説明

車両の後部構造

【課題】車両の重量化を招くことなく、ショルダーアンカの下方への移動を規制してシートベルトの性能を確保する車両の後部構造を提供する。
【解決手段】リアシートに適用した三点式のシートベルト装置を有する車両の後部構造であって、バックパネル30と、第1レインフォース40と、シートベルト装置のショルダーアンカ23を支持するショルダーアンカ支持部54をその車幅方向の略中央に有し、ショルダーアンカ支持部54の車幅方向両側で、その前面及び後面が第1レインフォース40及びバックパネル30に接合される第2レインフォース50と、を備え、第2レインフォース50には、ショルダーアンカ23に前方への荷重が入力したときに第2レインフォース50の車幅方向両端部よりもショルダーアンカ支持部54が前方に突出するように第2レインフォース50をショルダーアンカ支持部54で折れ曲げ変形させる貫通孔55が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアシートに適用した三点式のシートベルト装置を有する車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−314912号公報には、三人掛けベンチシートのセンタ席に適用した3点式のシートベルト装置が記載されている。このシートベルト装置は、ウェビングをセンタ席の肩口付近にてシートバックの前面側に折り返すショルダアンカを有し、ショルダアンカは、下側部分をホルダに支持される。このホルダがバックパネルのアッパリインフォースに対し補強プレートごとボルト及びナットで締結されることによって、ショルダアンカがバックパネルのアッパリインフォースに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−314912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構造では、乗員からの前下方への荷重がウェビングを介してショルダーアンカに入力され、補強プレートが下方へ折れ曲がり、ショルダーアンカが下方へ移動することによって、シートベルトの性能が低下することを防止するために、補強プレートの板厚を比較的厚く設定する必要がある。このため、車両の重量化を招く。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、車両の重量化を招くことなく、ショルダーアンカの下方への移動を規制してシートベルトの性能を確保する車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両の後部構造は、リアシートに適用した三点式のシートベルト装置を有する車両の後部構造であって、バックパネルと、
第1レインフォースと、第2レインフォースと、を備える。
【0007】
バックパネルは、車幅方向に沿って立設され、車室の後部を区画する。第1レインフォースは、板状であり、車幅方向に沿って延び、バックパネルに車室側から重なって接合される。第2レインフォースは、第1レインフォースとバックパネルとの間に挟持され、シートベルト装置のショルダーアンカを支持するショルダーアンカ支持部を有し、少なくともショルダーアンカ支持部の車幅方向両側で、その前面及び後面が第1レインフォース及びバックパネルにそれぞれ接合される。また、第2レインフォースには、ショルダーアンカに前方への荷重が入力したときに第2レインフォースの車幅方向両端部よりもショルダーアンカ支持部が前方に突出するように第2レインフォースをショルダーアンカ支持部で折れ曲げ変形させる易変形部が形成されている。
【0008】
上記構成では、ショルダーアンカに前方への荷重が入力すると、易変形部によって、第2レインフォースの車幅方向両端部よりもショルダーアンカ支持部が前方に突出するように第2レインフォースがショルダーアンカ支持部で折れ曲げ変形する。この折れ形状によって、ショルダーアンカ支持部の上下方向の折れ曲げ変形が規制される。したがって、第2レインフォースの板厚を厚くするなどによる車両の重量化を招くことなく、ショルダーアンカの下方への移動が規制され、シートベルトの性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の重量化を招くことなく、ショルダーアンカの下方への移動を規制してシートベルトの性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の上部構造におけるフロアパネル、リアシート、シートベルト装置及びバックパネルの一例を示す要部斜視図である。
【図2】図1のバックパネル及びショルダーアンカを示す要部分解斜視図である。
【図3】図2の第2レインフォースとショルダーアンカとが組み付けられた状態を示す要部斜視図である。
【図4】図2の第1レインフォース、第2レインフォース及びショルダーアンカが組み付けられた状態を示す要部斜視図である。
【図5】図4の第1レインフォース及び第2レインフォースが折り曲がり変形した状態を示す要部斜視図である。
【図6】図2の第2レインフォースの変形例を示す水平方向の断面図である。
【図7】図2の第1レインフォース、第2レインフォース及びショルダーアンカと第レインフォース補強部材とが組み付けられた状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる車両の上部構造について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。
【0012】
図1〜図7に示すように、本実施形態にかかる車両の後部構造1を備えた車両2は、フロアパネル4と、リアシート10と、シートベルト装置20と、バックパネル30と、を備えている。
【0013】
フロアパネル4は、図1に示すように、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形され、車両2の前端下部から後方へ延びて車室3の床面を区画する。
【0014】
リアシート10は、略中央に配置された中央席11、左側に配置された左側席12及び右側に配置された右側席13を一体的に有し、乗員が着座するシートクッション部14と、着座した乗員の背中を支持するシートバック部15と、を備える。また、リアシート10の下部には、図示しない脚部が設けられ、脚部がフロアパネル4の上面に、ボルト及びナットで締結固定され、または、溶着などで接合されることによって、リアシート10は、フロアパネル4に接合され、バックパネル30の前方に配置される。中央席11のシートクッション部14の車幅方向右側には、後述するラップアンカ24が挿通するラップアンカ挿通孔16が設けられ、また、車幅方向左側には、後述するバックル26が挿通するバックル挿通孔17が設けられている。
【0015】
シートベルト装置20は、乗員の肩部から腰部にかけて斜めに掛け渡されるショルダーベルト21aおよび乗員の腰部を跨いで車幅方向に延びるように設置されるラップベルト21bからなるウェビング21と、ウェビング21の一端部を巻取可能に支持するリトラクタ22と、ショルダーアンカ23と、ウェビング21の他端部をフロアパネル4に固定するラップアンカ24と、上記ウェビング21に沿って摺動自在に設けられたタング25が着脱可能に係止されるバックル26とを有する3人掛けのリアシート10の中央席11に適用した三点式のシートベルト装置である。
【0016】
リトラクタ22は、フロアパネル4の後端部の略中央の上面に、図示しないボルト及びナットで締結固定され、または、溶着などで接合される。
【0017】
ショルダーアンカ23は、ロッド材からなり、図2に示すように、上下方向に延びる左右一対のショルダーアンカ側部23aと、ショルダーアンカ側部23aの上端部を連結するショルダーアンカ連結部23bと、が一体的に形成されている。ショルダーアンカ23は、図3に示すように、後述するバックパネル30に接合される第2レインフォース50に支持されて、リアシート10の中央席11の後方に配置される。ショルダーアンカ23と第2レインフォース50とは、リトラクタ22から上方へ引き出されたウェビング21が下方から挿通するウェビング挿通孔23cを区画する。
【0018】
ラップアンカ24は、図1に示すように、中央席11のシートクッション部14に設けられたラップアンカ挿通孔16を挿通し、上端部がシートクッション部14に露出している。ウェビング挿通孔23cを挿通し、前方へ折り返されたウェビング21は、ラップアンカ24の上端部に固定される。
【0019】
バックル26は、中央席11のシートクッション部14に設けられたバックル挿通孔17を挿通し、上端部がシートクッション部14に露出し、露出した上端部で、タング25を着脱可能に係止する。
【0020】
バックパネル30は、図1及び図2に示すように、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形され、フロアパネル4の後端部から立設して車室3の後面を区画する。バックパネル30は、上部にリアウィンドウ31を装着する略矩形状のリアウィンドウ開口部32と、リアウィンドウ開口部32よりも下部に補強部材である第1レインフォース40と、第2レインフォース50と、有する。
【0021】
第1レインフォース40は、図2に示すように、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形された車幅方向に沿って延びる略平板状の部材であり、上端部及び下端部にフランジ部41を有する。また、上部及び下部に前方へ膨出する前側膨出部42を有し、上下方向の略中央部に後側へ膨出する後側膨出部43を有する。また、第1レインフォース40の車幅方向の略中央部には、略矩形状に切り欠かれた切欠部44が形成されている。
【0022】
第2レインフォース50は、図2及び図3に示すように、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形された車幅方向に沿って延びる略平板状の部材であり、上下方向の長さは第1レインフォース40と略同一に設定され、車幅方向の長さは第1レインフォース40よりも短く設定されている。
【0023】
第2レインフォース50は、上端部及び下端部にフランジ部51を有する。また、上部及び下部に前方へ膨出する前側膨出部52を有し、上下方向の略中央部に後側へ膨出する後側膨出部53を有する。フランジ部51は、第1レインフォース40が前方(車室3側)から重なったときに、フランジ部51の前面が第1レインフォース40のフランジ部41の後面に当接するように形成される。また、前側膨出部52は、第1レインフォース40が前方から重なったときに、その前端部の前面が第1レインフォース40の前側膨出部42の前端部の後面に当接するように形成され、同様に、後側膨出部53は、その後端部の前面が、第1レインフォース40の後側膨出部43の後端部の後面に当接するように形成されている。
【0024】
また、第2レインフォース50は、車幅方向の略中央部に、ショルダーアンカ23のショルダーアンカ側部23aの下端部と嵌合する嵌合部54aを有し、ショルダーアンカ23を支持するショルダーアンカ支持部54を有する。ショルダーアンカ支持部54の上下方向及び車幅方向の略中央には、前後方向に貫通する略矩形状の貫通孔(易変形部)55が形成されている。
【0025】
次に、バックパネル30、第1レインフォース40及び第2レインフォース50の組み付け態様について説明する。
【0026】
車両2前方から第1レインフォース40、第2レインフォース50、バックパネル30の順で配置され、第1レインフォース40のフランジ部41の後面と第2レインフォース50のフランジ部51の前面とが当接し、また、第2レインフォース50のフランジ部51の後面は、バックパネル30に当接し、これらの当接部分で、第1レインフォース40、第2レインフォース50及びバックパネル30は、溶接されて接合される。また、当接する第1レインフォース40及び第2レインフォース50の前側膨出部42,52及び後側膨出部43,53とが、図示しないボルト及びナットによって締結固定、又は、溶着などで接合される。このように接合されて、第2レインフォース50が第1レインフォース40とバックパネル30との間に挟持されると、図4に示すように、第2レインフォース50のショルダーアンカ支持部54が、第1レインフォース40に形成された切欠部44から露出する。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。ショルダーアンカ支持部54には、貫通孔55が形成されているので、ショルダーアンカ支持部54の剛性は、第2レインフォース50の他の箇所、例えば車幅方向の両端部の剛性よりも弱い。このため、車両2の急停止などが原因で、前方への荷重が、乗員からウェビング21を介して、ショルダーアンカ23に入力すると、図5に示すように、第2レインフォース50は、ショルダーアンカ支持部54が第2レインフォース50の両端部よりも前方に突出するようにショルダーアンカ支持部54で折れ曲げ変形する。なお、第2レインフォース50の変形に伴い、第2レインフォース50に接合されている第1レインフォース40及びバックパネル30も車幅方向の略中央部が両端部よりも前方へ位置するように折れ曲げ変形する。
【0028】
本実施形態では、ショルダーアンカ23に前方への荷重が入力すると、第2レインフォース50は、車幅方向の略中央部に設けられたショルダーアンカ支持部54が両端部よりも前方に突出するようにショルダーアンカ支持部54で折れ曲げ変形する。この折れ形状によって、第2レインフォース50の上下方向の折れ曲げ変形を規制することができる。したがって、第2レインフォース50の板厚を厚くするなどによる車両の重量化を招くことなく、ショルダーアンカ23の下方への移動を規制することができ、シートベルトの性能を確保することができる。
【0029】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0030】
例えば、本実施形態では、易変形部として、略矩形状の貫通孔55を形成したが、これに変えて、車幅方向の略中央部に他の箇所、例えば車幅方向の両端部の比べて板厚が薄く設定されている薄板部を易変形部として形成してもよい。
【0031】
また、図6に示すように、第2レインフォース50の略中央部に、易変形部として、前方へ突出する突出部56を形成してもよい。
【0032】
また、図7に示すように、第2レインフォース50の上下方向の変形を抑制する第2レインフォース補強部57を設けてもよい。第2レインフォース補強部は、第2レインフォース部の上部に、図示しないボルト及びナットで締結固定され、又は、溶着される。
【0033】
また、本実施形態では、3人掛けリアシート10の中央席11に適用した三点式のシートベルト装置を例に説明したが、本発明は、3人掛けリアシート10の左側席12及び右側席13、並びに、2人掛けリアシートの左側席及び右側席に適用したシートベルト装置のショルダーアンカをリアシートの後方で支持する(バックパネルで支持する)場合にも適用可能である。
【0034】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、リアシートに適用した三点式のシートベルト装置を有する車両の後部構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:後部構造
2:車両
3:車室
4:フロアパネル
10:リアシート
11:中央席
20:シートベルト装置
21:ウェビング
23:ショルダーアンカ
23a:ショルダーアンカ側部
23b:ショルダーアンカ連結部
23c:ウェビング挿通孔
30:バックパネル
40:第1レインフォース
41:フランジ部
42:前側膨出部
43:後側膨出部
44:切欠部
50:第2レインフォース
51:フランジ部
52:前側膨出部
53:後側膨出部
54:ショルダーアンカ支持部
55:貫通孔(易変形部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアシートに適用した三点式のシートベルト装置を有する車両の後部構造であって、
車幅方向に沿って立設され、車室の後部を区画するバックパネルと、
車幅方向に沿って延び、前記バックパネルに前記車室側から重なって接合される板状の第1レインフォースと、
前記第1レインフォースと前記バックパネルとの間に挟持され、前記シートベルト装置のショルダーアンカを支持するショルダーアンカ支持部を有し、少なくとも該ショルダーアンカ支持部の車幅方向両側で、その前面及び後面が該第1レインフォース及び該バックパネルにそれぞれ接合される第2レインフォースと、を備え、
前記第2レインフォースには、前記ショルダーアンカに前方への荷重が入力したときに該第2レインフォースの車幅方向両端部よりも前記ショルダーアンカ支持部が前方に突出するように該第2レインフォースを該ショルダーアンカ支持部で折れ曲げ変形させる易変形部が形成されている
ことを特徴とする車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67282(P2013−67282A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207592(P2011−207592)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】