説明

車両の後部車体構造

【課題】ルーフ部材の全開状態における後突時にリンク部材で後突荷重を突っ張り、既存の部品を有効利用して荷重伝達経路を形成し、衝突荷重を効率的に分散させ、車体剛性の向上を図る車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】ルーフ部材4を開閉可能に支持するリンク部材A〜Eと、後輪を収容するリヤホイールハウス30とを設け、ルーフ部材4が全開状態の時、リンク部材Aとリヤホイールハウス30とを係合する結合機構31,50を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の上方に配設され開閉可能に支持されたルーフ部材と、乗員用シートの後方に配設され上記ルーフ部材を格納する格納スペースとを備えたオープンカーのような車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にオープンルーフ構造の車両は、車室上方に開閉可能に配設されたルーフ部材を、車両の前後方向に複数に分割し、この分割されたルーフ部材で車室上方を覆うルーフ閉鎖状態と、分割された複数のルーフ部材を、乗員用シートのシートバックとトランクルームとの間の格納スペースに格納するルーフ開放状態(オープン状態)と、を選択できるように構成されている。
【0003】
ルーフ部材の閉鎖状態で後突荷重が入力された場合には、この荷重はトランクリッドからルーフレインに伝達され、このルーフレインからフロントピラー等の車体強度部材に伝達され、衝突荷重の分散を図ることができるので、特に問題はないが、上述のルーフ部材を格納スペースに格納した時には、後突荷重を突張って分散させる構成がないので、オープンルーフ時に後突荷重を分散させる荷重伝達経路(いわゆるロードパス)の形式が要請されている。
【0004】
ところで、特許文献1、2にはオープンルーフ構造の車両が開示されており、このオープンルーフ構造はその何れもがルーフ部材を、フロントルーフとバックルーフとデッキリッドとに3分割し、これら3分割された各要素を多数のリンクおよび駆動源としてのモータを用いてルーフ閉鎖状態とルーフ開放状態とを得るように構成したものである。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に開示された従来構造においては、オープンルーフ時に後突荷重を分散させる荷重伝達経路を設けるという技術思想については、全く開示されておらず、その示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−261405号公報
【特許文献2】特開2007−261412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、ルーフ部材を開閉可能に支持するリンク部材と、後輪を収容するリヤホイールハウスとを設け、上記ルーフ部材が全開状態の時、上記リンク部材と上記リヤホイールハウスとを係合する結合機構を備えることで、ルーフ部材の全開状態における後突時にリンク部材で後突荷重を突っ張り、既存の部品を有効利用して荷重伝達経路を形成し、衝突荷重を効率的に分散させ、車体剛性の向上を図ることができる車両の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による車両の後部車体構造は、車室の上方に配設され開閉可能に支持されたルーフ部材と、乗員用シートの後方に配設され上記ルーフ部材を格納する格納スペースと、を備えた車両の後部車体構造であって、上記ルーフ部材を開閉可能に支持するリンク部材と、後輪を収容するリヤホイールハウスとを設け、上記ルーフ部材が全開状態の時、上記リンク部材と上記リヤホイールハウスとを係合する結合機構を備えたものである。
上述の結合機構としては、ラッチおよびストライカを用いてもよい。
【0009】
上記構成によれば、ルーフ部材が全開状態(オープン状態)の時、結合機構が上記リンク部材とリヤホイールハウスとを係合するので、ルーフ部材の全開状態における後突時に、上記リンク部材の車幅方向および前後方向の折り曲がりを規制することで、上記リンク部材で後突荷重を突っ張ることができ、既存の部品を有効利用して前後方向の荷重伝達経路(いわゆるロードパス)を形成することができる。
これにより、衝突荷重を効率的に分散させることができ、車体剛性の向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記結合機構は、車幅方向の左右双方に配設されたものである。
上記構成によれば、リンク部材とリヤホイールハウスとを係合する結合機構が、車幅方向の左右双方に位置するので、オフセット衝突や如何なる方向からの後突時においても荷重伝達経路により、後突荷重を効率的に分散させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記結合機構は、上記ルーフ部材の開閉に連動して結合または結合解除されるものである。
上記構成によれば、ルーフ部材の開閉と、結合機構の結合または結合解除(つまり、ロック,アンロック)とが連動するので、ルーフ部材の開閉を容易に行なうことができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記結合機構を有するリヤホイールハウスの一部が、ルーフ部材全開時のリンク部材に近接する位置まで突出するよう突出部が設けられたものである。
上記構成によれば、リヤホイールハウスの一部に突出部を設けたので、別部材を用いることなく、結合機構によるリンク部材とリヤホイールハウスとの係合を行なうことができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記ルーフ部材全開時のリンク部材の下方には燃料タンクが配設されており、該燃料タンクは、少なくともルーフ部材全開時におけるリンク部材の後端よりも車両前方に配設されたものである。
上記構成によれば、燃料タンクを、少なくともルーフ部材全開時のリンク部材後端よりも前方に配設したので、車両の後突時に燃料タンクを保護することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ルーフ部材を開閉可能に支持するリンク部材と、後輪を収容するリヤホイールハウスとを設け、上記ルーフ部材が全開状態の時、上記リンク部材と上記リヤホイールハウスとを係合する結合機構を備えたので、ルーフ部材の全開状態における後突時にリンク部材で後突荷重を突っ張り、既存の部品を有効利用して荷重伝達経路を形成し、衝突荷重を効率的に分散させ、車体剛性の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両の後部車体構造を示す側面図
【図2】図1の要部拡大側面図
【図3】ルーフ部材およびその駆動機構を示す斜視図
【図4】リヤルーフの格納中途状態を示す側面図
【図5】リヤルーフの格納中途状態を示す側面図
【図6】リヤルーフの格納状態を示す側面図
【図7】ルーフ部材の全開状態を示す側面図
【図8】車両の後部車体構造の他の実施例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
ルーフ部材の全開状態における後突時にリンク部材で後突荷重を突っ張り、既存の部品を有効利用して荷重伝達経路を形成し、衝突荷重を効率的に分散させ、車体剛性の向上を図るという目的を、車室の上方に配設され開閉可能に支持されたルーフ部材と、乗員用シートの後方に配設され上記ルーフ部材を格納する格納スペースと、を備えた車両の後部車体構造において、上記ルーフ部材を開閉可能に支持するリンク部材と、後輪を収容するリヤホイールハウスとを設け、上記ルーフ部材が全開状態の時、上記リンク部材と上記リヤホイールハウスとを係合する結合機構を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の後部車体構造を示し、図1はオープンカーの側面図、図2は図1の要部拡大側面図であって、図1、図2において、このオープンカーは、車幅方向に延びて車室1前部のフロントウインドガラス2(フロントウインド部材)の上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダ3と、このフロントヘッダ3の後方に連なって車室1上部を形成するルーフ部材4とが設けられており、ルーフ材4は、フロントルーフ5とリヤルーフ6とに前後方向に2分割されている。
上述のルーフ部材4は開閉可能に構成されており、この実施例では、フロントルーフ5およびリヤルーフ6は共にハードルーフ部材にて形成されている。
【0018】
上述のフロントヘッダ3は、フロントヘッダアウタ3aとフロントヘッダインナ3bとを接合固定して、車幅方向に延びるヘッダ閉断面3cを備えた強度部材であって、このフロントヘッダ3の左右両端部は、車両前後斜め方向に延びる閉断面構造のフロントピラー(図示せず)を介して車両の上下方向に延びる閉断面構造のヒンジピラー(図示せず)に連結されている。これらフロントピラーおよびヒンジピラーは何れも車体剛性部材である。
【0019】
一方、車室1の底面を構成し、ほぼ水平に配設されたフロアパネル7を設け、このフロアパネル7の後部には、斜め後方かつ上方に立上がるキックアップ部8を介して、リヤフロア9を略水平に連設し、このリヤフロア9には上方に立上がるリヤバルクヘッド10を立設固定すると共に、このリヤバルクヘッド10の上部にはリヤデッキメンバ11を接合固定して、リヤバルクヘッド10とリヤデッキメンバ11との間には車幅方向に延びるリヤデッキ閉断面12を形成して、車体剛性の向上を図っている。
【0020】
また、上述のリヤフロア9の後部かつ、車幅方向中間部には、下方に凹設されたスペアタイヤパン13を一体形成し、このスペアタイヤパン13には図示しないスペアタイヤを格納するように構成している。
さらに、上述のリヤフロア9の後端部には、上下方向に延びるリヤエンドパネル14を一体的に立設固定し、このリヤエンドパネル14の上部車外側つまり後部側には、車幅方向に延びるリヤエンドメンバ15を接合固定し、該リヤエンドメンバ15とリヤエンドパネル14との間には、車幅方向に延びるリヤエンド閉断面16を形成し、この閉断面構造により後部車体剛性の向上を図っている。
【0021】
一方、リヤバルクヘッド10の後方側を荷室、つまりトランクルーム17に設定している。
このトランクルーム17の上部は、トランクリッド18により開閉可能に覆われている。
【0022】
また、上述のリヤバルクヘッド10の前方側はルーフ格納空間19に設定されている。詳しくは、後述する乗員用シートのシートバックと、リヤフロア9と、リヤバルクヘッド10と、リヤサイドパネルとの間に、ルーフ部材4が開放した時、該ルーフ部材4を格納するルーフ格納空間19いわゆるルーフ格納スペースが設けられたものである。
【0023】
ところで、上述のフロアパネル7には、前後方向に離間配置された複数のシートブラケット20,21(または、クロスメンバ)を介して、乗員が着座するシート22(乗員用シート)を設けている。この乗員用シート22は、シートクッション22Cと、ヘッドレスト部22Hが一体に形成されたシートバック22Bとを備えている。なお、この車両はドライバーズシートとパッセンジャーズシートとを備えた2人乗り用(いわゆる2シーター)に構成されている。なお、乗員用シート22としては、ヘッドレスト部がシートバックに対して別体で形成されたものでもよい。
ここで、上述のフロントヘッダ3は、車室1内に配設された乗員用シート22の前方にて車幅方向に延び、車室1前部のフロントウインドガラス2の上辺を支持する閉断面構造の強度部材である。
【0024】
一方、上述のキックアップ部8の背面と、リヤフロア9の前部下面との間には、車幅方向の略全幅にわたって延びるリヤクロスメンバ23を取付け、これらキックアップ部8、リヤフロア9、リヤクロスメンバ23間には、車幅方向に延びる閉断面24を形成し、この閉断面構造により下部車体剛性の向上を図っている。
【0025】
さらに、上記リヤクロスメンバ23よりも後方においてリヤフロア9の下面には、車幅方向に延びる別のリヤクロスメンバ25を取付け、リヤフロア9と該リヤクロスメンバ25との間には、車幅方向に延びる閉断面26を形成し、この閉断面構造により下部車体剛性の向上を図り、また、該リヤクロスメンバ25の下部に、図示しないサブフレームを取付けるように構成している。
【0026】
また、図1に示すように、車室1の側方には乗員乗降用のドア27が開閉可能に設けられている。このドア27は、ドアインナパネルとドアアウタパネルとをヘミング接合したもので、該ドア27の内部には車両の前後方向に延びるドアインパクトバー28,29が取付けられている。これらの各ドアインパクトバー28,29は側突時にドア27が車室側へ侵入するのを防止して、乗員を保護するための剛性部材である。
【0027】
一方、図1、図2に示すように、後輪(図示せず)を収容するリヤホイールハウスインナ30を設け、このリヤホイールハウスインナ30の一部が、後述するルーフ部材4全開時のリンクAに近接する位置まで突出するように突出部30aを設けている。そして、この突出部30aの上端部には結合機構の一方を構成するストライカ31を取付けている。
【0028】
また、上述のキックアップ部8の後方で、かつリヤフロア9の下方には、燃料タンク32が配設されている。この燃料タンク32は、ルーフ部材4全開時のリンクAの下方に位置するように配設されたもので、しかも、該燃料タンク32は、少なくともルーフ部材4の全開時(図7参照)におけるリンクAの後端よりも車両前方に配設されたものである。
【0029】
次に、図2〜図7を参照して、車両の後部車体構造および可動ルーフ構造について詳述する。
この実施例では、図2、図3に示すように、フロントルーフ5およびリヤルーフ6を共に閉状態とする全閉モードと、図7に示すように、フロントルーフ5およびリヤルーフ6を共に開放し、リヤルーフ6をルーフ格納空間19内に格納し、フロントルーフ5をリヤデッキメンバ11の上面およびトランクリッド18の上面と略フラットになる位置に格納する全開モード(フルオープンモード)と、を備えている。
【0030】
図2、図3に示すように、フロントルーフ5はルーフアウタパネル5aとルーフインナパネル5bとを有すると共に、該フロントルーフ5の前部にはルーフクローズ時に該フロントルーフ5をフロントヘッダ3に係止するためのフック33を備えている。
図3はルーフ部材4を車幅方向の中央で断面して示す斜視図であって、上述のフック33はフロントルーフ5の前部に左右一対設けられている。
図2、図3に示すように、リヤルーフ6はルーフアウタパネル6aとルーフインナパネル6bとバックウインドガラス6cとを有する。
【0031】
図7に示すように、フロントルーフ5の前後方向の長さは、ルーフ格納空間19の前後方向の長さと略同一になる位置で分割されており、図7に示す全開モード時には、フロントルーフ5でルーフ格納空間19の上面を略水平に覆うように構成し、全開モード時の見栄えを確保すべく構成している。
【0032】
また、図2に示すように、フロントルーフ5の前後方向の長さと比較して、リヤルーフ6の前後方向の長さを大きくした場合においても、両ルーフ5,6をルーフ格納空間19に確実に格納すべく構成している。
さらに、図2に示すように、リヤルーフ6は、乗員用シート22の後方(詳しくは、リヤデッキメンバ11の前端部よりも前方の位置)から、該シート22を構成するシートバック22Bの上方まで配設されている。
【0033】
上述のフロントルーフ5およびリヤルーフ6は全閉モード(図2、図3参照)と、全開モード(図7参照)とに移動可能に構成されているので、次に、これらフロントルーフ5、リヤルーフ6を駆動する駆動機構について説明する。
この駆動機構34は、図2、図3に示すモータユニット35と、複数のリンクA,B,C,D,Eとを備えている。
【0034】
上述のモータユニット35は、直流可逆モータ36の回転軸37にウオームを一体的に設け、このウオームに噛合するウオームホイールと、ウオームホイールにより駆動されるピニオンと、ピニオンにより駆動される出力ギヤ38とを備え、この出力ギヤ38により上述のリンクA,B,C,D,Eを駆動すべく構成している。
【0035】
上述のリンクAの遊端はフロントルーフ5の側壁後部にピン39連結されており、このピン39は、図2、図7に示すフロントルーフ5とリンクAとの所定の角度を得る目的で、図示しないモータにより適宜駆動されるように構成している。
【0036】
また、上述のリンクBの遊端にはピン40を介してリンクCの基端がピン連結されており、このリンクCの遊端はリヤルーフ6の側壁部にピン41連結されている。
さらに、上述のリンクDの遊端にはピン42を介してリンクEの基端がピン連結されており、このリンクEの遊端はリヤルーフ6の側壁部のピン43に連結されている。
【0037】
さらにまた、上述の出力ギヤ38の下方部には、リンクDの動きを規制するストッパ44が設けられている。
そして、上述の各要素35〜44、A〜Eから成る駆動機構34が左右一対設けられており、左右の各駆動機構34,34が略左右対称構造に形成されると共に、左右のモータ36,36(但し、図面では車両右側のモータ36のみを図示)は同期駆動するように構成されている。
【0038】
ここで、上述のフロントルーフ5を支持するリンクAは、リヤルーフ6を支持する他のリンクB,C,D,Eに対して、車幅方向内側に位置すると共に、リヤルーフ6を支持する各リンクB,C,D,Eはフロントルーフ5の側壁部に対して、車幅方向外側に位置するように形成されている。
【0039】
また、左右一対のリンクA,Aにおける遊端部相互間には、図1、図3に示すように、車幅方向に延びてフロントルーフ5の下部を支持するルーフストラットバー45を設けている。なお、図2、図4〜図7においては便宜上、ルーフストラットバー45の図示を省略している。
【0040】
しかも、上述のリンクAの上下方向の中間部には、結合機構の他方を構成するラッチ50を取付け、図7に示すように、ルーフ部材4が全開状態(フルオープンモード)となった時、ラッチ50でストライカ31を係合して、リンクAとリヤホイールハウスインナ30とを係合するように構成している。
上述のラッチ50およびストライカ31から成る結合機構は、車幅方向の左右双方に設けられている。また、ラッチ50およびストライカ31から成る結合機構は、ルーフ部材4の開閉に連動して結合または結合解除されるものである。
【0041】
このように構成した車両の後部車体構造の作用について以下に詳述する。
まず、図2に示す全閉モードから図7に示す全開モード(フルオープンモード)と成す場合について説明する。
【0042】
インストルメントパネルに設けた図示しない全開モードスイッチをON操作すると、モータユニット35のモータ36が駆動し、出力ギヤ38がリンクB,Dのみを駆動するので、これら各リンクB,DがリンクC,Eを伴ってリヤルーフ格納方向へ移動するので、図2に示す状態から図4に示すようにリヤルーフ6はその後部が下方に移動して格納が開始される。
【0043】
図4に示す状態から各リンクB,Dがさらに回動し、リンクDがストッパ44に当接すると、リヤルーフ6の回転半径は出力ギヤ38の中心とピン43とを結ぶ長さからピン42,43間の長さに短縮され、かつリンクB,Cで格納方向へ押圧されるので、リヤルーフ6は短縮された旋回半径にて回動し、図6に示す格納位置に格納される。このため、リヤルーフ6とリヤフロア9との干渉を回避することができる。
【0044】
次に出力ギヤ38はリンクAのみを駆動するので、このリンクAの後方回転によりフロントルーフ5が後方かつ下方に移動して、図6の状態から図7に示すようにフロントルーフ5はルーフ格納空間19の上方を略水平に覆って、全開モードとなる。
【0045】
この全開モード時には、フロントルーフ5は、リヤデッキメンバ11およびトランクリッド18と略フラットになるので、フロントルーフ5格納時の見栄えが良好となる。また、上述のリヤルーフ6の格納時にバックウインドガラス6cは該リヤルーフ6と一体的に移動するので、駆動機構34の簡略化を図ることができる。
【0046】
しかも、図7に示すように、ルーフ部材4が全開状態となった時には、リンクAのラッチ50で、リヤホイールハウスインナ30上端部のストライカ31を係合するので、リンクAとリヤホイールハウスインナ30とが結合機構(ラッチ50、ストライカ31参照)にて係合される。
このため、図7に示すルーフ部材4の全開状態における後突時には、リンクAで後突荷重を突っ張ることができ、既存の部品を有効利用して荷重伝達経路を形成することができる。
【0047】
後突時には、その荷重入力によりトランクリッド18がリヤデッキメンバ11に当接すると共に、該リヤデッキメンバ11がフロントルーフ5に当接するので、各要素18,11,5,A,50,31,30の順に荷重を伝達する経路と、図示しないリヤサイドフレームから各要素9,30,31,50,A,5の順に荷重を伝達する経路とが形成され、これにより、衝突荷重を効率的に分散させることができ、車体剛性の向上を図ることができる。
【0048】
また、図7に示すルーフ部材4の全開時には、ラッチ50とストライカ31との係合構造に加えて、左右のリンクA,A間をルーフストラットバー45(図1、図3参照)で連結しているので、左右のリヤホイールハウスからの路面入力に対するボディ変形を抑止することができる。
【0049】
ところで、図7で示す全開モードから、インストルメントパネルに設けた図示しない全閉モードスイッチをON操作すると、フロントルーフ5およびリヤルーフ6は駆動機構34の駆動により図2に示す全閉モードになるように構成されている。
この場合、上述の全閉モードスイッチのON時には、ラッチ50によるストライカ31の係合が自動的に解除されるようになっている。
【0050】
図1〜図7で示した実施例においては、リンクAにラッチ50を取付け、リヤホイールハウスインナ30にストライカ31を取付けたが、図8に示すように、リンクAにストライカ31を取付け、リヤホイールハウスインナ30の突出部30aにラッチ50を取付ける構成を採用してもよい。なお、図8において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0051】
このように、図1〜図8で示した実施例の車両の後部車体構造は、車室1の上方に配設され開閉可能に支持されたルーフ部材4と、乗員用シート22の後方に配設され上記ルーフ部材4を格納する格納スペース(ルーフ格納空間19参照)と、を備えた車両の後部車体構造であって、上記ルーフ部材4を開閉可能に支持するリンク部材(リンクA〜E参照)と、後輪を収容するリヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30参照)とを設け、上記ルーフ部材4が全開状態の時、上記リンク部材(リンクA参照)と上記リヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30参照)とを係合する結合機構(ラッチ50,ストライカ31参照)を備えたものである(図2、図7参照)。
【0052】
上記構成によれば、ルーフ部材4が全開状態(オープン状態)の時、結合機構(ラッチ50,ストライカ31参照)が上記リンク部材(リンクA参照)とリヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30)とを係合するので、ルーフ部材4の全開状態における後突時に、上記リンク部材の車幅方向および前後方向の折れ曲がりを規制することで、上記リンク部材(リンクA)で後突荷重を突っ張ることができ、既存の部品を有効利用して前後方向の荷重伝達経路(いわゆるロードパス)を形成することができる。
これにより、衝突荷重を効率的に分散させることができ、車体剛性の向上を図ることができる。
【0053】
また、上記結合機構(ラッチ50、ストライカ31参照)は、車幅方向の左右双方に配設されたものである。
この構成によれば、リンク部材(リンクA参照)とリヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30)とを係合する結合機構(ラッチ50,ストライカ31)が、車幅方向の左右双方に位置するので、オフセット衝突や如何なる方向からの後突時においても荷重伝達経路により、後突荷重を効率的に分散させることができる。
【0054】
さらに、上記結合機構(ラッチ50、ストライカ31参照)は、上記ルーフ部材4の開閉に連動して結合または結合解除されるものである。
この構成によれば、ルーフ部材4の開閉と、結合機構(ラッチ50、ストライカ31参照)の結合または結合解除(つまり、ロック,アンロック)とが連動するので、ルーフ部材4の開閉を容易に行なうことができる。
【0055】
さらにまた、上記結合機構(ラッチ50、ストライカ31参照)を有するリヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30)の一部が、ルーフ部材4全開時のリンク部材(リンクA参照)に近接する位置まで突出するよう突出部30aが設けられたものである(図7参照)。
この構成によれば、リヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30)の一部に突出部30aを設けたので、別部材を用いることなく、結合機構(ラッチ50,ストライカ31)によるリンク部材(リンクA)とリヤホイールハウス(リヤホイールハウスインナ30)との係合を行なうことができる。
【0056】
加えて、上記ルーフ部材4全開時のリンク部材(リンクA参照)の下方には燃料タンク32が配設されており、該燃料タンク32は、少なくともルーフ部材4全開時におけるリンク部材(リンクA参照)の後端よりも車両前方に配設されたものである(図7参照)。
この構成によれば、燃料タンク32を、少なくともルーフ部材4全開時のリンク部材(リンクA参照)後端よりも前方に配設したので、車両の後突時に燃料タンク32を保護することができる。
【0057】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の格納スペースは、実施例のルーフ格納空間19に対応し、
以下同様に、
リンク部材は、リンクA〜Eに対応し、
リヤホイールハウスは、リヤホイールハウスインナ30に対応し、
結合機構は、ラッチ50、ストライカ31に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
1…車室
4…ルーフ部材
19…ルーフ格納空間(格納スペース)
22…乗員用シート
30…リヤホイールハウスインナ(リヤホイールハウス)
30a…突出部
31…ストライカ(結合機構)
32…燃料タンク
50…ラッチ(結合機構)
A〜E…リンク(リンク部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の上方に配設され開閉可能に支持されたルーフ部材と、
乗員用シートの後方に配設され上記ルーフ部材を格納する格納スペースと、を備えた
車両の後部車体構造であって、
上記ルーフ部材を開閉可能に支持するリンク部材と、
後輪を収容するリヤホイールハウスとを設け、
上記ルーフ部材が全開状態の時、上記リンク部材と上記リヤホイールハウスとを係合する
結合機構を備えた
車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記結合機構は、車幅方向の左右双方に配設された
請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記結合機構は、上記ルーフ部材の開閉に連動して結合または結合解除される
請求項1または2記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
上記結合機構を有するリヤホイールハウスの一部が、ルーフ部材全開時のリンク部材に近接する位置まで突出するよう突出部が設けられた
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記ルーフ部材全開時のリンク部材の下方には燃料タンクが配設されており、
該燃料タンクは、少なくともルーフ部材全開時におけるリンク部材の後端よりも車両前方に配設された
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101770(P2012−101770A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254413(P2010−254413)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】