説明

車両の後部構造

【課題】車両後方から衝撃荷重が加わった場合に、リアサイドフレームで吸収しきれない衝撃荷重を効果的に前方へ伝達することで、車室内における乗員の安全性を高めることができる車両の後部構造を提供する。
【解決手段】車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3と、該左右のリアサイドフレーム2,3間に架設されたリアフロアパネル10と、を備えた車両の後部構造であって、リアフロアパネル10上に、後方から加わる衝撃荷重により該リアフロアパネル10に対して前方へ相対移動する荷重伝達部材32を設け、該荷重伝達部材32の前方において、前記前方への相対移動をした該荷重伝達部材32に当接する位置に、該荷重伝達部材32から加わる衝撃荷重を前記左右のリアサイドフレーム2,3に伝達するためのクロスメンバ50を、左右のリアサイドフレーム2,3間に架設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後方から加わる衝撃荷重を吸収するための車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突時の安全対策として、衝突時に車両に加わる衝撃荷重をサイドフレーム等の車体の一部が潰れることで吸収する技術が一般的に知られており、この技術によれば、車室内に伝わる衝撃を緩和することができ、これにより乗員の安全性が高められる。
【0003】
例えば、前方衝突の場合、先ず、フロントサイドフレームの前端部とフロントバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにフロントサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0004】
一方、後方衝突の対策に関しては、例えば、先ず、リアサイドフレームの後端部とリアバンパとに跨って設けられたクラッシュカンが潰れることで、このクラッシュカンで衝撃荷重を吸収し、これによって吸収しきれない衝撃荷重は、さらにリアサイドフレームが潰れることで吸収するようにした技術が知られている。
【0005】
また、車両後部の荷室フロアのタイヤパンにスペアタイヤが収容されている車両に関して、特許文献1には、スペアタイヤの上方において車両前後方向に延びるメンバを設けて、後方衝突時に該メンバによりスペアタイヤが下方へ案内されるようにすることで、後方衝突時にスペアタイヤがリアシート等に向かって上方へ移動したり、デファレンシャル装置や燃料タンク等に向かって前方へ移動したりすることを防止する技術が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、後方衝突時にスペアタイヤとリアシートとの間で展開するエアバッグを設置して、このエアバッグによりスペアタイヤがリアシートに向かって移動することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−321642号公報
【特許文献2】特開2006−224807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、後方衝突の対策に関して、車両後部のクラッシュカン及びリアサイドフレームだけでは必ずしも十分に衝撃荷重を吸収しきれない場合があり、この場合、リアサイドフレームよりもさらに前方の車体部分へ衝撃荷重が伝達されるようにすることが好ましく、これにより、車体の広範囲に亘って荷重を分散させることができる。
【0009】
かかる観点から、車両後方から加わる衝撃荷重をリアサイドフレームよりも前方へ効果的に伝達する技術の開発が求められている。
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された技術は、後方衝突時においてリアシートや燃料タンク等を保護するようにスペアタイヤの移動を規制するのみであって、リアサイドフレームの前方へ衝撃荷重を効果的に伝達しようとするものではない。
【0011】
そこで、本発明は、車両後方から衝撃荷重が加わった場合に、リアサイドフレームで吸収しきれない衝撃荷重を効果的に前方へ伝達することで、車室内における乗員の安全性を高めることができる車両の後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両の後部構造は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアフロアパネルと、を備えた車両の後部構造であって、
前記リアフロアパネル上に、後方から加わる衝撃荷重により該リアフロアパネルに対して前方へ相対移動する荷重伝達部材が設けられ、
該荷重伝達部材の前方において、前記前方への相対移動をした該荷重伝達部材に当接する位置に、該荷重伝達部材から加わる衝撃荷重を前記左右のリアサイドフレームに伝達するためのクロスメンバが、前記左右のリアサイドフレーム間に架設されていることを特徴とする。
【0014】
なお、本明細書において、荷重伝達部材とクロスメンバとの「当接」には、荷重伝達部材がクロスメンバに直接当接することのみならず、別の部材を挟んでクロスメンバに当接することも含まれるものとする。したがって、例えば、荷重伝達部材がスペアタイヤのタイヤホイールである場合、タイヤホイールとクロスメンバとの「当接」には、タイヤホイールがスペアタイヤを挟んでクロスメンバに当接することが含まれる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記リアフロアパネルに、スペアタイヤを収納するタイヤパンが設けられ、
前記荷重伝達部材は、前記スペアタイヤのタイヤホイールであることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記クロスメンバの前縁は、車幅方向の中央部から両端部に向かうに連れて前側に位置するように設けられ、
車両前後方向の長さに関して、前記クロスメンバの両端部と前記リアサイドフレームとの各接合部は、前記クロスメンバの中央部における荷重伝達部分に比べて長く形成されていることを特徴とする。
【0017】
なお、ここでいう「荷重伝達部分」とは、クロスメンバにおける荷重伝達部材との当接部と、該当接部よりも前側のクロスメンバ部分とを指すものとする。
【0018】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項2または請求項3に記載の発明において、
前記クロスメンバには、前記スペアタイヤが前記タイヤパンから上方へ飛び出すのを防止する上方飛出し規制部が、後方へ突出して設けられ、
該上方飛出し規制部の後端部は、平面視において前記タイヤパンの前縁部と重複するように配設されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、
前記上方飛出し規制部の後端部は、平面視において前記タイヤホイールの前端部と重複するように配設されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
車両後部のリアホイールハウス構成部を車幅方向内側から補強する補強部材が、前記リアサイドフレームに連結され、
前記リアサイドフレームに対する前記クロスメンバの連結部は、前記リアサイドフレームに対する前記補強部材の連結部と車両前後方向に重複して配置されていることを特徴とする。
【0021】
なお、リアサイドフレームにおける複数の前後位置に前記補強部材が連結されている場合、上記の「前記リアサイドフレームに対する前記補強部材の連結部」は、複数の連結部のうち最前部に配置された連結部の前縁から最後部に配置された連結部の後縁に亘る全体部分を指すものとする。
【発明の効果】
【0022】
まず、請求項1に記載の発明によれば、リアサイドフレームによって吸収しきれない衝撃荷重が車両の後方から加わると、リアフロアパネル上に設けられた荷重伝達部材が、リアフロアパネルに対して前方へ相対移動して、前方に配置されたクロスメンバに当接するため、これにより、荷重伝達部材からクロスメンバを介して左右のリアサイドフレームへ衝撃荷重を伝達することができ、この衝撃荷重を、該リアサイドフレームのさらに前方へ伝達することができる。したがって、車両後方からの衝撃荷重を効果的に分散させることができ、これにより、車室の変形を効果的に抑制して、乗員の安全性を高めることができる。
【0023】
また、車両の斜め後方から加わる衝撃荷重についても、荷重伝達部材と前記クロスメンバとを介して確実に左右両側のリアサイドフレームに伝達されるため、左右のリアサイドフレームをバランス良く利用して、衝撃荷重の分散を効率的に実現することができる。
【0024】
さらに、請求項2に記載の発明によれば、前記荷重伝達部材としてスペアタイヤのタイヤホイールが利用されることで、荷室において専用の荷重伝達部材を別途設ける必要がないため、荷室スペースの確保と部品点数の低減とを図りつつ、荷重分散の効率化を実現することができる。また、後方からの衝撃荷重によりスペアタイヤがパンクしても、剛性の高いスペアタイヤのタイヤホイールにより、確実に前記クロスメンバへの荷重伝達を実現することができる。
【0025】
またさらに、請求項3に記載の発明によれば、車両前後方向の長さに関して、前記クロスメンバの両端部とリアサイドフレームとの各接合部が、クロスメンバの中央部における荷重伝達部分よりも長いことにより、クロスメンバの取付強度を高く確保しつつ、該クロスメンバの前縁が、車幅方向の中央部から両端部に向かうに連れて前側に位置するように設けられていることにより、クロスメンバからリアサイドフレームの前方へ荷重を伝達しやすくすることができる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明によれば、後方から衝撃荷重が加わったときに、スペアタイヤの上方への飛び出しがクロスメンバの上方飛出し規制部により防止されるため、スペアタイヤが上方のリアシート等に衝突することを回避できる。さらに、このようにスペアタイヤの上方への移動が規制されることで、リアフロアパネルに対するスペアタイヤのタイヤホイールの前方への相対移動を確実に実現することができ、これにより、該タイヤホイールを前方の前記クロスメンバに確実に当接させることができる。
【0027】
その上、請求項5に記載の発明を請求項4に記載の発明に適用すれば、前記上方飛出し規制部の後端部が、平面視においてスペアタイヤのタイヤホイールの前端部と重複するように配設されているため、後方からの荷重入力の初期から確実に該タイヤホイールの上方への飛び出しを防止することができる。
【0028】
またさらに、請求項6に記載の発明によれば、リアサイドフレームに対する前記クロスメンバの連結部が、車両後部のリアホイールハウス構成部を車幅方向内側から補強する補強部材とリアサイドフレームとの連結部と車両前後方向に重複して配置されているため、前記荷重伝達部材から前記クロスメンバに伝達された衝撃荷重は、リアサイドフレームの前方へ伝達されるだけでなく、前記補強部材とリアホイールハウス構成部とを介して車体上部へも伝達されるため、一層効果的に荷重を分散させることができ、乗員の安全性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の後部構造を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】後方からの衝撃荷重をリアサイドフレームに伝達するためのクロスメンバを示す斜視図である。
【図5】図4に示すクロスメンバからリアサイドフレームへの荷重伝達の一態様を示す平面図である。
【図6】図4に示すクロスメンバからリアサイドフレームへの荷重伝達の別の態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0031】
図1は、本実施形態に係る車両の後部構造を示す平面図であり、図2は、図1のA−A線断面図であり、図3は、図1のB−B線断面図である。
【0032】
図1に示すように、車両1の後部には、車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム2,3が設けられている。
【0033】
左右のリアサイドフレーム2,3の前端部間にはクロスメンバ16が架設されている。また、各リアサイドフレーム2,3の前端部には、前方へ延びるサイドシル22,23が連ねて設けられており、左右のサイドシル22,23間にフロントフロアパネル20が架設されている。
【0034】
リアサイドフレーム2,3よりも後方には、リアバンパ4が車幅方向に延設されている。リアバンパ4は、車幅方向に延びるリアバンパレインフォースメント6と、該リアバンパレインフォースメント6を覆う図示しないリアバンパカバーとを備えている。
【0035】
また、各リアサイドフレーム2,3の後端部と、リアバンパレインフォースメント6とに跨ってそれぞれクラッシュカン12,13が設けられている。車両後方からリアバンパ4に衝撃荷重が加わったときは、先ずクラッシュカン12,13が潰れながら該衝撃荷重を吸収し、クラッシュカン12,13により衝撃荷重を吸収しきれない場合は、さらにリアサイドフレーム2,3が潰れながら該衝撃荷重を吸収するようになっている。
【0036】
車両1の後部における左右の各側面にはリアホイールハウスが設けられ、該リアホイールハウスを構成するリアホイールハウス構成部72,73は、左右のリアサイドフレーム2,3の車幅方向外側にそれぞれ隣接して配設されている。
【0037】
図1及び図3に示すように、リアホイールハウス構成部72,73は、補強部材80により車幅方向内側から補強されている。補強部材80は、リアサイドフレーム2,3よりも上側においてリアホイールハウス構成部72,73に固定された補強部82と、該補強部82から下方へ延びる前後一対の脚部84,86とを備えている。該脚部84,86の下端部は、車幅方向内側に向かって折曲されており、リアサイドフレーム2,3の上面に固定されている。
【0038】
左右のリアサイドフレーム2,3間には、荷室の底部を構成するリアフロアパネル10が架設されている。リアフロアパネル10には、平面視略円形のタイヤパン14が設けられており、このタイヤパン14にスペアタイヤ30が収納されている。
【0039】
図2に示すように、スペアタイヤ30のタイヤホイール32は、円形のディスク部34と、該ディスク部34の周縁から立ち上がる環状のリム部36とを備えている。タイヤホイール32のディスク部34は、ボルト42によりタイヤパン14の底部の中央部に設けられたブラケット40に固定されている。具体的に、ボルト42は、タイヤホイール32のディスク部34の中央に設けられた挿通穴に上側から挿通されるとともに、前記ブラケット40に設けられた雌ねじ部にねじ込まれるようになっている。
【0040】
車両1の後方から衝撃荷重が加わることで、スペアタイヤ30がパンクし、該スペアタイヤ30のタイヤホイール32とタイヤパン14との固定部が破壊されると、タイヤホイール32は、リアフロアパネル10に対して前方へ相対移動する。
【0041】
図1及び図2に示すように、スペアタイヤ30のタイヤホイール32の前方において、上記のようにリアフロアパネル10に対して前方へ相対移動したタイヤホイール32に当接する位置に、該タイヤホイール32から加わる衝撃荷重をリアサイドフレーム2,3に伝達するためのクロスメンバ50が、左右のリアサイドフレーム2,3間に架設されている。
【0042】
図1〜図4に示すように、クロスメンバ50は、車幅方向に対して垂直に配設された左右一対の側面部52,53を備え、各側面部52,53は、それぞれリアサイドフレーム2,3の車幅方向内側の側面と、リアフロアパネル10の上面とに例えば溶接により固定されている。
【0043】
また、クロスメンバ50は、後方に向かって上側へ傾斜した傾斜部54と、該傾斜部54の後端から後方に向かって略水平に延びる後方延出部55とを備え、該傾斜部54と後方延出部55とは、左右の側面部52,53間に架設されている。傾斜部54の左右両端部には、前方に向かうに連れて車幅方向の幅が小さくなる前方突出部62,63が設けられている。これにより、クロスメンバ50の前縁は、車幅方向の中央部から両端部に向かうに連れて前側に位置するように構成されている。
【0044】
さらに、クロスメンバ50は、傾斜部54の前縁から下方へ略垂直に延びる下方延出部56〜58を備え、該下方延出部56〜58の下端はリアフロアパネル10に例えば溶接により固定されている。
【0045】
また、クロスメンバ50は、上記のようにリアフロアパネル10に対して前方へ相対移動したタイヤホイール32を受け止める荷重受け部59を備える。該荷重受け部59は、車両前後方向に対して略垂直に設けられ、左右の側面部52,53間に架設されている。また、荷重受け部59の上端は傾斜部54の下面に、荷重受け部59の下端はリアフロアパネル10の上面に、それぞれ例えば溶接により固定されている。
【0046】
これにより、例えば図5に示すように、車両1に後方車両101が衝突するなどして、後方から衝撃荷重が加わり、スペアタイヤ30のタイヤホイール32がリアフロアパネル10に対して前方へ相対移動すると、タイヤホイール32はクロスメンバ50の荷重受け部59に当接して、後方からの衝撃荷重をクロスメンバ50に伝達する。このようにしてタイヤホイール32からクロスメンバ50に伝達された衝撃荷重は、該クロスメンバ50の荷重受け部59と該荷重受け部59よりも前側のクロスメンバ部分とが荷重伝達部分となることで、更に左右のリアサイドフレーム2,3に伝達される。
【0047】
このとき、上述のようにクロスメンバ50の前縁が車幅方向の中央部から両端部に向かうに連れて前側に位置するように設けられていることにより、クロスメンバ50からリアサイドフレーム2,3の前方へ荷重が伝達されやすくなっている。そのため、クロスメンバ50からリアサイドフレーム2,3に伝達された衝撃荷重は、前方のサイドシル22,23へ効果的に伝達される。
【0048】
したがって、車両1の後方からの衝撃荷重がリアサイドフレーム2,3によって吸収しきれない場合であっても、この後方からの衝撃荷重を、スペアタイヤ30のタイヤホイール32からクロスメンバ50を介して左右のリアサイドフレーム2,3へ、また、該リアサイドフレーム2,3のさらに前方へ効果的に伝達することができる。したがって、車両1の後方からの衝撃荷重を効果的に分散させることができ、これにより、車室の変形を効果的に抑制して、乗員の安全性を高めることができる。
【0049】
しかも、この前方への荷重伝達にスペアタイヤ30のタイヤホイール32が利用されることで、荷室において専用の荷重伝達部材を別途設ける必要がないため、荷室スペースの確保と部品点数の低減とを図りつつ、荷重分散の効率化を実現することができる。また、後方からの衝撃荷重によりスペアタイヤ30がパンクしても、剛性の高いタイヤホイール32により、確実にクロスメンバ50への荷重伝達を実現することができる。
【0050】
また、図6に示すように、車両1の斜め後方から加わる衝撃荷重についても、タイヤホイール32とクロスメンバ50とを介して確実に左右両側のリアサイドフレーム2,3に伝達されるため、左右のリアサイドフレーム2,3をバランス良く利用して、衝撃荷重の分散を効率的に実現することができる。
【0051】
また、車両前後方向の長さに関して、クロスメンバ50の車幅方向両端の側面部52,53とリアサイドフレーム2,3との各接合部の長さL2(図3参照)は、クロスメンバ50の車幅方向中央部における荷重伝達部分の長さL1(図2参照)よりも長くなっている。そのため、クロスメンバ50の前縁が上記のように特殊な形状を有するにも拘わらず、リアサイドフレーム2,3に対するクロスメンバ50の高い取付強度を確保することができる。
【0052】
さらに、図2に示すように、クロスメンバ50には、前記荷重受け部59よりも後側へ突出した前記傾斜部54の後方突出部64と、前記後方延出部55とで構成された上方飛出し規制部70が設けられている。該上方飛出し規制部70の後端部は、平面視においてタイヤパン14の前縁部と重複するように配設されている。これにより、後方から衝撃荷重が加わったときに、スペアタイヤ30の上方への飛び出しがクロスメンバ50の上方飛出し規制部70により防止されるため、スペアタイヤ30が上方のリアシート18等に衝突することを回避できる。さらに、このようにスペアタイヤ30の上方への移動が規制されることで、上述したスペアタイヤ30のタイヤホイール32の前方への相対移動を確実に実現することができ、これにより、該タイヤホイール32を前方のクロスメンバ50に確実に当接させることができる。
【0053】
また、上方飛出し規制部70の後端部は、平面視においてスペアタイヤ30のタイヤホイール32の前端部と重複するように配設することが好ましく、これにより、後方からの荷重入力の初期から確実に該タイヤホイール32の上方への飛び出しを防止することができる。
【0054】
またさらに、図3に示すように、リアサイドフレーム2,3に対するクロスメンバ50の連結部は、リアサイドフレーム2,3に対する前記補強部材80の連結部(リアサイドフレーム2,3に対する補強部材80の前側の脚部84の連結部の前縁から、リアサイドフレーム2,3に対する補強部材80の後側の脚部86の連結部の後縁に亘る全体部分)と車両前後方向に重複して配置されている。これにより、スペアタイヤ30のタイヤホイール32からクロスメンバ50に伝達された衝撃荷重は、リアサイドフレーム2,3の前方へ伝達されるだけでなく、前記補強部材80とリアホイールハウス構成部72,73とを介して車体上部へも伝達されるため、一層効果的に荷重を分散させることができ、乗員の安全性を更に高めることができる。
【0055】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、後方から加わる衝撃荷重をクロスメンバ50に伝達する荷重伝達部材として、スペアタイヤ30のタイヤホイール32を用いる構成について説明したが、本発明の荷重伝達部材としては、リアフロアパネル10上に設けられたタイヤホイール32以外の部材、例えば、ジャッキを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明によれば、車両後方から衝撃荷重が加わった場合に、リアフロアパネル上に設けられた荷重伝達部材を利用して、リアサイドフレームで吸収しきれない衝撃荷重を効果的に前方へ伝達することで、車室内における乗員の安全性を高めることが可能となるから、リアサイドフレームとリアフロアパネルとを備えた車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0058】
1:車両、2,3:リアサイドフレーム、10:リアフロアパネル、14:タイヤパン、30:スペアタイヤ、32:スペアタイヤのタイヤホイール、50:クロスメンバ、70:上方飛出し規制部、72,73:リアホイールハウス構成部、80:補強部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部において車両前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレームと、
該左右のリアサイドフレーム間に架設されたリアフロアパネルと、を備えた車両の後部構造であって、
前記リアフロアパネル上に、後方から加わる衝撃荷重により該リアフロアパネルに対して前方へ相対移動する荷重伝達部材が設けられ、
該荷重伝達部材の前方において、前記前方への相対移動をした該荷重伝達部材に当接する位置に、該荷重伝達部材から加わる衝撃荷重を前記左右のリアサイドフレームに伝達するためのクロスメンバが、前記左右のリアサイドフレーム間に架設されていることを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記リアフロアパネルに、スペアタイヤを収納するタイヤパンが設けられ、
前記荷重伝達部材は、前記スペアタイヤのタイヤホイールであることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記クロスメンバの前縁は、車幅方向の中央部から両端部に向かうに連れて前側に位置するように設けられ、
車両前後方向の長さに関して、前記クロスメンバの両端部と前記リアサイドフレームとの各接合部は、前記クロスメンバの中央部における荷重伝達部分に比べて長く形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記クロスメンバには、前記スペアタイヤが前記タイヤパンから上方へ飛び出すのを防止する上方飛出し規制部が、後方へ突出して設けられ、
該上方飛出し規制部の後端部は、平面視において前記タイヤパンの前縁部と重複するように配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記上方飛出し規制部の後端部は、平面視において前記タイヤホイールの前端部と重複するように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の車両の後部構造。
【請求項6】
車両後部のリアホイールハウス構成部を車幅方向内側から補強する補強部材が、前記リアサイドフレームに連結され、
前記リアサイドフレームに対する前記クロスメンバの連結部は、前記リアサイドフレームに対する前記補強部材の連結部と車両前後方向に重複して配置されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201123(P2012−201123A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64502(P2011−64502)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】