説明

車両の後部構造

【課題】低コスト、省スペースで衝突時における装備品と高電圧バッテリユニットの衝突を回避して衝突保護性能を確保しながらも装備品のメンテナンス性の高い車両の後部構造を提供する。
【解決手段】車両1のリアフロア2上に配置された高電圧バッテリユニット3と、高電圧バッテリユニットの後端3Aよりも車両後方に位置する車両後部6との間に配置された装備品7を、その上部7Aがリアフロア2よりも下方に位置するよう配置するとともに、高電圧バッテリユニット3に対して車両前後方向Bにオフセットして配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部構造に関し、特に高電圧バッテリと車両後部との間に空間部を有する車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車などの電動駆動源となる高電圧バッテリユニットを備えた車両が種々提案されている。これら車両では、車両後方からの衝突や車両側方からの衝突から高電圧バッテリユニットを保護するために、高電圧バッテリを車両の基部となる左右のリアサイドメンバの間に配置することが多い。そのため、高電圧バッテリユニットと車両後部との間には空間ができることから、車両に必要な装備品を同空間内に配置して車両に搭載している。しかし、高電圧バッテリユニットとこれら装備品とを車両前後方向や車両幅方向の同一平面内に並べて配置すると、車両後方から後突されて車両後部が変形してしまうと、車両後部と高電圧バッテリユニット間にある装備品が車両前方や幅方向に移動して高電圧バッテリユニットを損傷させる事が想定される。そこで、車両後部と高電圧バッテリユニットの間に配置される装備品と高電圧バッテリユニットとを車両上下方向にオフセットして配置したレイアウト構造の車両が特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、高電圧バッテリユニットと装備品とを車両上下方向にオフセットして配置すれば、衝突時に装備品と高電圧バッテリとが衝突するのを回避できる。しかし、特許文献1の場合、高電圧バッテリユニットの下方に装備品を配置しているため、メンテナンスを伴う装備品を配置するには不向きであり、配置する装備品が限定されてしまう。また、スライド機構などを設けることで、高電圧バッテリユニットの下方の装備品を移動することは可能であるが、その分コストや設置スペースが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、低コスト、省スペースで衝突時における装備品と高電圧バッテリユニットの衝突を回避して衝突保護性能を確保しながらも装備品のメンテナンス性の高い車両の後部構造を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の後部構造は、車両のリアフロア上に配置された高電圧バッテリユニットと、高電圧バッテリユニットの後端よりも車両後方に位置する車両後部と、高電圧バッテリユニットの後端と車両後部の間に配置された装備品とを有し、装備品を、その上部がリアフロアよりも下方に位置するよう配置するとともに、高電圧バッテリユニットに対して車両前後方向にオフセットして配置したことを特徴としている。
本発明に係る車両の後部構造において、車両後部は、車両幅方向に位置し車両前後方向に延在する複数のリアサイドメンバと、車両幅方向に延在しリアフロアよりも下方でリアサイドメンバに接合されたシャーシクロスメンバを有し、装備品とシャーシクロスメンバとが対向するように配置したことを特徴としている。
本発明に係る車両の後部構造において、車両後部は、車両幅方向に位置し、車両前後方向に延在する複数のリアサイドメンバと、車両幅方向に延在しリアサイドメンバの後端に接合されたリアバンパビームと、車両幅方向に延在しリアバンパビームよりも車両前方よりに配置され、リアフロアよりも下方でリアサイドメンバに接合されたフロアクロスメンバと、車両前後方向に延在しリアバンパビームとフロアクロスメンバに接合されたリアセンタメンバを有し、装備品を、リアバンパビームとフロアクロスメンバとリアセンタメンバと対向するように、リアバンパビームとフロアクロスメンバとリアセンタメンバの間に配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リアフロア上に配置された高電圧バッテリユニットの後端と、高電圧バッテリユニットの後端よりも車両後方に位置する車両後部との間で、その上部がリアフロアよりも下方に位置するよう装備品を配置して、装備品を高電圧バッテリユニットに対して車両上下方向と車両前後方向にオフセットして配置したので、後部衝突時において、車両後部が変形して装備品が押されても、リアフロアの下方で移動するため、衝突時における装備品と高電圧バッテリユニットの衝突を回避して衝突保護性能を確保することができるとともに、衝突前において、装備品は高電圧バッテリユニットに対して車両前後方向にオフセットされた状態であるため、移動手段を設けることなく装備品へのメンテナンス作業が可能となり、低コスト、省スペースで装備品のメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る車両の後部構造の概略構成を示す平面図。
【図2】高電圧バッテリユニットと装備品の位置関係を説明する側面視図。
【図3】車両方向からの衝突時における装備品の移動状態を示す側面視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態について説明する。
図1,図2に示す車両1は、走行駆動源として電動駆動源となるモータを有する電気自動車である。車両1の車室内に位置するリアシート8よりも後方には、リアフロア2が配置されている。リアフロア2は、矢印Aで示す車両幅方向に位置し、矢印Bで示す車両前後方向に延在する複数のリアサイドメンバ4,5に、フロア上面2A側から溶接などによって接合されて固定されている。リアフロア2の後端2Bには、車両後部6を構成するリアエンドパネル9が接合されている。フロア上面2Aには、高電圧バッテリユニット3が、リアサイドメンバ4,5の間で、リアシート8寄りに配置されている。
【0010】
高電圧バッテリユニット3は、複数のバッテリーセルをモジュール化したものを複数備えたもので、その外部は図示しないケーシングで覆われた周知のものである。本形態において、高電圧バッテリユニット3の後端3Aとリアエンドパネル9の間には空間10が形成され、この空間10を荷室として利用することができる。高電圧バッテリユニット3をリアサイドメンバ4,5の間に配置するのは、電気自動車において高電圧バッテリユニット3が破損すると走行不能になるため、衝突などの衝撃から保護するためである。
【0011】
高電圧バッテリユニット3の後端3Aとリアエンドパネル9の間には、装備品として、例えば補器用バッテリ7が配置されている。補器用バッテリ7は、メンテナンスが必要な装備品の1つである。補器用バッテリ7は、その上部7Aがリアフロア2よりも下方に位置し、その前端7Bが高電圧バッテリユニット3の後端3Aよりも車両後方側に位置し、高電圧バッテリユニット3に対して車両前後方向Bと矢印Cで示す車両上下方向にオフセットされて配置されている。
【0012】
車両後部6は、リアサイドメンバ4,5、リアエンドパネル9、車両幅方向Aに延在しリアフロア2よりも下方でリアサイドメンバ4,5に、その両端11A,11Bが接合されたフロアクロスメンバ11と、車両幅方向Aに延在しリアサイドメンバ4,5の後端4A、5Aに接合されたリアバンパビーム13と、車両前後方向Aに延在しリアバンパビーム13とフロアクロスメンバ11に、その両端が接合されたリアセンタメンバ14と、車両幅方向Aに延在し、リアサイドメンバ4,5にその両端12A,12Bが固定されたシャーシクロスメンバ12を備えている。リアバンパビーム13よりも車両後方側には、リアバンパ15が、リアエンドパネル9とリアバンパビーム13から下方に延びるブラケット16に取付けられて配置されている。
【0013】
高電圧バッテリユニット3の後端3Aとリアエンドパネル9の間で、かつ、リアサイドメンバ5とリアセンタメンバ14の間に配置するリアフロア2には、開口2Cが形成されている、この開口2Cには、装備品収納部となるケース17が配置されている。ケース17は、その上部が開口され、これ以外の5面が塞がれていて、上部開口周囲に形成されたフランジ部17Aがリアサイドメンバ5とリアセンタメンバ14とフロア上面2Aに接合されることで、リアフロア2よりも車両下方に突出して形成されている。このケース17内には補器用バッテリ7が収納されて、図示しないボルトなどで固定される。ケース17の深さは、補器用バッテリ7を収納したときに、補器用バッテリ7の上部7Aが高電圧バッテリユニット3の後端3Aと車両上下方向Cにおいてオーバーラップしないように設定されている。ケース17の上部には開閉式の蓋20が着脱可能に装着される。この蓋20は、メンテナンス時以外はケース17の上面を塞ぎフロア上面2Aの一部を構成する。作業者は、メンテナンス時になると、この蓋20を開いて離脱して補器用バッテリ7に対するメンテナンス作業を行う。
【0014】
フロアクロスメンバ11は、リアフロア2よりも車両下方で高電圧バッテリユニット3の下部と対向配置されている。高電圧バッテリユニット3は、リアフロア2とリアサイドメンバ4,5に図示しないボルトなどの締結部材で固定されている。シャーシクロスメンバ12は、フロアクロスメンバ11よりも車両下方側で、かつ、ケース17内に収納された補器用バッテリ7と車両前方側で対向するように、フロアクロスメンバ11よりも車両後方側に配置されている。
【0015】
このような構成において、車両後部6が車両後方から衝突荷重Fを受けると、リアバンパ15、リアバンパビーム13、リアエンドパネル9、リアフロア後端2Bが車両前方に向かって変形する。このとき、補器用バッテリ7は高電圧バッテリユニット3よりも車両後方側に配置されているので、図3に示すように、高電圧バッテリユニット3よりも先に衝突荷重Fを受け、車両前方側(車室内側)へと押される。しかし、補器用バッテリ7は、リアフロア2よりも車両下方に配置されて高電圧バッテリユニット3と車両上下方向にオフセットされているので、衝突荷重Fを受けて車両前方側に移動しても、高電圧バッテリユニット3の後端3Aと、その前端7Aが衝突しない。つまり、車両後部6が変形して補器用バッテリ7が押されても、補器用バッテリ7はリアフロア2の下方で移動するため、車両後方からの衝突時における補器用バッテリ7と高電圧バッテリユニット3の干渉を回避して衝突保護性能を確保することができる。
【0016】
衝突荷重Fを受けた補器用バッテリ7は、車両前方側へと移動するが、その移動方向にはシャーシクロスメンバ12が対向配置されているので、シャーシクロスメンバ12に衝突して衝突荷重Fが伝達される。シャーシクロスメンバ12はリアサイドメンバ4,5に連結されているので、シャーシクロスメンバ12に加わる衝突荷重Fはリアサイドメンバ4,5へと伝達され、衝撃が分散される。
【0017】
衝突前において、補器用バッテリ7は高電圧バッテリユニット3に対して車両前後方向Bにオフセットされた状態であるため、特別に移動手段を設けることなく、蓋20を開くことで補器用バッテリ7へのメンテナンス作業が可能となるため、低コスト、省スペースで装備品の一例である補器用バッテリ7のメンテナンス性を高めることができる。
【0018】
また、後方からの衝突に際し、その衝突荷重Fは高電圧バッテリユニット3よりも先に補器用バッテリ7が受けるが、補器用バッテリ7は、リアサイドメンバ5、シャーシクロスメンバ12、リアバンパビーム13、リアセンタメンバ14の間に配置されているので、取付け剛性を高められると共に、衝突時の衝突荷重Fを確実にリアサイドメンバ5に伝達することができる。
【0019】
本形態では、車両後部6にリアセンタメンバ14を備えた形態を用いて説明したが、リアセンタメンバ14を備えていない車両1に適用してもよい。この場合、補器用バッテリ7を収納するケース17は、リアフロア2に形成した開口7Cの周囲に取り付ける構造としてもよいが、シャーシクロスメンバ12とは車両前方側で対向配置することで、車両後方からの衝突荷重Fを受けて補器用バッテリ7が車両前方側に移動しても、その移動をシャーシクロスメンバ12で受け止めると共に、その際の衝突荷重Fをリアサイドメンバ5へと伝達することができる。
【0020】
本形態では、電動駆動源を有する電気自動車を車両1として例示したが、本発明の適用は電気自動車に限定されるものではなく、内燃機関と電動モータを走行駆動源として用いる、所謂ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 車両
2 リアフロア
3 高電圧バッテリユニット
3A 高電圧バッテリユニットの後端
4,5 複数のリアサイドメンバ
6 車両後部
7 装備品
11 フロアクロスメンバ
12 シャーシクロスメンバ
13 リアバンパビーム
14 リアセンタメンバ
A 車両幅方向
B 車両前後方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアフロア上に配置された高電圧バッテリユニットと、前記高電圧バッテリユニットの後端よりも車両後方に位置する車両後部と、前記高電圧バッテリユニットの後端と前記車両後部の間に配置された装備品とを有し、
前記装備品を、その上部が前記リアフロアよりも下方に位置するよう配置するとともに、前記高電圧バッテリユニットに対して車両前後方向にオフセットして配置したことを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記車両後部は、車両幅方向に位置し、車両前後方向に延在する複数のリアサイドメンバと、前記車両幅方向に延在し、前記リアフロアよりも下方で前記リアサイドメンバに接合されたシャーシクロスメンバを有し、
前記装備品と前記シャーシクロスメンバとが対向するように配置したことを特徴とする請求項1記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記車両後部は、車両幅方向に位置し、車両前後方向に延在する複数のリアサイドメンバと、前記車両幅方向に延在し、前記リアサイドメンバの後端に接合されたリアバンパビームと、前記車両幅方向に延在し、前記リアバンパビームよりも車両前方よりに配置され、前記リアフロアよりも下方で前記リアサイドメンバに接合されたフロアクロスメンバと、前記車両前後方向に延在し、前記リアバンパビームと前記フロアクロスメンバに接合されたリアセンタメンバを有し、
前記装備品は、前記リアバンパビームと前記フロアクロスメンバと前記リアセンタメンバと対向するように、前記リアバンパビームと前記フロアクロスメンバと前記リアセンタメンバの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18429(P2013−18429A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154859(P2011−154859)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】