車両の前部車体
【課題】車体前方から入力した荷重を吸収可能で、かつ、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる車両の前部車体を提供する。
【解決手段】車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよびメンバ下半部36aが左連結部材17で連結されている。また、左連結部材17の下方において、ステイ下半部41dおよびメンバ下半部36aが左バルクメンバ部43dで連結されている。よって、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dにより枠体部21が形成されている。さらに、枠体部21から車体後方に向けてアンダロードパス手段25が延出されている。
【解決手段】車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよびメンバ下半部36aが左連結部材17で連結されている。また、左連結部材17の下方において、ステイ下半部41dおよびメンバ下半部36aが左バルクメンバ部43dで連結されている。よって、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dにより枠体部21が形成されている。さらに、枠体部21から車体後方に向けてアンダロードパス手段25が延出されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレーム間にフロントバルクヘッドが設けられ、左右のフロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体のなかには、車両の左右側にフロントサイドフレームが設けられ、左右のフロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられ、サブフレームの左右のロードパス部材が左右のフロントサイドフレームの前端部に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の前部車体によれば、車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した場合、入力した荷重を左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の2経路に分散させることが可能である。
【0003】
左右のフロントサイドフレームに分散された荷重で、左右のフロントサイドフレームを変形させることにより、左右のフロントサイドフレームで分散された荷重を吸収することができる。
また、左右のロードパス部材に分散された荷重で、左右のロードパス部材を変形させることにより、左右のロードパス部材で分散された荷重を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、車体全長を所定長さに抑えた状態で車室の長さを増すためには、エンジンルームの長さを抑える必要がある。
しかし、特許文献1の車両の前部車体は、車体前方から入力した荷重を左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の2経路のみに分散させている。
【0006】
よって、車体前方から入力した荷重を吸収するためには、左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の変形量を比較的大きく確保する必要がある。
このため、左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材を長くする必要があり、そのことがエンジンルームの長さ寸法を小さく抑える妨げになっていた。
【0007】
本発明は、車体前方から入力した荷重を吸収可能で、かつ、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に一対のフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレーム間に略矩形枠状のフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドのサイドステイが前記フロントサイドフレームの前端部に交差するように略鉛直状に設けられ、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部を超えて前記フロントバルクヘッドのロアバルクメンバまで下方に向けて延出された車両の前部車体であって、前記フロントサイドフレームの前端部および前記ロアメンバ部が連結部材で連結され、前記連結部材の下方において、前記サイドステイおよび前記ロアメンバ部が前記ロアバルクメンバで連結され、前記サイドステイ、前記ロアメンバ部、前記連結部材および前記ロアバルクメンバにより枠体部が形成され、前記枠体部から車体後方に向けてアンダロードパス手段が延出されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記アンダロードパス手段は、前記枠体部に設けられたボックス部と、前記ボックス部の車体後方に設けられたロードパス部材と、前記ロードパス部材の車体後方に設けられたサブフレームと、を備え、車体前方から入力した荷重で、前記ボックス部を変形させ、前記ボックス部を変形させた後、前記ロードパス部材を変形させ、前記ロードパス部材を変形させた後、前記サブフレームを変形可能に、前記ボックス部、前記ロードパス部材および前記サブフレームの強度が設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記フロントサイドフレーム、前記ロアメンバ部および前記ロードパス部材の変形が完了する前に前記サブフレームに動力源が当たり、前記サブフレームを変形させて荷重を吸収することを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記サブフレームは、車体側の取付部に取り付けられた後取付部と、前記後取付部に設けられたサブフレーム本体と、を有し、前記後取付部が前記サブフレーム本体および前記車体側の取付部より脆弱に形成されることで、前記後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記後取付部および前記サブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状に形成された湾曲部が介在されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6は、前記後取付部が前記車体側の取付部より下方に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、サイドステイ、ロアメンバ部、連結部材およびロアバルクメンバで枠体部を形成した。
よって、枠体部の一部がロアメンバ部で構成されている。
また、枠体部にはフロントサイドフレームの前端部が連結されている。
さらに、枠体部からアンダロードパス手段を車体後方に向けて延出させた。
すなわち、ロアメンバ部、フロントサイドフレームの前端部およびアンダロードパス手段の前端部が枠体部で連結されている。
【0015】
よって、枠体部の一部に車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した場合、入力した荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の3経路(3部材)に分散させることができる。
入力した荷重を3経路、すなわち多数の経路に分散させることで、各部材に伝えられる荷重を小さくできる。
【0016】
これにより、分散された荷重を吸収するために必要とするロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えることができる。
ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0017】
さらに、入力した荷重を3経路に分散させることで、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段に伝えられる荷重を小さくできる。
これにより、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えても、分散された荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段で良好に吸収できる。
すなわち、車体前方から入力した荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段に分散させて良好に吸収することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、アンダロードパス手段をボックス部、ロードパス部材およびサブフレームで構成した。さらに、車体前方から入力した荷重で、ボックス部を変形させ、ボックス部の変形後にロードパス部材を変形させ、ロードパス部材の変形後にサブフレームを変形させるようにした。
【0019】
このように、ボックス部、ロードパス部材およびサブフレームの順に各部材を変形させることで各部材を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部、ロードパス部材およびサブフレームの各部材の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0020】
これにより、車体前方から入力した荷重を吸収するために必要な各部材の変形量を小さく抑えることができる。各部材の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、サブフレームに動力源を当て、動力源でサブフレームを変形させて荷重を吸収するようにした。
よって、荷重の吸収量を増すことができるので、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の各部材の荷重吸収能力を抑えることができる。
これにより、各部材の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、後取付部をサブフレーム本体や車体側の取付部より脆弱に形成して後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能とした。
よって、サブフレームに動力源を当てることで、後取付部を変形させて荷重を吸収することができる。
これにより、車体側の取付部を変形させることなく荷重を吸収できるので車室空間を好適に保つことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、後取付部およびサブフレーム本体の後部の湾曲部を凹型湾曲形状に形成した。
後取付部およびサブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状の湾曲部が介在されることで、サブフレーム本体の後部を後取付部から車体前方に所定量離すことができる。
よって、サブフレーム本体の後部および車体側の取付部間に空間(クリアランス)を確保できる。
これにより、サブフレーム本体の車体後方への移動量を十分に確保して荷重を吸収することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、サブフレームの後取付部を車体側の取付部より下方に設けた。よって、サブフレーム本体が車体後方に向けて所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体が車体側の取付部に干渉することを防止できる。
これにより、サブフレーム本体の車体後方への移動量を一層確実に確保して荷重をさらに確実に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1の車両の前部車体を示す側面図である。
【図3】図1の車両の前部車体を示す底面図である。
【図4】図1の4部拡大図である。
【図5】図4の枠体部を車体後方下側から見た状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るアンダロードパス手段を車体後方下側から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る枠体部で荷重を分散させる例を説明する図である。
【図10】本発明に係る左フロントサイドフレームで荷重を吸収する例を説明する図である。
【図11】本発明に係るロアメンバ部およびロードパス部材で荷重を吸収する例を説明する図である。
【図12】本発明に係る動力源(エンジンや変速機)を車体後方に移動する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る動力源がサブフレーム本体に当接する例を説明する図である。
【図14】本発明に係るサブフレームで荷重を吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0027】
実施例に係る車両の前部車体(車両の前部構造)10について説明する。
図1、図2に示すように、車両の前部車体10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム(一対のフロントサイドフレーム)12と、左右のフロントサイドフレーム12の車幅方向外側(上方)に設けられた左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)13と、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に設けられたフロントバルクヘッド15とを備えている。
【0028】
さらに、車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13を連結する左連結部材(連結部材)17と、右フロントサイドフレーム12および右フロントアッパメンバ13を連結する右連結部材(連結部材)17とを備えている。
【0029】
加えて、車両の前部車体10は、枠体部21(後述する)から車体後方に向けて延出された左アンダロードパス手段(アンダロードパス手段)25と、枠体部21から車体後方に向けて延出された右アンダロードパス手段(アンダロードパス手段)25とを備えている。
【0030】
車両の前部車体10は略左右対称に形成されているので、以下、車両の前部車体10の左側の部材および右側の部材に同じ符号を付して、右側の部材の説明を省略する。
【0031】
左フロントサイドフレーム12は、車両の前部左側において、右フロントサイドフレーム12に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
右フロントサイドフレーム12は、車両の前部右側に設けられている。
この左フロントサイドフレーム12は、車体前後方向に向けて延出されることにより、後端部12bが左フロアフレーム27に連結された骨材である。
【0032】
さらに、左フロントサイドフレーム12は、傾斜後端部12cが左アウトリガー28を介して左サイドシル(骨材)に連結されている。
左右のフロントサイドフレーム12には取付ブラケットを介して動力源67(エンジン68や変速機69)が搭載されている。
【0033】
図2、図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、前端部12aの車体後方側に補強部材(スチフナ)29が設けられ、前端部12aにビード38が設けられている。
前端部12aにビード38を設けることで、左フロントサイドフレーム12に入力した荷重で前端部12aを圧縮変形(圧潰変形)させることができる。
【0034】
また、左フロントサイドフレーム12は、補強部材29の車体前方側に隣接して前折曲部位12dが設けられている。
さらに、左フロントサイドフレーム12は、補強部材29の車体後方側に第1折曲部位12eが設けられ、第1折曲部位12eの車体後方に第2折曲部位12fが設けられている。
【0035】
第1折曲部位12eは、補強部材29の後端部29aに隣接して設けられ、車幅方向外側に向けて突出するように折り曲げられている。
また、第2折曲部位12fは、車幅方向内側に向けて突出するように折り曲げられている。
よって、左フロントサイドフレーム12に車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した際に、入力した荷重で、第1折曲部位12e、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dを車幅方向(すなわち、横方向)に折り曲げることができる。
【0036】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cおよび右フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cにクロスメンバ(車体側の取付部)31が架け渡されている。
クロスメンバ31は、車幅方向に延出され、左端部31aが左傾斜後端部12cに設けられ(図7も参照)、右端部31aが右傾斜後端部12cに設けられている。
【0037】
このクロスメンバ31の中央部31bはダッシュボード32に設けられている(図8も参照)。
ダッシュボード32は、左右のフロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cから上方に立ち上げられている。ダッシュボード32を傾斜後端部12cから上方に立ち上げることにより、ダッシュボード32でエンジンルーム34および車室が仕切られる。
【0038】
図1、図2に示すように、左フロントアッパメンバ13は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側(左側)に設けられ、後端部13aが左フロントピラー33に連結されている。
この左フロントアッパメンバ13は、左フロントピラー33から車体前方に向けて下り勾配に延出されたアッパメンバ部35と、アッパメンバ部35から車体下方に向けて延出されたロアメンバ部36とを有する。
【0039】
ロアメンバ部36は、アッパメンバ部35から左フロントサイドフレーム12の前端部12aを超えて車体下方に向けて延出されている。
このロアメンバ部36は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aより車幅方向外側に設けられ、アッパメンバ部35から前下方に向けて湾曲状に形成されることで下半部36aが略鉛直状に設けられている。
以下、ロアメンバ部36の下半部36aをメンバ下半部36aと称す。
【0040】
メンバ下半部36aは、左連結部材17の外端部17bからフロントバルクヘッド15のロアバルクメンバ43(具体的には、左端部43b)まで下方に向けて鉛直状に延出されている。
また、メンバ下半部36aは、フロントバルクヘッド15の左サイドステイ41に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられ、かつ、左サイドステイ41に対して略平行に設けられている。
【0041】
ここで、ロアメンバ部36は、中央部36dが前方に突出するように湾曲状に形成されている。
よって、メンバ下半部36aに車体前方から荷重が入力した際に、入力した荷重でロアメンバ部36の中央部36dが変形してメンバ下半部36aが車体後方に移動する。
【0042】
フロントバルクヘッド15は、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に配置され、正面視略矩形状に形成されている。
このフロントバルクヘッド15は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた左サイドステイ(サイドステイ)41と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右サイドステイ(サイドステイ)41と、左右のサイドステイ41の上端部に架け渡されたアッパバルクメンバ42と、左右のサイドステイ41の下端部41aに架け渡されたロアバルクメンバ43とを備えている。
【0043】
フロントバルクヘッド15に冷却系部品としてラジエータやコンデンサが設けられている。
このラジエータは、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
【0044】
図4、図5に示すように、左サイドステイ41は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに中央部41bが交差するように略鉛直状に設けられ、下端部41aがロアバルクメンバ43の左端近傍部43aに連結されている。
この左サイドステイ41は、下端部41a、中央部41b、下端部41aおよび中央部41b間の部位41cでステイ下半部41dが形成されている。
【0045】
ロアバルクメンバ43は、左連結部材17の下方に配置されている。
このロアバルクメンバ43は、左端近傍部43aが左サイドステイ41の下端部41aに連結され、左端部43bがロアメンバ部36(メンバ下半部36a)の下端部36bに連結されている。
このロアバルクメンバ43は、左端近傍部43a、左端部43b、左端近傍部43aおよび左端部43b間の部位43cで左バルクメンバ部43dが形成されている。
【0046】
すなわち、左バルクメンバ部43dは、左サイドステイ41の下端部41aおよびロアメンバ部36の下端部36bに架け渡されている。
この左バルクメンバ部43dは、左連結部材17の下方に配置され、左連結部材17に沿わせて略平行に設けられている。
【0047】
また、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよび左フロントアッパメンバ13(メンバ下半部36aの上端部)が左連結部材17で連結されている。
すなわち、左連結部材17は、内端部17aが左フロントサイドフレーム12の前端部12aに連結され、外端部17bがメンバ下半部36aの上端部36cに連結されている。
【0048】
このように、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよびメンバ下半部36aが左連結部材17で連結されている。
さらに、左サイドステイ41の下端部41aおよびメンバ下半部36aの下端部36bが左バルクメンバ部43dで連結されている。
【0049】
これにより、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dで略矩形状の枠体部21が一体的に形成されている。
よって、枠体部21の一部位に荷重が入力した場合、入力した荷重は枠体部21の全域に分散される。
【0050】
図5、図6に示すように、枠体部21(具体的には、左バルクメンバ部43dの底部43e)から車体後方に向けてアンダロードパス手段25が延出されている。
左アンダロードパス手段25は、枠体部21に設けられたボックス部46と、ボックス部46の車体後方に設けられたロードパス部材47と、ロードパス部材47の車体後方に設けられたサブフレーム48とを備えている。
なお、サブフレーム48は、右アンダロードパス手段25にも用いられている(兼用されている)部材である。
【0051】
ここで、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の強度は次のように設定されている。
すなわち、左アンダロードパス手段25に車体前方から荷重が入力した場合、まず入力した荷重でボックス部46を変形させ、つぎにロードパス部材47を変形させ、ついでサブフレーム48を変形させるように各部材46,47,48の強度が設定されている。
【0052】
このように、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の順に各部材を変形させることで各部材を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の各部材の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0053】
ボックス部46は、頂部が開口された箱形に形成され、左バルクメンバ部43dの底部43eにボルト51、ナットで取り付けられている。
【0054】
ロードパス部材47は、断面略矩形状に形成され、前端部47aがボックス部46の車体後方に配置されている。
ロードパス部材47の前端部47aは、取付ブラケット53にボルト54、ナットで取り付けられている。
取付ブラケット53は左バルクメンバ部43dに設けられている。
【0055】
よって、ロードパス部材47の前端部47aは、取付ブラケット53を介して左バルクメンバ部43dに取り付けられている。
これにより、枠体部21の一部位に荷重が入力されて枠体部21の全域に分散された場合、分散された荷重の一部は、枠体部21および取付ブラケット53を経てロードパス部材47に伝えられる。
【0056】
また、ロードパス部材47の後端部47bは、支持ブラケット57を介してサブフレーム48の左前端部48aに取り付けられている。
よって、ロードパス部材47に伝えられた荷重をサブフレーム48の左前端部48aに伝えることができる。
【0057】
このように、前端部47aが左バルクメンバ部43dに取り付けられ、後端部47bがサブフレーム48の左前端部48aに取り付けられた状態において、ロードパス部材47の中央部47cが下向きに突出されている(図2も参照)。
よって、ロードパス部材47に車体前方から荷重が入力した場合、ロードパス部材47は中央部47cが下方に折れ曲がるように変形する。
【0058】
ここで、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56が介在されている。
荷重受部材56は、ロードパス部材47の断面形状より大きく形成されている。
よって、車体前方から入力した荷重でボックス部46が後方に移動した際に、ボックス部46を荷重受部材56で確実に受けることができる。
これにより、ボックス部46に車体前方から入力した荷重は、荷重受部材56を介してロードパス部材47に確実に伝えられる。
【0059】
図3、図6に示すように、サブフレーム48は、左右のフロントサイドフレーム12の下方に配置されたサブフレーム本体61と、サブフレーム本体61の左前端に一体に設けられた左前取付部62と、サブフレーム本体61の右前端に一体に設けられた右前取付部62とを有する。
【0060】
さらに、サブフレーム48は、サブフレーム本体61の左後端に一体に設けられた左後取付部(後取付部)63と、サブフレーム本体61の右後端に一体に設けられた右後取付部(後取付部)63とを有する。
【0061】
サブフレーム本体61は、後部61aが左湾曲部(湾曲部)65を介して左後取付部63に連結され、後部61aが右湾曲部(湾曲部)65を介して右後取付部63に連結されている。
左右の湾曲部65は、それぞれ凹型湾曲形状に形成された連結部位である。
【0062】
すなわち、後部61aの左端部および左後取付部63間に凹型湾曲形状の左湾曲部65が介在され、後部61aの右端部および右後取付部63間に凹型湾曲形状の右湾曲部65が介在されている。
よって、後部61aを左右の後取付部63から車体前方に所定量L1だけ離すことができる。
これにより、サブフレーム本体61の後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1を(図8も参照)確保できる。
【0063】
サブフレーム本体61は、ステアリングギヤボックスなどが搭載され、動力源67がトルクロッド71を介して連結されている。
さらに、動力源67は、前述したように、左右のフロントサイドフレーム12に取付ブラケットを介して搭載されている。
【0064】
左前取付部62は、前取付ブラケット73にボルト74、ナットで取り付けられている。
前取付ブラケット73は、左フロントサイドフレーム12の底部12gに取り付けられている。
【0065】
図3、図7に示すように、左後取付部63は、クロスメンバ31の左端部31aにボルト76、ナット77で取り付けられている。
また、左後取付部63から張出部78が車幅方向外側に張り出されている。
張出部78は左アウトリガー28にボルト79、ナットで取り付けられている。ボルト79は左フロントサイドフレーム12の回り止めようのボルトである。
【0066】
ここで、左後取付部63は、サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より脆弱に形成されている。
サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より左後取付部63を脆弱に形成することで、左後取付部63を車体前方から入力した荷重で好適に変形させることができる。
【0067】
よって、サブフレーム本体61に動力源67を当てることで、後取付部63を変形させて荷重を吸収することができる。
これにより、クロスメンバ31を変形させることなく荷重を吸収できるので車室空間を好適に保つことができる。
【0068】
さらに、図7、図8に示すように、左後取付部63は、クロスメンバ31より下方に設けられている。
よって、サブフレーム本体61が車体後方に向けて所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体61がクロスメンバ31に干渉することを防止できる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への移動量を一層確実に確保して荷重をさらに確実に吸収することができる。
【0069】
図2、図4に示すように、左アンダロードパス手段25は枠体部21に連通されている。また、枠体部21には左フロントサイドフレーム12が連結されている。
さらに、枠体部21の一部はメンバ下半部36a(ロアメンバ部36)で形成されている。
【0070】
よって、枠体部21の一部に車体前方から荷重が入力した場合、入力した荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の3経路(3部材)に分散させることができる。
入力した荷重を3経路、すなわち多数の経路に分散させることで、各部材36,12,25に伝える荷重を小さくできる。
【0071】
これにより、分散された荷重を吸収するために必要とするロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えることができる。
ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0072】
さらに、入力した荷重を3経路に分散させることで、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25に伝えられる荷重を小さくできる。
これにより、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えても、分散された荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25で良好に吸収できる。
すなわち、車体前方から入力した荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25に分散させて良好に吸収することができる。
【0073】
ここで、左フロントサイドフレーム12に取付ブラケットを介して動力源67が搭載されている。
また、動力源67はトルクロッド71を介してサブフレーム48に連結されている。トルクロッド71は、車体前方から荷重が入力した際に動力源67の車体後方への移動を許容するように形成されている。
よって、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25が荷重で変形した際に、動力源67を車体後方に移動させることが可能である。
【0074】
図7、図8に示すように、動力源67(変速機69)は、サブフレーム本体61に対して車体前方に所定間隔L2だけ離して設けられている。
また、動力源67(エンジン68)は、サブフレーム本体61に対して車体前方に所定間隔L3だけ離して設けられている。
【0075】
所定間隔L2,L3は次のように設定されている。
すなわち、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47が車体前方からの荷重で変形する際に、各部材12,36,47の変形が完了する前に動力源67がサブフレーム本体61に当たるように所定間隔L2,L3が設定されている。
動力源67がサブフレーム本体61に当たることで、サブフレーム48(具体的には、左後取付部63)を変形させて荷重を吸収することができる。
【0076】
つぎに、枠体部21の一部位に車体前方から荷重が入力する例を図9〜図14に基づいて説明する。
なお、図9〜図14においては、枠体部21による荷重の分散を理解し易くするために、アンダロードパス手段25のボックス部46を回避した部位に荷重が入力した場合について説明する。
【0077】
図9に示すように、枠体部21の一部位に車体前方から荷重F1が矢印の如く入力する。
枠体部21は、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dで略矩形状の枠体に一体的に形成されている。
よって、枠体部21の一部位に入力した荷重F1は枠体部21の全域に分散される。
【0078】
枠体部21の全域に分散された荷重は、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47に伝えられる。
具体的には、左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられ、ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられる。さらに、ロードパス部材47に荷重F4が伝えられる。
【0079】
入力した荷重F1を各部材12,36,47に分散させることで、左フロントサイドフレーム12に伝えられる荷重F2、ロアメンバ部36に伝えられる荷重F3、ロードパス部材47に伝えられる荷重F4を小さく抑えることができる。
【0080】
図10(a)に示すように、左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられる。
左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられることで、前端部12aを圧縮変形させる。
左フロントサイドフレーム12の前端部12aにはビード38(図2も参照)が設けられている。
【0081】
図10(b)に示すように、前端部12aを圧縮変形させた後、第1折曲部位12eを車幅方向外側に向けて矢印Aの如く折り曲げる。
第1折曲部位12eを折り曲げることで、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dが車幅方向に折り曲げられる。
このように、前端部12aを圧縮変形させ、さらに、第1折曲部位12e、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dを車幅方向に折り曲げることで荷重F2を吸収することができる。
【0082】
図11(a)に示すように、ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられる。
ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられることで、ロアメンバ部36の中央部36dが変形してメンバ下半部36aが車体後方に矢印Bの如く移動する。
【0083】
図11(b)に示すように、メンバ下半部36aが車体後方に矢印Bの如く移動することで荷重F3を吸収することができる。
【0084】
図11(a)に戻って、ロードパス部材47に荷重F4が伝えられる。
ロードパス部材47に荷重F4が伝えられることで、ロードパス部材47の中央部47cが下方に向けて矢印Cの如く変形する。
【0085】
図11(b)に示すように、中央部47cが下方に向けて変形することで、ロードパス部材47が略く字状に折り曲げられる。
ロードパス部材47を折り曲げることによりロードパス部材47で荷重F4を吸収することができる。
【0086】
図12(a)、図12(b)に示すように、左フロントサイドフレーム12(図10参照)、ロアメンバ部36(図11参照)およびロードパス部材47(図11参照)が変形することで、動力源67が車体後方に向けて矢印Dの如く移動する。
【0087】
図13(a)、図13(b)に示すように、左フロントサイドフレーム12(図10参照)、ロアメンバ部36(図11参照)およびロードパス部材47(図11参照)の変形が完了する前に、動力源67(エンジン68や変速機69)がサブフレーム本体61に当たる。
動力源67(エンジン68や変速機69)がサブフレーム本体61に当たることで、サブフレーム本体61に荷重F5が車体前方から入力する。
【0088】
ここで、図13(a)に示すように、サブフレーム本体61の後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1が確保されている。
後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1を確保することで、サブフレーム本体61を車体後方に向けて移動させることができる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への移動量を十分に確保して荷重F5を吸収することができる。
【0089】
また、図13(b)に示すように、サブフレーム48の左後取付部63は、サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より脆弱に形成されている。
よって、サブフレーム本体61に荷重F5が車体前方から入力することで、左後取付部63が変形してサブフレーム本体61が車体後方に向けて矢印Dの如く移動することを許容する。
【0090】
さらに、左後取付部63は、クロスメンバ31より下方に設けられている。
よって、サブフレーム本体61が車体後方に向けて矢印Dの如く所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体61がクロスメンバ31に干渉することを防止できる。
【0091】
図14(a)、図14(b)に示すように、左後取付部63を変形させることで、サブフレーム本体61を車体後方に向けて所定量S2だけ矢印Eの如く下り勾配に移動できる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への所定量S2の移動を確実に確保して荷重F5を吸収することができる。
【0092】
このように、サブフレーム48に動力源67を当て、動力源67でサブフレーム48の左後取付部63を変形させて荷重F5を吸収するようにした。
よって、車体前方から入力した荷重F1(図9参照)の吸収量を増すことができる。
【0093】
これにより、左フロントサイドフレーム12(図9参照)、ロアメンバ部36(図9参照)およびロードパス部材47(図9参照)の各部材12,36,47の荷重吸収能力を抑えることができる。
したがって、各部材12,36,47の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0094】
加えて、図9に示すように、入力した荷重F1を枠体部21で分散させることで、左フロントサイドフレーム12に伝えられる荷重F2、ロアメンバ部36に伝えられる荷重F3、ロードパス部材47に伝えられる荷重F4を小さく抑えることができる。
【0095】
これにより、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47の変形量を小さく抑えることができる。
左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0096】
ところで、図9〜図14においては、アンダロードパス手段25のボックス部46を回避した部位に荷重が入力した場合について説明したが、ボックス部46に荷重が入力した場合も図9〜図14の説明と同様の効果を得ることができる。
すなわち、ボックス部46に荷重が入力した場合には、入力した荷重で、まずボックス部46を変形させ、ボックス部46の変形後にロードパス部材47を変形させ、ロードパス部材47の変形後にサブフレーム48を変形させることができる。
【0097】
このように、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の順に各部材46,47,48を変形させることで、各部材46,47,48を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の各部材46,47,48の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0098】
これにより、車体前方から入力した荷重を吸収するために必要な各部材46,47,48の変形量を小さく抑えることができる。
このように、各部材46,47,48の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法をさらに小さく抑えることができる。
【0099】
なお、本発明に係る車両の前部車体は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、アンダロードパス手段25にボックス部46を設けた例について説明したが、これに限らないで、アンダロードパス手段25にボックス部46を設けない構成とすることも可能である。
【0100】
また、前記実施例では、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56を介在させた例について説明したが、これに限らないで、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56を設けない構成とすることも可能である。
【0101】
さらに、前記実施例では、ロードパス部材47の前端部47aを左バルクメンバ部43dに取付ブラケット53を介して取り付けた例について説明したが、これに限らないで、ロードパス部材47の前端部47aを左バルクメンバ部43dに直接取り付ける構成とすることも可能である。
【0102】
また、前記実施例では、車体側の取付部としてクロスメンバ31を例示したが、左右のフロントサイドフレーム12などの他の部材を車体側の取付部とすることも可能である。
【0103】
さらに、前記実施例で示した車両の前部車体10、左右のフロントサイドフレーム12、左右のフロントアッパメンバ13、フロントバルクヘッド15、左右の連結部材17、枠体部21、アンダロードパス手段25、クロスメンバ31、ロアメンバ部36、ロアバルクメンバ43、ロードパス部材47、サブフレーム48および動力源67などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の車両の前部車体は、左右のフロントサイドフレーム間にフロントバルクヘッドを設け、かつ、外側にフロントアッパメンバを設けた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0105】
10…車両の前部車体、12…左右のフロントサイドフレーム(一対のフロントサイドフレーム)、12a…左右のフロントサイドフレームの前端部、13…左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)、15…フロントバルクヘッド、17…左右の連結部材(連結部材)、21…枠体部、25…アンダロードパス手段、31…クロスメンバ(車体側の取付部)、36…ロアメンバ部、36a…メンバ下半部、41…左右のサイドステイ(サイドステイ)、41d…ステイ下半部、43…ロアバルクメンバ、43d…左バルクメンバ部、46…ボックス部、47…ロードパス部材、48…サブフレーム、61…サブフレーム本体、61a…サブフレーム本体の後部、63…左右の後取付部(後取付部)、65…左右の湾曲部(湾曲部)、67…動力源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントサイドフレーム間にフロントバルクヘッドが設けられ、左右のフロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられた車両の前部車体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体のなかには、車両の左右側にフロントサイドフレームが設けられ、左右のフロントサイドフレームの下方にサブフレームが設けられ、サブフレームの左右のロードパス部材が左右のフロントサイドフレームの前端部に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1の前部車体によれば、車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した場合、入力した荷重を左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の2経路に分散させることが可能である。
【0003】
左右のフロントサイドフレームに分散された荷重で、左右のフロントサイドフレームを変形させることにより、左右のフロントサイドフレームで分散された荷重を吸収することができる。
また、左右のロードパス部材に分散された荷重で、左右のロードパス部材を変形させることにより、左右のロードパス部材で分散された荷重を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−271810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、例えば、車体全長を所定長さに抑えた状態で車室の長さを増すためには、エンジンルームの長さを抑える必要がある。
しかし、特許文献1の車両の前部車体は、車体前方から入力した荷重を左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の2経路のみに分散させている。
【0006】
よって、車体前方から入力した荷重を吸収するためには、左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材の変形量を比較的大きく確保する必要がある。
このため、左右のフロントサイドフレームや左右のロードパス部材を長くする必要があり、そのことがエンジンルームの長さ寸法を小さく抑える妨げになっていた。
【0007】
本発明は、車体前方から入力した荷重を吸収可能で、かつ、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる車両の前部車体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に一対のフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレーム間に略矩形枠状のフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドのサイドステイが前記フロントサイドフレームの前端部に交差するように略鉛直状に設けられ、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部を超えて前記フロントバルクヘッドのロアバルクメンバまで下方に向けて延出された車両の前部車体であって、前記フロントサイドフレームの前端部および前記ロアメンバ部が連結部材で連結され、前記連結部材の下方において、前記サイドステイおよび前記ロアメンバ部が前記ロアバルクメンバで連結され、前記サイドステイ、前記ロアメンバ部、前記連結部材および前記ロアバルクメンバにより枠体部が形成され、前記枠体部から車体後方に向けてアンダロードパス手段が延出されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記アンダロードパス手段は、前記枠体部に設けられたボックス部と、前記ボックス部の車体後方に設けられたロードパス部材と、前記ロードパス部材の車体後方に設けられたサブフレームと、を備え、車体前方から入力した荷重で、前記ボックス部を変形させ、前記ボックス部を変形させた後、前記ロードパス部材を変形させ、前記ロードパス部材を変形させた後、前記サブフレームを変形可能に、前記ボックス部、前記ロードパス部材および前記サブフレームの強度が設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記フロントサイドフレーム、前記ロアメンバ部および前記ロードパス部材の変形が完了する前に前記サブフレームに動力源が当たり、前記サブフレームを変形させて荷重を吸収することを特徴とする。
【0011】
請求項4は、前記サブフレームは、車体側の取付部に取り付けられた後取付部と、前記後取付部に設けられたサブフレーム本体と、を有し、前記後取付部が前記サブフレーム本体および前記車体側の取付部より脆弱に形成されることで、前記後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、前記後取付部および前記サブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状に形成された湾曲部が介在されたことを特徴とする。
【0013】
請求項6は、前記後取付部が前記車体側の取付部より下方に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、サイドステイ、ロアメンバ部、連結部材およびロアバルクメンバで枠体部を形成した。
よって、枠体部の一部がロアメンバ部で構成されている。
また、枠体部にはフロントサイドフレームの前端部が連結されている。
さらに、枠体部からアンダロードパス手段を車体後方に向けて延出させた。
すなわち、ロアメンバ部、フロントサイドフレームの前端部およびアンダロードパス手段の前端部が枠体部で連結されている。
【0015】
よって、枠体部の一部に車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した場合、入力した荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の3経路(3部材)に分散させることができる。
入力した荷重を3経路、すなわち多数の経路に分散させることで、各部材に伝えられる荷重を小さくできる。
【0016】
これにより、分散された荷重を吸収するために必要とするロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えることができる。
ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0017】
さらに、入力した荷重を3経路に分散させることで、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段に伝えられる荷重を小さくできる。
これにより、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の変形量を小さく抑えても、分散された荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段で良好に吸収できる。
すなわち、車体前方から入力した荷重をロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段に分散させて良好に吸収することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、アンダロードパス手段をボックス部、ロードパス部材およびサブフレームで構成した。さらに、車体前方から入力した荷重で、ボックス部を変形させ、ボックス部の変形後にロードパス部材を変形させ、ロードパス部材の変形後にサブフレームを変形させるようにした。
【0019】
このように、ボックス部、ロードパス部材およびサブフレームの順に各部材を変形させることで各部材を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部、ロードパス部材およびサブフレームの各部材の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0020】
これにより、車体前方から入力した荷重を吸収するために必要な各部材の変形量を小さく抑えることができる。各部材の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、サブフレームに動力源を当て、動力源でサブフレームを変形させて荷重を吸収するようにした。
よって、荷重の吸収量を増すことができるので、ロアメンバ部、フロントサイドフレームおよびアンダロードパス手段の各部材の荷重吸収能力を抑えることができる。
これにより、各部材の変形量を小さく抑えることで、エンジンルームの長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、後取付部をサブフレーム本体や車体側の取付部より脆弱に形成して後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能とした。
よって、サブフレームに動力源を当てることで、後取付部を変形させて荷重を吸収することができる。
これにより、車体側の取付部を変形させることなく荷重を吸収できるので車室空間を好適に保つことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、後取付部およびサブフレーム本体の後部の湾曲部を凹型湾曲形状に形成した。
後取付部およびサブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状の湾曲部が介在されることで、サブフレーム本体の後部を後取付部から車体前方に所定量離すことができる。
よって、サブフレーム本体の後部および車体側の取付部間に空間(クリアランス)を確保できる。
これにより、サブフレーム本体の車体後方への移動量を十分に確保して荷重を吸収することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、サブフレームの後取付部を車体側の取付部より下方に設けた。よって、サブフレーム本体が車体後方に向けて所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体が車体側の取付部に干渉することを防止できる。
これにより、サブフレーム本体の車体後方への移動量を一層確実に確保して荷重をさらに確実に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両の前部車体を示す斜視図である。
【図2】図1の車両の前部車体を示す側面図である。
【図3】図1の車両の前部車体を示す底面図である。
【図4】図1の4部拡大図である。
【図5】図4の枠体部を車体後方下側から見た状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るアンダロードパス手段を車体後方下側から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図3の7−7線断面図である。
【図8】図3の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る枠体部で荷重を分散させる例を説明する図である。
【図10】本発明に係る左フロントサイドフレームで荷重を吸収する例を説明する図である。
【図11】本発明に係るロアメンバ部およびロードパス部材で荷重を吸収する例を説明する図である。
【図12】本発明に係る動力源(エンジンや変速機)を車体後方に移動する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る動力源がサブフレーム本体に当接する例を説明する図である。
【図14】本発明に係るサブフレームで荷重を吸収する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0027】
実施例に係る車両の前部車体(車両の前部構造)10について説明する。
図1、図2に示すように、車両の前部車体10は、車体前後方向に向けて延出された左右のフロントサイドフレーム(一対のフロントサイドフレーム)12と、左右のフロントサイドフレーム12の車幅方向外側(上方)に設けられた左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)13と、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に設けられたフロントバルクヘッド15とを備えている。
【0028】
さらに、車両の前部車体10は、左フロントサイドフレーム12および左フロントアッパメンバ13を連結する左連結部材(連結部材)17と、右フロントサイドフレーム12および右フロントアッパメンバ13を連結する右連結部材(連結部材)17とを備えている。
【0029】
加えて、車両の前部車体10は、枠体部21(後述する)から車体後方に向けて延出された左アンダロードパス手段(アンダロードパス手段)25と、枠体部21から車体後方に向けて延出された右アンダロードパス手段(アンダロードパス手段)25とを備えている。
【0030】
車両の前部車体10は略左右対称に形成されているので、以下、車両の前部車体10の左側の部材および右側の部材に同じ符号を付して、右側の部材の説明を省略する。
【0031】
左フロントサイドフレーム12は、車両の前部左側において、右フロントサイドフレーム12に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられている。
右フロントサイドフレーム12は、車両の前部右側に設けられている。
この左フロントサイドフレーム12は、車体前後方向に向けて延出されることにより、後端部12bが左フロアフレーム27に連結された骨材である。
【0032】
さらに、左フロントサイドフレーム12は、傾斜後端部12cが左アウトリガー28を介して左サイドシル(骨材)に連結されている。
左右のフロントサイドフレーム12には取付ブラケットを介して動力源67(エンジン68や変速機69)が搭載されている。
【0033】
図2、図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、前端部12aの車体後方側に補強部材(スチフナ)29が設けられ、前端部12aにビード38が設けられている。
前端部12aにビード38を設けることで、左フロントサイドフレーム12に入力した荷重で前端部12aを圧縮変形(圧潰変形)させることができる。
【0034】
また、左フロントサイドフレーム12は、補強部材29の車体前方側に隣接して前折曲部位12dが設けられている。
さらに、左フロントサイドフレーム12は、補強部材29の車体後方側に第1折曲部位12eが設けられ、第1折曲部位12eの車体後方に第2折曲部位12fが設けられている。
【0035】
第1折曲部位12eは、補強部材29の後端部29aに隣接して設けられ、車幅方向外側に向けて突出するように折り曲げられている。
また、第2折曲部位12fは、車幅方向内側に向けて突出するように折り曲げられている。
よって、左フロントサイドフレーム12に車体前方から荷重(衝撃荷重)が入力した際に、入力した荷重で、第1折曲部位12e、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dを車幅方向(すなわち、横方向)に折り曲げることができる。
【0036】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cおよび右フロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cにクロスメンバ(車体側の取付部)31が架け渡されている。
クロスメンバ31は、車幅方向に延出され、左端部31aが左傾斜後端部12cに設けられ(図7も参照)、右端部31aが右傾斜後端部12cに設けられている。
【0037】
このクロスメンバ31の中央部31bはダッシュボード32に設けられている(図8も参照)。
ダッシュボード32は、左右のフロントサイドフレーム12の傾斜後端部12cから上方に立ち上げられている。ダッシュボード32を傾斜後端部12cから上方に立ち上げることにより、ダッシュボード32でエンジンルーム34および車室が仕切られる。
【0038】
図1、図2に示すように、左フロントアッパメンバ13は、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側(左側)に設けられ、後端部13aが左フロントピラー33に連結されている。
この左フロントアッパメンバ13は、左フロントピラー33から車体前方に向けて下り勾配に延出されたアッパメンバ部35と、アッパメンバ部35から車体下方に向けて延出されたロアメンバ部36とを有する。
【0039】
ロアメンバ部36は、アッパメンバ部35から左フロントサイドフレーム12の前端部12aを超えて車体下方に向けて延出されている。
このロアメンバ部36は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aより車幅方向外側に設けられ、アッパメンバ部35から前下方に向けて湾曲状に形成されることで下半部36aが略鉛直状に設けられている。
以下、ロアメンバ部36の下半部36aをメンバ下半部36aと称す。
【0040】
メンバ下半部36aは、左連結部材17の外端部17bからフロントバルクヘッド15のロアバルクメンバ43(具体的には、左端部43b)まで下方に向けて鉛直状に延出されている。
また、メンバ下半部36aは、フロントバルクヘッド15の左サイドステイ41に対して車幅方向に所定間隔をおいて設けられ、かつ、左サイドステイ41に対して略平行に設けられている。
【0041】
ここで、ロアメンバ部36は、中央部36dが前方に突出するように湾曲状に形成されている。
よって、メンバ下半部36aに車体前方から荷重が入力した際に、入力した荷重でロアメンバ部36の中央部36dが変形してメンバ下半部36aが車体後方に移動する。
【0042】
フロントバルクヘッド15は、左右のフロントサイドフレーム12の前端部12a間に配置され、正面視略矩形状に形成されている。
このフロントバルクヘッド15は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた左サイドステイ(サイドステイ)41と、右フロントサイドフレーム12の前端部12aに設けられた右サイドステイ(サイドステイ)41と、左右のサイドステイ41の上端部に架け渡されたアッパバルクメンバ42と、左右のサイドステイ41の下端部41aに架け渡されたロアバルクメンバ43とを備えている。
【0043】
フロントバルクヘッド15に冷却系部品としてラジエータやコンデンサが設けられている。
このラジエータは、エンジンの冷却水を外気(空気)で冷却するための熱交換器である。
コンデンサは、例えば、エアコン用の冷媒ガスを冷却して液化するものである。
【0044】
図4、図5に示すように、左サイドステイ41は、左フロントサイドフレーム12の前端部12aに中央部41bが交差するように略鉛直状に設けられ、下端部41aがロアバルクメンバ43の左端近傍部43aに連結されている。
この左サイドステイ41は、下端部41a、中央部41b、下端部41aおよび中央部41b間の部位41cでステイ下半部41dが形成されている。
【0045】
ロアバルクメンバ43は、左連結部材17の下方に配置されている。
このロアバルクメンバ43は、左端近傍部43aが左サイドステイ41の下端部41aに連結され、左端部43bがロアメンバ部36(メンバ下半部36a)の下端部36bに連結されている。
このロアバルクメンバ43は、左端近傍部43a、左端部43b、左端近傍部43aおよび左端部43b間の部位43cで左バルクメンバ部43dが形成されている。
【0046】
すなわち、左バルクメンバ部43dは、左サイドステイ41の下端部41aおよびロアメンバ部36の下端部36bに架け渡されている。
この左バルクメンバ部43dは、左連結部材17の下方に配置され、左連結部材17に沿わせて略平行に設けられている。
【0047】
また、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよび左フロントアッパメンバ13(メンバ下半部36aの上端部)が左連結部材17で連結されている。
すなわち、左連結部材17は、内端部17aが左フロントサイドフレーム12の前端部12aに連結され、外端部17bがメンバ下半部36aの上端部36cに連結されている。
【0048】
このように、左フロントサイドフレーム12の前端部12aおよびメンバ下半部36aが左連結部材17で連結されている。
さらに、左サイドステイ41の下端部41aおよびメンバ下半部36aの下端部36bが左バルクメンバ部43dで連結されている。
【0049】
これにより、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dで略矩形状の枠体部21が一体的に形成されている。
よって、枠体部21の一部位に荷重が入力した場合、入力した荷重は枠体部21の全域に分散される。
【0050】
図5、図6に示すように、枠体部21(具体的には、左バルクメンバ部43dの底部43e)から車体後方に向けてアンダロードパス手段25が延出されている。
左アンダロードパス手段25は、枠体部21に設けられたボックス部46と、ボックス部46の車体後方に設けられたロードパス部材47と、ロードパス部材47の車体後方に設けられたサブフレーム48とを備えている。
なお、サブフレーム48は、右アンダロードパス手段25にも用いられている(兼用されている)部材である。
【0051】
ここで、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の強度は次のように設定されている。
すなわち、左アンダロードパス手段25に車体前方から荷重が入力した場合、まず入力した荷重でボックス部46を変形させ、つぎにロードパス部材47を変形させ、ついでサブフレーム48を変形させるように各部材46,47,48の強度が設定されている。
【0052】
このように、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の順に各部材を変形させることで各部材を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の各部材の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0053】
ボックス部46は、頂部が開口された箱形に形成され、左バルクメンバ部43dの底部43eにボルト51、ナットで取り付けられている。
【0054】
ロードパス部材47は、断面略矩形状に形成され、前端部47aがボックス部46の車体後方に配置されている。
ロードパス部材47の前端部47aは、取付ブラケット53にボルト54、ナットで取り付けられている。
取付ブラケット53は左バルクメンバ部43dに設けられている。
【0055】
よって、ロードパス部材47の前端部47aは、取付ブラケット53を介して左バルクメンバ部43dに取り付けられている。
これにより、枠体部21の一部位に荷重が入力されて枠体部21の全域に分散された場合、分散された荷重の一部は、枠体部21および取付ブラケット53を経てロードパス部材47に伝えられる。
【0056】
また、ロードパス部材47の後端部47bは、支持ブラケット57を介してサブフレーム48の左前端部48aに取り付けられている。
よって、ロードパス部材47に伝えられた荷重をサブフレーム48の左前端部48aに伝えることができる。
【0057】
このように、前端部47aが左バルクメンバ部43dに取り付けられ、後端部47bがサブフレーム48の左前端部48aに取り付けられた状態において、ロードパス部材47の中央部47cが下向きに突出されている(図2も参照)。
よって、ロードパス部材47に車体前方から荷重が入力した場合、ロードパス部材47は中央部47cが下方に折れ曲がるように変形する。
【0058】
ここで、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56が介在されている。
荷重受部材56は、ロードパス部材47の断面形状より大きく形成されている。
よって、車体前方から入力した荷重でボックス部46が後方に移動した際に、ボックス部46を荷重受部材56で確実に受けることができる。
これにより、ボックス部46に車体前方から入力した荷重は、荷重受部材56を介してロードパス部材47に確実に伝えられる。
【0059】
図3、図6に示すように、サブフレーム48は、左右のフロントサイドフレーム12の下方に配置されたサブフレーム本体61と、サブフレーム本体61の左前端に一体に設けられた左前取付部62と、サブフレーム本体61の右前端に一体に設けられた右前取付部62とを有する。
【0060】
さらに、サブフレーム48は、サブフレーム本体61の左後端に一体に設けられた左後取付部(後取付部)63と、サブフレーム本体61の右後端に一体に設けられた右後取付部(後取付部)63とを有する。
【0061】
サブフレーム本体61は、後部61aが左湾曲部(湾曲部)65を介して左後取付部63に連結され、後部61aが右湾曲部(湾曲部)65を介して右後取付部63に連結されている。
左右の湾曲部65は、それぞれ凹型湾曲形状に形成された連結部位である。
【0062】
すなわち、後部61aの左端部および左後取付部63間に凹型湾曲形状の左湾曲部65が介在され、後部61aの右端部および右後取付部63間に凹型湾曲形状の右湾曲部65が介在されている。
よって、後部61aを左右の後取付部63から車体前方に所定量L1だけ離すことができる。
これにより、サブフレーム本体61の後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1を(図8も参照)確保できる。
【0063】
サブフレーム本体61は、ステアリングギヤボックスなどが搭載され、動力源67がトルクロッド71を介して連結されている。
さらに、動力源67は、前述したように、左右のフロントサイドフレーム12に取付ブラケットを介して搭載されている。
【0064】
左前取付部62は、前取付ブラケット73にボルト74、ナットで取り付けられている。
前取付ブラケット73は、左フロントサイドフレーム12の底部12gに取り付けられている。
【0065】
図3、図7に示すように、左後取付部63は、クロスメンバ31の左端部31aにボルト76、ナット77で取り付けられている。
また、左後取付部63から張出部78が車幅方向外側に張り出されている。
張出部78は左アウトリガー28にボルト79、ナットで取り付けられている。ボルト79は左フロントサイドフレーム12の回り止めようのボルトである。
【0066】
ここで、左後取付部63は、サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より脆弱に形成されている。
サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より左後取付部63を脆弱に形成することで、左後取付部63を車体前方から入力した荷重で好適に変形させることができる。
【0067】
よって、サブフレーム本体61に動力源67を当てることで、後取付部63を変形させて荷重を吸収することができる。
これにより、クロスメンバ31を変形させることなく荷重を吸収できるので車室空間を好適に保つことができる。
【0068】
さらに、図7、図8に示すように、左後取付部63は、クロスメンバ31より下方に設けられている。
よって、サブフレーム本体61が車体後方に向けて所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体61がクロスメンバ31に干渉することを防止できる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への移動量を一層確実に確保して荷重をさらに確実に吸収することができる。
【0069】
図2、図4に示すように、左アンダロードパス手段25は枠体部21に連通されている。また、枠体部21には左フロントサイドフレーム12が連結されている。
さらに、枠体部21の一部はメンバ下半部36a(ロアメンバ部36)で形成されている。
【0070】
よって、枠体部21の一部に車体前方から荷重が入力した場合、入力した荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の3経路(3部材)に分散させることができる。
入力した荷重を3経路、すなわち多数の経路に分散させることで、各部材36,12,25に伝える荷重を小さくできる。
【0071】
これにより、分散された荷重を吸収するために必要とするロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えることができる。
ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0072】
さらに、入力した荷重を3経路に分散させることで、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25に伝えられる荷重を小さくできる。
これにより、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25の変形量を小さく抑えても、分散された荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25で良好に吸収できる。
すなわち、車体前方から入力した荷重をロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25に分散させて良好に吸収することができる。
【0073】
ここで、左フロントサイドフレーム12に取付ブラケットを介して動力源67が搭載されている。
また、動力源67はトルクロッド71を介してサブフレーム48に連結されている。トルクロッド71は、車体前方から荷重が入力した際に動力源67の車体後方への移動を許容するように形成されている。
よって、ロアメンバ部36、左フロントサイドフレーム12およびアンダロードパス手段25が荷重で変形した際に、動力源67を車体後方に移動させることが可能である。
【0074】
図7、図8に示すように、動力源67(変速機69)は、サブフレーム本体61に対して車体前方に所定間隔L2だけ離して設けられている。
また、動力源67(エンジン68)は、サブフレーム本体61に対して車体前方に所定間隔L3だけ離して設けられている。
【0075】
所定間隔L2,L3は次のように設定されている。
すなわち、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47が車体前方からの荷重で変形する際に、各部材12,36,47の変形が完了する前に動力源67がサブフレーム本体61に当たるように所定間隔L2,L3が設定されている。
動力源67がサブフレーム本体61に当たることで、サブフレーム48(具体的には、左後取付部63)を変形させて荷重を吸収することができる。
【0076】
つぎに、枠体部21の一部位に車体前方から荷重が入力する例を図9〜図14に基づいて説明する。
なお、図9〜図14においては、枠体部21による荷重の分散を理解し易くするために、アンダロードパス手段25のボックス部46を回避した部位に荷重が入力した場合について説明する。
【0077】
図9に示すように、枠体部21の一部位に車体前方から荷重F1が矢印の如く入力する。
枠体部21は、ステイ下半部41d、メンバ下半部36a、左連結部材17および左バルクメンバ部43dで略矩形状の枠体に一体的に形成されている。
よって、枠体部21の一部位に入力した荷重F1は枠体部21の全域に分散される。
【0078】
枠体部21の全域に分散された荷重は、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47に伝えられる。
具体的には、左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられ、ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられる。さらに、ロードパス部材47に荷重F4が伝えられる。
【0079】
入力した荷重F1を各部材12,36,47に分散させることで、左フロントサイドフレーム12に伝えられる荷重F2、ロアメンバ部36に伝えられる荷重F3、ロードパス部材47に伝えられる荷重F4を小さく抑えることができる。
【0080】
図10(a)に示すように、左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられる。
左フロントサイドフレーム12に荷重F2が伝えられることで、前端部12aを圧縮変形させる。
左フロントサイドフレーム12の前端部12aにはビード38(図2も参照)が設けられている。
【0081】
図10(b)に示すように、前端部12aを圧縮変形させた後、第1折曲部位12eを車幅方向外側に向けて矢印Aの如く折り曲げる。
第1折曲部位12eを折り曲げることで、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dが車幅方向に折り曲げられる。
このように、前端部12aを圧縮変形させ、さらに、第1折曲部位12e、第2折曲部位12fおよび前折曲部位12dを車幅方向に折り曲げることで荷重F2を吸収することができる。
【0082】
図11(a)に示すように、ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられる。
ロアメンバ部36に荷重F3が伝えられることで、ロアメンバ部36の中央部36dが変形してメンバ下半部36aが車体後方に矢印Bの如く移動する。
【0083】
図11(b)に示すように、メンバ下半部36aが車体後方に矢印Bの如く移動することで荷重F3を吸収することができる。
【0084】
図11(a)に戻って、ロードパス部材47に荷重F4が伝えられる。
ロードパス部材47に荷重F4が伝えられることで、ロードパス部材47の中央部47cが下方に向けて矢印Cの如く変形する。
【0085】
図11(b)に示すように、中央部47cが下方に向けて変形することで、ロードパス部材47が略く字状に折り曲げられる。
ロードパス部材47を折り曲げることによりロードパス部材47で荷重F4を吸収することができる。
【0086】
図12(a)、図12(b)に示すように、左フロントサイドフレーム12(図10参照)、ロアメンバ部36(図11参照)およびロードパス部材47(図11参照)が変形することで、動力源67が車体後方に向けて矢印Dの如く移動する。
【0087】
図13(a)、図13(b)に示すように、左フロントサイドフレーム12(図10参照)、ロアメンバ部36(図11参照)およびロードパス部材47(図11参照)の変形が完了する前に、動力源67(エンジン68や変速機69)がサブフレーム本体61に当たる。
動力源67(エンジン68や変速機69)がサブフレーム本体61に当たることで、サブフレーム本体61に荷重F5が車体前方から入力する。
【0088】
ここで、図13(a)に示すように、サブフレーム本体61の後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1が確保されている。
後部61aおよびクロスメンバ31間に空間(クリアランス)S1を確保することで、サブフレーム本体61を車体後方に向けて移動させることができる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への移動量を十分に確保して荷重F5を吸収することができる。
【0089】
また、図13(b)に示すように、サブフレーム48の左後取付部63は、サブフレーム本体61およびクロスメンバ31より脆弱に形成されている。
よって、サブフレーム本体61に荷重F5が車体前方から入力することで、左後取付部63が変形してサブフレーム本体61が車体後方に向けて矢印Dの如く移動することを許容する。
【0090】
さらに、左後取付部63は、クロスメンバ31より下方に設けられている。
よって、サブフレーム本体61が車体後方に向けて矢印Dの如く所定量だけ移動するまで、サブフレーム本体61がクロスメンバ31に干渉することを防止できる。
【0091】
図14(a)、図14(b)に示すように、左後取付部63を変形させることで、サブフレーム本体61を車体後方に向けて所定量S2だけ矢印Eの如く下り勾配に移動できる。
これにより、サブフレーム本体61の車体後方への所定量S2の移動を確実に確保して荷重F5を吸収することができる。
【0092】
このように、サブフレーム48に動力源67を当て、動力源67でサブフレーム48の左後取付部63を変形させて荷重F5を吸収するようにした。
よって、車体前方から入力した荷重F1(図9参照)の吸収量を増すことができる。
【0093】
これにより、左フロントサイドフレーム12(図9参照)、ロアメンバ部36(図9参照)およびロードパス部材47(図9参照)の各部材12,36,47の荷重吸収能力を抑えることができる。
したがって、各部材12,36,47の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0094】
加えて、図9に示すように、入力した荷重F1を枠体部21で分散させることで、左フロントサイドフレーム12に伝えられる荷重F2、ロアメンバ部36に伝えられる荷重F3、ロードパス部材47に伝えられる荷重F4を小さく抑えることができる。
【0095】
これにより、左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47の変形量を小さく抑えることができる。
左フロントサイドフレーム12、ロアメンバ部36およびロードパス部材47の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法を小さく抑えることができる。
【0096】
ところで、図9〜図14においては、アンダロードパス手段25のボックス部46を回避した部位に荷重が入力した場合について説明したが、ボックス部46に荷重が入力した場合も図9〜図14の説明と同様の効果を得ることができる。
すなわち、ボックス部46に荷重が入力した場合には、入力した荷重で、まずボックス部46を変形させ、ボックス部46の変形後にロードパス部材47を変形させ、ロードパス部材47の変形後にサブフレーム48を変形させることができる。
【0097】
このように、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の順に各部材46,47,48を変形させることで、各部材46,47,48を十分に変形させることができる。
よって、ボックス部46、ロードパス部材47およびサブフレーム48の各部材46,47,48の荷重吸収能力を最大限に発揮させることができる。
【0098】
これにより、車体前方から入力した荷重を吸収するために必要な各部材46,47,48の変形量を小さく抑えることができる。
このように、各部材46,47,48の変形量を小さく抑えることで、エンジンルーム34の長さ寸法をさらに小さく抑えることができる。
【0099】
なお、本発明に係る車両の前部車体は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、アンダロードパス手段25にボックス部46を設けた例について説明したが、これに限らないで、アンダロードパス手段25にボックス部46を設けない構成とすることも可能である。
【0100】
また、前記実施例では、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56を介在させた例について説明したが、これに限らないで、ボックス部46およびロードパス部材47間に荷重受部材56を設けない構成とすることも可能である。
【0101】
さらに、前記実施例では、ロードパス部材47の前端部47aを左バルクメンバ部43dに取付ブラケット53を介して取り付けた例について説明したが、これに限らないで、ロードパス部材47の前端部47aを左バルクメンバ部43dに直接取り付ける構成とすることも可能である。
【0102】
また、前記実施例では、車体側の取付部としてクロスメンバ31を例示したが、左右のフロントサイドフレーム12などの他の部材を車体側の取付部とすることも可能である。
【0103】
さらに、前記実施例で示した車両の前部車体10、左右のフロントサイドフレーム12、左右のフロントアッパメンバ13、フロントバルクヘッド15、左右の連結部材17、枠体部21、アンダロードパス手段25、クロスメンバ31、ロアメンバ部36、ロアバルクメンバ43、ロードパス部材47、サブフレーム48および動力源67などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の車両の前部車体は、左右のフロントサイドフレーム間にフロントバルクヘッドを設け、かつ、外側にフロントアッパメンバを設けた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0105】
10…車両の前部車体、12…左右のフロントサイドフレーム(一対のフロントサイドフレーム)、12a…左右のフロントサイドフレームの前端部、13…左右のフロントアッパメンバ(フロントアッパメンバ)、15…フロントバルクヘッド、17…左右の連結部材(連結部材)、21…枠体部、25…アンダロードパス手段、31…クロスメンバ(車体側の取付部)、36…ロアメンバ部、36a…メンバ下半部、41…左右のサイドステイ(サイドステイ)、41d…ステイ下半部、43…ロアバルクメンバ、43d…左バルクメンバ部、46…ボックス部、47…ロードパス部材、48…サブフレーム、61…サブフレーム本体、61a…サブフレーム本体の後部、63…左右の後取付部(後取付部)、65…左右の湾曲部(湾曲部)、67…動力源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に一対のフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレーム間に略矩形枠状のフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドのサイドステイが前記フロントサイドフレームの前端部に交差するように略鉛直状に設けられ、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部を超えて前記フロントバルクヘッドのロアバルクメンバまで下方に向けて延出された車両の前部車体であって、
前記フロントサイドフレームの前端部および前記ロアメンバ部が連結部材で連結され、
前記連結部材の下方において、前記サイドステイおよび前記ロアメンバ部が前記ロアバルクメンバで連結され、
前記サイドステイ、前記ロアメンバ部、前記連結部材および前記ロアバルクメンバにより枠体部が形成され、
前記枠体部から車体後方に向けてアンダロードパス手段が延出されたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記アンダロードパス手段は、
前記枠体部に設けられたボックス部と、
前記ボックス部の車体後方に設けられたロードパス部材と、
前記ロードパス部材の車体後方に設けられたサブフレームと、を備え、
車体前方から入力した荷重で、前記ボックス部を変形させ、前記ボックス部を変形させた後、前記ロードパス部材を変形させ、前記ロードパス部材を変形させた後、前記サブフレームを変形可能に、前記ボックス部、前記ロードパス部材および前記サブフレームの強度が設定されたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記フロントサイドフレーム、前記ロアメンバ部および前記ロードパス部材の変形が完了する前に前記サブフレームに動力源が当たり、前記サブフレームを変形させて荷重を吸収することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記サブフレームは、
車体側の取付部に取り付けられた後取付部と、
前記後取付部に設けられたサブフレーム本体と、
を有し、
前記後取付部が前記サブフレーム本体および前記車体側の取付部より脆弱に形成されることで、前記後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能としたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記後取付部および前記サブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状に形成された湾曲部が介在されたことを特徴とする請求項4記載の車両の前部車体。
【請求項6】
前記後取付部が前記車体側の取付部より下方に設けられたことを特徴とする請求項5記載の車両の前部車体。
【請求項1】
車体前後方向に一対のフロントサイドフレームが延出され、前記フロントサイドフレーム間に略矩形枠状のフロントバルクヘッドが設けられ、前記フロントバルクヘッドのサイドステイが前記フロントサイドフレームの前端部に交差するように略鉛直状に設けられ、前記フロントサイドフレームの車幅方向外側にフロントアッパメンバが設けられ、前記フロントアッパメンバのロアメンバ部が前記フロントサイドフレームの前端部を超えて前記フロントバルクヘッドのロアバルクメンバまで下方に向けて延出された車両の前部車体であって、
前記フロントサイドフレームの前端部および前記ロアメンバ部が連結部材で連結され、
前記連結部材の下方において、前記サイドステイおよび前記ロアメンバ部が前記ロアバルクメンバで連結され、
前記サイドステイ、前記ロアメンバ部、前記連結部材および前記ロアバルクメンバにより枠体部が形成され、
前記枠体部から車体後方に向けてアンダロードパス手段が延出されたことを特徴とする車両の前部車体。
【請求項2】
前記アンダロードパス手段は、
前記枠体部に設けられたボックス部と、
前記ボックス部の車体後方に設けられたロードパス部材と、
前記ロードパス部材の車体後方に設けられたサブフレームと、を備え、
車体前方から入力した荷重で、前記ボックス部を変形させ、前記ボックス部を変形させた後、前記ロードパス部材を変形させ、前記ロードパス部材を変形させた後、前記サブフレームを変形可能に、前記ボックス部、前記ロードパス部材および前記サブフレームの強度が設定されたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体。
【請求項3】
前記フロントサイドフレーム、前記ロアメンバ部および前記ロードパス部材の変形が完了する前に前記サブフレームに動力源が当たり、前記サブフレームを変形させて荷重を吸収することを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両の前部車体。
【請求項4】
前記サブフレームは、
車体側の取付部に取り付けられた後取付部と、
前記後取付部に設けられたサブフレーム本体と、
を有し、
前記後取付部が前記サブフレーム本体および前記車体側の取付部より脆弱に形成されることで、前記後取付部を車体前方から入力した荷重で変形可能としたことを特徴とする請求項2または請求項3記載の車両の前部車体。
【請求項5】
前記後取付部および前記サブフレーム本体の後部間に、凹型湾曲形状に形成された湾曲部が介在されたことを特徴とする請求項4記載の車両の前部車体。
【請求項6】
前記後取付部が前記車体側の取付部より下方に設けられたことを特徴とする請求項5記載の車両の前部車体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−32042(P2013−32042A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167871(P2011−167871)
【出願日】平成23年7月30日(2011.7.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月30日(2011.7.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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