説明

車両の後部構造

【課題】車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の後部構造において、前記バックドアを閉じた状態で、該ドアとリアバンパとの間隙から入り込む水の車両室内への浸入を防止する。
【解決手段】リアバンパ1は、その上端にロアバックパネル25の上部を覆うと共に、バックドア20が閉じられた際に該バックドアに覆われる立面部6を有し、前記リアバンパの立面部において、その車幅方向のコーナ部5には、前記バックドアを閉じた際に、該バックドアと前記リアバンパとの間に生じる間隙30に沿って、所定長さに延設された溝部8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部開口(荷室)に対しバックドア(トランクリッド)が下開き可能に設けられた車両の後部構造に関し、特に、前記バックドアを閉じている状態で、該ドアとリアバンパとの間隙から入り込む水の車室内への浸入を防止する車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の後部構造にあっては、従来、図3の正面図(バックドアを開いた状態)、及び図4の断面図(バックドアを閉じた状態)に示すように、リアバンパ50の上部50aは、バックドア51を開いた際の見栄えを考慮し、バンパ面がロアバックパネル52の上端付近まで延設され、ロアバックパネル52を覆い隠している。
【0003】
また、図4に示すようにバックドア51を閉じた状態において、その下端とリアバンパ50面との間には、所定の間隙54(例えば6mm)が形成され、これにより、各部材間のばらつきと、バックドア51を強く閉めた際の下側へのオーバーストロークとを吸収するように構成されている。
また、前記間隙54が設けられることによって、バックドア51を閉じた際にラッチ機構(図示せず)を確実に機能させ、バックドア51をロックすることができる。
【0004】
しかしながら、前記のように間隙54が設けられているため、バックドア51を閉じた状態で、例えば高圧洗浄機により高圧の水がリアバンパ50に対し噴射された場合、図4の矢印に示すように、噴射水は間隙54を通り、バックドア51の裏側へ入り込むこととなる。そのため、ロアバックの上縁部には、雨水の浸入を防止するための弾性材料からなるウェザーストリップ53が設けられ、図4に示すようにバックドア51を閉じた際に、ウェザーストリップ53がバックドア51の裏面に弾接し、室内60へ浸水しないようになされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−67167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のようにリアバンパ50に対し高圧水が噴射された場合、図3に示すコーナ部70におけるバンパ上部50aには、矢印に示すように高圧水が集中して流れ込むために、部分的にウェザーストリップ53に加わる圧力が増加し、ウェザーストリップ53の許容反力を越えた場合には、室内60に水が浸入するという課題があった。
このような課題に対し、従来は、ウェザーストリップ53に部分的にラテックスを付加し、コーナ部70におけるウェザーストリップ53の反力を高めることにより対応していた。
しかしながら、ウェザーストリップ53の反力が部分的に異なると、バックドア51の閉まり性能が低下するうえ、ラテックス付加に係るコストが嵩張るという課題があった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の後部構造において、前記バックドアを閉じた状態で、該ドアとリアバンパとの間隙から入り込む水の車両室内への浸入を防止することのできる車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る車両の後部構造は、車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられると共に、ロアバックパネルに対し固定されるリアバンパを備える車両の後部構造であって、前記リアバンパは、その上端に前記ロアバックパネルの上部を覆うと共に、前記バックドアが閉じられた際に該バックドアに覆われる立面部を有し、前記リアバンパの立面部において、その車幅方向のコーナ部には、前記バックドアを閉じた際に、該バックドアと前記リアバンパとの間に生じる間隙に沿って、所定長さに延設された溝部が形成されていることに特徴を有する。
尚、前記溝部が形成されるように該溝部の上側に形成された段差部は、前記バックドアを閉じた際、該バックドアに覆われる位置に形成されていることが望ましい。
また、前記立面部のコーナ部には、前記立面部が上方に延びてコーナ立面部が形成され、前記溝部は、前記立面部において横方向に形成された第一の溝部と、前記コーナ立面部において縦方向に形成された第二の溝部とを有し、前記第一の溝部と第二の溝部とが連結されて形成されていることが望ましい。
【0009】
このように構成することにより、バックドアとリアバンパとの間に生じる間隙からコーナ部に高圧水が浸入しても、高圧水を溝部の段差部で跳ね返し、渦流を形成させながらバックドアの外側に排水することができる。また、溝部によって水圧が分散されるため、ウェザーストリップに到達する水量及び水圧を大幅に低減することができ、車室内への水の浸入を防止することができる。
また、この構成によれば、従来のようにウェザーストリップの反力を向上するためにラテックスを付加する必要がないため、ウェザーストリップの反力が均一となり、バックドアの閉まり性能を向上することができる。また、ラテックス付加に係るコストを削減することができる。
【0010】
また、前記第一の溝部と第二の溝部とは、それらが連結された一端側から他端側に向けて、それぞれ溝の深さが次第に小さくなるように形成されていることが望ましい。
このように構成することにより、コーナ部に流れ込んだ水を溝に溜めず、溝に沿って車幅中央側に流しやすくすることができる。
【0011】
また、前記立面部の表面の傾斜角と、前記溝部の凹部底面の傾斜角は同じ角度に形成されていることが望ましい。
これにより、バックドアを閉じた状態において、間隙から立面部と溝部の凹部底面とが見えても、双方に対する外光の反射角度が同じとなり、溝部が車両の意匠面に影響しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の後部構造において、前記バックドアを閉じた状態で、該ドアとリアバンパとの間隙から入り込む水の車両室内への浸入を防止することのできる車両の後部構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る車両の後部構造が備えるリアバンパの一部を示す斜視図であって、車両の後部開口(荷室)に対し下開き可能なバックドアが閉じられた際に、バックドアの下端部により覆われる部分(一部)を含む図である。
【図2】図2は、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図3は、車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の従来の後部構造の正面図である。
【図4】図4は、車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられた車両の従来の後部構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明にかかる車両の後部構造の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る車両の後部構造が備えるリアバンパの一部を示す斜視図であって、車両の後部開口(荷室)に対し下開き可能なバックドアが閉じられた際に、バックドアの下端部により覆われる部分(一部)を含む図である。図2は、図1のA−A矢視断面図である。
尚、図1においては、車幅方向の一方側のみを示すが、他方の側は、図示する形状を左右対称に形成したものとする。
【0015】
図1に示すようにリアバンパ1は、縦壁部2と、縦壁部2の上部から連続して図面奥行き方向に形成された横壁部3と、横壁部3の後端部から立設された立面部4とを有する。前記立面部4は、下開き可能なバックドア20(図2参照)を閉じた際、このバックドア20により覆われるようになされている。
また、車幅方向のコーナ部5にあっては、図1に示すように横壁部3は上方に湾曲しながら立設され、それに伴い前記立面部4は上方に延びて、コーナ立面部6を形成している。
尚、前記コーナ立面部6の上部には、車両後部に設けられたロアバックパネル25(図2参照)に対しリアバンパ1を固定するためのボルト穴7が設けられている。
【0016】
また、図2に示すように、ロアバックパネル25の上端にはフランジ25aが形成され、そこに、雨水等の浸入を防ぐためのウェザーストリップ26が取り付けられている。
図示するように、アウタパネル20aとインナパネル20bとからなるバックドア20が閉じられると、バックドア20の裏面(インナパネル20b)にウェザーストリップ26が弾接し、車両室内と外気側とを遮断するようになっている。
【0017】
また、本発明に係る実施の形態にあっては、特徴ある構成として、図1に示すコーナ部5において「くの字」型に緩く屈曲した段差溝8(溝部)を備えている。この段差溝8は、立面部4において横方向(車両中央側)に延設された第一の溝部8Aと、コーナ立面部6において縦方向(上方)に延設された第二の溝部8Bとが連結されてなる。
その連結部、即ち屈曲部8cは、リアバンパ1において高圧水や雨水等の水が集中しやすい立面部4の車幅方向端部に設定されている。
また、この段差溝8においては、図2に示すように、その凹部底面8aの下端側には横壁部3が繋がり、凹部底面8aの上端側には最大段差(落差)寸法d1の段差部8bが形成されている。
【0018】
前記段差部8bは、図2に示すように、バックドア20を閉じた際に横壁部3との間に生じる間隙30よりも少なくとも上方に位置するように形成されている(即ち、バックドア20により段差部8bが覆われる)。また、前記段差部8bの位置によって決まる凹部底面8aの幅は、その長手方向の一端側から他端側にかけて略一定の寸法h1となされている。
【0019】
このようにコーナ部5に段差溝8を設けることにより、間隙30から高圧水がコーナ部5に浸入しても、高圧水を段差溝8の段差部8bで跳ね返し、渦流を形成させながらバックドア20の外側に排水することができる。さらに、水圧が段差溝8によって分散されるため、ウェザーストリップ26に到達する水量及び水圧を大幅に低減することができる。
【0020】
尚、段差溝8(段差部8b)は、その屈曲部8cにおいて最大段差寸法d1となり、溝の両端側に向けて段差が次第に小さくなるように形成することが望ましい(即ち、第一の溝部8Aと第二の溝部8Bとが連結された一端側から他端側に向けて、それぞれ溝の深さが次第に小さくなるように形成することが望ましい)。
即ち、雨水や高圧洗浄機による高圧水が集まりやすいコーナ部5において、最も大きい段差(d1を大きな寸法)に形成することにより、バックドア20の裏側に入り込んだ水が段差部8bを越えて上方へ流れないようにすることができる。
また、前記のように溝の両端側に向けて段差を次第に小さく形成することによって、コーナ部5に流れ込んだ水を溝に溜めず、溝に沿って車幅方向中央側に流しやすくすることができる。
尚、前記段差溝8の幅寸法h1と最大段差寸法d1とは、バックドア20を閉じた際の間隙30の高さ寸法h2、及び間隙30から凹部底面8aまでの奥行寸法d2等を考慮して設定することができる。
【0021】
また、図2に示すように、段差溝8の凹部底面8aの車両進行方向に対する傾斜角θは、立面部4の傾斜角と同じ角度とされている。これによりバックドア20を閉じた状態において、間隙30から立面部4と段差溝8の凹部底面8aとが見えても、双方に対する外光の反射角度が同じとなり、段差溝8が車両の意匠面に影響しないようにすることができる。
【0022】
このように本発明に係る実施の形態によれば、車両の後部構造が備えるリアバンパ1のコーナ部5において、バックドア20を閉じた際に生じる間隙30に沿って段差溝8(の凹部底面8a)が形成され、段差溝8の段差部8bはバックドア20に覆われる位置に形成されている。また、段差部8bは、その屈曲部8cにおいて最大段差となり、溝の両端側に向けて段差が次第に小さくなるように形成されている。
この構成により、間隙30からコーナ部5に高圧水が浸入しても、高圧水は段差溝8の段差部8bで跳ね返り、渦流を形成しながら段差溝8に沿って流れるため、バックドア20の外側に効率的に排水することができる。また、段差溝8によって水圧が分散されるため、ウェザーストリップ26に到達する水量及び水圧を大幅に低減することができ、車室内への水の浸入を防止することができる。
また、従来のようにウェザーストリップ26の反力を向上するためにラテックスを付加する必要がないため、ウェザーストリップ26の反力が均一となり、バックドア20の閉まり性能を向上することができる。また、ラテックス付加に係るコストを削減することができる。
【0023】
尚、前記実施の形態においては、段差部8bは、その屈曲部8cにおいて最大段差となり、溝の両端側に向けて段差が次第に小さくなるように形成されたものとしたが、その形態に限定されるものではない。
例えば、段差溝8の長手方向における所定長さの溝領域が最大段差寸法を有し、そこに屈曲部8cが含まれるようにしてもよい。
また、屈曲部8cから溝の両端側に向けて段差が次第に小さくなるように形成するのではなく、例えば、溝の一端から他端まで略一定の溝深さを有する構成としても、段差溝8の段差部8bにより高圧水を跳ね返すことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 リアバンパ
2 縦壁部
3 横壁部
4 立面部
5 コーナ部
6 コーナ立面部
8 段差溝
8A 第一の溝部
8B 第二の溝部
8a 凹部底面
8b 段差部
8c 屈曲部
20 バックドア
25 ロアバックパネル
26 ウェザーストリップ
30 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部開口に対しバックドアが下開き可能に設けられると共に、ロアバックパネルに対し固定されるリアバンパを備える車両の後部構造であって、
前記リアバンパは、その上端に前記ロアバックパネルの上部を覆うと共に、前記バックドアが閉じられた際に該バックドアに覆われる立面部を有し、
前記リアバンパの立面部において、その車幅方向のコーナ部には、
前記バックドアを閉じた際に、該バックドアと前記リアバンパとの間に生じる間隙に沿って、所定長さに延設された溝部が形成されていることを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記溝部が形成されるように該溝部の上側に形成された段差部は、
前記バックドアを閉じた際、該バックドアに覆われる位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された車両の後部構造。
【請求項3】
前記立面部のコーナ部には、前記立面部が上方に延びてコーナ立面部が形成され、
前記溝部は、前記立面部において横方向に形成された第一の溝部と、前記コーナ立面部において縦方向に形成された第二の溝部とを有し、前記第一の溝部と第二の溝部とが連結されて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された車両の後部構造。
【請求項4】
前記第一の溝部と第二の溝部とは、それらが連結された一端側から他端側に向けて、それぞれ溝の深さが次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載された車両の後部構造。
【請求項5】
前記立面部の表面の傾斜角と、前記溝部の凹部底面の傾斜角は同じ角度に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240431(P2012−240431A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109104(P2011−109104)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】