説明

車両の前部車体構造

【課題】簡単かつコンパクトな構成で車両の前突時に駆動機構用のパワー制御ユニットを車体側支持部材から確実に離脱できるようにする。
【解決手段】車室前方側の駆動機構格納ルーム内に配設された駆動機構用のパワー制御ユニットが複数の取付ブラケット21〜23を介して車体側支持部材6に取り付けられるとともに、上記取付ブラケット21〜23がそれぞれ二個所で締結ボルト等からなる締結部材を介して上記車体側支持部材6に締結固定されるともに、各締結部材による締結部に切欠きが形成され、上記取付ブラケット21〜23の少なくとも一つは、上記締結部が、パワー制御ユニットの取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されるとともに、車両の前突時に上記車体側支持部材6から取付ブラケットを容易に離脱させる離脱容易化部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室前方側の駆動機構格納ルーム内に配設された駆動機構用のパワー制御ユニットが、複数の取付ブラケットを介して車体側支持部材に取り付けられた車両の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車両外部から過大な衝撃が加わった場合にパワー制御ユニットの適切な保護を図ることを目的として、車両に搭載されて電力の制御を行なうパワー制御ユニットと、パワー制御ユニットが載置されるとともに車両のサイドメンバに対して片持ちの状態で固定されるトレイと、トレイに隣り合って設けられて車両の駆動源を支持するエンジンマウントからなる支持部材とを備え、上記トレイは、パワー制御ユニットに外力が加わった場合にパワー制御ユニットを所定の方向に案内するガイド部を有し、ガイド部は、支持部材に固定されるように構成されたパワー制御ユニットの支持構造において、車両が前面衝突してパワー制御ユニットに車両前方から過大な衝撃が加わった場合に、該パワー制御ユニットを上記トレイから容易に離脱させるための離脱構造を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたパワー制御ユニットの支持構造では、上記パワー制御ユニットを収容するケースの前面、後面および側面にそれぞれ設けられてトレイからなる車体側支持部材に締結固定される取付ブラケットに長孔または一端部が開口した切欠き等からなる係止部が形成され、該係止部を挿通する締結ボルトにより上記取付ブラケットがトレイに離脱可能な状態で締結されている。この構成によれば、車両の前突時に上記パワー制御ユニットを車両の後方側へ付勢する衝突荷重に応じ、上記パワー制御ユニット、ケースおよび取付ブラケットを一体にトレイから離脱させることできるため、車体側部材または車載機器にパワー制御ユニットが当接することに起因した損傷等を防止することが可能である。
【0005】
しかし、上記パワー制御ユニットを収容するケースの前面、後面および側面にそれぞれ取付ブラケットが突設されているため、上記パワー制御ユニットを設置するために大きなスペースが必要であり、該パワー制御ユニットの支持構造を簡略化することができないという問題があった。なお、上記パワー制御ユニットのスペースをコンパクト化するために上記取付ブラケットを小型化することも考えられるが、この場合には、取付ブラケットの剛性を充分に確保することが困難となり、該取付ブラケットによる上記パワー制御ユニットを安定して支持することができないという問題がある。また、車両の前突時に上記取付ブラケットが大きく変形し易いため、上記締結ボルトを切欠きの外方へ移動させることが困難となって、パワー制御ユニットをトレイから離脱させることできなくなる可能性があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単かつコンパクトな構成で車両の前突時に上記パワー制御ユニットを車体側支持部材から確実に離脱させることができる車両の前部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車室前方側の駆動機構格納ルーム内に配設された駆動機構用のパワー制御ユニットが、複数の取付ブラケットを介して車体側支持部材に取り付けられるとともに、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記パワー制御ユニットを車体側支持部材から離脱させるための切欠きが、上記取付ブラケットまたは車体側支持部材の少なくとも一方に設けられた車両の前部車体構造において、上記複数個の取付ブラケットは、それぞれ二個所が締結部材を介して上記車体側支持部材に締結固定されるともに、各締結部材による締結部に上記切欠きが形成され、上記取付ブラケットの少なくとも一つは、上記締結部が、パワー制御ユニットの取付部に対して車体側支持部材の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されるとともに、車両の前突時に上記車体側支持部材から取付ブラケットを容易に離脱させる離脱容易化部を備えたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の前部車体構造において、上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向一方側部位を車体側支持部材に取り付ける第1取付ブラケットを含み、該第1取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の中間位置が、上記第1取付ブラケットに設けられたパワー制御ユニットの取付部よりも車体側支持部材の車幅方向中央側に配設され、かつ上記両締結部のうち車体側支持部材の車幅方向外方側に位置する締結部には、上記第1取付ブラケットに設けられた前方開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠きが形成され、あるいは上記車体側支持部材に設けられた後端開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に傾斜しつつ車両前方側に延びる切欠きが形成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の前部車体構造において、上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向中間部を車体側支持部材の後部に取り付ける第2取付ブラケットを含み、該第2取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の一方が、上記パワー制御ユニットの取付部と平面視で重なる位置に配設されるとともに、該一方の締結部には、車体側支持部材に設けられた後端開放部から車両の前方側に延びる切欠きが形成され、かつ上記両締結部の他方が、パワー制御ユニットの取付部に対して平面視で車幅方向にオフセットした位置に配設され、上記第2取付ブラケットには、上記一方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを連結する前面板が設けられるとともに、上記他方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを連結する側面板が設けられたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向他方側部位を車体側支持部材に取り付ける第3取付ブラケットを含み、該第3取付ブラケットの後方側部には、上記駆動機構格納ルームの側方部から車幅方向中央側に向けて突出するルーム側壁部または車両装備品に対向するとともに、車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びるガイド部が設けられたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、上記駆動機構格納ルームの前部には、シュラウドアッパが車幅方向に架設され、該シュラウドアッパと上記パワー制御ユニットとの間に該パワー制御ユニットよりも脆弱な車両用補機が配設されたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、上記取付ブラケットの車幅方向寸法を効果的にコンパクト化して該取付ブラケットが上記車体側支持部材の側方に大きく突出した状態となるのを効果的に防止できるとともに、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記切欠きの設置部を大きく変形させることなく、該切欠きの外方に上記締結ボルトをスムーズに移動させることにより、上記車体側支持部材から第1取付ブラケットを容易に離脱させることができ、上記パワー制御ユニットが車体側部材または車載機器に当接して損傷するという事態の発生等を効果的に防止できるという利点がある。
【0013】
請求項2に係る発明では、パワー制御ユニットの車幅方向一方側部位を車体側支持部材に取り付ける第1取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の中間位置を、上記第1取付ブラケットに設けられたパワー制御ユニットの取付部よりも車体側支持部材の車幅方向中央側に配設し、かつ上記両締結部のうち車体側支持部材の車幅方向外方側に位置する締結部に、上記第1取付ブラケットに設けられた前方開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠きを形成し、あるいは上記車体側支持部材に設けられた後端開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に傾斜しつつ車両前方側に延びる切欠きを形成したため、上記第1取付ブラケットの車幅方向寸法を効果的にコンパクト化することにより、該第1取付ブラケットが上記車体側支持部材の側方に大きく突出した状態となるのを防止しつつ、上記締結部材により第1取付ブラケットの二個所を車体側支持部材に安定して取り付けることができる。また、両締結部の中間位置をパワー制御ユニットの取付部よりも車体側支持部材の車幅方向中央側に配設した構成と、上記両締結部のうち、車体側支持部材の車幅方向外方側に位置する締結部に、車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠きを設けた構成とを採用することにより、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記車体側支持部材から第1取付ブラケットを容易に離脱させる離脱容易化部を形成したため、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニットに作用する後方荷重および回転モーメントに応じて、上記切欠きを変形させることなく、該切欠きの外方に上記締結ボルトをスムーズに移動させることにより、上記車体側支持部材から第1取付ブラケットを容易に離脱させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、パワー制御ユニットの車幅方向中間部を車体側支持部材の後部に取り付ける第2取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の一方を、上記パワー制御ユニットの取付部と平面視で重なる位置に配設するとともに、上記一方の締結部に、車体側支持部材に設けられた後端開放部から車両の前方側に延びる切欠きを形成し、かつ上記両締結部の他方を、パワー制御ユニットの取付部に対して平面視で車幅方向にオフセットした位置に配設することにより、上記第2取付ブラケットを、上記両締結部の車幅方向中間位置が、上記パワー制御ユニットの取付部に対して車体側支持部材の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成したため、上記第2取付ブラケットの車幅方向寸法を効果的にコンパクト化することにより、該第2取付ブラケットが上記車体側支持部材の側方に大きく突出した状態となるのを防止しつつ、上記締結部材により第2取付ブラケットの二個所を車体側支持部材に安定して取り付けることができる。そして、第2取付ブラケットに前面板および側面板を設けることにより該第2取付ブラケットをボックス状に形成し、上記一方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを上記前面板により連結するとともに、上記他方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを側面板により連結したため、上記第2取付ブラケットの剛性を簡単かつ軽量な構成で充分に確保することができ、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニットから第2取付ブラケットに入力される荷重に応じて該第2取付ブラケットが大きく変形するのを効果的に抑制して上記車体側支持部材から第2取付ブラケットを容易に離脱させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、上記パワー制御ユニットの車幅方向他方側部位を車体側支持部材に取り付ける第3取付ブラケットと、駆動機構格納のルーム側壁部等との間に大きな隙間を確保する必要がなく、上記第3取付ブラケットの側端部を駆動機構格納のルーム側壁部等に近接した位置まで拡張した構造とすることが可能であり、上記第3取付ブラケットの剛性を充分に確保して、車両の前突時に該第3取付ブラケットが大きく変形するのを効果的に抑制することができる。したがって、上記第3取付ブラケットを左右非対称に形成したにも拘わらず、車両の前突時に、上記第3取付ブラケットが変形することに起因した離脱不良の発生を効果的に抑制し、上記締結部材を切欠きの外方にスムーズに移動させることにより、上記車体側支持部材から第3取付ブラケットを容易に離脱させることができるという利点がある。
【0016】
請求項5に係る発明では、上記駆動機構格納ルームの前部に、シュラウドアッパが車幅方向に架設された車両の前部車体構造において、該シュラウドアッパと上記パワー制御ユニットとの間に該パワー制御ユニットよりも脆弱な車両用補機を配設したため、上記エアクリーナの前後両端部を上記シュラウドアッパとパワー制御ユニットにより安定して支持することができ、通常の走行時に上記エアクリーナが振動すること等を効果的に防止できるという利点がある。さらに、車両の前突時には、上記脆弱な車両用補機であるエアクリーナを衝撃緩和部材として利用することにより、上記パワー制御ユニットの損傷を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両の前部車体構造の実施形態を示す平面図である。
【図2】車体側支持部および取付ブラケットの設置状態を示す平面図である。
【図3】車体側支持部および取付ブラケットの具体的構成を示す平面図である。
【図4】車体側支持部および取付ブラケットの設置状態を示す側面図である。
【図5】第1取付ブラケットの具体的構成を示す平面図である。
【図6】第2取付ブラケットの具体的構成を示す分解斜視図である。
【図7】第3取付ブラケットの具体的構成を示す平面図である。
【図8】本発明に係る車両の前部車体構造の別の実施形態を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図4は、本発明に係る車両の前部車体構造の実施形態を示している。該車両には、エンジン1およびトランスアクスル装置2等を備えた駆動機構3が格納される駆動機構格納ルーム4が車室の前方側に設けられている。該駆動機構格納ルーム4内には、上記駆動機構3の電力制御を行うパワー制御ユニット5を支持する車体側支持部材6が上記トランスアクスル装置2の前部上方に配設されるとともに、その前方側には、上記パワー制御ユニット5よりも脆弱な車両補用機であるエアクリーナ7が配設されている。
【0019】
上記車体側支持部材6は、鋼板材をプレス成形する等により、平面視で前部左右および後部中央を頂点とする三角形状に形成され、その前部には上記エアクリーナ7の後端部が連結される左右一対の連結ブラケット8,9がスポット溶接される等の手段で固定されている。該連結ブラケット8,9の前部から上方に突設された係止具10が上記エアクリーナ7の後端部下面に形成された係合孔等に挿入されて係止されることにより、該エアクリーナ7の後端部が上記連結ブラケット8,9を介して車体側支持部材6に連結されて支持されるように構成されている。
【0020】
また、上記エアクリーナ7から車両の前方側に向けて延びるように設置された吸気取入部12が、駆動機構格納ルーム4の前部において車幅方向に架設されたシュラウドアッパ13の上面にボルト止めされる等の手段で取り付けられることにより、該シュラウドアッパ13と上記パワー制御ユニット5とを介して該パワー制御ユニット5よりも脆弱な車両用補機である上記エアクリーナ7の前後両端部が支持されるようになっている。
【0021】
上記車体側支持部材6の前部に設けられた両連結ブラケット8,9のうち、駆動機構格納ルーム4の車幅方向外側(当実施形態では駆動機構格納ルーム4の左側)に位置する連結ブラケット8には、支持ブラケット14が取付ボルト15等により取り付けられている。上記支持ブラケット14は、駆動機構格納ルーム4内において車両の前後方向に延びるように設置されたフロントサイドフレーム16の上面に取付ボルト17等を介して取り付けられている。
【0022】
また、上記車体側支持部材6の中央部近傍およびその側方部には、上記駆動機構3をフロントサイドフレーム16に架装するために設けられたマウント部材(図示せず)に固定ボルト18等を介して固定される固定部19,20が設けられている。そして、上記取付ボルト17等を介して支持ブラケット14がフロントサイドフレーム16の上面に取り付けられるとともに、車体側支持部材6の固定部19,20が固定ボルト18等を介して上記マウント部材に止着されることにより、上記車体側支持部材6が前下がりの傾斜状態でフロントサイドフレーム16に取り付けられるように構成されている(図4参照)。
【0023】
上記車体側支持部材6の前部左右および後部には、上記パワー制御ユニット5を車体側支持部材6に取り付けるための第1〜第3取付ブラケット21〜23が配設されている。該第1〜第3取付ブラケット21〜23は、後述するようにそれぞれ二個所が車体側支持部材6に締結ボルトからなる締結部材を介して締結固定されるともに、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記パワー制御ユニット5を車体側支持部材6から離脱させるための切欠きが上記各締結部材による締結部に形成されている。
【0024】
上記パワー制御ユニット5の車幅方向一方側部位(当実施形態では駆動機構格納ルーム4内の車幅方向中央側部位)を車体側支持部材6の車幅方向一方側部位(前部右側)に取り付けるために設置された上記第1取付ブラケット21は、図5に示すように、上記パワー制御ユニット5の底部に配設されたウエルドナット等に螺着される取付ボルト24の挿通孔が形成された上面板25と、その車幅方向他方側部位に位置する側辺部から下方に延びる側面板26と、上記上面板25の後辺部から下方に延びる後面板27とを有している。
【0025】
上記第1取付ブラケット21の側面板26には、その下端部から車体側支持部材6の車幅方向中央側に延びる側部フランジ28が設けられるとともに、該側部フランジ28には、その前端に設けられた前方開放部から車両後方側に向けて真っ直ぐに延びる切欠き29が形成されている。そして、該切欠き29を挿通するように設置された締結ボルト30からなる締結部材が車体側支持部材6の下方に配設されたナット(図示せず)に螺着されることにより、上記第1取付ブラケット21の側部フランジ28が車体側支持部材6に離脱可能な状態で締結固定されるようになっている。
【0026】
一方、上記第1取付ブラケット21の後面板27には、その下端部から車両後方側に延びる後部フランジ31が設けられるとともに、該後部フランジ31には、上記後面板27の設置部に至る開口部32が形成されている。また、上記第1取付ブラケット21の後部フランジ31には、上記開口部32に連通した前方開放部から車体側支持部材6の車幅方向中央側(左側)に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠き33が形成されている。そして、該切欠き33を挿通するように設置された締結ボルト34からなる締結部材が車体側支持部材6の下方に配設されたナット(図示せず)に螺着されることにより、上記第1取付ブラケット21の後部フランジ31が車体側支持部材6に離脱可能な状態で締結固定されるようになっている。
【0027】
上記第1取付ブラケット21の二個所に設けられた両締結部の中間位置A、つまり上記切欠き29,33を挿通するように設置された上記締結ボルト30,34の設置部を結ぶ線の中間部位は、上記第1取付ブラケット21の上面板25に設けられた上記連結ボルトの挿通孔24からなるパワー制御ユニット5の取付部よりも車体側支持部材6の車幅方向中央側に配設されている。これにより上記第1取付ブラケット21は、上記両締結ボルト30,34による締結部が、上記取付ボルト24の挿通孔からなるパワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されている。
【0028】
上記のように両締結部の中間位置Aをパワー制御ユニット5の取付部よりも車体側支持部材6の車幅方向中央側に配設した構成と、上記両締結ボルト30,34による締結部のうち、車体側支持部材6の車幅方向外方側に位置する締結部(締結ボルト30による締結部)に、上記第1取付ブラケット21の後部フランジ31に設けられた前方開放部から車体側支持部材6の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠き33を設けた構成とを採用することにより、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記車体側支持部材6から第1取付ブラケット21を容易に離脱させる離脱容易化部が構成されている。
【0029】
すなわち、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5に後方荷重が作用すると、図5の矢印Fに示すように、上記取付ボルト24によりパワー制御ユニット5に連結された第1取付ブラケット21の上面板25を車両の後方側に押動する付勢力が作用する。そして、上記後方荷重Fに対応して、締結ボルト30,34の締結力に抗して第1取付ブラケット21の側部フランジ28および後部フランジ31をそれぞれ車両の後方側に移動させるとともに、上記締結ボルト34による締結部を中心として上記締結ボルト30による締結部、つまり上記後部フランジ31を図の時計方向に旋回させようとする回転モーメントMが作用する。
【0030】
このため、上記第1取付ブラケット21の側部フランジ28および後部フランジ31に形成された切欠き29,33の両方を、それぞれ前方開放部から車両の後方側へ真っ直ぐに延びるように形成した場合には、上記切欠き33を変形させなければ、上記回転モーメントMに応じて後部フランジ31を旋回させることができないため、切欠き29に沿って締結ボルト30をスムーズに移動させることが困難であり、上記車体側支持部材6から第1取付ブラケット21を容易に離脱させることはできない。
【0031】
これに対して図5に示すように、上記両締結ボルト30,34による締結部のうち、車体側支持部材6の車幅方向外方側に位置する締結部(締結ボルト34による締結部)に、上記第1取付ブラケット21の後部フランジ31に設けられた前方開放部から車体側支持部材6の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠き33を形成した場合には、該切欠き33を変形させることなく、上記回転モーメントMに応じて第1取付ブラケット21を旋回させつつ、上記締結ボルト34を切欠き33の外方にスムーズに移動させることが可能である。これにより上記車体側支持部材6から第1取付ブラケット21を容易に離脱させる離脱容易化部が構成されている。
【0032】
また、上記パワー制御ユニット5の車幅方向中間部を車体側支持部材6の後部に取り付けるために設けられた第2取付ブラケット22は、図6に示すように、締結ボルト36からなる一方の締結部材により車体側支持部材6の後部上面に締結固定される下部ブラケット37と、図外の取付ボルトを介してパワー制御ユニット5の後部下面に取り付けられるとともに、締結ボルト38にからなる他方の締結部材より車体側支持部材6の後部上面に締結固定される上部ブラケット39とを有している。
【0033】
上記下部ブラケット37は、締結ボルト36からなる締結部材の挿通孔40が形成された底面板41と、その前辺部から上方に起立するように設置された起立板42と、上記底面板41の一側辺部から上方に起立するように設置された側面板35とを有している。一方、上部ブラケット39は、上記取付ボルトの挿通孔43が形成された上面板44と、その前辺部から下方に垂下するように設置された垂下板45と、上記上面板44の一側辺部から下方に垂下するように設置された側面板46と、その下端部から側方に突設された取付フランジ47とを有している。
【0034】
上記上部ブラケット39の取付フランジ47には、その前端に設けられた前方開放部から車両の後方側に延びる切欠き48が形成されている。そして、上記締結ボルト38からなる他方の締結部材が、該切欠き48および上記車体側支持部材6に形成された挿通孔52を挿通するように設置されるとともに、該締結ボルト38が車体側支持部材6の後部下方に配設されたナット(図示せず)に螺着されることにより、上記上部ブラケット39の取付フランジ47が車体側支持部材6の後部上面に離脱可能な状態で締結固定されるようになっている。
【0035】
また、上記車体側支持部材6には、その後端に設けられた後方開放部から車両の前方側に延びる切欠き49が形成されている。そして、該切欠き49を上記締結ボルト36からなる一方の締結部材が挿通するように設置されるとともに、該締結ボルト36が上記底面板41の上方に配設されたナット(図示せず)に螺着されることにより、上記下部ブラケット37の底面板41が車体側支持部材6の後部上面に離脱可能な状態で締結固定されるようになっている。
【0036】
そして、上記下部ブラケット37の起立板42および側面板35と、上部ブラケット39の垂下板45および側面板46とがスポット溶接等の手段で一体に接合されることにより、下部ブラケット37の底面板41に設けられた上記締結ボルト36の挿通孔40からなる一方の締結部が、上記取付ボルトの挿通孔43からなるパワー制御ユニット5の取付部と平面視で重なる位置に配設されるとともに、上部ブラケット39の取付フランジ47に設けられた上記切欠き48からなる他方の締結部が、上記パワー制御ユニット5の取付部(挿通孔43)に対して平面視で車幅方向にオフセットした位置に配設されている。
【0037】
これにより、上記第2取付ブラケット22は、上部ブラケット39の上面板44に形成された挿通孔43からなるパワー制御ユニット5の取付部が車体側支持部材6の車幅方向外方側に偏在するとともに、上記下部ブラケット37の底面板41に設けられた上記締結ボルト36の挿通孔40および上部ブラケット39の取付フランジ47に設けられた上記切欠き48からなる両締結部の車幅方向中間位置が、上記パワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されている。
【0038】
また、上記締結ボルト36により締結される一方の締結部(挿通孔40)が設けられた下部ブラケット37の底面板41と、上記パワー制御ユニット5の取付部(挿通孔43)が設けられた上部ブラケット39の上面板44とを連結する前面板51が、下部ブラケット37の起立板42および上部ブラケット39の垂下板45により構成されている。さらに、上記締結ボルト38により締結される他方の締結部(切欠き48)が設けられた取付フランジ47と上記パワー制御ユニット5の取付部が設けられた上部ブラケット39の上面板44とが、上記下部ブラケット37の側面板35および上部ブラケット39の側面板46を介して連結されることにより、上記車体側支持部材6から第2取付ブラケット22を容易に離脱させる離脱容易化部が上記第2取付ブラケット22に設けられている。
【0039】
すなわち、上記第2取付ブラケット22を、下部ブラケット37の底面板41および上部ブラケット39の上面板44と、上記前面板51および側面板35,46とを有するボックス状に形成したため、上記第2取付ブラケット22の剛性を簡単かつ軽量な構成で充分に確保することができる。したがって、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5から上記第2取付ブラケット22に入力される荷重に応じて該第2取付ブラケット22が大きく変形するのを効果的に抑制し、該第2取付ブラケット22が変形することに起因した離脱不良の発生を効果的に抑制することができる。これにより車両の前突時に、上記締結ボルト36,38を切欠き49,48の外方へスムーズに移動させて、上記車体側支持部材6から第2取付ブラケット22を容易に離脱させることができるようになっている。
【0040】
上記パワー制御ユニット5の車幅方向他方側部位(当実施形態では駆動機構格納ルーム4内の車幅方向外方側部位)を車体側支持部材6の車幅方向他方側部位(前部左側)に取り付けるために設けられた第3取付ブラケット23は、図7に示すように、締結ボルト53,54により車体側支持部材6の車幅方向他方側部位に締結固定される下部ブラケット55と、該下部ブラケット55の上面にスポット溶接される等の手段で一体に接合された上部ブラケット56とを有している。
【0041】
上記第3取付ブラケット23の下部ブラケット55は、車体側支持部材6の車幅方向他方側部位に設けられた膨出部57上に固定される上面板58と、その車幅方向一側片部から下方に垂下するとともに、上記膨出部57の側壁面に固定される側面板59とを有している。また、上記下部ブラケット55には、上記駆動機構格納ルーム4の側方部から車幅方向中央側に向けて突出するように設置されたホイールハウス60(図に参照)の壁面等からなるルーム側壁部、または該ルーム側壁部に取り付けられた各種車両装備品等に対向するとともに、車体側支持部材6の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びるガイド部61が、上面板58の側部後方に設けられている。
【0042】
上記下部ブラケット55上面板58および側面板59には、その前端に形成された前方開放部から車両後方側に延びる切欠き62,63が形成されている。そして、締結ボルト53,54からなる締結部材が上記切欠き62,63を挿通するように設置されるとともに、該締結ボルト53,54が上記車体側支持部材6の前部下方側に配設されたナット(図示せず)に螺着されることにより、上記下部ブラケット55が車体側支持部材6の前部上面に離脱可能な状態で締結固定されるようになっている。
【0043】
上記第3取付ブラケット23の上部ブラケット56は、下部ブラケット55の上面にスポット溶接される等により一体に接合された取付基板64と、その車幅方向外側面部から上方に起立する起立板65とを有している。そして、上記パワー制御ユニット5の底部を第3取付ブラケット23に取り付ける取付ボルト66の挿通孔が、上部ブラケット56の取付基板64および下部ブラケット55の上面板58の後部近傍においてその車幅方向中間部に形成されている。また、上記パワー制御ユニット5の側面部を第3取付ブラケット23に取り付ける取付ボルトの挿通孔67(長孔)が、上記上部ブラケット56の起立板65に形成されている(図4参照)。
【0044】
上記締結ボルト53,54による第3取付ブラケットの締結部(切欠き62,63)が、上記下部ブラケット55の上面板58および側面板59に設けられるとともに、上記上部ブラケット56の取付基板64等に形成された取付ボルト66の挿通孔および上記上部ブラケット56の起立板65に形成された取付ボルトの挿通孔67からなるパワー制御ユニット5の取付部が、上部ブラケット56の取付基板64および下部ブラケット55の上面板58の車幅方向中間部に形成されている。これにより、上記第3取付ブラケット23は、上記締結ボルト53,54による締結部がパワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されている。
【0045】
また、上記のように第3取付ブラケット23の後方側部には、上記駆動機構格納ルーム4の側方部から車幅方向中央側に向けて突出するホイールハウス60の壁面からなるルーム側壁部等に沿って車体側支持部材6の車幅方向中央側および車両後方側に向けて傾斜しつつ延びるガイド部61が形成され、該ガイド部61により上記車体側支持部材6から第2取付ブラケット22を容易に離脱させる離脱容易化部が構成されている。
【0046】
すなわち、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5の取付部から入力される荷重に応じて車両後方側に第3取付ブラケット23が付勢された場合には、その後部側方に設けられた上記ガイド部61をホイールハウス60の壁面等に沿って摺動させることにより、上記第3取付ブラケット23をスムーズに移動させることができる。したがって、該第3取付ブラケット23とホイールハウス60等との間に大きな隙間を確保する必要がなく、第3取付ブラケット23の側端部をホイールハウス60等に近接した位置まで拡張した構造とすることが可能であり、上記第3取付ブラケット23の剛性を充分に確保して、車両の前突時に該第3取付ブラケット23が大きく変形するのを効果的に抑制することができる。これにより、車両の前突時に、上記第3取付ブラケット23が変形することに起因した離脱不良の発生を効果的に抑制し、上記締結ボルト53,54を切欠き62,63の外方にスムーズに移動させ、上記車体側支持部材6から第2取付ブラケット22を容易に離脱させ得るようになっている。
【0047】
上記のように車室前方側の駆動機構格納ルーム4内に、駆動機構3の電力制御を行うパワー制御ユニット5が、複数の取付ブラケット21〜23を介して車体側支持部材6に取り付けられるとともに、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記パワー制御ユニット5を車体側支持部材6から離脱させるための切欠きが上記取付ブラケット21〜23または車体側支持部材6の少なくとも一方に設けられた車両の前部車体構造において、上記複数個の取付ブラケット21〜23は、それぞれ二個所が締結ボルトからなる締結部材を介して上記車体側支持部材6に締結固定されるともに、各締結部材による締結部に上記切欠きが形成され、上記取付ブラケット21〜23の少なくとも一つは、上記締結部が、パワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されるとともに、車両の前突時に上記車体側支持部材6から取付ブラケット21〜23の少なくとも一つを容易に離脱させる離脱容易化部を備えた構造としたため、簡単かつコンパクトな構成で車両の前突時に上記パワー制御ユニット5を車体側支持部材6から確実に離脱させることができるという利点がある。
【0048】
すなわち、上記実施形態では、図5に示すように、パワー制御ユニット5の車幅方向一方側部位を車体側支持部材6に取り付ける第1取付ブラケット21の側部フランジ28および後部フランジ31に、該第1取付ブラケット21を車体側支持部材6に締結固定する締結ボルト30,34による締結部となる切欠き29,33を設けている。そして、該両締結部の中間位置Aを、上記第1取付ブラケット21の上面板25に設けられた取付ボルト24の挿通孔からなるパワー制御ユニット5の取付部よりも車体側支持部材6の車幅方向中央側に配設することにより、上記両締結部がパワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に第1取付ブラケット21を形成している。
【0049】
このため、パワー制御ユニット5の取付部が形成された上面板と、その左右両側辺部から下方に延びる左右一対の側板と、その下端部から側方に突設された左右一対の取付フランジとにより正面視でハット状に形成された従来周知の取付ブラケットを使用した場合に比べて、上記第1取付ブラケット21の車幅方向寸法を効果的にコンパクト化することにより、該第1取付ブラケット21が上記車体側支持部材6の側方に大きく突出した状態となるのを防止しつつ、上記締結ボルト30,34からなる締結部材により上記第2取付ブラケット21の二個所を車体側支持部材6に安定して取り付けることができる。したがって、エンジン1の他に駆動用電力発電機または駆動用電動機等が設けられたトランスアクスル装置2を有する駆動機構3が駆動機構格納ルーム4内に配設されたハイブリッド車両、または大出力の電動モータからなる駆動機構を備えた電気自動車用等において、該駆動機構の電力制御を行う大型のパワー制御ユニット5を上記駆動機構格納ルーム4内に効率よく配設できるという利点がある。
【0050】
そして、図5に示すように、上記両締結部の中間位置Aをパワー制御ユニット5の取付部よりも車体側支持部材6の車幅方向中央側に配設した構成と、上記両締結ボルト30,34による締結部のうち、車体側支持部材6の車幅方向外方側に位置する締結部(締結ボルト34による締結部)に、上記第1取付ブラケット21の後部フランジ31に設けられた前方開放部から車体側支持部材6の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠き33を設けた構成とを採用することにより、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記車体側支持部材6から第1取付ブラケット21を容易に離脱させるための離脱容易化部を形成したため、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5に作用する後方荷重Fおよび回転モーメントMに応じて、上記切欠き33を変形させることなく、該切欠き33の外方に上記締結ボルト34をスムーズに移動させることにより、上記車体側支持部材6から第1取付ブラケット21を容易に離脱できるという利点がある。
【0051】
なお、上記実施形態では、締結ボルト30,34の締結部に設けられた切欠き29,33を第1取付ブラケット21に設けた例について説明したが、上記車体側支持部材6に両切欠きの片方または両方を設けた構造としもよい。例えば、図8に示すように、上記車体側支持部材6に形成された開口部70に面した後端開放部から車体側支持部材6の前方側に真っ直ぐに延びる切欠き29aと、車体側支持部材6の後端に設けられた後端開放部から車体側支持部材6の車幅方向中央側に傾斜しつつ車両前方側に延びる切欠き33aとを設けた構造とすることもできる。
【0052】
また、上記実施形態では、図6に示すように、パワー制御ユニット5の車幅方向中間部を車体側支持部材6の後部に取り付ける第2取付ブラケット22の二個所に設けられた両締結部の一方(締結ボルト36の挿通孔40)を、上記パワー制御ユニット5の取付部(取付ボルトの挿通孔43)と平面視で重なる位置に配設するとともに、上記一方の締結部に、車体側支持部材6に設けられた後端開放部から車両の前方側に延びる切欠き49を形成し、かつ上記両締結部(締結ボルト38が挿通される切欠き48)の他方を、パワー制御ユニット5の取付部に対して平面視で車幅方向にオフセットした位置に配設することにより、上記両締結部の車幅方向中間位置を上記パワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在させた左右非対称に上記第2取付ブラケット22を形成したため、該第2取付ブラケット22の車幅方向寸法を効果的にコンパクト化して、第2取付ブラケット22が上記車体側支持部材6の側方に大きく突出した状態となるのを防止しつつ、上記締結ボルト36,38からなる締結部材により第2取付ブラケット22の二個所を車体側支持部材6に安定して取り付けることができる。
【0053】
そして、上記下部ブラケット37の底面板からなる一方の締結部が設置された部位と、上記パワー制御ユニット5の取付部が設置された上部ブラケット39の上面板44とを連結する前面板51と、上記他方の締結部が設置された取付フランジ47とパワー制御ユニット5の取付部が設置された部位(上部ブラケット39の上面板44)とを連結する側面板35,46とを備えたボックス形状に上記第2取付ブラケット22を形成したため、該第2取付ブラケット22を簡単かつ軽量な構成しつつ、その剛性を充分に確保することができる。
【0054】
したがって、上記パワー制御ユニット5の設置部を効果的にコンパクト化することができるとともに、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5から上記第2取付ブラケット22に入力される荷重に応じて該第2取付ブラケット22が大きく変形するのを効果的に抑制することができ、該第2取付ブラケット22が変形することに起因した離脱不良の発生を効果的に抑制することにより、車両の前突時に、上記締結ボルト36,38を切欠き49,48の外方へスムーズに移動させて、上記車体側支持部材6から第2取付ブラケット22を容易に離脱させることができるという利点がある。
【0055】
さらに、上記実施形態では、図2および図7に示すように、パワー制御ユニット5の車幅方向他方側部位を車体側支持部材6に取り付ける第3取付ブラケット23に近接した位置においてその後方側に、上記駆動機構格納ルーム4の側方部から車幅方向中央側に向けて突出するホイールハウス60の壁面等からなるルーム側壁部または車両装備品が配設された車両の前部車体構造において、該ルーム側壁部または車両装備品に沿って車体側支持部材6の車幅方向中央側および車両後方側に向けて傾斜しつつ延びるガイド部61を上記第3取付ブラケット23の後方側部に設けたため、車両の前面に障害物が衝突する前突事故の発生時に、上記パワー制御ユニット5の取付部から第3取付ブラケット23に入力される荷重に応じ、上記ガイド部61をホイールハウス60の壁面等に沿って摺動させることにより、上記第3取付ブラケット23をスムーズに移動させることができる。
【0056】
したがって、上記第3取付ブラケット23とホイールハウス60等との間に大きな隙間を確保する必要はなく、上記第3取付ブラケット23の側端部をホイールハウス60等に近接した位置まで拡張した構造とすることが可能であり、上記第3取付ブラケット23の剛性を充分に確保して、車両の前突時に該第3取付ブラケット23が大きく変形するのを効果的に抑制することができる。このため、上記第3取付ブラケット23に設けられた締結ボルト53,54による締結部をパワー制御ユニット5の取付部に対して車体側支持部材6の車幅方向中央側に偏在させた左右非対称形状に上記第3取付ブラケット23を形成したにも拘わらず、車両の前突時に、該第3取付ブラケット23が変形することに起因した離脱不良の発生を効果的に抑制し、上記締結ボルト53,54を切欠き62,63の外方にスムーズに移動させて、上記車体側支持部材6から第3取付ブラケット23を容易に離脱させることができるという利点がある。
【0057】
また、上記実施形態では、駆動機構格納ルーム4の前部にシュラウドアッパ13が車幅方向に架設された車両の前部車体構造において、上記シュラウドアッパ13とパワー制御ユニット5との間に、該パワー制御ユニット5よりも脆弱な車両用補機であるエアクリーナ7を配設した構造としたため、該エアクリーナ7の前後両端部を上記シュラウドアッパ13とパワー制御ユニット5により安定して支持することができ、通常の走行時において上記エアクリーナ7が振動すること等を効果的に防止できるという利点がある。さらに、車両の前突時には、上記脆弱な車両用補機であるエアクリーナ7を変形させることにより衝撃緩和部材として利用することができるため、上記パワー制御ユニット5の損傷を効果的に防止できるという利点がある。
【0058】
なお、上記実施形態では、第1〜第3取付ブラケット21〜23を締結ボルトからなる締結部材により車体側支持部材6に締結固定するように構成した例について説明したが、上記締結ボルトに限られず、リベットまたはファスナ等からなる従来周知の締結具を用いて第1〜第3取付ブラケット21〜23を車体側支持部材6に締結固定するようにしてもよいことは勿論である。また、上記第1〜第3取付ブラケット21〜23および車体側支持部材6は、鋼板材をプレス成形することに容易かつ適正に製造することができるが、その他、鋳造あるいは樹脂モールド成形等の手段で製造することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
3 駆動機構
4 駆動機構格納ルーム
5 パワー制御ユニット
6 車体側支持部材
7 エアクリーナ
13 シュラウドアッパ
21 第1取付ブラケット
22 第2取付ブラケット
23 第3取付ブラケット
30,34 締結ボルト(締結部材)
36,38 締結ボルト(締結部材)
46 側面板
51 前面板
53,54 締結ボルト(締結部材)
59 側面板
60 ホイールハウス(ルーム側壁部)
61 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前方側の駆動機構格納ルーム内に配設された駆動機構用のパワー制御ユニットが、複数の取付ブラケットを介して車体側支持部材に取り付けられるとともに、車両の前突時に作用する後方荷重に応じて上記パワー制御ユニットを車体側支持部材から離脱させるための切欠きが、上記取付ブラケットまたは車体側支持部材の少なくとも一方に設けられた車両の前部車体構造において、上記複数個の取付ブラケットは、それぞれ二個所が締結部材を介して上記車体側支持部材に締結固定されるともに、各締結部材による締結部に上記切欠きが形成され、上記取付ブラケットの少なくとも一つは、上記締結部が、パワー制御ユニットの取付部に対して車体側支持部材の車幅方向中央側に偏在した左右非対称に形成されるとともに、車両の前突時に上記車体側支持部材から取付ブラケットを容易に離脱させる離脱容易化部を備えたことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向一方側部位を車体側支持部材に取り付ける第1取付ブラケットを含み、該第1取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の中間位置が、上記第1取付ブラケットに設けられたパワー制御ユニットの取付部よりも車体側支持部材の車幅方向中央側に配設され、かつ上記両締結部のうち車体側支持部材の車幅方向外方側に位置する締結部には、上記第1取付ブラケットに設けられた前方開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びる切欠きが形成され、あるいは上記車体側支持部材に設けられた後端開放部から車体側支持部材の車幅方向中央側に傾斜しつつ車両前方側に延びる切欠きが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向中間部を車体側支持部材の後部に取り付ける第2取付ブラケットを含み、該第2取付ブラケットの二個所に設けられた両締結部の一方が、上記パワー制御ユニットの取付部と平面視で重なる位置に配設されるとともに、該一方の締結部には、車体側支持部材に設けられた後端開放部から車両の前方側に延びる切欠きが形成され、かつ上記両締結部の他方が、パワー制御ユニットの取付部に対して平面視で車幅方向にオフセットした位置に配設され、上記第2取付ブラケットには、上記一方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを連結する前面板が設けられるとともに、上記他方の締結部が設置された部位とパワー制御ユニットの取付部が設置された部位とを連結する側面板が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記離脱容易化形成部を備えた取付ブラケットは、上記パワー制御ユニットの車幅方向他方側部位を車体側支持部材に取り付ける第3取付ブラケットを含み、該第3取付ブラケットの後方側部には、上記駆動機構格納ルームの側方部から車幅方向中央側に向けて突出するルーム側壁部または車両装備品に対向するとともに、車体側支持部材の車幅方向中央側に向けて傾斜しつつ車両後方側に延びるガイド部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記駆動機構格納ルームの前部には、シュラウドアッパが車幅方向に架設され、該シュラウドアッパと上記パワー制御ユニットとの間に該パワー制御ユニットよりも脆弱な車両用補機が配設されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23084(P2013−23084A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159905(P2011−159905)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】