説明

車両の危険度判定システム及び車両の危険度判定装置並びにこれらを用いた車両の危険報知装置

【課題】複数人の端末保持者にかかる情報を適切に扱うことができるようにした、車両の危険度判定システム及び車両の危険度判定装置と、これらの危険度判定システム及び危険度判定装置を用いて、車両の運転者に複数人の端末保持者にかかる危険度を適切に報知することができるようにした、車両の危険報知装置とを提供する。
【解決手段】
車両位置検出手段11により検出された車両1の位置と、端末位置検出手段21により検出された端末保持者の位置と、典型事故パターンデータベース10に記録された事故パターンとに基づいて、状況危険度判定手段60により判定された状況危険度を重み付けし、端末保持者の車両1に対する危険度である総合危険度を判定する総合危険度判定手段15aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信を用いて携帯端末の保持者の危険度を判定する車両の危険度判定システム及び危険度判定装置、並びにこれらを用いて車両の運転者に危険報知する車両の危険報知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末の保持者(以下、端末保持者という)と車両との間(歩車間ともいう)で通信を行なう歩車間通信が開発されている。なお、ここでは端末保持者は歩行者であり、この歩行者は自転車に乗車する者を含むものをいう。
【0003】
歩車間通信では、端末保持者の保持する携帯端末に備えられたGPS等の検出器により端末保持者の位置や移動速度を検出し、車両に備えられたGPS等の検出器により車両の位置や車速を検出し、携帯端末及び車両に備えられたこれらの検出器により検出された情報を通信する。
この歩車間通信を用いた歩車間の安全にかかる技術も開発されており、かかる技術としては、特許文献1が挙げられる。
【0004】
特許文献1の技術は、端末の検出器により検出される端末保持者の移動速度や上下振動に基づいて、端末保持者が歩行状態か自転車乗車状態かといった判定を行ない、この判定による端末保持者の状態に応じて、端末保持者又は車両の運転者に車両又は端末保持者の接近を報知する等の支援を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−251758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、個々の端末保持者に対してその状態を判定する。このため、車両において検出される端末保持者が複数人いる場合には、これらの端末保持者のそれぞれに個別に対応することになる。したがって、車両の運転者には複数人の端末保持者のそれぞれについての情報が何れも提供され、特に報知される端末保持者が大勢の場合、車両の運転者は提供される情報を適切に処理することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、複数人の端末保持者にかかる情報を適切に扱うことができるようにした、車両の危険度判定システム及び車両の危険度判定装置と、これらの危険度判定システム及び危険度判定装置を用いて、車両の運転者に複数人の端末保持者にかかる危険度を適切に報知することができるようにした、車両の危険報知装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の車両の危険度判定システムは、車両に装備され、前記車両の位置を検出する車両位置検出手段と、携帯端末に装備され歩行者(自転車に乗車する者を含む)である端末保持者の保持する前記携帯端末の位置を前記端末保持者の位置として検出する端末位置検出手段と、前記携帯端末の動きを前記端末保持者の挙動として検出する挙動検出手段と、前記車両に装備され周辺の前記携帯端末と通信を行なう第1情報通信手段と、前記携帯端末に装備され周辺の前記車両と通信を行なう第2情報通信手段と、前記挙動検出手段により検出された前記端末保持者の挙動に基づいて前記端末保持者を挙動特性別に分類する端末保持者分類手段と、前記端末保持者分類手段により分類された前記端末保持者の分類に基づいて前記端末保持者の前記挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定する潜在的危険度判定手段を有し、少なくとも前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度に基づいて、前記端末保持者の状況による危険度である状況危険度を判定する状況危険度判定手段と、歩行者と車両との典型的な事故パターンが記録された典型事故パターンデータベースと、前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置と前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置と前記典型事故パターンデータベースに記録された前記事故パターンとに基づいて、前記状況危険度判定手段により判定された状況危険度を重み付けし前記端末保持者の前記車両に対する危険度である総合危険度を判定する総合危険度判定手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
(2)歩行者の位置と該位置の危険度である位置危険度との対応関係が記録された位置危険度データベースをさらに備え、前記状況危険度判定手段は、少なくとも前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置と前記位置危険度データベースに記録された前記対応関係とに基づいて前記端末保持者の位置に応じた危険度である位置危険度を判定する位置危険度判定手段を有し、前記位置危険度判定手段により判定された前記端末保持者の位置危険度と前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度とに基づいて前記状況危険度を判定することが好ましい。
【0010】
(3)例えば交差点や車線等の道路インフラ情報といった地図情報が記録された地図情報データベースをさらに備え、前記位置危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報を用いて前記位置危険度を判定し、前記状況危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報を用いて前記状況危険度を判定することが好ましい。
【0011】
(4)前記車両は前記典型事故パターンデータベースと前記総合危険度判定手段とを有し、前記携帯端末は前記挙動検出手段と前記端末保持者分類手段と前記状況危険度判定手段とを有し、前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置情報と前記状況危険度判定手段により判定された前記端末保持者の状況危険度情報とは、前記第2情報通信手段により発信され、前記第1情報通信手段により取得されることが好ましい。
【0012】
(5)前記車両は前記端末保持者分類手段と前記状況危険度判定手段と前記典型事故パターンデータベースと前記総合危険度判定手段とを有し、前記携帯端末は前記挙動検出手段を有し、前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置情報と前記挙動検出手段により検出された前記端末保持者の挙動情報とは、前記第2情報通信手段により発信され、前記第1情報通信手段により取得されることが好ましい。
【0013】
(6)また、本発明の車両の危険度判定装置は、車両の位置を検出する車両位置検出手段と、前記車両の周辺における端末保持者の保持する携帯端末と通信を行なう情報通信手段とを備え、前記情報通信手段は、前記携帯端末の位置情報を前記端末保持者の位置情報として取得し前記携帯端末の動き情報を前記端末保持者の挙動情報として取得し、前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の挙動情報に基づいて前記端末保持者を挙動特性別に分類する端末保持者分類手段と、少なくとも前記端末保持者分類手段により分類された前記端末保持者の分類に基づいて前記端末保持者の前記挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定する潜在的危険度判定手段を有し少なくとも前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度に基づいて前記端末保持者の状況に応じた危険度である状況危険度を判定する状況危険度判定手段と、歩行者と車両との典型的な事故パターンが記録された典型事故パターンデータベースと、前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置と前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の位置情報と前記典型事故パターンデータベースに記録された前記事故パターンとに基づいて、前記状況危険度判定手段により判定された状況危険度を重み付けし前記端末保持者の前記車両に対する危険度である総合危険度を判定する総合危険度判定手段とを備えることを特徴としている。
【0014】
(7)歩行者の位置と該位置の危険度である位置危険度との対応関係が記録された位置危険度データベースをさらに備え、前記状況危険度判定手段は、少なくとも前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の位置情報と前記位置危険度データベースに記録された前記対応関係とに基づいて前記端末保持者の位置に応じた危険度である位置危険度を判定する位置危険度判定手段を有し、前記位置危険度判定手段により判定された前記端末保持者の位置危険度と前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度とに基づいて前記状況危険度を判定することが好ましい。
【0015】
(8)例えば交差点や車線等の道路インフラ情報といった地図情報が記録された地図情報データベースをさらに備え、前記位置危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報に基づいて前記位置危険度を判定し、前記状況危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報に基づいて前記状況危険度を判定することが好ましい。
【0016】
(9)また、本発明の車両危険報知装置は、上記の車両の危険度判定システム又は上記の車両の危険度判定装置において判定された前記端末保持者の総合危険度に応じて、該総合危険度の情報を前記車両の運転者に提供する情報提供実行手段を備えることを特徴としている。
(10)前記情報提供実行手段は、所定人数以下の前記端末保持者にかかる総合危険度の情報を提供することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
(1)したがって、本発明の車両の危険度判定システムによれば、総合危険度判定手段が、車両の位置と端末保持者の位置と事故パターンとに基づいて、状況危険度判定手段により潜在的危険度に基づいて判定された状況危険度を重み付けし、端末保持者の車両に対する危険度である総合危険度を判定するため、各端末保持者の総合危険度をそれぞれ判定することになり、複数人の端末保持者にかかる危険度の情報を適切に扱うことができる。
【0018】
(2)状況危険度判定手段が潜在的危険度の他に位置危険度にも基づいて状況危険度を判定するように構成すれば、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0019】
(3)位置危険度判定手段が端末保持者の位置と位置危険度データベースに記録された対応関係とに加えて地図情報を用いて位置危険度を判定するように構成すれば、位置危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
また、状況危険度判定手段が潜在的危険度と状況危険度とに加えて地図情報を用いて状況危険度を判定するように構成すれば、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0020】
(4)携帯端末が挙動検出手段と端末保持者分類手段と状況危険度判定手段とを有するように構成すれば、携帯端末の周辺に車両がいない場合であっても、端末保持者を分類することができ、端末保持者の状況危険度を判定することができる。また、端末保持者の位置及び挙動を長期間に亘って端末保持者の分類及び状況危険度の判定に用いるため、これらの分類及び状況危険度の精度を向上させることができる。
(5)車両が端末保持者分類手段と状況危険度判定手段とを有するように構成すれば、携帯端末の構成を簡素にすることができる。これにより、より多くの端末保持者の危険度を判定することができる。
【0021】
(6)本発明の車両の危険度判定装置によれば、総合危険度判定手段が、車両の位置と端末保持者の位置と事故パターンとに基づいて、状況危険度判定手段により潜在的危険度に基づいて判定された状況危険度を重み付けし、端末保持者の車両に対する危険度である総合危険度を判定するため、各端末保持者の総合危険度をそれぞれ判定することになり、複数人の端末保持者にかかる危険度の情報を適切に扱うことができる。
【0022】
(7)状況危険度判定手段が潜在的危険度の他に位置危険度にも基づいて状況危険度を判定するように構成すれば、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0023】
(8)位置危険度判定手段が端末保持者の位置と位置危険度データベースに記録された対応関係とに加えて地図情報を用いて位置危険度を判定するように構成すれば、位置危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
また、状況危険度判定手段が潜在的危険度と状況危険度とに加えて地図情報を用いて状況危険度を判定するように構成すれば、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0024】
(9)本発明の車両の危険報知装置によれば、重み付けされた端末保持者の総合危険度に応じて該危険度の情報を車両の運転者に提供する情報提供実行手段を備えるため、車両の運転者に複数人の端末保持者にかかる危険度を適切に報知することができる。
【0025】
(10)情報提供実行手段が所定人数以下の端末保持者にかかる総合危険度の情報を提供するように構成すれば、車両の運転者に提供される情報が制限されることにより、車両の運転者に複数人の端末保持者にかかる危険度を適切に報知することができる。また、情報提供実行手段は、例えば短期間に記憶することのできる情報容量の上限に対応する人数といった所定人数以下の端末保持者にかかる危険度の情報を提供することにより、適切に複数人の端末保持者にかかる危険度を認知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両の危険度判定装置及び危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置を例示する構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる車両の危険度判定装置及び危険度判定システムによる端末保持者の総合危険度の判定を示すフローチャートである。
【図3】本発明の車両の危険報知装置による総合危険度の報知を示すフローチャートである。
【図4】本発明の携帯端末における総合危険度の報知を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる車両の危険度判定装置及び危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
〈第1実施形態〉
[構成]
【0028】
まず、第1実施形態にかかる車両の危険度判定装置及び車両の危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置の構成を説明する。本実施形態にかかる車両は、例えばトラック又はバスといったいわゆる大型又は中型の自動車である。
【0029】
図1に示すように、車両1は、GPS(車両位置検出手段)11と、HMI(Human Machine Interface,情報提供実行手段)12と、車両状態検出器13と、アンテナ14aに接続された歩車間通信装置(情報通信手段,第1情報通信手段)14と、総合危険度判定部(総合危険度判定手段)15aを有する危険度判定ECU15と、このECU15により読み出し可能な典型事故パターンデータベース(DB)10及び地図情報データベース(DB)31とを有する。
【0030】
GPS11は、車両1の位置を検出するものである。このGPS11は、図示しないGPSアンテナを介して車両1の緯度・経度の情報を車両1の位置情報として検出する。なお、この緯度・経度の情報を、車両1の走行速度を検出する車速センサや車両1のステアリング角を求めるセンサ等により検出された情報を累積して方向を検出するいわゆる自律航法により補完して、車両1の位置情報として扱うことができる。
GPS11は危険度判定ECU15に接続され、GPS11により検出された車両1の位置情報は危険度判定ECU15に伝達される。
【0031】
HMI12は、運転者と車両設備とのインターフェイスであり、車両1の運転者に情報を提供するものである。このHMI12としては、モニタやスピーカ等を用いることができる。
このHMI12は危険度判定ECU15に接続され、この危険度判定ECU15から危険度にかかる情報提供指示がされると、車両1の運転者に危険報知する。例えば、HMI12は危険度にかかる情報提供指示がなされると、モニタに情報内容を表示し、スピーカにより警告音や情報にかかるメッセージを鳴らすことにより、自車両1の運転者に危険報知する。
【0032】
車両状態検出器13は、車両1の状態を検出するものである。この車両状態検出器13としては、車速センサやウインカースイッチ等を適用することができる。この場合、車両1の状態として、車両1の車速やウインカー操作を検出することができる。
この車両状態検出器13は危険度判定ECU15に接続され、車両状態検出器13により検出された車両1の状態にかかる情報は危険度判定ECU15に伝達される。
【0033】
歩車間通信装置14は、車両1の周辺における端末保持者の保持する携帯端末2と通信を行なうものである。なお、携帯端末2を保持する端末保持者は歩行者であり、この歩行者は自転車に乗車する者を含むものをいう。
この歩車間通信装置14は、周辺の携帯端末2と通信するためのアンテナ14aが接続され、通信により取得した情報を伝達するとともに車両1から情報を発信すべく危険度判定ECU15に接続される。
【0034】
ここで、車両1の歩車間通信による通信対象である携帯端末2の構成を説明する。
図1に示すように、携帯端末2は、GPS(端末位置検出手段)21と、挙動検出器22と、情報提供実行部23と、アンテナ24aに接続された歩車間通信装置(第2情報通信手段)24と、潜在的危険度判定部(潜在的危険度判定手段)62と位置危険度判定部(位置危険度判定手段)64とを有する状況危険度判定部(状況危険度判定手段)60と、この状況危険度判定部60により読み出し可能な各種のデータベース(DB)とを有する。かかる各種のデータベースとは、典型動きパターンデータベース(DB)20と、地図情報データベース(DB)30と、位置危険度データベース(DB)40とを少なくとも含む。
【0035】
GPS21は、携帯端末2の位置を端末保持者の位置として検出するものである。このGPS21は、図示しないGPSアンテナを介して携帯端末2の緯度・経度の情報を端末保持者の位置情報として検出する。
GPS21は状況危険度判定部60に接続され、GPS21により検出された端末保持者の位置情報は状況危険度判定部60に加えて歩車間通信装置24にも伝達される。
【0036】
挙動検出器22は、携帯端末2の動きを端末保持者の挙動として検出するものである。この挙動検出器22としては、加速度センサや角速度センサ等を用いることができ、上記のGPS21を兼用又は併用して用いてもよい。挙動検出器22により端末保持者の速度,加速度等が検出される。
【0037】
挙動検出器22は状況危険度判定部60に接続され、挙動検出器22により検出された端末保持者の挙動情報は状況危険度判定部60に伝達される。なお、挙動検出器22により検出された端末保持者の速度等の挙動情報は状況危険度判定部60に加えて歩車間通信装置24にも伝達される。
情報提供実行部23は、端末保持者と携帯端末2とのインターフェイスであり、端末保持者に情報を提供するものである。この情報提供実行部23としては、モニタやスピーカやバイブレータ等を用いることができる。
【0038】
この情報提供実行部23は歩車間通信装置24に接続され、この歩車間通信装置24を介して危険度にかかる情報提供指示がされると、端末保持者に危険報知する。例えば、情報提供実行部23は危険度にかかる情報提供指示がなされると、モニタに情報内容を表示し、スピーカにより警告音や情報にかかるメッセージを鳴らす、あるいはバイブレータにより携帯端末2を振動させることにより、端末保持者に危険報知する。
【0039】
なお、この情報提供実行部23は、所定台数よりも多い複数台の車両から危険度にかかる情報提供指示がされると、所定台数以下の車両に限った危険度にかかる情報を提供する。これにより端末保持者は危険報知される。
【0040】
この所定台数は、例えば短期期間保持される記憶の容量として知られる所謂マジカルナンバーに対応する7±2(5〜9)台といった端末保持者が適切に認知することのできる情報数の上限として規定される。
また、情報を限定する際に、情報提供する車両1は、端末保持者の後述する総合危険度に基づいて、総合危険度の大きいものに優先して情報を提供する。
【0041】
歩車間通信装置24は、携帯端末2の周辺における車両1と通信を行なうものである。この歩車間通信装置24は、周辺の車両1と通信するためのアンテナ24aと、携帯端末2から情報を発信すべく状況危険度判定部60に接続される。
【0042】
状況危険度判定部60は、端末保持者分類部(端末保持者分類手段)62aを有する潜在的危険度判定部62と位置危険度判定部64とを有し、各種のデータベース20,30,40を用いて、端末保持者の状況に応じた危険度である状況危険度を判定するものである。まず、これらのデータベース20,30,40を説明する。
【0043】
典型動きパターンDB20は、典型的な歩行者の動きに対応する歩行者の分類が記録されたものであり、挙動特性と歩行者の分類との対応関係が記録されたものである。この典型動きパターンDB20には、以下の(I)から(III)に例示される典型的な動きとこれに対応する歩行者の分類とが記録される。
(I)通常の歩行速度よりも低い速度で移動している歩行者は、高齢者やながら歩行中の健常者(以下、「ながら歩行者」という)に分類される。例えば、時速4km〜時速6km等といった通常の歩行速度よりも低い速度の歩行者を高齢者や「ながら歩行中」に分類する。「ながら歩行者」は、歩行者の移動速度を学習した結果、この移動速度が途中から低下したことから判定することができる。一方、高齢者は、常時移動速度が低いことから判定することができる。
(II)通常の歩行速度よりも速度が高く、挙動が直線的又は旋回的な動きの歩行者は、自転車に乗車中の者(以下、自転車乗車者ともいう)であると分類される。
(III)通常の歩行速度近傍において速度の変化率が大きかったり、加速度や加速方向等の変化が大きい、或いは進行方向が高頻度に変化する等の動きの歩行者は、子供に分類される。
なお、典型動きパターンDB20には、上記の(I)から(III)に記録されるものに限らず、端末保持者の分類として更に通常の成人歩行者等を含むものを用いてもよい。
【0044】
地図情報DB30は、緯度・経度情報と対応付けされた道路データが記録されたものである。この道路データには、車道,交差点,横断歩道,車線情報及び道路種別情報等の道路インフラ情報を少なくとも含んでいる。ここでいう車線情報とは、車線の本数等の情報をいい、道路種別情報とは、自動車専用道等の種別情報をいう。
【0045】
位置危険度DB40は、歩行者の位置とこの位置の危険度である位置危険度との対応関係が記録されたものである。この位置危険度DB40には、以下の(I)及び(II)に例示される対応関係が記録されている。
(I)歩行者が交差点周辺又は交差点内に位置する場合、交差点と歩行者との位置が近づくに連れて危険度が大きくなるように位置危険度が記録されている。すなわち、歩行者の位置と交差点の位置との位置関係においては、交差点に位置する歩行者の位置危険度が最も大きく記録される。
(II)歩行者が車線上に位置する場合の位置危険度が記録されている。例えば、横断歩道上の位置よりも横断歩道が敷設されていない位置の位置危険度の方が大きく記録され、また、車線上の位置が中央線に近づくに連れて大きくなるように位置危険度が記録されている。
【0046】
次に、潜在的危険度判定部62の有する端末保持者分類部62aを説明する。
端末保持者分類部62aは、挙動検出器22により検出された端末保持者の挙動と典型動きパターンDB20に記録された対応関係とに基づいて、端末保持者をその挙動特性別に分類する。つまり、端末保持者分類部62aは、端末保持者の挙動に対応する分類を典型動きDBから読み出すことにより、端末保持者を分類する。
【0047】
潜在的危険度判定部62は、端末保持者分類部62aにより分類された端末保持者の分類に基づいて、端末保持者の挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定するものである。
この潜在的危険度判定部62は、子供や高齢者等の分類に応じた危険度をそれぞれ判定する。この判定は、例えば、端末保持者の各分類に応じた危険度が予め設定されており、この予め設定された危険度を潜在的危険度として適用し端末保持者の潜在的危険度を判定する。
【0048】
位置危険度判定部64は、GPS21により検出された端末保持者の位置と位置危険度DB40に記録された対応関係とに基づいて、地図情報DB30に記録された地図情報を用いて、端末保持者の位置に応じた危険度である位置危険度を判定するものである。つまり、位置危険度判定部64は、端末保持者の位置に対応する位置危険度を位置危険度DBから読み出すことにより、端末保持者の位置危険度を判定する。
上記の潜在的危険度及び位置危険度は、状況危険度の判定に用いられる。
【0049】
状況危険度判定部60は、潜在的危険度判定部62により判定された潜在的危険度と位置危険度判定部64により判定された位置危険度とに基づいて、端末保持者の状況危険度を判定するものである。なお、状況危険度とは、分類された端末保持者の位置と道路インフラの位置との位置関係に応じた危険度であり、いわば分類された端末保持者の位置する状況に応じた危険度である。
状況危険度判定部60は、潜在的危険度と位置危険度とを加算や乗算等して合わせた危険度を補正して、状況危険度を判定する。
【0050】
状況危険度判定60による状況危険度の判定を以下の(I)から(III)に例示する。
(I)子供に分類される端末保持者が交差点の周辺に位置する場合には、飛出しの蓋然性が高いため、高齢者等に分類される端末保持者が交差点の周辺に位置する場合よりも、端末保持者と道路インフラとの位置関係に応じた危険度、即ち状況危険度が大きい。
したがって、この場合、状況危険度判定部60は、潜在的危険度及び位置危険度を合わせた危険度を大きくする補正を行ない、この補正された危険度を状況危険度として判定する。
【0051】
(II)高齢者や「ながら歩行者」に分類される端末保持者が車線上に位置する場合、注意力が低下している蓋然性が高いため、自転車乗車者に分類される端末保持者が車線上に位置する場合よりも状況危険度が高い。
したがって、この場合、状況危険度判定部60は、潜在的危険度及び位置危険度を合わせた危険度を大きくする補正を行ない、この補正された危険度を状況危険度として判定する。
【0052】
(III)自転車乗車者に分類される端末保持者の場合、自転車走行可能な車線に位置する端末保持者よりも自動車専用道上の車線に位置する端末保持者のほうが状況危険度が高い。
したがって、この場合、状況危険度判定部60は、潜在的危険度及び位置危険度を合わせた危険度を大きくする補正を行ない、この補正された危険度を状況危険度として判定する。
【0053】
なお、状況危険度判定部60による判定は、上記の(I)から(III)に記録されるものに限らず、端末保持者が子供や高齢者に分類される場合にこれらの子供や高齢者が車線上にいれば潜在的危険度及び位置危険度を合わせた危険度を大きくするものとしてもよい。
状況危険度判定部60は歩車間通信装置24に接続され、状況危険度判定部60により判定された端末保持者の状況危険度の情報は歩車間通信装置24に伝達される。
【0054】
携帯端末2は歩車間通信装置24を有し、車両1は歩車間通信装置14を有することにより、車両1と携帯端末2とは互いに通信することができる。例えば、携帯端末2において歩車間通信装置24に伝達された状況危険度の情報並びに端末保持者の速度,位置及び分類にかかる情報(端末保持者の情報)は、通信により携帯端末2の周辺の車両1に発信される。
【0055】
以下、車両1の構成を説明する。
歩車間通信装置14を介して受信され取得された状況危険度の情報及び端末保持者の情報は、危険度判定ECU15に伝達される。なお、このECU15は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。
【0056】
危険度判定ECU15の有する総合危険度判定部15aは、車両1の位置情報と端末保持者の位置情報とに基づいて、端末保持者の総合危険度を判定する。
つまり、この総合危険度判定部15aは、車両1と端末保持者との距離が近づくに連れて状況危険度を大きくするように重み付けして総合危険度を判定する。
また、総合危険度判定部15aは、典型事故パターンDB10及び地図情報DB31も用いて、車両1に対する端末保持者の危険度である総合危険度を判定する。まず、これらのDB10,31を説明する。
【0057】
典型事故パターンDB10は、車両と歩行者との事故が生じやすい典型的な事故パターンが記録されたものであり、かかるパターンを以下の(I)から(IV)に例示する。
(I)車両が信号や横断歩道の無い直線道路を所定車速以上で走行中であって、夜間に、車両の右側から左側にゆっくりと横断中の高齢者がいるパターン。ここでいう所定車速とは、流れのよい直線道路を定速走行する通常の速度をいう。
(II)車両が左折する際に、車両の後方から自転車乗車者が直進中であり、車両1と自転車乗車者との間に街路樹があり視認性が悪いパターン。
(III)住宅街の見通しの悪い交差点において、車両が走行する道路に交差する道路から子供が接近するパターン。
(IV)夜間に、車両が狭い幅の道路を走行中に、車両前方のカーブ路の右側を走行する自転車乗車者と対向するパターン。
【0058】
地図情報DB31は、地図情報DB30よりも詳細なデータベースであって、地図情報DB30に記録された情報に加えて、住宅街等の市街地区分の情報,車道に沿った街路樹の情報や交差点の見通しの良し悪し等の視認性情報等の情報をさらに有している。
【0059】
総合危険度判定部15aは、これらのDB10,31と、車両1の位置情報と、車両状態検出器13により検出された情報と、端末保持者の位置情報,速度情報及び分類情報並びに状況危険度情報とに基づいて、車両1に対する端末保持者の危険度である総合危険度を判定する。
つまり、総合危険度判定部15aは、端末保持者の分類と、端末保持者及び車両1の位置関係と、車両1の状態とに合致するパターンが典型事故パターンDB10にあれば、この端末保持者の状況危険度を大きくするように重み付けして総合危険度を判定する。
【0060】
総合危険度判定部15aは、例えば、端末保持者は高齢者に分類されており、この高齢者が車両1の前方において信号や横断歩道の無い車線上を、車両状態検出器13のヘッドライトスイッチがON状態の際に、車両1の進行方向に対して右から左に通常の歩行速度よりも低い速度で移動していれば、この状況は上記の典型事故パターン(I)のパターンに合致するため、この端末保持者の状況危険度を大きくするように重み付けして総合危険度を判定する。
【0061】
なお、典型事故パターンDB10に、記録されたそれぞれのパターンとともに重み付け係数が記録されるように構成すれば、総合危険度判定部15aは、この係数を状況危険度に適用することにより、端末保持者の総合危険度を判定することができる。
【0062】
また、危険度判定ECU15は、総合危険度判定部15aにより総合危険度が判定された端末保持者を選択する。
つまり、所定人数よりも多い複数人の端末保持者が検出される場合、危険度判定ECU15は、所定人数以下の端末保持者を選択する。この選択は、総合危険度の大きい順に所定人数を選択することでなされる。
【0063】
この所定人数は、例えば短期期間保持される記憶の容量として知られる所謂マジカルナンバーに対応する7±2(5〜9)人といった車両1の運転者が適切に認知することのできる人数の上限として規定される。
また、情報を限定する際に、危険度判定ECU15により総合危険度の大きい順に端末保持者は所定人数以下に選択されるため、運転者は優先的に注意すべき対象が理解できるものといえる。
【0064】
また、危険度判定ECU15は、総合危険度判定部15aにより総合危険度が判定されると、HMI12を操作して端末保持者の総合危険度にかかる情報を提供することにより、車両1の運転者に端末保持者の総合危険度を報知する。
同様に、危険度判定ECU15は、総合危険度判定部15aにより総合危険度が判定されると、歩車間通信装置14,24を介して携帯端末2の情報提供実行部23に総合危険度にかかる情報提供指示することにより、携帯端末2の端末保持者に総合危険度を報知する。
【0065】
所定人数よりも多い複数人の端末保持者が検出される場合には、危険度判定ECU15は、選択された所定人数以下の端末保持者の総合危険度を車両1の運転者に報知する。この場合、総合危険度の大きい端末保持者の情報を優先的に報知する。
【0066】
[作用・効果]
本発明の第1実施形態に係る車両の危険度判定装置及び車両の危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置の構成は、上述のように構成される。このため、車両の危険度判定システムでは、図2に示すような総合危険度の判定フローが周期的に行なわれる。
【0067】
ステップS1では、端末保持者の情報を取得する。この情報には、端末保持者の位置情報,挙動情報及び速度情報が含まれる。
ステップS10では、典型動きパターンDB20を読込む。
ステップS20では、ステップS10で取得した端末保持者の挙動情報に対応する端末保持者の分類をステップS10で読込んだ典型動きパターンDB20から読み出すことにより、端末保持者を分類する。
【0068】
ステップS30では、ステップS20の端末保持者の分類に基づいて潜在的危険度を判定する。
ステップS40では、地図情報DB30を読込む。
ステップS50では、ステップS40の地図情報DB30を用いて位置危険度を判定する。
【0069】
ステップS60では、ステップS30の潜在的危険度とステップS50の位置危険度とに基づいて、端末保持者の状況危険度を判定する。
なお、本実施形態では、これらのステップS10からステップS60は、携帯端末2において行なわれる。
【0070】
ステップS70では、車両1の情報を取得する。この情報としては、車両1の位置情報と、車速情報,ウインカースイッチやヘッドライトスイッチの操作情報等の車両1の状態にかかる情報が含まれる。
ステップS80では、典型事故パターンDB10を読込む。
【0071】
ステップS90では、ステップS10で取得された端末保持者の情報と、ステップS60で判定された端末保持者の状況危険度の情報と、ステップS70で取得した車両1の情報と、ステップS80で読込んだ典型事故パターンDB10とに基づいて総合危険度を判定する。
そして、本制御周期を終了(エンド)する。
なお、本実施形態では、これらのステップS70からステップS90は、車両1において行なわれる。
【0072】
次に、車両の危険報知装置では、図3に示すようなフローで総合危険度の報知が行なわれる。なお、このフローは周期的に行なわれる。
ステップS100では、車両1の周辺において通信可能な全ての端末保持者の総合危険度をそれぞれ取得する。
【0073】
ステップS110では、総合危険度が判定されている端末保持者が所定人数よりも多いかを判定する。端末保持者が所定人数よりも多ければステップS120へ移行し、端末保持者が所定人数以下であればステップS130へ移行する。
【0074】
ステップS120では、総合危険度に応じて所定人数以下の端末保持者を選択する。
ステップS130では、所定人数以下の端末保持者にかかる総合危険度を報知する。
そして、本制御周期を終了(エンド)する。
なお、これらのステップS100からステップS130は、車両1において行なわれる。
【0075】
次に、携帯端末2では、図4に示すようなフローで端末保持者の総合危険度が報知される。なお、このフローは周期的に行なわれる。
ステップS200では、端末保持者の総合危険度を所定台数よりも多い台数の車両から受信しているかを判定する。所定台数よりも多くの車両から受信していればステップS210へ移行し、所定台数以下の車両からのみ受信していればステップS220へ移行する。
【0076】
ステップS210では、総合危険度に応じて所定台数以下の車両を選択する。
ステップS220では、所定台数未満の車両から送信された総合危険度を端末保持者に報知する。
そして、本制御周期を終了(エンド)する。
【0077】
したがって、本発明の車両の危険度判定装置及び車両の危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置によれば、総合危険度判定部15aが、GPS11により検出された車両1の位置と、典型事故パターンDB10に記録された事故パターンと、状況危険度判定部60により判定された端末保持者の状況危険度情報とに基づいて、端末保持者の状況的危険度に重み付けをし、端末保持者の車両に対する危険度である総合危険度を判定するため、各端末保持者の総合危険度をそれぞれ判定することになり、複数人の端末保持者にかかる危険度(総合危険度)の情報を適切に扱うことができる。
【0078】
状況危険度判定部60は、潜在的危険度に加えて位置危険度にも基づいて、端末保持者の状況危険度を判定するため、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0079】
位置危険度判定部64は、端末保持者の位置と位置危険度DB40に記録された対応関係とに加えて地図情報DB30に記録された地図情報を用いて位置危険度を判定するため、位置危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
また、状況危険度判定部60は、潜在的危険度と状況危険度とに加えて地図情報DB30に記録された地図情報を用いて状況危険度を判定するため、状況危険度の判定精度が向上することにより端末保持者にかかる危険度をより精度良く判定することができる。
【0080】
携帯端末2は、挙動検出器22と端末保持者分類部62aを有する潜在的危険度判定部62とを備えるため、携帯端末2の周辺に車両がいない場合であっても、端末保持者の分類を判定することができ、端末保持者の潜在的危険度を判定することができる。また、端末保持者の位置及び挙動を長期間に亘って端末保持者の分類判定及び潜在的危険度判定に用いるため、これらの分類判定及び潜在的危険度判定の精度を向上させることができる。
【0081】
また、重み付けされた端末保持者の総合危険度に応じてこの危険度の情報を車両1の運転者に提供するHMI12を備えるため、車両1の運転者に複数人の端末保持者にかかる総合危険度を適切に報知することができる。
【0082】
HMI12は、所定人数以下の端末保持者にかかる総合危険度の情報を提供するため、車両1の運転者に提供される情報が制限されることにより、車両1の運転者に複数人の端末保持者にかかる総合危険度を適切に報知することができる。また、HMI12は、例えば短期間に記憶することのできる情報容量の上限に対応する人数といった所定人数以下の端末保持者にかかる危険度の情報を提供することにより、適切に複数人の端末保持者にかかる総合危険度を認知させることができる。
【0083】
〈第2実施形態〉
次に、図面を用いて本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態にかかる車両の危険度判定装置及び車両の危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置は、車両及び携帯端末の構成が第1実施形態と異なる。
なお、ここで説明する点を除いては第1実施形態と同様の構成になっており、これらについては、同様の符号を使用し、各部の説明を省略する。
【0084】
図5に示すように、携帯端末2は、GPS(端末位置検出手段)21と、挙動検出器22と、情報提供実行部23と、アンテナ24aに接続された歩車間通信装置(第2情報通信手段)24とを有する。
GPS21,挙動検出器22,情報提供実行部23及び歩車間通信装置24は、GPS21及び挙動検出器22と歩車間通信装置24との接続関係を除いて、第1実施形態のGPS21,挙動検出器22,情報提供実行部23及び歩車間通信装置24と同様の構成である。
GPS21及び挙動検出器22は歩車間通信装置24に接続される。
【0085】
この歩車間通信装置24にはGPS21により検出された携帯端末2を保持する端末保持者の位置情報と、挙動検出器22により検出された携帯端末2を保持する端末保持者の挙動情報とが伝達される。
つまり、本実施形態の携帯端末2は、第1実施形態の携帯端末2の構成から、端末保持者分類部62aを有する潜在的危険度判定部62と位置危険度判定部64とを有する状況危険度判定部60,典型動きパターンDB20,地図情報DB30及び位置危険度DB40の構成を省略した構成である。
【0086】
携帯端末2は歩車間通信装置24を有し、車両1は歩車間通信装置14を有することにより、車両1と携帯端末2とは互いに通信することができる。例えば、携帯端末2において歩車間通信装置24に伝達された端末保持者の位置情報及び挙動情報(端末保持者の情報)は、通信により携帯端末2の周辺の車両1に発信される。
【0087】
以下、車両1の構成を説明する。
図5に示すように、車両1は、GPS(車両位置検出手段)11と、HMI(Human Machine Interface,情報提供実行手段)12と、車両状態検出器13と、アンテナ14aに接続された歩車間通信装置(情報通信手段,第1情報通信手段)14と、総合危険度判定部150aと状況危険度判定部160とを有する危険度判定ECU150と、このECU150により読み出し可能な各種のデータベースとを有する。かかるデータベースとは、典型事故パターンデータベース(DB)10と、典型動きパターンデータベース(DB)120と、地図情報データベース(DB)130、位置危険度データベース(DB)140とを有する。
【0088】
GPS11,HMI12,車両状態検出器13及び歩車間通信装置14は、危険度判定ECU150に接続され、第1実施形態のGPS11,HMI12,車両状態検出器13及び歩車間通信装置14と同様の構成である。
【0089】
典型動きパターンDB120は、危険度判定ECU150に接続され、車両1に備えられる。なお、この典型動きパターンDB120は、第1実施形態の典型動きパターンDB20と同様のものである。
【0090】
地図情報DB130は、危険度判定ECU150に接続され、車両1に備えられる。なお、この地図情報DB130は、第1実施形態の地図情報DB31と同様のものである。
【0091】
位置危険度DB140は、危険度判定ECU150に接続され、車両1に備えられる。なお、この位置危険度DB140は、第1実施形態の位置危険度DB40と同様のものである。
つまり、本実施形態の車両1は、第1実施形態の車両1の構成に、危険度判定ECU150に接続された典型動きパターンDB120及び位置危険度DB140を加えた構成である。
【0092】
危険度判定ECU150は、総合危険度判定部150aと状況危険度判定部160とを有する。この状況危険度判定部160は、端末保持者分類部162aを有する潜在的危険度判定部162と位置危険度判定部164とを有する。なお、ECU150は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。
【0093】
総合危険度判定部150aは、状況危険度判定部160により判定された状況危険度を重み付けして、総合危険度を判定する。この状況危険度判定部160は、潜在的危険度判定部162により判定された潜在的危険度と位置危険度判定部164により判定された位置危険度とに基づいて、状況的危険度を判定する。
以下、潜在的危険度判定部162,位置危険度判定部164,状況危険度判定部160,総合危険度判定部150aの順に説明する。
【0094】
潜在的危険度判定部162は、これの有する端末保持者分類部162aにより得られた端末保持者の分類に基づいて、端末保持者の挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定するものである。この潜在的危険度判定部162による潜在的危険度の判定は、第1実施形態の潜在的危険度判定部62による潜在的危険度の判定と同様である。
【0095】
端末保持者分類部162aは、歩車間通信により取得した端末保持者の挙動情報と典型動きパターンDB120に記録された対応関係とに基づいて、端末保持者をその挙動特性別に分類する。この端末者分類部162aによる端末保持者の分類は、第1実施形態の端末保持者分類部62aによる端末保持者の分類と同様である。
【0096】
位置危険度判定部164は、歩車間通信により取得した端末保持者の位置情報と位置危険度DB140に記録された対応関係に基づき、地図情報DB130を用いて、端末保持者の位置危険度を判定するものである。この位置危険度判定部164による位置危険度の判定は、第1実施形態の位置危険度判定部64による位置危険度の判定と同様である。
【0097】
状況危険度判定部160は、潜在的危険度判定部162により判定された潜在的危険度と位置危険度判定部164により判定された位置危険度とに基づいて、端末保持者の状況危険度を判定するものである。この状況危険度判定部160による状況危険度の判定は、第1実施形態の状況危険度判定部60による状況危険度の判定と同様である。
【0098】
総合危険度判定部150aは、車両1の位置情報と端末保持者の位置情報とに基づいて、端末保持者の総合危険度を判定する。
詳細には、総合危険度判定部150aは、典型事故パターンDB10と、地図情報DB130と、GPS11により検出された車両1の位置情報と、歩車間通信装置14により取得された端末保持者の位置情報と、状況危険度判定部160により判定された端末保持者の状況危険度の情報と、端末保持者分類部162aにより分類された端末保持者の分類の情報等に基づいて、車両1に対する端末保持者の危険度である総合危険度を判定する。
【0099】
総合危険度判定部150aは、例えば、端末保持者が自転車乗車者に分類されており、車両状態検出器13のウインカースイッチがON状態の際に、この自転車乗車者が車両1の後方から直進中であり、車両1と自転車乗車者との間は街路樹が植えられている又は視認性が悪いことが地図情報DB130に記録されていれば、この状況は典型事故パターン(II)のパターンに合致するため、この端末保持者の状況危険度を大きくするように重み付けして総合危険度を判定する。
この総合危険度判定部150aによる総合危険度の判定は、第1実施形態の総合危険度判定部15aによる総合危険度の判定と同様である。
【0100】
つまり、本実施形態の危険度判定ECU150は、第1実施形態の危険度判定ECU15に、第1実施形態の携帯端末2における状況危険度判定部60を加えた構成といえる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0101】
[作用・効果]
本発明の第2実施形態に係る車両の危険度判定装置及び車両の危険度判定システム並びにこれらを用いた車両の危険報知装置は、上述のように構成される。このため、車両の危険度判定システムでは、第1実施形態と同様に図2に示すような総合危険度の判定フローが周期的に実施される。
ただし、本実施形態では、図2に示す全てのステップS1〜S90が車両1において行なわれる点が異なる。
【0102】
また、車両の危険報知装置では、第1実施形態と同様に図3に示すフローで車両1の運転者に対する端末保持者の総合危険度の報知が行なわれ、携帯端末2では第1実施形態と同様に図4に示すフローで端末保持者に対してこの保持者自身の総合危険度を報知する。
【0103】
したがって、本実施形態の車両の危険度判定システム及び車両の危険度判定装置によれば、携帯端末2の周辺に車両がいない場合には、端末保持者を分類し潜在的危険度を判定することができないが、車両1は状況危険度判定部160と端末保持者分類部162aとを有するため、携帯端末2を簡素な構成とすることができ、第1実施形態の車両の危険度判定システムよりも車両1側の装置構成に依存するため、車両の危険度判定システムを普及させやすい。
その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0104】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、車両の周辺における通信可能な全ての端末保持者が所定人数以下であれば、これら全ての所定人数以下の端末保持者にかかる総合危険度にかかる情報を車両の運転者に提供するものを示したが、さらに端末保持者の総合危険度にかかる情報の提供に制限を掛け、所定危険度よりも大きい端末保持者のみの総合危険度を報知する構成としてもよい。なお、ここでいう所定危険度とは、安全な端末保持者の総合危険度に対応する危険度として予め設定される。
【0105】
また、端末保持者の位置情報をGPSにより検出するものを示したが、これに加えて又は替えて、路上に設置された通信用インフラとこの通信用インフラと通信すべく携帯端末に装備された通信装置とを備え、この通信用インフラから発信される位置情報に基づいて端末保持者の情報を検出してもよい。
【0106】
また、典型事故パターンDBが車両1に装備されるものを示したが、車両から読み出し可能であればこれに限らず、例えばテレマティクスやインターネット回線を用いて典型事故パターンDBを読み出す構成としてもよい。同様に、典型動きパターンDB,地図情報DB,位置危険度DBについても、車両又は携帯端末から読み出し可能であれば、記録される場所は車両又は携帯端末に限らない。
【0107】
また、状況危険度は少なくとも潜在的危険度に基づいて判定されればよく、この判定に位置危険度を用いなくてもよい。この場合、車両又は携帯端末の構成を簡素にすることができる。
【0108】
また、端末保持車分類部により高齢者と「ながら歩行者」とを区別して分類し、高齢者と「ながら歩行者」とのそれぞれに潜在的危険度を判定してもよい。この場合、区別して分類された高齢者及び「ながら歩行者」のそれぞれの状況危険度及び総合危険度判定されることになり、より適応的な危険度を判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の車両の走行制御装置は、トラック又はバスといった大型又は中型の自動車のみならず乗用車等の小型自動車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
2 携帯端末
10 典型事故パターンDB
11 GPS(車両位置検出手段)
12 HMI(情報提供実行手段)
13 車両状態検出器
14 歩車間通信装置(情報通信手段,第1情報通信手段)
15 危険度判定ECU
15a 総合危険度判定部
21 GPS(端末位置検出手段)
22 情報提供実行部
23 挙動検出器(挙動検出手段)
24 歩車間通信装置(第2情報通信手段)
20,120 典型動きパターンDB
30,31,130 地図情報DB
40,140 位置危険度DB
60,160 状況危険度判定部(状況危険度判定手段)
62,162 潜在的危険度判定部(潜在的危険度判定手段)
62a,162a 端末保持者分類部(端末保持者分類手段)
64,164 位置危険度判定部(位置危険度判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備され、前記車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
携帯端末に装備され、歩行者である端末保持者の保持する前記携帯端末の位置を前記端末保持者の位置として検出する端末位置検出手段と、
前記携帯端末の動きを前記端末保持者の挙動として検出する挙動検出手段と、
前記車両に装備され、周辺の前記携帯端末と通信を行なう第1情報通信手段と、
前記携帯端末に装備され、周辺の前記車両と通信を行なう第2情報通信手段と、
前記挙動検出手段により検出された前記端末保持者の挙動に基づいて前記端末保持者を挙動特性別に分類する端末保持者分類手段と、
前記端末保持者分類手段により分類された前記端末保持者の分類に基づいて前記端末保持者の前記挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定する潜在的危険度判定手段を有し、少なくとも前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度に基づいて、前記端末保持者の状況による危険度である状況危険度を判定する状況危険度判定手段と、
歩行者と車両との典型的な事故パターンが記録された典型事故パターンデータベースと、
前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置と、前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置と、前記典型事故パターンデータベースに記録された前記事故パターンとに基づいて、前記状況危険度判定手段により判定された状況危険度を重み付けし、前記端末保持者の前記車両に対する危険度である総合危険度を判定する総合危険度判定手段とを備える
ことを特徴とする、車両の危険度判定システム。
【請求項2】
歩行者の位置と該位置の危険度である位置危険度との対応関係が記録された位置危険度データベースをさらに備え、
前記状況危険度判定手段は、
少なくとも前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置と前記位置危険度データベースに記録された前記対応関係とに基づいて前記端末保持者の位置に応じた危険度である位置危険度を判定する位置危険度判定手段を有し、前記位置危険度判定手段により判定された前記端末保持者の位置危険度と前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度とに基づいて前記状況危険度を判定する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の危険度判定システム。
【請求項3】
地図情報が記録された地図情報データベースをさらに備え、
前記位置危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報を用いて、前記位置危険度を判定し、
前記状況危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報を用いて、前記状況危険度を判定する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両の危険度判定システム。
【請求項4】
前記車両は、前記典型事故パターンデータベースと、前記総合危険度判定手段とを有し、
前記携帯端末は、前記挙動検出手段と、前記端末保持者分類手段と、前記状況危険度判定手段とを有し、
前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置情報と前記状況危険度判定手段により判定された前記端末保持者の状況危険度情報とは、前記第2情報通信手段により発信され、前記第1情報通信手段により取得される
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の危険度判定システム。
【請求項5】
前記車両は、前記端末保持者分類手段と、前記状況危険度判定手段と、前記典型事故パターンデータベースと、前記総合危険度判定手段とを有し、
前記携帯端末は、前記挙動検出手段を有し、
前記端末位置検出手段により検出された前記端末保持者の位置情報と前記挙動検出手段により検出された前記端末保持者の挙動情報とは、前記第2情報通信手段により発信され、前記第1情報通信手段により取得される
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の危険度判定システム。
【請求項6】
車両の位置を検出する車両位置検出手段と、
前記車両の周辺における端末保持者の保持する携帯端末と通信を行なう情報通信手段とを備え、
前記情報通信手段は、前記携帯端末の位置情報を前記端末保持者の位置情報として取得し、前記携帯端末の動き情報を前記端末保持者の挙動情報として取得し、
前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の挙動情報に基づいて前記端末保持者を挙動特性別に分類する端末保持者分類手段と、
少なくとも前記端末保持者分類手段により分類された前記端末保持者の分類に基づいて前記端末保持者の前記挙動特性に応じた危険度である潜在的危険度を判定する潜在的危険度判定手段を有し、少なくとも前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度に基づいて、前記端末保持者の状況に応じた危険度である状況危険度を判定する状況危険度判定手段と、
歩行者と車両との典型的な事故パターンが記録された典型事故パターンデータベースと、
前記車両位置検出手段により検出された前記車両の位置と、前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の位置情報と、前記典型事故パターンデータベースに記録された前記事故パターンとに基づいて、前記状況危険度判定手段により判定された状況危険度を重み付けし、前記端末保持者の前記車両に対する危険度である総合危険度を判定する総合危険度判定手段とを備える
ことを特徴とする、車両の危険度判定装置。
【請求項7】
歩行者の位置と該位置の危険度である位置危険度との対応関係が記録された位置危険度データベースをさらに備え、
前記状況危険度判定手段は、
少なくとも前記情報通信手段により取得された前記端末保持者の位置情報と前記位置危険度データベースに記録された前記対応関係とに基づいて前記端末保持者の位置に応じた危険度である位置危険度を判定する位置危険度判定手段を有し、前記位置危険度判定手段により判定された前記端末保持者の位置危険度と前記潜在的危険度判定手段により判定された前記端末保持者の潜在的危険度とに基づいて前記状況危険度を判定する
ことを特徴とする、請求項6記載の車両の危険度判定装置。
【請求項8】
地図情報が記録された地図情報データベースをさらに備え、
前記位置危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報に基づいて、前記位置危険度を判定し、
前記状況危険度判定手段は、前記地図情報データベースに記録された地図情報に基づいて、前記状況危険度を判定する
ことを特徴とする、請求項7記載の車両の危険度判定装置。
【請求項9】
請求項1〜5の何れか1項に記載の車両の危険度判定システム又は請求項6〜8の何れか1項に記載の車両の危険度判定装置において判定された前記端末保持者の総合危険度に応じて、該総合危険度の情報を前記車両の運転者に提供する情報提供実行手段を備える
ことを特徴とする、車両の危険報知装置。
【請求項10】
前記情報提供実行手段は、所定人数以下の前記端末保持者にかかる総合危険度の情報を提供する
ことを特徴とする、請求項9記載の車両の危険報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97606(P2013−97606A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240414(P2011−240414)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】