット10とを別体の部材で構成した一例について説明するものであるが、例えば、図9に示すように、ラジエータパネル6を樹脂化することにより、ランプブラケット10と一体形成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 … 車両
2 … 車体
5 … フロントサイドフレーム
6 … ラジエータパネル
7 … バンパビーム
8 … トーボード
9 … フレームサイドアッパ(側部骨格部材)
10 … ランプブラケット
11 … ヘッドランプ
15 … フロントバンパ
16 … フェンダパネル
17 … フードパネル
17a … フードバッファ
20 … ラジエータサイドアッパ(上部連結体)
21 … ラジエータサイドロア(下部連結体)
22 … 内側連結部
23 … 外側連結部
25 … 上部側固定部
25a … ネジ孔
26 … ランプ荷重伝達部
27 … バッファ当接部
28 … 下部側固定部
28a … ネジ孔
30 … ランプ本体
31 … レンズ部
32 … 上部側取付片
32a … ネジ孔
32b … ノッチ
34 … 荷重伝達部材
35 … 下部側取付片
35a … ネジ孔
100 … 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に位置するラジエータパネルと、
車体の側部に位置する側部骨格部材と、
前記ラジエータパネルと前記側部骨格部材との間に配設されたヘッドランプと、を備えた車両の前部車体構造において、
前記ヘッドランプの上部側で前記ラジエータパネルと前記側部骨格部材とを連結する樹脂製の上部連結体を備え、
前記上部連結体の各端部寄りに、前記ヘッドランプの固定部を設定すると共に、
前記上部連結体の中央部に、前記ヘッドランプへの上方からの入力荷重を伝達可能なランプ荷重伝達部を設定したことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記上部連結体の中央部の前記ランプ荷重伝達部に近接する位置に、車体のフードパネルの前側縁辺部に固設されたフードバッファが当接するバッファ当接部を設定したことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記上部連結体の各端部は、前記ヘッドランプの下部側で前記ラジエータパネルと前記側部骨格部材とを連結する下部連結体の各端部と井桁状に連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記上部連結体は、前記ラジエータパネルと一体形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−71675(P2012−71675A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217673(P2010−217673)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】