説明

車両の後部車体構造

【課題】リヤホイールハウスに設けられたダンパ支持部の剛性を簡単かつ効果的に向上させることができ、かつ優れた汎用性が得られるようにする。
【解決手段】サスペンションダンパの上端部を支持するダンパ支持部25がリヤホイールハウス24に設けられた車両の後部車体構造において、上記リヤホイールハウス24の車内側壁面には、ダンパ支持部25の前方部とリヤサイドフレーム10とを連結する第1ブレース材29と、ダンパ支持部25の後方部とリヤサイドフレーム10とを連結する第2ブレース材30とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションダンパの上端部を支持するダンパ支持部がリヤホイールハウスに設けられた車両の後部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体後部の左右にリヤサイドフレームが設けられ、該リヤサイドフレームにホイールハウスがそれぞれ設けられた車体後部構造において、左右のダンパ取付部に設けられて左右の補強部に架け渡された上クロスメンバと、上クロスメンバから左右のリヤサイドフレームまで延出された左右の脚メンバと、左右の脚メンバに連結されるとともに、左右のリヤサイドフレームに架け渡された下クロスメンバとにより環状の骨格部を構成し、左右の補強部の剛性を確保するとともに、左右のホイールハウスのダンパ取付部に作用した荷重を良好に支持することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、バックドアに対応した開口が車体後壁に形成された車両において、車両前後方向に延びて、後壁における開口周辺部分とリヤホイールハウス部の上部とを連結する連結ガセットを設けるとともに、該連結ガセットと、リヤホイールハウス部およびフロア部の上面に沿って車幅方向に延びて、両端が左右のリヤホイールハウス部の上部に達する補強部材とをリヤホイールハウス部の上部で連結することにより、車体後部の捩れ剛性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−1197号公報
【特許文献2】特開2006−69265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された車体後部構造は、リヤパーセル(リヤパッケージトレイ)の前端部を支持する上クロスメンバを利用して後部車体の剛性を確保するように構成されているため、リヤパーセルを備えたセダンタイプの車両等にのみ適用可能であって汎用性に欠けるとともに、後部荷室の上方前部に上クロスメンバが配設されることに起因して後部荷室を利用する際の利便性が悪化することが避けられないという問題がある。
【0006】
一方、上記特許文献1に開示された車両の後部車体構造は、バックドアを有するハッチバックタイプの車両を対象としており、セダンタイプの車両等に適用することが困難であるとともに、所定幅の連結ガセットが車体後部の側壁部に沿って前後方向に延びるように設置されているため、後部荷室に荷物等を積み込む際に上記連結ガセットが邪魔になり、後部荷室を利用する際の利便性が損なわれる等の問題があった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、リヤホイールハウスに設けられたダンパ支持部の剛性を簡単かつ効果的に向上させることができる車両の後部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、サスペンションダンパの上端部を支持するダンパ支持部がリヤホイールハウスに設けられた車両の後部車体構造において、上記リヤホイールハウスの車内側壁面には、ダンパ支持部の前方部とリヤサイドフレームとを連結する第1ブレース材と、ダンパ支持部の後方部とリヤサイドフレームとを連結する第2ブレース材とが設けられたことを特徴とする車両の後部車体構造ものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の後部車体構造において、上記第1ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第1クロスメンバが設けられたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の後部車体構造において、上記第2ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第2クロスメンバが設けられたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、上記請求項3に記載の車両の後部車体構造において、第2ブレース材と第2クロスメンバとの少なくとも一部が側面視で車両の前後方向にオーバラップするように配設されたものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、上記第1,第2ブレース材が車幅方向外方側に開口した断面ハット型部材により形成され、上記第1,第2ブレース材とリヤホイールハウスとの間に上下方向に延びる閉断面がそれぞれ形成されたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の後部車体構造において、上記リヤホイールハウスのダンパ支持部に車室内側へ膨出した膨出部が前後に形成され、この膨出部に上記第1,第2ブレース材がそれぞれ連続するように設置されたものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、上記特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、上記ダンパ支持部を補強する補強部材を備えるとともに、この補強部材に上記第1,第2ブレース材上部が接続されたものである。
【0015】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造において、上記ダンパ支持部の車幅方向外面側には、リヤホイールハウスの上部に対応した位置から上方に向かって延びる外面側補強材が設けられたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、上記リヤホイールハウスの上部に設けられたダンパ支持部の前辺部および後辺部からリヤサイドフレームの上面に向けて下方へ延びるように設置された前後一対のブレース材により、上記ダンパ支持部を効果的に補強してその内倒れ等を効果的に防止するように構成したため、上記ダンパ支持部を効果的に補強することができる。また、上記のようにリヤホイールハウスの車内側壁面に沿って第1,第2ブレース材を上下方向に延びるように設置したため、後部荷室を使用する際の利便性を大きく損なうことなく、上記第1,第2ブレース材によりリヤホイールハウスの振動を効果的に防止して騒音の発生を抑制できる等の付随的な利点が得られる。さらに、従来技術のように対象車種がセダンタイプに限定されたり、あるいはハッチバックタイプ等に限定されたりすることがなく、優れた汎用性が得られる等の付随的な利点を得ることも可能である。
【0017】
請求項2に係る発明では、上記第1ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第1クロスメンバを設けたため、サスペンションダンパから上記ダンパ支持部に入力された荷重に対する支持部材として上記第1クロスメンバを有効に利用することができ、簡単な構成で上記ダンパ支持部を、より効果的に補強してその内倒れを確実に防止できる等の利点がある。
【0018】
請求項3に係る発明では、第1ブレース材の後方側に配設された第2ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第2クロスメンバを設けた構造としたため、サスペンションダンパからダンパ支持部に入力された荷重を上記第2ブレース材から第2クロスメンバおよび後部荷室等に伝達して効果的に支持することができ、上記ダンパ支持部の内倒れ等を、さらに効果的に防止できるという利点がある。
【0019】
請求項4に係る発明では、リヤホイールハウスに沿って設けられる上記第2ブレース材と、フロアパネルに沿って設けられる上記第2クロスメンバとの少なくとも一部を側面視で車両の前後方向にオーバラップするように配設したため、上記リヤサスペンションのサスペンションダンパからダンパ支持部に入力された荷重を上記第2ブレース材から第2クロスメンバおよびフロアパネルに対して確実に伝達することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、第1,第2ブレース材を車幅方向外方側に開口した断面ハット型部材により形成し、上記第1,第2ブレース材とリヤホイールハウスとの間に上下方向に延びる閉断面をそれぞれ形成したため、第1,第2ブレース材の板厚を大きな値に設定することなく、その設置部における断面係数を充分に増大させることができる。したがって、車体重量の増大を抑制しつつ、上記リヤホイールハウスの剛性および強度を効果的に向上させて上記ダンパ支持部の内倒れ等を効果的に防止できるという利点がある。
【0021】
請求項6に係る発明では、リヤホイールハウスのダンパ支持部に車室内側へ膨出する前後一対の膨出部を形成し、この膨出部に連続させるように上記第1,第2ブレース材を設置したため、ダンパ支持部の前後両側辺部から下方に断面係数の大きい補強部を連続して設置することにより、車体重量を増大させることなく、ダンパ支持部の前後両側辺部を効果的に補強することができるとともに、サスペンションダンパから上記ダンパ支持部に入力された荷重を第1,第2ブレース材により車体側壁部およびフロアパネルに効率よく伝達して支持できるという利点がある。
【0022】
請求項7に係る発明では、ダンパ支持部を補強する補強部材を設けるとともに、この補強部材に上記第1,第2ブレース材の上部を接続したため、この第1,第2ブレース材の上部を上記ダンパ支持部と補強部材とで挟持した状態で強固に連結する等により、上記ダンパ支持部にサスペンションダンパを安定して支持させることができるとともに、このサスペンションダンパからダンパ支持部および補強部材に入力された荷重を第1,第2ブレース材に効果的に伝達して支持できる等の利点がある。
【0023】
請求項8に係る発明では、ダンパ支持部の車幅方向外面側に、リヤホイールハウスの上部に対応した位置から上方に向かって延びるように外面側補強材を設置したため、上記サスペンションダンパからダンパ支持部に入力される荷重を、上記外面側補強材から側壁上部のルーフレール等に伝達することにより、さらに効果的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る車両の後部車体構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】後部車体構造の具体的構成を示す側面断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】後部車体構造の具体的構成を示す底面図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】後部車体構造の具体的構成を示す分解斜視図である。
【図7】図2のVII−VII線断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】ブレース材を構成する下方部材を示す斜視図である。
【図10】外面側補強材の具体的構成を示す側面図である。
【図11】本発明に係る車両の後部車体構造の別の実施形態を示す平面断面図である。
【図12】上記後部車体構造の具体的構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図4は、本発明に係る車両の後部車体構造の実施形態を示している。この後部車体は、車体の底面部を構成するフロアパネル1と、図略のサイドドアが開閉可能に設置される乗降用開口部2が設けられた車体側壁部3と、図略のバックドアが開閉可能に設置される後方開口部4が設けられた車体後壁部5とを有している。
【0026】
上記フロアパネル1は、乗員用シート(図示せず)が設置される車室内フロア部6と、その後端部から斜め上方に延びるキックアップ部7と、その上端部から車両の後方側に延びるリヤフロア部8とを具備している。このリヤフロア部8には、スペアタイヤの収納部となるタイヤパン9が形成されるとともに、その左右両側辺部には、リヤサイドフレーム10が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、上記リヤフロア部8の下方には、ロアアーム11、サスペンションダンパ12およびコイルスプリング13等を有するリヤサスペンション14と、このリヤサスペンション14を支持するサブフレーム15とが配設されている。
【0027】
上記リヤサイドフレーム10は、図3および図5に示すように、フロアパネル1の上方へ膨出した段部を形成する上側部材16と、フロアパネル1の下方に凹入した断面コ字状部を有する下側部材17とからなり、これらの上側部材16および下側部材17により車両の前後方向に延びる閉断面がそれぞれ形成されている。そして、上記リヤサイドフレーム10の車幅方向内側辺部にフロアパネル1が固定されている。
【0028】
上記リヤサイドフレーム10内には、サブフレーム15の前端取付部を補強する側面視L字状の部材からなる第1補強ブラケット18が、上記キックアップ部7に対応した位置に配設されている。また、第1補強ブラケット18の後方側には、上記コイルスプリング13の設置部を補強する側面視でU字状の部材からなる第2補強ブラケット19と、サブフレーム15の後端取付部を補強する側面視で逆U字状の部材からなる第3補強ブラケット20とが、それぞれ所定間隔を置いて配設されている。
【0029】
また、図4および図5に示すように、サブフレーム15をリヤサイドフレーム10に取り付ける取付けボルト15aが設けられ、第1クロスメンバの下側部材49および第2クロスメンバ47に略対応する車幅方向外側位置でリヤサイドフレーム10の下側部材17の下面にサブフレーム15が取り付けられている。
【0030】
上記車体側壁部3は、図3に示すように、アウタパネル21およびインナパネル22を有し、その間にはリヤピラーレインまたはクォータパネルレイン等からなる外面側補強材23が配設されている。そして、上記インナパネル22の下方部には、車室内に膨出するリヤホイールハウス24が設けられている。このリヤホイールハウス24の上面中央部には、サスペンションダンパ12の上端部を支持するダンパ支持部25と、このダンパ支持部25を裏面側から補強する補強部材26とが設けられている。
【0031】
上記ダンパ支持部25の前辺部および後辺部には、車室内側(上方および車幅方向の内方側)に膨出した膨出部27,28が設けられている。また、上記リヤホイールハウス24の車内側壁面には、上記ダンパ支持部25の前方部に設けられた膨出部27から下方に延びる第1ブレース材29が設置されるとともに、上記ダンパ支持部25の後辺部に設けられた膨出部28から下方に延びる第2ブレース材30が設置されている(図1および図2参照)。
【0032】
上記第1,2ブレース材29,30は、図6に示すように、上記ダンパ支持部25の車幅方向内側辺部から下方に延びる上方部材31,32と、上記リヤサイドフレーム10の上面部から上方に延びる下方部材33,34とに分割されている。そして、上記上方部材31,32の下端部に、下方部材33,34の上端部が接続されることにより、上記ダンパ支持部25の前辺部および後方部とリヤサイドフレーム10とを連結するように上下方向に延びる第1,第2ブレース材29,30が形成されている。上記第1ブレース材29が後傾状態で設置されるとともに、上記第2ブレース材30が前傾状態で設置されることにより、側面視で設置間隔が上方部に至るに従って狭くなったハ字状に上記両ブレース材29,30が配列されている(図2参照)。
【0033】
上記第1,2ブレース材29,30の上方部材31,32は、図7に示すように、鋼板材を折り曲げる等により形成された前後一対の取付フランジ35,36と、車幅方向外方側が開口したコ字状の本体部37とを有する断面ハット型に形成されている。そして、上方部材31,32の上端部が上記補強部材26の車内側壁面上に重ねられるとともに、その上に上記ダンパ支持部25が重ねられた状態で、これらが一体にスポット溶接される等により結合されている(図3参照)。また、上方部材31,32がリヤホイールハウス24の車内側壁面に固定されるとともに、上記ダンパ支持部25の前辺部および後辺部に形成された上記膨出部27,28と、上方部材31,32の本体部37からなる膨出部とが一体に連結されることにより、上下方向に延びる補強部が形成されている。
【0034】
さらに、上記補強部材26の車幅方向内方に突出する突出部26a(図6参照)と、上記リヤホイールハウス24の車幅方向内方に突出する突出部24a(図7参照)とが上下方向に連続して設けられており、これらの突出部26a,24aの角部を跨ぐように上記上方部材31,32が設けられている。
【0035】
また、図8および図9に示すように、上記第1,2ブレース材29,30の下方部材33,34は、それぞれ鋼板材を折り曲げる等により形成された前部フランジ38および断面L状の本体部39を有する前側部材40と、リヤサイドフレーム10の上面等に固定される後部フランジ41および断面逆L状の本体部42を有する後側部材43とにより構成されている。そして、上記前側部材40および後側部材43が一体に結合されることより、車幅方向外方側が開口した断面ハット型の下方部材33,34が形成されている。
【0036】
上記下方部材33,34には、その折り曲げ形成を容易化するための複数の開口部44が形成されている。図6および図8に示すように、車両の前方側に配設された上記下方部材33は、その本体部39,42が前面視で下広がりに形成されるとともに、下端部の車幅方向寸法がリヤサイドフレーム10よりも大きく設定されている。そして、後述するように、上記下方部材33,34の車幅方向内側端部が第1クロスメンバ46の上側部材48に固定されるようになっている。一方、車両の後方側に配設された上記下方部材34は、下端部の車幅方向寸法がリヤサイドフレーム10と略同一寸法に設定され、その下端部がリヤサイドフレーム10の上面に固定されている。
【0037】
上記のようにリヤホイールハウス24に予め固定されてサブアッシーされた上方部材31,32の下端部と、リヤサイドフレーム10に予め固定されてサブアッシーされた下方部材33,34の上端部とが、車体の組立時に接着または溶接される等により、上記ダンパ支持部25の前辺部および後辺部に形成された上記膨出部27,28と、上方部材31,32の本体部37からなる膨出部と、下方部材33,34の本体部39,42からなる膨出部とにより上下に連続した補強部が形成されるようになっている。
【0038】
また、図3および図10に示すように、上記ダンパ支持部25の車幅方向外面側において、車体側壁部3のアウタパネル21およびインナパネル22の間に配設された外面側補強材23は、リヤホイールハウス24の上部に対応した位置から上方に向かって延びるように設置されることにより、上記外面側補強材23の上端部が車体上部のルーフレール45に接続されている。
【0039】
上記フロアパネル1には、図9等に示すように、第1ブレース材29とリヤサイドフレーム10との結合部近傍において、左右のリヤサイドフレーム10を連結する第1クロスメンバ46が、上記キックアップ部7に沿って車幅方向に延びるように設置されている。この第1クロスメンバ46は、上記キックアップ部7の上面側に配設されてその前後に固定される前後一対のフランジ部を備えた断面ハット型の部材からなる上側部材48と、キックアップ部7の下面側に配設されてその前後に固定される前後一対のフランジ部を備えた断面逆ハット型の部材からなる下側部材49とにより構成されている。
【0040】
上記第1クロスメンバ46の上側部材48は、その左右両端部の略全体が、側面視で上記第1ブレース材29の下端部と車両の前後方向にオーバラップした状態で、上記リヤサイドフレーム10を構成する上側部材16の車内側壁面に固定されている。そして、上記上側部材48の上面および前面に第1ブレース材29の下端部がスポット溶接されるように構成されている。また、上記第1クロスメンバ46の下側部材49は、側面視でその略全体が上記上側部材48と車両の前後方向にオーバラップした状態で、リヤサイドフレーム10を構成する下側部材17の車内側壁面に固定されている。さらに、上記下側部材49の後壁面に、サブフレーム15の側方部がボトル止めされる等により固定されようになっている(図2参照)。
【0041】
上記第1クロスメンバ46の後方側には、第2ブレース材30とリヤサイドフレーム10との結合部近傍において、左右のリヤサイドフレーム10を連結する第2クロスメンバ47が、上記タイヤパン9の下面に沿って車幅方向に延びるように設置されている。上記第2クロスメンバ47は、リヤフロア部8の下面に固定される前後一対のフランジ部を備えた断面逆ハット型の部材からなり、その前辺部が、第2ブレース材30の下端後辺部と車両の前後方向にオーバラップした状態で、上記リヤサイドフレーム10を構成する下側部材17の車内側壁面に固定されている。
【0042】
上記のようにサスペンションダンパ12の上端部を支持するダンパ支持部25がリヤホイールハウス24に設けられた車両の後部車体構造において、上記リヤホイールハウス24の車内側壁面には、ダンパ支持部25の前方部とリヤサイドフレーム10とを連結する第1ブレース材29と、ダンパ支持部25の後方部とリヤサイドフレーム10とを連結する第2ブレース材30とを設けたため、簡単な構成でリヤホイールハウス24に設けられた上記ダンパ支持部25の剛性を簡単かつ効果的に向上させることができ、かつ優れた汎用性が得られるという利点がある。
【0043】
すなわち、上記リヤホイールハウス24の上部に設けられたダンパ支持部25の前辺部および後辺部からリヤサイドフレーム10の上面に向けて下方へ延びるように設置された前後一対のブレース材29,30により、上記ダンパ支持部25を効果的に補強してその内倒れ等を効果的に防止するように構成したため、従来技術のようにリヤパッケージトレイの前端部を支持する上クロスメンバを利用して後部車体の剛性を確保するように構成した場合のように対象車種がセダンタイプに限定されたり、あるいは後壁の開口周辺部分とリヤホイールハウス部の上部とを連結する連結ガセットを車両前後方向に延びるように設置した場合のように対象車種がハッチバックタイプ等に限定されたりすることがなく、優れた汎用性が得られる。
【0044】
上記のようにリヤホイールハウス24の車内側壁面に沿って第1,第2ブレース材29,30を上下方向に延びるように設置した場合には、後部荷室を使用する際の利便性を大きく損なうことなく、上記ダンパ支持部25を効果的に補強することができる。さらに、車両の走行時等に、リヤサスペンション14やサブフレーム15からの荷重の入力により、上記リヤホイールハウス24において発生した振動を第1,第2ブレース材29,30により吸収して、騒音の発生を効果的に抑制できるという利点がある。
【0045】
上記実施形態では、フロアパネル1のキックアップ部7に近接した位置に設けられた上記第1ブレース材29とリヤサイドフレーム10との結合部近傍において、左右のリヤサイドフレーム10,10を連結する第1クロスメンバ46を設けたため、サスペンションダンパ12から上記ダンパ支持部25に入力された荷重に対する支持部材として上記第1クロスメンバ46を有効に利用することができる。したがって、簡単な構成で上記ダンパ支持部25を、より効果的に補強してその内倒れを確実に防止できる等の利点がある。
【0046】
また、上記実施形態にように、第1ブレース材29の後方側に配設された第2ブレース材30とリヤサイドフレーム10との結合部近傍で、左右のリヤサイドフレーム10,10を連結する第2クロスメンバ47を設けた構造とした場合には、上記サスペンションダンパ12からダンパ支持部25に入力された荷重を、上記第2ブレース材30から第2クロスメンバ47および後部荷室に伝達することにより安定して支持することができるため、上記ダンパ支持部25の内倒れ等を、さらに効果的に防止できるという利点がある。
【0047】
特に、上記実施形態では、リヤホイールハウス24に沿って設けられた上記第2ブレース材30と、フロアパネル1に沿って設けられた上記第2クロスメンバ47との少なくとも一部を側面視で車両の前後方向にオーバラップさせるように配設したため、上記リヤサスペンション14のサスペンションダンパ12からダンパ支持部25に入力された荷重を上記第2ブレース材30から第2クロスメンバ47およびフロアパネル1に対して確実に伝達することができる。
【0048】
なお、上記第2ブレース材30と第2クロスメンバ47との略全体を側面視で車両の前後方向にオーバラップさせ、あるいは第2ブレース材30の前辺部と第2クロスメンバ47の後辺部とをオーバラップさせた構造とすることも可能である。しかし、上記実施形態に示すように、第2ブレース材30の後辺部と第2クロスメンバ47の前辺部とを側面視でオーバラップさせた構造とし、上記第1クロスメンバ46と第2クロスメンバ47との設置間隔を充分に確保するように構成した場合には、両クロスメンバ46,47により後部車体を効果的に補強できるとともに、上記リヤサスペンション14からダンパ支持部25に入力された荷重を上記第2ブレース材30から第2クロスメンバ47に対して確実に伝達できるという利点がある。また、この場合、第2ブレース材30の車両前後方向の傾きを緩やかにできるため、上記ダンパ支持部25の内倒れを効果的に防止することができる。
【0049】
また、上記実施形態に示すように、第1,第2ブレース材29,30を車幅方向外方側に開口した断面ハット型部材により形成し、上記第1,第2ブレース材29,30とリヤホイールハウス24との間に上下方向に延びる閉断面をそれぞれ形成した場合には、第1,第2ブレース材29,30の板厚を大きな値とする等の手段を講じることなく、その設置部における断面係数を充分に増大させることができる。したがって、車体重量をそれ程増大させることなく、上記リヤホイールハウス24の剛性および強度を効果的に向上させて上記ダンパ支持部25の内倒れ等を効果的に防止できるという利点がある。
【0050】
上記第1ブレース材29が設置されるリヤホイールハウス24の車室内側壁面は、図11に示すように、その後方部に比べ、前方部が車幅方向外方側に位置した傾斜面に形成されている。このため、図11の実線で示すように、上記第1ブレース材29をリヤホイールハウス24の前方側に設置した場合には、図11の破線で示すように、第1ブレース材29′を後方側に設置した場合に比べ、第1ブレース材29が有する断面二次モーメントを効果的に増大させることができる。
【0051】
例えば、図12の実線で示すように、第1ブレース材29の中間部等を車両の前方側に位置させるように設置するように構成すれば、第1ブレース材29を車室内側へ大きく突出させることなく、その設置高さを充分に確保して断面二次モーメントを効果的に増大させることができる。これにより、後部荷室の収容スペースを充分に確保しつつ、第1ブレース材29を設けることによる補強効果を充分に発揮させて上記ダンパ支持部25の内倒れ等を効果的に防止できるという利点がある。
【0052】
また、上記実施形態に示すように、リヤホイールハウス24のダンパ支持部25に車室内側へ膨出する前後一対の膨出部27,28を形成し、この膨出部27,28に連続させるように上記第1,第2ブレース材29,30を設置した場合には、ダンパ支持部25の前後両側辺部から下方に断面係数の大きい補強部を連続して設置することができる。したがって、車体重量を増大させることなく、ダンパ支持部25の前後両側辺部を効果的に補強することができるとともに、サスペンションダンパ12から上記ダンパ支持部25に入力された荷重を第1,第2ブレース材29,30により車体側壁部3およびリヤサイドフレーム10に効率よく伝達して支持することができるという利点がある。また、上記ダンパ支持部25による車体側壁部3への荷重伝達を効率よく行って、車体側壁部3による荷重の分散支持を効果的に行うことができる。
【0053】
上記実施形態では、ダンパ支持部25を補強する補強部材26を設けるとともに、この補強部材26に上記第1,第2ブレース材29,30の上部を接続したため、この第1,第2ブレース材29,30の上部を上記ダンパ支持部25と補強部材26とで挟持した状態で強固に連結することができる。この構成により、上記ダンパ支持部25にサスペンションダンパ12を安定して支持させることができるとともに、このサスペンションダンパ12からダンパ支持部25および補強部材26に入力された荷重を第1,第2ブレース材29,30に効果的に伝達して支持できるという利点がある。
【0054】
また、上記実施形態に示すように、ダンパ支持部25の車幅方向外面側に、リヤホイールハウス24の上部に対応した位置から上方に向かって延びるように外面側補強材23を設置した場合には、上記サスペンションダンパ12からダンパ支持部25に入力される荷重を、上記外面側補強材23から側壁上部のルーフレール45に伝達することにより、さらに効果的に支持することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 リヤサイドフレーム
12 サスペンションダンパ
23 補強部材
24 リヤホイールハウス
25 ダンパ支持部
27,28 膨出部
29 第1ブレース材
30 第2ブレース材
46 第1クロスメンバ
47 第2クロスメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションダンパの上端部を支持するダンパ支持部がリヤホイールハウスに設けられた車両の後部車体構造において、上記リヤホイールハウスの車内側壁面には、ダンパ支持部の前方部とリヤサイドフレームとを連結する第1ブレース材と、ダンパ支持部の後方部とリヤサイドフレームとを連結する第2ブレース材とが設けられたことを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記第1ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第1クロスメンバが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記第2ブレース材とリヤサイドフレームとの結合部近傍で、左右のリヤサイドフレームを連結する第2クロスメンバが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
第2ブレース材と第2クロスメンバとの少なくとも一部が側面視で車両の前後方向にオーバラップするように配設されたことを特徴とする請求項3に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記第1,第2ブレース材が車幅方向外方側に開口した断面ハット型部材により形成され、上記第1,第2ブレース材とリヤホイールハウスとの間に上下方向に延びる閉断面がそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記リヤホイールハウスのダンパ支持部に車室内側へ膨出した膨出部が前後に形成され、この膨出部に上記第1,第2ブレース材がそれぞれ連続するように設置されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
上記ダンパ支持部を補強する補強部材を備えるとともに、この補強部材に上記第1,第2ブレース材上部が接続されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項8】
上記ダンパ支持部の車幅方向外面側には、リヤホイールハウスの上部に対応した位置から上方に向かって延びる外面側補強材が設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−131796(P2011−131796A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294370(P2009−294370)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】