説明

車両の後部構造

【課題】車体の骨格部材側へのフェンダライナーの取り付け強度の向上が簡単な構成で達成できるようにする。
【解決手段】車両の後部構造は、車体3の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネル10と、リヤアウタパネル10の側部パネル10aの前方近傍におけるリヤホイールハウス11と、リヤホイールハウス11から下方に延出するフェンダライナー14と、リヤアウタパネル10とフェンダライナー14とを後方から一体的に覆うリヤバンパ15と、側部パネル10aに貫設されるベントホール30とを備える。ベントホール30よりも車体3の内側方に配置されて上下方向に延び、側部パネル10aとフェンダライナー14の下部との各後面に架設されてこれら10a,14を互いに連結する連結体35を設け、連結体35の長手方向の各部が側部パネル10aおよびフェンダライナー14の下部の各後面とリヤバンパ15の裏面とでの間の空間31を塞ぐようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤホイールハウスの内部空間の後端部から下方に向かって延出し、後車輪をその後方から覆うフェンダライナーを備えた車両の後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の構造には、第1の従来の技術として、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら各公報のものによれば、車体側部に形成され、車輪をその上方から覆うホイールハウスと、上記車輪を覆うよう上記ホイールハウスの内部空間に設けられてこのホイールハウスに締結具やクリップで取り付けられるフェンダライナーとが設けられている。
【0003】
より具体的には、第2の従来の技術として、次のようなものが提案されている。
【0004】
即ち、車両の後部構造は、車体後部の下部後面を形成して車体の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネルと、このリヤアウタパネルの側部を構成する側部パネルの前方近傍における車体側部に形成され、後車輪をその上方から覆うリヤホイールハウスと、上記後車輪をその後方から覆うよう上記リヤホイールハウスの内部空間の後端部から上記側部パネルの下方域にまで延出するフェンダライナーと、車体の幅方向に延び、上記リヤアウタパネルとフェンダライナーとをその後方から一体的に覆うリヤバンパと、上記側部パネルに貫設されるベントホールとを備えている。また、車両の走行中の走行風に基づき、上記側部パネルの後方空間に負圧が生じることとされ、この負圧により上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に吸引されて排出されるようになっている。
【0005】
そして、上記第2の従来技術によれば、車両の走行中、後車輪によって跳ね上げられた小石や泥などが上記ホイールハウスの後部内面やリヤバンパの裏面に直接衝突することは、上記フェンダライナーによって防止される。このようにして、上記ホイールハウスやリヤバンパの保護が図られている。
【0006】
また、上記したように、車両の走行中の走行風に基づき、上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に排出されると、この車室が換気される。このため、車室が所望の湿度に保たれて、湿度による窓の曇りの発生が防止されるなど、乗員にとって車室が快適な状態に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−113720号公報
【特許文献2】特開2010−241218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記第1、第2の従来の技術において、車両が悪路走行をすることや、耐用性の向上に鑑み、上記ホイールハウスへのフェンダライナーの取り付け用の締結具やクリップの数を多くして、車体の骨格部材側に対するフェンダライナーの取り付け強度を、より向上させ、これにより、車体の骨格部材側からのフェンダライナーの脱落が容易には生じないようにすることが考えられる。
【0009】
しかし、上記ホイールハウスへのフェンダライナーの取り付け用の締結具やクリップを単に多く設けると、その分、車両の部品点数が増えて、構成が複雑になるおそれがある。
【0010】
一方、前記第2の従来の技術では、前記したように、左右フェンダライナーの下部はそれぞれリヤアウタパネルの各側部パネルの下方域にまで延出している。そして、これらリヤアウタパネルと左右フェンダライナーとをその後方から一体的にリヤバンパが覆っている。このため、上記リヤアウタパネルと左右フェンダライナーとの組み合わせ体は、車体の後面視で、偏平な倒立U字形状となることから、この倒立U字形状の内部空間に対応する上記リヤバンパの長手方向における中途部の下部裏面(前面)は、前方に向かって外部に露出しがちとなる。
【0011】
よって、車両の走行時、その走行風は上記リヤバンパの上記中途部の下部裏面に直接に勢いよく衝突しがちとなる。すると、このようにリヤバンパの上記中途部に衝突した走行風の少なくとも一部走行風は、上方に流動方向を変えて、上記リヤアウタパネルとリヤバンパとの間の車体の幅方向における中途部内の空間に流入し、更に、そこから上記側部パネルの後方空間に向かって流動しがちとなる。
【0012】
そして、上記した一部走行風が上記側部パネルの後方空間に達した場合には、この一部走行風により、前記した走行風に基づく側部パネルの後方空間における負圧の発生が阻害される。この結果、上記側部パネルに貫設されるベントホールを通しての車室内の空気の排出が不十分になるおそれが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体の骨格部材側へのフェンダライナーの取り付け強度の向上が簡単な構成で達成できるようにし、かつ、走行風に基づく車室内の空気の排気が十分になされるようにすることである。
【0014】
請求項1の発明は、全図に例示するように、車体3後部の下部後面を形成して車体3の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネル10と、このリヤアウタパネル10の側部を構成する側部パネル10aの前方近傍における車体3側部に形成され、後車輪5をその上方から覆うリヤホイールハウス11と、上記後車輪5をその後方から覆うよう上記リヤホイールハウス11の内部空間の後端部から上記側部パネル10aの下方域にまで延出するフェンダライナー14と、車体3の幅方向に延び、上記リヤアウタパネル10とフェンダライナー14とをその後方から一体的に覆うリヤバンパ15と、上記側部パネル10aに貫設されるベントホール30とを備え、走行風に基づき上記側部パネル10aの後方空間に生じる負圧により、上記ベントホール30を通し車室2内の空気32が車体3の外方に排出されるようにした車両の後部構造において、
上記ベントホール30よりも車体3の内側方に配置されて上下方向に延び、上記側部パネル10aと上記フェンダライナー14の下部との各後面に架設されてこれら10a,14を互いに連結する連結体35を設け、
上記連結体35の長手方向の各部が上記側部パネル10aおよびフェンダライナー14の下部の各後面と上記リヤバンパ15の裏面との間の空間31を塞ぐようにしたことを特徴とする車両の後部構造である。
【0015】
請求項2の発明は、図4に例示するように、上記連結体35の下部を上記フェンダライナー14の下部に一体的に形成し、上記連結体35の上部を上記側部パネル10aにその後方から係止可能とし、この係止により上記連結体35の上部を上記側部パネル10aに連結したことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造である。
【0016】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明による効果は、次の如くである。
【0018】
請求項1の発明は、車体後部の下部後面を形成して車体の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネルと、このリヤアウタパネルの側部を構成する側部パネルの前方近傍における車体側部に形成され、後車輪をその上方から覆うリヤホイールハウスと、上記後車輪をその後方から覆うよう上記リヤホイールハウスの内部空間の後端部から上記側部パネルの下方域にまで延出するフェンダライナーと、車体の幅方向に延び、上記リヤアウタパネルとフェンダライナーとをその後方から一体的に覆うリヤバンパと、上記側部パネルに貫設されるベントホールとを備え、走行風に基づき上記側部パネルの後方空間に生じる負圧により、上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に排出されるようにした車両の後部構造において、
上記ベントホールよりも車体の内側方に配置されて上下方向に延び、上記側部パネルと上記フェンダライナーの下部との各後面に架設されてこれらを互いに連結する連結体を設けている。
【0019】
このため、上記側部パネルとフェンダライナーとは上記連結体によって互いに連結されることから、上記フェンダライナーは、上記側部パネルを介し車体の骨格部材側に、より強固に連結される。つまり、この車体の骨格部材側へのフェンダライナーの取り付け強度の向上が達成される。また、この場合、上記連結体は後述するように走行風に基づく車室内の空気の排気を十分にさせるためのものである。そして、上記したように連結体の利用により上記フェンダライナーの取り付け強度を向上させたことから、別途にフェンダライナー取り付け用の補強材を設けることに比べて、上記したフェンダライナーの取り付け強度の向上は簡単な構成で、安価に達成される。
【0020】
また、本発明によれば、連結体の長手方向の各部が上記側部パネルおよびフェンダライナーの下部の各後面と上記リヤバンパの裏面との間の空間を塞ぐようにしている。
【0021】
このため、車両の走行時に、仮に、上記リヤアウタパネルとリヤバンパとのそれぞれ車体の幅方向における各中途部の間の空間に一部走行風が流入して、この一部走行風が上記側部パネルの後方空間に向かって流動するとしても、この一部走行風の流動は、上記連結体によって防止される。よって、上記側部パネルの後方空間には、上記一部走行風によって邪魔されることなく、走行風に基づく負圧が生じることから、この負圧により上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に排出されて、上記車室の換気が十分になされる。
【0022】
また、上記リヤバンパに対しその後方から何らかの外力を与えたとき、この外力は、上記リヤバンパから連結体およびリヤアウタパネルの側部パネルを介し、車体の骨格部材側に支持される。よって、上記連結体を設けたことにより、リヤバンパへの手押し剛性の向上も達成される。
【0023】
請求項2の発明は、上記連結体の下部を上記フェンダライナーの下部に一体的に形成し、上記連結体の上部を上記側部パネルにその後方から係止可能とし、この係止により上記連結体の上部を上記側部パネルに連結している。
【0024】
このため、第1に、連結体の下部が上記フェンダライナーの下部に一体的に形成されて、これらの互いの連結強度を大きくできるため、上記リヤアウタパネルの側部パネルとフェンダライナーとは上記連結体によって互いに、より強固に連結される。よって、上記フェンダライナーは、上記側部パネルを介し車体の骨格部材側に、更に強固に連結される。
【0025】
また、第2に、上記リヤアウタパネルの側部パネルにフェンダライナーを組み付ける作業をする場合、まず、上記連結体の上部を上記側部パネルに係止させれば、この側部パネルに対し上記連結体と共に上記フェンダライナーを、一旦、仮止めして所定位置に位置決めできる。よって、その分、上記フェンダライナーの組み付け作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1を示し、図2の部分拡大図である。
【図2】実施例1を示し、車両のバックドアを省略した斜視背面図である。
【図3】実施例1を示し、図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】実施例2を示し、図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の車両の後部構造に関し、車体の骨格部材側へのフェンダライナーの取り付け強度の向上が簡単な構成で達成できるようにし、かつ、走行風に基づく車室内の空気の排気が十分になされるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0028】
即ち、車両の後部構造は、車体後部の下部後面を形成して車体の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネルと、このリヤアウタパネルの側部を構成する側部パネルの前方近傍における車体側部に形成され、後車輪をその上方から覆うリヤホイールハウスと、上記後車輪をその後方から覆うよう上記リヤホイールハウスの内部空間の後端部から上記側部パネルの下方域にまで延出するフェンダライナーと、車体の幅方向に延び、上記リヤアウタパネルとフェンダライナーとをその後方から一体的に覆うリヤバンパと、上記側部パネルに貫設されるベントホールとを備えている。走行風に基づき上記側部パネルの後方空間に生じる負圧により、上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に排出されるようになっている。
【0029】
上記ベントホールよりも車体の内側方に配置されて上下方向に延び、上記側部パネルと上記フェンダライナーの下部との各後面に架設されてこれらを互いに連結する連結体が設けられる。上記連結体の長手方向の各部が上記側部パネルおよびフェンダライナーの下部の各後面と上記リヤバンパの裏面との間の空間を塞ぐようにしている。
【実施例1】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例1を添付の図1〜3に従って説明する。
【0031】
図1〜3において、符号1は、自動車で例示される車両であり、また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0032】
車両1は、その内部空間が車室2とされる車体3と、この車体3に懸架され、この車体3を走行路面上に支持するそれぞれ左右一対の前、後車輪4,5とを備えている。
【0033】
上記車体3後部は、その後面を形成する板金製の後壁8と、この後壁8に形成されたバックドア開口9を開閉可能とする不図示のバックドアとを備えている。上記後壁8の下部は上記バックドア開口9の下部開口縁を構成しており、上記後壁8の下部後面はリヤアウタパネル10と、このリヤアウタパネル10の前方近傍で、このリヤアウタパネル10に対面してこのリヤアウタパネル10に結合されるリヤインナパネル12とを有している。上記リヤアウタパネル10とリヤインナパネル12とは、不図示の車体フレームの後部で構成される車体3の骨格部材側に支持される。
【0034】
上記リヤアウタパネル10の左右各側部はそれぞれ側部パネル10aで構成され、これら各側部パネル10aの前方近傍における車体3側部には、上記各後車輪5をそれぞれその上方から覆うリヤホイールハウス11が形成されている。このリヤホイールハウス11は、車室2の側面視で上方に凸の円弧形状をなして上記後車輪5をその上方から覆う天井パネル11aと、上記後車輪5の上部を車室2の内側方から覆って上記天井パネル11aに結合される内側パネル11bとを備えている。上記リヤホイールハウス11は、上記リヤインナパネル12等を介し車体3後部の骨格部材側に支持されている。
【0035】
上記リヤホイールハウス11の内部空間の後端部から上記側部パネル10aの下方域にまで延出する樹脂製のフェンダライナー14が設けられる。また、車体3の幅方向に延び、上記リヤアウタパネル10と左右フェンダライナー14,41とをその後方から一体的に覆う樹脂製のリヤバンパ15が設けられ、このリヤバンパ15は、車体3後部の骨格部材側に強固に支持されている。
【0036】
上記フェンダライナー14は、それぞれ上下方向に延びて車体3の幅方向で互いに離れて対面する内、外側板17,18と、これら各側板17,18のそれぞれ後縁部同士を一体的に結合する後面板19と、上記外側板18の前縁部に一体的に形成される外向きフランジ20と、上記後面板19の下端部から後方に向かって一体的に突出する支持片21とを備えている。
【0037】
上記フェンダライナー14の内側板17は上記リヤホイールハウス11の内側パネル11bに第1固着具24により固着され、上記外向きフランジ20は上記リヤバンパ15の長手方向の側部の外側端縁に上、下第2固着具25により固着され、かつ、上記支持片21は上記リヤバンパ15の側部の下端縁に第3固着具26により固着されている。これにより、上記フェンダライナー14は上記リヤホイールハウス11とリヤバンパ15とを介し車体3の骨格部材側に支持されている。上記第1〜第3固着具24〜26の主体は樹脂製クリップであるが、これらは締結具であってもよい。
【0038】
車体3の側面視で、上記リヤアウタパネル10の側部パネル10aは、全体的にほぼ鉛直方向に延びている。一方、上記フェンダライナー14の下部は上記側部パネル10aの下方域に位置してほぼ鉛直方向に延び、上記フェンダライナー14の上部は、上記後車輪5の上面に沿って円弧形状となるよう前方に屈曲されている。上記フェンダライナー14の上部の上方と、上記リヤアウタパネル10の側部パネル10aおよび上記フェンダライナー14の上部の間とには、それぞれ互いに連通する空間27が形成されている。
【0039】
上記バックドア開口9の側部開口縁において、上記車室2の内面を形成するインナパネルに、上記車室2と上記空間27とを互いに連通させる連通孔29が形成されている。一方、上記側部パネル10aには、上下一対のベントホール30,30が貫設されている。これらベントホール30は、上記側部パネル10aとフェンダライナー14の下部との各後面とリヤバンパ15の裏面(前面)との間の他の空間31と、前記空間27とを互いに連通させている。つまり、上記車室2は、上記連通孔29、空間27、およびベントホール30を通して上記他の空間31に連通している。そして、車両1の走行中の走行風に基づき上記側部パネル10aの後方空間(上記他の空間31の一部)に生じる負圧により、上記連通孔29やベントホール30を通し車室2内の空気32が吸引されて車体3の外方に排出されるようになっている。
【0040】
上記ベントホール30よりも車体3の内側方近傍に配置されて上下方向に長く延びる硬質スポンジ製の連結体35が上記リヤアウタパネル10やフェンダライナー14とは別体に設けられている。この連結体35は、上記側部パネル10aとフェンダライナー14の下部との各後面に架設されてこれら各外面に接着剤により接着され、これにより、これら側部パネル10aとフェンダライナー14の下部とが互いに連結されている。
【0041】
また、上記連結体35の長手方向の各部は上記側部パネル10aとフェンダライナー14の下部との各後面と上記リヤバンパ15の裏面(前面)との間の他の空間31を塞いでいる。具体的には、上記連結体35の長手方向の各部後面は、上記リヤバンパ15の裏面に弾性的に圧接させられ、上記空間31を左右に仕切っている。
【0042】
なお、上記フェンダライナー14は板金製であってもよい。また、上記連結体35は樹脂製でも、鉄やアルミなど金属製であってもよい。また、この連結体35の長手方向の各部後面を、上記リヤバンパ15の裏面に当接もしくは近接されてもよい。
【0043】
上記構成によれば、ベントホール30よりも車体3の内側方に配置されて上下方向に延び、側部パネル10aとフェンダライナー14の下部との各後面に架設されてこれら10a,14を互いに連結する連結体35を設けている。
【0044】
このため、上記側部パネル10aとフェンダライナー14とは上記連結体35によって互いに連結されることから、上記フェンダライナー14は、上記側部パネル10aを介し車体3の骨格部材側に、より強固に連結される。つまり、この車体3の骨格部材側へのフェンダライナー14の取り付け強度の向上が達成される。また、この場合、上記連結体35は後述するように走行風に基づく車室2内の空気32の排気を十分にさせるためのものである。そして、上記したように連結体35の利用により上記フェンダライナー14の取り付け強度を向上させたことから、別途にフェンダライナー14取り付け用の補強材を設けることに比べて、上記したフェンダライナー14の取り付け強度の向上は簡単な構成で、安価に達成される。
【0045】
ここで、前記したように、左右フェンダライナー14,14の下部はそれぞれ各側部パネル10aの下方域にまで延出している。そして、これらリヤアウタパネル10と左右フェンダライナー14,14とをその後方から一体的にリヤバンパ15が覆っている。このため、上記リヤアウタパネル10と左右フェンダライナー14,14との組み合わせ体は、車体3の後面視で、偏平な倒立U字形状となることから、この倒立U字形状の内部空間に対応する上記リヤバンパ15の長手方向における中途部の下部裏面(前面)は、前方に向かって外部に露出しがちとなる。
【0046】
よって、車両1の走行時、その走行風は上記リヤバンパ15の上記中途部の下部裏面に直接に勢いよく衝突しがちとなる。すると、このようにリヤバンパ15の上記中途部に衝突した走行風の少なくとも一部走行風37は、上方に流動方向を変えて、上記リヤアウタパネル10とリヤバンパ15との間の車体3の幅方向における中途部内の空間に流入し、更に、そこから、この空間の側部である上記側部パネル10aの後方空間(他の空間31の一部)に向かって流動しがちとなる。
【0047】
しかし、前記構成によれば、連結体35の長手方向の各部が側部パネル10aおよびフェンダライナー14の下部の各後面とリヤバンパ15の裏面との間の空間31を塞ぐようにしている。
【0048】
このため、車両1の走行時に、仮に、上記リヤアウタパネル10とリヤバンパ15とのそれぞれ車体3の幅方向における各中途部の間の空間に一部走行風37が流入して、この一部走行風37が上記側部パネル10aの後方空間に向かって流動するとしても、この一部走行風37の流動は、上記連結体35によって防止される。よって、上記側部パネル10aの後方空間には、上記一部走行風37によって邪魔されることなく、走行風に基づく負圧が生じることから、この負圧により上記ベントホール30,30を通し車室2内の空気32が車体3の外方に排出されて、上記車室2の換気が十分になされる。
【0049】
また、上記リヤバンパ15に対しその後方から何らかの外力を与えたとき、この外力は、上記リヤバンパ15から連結体35およびリヤアウタパネル10の側部パネル10aを介し、車体3の骨格部材側に支持される。よって、上記連結体35を設けたことにより、リヤバンパ15への手押し剛性の向上も達成される。
【0050】
以下の図4は、実施例2を示している。この実施例2は、前記実施例1と構成、作用効果において多くの点で共通している。そこで、これら共通するものについては、図面に共通の符号を付してその重複した説明を省略し、異なる点につき主に説明する。また、これら実施例における各部分の構成を、本発明の目的、作用効果に照らして種々組み合せてもよい。
【実施例2】
【0051】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例2を添付の図4に従って説明する。
【0052】
図4において、上記連結体35の下部は上記フェンダライナー14の下部に一体的に形成されている。これらフェンダライナー14と連結体35とは樹脂の射出成形によって一体的に形成されるが、これらフェンダライナー14と連結体35とを溶接により一体化してもよい。
【0053】
上記連結体35の上端部にはフック形状の被係止部40が形成され、上記側部パネル10aには上記被係止部40を係脱可能に係止させる孔形状の係止部41が形成されている。そして、上記連結体35の被係止部40を上記係止部41に嵌入させて係止させれば、この係止により、上記連結体35の上部が上記側部パネル10aに連結されるようになっている。
【0054】
上記構成によれば、第1に、連結体35の下部が上記フェンダライナー14の下部に一体的に形成されて、これら14,35の互いの連結強度を大きくできるため、上記リヤアウタパネル10の側部パネル10aとフェンダライナー14とは上記連結体35によって互いに、より強固に連結される。よって、上記フェンダライナー14は、上記側部パネル10aを介し車体3の骨格部材側に、更に強固に連結される。
【0055】
また、第2に、上記リヤアウタパネル10の側部パネル10aにフェンダライナー14を組み付ける作業をする場合、まず、上記連結体35の上部を上記側部パネル10aに係止させれば、この側部パネル10aに対し上記連結体35と共に上記フェンダライナー14を、一旦、仮止めして所定位置に位置決めできる。よって、その分、上記フェンダライナー14の組み付け作業が容易にできる。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
2 車室
3 車体
5 後車輪
10 リヤアウタパネル
10a 側部パネル
11 リヤホイールハウス
11a 天井パネル
11b 内側パネル
14 フェンダライナー
15 リヤバンパ
17 内側板
18 外側板
19 後面板
20 外向きフランジ
21 支持片
29 連通孔
30 ベントホール
31 空間
32 空気
35 連結体
37 一部走行風
40 被係止部
41 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の下部後面を形成して車体の骨格部材側に支持されるリヤアウタパネルと、このリヤアウタパネルの側部を構成する側部パネルの前方近傍における車体側部に形成され、後車輪をその上方から覆うリヤホイールハウスと、上記後車輪をその後方から覆うよう上記リヤホイールハウスの内部空間の後端部から上記側部パネルの下方域にまで延出するフェンダライナーと、車体の幅方向に延び、上記リヤアウタパネルとフェンダライナーとをその後方から一体的に覆うリヤバンパと、上記側部パネルに貫設されるベントホールとを備え、走行風に基づき上記側部パネルの後方空間に生じる負圧により、上記ベントホールを通し車室内の空気が車体の外方に排出されるようにした車両の後部構造において、
上記ベントホールよりも車体の内側方に配置されて上下方向に延び、上記側部パネルと上記フェンダライナーの下部との各後面に架設されてこれらを互いに連結する連結体を設け、
上記連結体の長手方向の各部が上記側部パネルおよびフェンダライナーの下部の各後面と上記リヤバンパの裏面との間の空間を塞ぐようにしたことを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
上記連結体の下部を上記フェンダライナーの下部に一体的に形成し、上記連結体の上部を上記側部パネルにその後方から係止可能とし、この係止により上記連結体の上部を上記側部パネルに連結したことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116243(P2012−116243A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265510(P2010−265510)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】