説明

車両の後方確認装置

【課題】 通常の走行時には運転者の視野を狭くすることがなく、しかも必要に応じて表示画面を大きくすることができる車両の後方確認装置を提供する。
【解決手段】 ルーフトリム4の先端部には、収容部本体11を設ける。収容部本体11には、フロントガラス5の上端部に沿って斜め上下方向に延びる収容孔12を形成する。収容部本体11の下面11bの前端部には、収容孔12に達する切欠き部13を形成する。収容孔12には、液晶ディスプレー2を移動可能に挿入する。液晶ディスプレー2の前面2aが収容部本体11の前面11aと一致する所定の半表示位置に位置したときには、液晶ディスプレー2の表示画面21の前端部が切欠き部13から露出する。液晶ディスプレー2を収容孔12から所定長さだけ引き出したときには、表示画面21の前端部が収容孔12から外部に露出し、後端部が切欠き部13から露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運転者に対して後方監視を支援する後方監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置としては、車両の天井の前端部に設けられたルームミラーや、車両の屋根の後端部に設けられたカメラユニット及び車両の車内に設けられ、カメラユニットによって撮影された画像を表示するディスプレーを有するもの(特許文献1参照)がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−134608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルームミラーは、その視野がリヤウインドウの大きさによって制限されるのみならず、後部座席が乗員がいる場合にはその分だけさらに視野が狭くなるという問題がある。
一方、特許文献1に記載の後方監視装置では、ディスプレーによって表示される範囲がリヤウインドウや後部座席の乗員によって狭められることはない。しかし、ディスプレーが、各種の計器類が配置された運転席前方に配置されているので、大きなディスプレーを設置することができない。このため、カメラユニットによって広い範囲を撮影した場合には、その広い範囲が小さなディスプレーで表示される結果、画像が小さくなってしまい、非常に見にくくなるという問題がある。
【0005】
そこで、この出願の発明者は、ディスプレーがルームミラーの代わりに用いられる点に着目し、ディスプレーを車両の天井の前端部に設けることを考えた。つまり、ディスプレーをルームミラーの代わりに配置するのである。天井の前端部には計器類が配置されていないのでディスプレーを大きくすることができるからである。ところが、大型のディスプレーを天井の前端部に配置すると、運転席からの前斜め上方の視野が狭くなってしまい、信号機等を確認しにくくなるという別の問題が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、車両に設けられ、上記車両の後方を撮像する撮像手段と、上記車両の室内に設置され、上記撮像手段によって撮影された画像を表示する表示画面を有する表示手段とを備えた車両の後方監視装置において、上記車両の天井の前端部に収容部が設けられ、この収容部に上記表示手段が、その表示画面の前端部だけが上記収容部から上記車両の運転席側に露出した半表示位置と、上記表示画面全体が上記収容部から上記運転席側に露出した全表示位置との間を上記車両のフロントガラスの上端部にほぼ沿った斜め上下方向へ移動可能に設けられていることを特徴としている。
この場合、上記収容部が上記天井の前端部に設けられた収容部本体を有しており、この収容部本体には、上記フロントガラスにほぼ沿って斜め上下方向へ延び、前端部が上記収容部本体の前端面に開口する収容孔と、この収容孔の前端部を上記運転席側に向かって開放する切欠き部とが形成され、上記表示手段が上記収容孔にその長手方向へ移動可能に挿入され、上記表示手段が上記半表示位置に位置しているときには上記表示画面の前端部が上記切欠き部から車内側下方に露出し、上記表示手段が上記全表示位置に位置しているときには、上記表示画面の前端部が上記収容孔から突出するとともに、上記表示画面の後端部が上記切欠き部に臨むように位置することにより、上記表示画面全体が上記運転席側に露出することが望ましい。
上記収容部本体の上記収容孔が開口する前端面が上記収容孔の長手方向において上記天井の前端部とほぼ同一位置に配置され、上記表示手段の前端面が、上記表示手段が上記半表示位置に位置しているときには、上記収容部本体の前端面とほぼ同一面上に位置することが望ましい。
上記車両の室内に画像出力手段が設置され、この画像出力手段と上記撮像手段とが上記表示手段に切換可能に接続されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、表示手段の表示画面を通常のルームミラーの代わりとして用いる場合には、表示手段を半開位置に位置させる。そして、表示画面の収容部から露出した部分にルームミラーとほぼ同程度の視野範囲を表示させる。一方、車両の後方を広い範囲にわたって表示させる場合には、表示手段を全開位置に位置させ、表示画面全体に広い範囲を表示させる。したがって、画像が小さくなることがなく、画像を鮮明に見ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、添付の図1〜図4を参照して説明する。
この実施の形態に係る車両の後方監視装置は、自動車(車両)に適用したものであり、カメラユニット(図示せず)と、図1〜図4に示す収容部1及び液晶ディスプレー(表示手段)2とを備えている。
【0009】
カメラユニットは、支持機構と、CCDカメラ等のカメラ(撮像手段)とを有している。支持機構は、カメラを支持するためのものであり、自動車のうちの、カメラが後方を撮影することができる箇所、例えば自動車の屋根3の後端部に設けられている。カメラは、支持機構によって上下方向及び左右方向へ回動可能に支持されている。したがって、運転者は、車内に設けられた操作部(図示せず)によって支持機構を操作することにより、カメラの光軸方向を所望の方向に向けることができる。しかも、操作部によってカメラを操作することにより、カメラの視野を広狭に変化させたり、その焦点を適宜に調節したりすることができる。
【0010】
収容部1は、収容部本体11を有している。この収容部本体11は、自動車の天井を構成するルーフトリム4の前端部に設けられている。収容部本体11の前端面11aは、フロントガラス5の上端部にほぼ沿う前斜め下方を向いており、同方向においてはルーフトリム4の前端縁とほぼ同一位置に配置されている。これにより、運転席からの斜め上方に対する視野が収容部本体11によってほとんど狭くならないように考慮されている。収容部本体11の下面11bの前側のほぼ半分は、フロントガラス5の上端部とほぼ平行になっている。
【0011】
収容部本体11には、収容孔12が形成されている。この収容孔12は、自動車のフロントガラス5の上端部にほぼ沿うように斜め上下方向に延びている。したがって、収容孔12は、収容部本体11の下面11bの前端部とほぼ平行になっている。収容孔12は、左右方向の長さが上下方向の長さより長く設定され、それによって断面長方形に形成されている。収容孔12は、収容部本体11を貫通しており、その前端部は前端面11aに開口している。一方、収容孔12の後端部は、収容部本体11の上面11cに開口している。収容孔12の後端開口部と対向するルーフトリム4の前端部には、貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、収容孔12より大きい寸法を有しており、収容孔12の長手方向から見たとき貫通孔41の内部に収容孔12全体が入り込むように配置されている。
【0012】
収容部本体11の下面11bには、収容孔12に達する切欠き部13が形成されている。この切欠き部13は、左右方向の長さが前後方向の長さよりが長い長方形をなしている。切欠き部13の左右方向の長さは、収容孔12の左右方向の幅と同一に設定され、前後方向の長さは、収容孔12の下部の長さより短く設定されている。そして、切欠き部13は、左右方向においては収容孔12と同一位置に、前後方向においては切欠き部13の前端が前端面11aと一致するように配置されている。これにより、収容孔12の前端部が後ろ斜め下方に向かって、つまり運転席(図示せず)側に向かって開放されている。
【0013】
上記液晶ディスプレー2は、四角形の平板状に形成されており、収容孔12にその長手方向へ移動可能に挿入されている。液晶ディスプレー2は、その前面2aが収容部本体11の前面11aとほぼ同一面上に位置する半表示位置(図1及び図3参照)と、その前側のほぼ半分が収容孔12から前方へ突出した全表示位置(図2及び図4参照)との間を移動可能になっている。液晶ディスプレー2の運転席側を向く下面2bの前端部には、段差部2cが形成されており、切欠き部13を通した指の先端部を段差部2cに引っ掛けることにより、半表示位置に位置している液晶ディスプレー2を全表示位置側へ引き出すことができ、前面2aを押すことにより、全表示位置に位置している液晶ディスプレー2を半表示位置まで移動させることができる。なお、液晶ディスプレー2の後端部は、貫通孔41を通って屋根3とルーフトリム4との間の空間に出没するようになっている。
【0014】
液晶ディスプレー2は、表示画面21を有している。表示画面21は、液晶ディスプレー2の下面と同一平面上に配置されている。表示画面21は、液晶ディスプレー2が半表示位置に位置しているときには、運転席の運転者が表示画面21の前側のほぼ半分を目視することができるよう、切欠き部13を介して運転席側に向かって、つまり後ろ斜め下方に向かって露出される。一方、液晶ディスプレー2が全表示位置に位置しているときには、表示画面21の前端部が収容孔12から前方へ突出することによって運転席側に露出され、表示画面21の後端部が切欠き部13を介して運転席側に露出される。これにより、表示画面21全体が運転席側に向かって露出される。
【0015】
表示画面21には、上記カメラによって撮影された車両後方の画像が表示される。この場合、液晶ディスプレー2が半表示位置に位置しているときには、表示画面21のうちの切欠き部13を介して露出された前端部に、仮に運転者が従来のルームミラーによって後方を目視したものとしたときに、運転者がルームミラーを介して目視することができる範囲又はそれより若干広い範囲が画像表示される。一方、液晶ディスプレー2が全表示位置に位置しているときには、後述するように、カメラを車両近傍の後ろ斜め下方に向けたときにカメラによって撮影された画像が表示画面21全体にわたって表示される。
【0016】
自動車の車内には、DVD(ディジタルビデオディスク)等の画像出力手段(図示せず)が設けられている。この画像出力手段は、カメラと切り替え可能に接続されており、その切り替えは操作部を操作することによって行うことができる。ただし、この実施の形態では、液晶ディスプレー2が全表示位置に位置しているときにのみ切り替え可能になっており、液晶ディスプレー2が半表示位置に位置しているときには切り替え不能になっている。したがって、液晶ディスプレー2を半開位置に位置させて自動車を運転しているときには、不慮の操作によって表示が切り換わってしまうことはない。
【0017】
上記構成の後方確認装置が設置された自動車を運転する場合、後方確認装置は例えば次のように用いられる。まず、通常の前進走行には、液晶ディスプレー2が半開位置に位置させられる。一方、カメラは、その光軸、視野及び焦点等が運転者によって調節される。この場合、運転者は、表示画面21の切欠き部13を介して露出した前端部に、ルームミラーによって運転者が目視し得る範囲と同等若しくは若干広い範囲の映像が映し出されるように、カメラの光軸等が調節される。これにより、液晶ディスプレー2をルームミラーに代えて用いることができる。
【0018】
車両を後退させる場合には、液晶ディスプレー2を全表示位置に移動させ、表示画面21全体を運転者が見えるようにする。そして、運転者は、カメラが車両近傍の後方を広い範囲にわたって撮影することができるように、その光軸方向、視野及焦点を調節する。特に、リヤウインドウより下側にいる子供のように、リヤウインドウやドアミラー又はフェンダーミラーから運転者が目視することができないようなものを撮影することができるように、つまり車両近傍の下側後方箇所等を撮影することができ、かつそのような箇所が表示画面21によって表示されるように、表示画面21を見ながらカメラを調節する。この結果、表示画面21を見たり、リヤウインドウから直接後方を確認したりしながら後退することにより、車両を安全に後退させることができる。
【0019】
なお、前進走行時及び後退時にそれぞれ調節したカメラの位置等の各情報については、操作部に設けられた記憶部に記憶させておき、液晶ディスプレー2を半表示位置に位置させて前進するとき、あるいは液晶ディスプレー2を全表示位置に位置させて後退するときには、カメラが予め記憶された情報に基づいて調節されるように構成しておくことが望ましい。
【0020】
自動車を駐車させているような場合には、液晶ディスプレー2を全表示位置に位置させるとともに、液晶ディスプレー2に対する接続をカメラから画像出力手段に切り替える。これにより、表示画面21全体で映画等を鑑賞することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、表示手段として液晶ディスプレー2を採用しているが、他の表示手段を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る車両の後方確認装置を備えた車両の要部を示す断面図であって、後方確認装置の液晶ディスプレーが半表示位置に位置させられた状態を示している。
【図2】液晶ディスプレーが全表示位置に位置させられた状態を示す図1と同様の断面図である。
【図3】図1及び図2に示す車両の後方確認装置を、液晶ディスプレーが半表示位置に位置させられた状態で示す斜視図である。
【図4】図1及び図2に示す車両の後方確認装置を、液晶ディスプレーが全表示位置に位置させられた状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 収容部
2 液晶ディスプレー(表示手段)
2a 前端面
4 ルーフトリム(天井)
5 フロントガラス
11 収容部本体
11a 前端面
12 収容孔
13 切欠き部
21 表示画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、上記車両の後方を撮像する撮像手段と、上記車両の室内に設置され、上記撮像手段によって撮影された画像を表示する表示画面を有する表示手段とを備えた車両の後方監視装置において、
上記車両の天井の前端部に収容部が設けられ、この収容部に上記表示手段が、その表示画面の前端部だけが上記収容部から上記車両の運転席側に露出した半表示位置と、上記表示画面全体が上記収容部から上記運転席側に露出した全表示位置との間を上記車両のフロントガラスの上端部にほぼ沿った斜め上下方向へ移動可能に設けられていることを特徴とする車両の後方監視装置。
【請求項2】
上記収容部が上記天井の前端部に設けられた収容部本体を有しており、この収容部本体には、上記フロントガラスにほぼ沿って斜め上下方向へ延び、前端部が上記収容部本体の前端面に開口する収容孔と、この収容孔の前端部を上記運転席側に向かって開放する切欠き部とが形成され、上記表示手段が上記収容孔にその長手方向へ移動可能に挿入され、上記表示手段が上記半表示位置に位置しているときには上記表示画面の前端部が上記切欠き部から車内側下方に露出し、上記表示手段が上記全表示位置に位置しているときには、上記表示画面の前端部が上記収容孔から突出するとともに、上記表示画面の後端部が上記切欠き部に臨むように位置することにより、上記表示画面全体が上記運転席側に露出することを特徴とする請求項1に記載の車両の後方監視装置。
【請求項3】
上記収容部本体の上記収容孔が開口する前端面が上記収容孔の長手方向において上記天井の前端部とほぼ同一位置に配置され、上記表示手段の前端面が、上記表示手段が上記半表示位置に位置しているときには、上記収容部本体の前端面とほぼ同一面上に位置することを特徴とする請求項2に記載の車両の後方監視装置。
【請求項4】
上記車両の室内に画像出力手段が設置され、この画像出力手段と上記撮像手段とが上記表示手段に切換可能に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両の後方監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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