説明

車両の後部構造

【課題】 空力性能を向上しつつ、車両の後面部にハイマウントストップランプを設けることができる車両の後部構造を提供する。
【解決手段】 車両の後部構造1は、車体の後端部にハイマウントストップランプ5を備えた車両の後部構造であって、後端部の上面におけるハイマウントストップランプが設置された領域の両外側の領域は、ルーフパネル2の傾斜面からなる基準面よりも傾斜が深く、かつ、ハイマウントストップランプの下面は、車両の後方視界より上側にあるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部にリヤスポイラーを設けた車両では、車両外側に突出されて設けたリヤスポイラーの上面部が斜面部となっており、この斜面部の整流機能により最適な空気流を発生させて車両の空気抵抗を低減して空力性能を向上させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3516235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、車両の後部には後続車へ自車両の制動を知らせるためのストップランプが設置されている。特に近年では、車両後部のリアウインドウ上端辺近傍にこのリアウインドウの上端辺に沿ってハイマウントストップランプを取り付けることが多くなってきている。このハイマウントストップランプを上述したリヤスポイラーを設けずにリヤゲートに設ける場合、空力性能を向上させるべくリヤゲートのハイマウントストップランプ上面を下方に傾斜させようとすると、ハイマウントストップランプの設置位置が低下してしまう。その結果、運転者の後方視界を妨げてしまい、好ましくないという問題がある。なお、このような問題はリヤゲートに設ける場合に限定されず、車両の後面部にリヤスポイラーを設けずにハイマウントストップランプを設ける場合に共通する問題である。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、空力性能を向上しつつ、車両の後面部にハイマウントストップランプを設けることができる車両の後部構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の後部構造は、車体の後端部にハイマウントストップランプを備えた車両の後部構造であって、該後端部の上面における該ハイマウントストップランプが設置された領域の両外側の領域は、ルーフパネルの傾斜面からなる基準面よりも傾斜が深く、かつ、前記ハイマウントストップランプの下面は、車両の後方視界より上側にあるように構成されていることを特徴とする。ハイマウントストップランプの下面が車両の後方視界より上側にあることで、運転者の後方視界を妨げることがない。かつ、ハイマウントストップランプが設置された領域の両外側の領域は、ルーフパネルの傾斜面からなる基準面よりも傾斜が深いので、空力性能を向上させることができる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態としては、前記車両の後部の開口を開閉する開閉自在なリヤゲートを有し、該リヤゲートの上端部にハイマウントストップランプが設けられていることが挙げられる。
【0008】
前記車体の上面と車体の後面部との接続部とが角部を有することが好ましい。これにより、安定して剥離点が形成されるので、空力性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の後部構造によれば、空力性能を向上しつつ、リヤゲートにハイマウントストップランプを設けることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態にかかる車両の後部構造を説明するための車両の模式的斜視図。
【図2】本実施形態にかかる車両の後部構造を説明するための車両の模式的後面図。
【図3】本実施形態にかかる車両の後部構造を示すための(1)図2のA−A線での模式的断面図、(2)図2のB−B線での模式的断面図。
【図4】本実施形態にかかる車両の後部構造を説明するための(1)中央上面部での模式図、(2)凹部での模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態にかかる車両の後部構造について以下図1〜図4を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかる車両Iの車体の後部は車両の後部構造1とされている。車両Iのルーフパネル2の後端には、リヤゲート3が設けられている。リヤゲート3は、ルーフパネル2と共に車両の上面部を構成するリヤ上面部31と、リヤ上面部31と連続して設けられ、車両の後面部を構成するリヤ後面部32とからなる。本実施形態では、リヤ後面部32の上端側中央部には、ハイマウントストップランプ5が内蔵されており、また、リヤ後面部32の中央部には、リヤウインドウ4が設けられている。リヤウインドウ4は、図2に示すように、運転者の後方視界の上方ラインを示す後方上方視界ラインよりも上方に亘って設けられている。ここで、運転者の後方視界とは、運転者の座席からの後方視界をいい、この上方ラインとは、車両の後端部における後方視界の上方境界のラインをいう。なお、運転者の視界は運転者の身長によって変化するので、ここでいう運転者の視界は一般的な仮想の運転者の視界をいう。
【0013】
リヤ上面部31は、ハイマウントストップランプ5が設けられている中央上面部33を有する。中央上面部33は、図3(1)に示すように、リヤゲート3が閉状態である場合にルーフパネル2の後端部を構成する後端部斜面21と同一もしくは略同一の傾きとなるように設けられている。
【0014】
なお、ルーフパネル2の後端部斜面21の端部に設けられたルーフパネル凹部22に図示しないヒンジ部材を介してリヤゲート3の上辺部が回動自在に支持されている。
【0015】
ハイマウントストップランプ5は、具体的には、発光ダイオード51、赤色レンズ板52及びこれらを収容するハウジング53等からなる。そして、ハイマウントストップランプ5は、赤色レンズ板52がリヤ後面部32に嵌合されて車両の後面に露出するようにして公知の方法で設置されている。
【0016】
そして、図2に示すように、リヤゲート3のリヤ上面部31の車体の幅方向の端部側には、即ちハイマウントストップランプ5の両外側には、空力性能を向上させるための凹部6が形成されている。凹部6は、図3(2)に示すように、ルーフパネル2の後端部斜面21からなる斜面としての基準面P2よりも車両下側に傾斜するようにして設けられている。即ち、凹部6は、車両下側に傾斜した傾斜面61を有しており、リヤ上面部31は、上述した中央上面部33とこの傾斜面61からなる。傾斜面61は、車両の空力性能を最適化させ向上させるための最適化面P1に沿うように設けられている。本実施形態では、傾斜面61は中央上面部33(後端部斜面21)に対して、2度から10度の角度で5mm程度以上下方に傾斜することで空力性能に対して有効な最適化面P1に沿うように形成されている。この傾斜面61はリヤ後面部32に連続している。このように、リヤゲート3のリヤ上面部31に傾斜面61が形成されていることで、本実施形態では空力性能を向上させることができる。
【0017】
空力性能について説明する。図4(1)では、ハイマウントストップランプ5が設けられた位置におけるリヤ上面部31からなる面は、ルーフパネル2の後端部斜面21で構成される基準面P2に沿っている。この場合には、車両の走行時に車両の後部構造の下流で形成される空気渦(剥離渦)S1は、図4(1)のようになる。即ち、空気流は中央上面部33に沿って流れて、中央上面部33の端部下流の剥離点P3で剥離し、車両の後部構造1の下流側に剥離渦S1を形成する。
【0018】
これに対し、図4(2)に示す凹部6が設けられた位置における傾斜面61は、基準面P2よりも傾斜の大きい(深い)最適化面P1に沿っている。このような傾斜面61では、運転時に車両の後方に形成される空気渦(剥離渦)S2は、剥離渦S1よりも小さくなる。このように剥離渦S1よりも小さい剥離渦S2を形成することで、空気抵抗を小さくすることができる。
【0019】
即ち、リヤゲート3のハイマウントストップランプ5を設けた位置でリヤ上面部31を後端部斜面21に沿うように設けると後方上方視界ラインよりもハイマウントストップランプ5の位置が低下してしまい、後方上方視界ラインを阻害してしまうおそれがある。このため、本実施形態では、ハイマウントストップランプ5を設けた位置ではリヤ上面部31を基準面P2に沿うように設けている。他方で、この状態では空力性能が低いままであるので、その両側に凹部6を設け、この凹部6は最適化面P1に沿うように設けることで、車両の後部構造1全体としては空力性能が高く保持されるように構成されている。
【0020】
このように、本実施形態では、ハイマウントストップランプ5を後方視界を阻害することなく設けると共に、最適化面P1に沿った傾斜面61を有する凹部6をハイマウントストップランプ5の両端に設けることで、剥離渦の形成を抑制して空力性能を向上させているのである。
【0021】
なお、この場合に傾斜面61の傾斜が大きすぎても、例えばルーフパネル2の後端部における傾斜面の傾斜角と傾斜面61の傾斜角とが異なるために、空気流の剥離が生じてしまい空力性能が低下してしまう。このため、本実施形態では、傾斜面61の角度を、空気流の剥離が生じない程度に傾斜させて最適化している。
【0022】
因みに、例えばハイマウントストップランプ5をリヤスポイラーに設けてリヤゲートとは別体にし、このリヤスポイラーの上面を傾斜面61と同様に傾斜させることも考えられる。しかし、この場合には、リヤスポイラーを別体で形成するために、空気流がスムーズに流れることができず、剥離点を多く形成して空力性能が低下してしまうおそれもある。また、リヤスポイラーを別体で形成するために、車両のデザインに影響を与えると共に部品点数が多くなり、製造コストが増加してしまうこと、さらに、車両の幅方向において多くの面積を占めるわけではないハイマウントストップランプ5が設けられた場所のみ空力性能が向上するために本実施形態よりも車両の空力性能は低下してしまうことが考えられる。従って、本実施形態のように形成することが好ましい。
【0023】
本実施形態では、図3(2)に示すように、連続する傾斜面61とリヤ後面部32とは、滑らかに接続されているが丸みを帯びて接続されてはおらず、そこには角部35が形成されている。このように角部35が形成されることで、車両の走行時における空気流の剥離点P3(図4参照)が多数形成されて不安定になることなく、剥離点P3が安定して形成される。即ち、例えばこの接続部が丸みを帯びた形状であるとすれば、剥離点が多数形成されることで、車両の後端部において剥離点が車両の前後方向に亘って複数設けられることになる。しかしながら、接続部、即ち車両の最端部が角部となっていることで、剥離点P3が車両の後端部において車両の前後方向において安定して形成されることで、より空気渦S2を小さく形成することができる。従って、車両の後方に発生する負圧を小さくして空気抵抗を小さくすることができる。
【0024】
なお、このように剥離点を多く設けないために、本実施形態では、凹部6の車体の幅方向における端部62(図2参照)も、それぞれ角部を有するように形成されている。
【0025】
このように、本実施形態における車両Iでは、空力性能が向上し、かつ、運転者の後方視界が阻害されることもない。
【0026】
本実施形態にかかる車両Iでは、リヤゲートを有する車両に限定したが、車両はリヤゲートを有していなくてもよい。車両の後端部を構成するアウターパネルの上面部に凹部6を形成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 後部構造
2 ルーフパネル
3 リヤゲート
4 リヤウインドウ
5 ハイマウントストップランプ
6 凹部
21 後端部斜面
22 ルーフパネル凹部
31 リヤ上面部
32 リヤ後面部
33 中央上面部
34 接続部
35 角部
51 発光ダイオード
52 赤色レンズ板
53 ハウジング
61 傾斜面
62 端部
P1 最適化面
P2 基準面
P3 剥離点
S1 空気渦
S2 空気渦
I 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後端部にハイマウントストップランプを備えた車両の後部構造であって、
該後端部の上面における該ハイマウントストップランプが設置された領域の両外側の領域は、ルーフパネルの傾斜面からなる基準面よりも傾斜が深く、
かつ、前記ハイマウントストップランプの下面は、車両の後方視界より上側にあるように構成されていることを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記車体の後部の開口を開閉する開閉自在なリヤゲートを有し、該リヤゲートの上端部にハイマウントストップランプが設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記車体の上面と車体の後面部との接続部とが角部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254677(P2012−254677A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127748(P2011−127748)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】