説明

車両の前部車体

【課題】車体前方から前突荷重が作用するときに、サブフレームの衝撃吸収をすることを可能にするとともに、車体の操縦安定性を向上することを可能にする。
【解決手段】フロントサイドフレーム16に、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部22と、この水平部から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部23と、この傾斜部23から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部24と、を備え、サブフレーム17の後部17bに、傾斜部23との間に変形許容空間S1を有して傾斜部23に結合するブラケット31を介して締結されるサブフレーム側後取付部56を備え、ブラケット31は、少なくともフロントサイドフレーム16の傾斜部23にサブフレーム後取付部56を締結するカラーナット32を下方から固定して周縁47が溶接され、サブフレーム側後取付部56とフロア側水平部24との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面61及び左右一対の側面62,62を有するステー21が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームが延ばされ、このフロントサイドフレームにサブフレームが取付けられる車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体は、車体前後方向に延ばされるフロントサイドフレームと、フロントサイドフレームに取付けられるサブフレームと、サブフレームの後端に設けられる後部マウントと、フロントサイドフレームのリヤエンド(フロア側水平部)に設けられ、リヤエンドと後部マウントとを連結する断面視でL字状のステーと、から構成される。
【0003】
この車両の前部車体によれば、車体前方から前突荷重が作用するときに、前突荷重を確実にフロントサイドフレームのリヤエンドに伝達することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−73243公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の車両の前部車体では、フロントサイドフレームのリヤエンド(フロア側水平部)に設けられ、リヤエンドと後部マウントとを断面視で直線状のL字状のステーで連結している。
このため、車体前方から前突荷重が作用するときに、折れ曲がりにくいステーでは前突荷重の衝撃吸収をし難い。また、サブフレームの後部マウントを支持するブラケットは、フロントサイドフレーム(縦フレーム)との接合範囲が少なく、フロントサイドフレーム溶接部分は、強度スキッド耐久テストにおいて剥がれやすくなる。
【0006】
なお、強度スキッド耐久テストとは、タイヤを固定し、車体に前後方向の荷重を入力し、車体耐久性を確認するテストである。
【0007】
本発明は、フロントサイドフレームの下面に接合されるブラケットの接合部分の接合強度の補完を図ることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。車体前方から前突荷重が作用するときに、サブフレームの衝撃吸収をすることができるとともに、車体の操縦安定性の向上を図ることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレームと、このフロントサイドフレームに取付けられるサブフレームと、を備える車両の前部車体において、フロントサイドフレームに、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部と、このフロント側水平部から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部と、この傾斜部から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部と、を備え、サブフレームの後部に、傾斜部との間に変形許容空間を有して傾斜部に結合するブラケットを介して締結されるサブフレーム後取付部を備え、ブラケットは、袋構造でありフロントサイドフレームの傾斜部に周縁が溶接され、サブフレーム後取付部とフロア側水平部との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面及び左右一対の側面を有するステーが設けられたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、ステーが、側面視で略S字形状に形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、ステーが、平面視で中央部の幅が前端部若しくは後端部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、ステーの上面に車体前後方向に延びるビードを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両の前部車体に、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレームと、このフロントサイドフレームに取付けられるサブフレームと、を備える。
フロントサイドフレームに、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部と、このフロント側水平部から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部と、この傾斜部から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部と、を備える。
サブフレームの後部に、傾斜部との間に変形許容空間を有して傾斜部に結合するブラケットを介して締結されるサブフレーム後取付部を備え、ブラケットは、袋構造でありフロントサイドフレームの傾斜部に周縁が溶接される。
サブフレーム後取付部とフロア側水平部との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面及び左右一対の側面を有するステーが設けられたので、傾斜部に接合されるブラケットの接合部分の接合強度の補完を図ることができる。例えば、タイヤを固定し、車体に前後方向の荷重を入力し、車体耐久性を確認する強度スキッド耐久テストにおいて、サブフレームの後部が取付けられるブラケットと、車体との接合部分のクラックを抑制することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ステーが、側面視で略S字形状に形成されたので、車体前方から前突荷重が作用するときにステーの折れ曲がりを促し、サブフレームの衝撃吸収をすることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、ステーが、平面視で中央部の幅が前端部若しくは後端部の幅よりも狭く形成されたので、車体の左右旋回時にブラケットの弾性変形を許容することができる。すなわち、変形しやすいブラケットを介して車体側にしなやかさを持たせることで、サブフレームを左右方向の荷重に対し移動しやすくした。この結果、車体の操縦安定性の向上を図ることができる。また、車体の左右旋回時に弾性変形を許容することができるので、車体に無理な力が作用せず、車体振動も低減することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、ステーの上面に車体前後方向に延びるビードを有するので、例えば、ステーが、側面視で略S字形状に形成されたり、ステーが、平面視で中央部の幅が前端部若しくは後端部の幅よりも狭く形成される場合にも、ステーに必要十分な強度を持たすことができる。これにより、車体耐久性を確認する強度スキッド耐久テストにおいて、ステーに必要十分な反力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施例1の車両の前部車体を示す側面図である。
【図2】図1に示された車両の前部車体の側面断面図である。
【図3】図1に示された車両の前部車体のフロントサブフレームの底面図である。
【図4】図1に示された車両の前部車体の底面から見た斜視図である。
【図5】図1に示された車両の前部車体のステーの底面図である。
【図6】図1に示された車両の前部車体のステーの拡大した側面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図5の8矢視図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】図5の10−10線断面図である。
【図11】図5の11−11線断面図である。
【図12】図1に示された車両の前部車体のステーの作用説明図である。
【図13】図1に示された車両の前部車体のステーの比較検討図である。
【図14】本発明に係る実施例2の車両の前部車体の側面断面図である。
【図15】図14に示された車両の前部車体の底面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0018】
図1〜図3に示されたように、車両10は、車体11の前部に、車室12とエンジンルーム13とを仕切るダッシュボードロアパネル15と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム16,16と、これらのフロントサイドフレーム16,16に取付けられるサブフレーム17と、このサブフレーム17とフロントサイドフレーム16,16との間に設けられるステー21,21(一方不図示)と、を備える。
車両の前部車体は、フロントサイドフレーム16、サブフレーム17及びステー21周りの構造である。
【0019】
フロントサイドフレーム16は、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部22と、このフロント側水平部22から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部23と、この傾斜部23から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部(リヤエンド若しくはフロントサイドフレームエクステンション)24と、を備える。
【0020】
フロント側水平部22には、サブフレーム17の前部17aを支持する前部マウント部26と、サブフレーム17の中間部17cを支持する中間部マウント部27と、が形成される。傾斜部23には、サブフレーム17の後部17bを支持する後部マウント部28が形成される。
【0021】
後部マウント部28は、サブフレーム17のサブフレーム側後取付部56が取付けられる袋構造を形成するブラケット31と、このブラケット31の裏面31aに(袋構造内に)下端32bが溶接され、ブラケット31にサブフレーム側後取付部56を取付けるボルト68がねじ込まれるカラーナット32と、ブラケット31に溶接され、カラーナット32の上端32aを支持する支持金具33と、からなる。
【0022】
ブラケット31は、フロントサイドフレーム16の傾斜部23に対して略水平に形成された水平な取付面41と、この水平な取付面41から前方に傾斜して延ばされた前傾斜面42と、これらの水平な取付面41及び前傾斜面42の左右端部から上方に延ばされ、フロントサイドフレーム16の傾斜部23の側部23a,23a(一方不図示)に溶接される左右の側面部43,43(一方不図示)と、前傾斜面42から車体前方に向けて斜め上方に延ばされ、フロントサイドフレーム16の傾斜部23に溶接される前部上縁45と、水平な取付面41から車体後方に向けて斜め下方に延ばされ、フロントサイドフレーム16の傾斜部23に溶接される後部下縁46と、からなる。
ブラケット31の袋構造は、水平な取付面41、前傾斜面42及び左右の側面部43,43で構成される。
【0023】
すなわち、ブラケット31は、少なくともフロントサイドフレーム16の傾斜部23に水平な取付面41の後部下縁46が溶接される部材であり、フロントサイドフレーム16の傾斜部23にブラケット31の周縁47が溶接される。
なお、ブラケット31の周縁47は、左右の側面部43,43の端部43a,43a、前部上縁45及び後部下縁46が相当する。また、符号48a〜48cは溶接部を示す。
【0024】
サブフレーム17は、車体前後方向に延ばされた左右の縦メンバ51,51と、これらの縦メンバ51,51の前端同士を繋ぐ前横メンバ52と、縦メンバ51,51の後端同士を繋ぐ後横メンバ53と、前部17a,17aに形成され、フロントサイドフレーム16の前部マウント部26で支持される前取付部54,54と、中間部17c,17cに形成され、フロントサイドフレーム16の中間部マウント部27で支持される中間取付部55,55と、後部17b,17bに形成され、フロントサイドフレーム16の後部マウント部28で支持されるサブフレーム側後取付部56,56と、を備える。
サブフレーム17は、サブフレーム17の後部17bが、傾斜部23との間に変形許容空間S1を有して傾斜部23に結合するブラケット31を介し締結される。
【0025】
図4〜図11に示されたように、ステー21は、側面視で略S字形状に形成される。
詳細には、ステー21は、略S字形状に車体前後方向に延ばされた上面61と、この上面61から車体下方に折り曲げられた左右の側面(折り曲げ部)62,62と、これらの側面62,62の先端から車幅方向に延ばされた左右のフランジ部63,63と、から構成される。
【0026】
上面61、左右の側面(折り曲げ部)62,62及び左右のフランジ部63,63は、平面視(若しくは底面視)で中央部21cの幅が前端部21a若しくは後端部21bの幅よりも狭く形成された幅狭部(くびれ部)64が形成される。
【0027】
上面61には、車体前後方向に沿って延ばされ、車体下方に突出させたビード65と、
前端部21aに設けられ、サブフレーム側後取付部56を貫通して後部マウント部28に締結されるボルト68を貫通させる前貫通孔66と、後端部21bに設けられ、フロントサイドフレーム16のフロア側水平部24に締結されるボルト69を貫通させる後貫通孔67と、が形成される。なお、フロア側水平部24にはボルト69がねじ込まれるナット71が溶接されている。
【0028】
すなわち、ステー21は、ブラケット31に取付けられるサブフレーム17のサブフレーム側後取付部56(図2参照)とフロア側水平部24との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面61及び左右一対の側面62,62を有する部材である。
【0029】
例えば、車両10の左右旋回時には、サブフレーム17(図3参照)にタイヤ横力が作用する。従って、サブフレーム17の後部17bは円滑に変形することが好ましい。図1〜図11に示された車両の前部車体では、ステー21に、平面視(若しくは底面視)で中央部21cの幅が前端部21a若しくは後端部21bの幅よりも狭く形成された幅狭部(くびれ部)64が形成されたので、ステー21の左右剛性を低減してサブフレーム17の後部17bの左右方向の変形を許容することができ、タイヤ横力をスムーズに吸収することができる。この結果、車両10の操縦安定性の向上を図ることができる。
【0030】
図12(a)〜(d)に車体前方から前突荷重が作用したときのステー21の変形の様子が示される。
(a)において、車体前方から矢印a1の如く前突荷重が作用する。
【0031】
(b)において、ステー21は、側面視で略S字形状に形成されているので、ステー21は、矢印a2の如く、さらに略S字形状が強く変形される。このときに、ステー21は、ブラケット31に取付けられるサブフレーム側後取付部56と、フロア側水平部24との間に渡されているので、前突荷重を吸収することができるとともに、傾斜部23に接合されるブラケット31の接合部分の接合強度の補完を図ることができる。
【0032】
(c)において、ステー21は、(b)に示された状態よりも、矢印a3の如く、さらに強いカーブの略S字形状に変形される。この状態では、(b)に示された状態よりも、サブフレーム17の後部17bと傾斜部23との間の変形許容空間S1が狭まる。
【0033】
(d)において、サブフレーム17の後部17bと傾斜部23との間の変形許容空間S1に、サブフレーム17が車体後方に移動され、変形許容空間S1は、消滅する。
【0034】
図1〜図11に示された車両の前部車体では、サブフレーム17の後部17bに変形許容空間S1を確保し、側面視で略S字形状のステー21の前端部21aをサブフレーム17の後部17bとともにブラケット31に共締めし、ステー21の後端部21bをフロントサイドフレーム16のフロア側水平部24に締結したので、車体前方から前突荷重がサブフレーム17に作用するときに、サブフレーム17の変形を許容するとともに、前突荷重の衝撃吸収をも可能とすることができる。
【0035】
さらに、ステー21は、側面視で略S字形状なので、上下に屈曲し変形可能であり、サブフレーム17の変形許容空間S1での変形を阻害することはない。
【0036】
図13(a)に比較例1の車両の前部車体が示される。比較例1の車両の前部車体は、図1〜図11に示された実施例1の車両の前部車体に比較して、ステー21を省いた構造であり、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュボードロアパネル115と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム116と、このフロントサイドフレーム116に取付けられるサブフレーム117と、から構成される。
【0037】
比較例1の車両の前部車体では、サブフレーム117の後部117bとフロントサイドフレーム116のフロア水平部114との間にステーがないので、車体前方から前突荷重が作用するときに、サブフレーム117に作用する前突荷重がサブフレーム117を支持するフロントサイドフレーム116のブラケット111に集中する。従って、サブフレーム117に前突荷重が作用するときに、フロントサイドフレーム116からブラケット111が剥がれやすい。
【0038】
図13(b)に比較例2の車両の前部車体が示される。比較例2の車両の前部車体は、図1〜図11に示された実施例1の車両の前部車体に比較して、ストレート形状のステー131を用いた構造であり、車室とエンジンルームとを仕切るダッシュボードロアパネル125と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム126と、このフロントサイドフレーム126に取付けられるサブフレーム127と、このサブフレーム127とフロントサイドフレーム126との間に設けられるストレート形状のステー131と、を備える。
ストレート形状のステー131は、実施例1のステー21に比べて側面視で略S字形状でなく、且つ幅狭部(くびれ部)64を有するものではない。
【0039】
すなわち、ストレート形状のステー131は、側面視で略S字形状でないので、車体前方から前突荷重が作用する場合に、ステー131の変形が円滑に促進されず、前突荷重の吸収が不十分となる。また、サブフレーム127の後部127bとフロントサイドフレーム126のフロア水平部(リヤエンド)124とが堅固に固定されるので、例えば、車体剛性は向上するものの車体にしなやかさが欠け、車体の左右旋回時等に、車体の操縦安定性が損なわれる。
【0040】
言い換えれば、一定断面(ストレート)のステー131では、車体剛性が高まるので、車体のしなやかさに欠け、タイヤ横力を拘束してしまう。従って、車両の走行安定性が損なわれる。
【0041】
図13(c)において、実施例1の車両の前部車体が示される。実施例1の車両の前部車体では、サブフレーム17とフロントサイドフレーム16との間に、図5に示されたように、平面視で中央部21cの幅が前端部21a若しくは後端部21bの幅よりも狭く形成されたステー21が連結される。これにより、傾斜部23(図1参照)に接合されるブラケット31の接合部分の接合強度の補完を図ることができるとともに、車体11の左右旋回時等に弾性変形を許容することができ、車体11の操縦安定性の向上を図ることができる。
【0042】
図1〜図5に示されたように、車両の前部車体では、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム16と、このフロントサイドフレーム16に取付けられるサブフレーム17と、を備える。
フロントサイドフレーム16に、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部22と、このフロント側水平部22から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部23と、この傾斜部23から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部24と、を備える。
【0043】
サブフレーム17の後部17bが、傾斜部23との間に変形許容空間S1を有して傾斜部23に結合するブラケット31を介して締結されるサブフレーム後取付部56を備え、、ブラケット31は、袋構造でありフロントサイドフレーム16の傾斜部23にサブフレーム後取付部56を締結するカラーナット32を下方から固定して周縁47が溶接される。
【0044】
サブフレーム17のサブフレーム側後取付部56とフロントサイドフレーム16のフロア側水平部24との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面61及び左右一対の側面62,62を有するステー21が設けられたので、傾斜部23に接合されるブラケット31の接合部分の接合強度の補完を図ることができる。例えば、タイヤを固定し、車体に前後方向の荷重を入力し、車体耐久性を確認する強度スキッド耐久テストにおいて、サブフレーム17の後部17bが取付けられるブラケット31と、車体との接合部分のクラックを抑制することができる。
【0045】
図1及び図6に示されたように、車両の前部車体では、ステー21が、側面視で略S字形状に形成されたので、車体前方から前突荷重が作用するときにステー21の折れ曲がりを促し、サブフレーム17の衝撃吸収をすることができる。
【0046】
図1及び図5に示されたように、車両の前部車体では、ステー21が、平面視で中央部21cの幅が前端部21a若しくは後端部21bの幅よりも狭く形成されたので、車体11の左右旋回時にブラケット31の弾性変形を許容することができる。すなわち、変形しやすいブラケット31を介して車体11側にしなやかさを持たせることで、サブフレーム17を左右方向の荷重に対し移動しやすくした。この結果、車体11の操縦安定性の向上を図ることができる。また、車体11の左右旋回時に弾性変形を許容することができるので、車体11に無理な力が作用せず、車体振動も低減することができる。
【0047】
図1及び図7に示されたように、車両の前部車体では、ステー21の上面61に車体前後方向に延びるビード65を有するので、例えば、ステー21が、側面視で略S字形状に形成されたり、ステー21が、平面視で中央部21cの幅が前端部21a若しくは後端部21bの幅よりも狭く形成される場合にも、ステー21に必要十分な強度を持たすことができる。これにより、車体耐久性を確認する強度スキッド耐久テストにおいて、ステー21に必要十分な反力を発生させることができる。
【実施例2】
【0048】
図14及び図15に実施例2の車両の前部車体が示される。なお、図1〜図11に示された実施例1の車両の前部車体に使用された部品と同一部品は同一符号を用いて詳細な説明は省略する。実施例2の車両の前部車体は、車室12(図3参照)とエンジンルーム13とを仕切るダッシュボードロアパネル15と、車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレーム16と、このフロントサイドフレーム16に取付けられるサブフレーム17と、このサブフレーム17とフロントサイドフレーム16との間に設けられるステー91と、を備える。
【0049】
ステー91は、図4に示された第1実施例のステー21と略同一のステーであり、ステー21とは側面視で略S字形状に形成された略S字形状の曲げの程度が異なる。さらに、ステー91は、後部マウント28の構成部品であるブラケット31の後部下縁46に近接して形成され、後部下縁46とステー91の上面92との間に、ブラケット31の周縁47の溶接部48cを補強する接着材93が塗布されている。これにより、ブラケット31の後部下縁46の溶接部48cの耐食性が向上するとともに、ステー91の振動の低減を図ることができ、車体振動の低減に貢献する。図15に接着材93の塗布範囲T1が示され、接着材93は、ステー91の上面92のみならず、後部下縁46の車幅方向の全体に亘って塗布されている。
【0050】
尚、本発明に係る車両の前部車体は、図6及び図7に示すように、ステー21が、側面視で略S字形状に形成されたが、これに限るものではなく、略U字形状に形成されたものであってもよい。
【0051】
本発明に係る車両の前部車体では、図14及び図15に示すように、後部下縁46とステー91の上面92との間に、ブラケット31の溶接部48cを補強する接着材93が塗布されたが、これに限るものではなく、ステー91の上面92に車体振動を低減する防振材を設けたものであってもよい。すなわち、ステー91の上面92に車体振動を低減する防振材が設けることで、車体振動を低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る車両の前部車体は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0053】
11…車体、16…フロントサイドフレーム、17…サブフレーム、17b…サブフレームの後部、21…ステー、21a…ステーの前端部、21b…ステーの後端部、21c…ステーの中央部、22…フロント側水平部、23…傾斜部、24…フロア側水平部、31…ブラケット、47…周縁、56…サブフレーム側後取付部、61…上面、64…幅狭部、65…ビード、S1…変形許容空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延ばされたフロントサイドフレームと、このフロントサイドフレームに取付けられるサブフレームと、を備える車両の前部車体において、
前記フロントサイドフレームは、先端から車体後方に略水平に延ばされたフロント側水平部と、このフロント側水平部から車体後方に向かって斜め下方に延ばされた傾斜部と、この傾斜部から後方に略水平に延ばされたフロア側水平部と、を備え、
前記サブフレームの後部は、前記傾斜部との間に変形許容空間を有して該傾斜部に結合するブラケットを介して締結されるサブフレーム後取付部を備え、
前記ブラケットは、袋構造であり前記フロントサイドフレームの傾斜部に周縁が溶接され、
前記サブフレーム後取付部と前記フロア側水平部との間に、車体前後方向に連結する少なくとも上面及び左右一対の側面を有するステーが設けられたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記ステーは、側面視で略S字形状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記ステーは、平面視で中央部の幅が前端部若しくは後端部の幅よりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記ステーは、前記上面に車体前後方向に延びるビードを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の前部車体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−206653(P2012−206653A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74977(P2011−74977)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】