車両の後部荷室構造
【課題】サブトランクの凹部内に荷物等を出し入れする際の作業性を低下させることなく、必要に応じて上記凹部内にトランクボードを格納できるようにする。
【解決手段】車両のフロアパネル4上に設置された後部座席6と、この後部座席6の後方に配設されたサブトランク7と、このサブトランク7を有する後部荷室3に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部1とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランク7には下方に凹入した凹部19を有するサブトランク本体20と、この凹部19の上面開口部を覆うように設置されるトランクボード21とが設けられるとともに、上記トランクボード21の前端支持部と後端支持部とを有し、上記凹部19の底面が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記トランクボード21の前後寸法よりも、上記凹部19の底面の前後寸法が大きな値に設定された。
【解決手段】車両のフロアパネル4上に設置された後部座席6と、この後部座席6の後方に配設されたサブトランク7と、このサブトランク7を有する後部荷室3に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部1とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランク7には下方に凹入した凹部19を有するサブトランク本体20と、この凹部19の上面開口部を覆うように設置されるトランクボード21とが設けられるとともに、上記トランクボード21の前端支持部と後端支持部とを有し、上記凹部19の底面が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記トランクボード21の前後寸法よりも、上記凹部19の底面の前後寸法が大きな値に設定された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の底面部を構成するフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、自動車のシート後方中央に凹部(スペアタイヤパン)を有するフロア底板が設けられたトランクフロアにおいて、相対向する2つの側壁の同じ所定の高さにそれぞれ段部を設け、一方の側壁の上記段部より下方を略鉛直な壁面とするとともに、他方の側壁の上記段部を壁面より突出した水平な突条で形成し、上記段部より下方の対向する側壁の間隔に略等しい幅長を有する板状体からなるトランクボード(フロアリッド)を設けた自動車用トランクフロアリッドの取付構造が知られている。
【特許文献1】特許第3302571号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されるように、板状のトランクボードを、上記段部より下方の対向する側壁の間隔に略等しい幅長とした場合には、上記トランクボードを分割する等の手段を講じることなく、上記凹部を塞いでフロア底板上に載置し、あるいは相対向する段部上に仮設することができるため、車体後部の荷室内に荷物等を収容する際の利便性が得られるという利点がある。
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示されているように、相対向する側壁から左右一対の突条をそれぞれ内側に突出させることにより、上記トランクボードを支持するための段部を形成するとともに、上記両側壁の間にトランクボードを格納するためのスペースを確保するように構成した場合には、上記両側壁の間に形成された収納スペースの上端開口部が突条の存在に起因して狭められることとなって、上記収納スペースに荷物を出し入れする際の作業性が悪化することが避けられない等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サブトランクの凹部内に荷物等を出し入れする際の作業性を低下させることなく、必要に応じて上記凹部内にトランクボードを格納することができる車両の後部荷室構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両のフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランクには下方に凹入した凹部を有するサブトランク本体と、この凹部の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部の下縁部と略連続した面を形成するトランクボードとが設けられるとともに、上記トランクボードの前端部を支持する前端支持部とトランクボードの後端部を支持する後端支持部とを有し、上記凹部の底面部が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも、上記凹部の底面の前後寸法が大きな値に設定されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部荷室構造において、上記サブトランク本体に設けられた凹部の前壁が後傾状態で設置されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造において、上記凹部の前壁および後壁にトランクボードを支持するための段部がそれぞれ設けられるとともに、これらの段部と上記凹部の前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードが選択的に支持されるように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に上記後端支持部が設けられたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、サブトランクの下方には、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンが形成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サブトランクに設けられた凹部の底面を前下がりで傾斜させたため、上記凹部の前壁および後壁の両方に突出量の大きな突条を設ける等の構造を採用することなく、上記凹部底面の前後寸法を、サブトランクの前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも大きな値とすることができる。したがって、上記凹部の前壁および後壁の両方に突出量の大きな突条が設けられること等に起因して上記凹部内に荷物を出し入れする際の作業性が悪化する等の問題を生じることなく、サブトランクの前端支持部および後端支持部により支持された状態から取外されたトランクボードを上記凹部内に収容することにより、このトランクボードが邪魔になるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、上記凹部の前壁を所定角度で後傾させた構造としたため、この前壁の下端部を車両の前方側に位置させることにより、上記凹部底面の傾斜角度をそれ程大きくすることなく、その前後寸法をトランクボードの前後寸法よりも大きな値に設定して上記凹部内にトランクボードを収容可能に構成できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、上記前壁および後壁にトランクボードの前端部および後端部を支持するための段部をそれぞれ設けるとともに、この段部の設置間隔をトランクボードの前後寸法よりもやや短い値に設定する等により、これらの段部と上記前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードを選択的に支持可能に構成したため、上記折り畳み状態のシートバックの上面および上記リヤ開口部の下縁部の設置高さが設計変更等に応じて変化した場合であったり、トランクボード上に物品を安定して載置させたりしたいときに、上記トランクボードの設置状態を変化させることにより、折り畳み状態の上記シートバックの上面とリヤ開口部の下縁部と連続させ、あるいは上記トランクボードを略水平に設置し得るようにその設置角度を極めて容易に変更できる等の利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に、上記凹部の後壁としての機能と、トランクボードの後端支持部としての機能とを兼ね備えさせるように構成したため、上記凹部の容量を効果的に拡大できるとともに、車両の製造時における材料費および車体重量を効果的に節減できる等の利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、サブトランクの下方に、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンを形成したため、このスペアタイヤパン内に、スペアタイヤを水平状態で支持して格納するように構成した場合に比べ、スペアタイヤの格納状態における前後スペースをコンパクト化することができる。したがって、車両のデザイン性を改善し、あるいは車両の走行性を向上させること等を目的として車両のタイヤ径を増大させた場合でも、車体のプラットフォームを設計変更して後部車体の後方突出量を増大させる等の手段を講じることなく、上記スペアタイヤパン内にスペアタイヤを格納可能に構成できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、所謂ミニバンタイプの車両の後方部に設けられた本発明に係る車両の後部荷室構造の第1実施形態を示している。この車両の後部車体には、図外のバックドアにより開閉されるリヤ開口部1が形成された後端パネル2からなる後壁と、その前方側に位置する後部荷室3と、この後部荷室3の底面部を構成するリヤフロアパネル4とが設けられている。上記後部荷室3の前方側に位置する車室内には、運転席および助手席等からなる1列目シート(図示せず)と、その後方に位置する2列目シート5とが配設されるとともに、上記後部荷室3の前部には、3列目シート6からなる後部座席が配設されている。
【0017】
上記3列目シート6の後方側には、物品の収納部となるサブトランク7が車幅方向に延びるように設置されるとともに、その下方部には、リヤフロアパネル4の車幅方向略中央部分を下方に凹入させることによりスペアタイヤパン8が形成されている。なお、このスペアタイヤパン8の前方側には、図示を省略した燃料タンクの設置スペースが設けられている。
【0018】
上記3列目シート6からなる後部座席は、シートクッション9およびシートバック10を有し、このシートクッション9およびシートバック10は、それぞれリヤフロアパネル4上に設置された左右一対の支持プレート11に、前側リンク12および後側リンク13を介して支持されている。この前側リンク12の先端部が上記シートクッション9の前方部側面に支軸14を介して枢支されるとともに、前側リンク12の基端部が上記支持プレート11の前方部に支軸15を介して枢支されている。また、上記後側リンク13の先端部がシートバック10の下方部側面に図略の締結部材等を介して固定されるとともに、後側リンク13の基端部が上記支持プレート11の後方部に支軸16を介して枢支されている。
【0019】
上記シートクッション9の側面には、連結リンク17が締結部材を介して固定されている。この連結リンク17は、その後方部が上記シートクッション9との固定部から上部後方側に湾曲しつつ延びるとともに、後方側端部が上記後側リンク13の上端部に支軸18を介して枢支されている。また、上記支持プレート11には、後側リンク13の下端部を保持することにより、この後側リンク13が支軸16を支点に回動するのを規制するロック装置(図示せず)が設けられている。そして、上記3列目シート6の使用時には、上記ロック装置を介して後側リンク13の回動変位が規制されることにより、図3に示すように、上記シートバック10がシートクッション9の後端部から上方に起立した状態に保持されるとともに、上記シートクッション9が支持プレート11から所定距離だけ上方に離間した位置に保持されている。
【0020】
上記シートクッション9またはシートバック10の所定部位には、上記ロック装置のギア機構等と連係された図略の操作レバーが設けられ、この操作レバーが乗員によって操作されるのに応じ、上記ロック装置による後側リンク13のロックが解除されるようになっている。この後側リンク13のロックが解除された状態で、上記シートバック10を前方に押動する力が加えられると、上記シートバック10と上記後側リンク13とが一体となって前方に回動変位するとともに、連結リンク17が前方かつ下方に揺動変位する。このようにして上記3列目シート6の不使用時には、図1に示すように、上記前側リンク12が前方に回動変位してシートクッション9が前方かつ下方に沈み込むとともに、このシートクッション9上にシートバック10が倒伏した状態に変位し、このシートバック10の上面(背面)により後部荷室3の荷物載置面が形成されるようになっている。
【0021】
上記サブトランク7は、上面が開口した所定深さの凹部19を有する箱形状のサブトランク本体20と、上記凹部19の上面開口部を覆うように設置されるトランクボード21とを有している。そして、上記サブトランク本体20の下面部にサブトランク支持部45,46が設けられ、このサブトランク支持部45がフロアパネル4上に形成された図示を省略したサブトランク係止部に連結されて支持されることにより、上記3列目シート6のシートバック10からなる後部荷室3の荷物載置面よりも下方に凹入した物品収納用の凹部19が後部荷室3の後方部に形成されている。
【0022】
上記サブトランク7の下方に形成されたスペアタイヤパン8は、その底面部22が所定角度で前下がりに傾斜して設置されるとともに、この底面部22の略中央には、スペアタイヤ23が前下がりの傾斜状態で載置されて図外の固定ボルト等により固定されるタイヤ支持部24が形成されている。また、図4に示すように、上記サブトランク本体20は、その底面が、前下がり状態で支持された上記スペアタイヤ23の傾斜角度αと略同一の角度で前下がりに傾斜して設置されている。すなわち、上記サブトランク本体20の底面は、その下面部に設けられた前後のサブトランク支持部45,46のうち前方側のサブランク支持部45の上下寸法が後方側のサブトランク支持部46よりも短く形成されることにより、上記タイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23の傾斜角度αと略同一の角度で前下がりに傾斜した状態で設置されるようになっている。
【0023】
上記サブトランク本体20は、凹部19の前後両端部から上方に延びる前壁25と、この前壁よりも上下寸法が小さく設定された後壁26とを有し、この前壁25の上部には、トランクボード21の前端支持部(段部)を構成する突条27が車両の後方側に向けて突設されるとともに、上記後壁26の上部には、トランクボード21の後端支持部(段部)を構成する切欠き部28が設けられている。そして、上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28からなる段部上に前後両端部が載置されて支持されたトランクボード21により、上記倒伏状態にあるシートバック10の上面と、リヤ開口部1の下縁部とを連結するフラットなフロア面が形成されるようになっている(図1参照)。
【0024】
すなわち、上記突条27の上面が、3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面よりも上記トランクボード21の厚みに相当する距離だけ下方に配設されることにより、上記突条27に支持されたトランクボード21の前端部の支持高さが、シートバック10の上面と略同一高さとなるように設定されている。また、上記切欠き部28の底面が、後端パネル2に設けられたリヤ開口部1の下縁部よりも上記トランクボード21の厚みに相当する距離だけ下方に配設されることにより、上記切欠き部28の底面上に支持されたトランクボード21の後端部の支持高さが、上記リヤ開口部1の下縁部と略同一高さとなるように設定されている。さらに、上記突条27からなる前端支持部(段部)と上記切欠き部28からなる後端支持部(段部)との設置間隔L3が、上記トランクボード21の前後寸法L2に対応した値に設定されることにより、上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28上にトランクボード21の前後両端部が載置されて支持されるようになっている。
【0025】
当実施形態では、折り畳み状態にある上記シートバック10の上面がリヤ開口部1の下縁部よりも上方に位置するとともに、これらの位置に対応して上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28によるトランクボード21の支持高さが設定されることにより、このトランクボード21が所定角度βで前上がりに傾斜した状態で支持されるようになっている。そして、後述するように上記凹部19内にトランクボード21を収容可能に構成するために、上記凹部19の底面の傾斜角度αが、上記トランクボード21の傾斜角度βよりも大きく設定されるとともに、上記凹部19の前壁25が所定角度γで後傾して設置されることにより、凹部19の底面の前後寸法L1がトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定されている。
【0026】
上記構成において後部荷室3の前部に配設された上記3列目シート6の不使用時には、図1に示すように、そのシートクッション9を前方かつ下方に沈み込ませるとともに、その上にシートバック10を倒伏させることにより、車両の後部に設けられた上記後部荷室3の全体を荷物等の収納部として利用できることになる。そして、上記サブトランク7の凹部19の上面開口部を覆うように上記トランクボード21を設置することにより、上記倒伏状態にあるシートバック10の上面と、リヤ開口部1の下縁部と連続させるフラットなフロア面を形成することができるため、上記リヤ開口部1から搬入されたスキー板およびゴルフバッグ等からなる長尺の荷物を、上記シートバック10の上面に沿って後部荷室3内へスムーズに搬入して収容することが可能である。
【0027】
また、上記後部荷室3内に背の高い大型の荷物を収容する際には、上記サブトランク7の凹部19の上面開口部を覆うように設置されたトランクボード21を取り外すことにより、上記凹部19を利用して上記大型の荷物を後部荷室3内に収容することが可能となる。さらに、上記スペアタイヤパン8のタイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23を使用するには、図外の係止具によるサブトランク本体20の係止状態を解除して上記リヤフロアパネル4上からサブトランク本体20を取り外した後、図外の固定ボルト等によるスペアタイヤ23の固定状態を解除することにより、上記タイヤ支持部24からスペアタイヤ23を取り外すことができる。
【0028】
一方、図3に示すように、上記3列目シート6のシートバック10を起立させてその状態を保持するようにロックすれば、上記後部荷室3の前方部を乗員の着座スペースとして利用できるため、車両に搭乗可能な乗員数を増大させることができる。しかも、上記3列目シート6の後方側に配設されたサブトランク7の凹部19およびその上方部を荷物の収容スペースとして確保することができる。
【0029】
上記のように後部荷室3の後方に配設されたサブトランク7と、後部荷室3に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部1とを有する車両において、物品収納用の凹部19を有するサブトランク本体20と、この凹部19の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部1の下縁部と略連続した面を形成するトランクボード21とを上記サブトランク7に設けるとともに、上記サブトランク本体20に、トランクボード21の前端部を支持する突条27からなる前端支持部と、トランクボード21の後端部を支持する切欠き部28からなる後端支持部とを設け、上記凹部19の底面部を前下がりに傾斜させて設置することにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボード21の前後寸法L2よりも、上記凹部19の底面の前後寸法L1を大きな値に設定したため、サブトランクの凹部内に荷物等を出し入れする際の作業性を低下させることなく、必要に応じて上記凹部19内にトランクボード21を格納できるという利点がある。
【0030】
すなわち、上記実施形態では、サブトランク本体20に設けられた凹部19の上面開口部を覆うトランクボード21を前上がりの傾斜状態で設置するとともに、その傾斜角度βよりも大きな角度αで上記凹部19の底面を前下がりで傾斜させるように構成したため、上記凹部19の前壁25および後壁26の両方に突出量の大きな突条を設ける等の構造を採用することなく、上記凹部19の底面の前後寸法L1を、上記前壁25に設けられた突条27からなる前端支持部と後壁26に設けられた切欠き部28からなる後端支持部との設置間隔L3に対応したトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値とすることができる。したがって、上記凹部19の前壁25および後壁26の両方に突出量の大きな突条が設けられることに起因して上記凹部19内に荷物を出し入れする際の作業性が悪化し、あるいは上記トランクボート21を分割する必要が生じること等を防止しつつ、図1の仮想線で示すように、サブトランク本体20の上面部から取外されたトランクボード21を、邪魔にならないように上記凹部19内に収容できるという利点がある。
【0031】
また、上記のように突条27に支持されたトランクボード21の前端部の支持高さを、3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面と略同一高さに設定するとともに、上記切欠き部28に支持されたトランクボード21の後端部の支持高さを、上記リヤ開口部1の下縁部と略同一高さに設定した場合には、上記シートバック10の上面とリヤ開口部1の下縁部と連続させるフラットなフロア面を上記トランクボード21によって形成することができる。したがって、上記リヤ開口部1から搬入されたスキー板およびゴルフバッグ等からなる長尺の荷物を上記トランクボード21に沿ってスムーズに後部荷室3内に収容できるという利点がある。
【0032】
なお、上記凹部19の前壁25を所定角度γで後傾させてなる上記実施形態に代え、上記凹部19の前壁25を鉛直状態で設置した構造とすることも可能であるが、上記実施形態に示すように、上記凹部19の前壁25を所定角度γで後傾させた構造とした場合には、上記前壁25の下端部を車両の前方側に位置させることにより、上記凹部底面の傾斜角度αをそれ程大きくすることなく、その前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定して上記凹部19内にトランクボード21を収容可能に構成できるという利点がある。
【0033】
特に、図5に示す第2実施形態のように、上記凹部19の前壁25を第1実施形態よりも急角度γ′で後傾させた構造とした場合には、上記3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面が、上記リヤ開口部1の下縁部よりも所定距離だけ上方に位置するとともに、これに対応して上記トランクボード21が大きな角度β′で前上がりに傾斜して設置されている場合、つまり上記凹部19の底面の傾斜角度αと、上記トランクボード21の傾斜角度β′との差に基づいて凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定することが困難な場合においても、上記前壁25の下端部を大きく車両の前方側に位置させることにより、凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定できるという利点がある。
【0034】
また、上記前壁25の上端部に設けられた突条27からなる前端支持部にトランクボード21の前端部を支持するとともに、上記後壁26の上端部に設けられた切欠き部28からなる後端支持部にトランクボード21の後端部を支持するように構成した上記第1実施形態に代え、凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボードの前後寸法L2よりも大きな値に設定することで、上記前壁25および後壁26の上端部上にトランクボード21を直接載置し、あるいは突条を設けることなく、上記前壁25および後壁26の両方に設けられた切欠き形状の凹部上にトランクボード21の前端部および後端部をそれぞれ載置して支持するように構成してもよい。
【0035】
さらに、図6に示す第3実施形態のように、上記前壁25および後壁26の上部に、トランクボード21の前端部および後端部を支持するための突条27および切欠き部28等からなる段部をそれぞれ設けるとともに、この段部の設置間隔L3をトランクボード21の前後寸法L2よりもやや短い値に設定することにより、上記突条27および切欠き部28等からなる段部と、上記前壁25および後壁26の上端部とに上記トランクボード21を選択的に支持可能に構成してもよい。
【0036】
上記第3実施形態に係る車両の後部荷室構造によれば、図6の実線で示すように、トランクボード21の前端部を前壁25の突条27(段部)に支持させるとともに、トランクボード21の後端部を後壁26の上端部に載置した状態と、図6の仮想線で示すように、トランクボード21の前端部を前壁25の上端部に載置するとともに、トランクボード21の後端部を後壁26の切欠き部28(段部)に位置に支持させた状態とに変化させることができる。したがって、上記折り畳み状態のシートバック10の上面および上記リヤ開口部1の下縁部の設置高さが設計変更等に応じて変化した場合であったり、トランクボード21上に物品を安定して載置させたりしたいときに、上記トランクボード21の設置状態を変化させることにより、折り畳み状態の上記シートバック10の上面とリヤ開口部1の下縁部と連続させ、あるいは上記トランクボード21を略水平に設置し得るようにその設置角度を極めて容易に変更できる等の利点がある。
【0037】
図7は、上記トランクボード21の前後両端部を係止することにより、上記凹部19の上下方向中間部にトランクボード21を略水平状態で支持するための係止部29,30を上記凹部19の前壁25および後壁26に設けた本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態に示すように、上記凹部19の上下方向中間部にトランクボード21を略水平状態で係止するように構成した場合には、必要に応じて図8に示すように、2列目シート5のシートバック5aまたは後部荷室3の側壁部に取り付けられて後部荷室3を上下に区画するように設置されるトノカバー31を収容ケース32内に収容した状態で、この収容ケース32を、上記凹部19の上下方向中間部に係止されたトランクボード21の下方部に格納して隠蔽できるという利点がある(図7参照)。
【0038】
図9は、本発明に係る車両の後部荷室構造の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、上記スペアタイヤパン8の底面部22aが略水平に設置されるとともに、上記タイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23と、上記スペアタイヤパン8の底面後方部との間に車両用工具33等を収容する収納スペース34が設けられている。この構成によれば、後部荷室3内に車両用工具の格納スペースを設けた場合のように、後部荷室3の荷室容量が狭められる等の弊害を生じることなく、上記スペアタイヤ23を前傾状態で設置することにより、その後部下方に形成された上記スペース34を有効に利用して車両用工具33等を格納できるとともに、上記スペアタイヤ23を取り外すことにより車両用工具33等の格納位置を容易に発見できる等の利点がある。
【0039】
なお、上記凹部19の後壁26をサブトランク本体20に設けてなる上記実施形態に代え、図9に示すように、リヤ開口部1の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材35により上記凹部19の後壁を構成し、このリヤエンドトリム材35に、トランクボード21の後端部を支持する切欠き部28等からなる後端支持部を設けた構造としてもよい。上記のようにリヤ開口部1の下縁部前面を覆うリヤエンドトリム材35に、上記凹部19の後壁としての機能と、トランクボード21の後端支持部としての機能とを兼ね備えさせるように構成した場合には、上記後壁26を省略することにより凹部19の容量を効果的に拡大できるとともに、車両の製造時における材料費および車体重量を効果的に節減できるという利点がある。
【0040】
上記各実施形態では、上記サブトランク7の下方に、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部24を備えたスペアタイヤパン8を形成したため、このスペアタイヤパン8内に、スペアタイヤ23を水平状態で支持して格納するように構成した場合に比べ、スペアタイヤ23の格納状態における前後スペースをコンパクト化できるという利点がある。したがって、車両のデザイン性を改善し、あるいは車両の走行性を向上させること等を目的として車両のタイヤ径を増大させた場合でも、車体のプラットフォームを設計変更して後部車体の後方突出量を増大させる等の手段を講じることなく、上記スペアタイヤパン8内にスペアタイヤ23を格納可能に構成できるという利点がある。
【0041】
また、図10は、2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに、小物類等の収納ボックス36が着脱可能に取り付けられた本発明の第6実施形態を示している。上記シートバック5aの背面には、図11に示すように、係合軸37と凹部38とを有するボックス支持部39が形成され、このボックス支持部39の係合軸37に、収納ボックス36の係合フック40が係脱可能に係止されるようになっている。
【0042】
上記収納ボックス36は、底面に上記係合フック40が設けられたボックス本体41と、このボックス本体41に開閉自在に支持されたリッド部材42とにより、下広がりのリュック状に形成されている。そして、上記2列目シート5からなる乗員用シートの使用時には、そのシートバック5aに上記収納ボックス36が垂下状態で支持され、かつ上記シートバック5aがシートクッション上に折り畳まれた上記2列目シート5の不使用時には、図12に示すように、上記収納ボックス36が略水平状態となって車室内に設置されるように構成されている。
【0043】
さらに、上記収納ボックス36は、その不使用時に上記2列目シート5のシートバック5aから取外されて上記スペアタイヤパン8内に格納可能なように、その大きさおよび形状が構成されている(図10の仮想線参照)。このように2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに着脱可能に取り付けられる収納ボックス36を上記スペアタイヤパン8内に格納可能に構成した場合には、必要時に上記収納ボックス36を車室内に設置して有効に利用できるとともに、収納ボックス36の不必要時に車室内スペースを犠牲にすることなく、上記スペアタイヤパン8内に収納ボックス36を格納して邪魔にならないように隠蔽できるという利点がある。なお、上記2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに、小物類等の収納ボックス36が着脱可能に取り付けられるように構成された上記実施形態に代え、3列目シート6からなる乗員用シートのシートバック10に上記収納ボックス36を着脱可能に取り付け得るように構成してもよい。
【0044】
図13および図14は、上記スペアタイヤパン8の左右両側方部に、リヤサイドフレーム43,43が車体の前後方向に延びるように設置された車両において、上記スペアタイヤパン8の後方部を通って左右のリヤサイドフレーム43,43の後端部を連結する補強部材44が車幅方向に延びるように設置された本発明の第7実施形態を示している。上記のようにスペアタイヤパン8にスペアタイヤ23を前下がり状態で支持させることにより、スペアタイヤ23の格納状態における前後スペースをコンパクト化できる車両、つまりスペアタイヤパン8の後端部が車体の後方側に突出した状態となることが防止されるように構成された車両において、スペアタイヤ23の格納部後方に形成されたスペースを有効に利用して上記補強部材44を設置するように構成した場合には、この補強部材44により後部車体を効果的に補強して後突時の安全性を向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車両の後部荷室構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記後部荷室構造の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】後部座席の使用状態を示す側面断面図である。
【図4】サブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】本発明に係る車両の後部荷室構造の第2実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る車両の後部荷室構造の第3実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図7】本発明に係る車両の後部荷室構造の第4実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図8】トノカバーの設置状態を示す側面断面図である。
【図9】本発明に係る車両の後部荷室構造の第5実施形態を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る車両の後部荷室構造の第6実施形態を示す側面断面図である。
【図11】上記第6実施形態における収納ボックスおよびその取付部の具体的構成を示す側面図である。
【図12】2列目シートの不使用状態を示す側面図である。
【図13】本発明に係る車両の後部荷室構造の第7実施形態を示す側面断面図である。
【図14】リヤサイドフレームおよび補強部材の設置状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 リヤ開口部
2 後端パネル(リヤ開口部の下縁部)
3 後部荷室
4 フロアパネル
6 3列目シート(後部座席)
7 サブトランク
8 スペアタイヤパン
19 凹部
20 サブトランク本体
21 トランクボード
23 スペアタイヤ
24 タイヤ支持部
25 前壁
26 後壁
27 突条(前端支持部の段部)
28 切欠き部(後端支持部の段部)
35 リヤエンドトリム材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の底面部を構成するフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、自動車のシート後方中央に凹部(スペアタイヤパン)を有するフロア底板が設けられたトランクフロアにおいて、相対向する2つの側壁の同じ所定の高さにそれぞれ段部を設け、一方の側壁の上記段部より下方を略鉛直な壁面とするとともに、他方の側壁の上記段部を壁面より突出した水平な突条で形成し、上記段部より下方の対向する側壁の間隔に略等しい幅長を有する板状体からなるトランクボード(フロアリッド)を設けた自動車用トランクフロアリッドの取付構造が知られている。
【特許文献1】特許第3302571号公報明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示されるように、板状のトランクボードを、上記段部より下方の対向する側壁の間隔に略等しい幅長とした場合には、上記トランクボードを分割する等の手段を講じることなく、上記凹部を塞いでフロア底板上に載置し、あるいは相対向する段部上に仮設することができるため、車体後部の荷室内に荷物等を収容する際の利便性が得られるという利点がある。
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示されているように、相対向する側壁から左右一対の突条をそれぞれ内側に突出させることにより、上記トランクボードを支持するための段部を形成するとともに、上記両側壁の間にトランクボードを格納するためのスペースを確保するように構成した場合には、上記両側壁の間に形成された収納スペースの上端開口部が突条の存在に起因して狭められることとなって、上記収納スペースに荷物を出し入れする際の作業性が悪化することが避けられない等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、サブトランクの凹部内に荷物等を出し入れする際の作業性を低下させることなく、必要に応じて上記凹部内にトランクボードを格納することができる車両の後部荷室構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両のフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランクには下方に凹入した凹部を有するサブトランク本体と、この凹部の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部の下縁部と略連続した面を形成するトランクボードとが設けられるとともに、上記トランクボードの前端部を支持する前端支持部とトランクボードの後端部を支持する後端支持部とを有し、上記凹部の底面部が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも、上記凹部の底面の前後寸法が大きな値に設定されたものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部荷室構造において、上記サブトランク本体に設けられた凹部の前壁が後傾状態で設置されたものである。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造において、上記凹部の前壁および後壁にトランクボードを支持するための段部がそれぞれ設けられるとともに、これらの段部と上記凹部の前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードが選択的に支持されるように構成されたものである。
【0009】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、上記リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に上記後端支持部が設けられたものである。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造において、サブトランクの下方には、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンが形成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サブトランクに設けられた凹部の底面を前下がりで傾斜させたため、上記凹部の前壁および後壁の両方に突出量の大きな突条を設ける等の構造を採用することなく、上記凹部底面の前後寸法を、サブトランクの前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも大きな値とすることができる。したがって、上記凹部の前壁および後壁の両方に突出量の大きな突条が設けられること等に起因して上記凹部内に荷物を出し入れする際の作業性が悪化する等の問題を生じることなく、サブトランクの前端支持部および後端支持部により支持された状態から取外されたトランクボードを上記凹部内に収容することにより、このトランクボードが邪魔になるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、上記凹部の前壁を所定角度で後傾させた構造としたため、この前壁の下端部を車両の前方側に位置させることにより、上記凹部底面の傾斜角度をそれ程大きくすることなく、その前後寸法をトランクボードの前後寸法よりも大きな値に設定して上記凹部内にトランクボードを収容可能に構成できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、上記前壁および後壁にトランクボードの前端部および後端部を支持するための段部をそれぞれ設けるとともに、この段部の設置間隔をトランクボードの前後寸法よりもやや短い値に設定する等により、これらの段部と上記前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードを選択的に支持可能に構成したため、上記折り畳み状態のシートバックの上面および上記リヤ開口部の下縁部の設置高さが設計変更等に応じて変化した場合であったり、トランクボード上に物品を安定して載置させたりしたいときに、上記トランクボードの設置状態を変化させることにより、折り畳み状態の上記シートバックの上面とリヤ開口部の下縁部と連続させ、あるいは上記トランクボードを略水平に設置し得るようにその設置角度を極めて容易に変更できる等の利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に、上記凹部の後壁としての機能と、トランクボードの後端支持部としての機能とを兼ね備えさせるように構成したため、上記凹部の容量を効果的に拡大できるとともに、車両の製造時における材料費および車体重量を効果的に節減できる等の利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明では、サブトランクの下方に、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンを形成したため、このスペアタイヤパン内に、スペアタイヤを水平状態で支持して格納するように構成した場合に比べ、スペアタイヤの格納状態における前後スペースをコンパクト化することができる。したがって、車両のデザイン性を改善し、あるいは車両の走行性を向上させること等を目的として車両のタイヤ径を増大させた場合でも、車体のプラットフォームを設計変更して後部車体の後方突出量を増大させる等の手段を講じることなく、上記スペアタイヤパン内にスペアタイヤを格納可能に構成できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、所謂ミニバンタイプの車両の後方部に設けられた本発明に係る車両の後部荷室構造の第1実施形態を示している。この車両の後部車体には、図外のバックドアにより開閉されるリヤ開口部1が形成された後端パネル2からなる後壁と、その前方側に位置する後部荷室3と、この後部荷室3の底面部を構成するリヤフロアパネル4とが設けられている。上記後部荷室3の前方側に位置する車室内には、運転席および助手席等からなる1列目シート(図示せず)と、その後方に位置する2列目シート5とが配設されるとともに、上記後部荷室3の前部には、3列目シート6からなる後部座席が配設されている。
【0017】
上記3列目シート6の後方側には、物品の収納部となるサブトランク7が車幅方向に延びるように設置されるとともに、その下方部には、リヤフロアパネル4の車幅方向略中央部分を下方に凹入させることによりスペアタイヤパン8が形成されている。なお、このスペアタイヤパン8の前方側には、図示を省略した燃料タンクの設置スペースが設けられている。
【0018】
上記3列目シート6からなる後部座席は、シートクッション9およびシートバック10を有し、このシートクッション9およびシートバック10は、それぞれリヤフロアパネル4上に設置された左右一対の支持プレート11に、前側リンク12および後側リンク13を介して支持されている。この前側リンク12の先端部が上記シートクッション9の前方部側面に支軸14を介して枢支されるとともに、前側リンク12の基端部が上記支持プレート11の前方部に支軸15を介して枢支されている。また、上記後側リンク13の先端部がシートバック10の下方部側面に図略の締結部材等を介して固定されるとともに、後側リンク13の基端部が上記支持プレート11の後方部に支軸16を介して枢支されている。
【0019】
上記シートクッション9の側面には、連結リンク17が締結部材を介して固定されている。この連結リンク17は、その後方部が上記シートクッション9との固定部から上部後方側に湾曲しつつ延びるとともに、後方側端部が上記後側リンク13の上端部に支軸18を介して枢支されている。また、上記支持プレート11には、後側リンク13の下端部を保持することにより、この後側リンク13が支軸16を支点に回動するのを規制するロック装置(図示せず)が設けられている。そして、上記3列目シート6の使用時には、上記ロック装置を介して後側リンク13の回動変位が規制されることにより、図3に示すように、上記シートバック10がシートクッション9の後端部から上方に起立した状態に保持されるとともに、上記シートクッション9が支持プレート11から所定距離だけ上方に離間した位置に保持されている。
【0020】
上記シートクッション9またはシートバック10の所定部位には、上記ロック装置のギア機構等と連係された図略の操作レバーが設けられ、この操作レバーが乗員によって操作されるのに応じ、上記ロック装置による後側リンク13のロックが解除されるようになっている。この後側リンク13のロックが解除された状態で、上記シートバック10を前方に押動する力が加えられると、上記シートバック10と上記後側リンク13とが一体となって前方に回動変位するとともに、連結リンク17が前方かつ下方に揺動変位する。このようにして上記3列目シート6の不使用時には、図1に示すように、上記前側リンク12が前方に回動変位してシートクッション9が前方かつ下方に沈み込むとともに、このシートクッション9上にシートバック10が倒伏した状態に変位し、このシートバック10の上面(背面)により後部荷室3の荷物載置面が形成されるようになっている。
【0021】
上記サブトランク7は、上面が開口した所定深さの凹部19を有する箱形状のサブトランク本体20と、上記凹部19の上面開口部を覆うように設置されるトランクボード21とを有している。そして、上記サブトランク本体20の下面部にサブトランク支持部45,46が設けられ、このサブトランク支持部45がフロアパネル4上に形成された図示を省略したサブトランク係止部に連結されて支持されることにより、上記3列目シート6のシートバック10からなる後部荷室3の荷物載置面よりも下方に凹入した物品収納用の凹部19が後部荷室3の後方部に形成されている。
【0022】
上記サブトランク7の下方に形成されたスペアタイヤパン8は、その底面部22が所定角度で前下がりに傾斜して設置されるとともに、この底面部22の略中央には、スペアタイヤ23が前下がりの傾斜状態で載置されて図外の固定ボルト等により固定されるタイヤ支持部24が形成されている。また、図4に示すように、上記サブトランク本体20は、その底面が、前下がり状態で支持された上記スペアタイヤ23の傾斜角度αと略同一の角度で前下がりに傾斜して設置されている。すなわち、上記サブトランク本体20の底面は、その下面部に設けられた前後のサブトランク支持部45,46のうち前方側のサブランク支持部45の上下寸法が後方側のサブトランク支持部46よりも短く形成されることにより、上記タイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23の傾斜角度αと略同一の角度で前下がりに傾斜した状態で設置されるようになっている。
【0023】
上記サブトランク本体20は、凹部19の前後両端部から上方に延びる前壁25と、この前壁よりも上下寸法が小さく設定された後壁26とを有し、この前壁25の上部には、トランクボード21の前端支持部(段部)を構成する突条27が車両の後方側に向けて突設されるとともに、上記後壁26の上部には、トランクボード21の後端支持部(段部)を構成する切欠き部28が設けられている。そして、上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28からなる段部上に前後両端部が載置されて支持されたトランクボード21により、上記倒伏状態にあるシートバック10の上面と、リヤ開口部1の下縁部とを連結するフラットなフロア面が形成されるようになっている(図1参照)。
【0024】
すなわち、上記突条27の上面が、3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面よりも上記トランクボード21の厚みに相当する距離だけ下方に配設されることにより、上記突条27に支持されたトランクボード21の前端部の支持高さが、シートバック10の上面と略同一高さとなるように設定されている。また、上記切欠き部28の底面が、後端パネル2に設けられたリヤ開口部1の下縁部よりも上記トランクボード21の厚みに相当する距離だけ下方に配設されることにより、上記切欠き部28の底面上に支持されたトランクボード21の後端部の支持高さが、上記リヤ開口部1の下縁部と略同一高さとなるように設定されている。さらに、上記突条27からなる前端支持部(段部)と上記切欠き部28からなる後端支持部(段部)との設置間隔L3が、上記トランクボード21の前後寸法L2に対応した値に設定されることにより、上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28上にトランクボード21の前後両端部が載置されて支持されるようになっている。
【0025】
当実施形態では、折り畳み状態にある上記シートバック10の上面がリヤ開口部1の下縁部よりも上方に位置するとともに、これらの位置に対応して上記サブトランク本体20の突条27および切欠き部28によるトランクボード21の支持高さが設定されることにより、このトランクボード21が所定角度βで前上がりに傾斜した状態で支持されるようになっている。そして、後述するように上記凹部19内にトランクボード21を収容可能に構成するために、上記凹部19の底面の傾斜角度αが、上記トランクボード21の傾斜角度βよりも大きく設定されるとともに、上記凹部19の前壁25が所定角度γで後傾して設置されることにより、凹部19の底面の前後寸法L1がトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定されている。
【0026】
上記構成において後部荷室3の前部に配設された上記3列目シート6の不使用時には、図1に示すように、そのシートクッション9を前方かつ下方に沈み込ませるとともに、その上にシートバック10を倒伏させることにより、車両の後部に設けられた上記後部荷室3の全体を荷物等の収納部として利用できることになる。そして、上記サブトランク7の凹部19の上面開口部を覆うように上記トランクボード21を設置することにより、上記倒伏状態にあるシートバック10の上面と、リヤ開口部1の下縁部と連続させるフラットなフロア面を形成することができるため、上記リヤ開口部1から搬入されたスキー板およびゴルフバッグ等からなる長尺の荷物を、上記シートバック10の上面に沿って後部荷室3内へスムーズに搬入して収容することが可能である。
【0027】
また、上記後部荷室3内に背の高い大型の荷物を収容する際には、上記サブトランク7の凹部19の上面開口部を覆うように設置されたトランクボード21を取り外すことにより、上記凹部19を利用して上記大型の荷物を後部荷室3内に収容することが可能となる。さらに、上記スペアタイヤパン8のタイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23を使用するには、図外の係止具によるサブトランク本体20の係止状態を解除して上記リヤフロアパネル4上からサブトランク本体20を取り外した後、図外の固定ボルト等によるスペアタイヤ23の固定状態を解除することにより、上記タイヤ支持部24からスペアタイヤ23を取り外すことができる。
【0028】
一方、図3に示すように、上記3列目シート6のシートバック10を起立させてその状態を保持するようにロックすれば、上記後部荷室3の前方部を乗員の着座スペースとして利用できるため、車両に搭乗可能な乗員数を増大させることができる。しかも、上記3列目シート6の後方側に配設されたサブトランク7の凹部19およびその上方部を荷物の収容スペースとして確保することができる。
【0029】
上記のように後部荷室3の後方に配設されたサブトランク7と、後部荷室3に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部1とを有する車両において、物品収納用の凹部19を有するサブトランク本体20と、この凹部19の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部1の下縁部と略連続した面を形成するトランクボード21とを上記サブトランク7に設けるとともに、上記サブトランク本体20に、トランクボード21の前端部を支持する突条27からなる前端支持部と、トランクボード21の後端部を支持する切欠き部28からなる後端支持部とを設け、上記凹部19の底面部を前下がりに傾斜させて設置することにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボード21の前後寸法L2よりも、上記凹部19の底面の前後寸法L1を大きな値に設定したため、サブトランクの凹部内に荷物等を出し入れする際の作業性を低下させることなく、必要に応じて上記凹部19内にトランクボード21を格納できるという利点がある。
【0030】
すなわち、上記実施形態では、サブトランク本体20に設けられた凹部19の上面開口部を覆うトランクボード21を前上がりの傾斜状態で設置するとともに、その傾斜角度βよりも大きな角度αで上記凹部19の底面を前下がりで傾斜させるように構成したため、上記凹部19の前壁25および後壁26の両方に突出量の大きな突条を設ける等の構造を採用することなく、上記凹部19の底面の前後寸法L1を、上記前壁25に設けられた突条27からなる前端支持部と後壁26に設けられた切欠き部28からなる後端支持部との設置間隔L3に対応したトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値とすることができる。したがって、上記凹部19の前壁25および後壁26の両方に突出量の大きな突条が設けられることに起因して上記凹部19内に荷物を出し入れする際の作業性が悪化し、あるいは上記トランクボート21を分割する必要が生じること等を防止しつつ、図1の仮想線で示すように、サブトランク本体20の上面部から取外されたトランクボード21を、邪魔にならないように上記凹部19内に収容できるという利点がある。
【0031】
また、上記のように突条27に支持されたトランクボード21の前端部の支持高さを、3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面と略同一高さに設定するとともに、上記切欠き部28に支持されたトランクボード21の後端部の支持高さを、上記リヤ開口部1の下縁部と略同一高さに設定した場合には、上記シートバック10の上面とリヤ開口部1の下縁部と連続させるフラットなフロア面を上記トランクボード21によって形成することができる。したがって、上記リヤ開口部1から搬入されたスキー板およびゴルフバッグ等からなる長尺の荷物を上記トランクボード21に沿ってスムーズに後部荷室3内に収容できるという利点がある。
【0032】
なお、上記凹部19の前壁25を所定角度γで後傾させてなる上記実施形態に代え、上記凹部19の前壁25を鉛直状態で設置した構造とすることも可能であるが、上記実施形態に示すように、上記凹部19の前壁25を所定角度γで後傾させた構造とした場合には、上記前壁25の下端部を車両の前方側に位置させることにより、上記凹部底面の傾斜角度αをそれ程大きくすることなく、その前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定して上記凹部19内にトランクボード21を収容可能に構成できるという利点がある。
【0033】
特に、図5に示す第2実施形態のように、上記凹部19の前壁25を第1実施形態よりも急角度γ′で後傾させた構造とした場合には、上記3列目シート5からなる後部座席のシートクッション9上に折り畳まれたシートバック10の上面が、上記リヤ開口部1の下縁部よりも所定距離だけ上方に位置するとともに、これに対応して上記トランクボード21が大きな角度β′で前上がりに傾斜して設置されている場合、つまり上記凹部19の底面の傾斜角度αと、上記トランクボード21の傾斜角度β′との差に基づいて凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定することが困難な場合においても、上記前壁25の下端部を大きく車両の前方側に位置させることにより、凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボード21の前後寸法L2よりも大きな値に設定できるという利点がある。
【0034】
また、上記前壁25の上端部に設けられた突条27からなる前端支持部にトランクボード21の前端部を支持するとともに、上記後壁26の上端部に設けられた切欠き部28からなる後端支持部にトランクボード21の後端部を支持するように構成した上記第1実施形態に代え、凹部19の底面の前後寸法L1をトランクボードの前後寸法L2よりも大きな値に設定することで、上記前壁25および後壁26の上端部上にトランクボード21を直接載置し、あるいは突条を設けることなく、上記前壁25および後壁26の両方に設けられた切欠き形状の凹部上にトランクボード21の前端部および後端部をそれぞれ載置して支持するように構成してもよい。
【0035】
さらに、図6に示す第3実施形態のように、上記前壁25および後壁26の上部に、トランクボード21の前端部および後端部を支持するための突条27および切欠き部28等からなる段部をそれぞれ設けるとともに、この段部の設置間隔L3をトランクボード21の前後寸法L2よりもやや短い値に設定することにより、上記突条27および切欠き部28等からなる段部と、上記前壁25および後壁26の上端部とに上記トランクボード21を選択的に支持可能に構成してもよい。
【0036】
上記第3実施形態に係る車両の後部荷室構造によれば、図6の実線で示すように、トランクボード21の前端部を前壁25の突条27(段部)に支持させるとともに、トランクボード21の後端部を後壁26の上端部に載置した状態と、図6の仮想線で示すように、トランクボード21の前端部を前壁25の上端部に載置するとともに、トランクボード21の後端部を後壁26の切欠き部28(段部)に位置に支持させた状態とに変化させることができる。したがって、上記折り畳み状態のシートバック10の上面および上記リヤ開口部1の下縁部の設置高さが設計変更等に応じて変化した場合であったり、トランクボード21上に物品を安定して載置させたりしたいときに、上記トランクボード21の設置状態を変化させることにより、折り畳み状態の上記シートバック10の上面とリヤ開口部1の下縁部と連続させ、あるいは上記トランクボード21を略水平に設置し得るようにその設置角度を極めて容易に変更できる等の利点がある。
【0037】
図7は、上記トランクボード21の前後両端部を係止することにより、上記凹部19の上下方向中間部にトランクボード21を略水平状態で支持するための係止部29,30を上記凹部19の前壁25および後壁26に設けた本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態に示すように、上記凹部19の上下方向中間部にトランクボード21を略水平状態で係止するように構成した場合には、必要に応じて図8に示すように、2列目シート5のシートバック5aまたは後部荷室3の側壁部に取り付けられて後部荷室3を上下に区画するように設置されるトノカバー31を収容ケース32内に収容した状態で、この収容ケース32を、上記凹部19の上下方向中間部に係止されたトランクボード21の下方部に格納して隠蔽できるという利点がある(図7参照)。
【0038】
図9は、本発明に係る車両の後部荷室構造の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、上記スペアタイヤパン8の底面部22aが略水平に設置されるとともに、上記タイヤ支持部24に支持されたスペアタイヤ23と、上記スペアタイヤパン8の底面後方部との間に車両用工具33等を収容する収納スペース34が設けられている。この構成によれば、後部荷室3内に車両用工具の格納スペースを設けた場合のように、後部荷室3の荷室容量が狭められる等の弊害を生じることなく、上記スペアタイヤ23を前傾状態で設置することにより、その後部下方に形成された上記スペース34を有効に利用して車両用工具33等を格納できるとともに、上記スペアタイヤ23を取り外すことにより車両用工具33等の格納位置を容易に発見できる等の利点がある。
【0039】
なお、上記凹部19の後壁26をサブトランク本体20に設けてなる上記実施形態に代え、図9に示すように、リヤ開口部1の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材35により上記凹部19の後壁を構成し、このリヤエンドトリム材35に、トランクボード21の後端部を支持する切欠き部28等からなる後端支持部を設けた構造としてもよい。上記のようにリヤ開口部1の下縁部前面を覆うリヤエンドトリム材35に、上記凹部19の後壁としての機能と、トランクボード21の後端支持部としての機能とを兼ね備えさせるように構成した場合には、上記後壁26を省略することにより凹部19の容量を効果的に拡大できるとともに、車両の製造時における材料費および車体重量を効果的に節減できるという利点がある。
【0040】
上記各実施形態では、上記サブトランク7の下方に、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部24を備えたスペアタイヤパン8を形成したため、このスペアタイヤパン8内に、スペアタイヤ23を水平状態で支持して格納するように構成した場合に比べ、スペアタイヤ23の格納状態における前後スペースをコンパクト化できるという利点がある。したがって、車両のデザイン性を改善し、あるいは車両の走行性を向上させること等を目的として車両のタイヤ径を増大させた場合でも、車体のプラットフォームを設計変更して後部車体の後方突出量を増大させる等の手段を講じることなく、上記スペアタイヤパン8内にスペアタイヤ23を格納可能に構成できるという利点がある。
【0041】
また、図10は、2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに、小物類等の収納ボックス36が着脱可能に取り付けられた本発明の第6実施形態を示している。上記シートバック5aの背面には、図11に示すように、係合軸37と凹部38とを有するボックス支持部39が形成され、このボックス支持部39の係合軸37に、収納ボックス36の係合フック40が係脱可能に係止されるようになっている。
【0042】
上記収納ボックス36は、底面に上記係合フック40が設けられたボックス本体41と、このボックス本体41に開閉自在に支持されたリッド部材42とにより、下広がりのリュック状に形成されている。そして、上記2列目シート5からなる乗員用シートの使用時には、そのシートバック5aに上記収納ボックス36が垂下状態で支持され、かつ上記シートバック5aがシートクッション上に折り畳まれた上記2列目シート5の不使用時には、図12に示すように、上記収納ボックス36が略水平状態となって車室内に設置されるように構成されている。
【0043】
さらに、上記収納ボックス36は、その不使用時に上記2列目シート5のシートバック5aから取外されて上記スペアタイヤパン8内に格納可能なように、その大きさおよび形状が構成されている(図10の仮想線参照)。このように2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに着脱可能に取り付けられる収納ボックス36を上記スペアタイヤパン8内に格納可能に構成した場合には、必要時に上記収納ボックス36を車室内に設置して有効に利用できるとともに、収納ボックス36の不必要時に車室内スペースを犠牲にすることなく、上記スペアタイヤパン8内に収納ボックス36を格納して邪魔にならないように隠蔽できるという利点がある。なお、上記2列目シート5からなる乗員用シートのシートバック5aに、小物類等の収納ボックス36が着脱可能に取り付けられるように構成された上記実施形態に代え、3列目シート6からなる乗員用シートのシートバック10に上記収納ボックス36を着脱可能に取り付け得るように構成してもよい。
【0044】
図13および図14は、上記スペアタイヤパン8の左右両側方部に、リヤサイドフレーム43,43が車体の前後方向に延びるように設置された車両において、上記スペアタイヤパン8の後方部を通って左右のリヤサイドフレーム43,43の後端部を連結する補強部材44が車幅方向に延びるように設置された本発明の第7実施形態を示している。上記のようにスペアタイヤパン8にスペアタイヤ23を前下がり状態で支持させることにより、スペアタイヤ23の格納状態における前後スペースをコンパクト化できる車両、つまりスペアタイヤパン8の後端部が車体の後方側に突出した状態となることが防止されるように構成された車両において、スペアタイヤ23の格納部後方に形成されたスペースを有効に利用して上記補強部材44を設置するように構成した場合には、この補強部材44により後部車体を効果的に補強して後突時の安全性を向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る車両の後部荷室構造の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】上記後部荷室構造の第1実施形態を示す平面図である。
【図3】後部座席の使用状態を示す側面断面図である。
【図4】サブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】本発明に係る車両の後部荷室構造の第2実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る車両の後部荷室構造の第3実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図7】本発明に係る車両の後部荷室構造の第4実施形態におけるサブトランクの具体的構成を示す側面断面図である。
【図8】トノカバーの設置状態を示す側面断面図である。
【図9】本発明に係る車両の後部荷室構造の第5実施形態を示す側面断面図である。
【図10】本発明に係る車両の後部荷室構造の第6実施形態を示す側面断面図である。
【図11】上記第6実施形態における収納ボックスおよびその取付部の具体的構成を示す側面図である。
【図12】2列目シートの不使用状態を示す側面図である。
【図13】本発明に係る車両の後部荷室構造の第7実施形態を示す側面断面図である。
【図14】リヤサイドフレームおよび補強部材の設置状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 リヤ開口部
2 後端パネル(リヤ開口部の下縁部)
3 後部荷室
4 フロアパネル
6 3列目シート(後部座席)
7 サブトランク
8 スペアタイヤパン
19 凹部
20 サブトランク本体
21 トランクボード
23 スペアタイヤ
24 タイヤ支持部
25 前壁
26 後壁
27 突条(前端支持部の段部)
28 切欠き部(後端支持部の段部)
35 リヤエンドトリム材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランクには下方に凹入した凹部を有するサブトランク本体と、この凹部の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部の下縁部と略連続した面を形成するトランクボードとが設けられるとともに、上記トランクボードの前端部を支持する前端支持部とトランクボードの後端部を支持する後端支持部とを有し、上記凹部の底面部が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも、上記凹部の底面の前後寸法が大きな値に設定されたことを特徴とする車両の後部荷室構造。
【請求項2】
上記サブトランク本体に設けられた凹部の前壁が後傾状態で設置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項3】
上記凹部の前壁および後壁にトランクボードを支持するための段部がそれぞれ設けられるとともに、これらの段部と上記凹部の前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードが選択的に支持されるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項4】
上記リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に上記後端支持部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項5】
上記サブトランクの下方には、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンが形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項1】
車両のフロアパネル上に設置された後部座席と、この後部座席の後方に配設されたサブトランクと、このサブトランクを有する後部荷室に対して荷物を出し入れするためのリヤ開口部とを有する車両の後部荷室構造であって、上記サブトランクには下方に凹入した凹部を有するサブトランク本体と、この凹部の上面開口部を覆うように設置されて上記リヤ開口部の下縁部と略連続した面を形成するトランクボードとが設けられるとともに、上記トランクボードの前端部を支持する前端支持部とトランクボードの後端部を支持する後端支持部とを有し、上記凹部の底面部が前下がりに傾斜して設置されることにより、上記前端支持部と後端支持部との設置間隔に対応したトランクボードの前後寸法よりも、上記凹部の底面の前後寸法が大きな値に設定されたことを特徴とする車両の後部荷室構造。
【請求項2】
上記サブトランク本体に設けられた凹部の前壁が後傾状態で設置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項3】
上記凹部の前壁および後壁にトランクボードを支持するための段部がそれぞれ設けられるとともに、これらの段部と上記凹部の前壁および後壁の上端部とに上記トランクボードが選択的に支持されるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項4】
上記リヤ開口部の下縁部前面を覆うように設置されたリヤエンドトリム材に上記後端支持部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【請求項5】
上記サブトランクの下方には、その底面の傾斜状態に対応してスペアタイヤが前下がりに傾斜して支持されるタイヤ支持部を備えたスペアタイヤパンが形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部荷室構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−292196(P2009−292196A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145412(P2008−145412)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]