説明

車両の折戸ドア装置

【課題】本発明は、乗降口を開く際に折戸ドアを完全に折り畳めるようにして、全開時の乗降口の開口幅を極力広くできるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両の折戸ドア装置は、縦に折り畳み可能なドアで、幅方向一端側がヒンジ機構11により車両の乗降口4hの前端側に水平回転可能な状態で連結され、後端側が乗降口4hの幅方向に延びるガイド溝に沿って移動可能なように、そのガイド溝に係合している折戸ドア10と、その折戸ドア10を折り畳み、あるいは展開させることで、乗降口4hを開閉するドア駆動ユニット20とを備える車両の折戸ドア装置であって、ドア駆動ユニット20は、ガイド溝に沿って移動可能に構成された可動部27と、可動部27を前記ガイド溝に沿って移動させる駆動ユニット本体22,24,25とを有しており、可動部27が折戸ドアの後端側に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折戸ドアが折り畳まれ、あるいは展開されることで乗降口が開閉される構成の車両の折戸ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する従来の車両の折戸ドア装置が特許文献1に記載されている。
前記車両の折戸ドア装置は、図11(A)(B)に示すように、前側ドア片112と後側ドア片114とから構成された折戸ドア110を備えている。そして、図11(B)の平面図に示すように、前側ドア片112の前端位置がヒンジ機構112jにより乗降口105の前端側に水平回転可能な状態で連結されている。また、後側ドア片114の後端位置に設けられた軸部114jが乗降口105の幅方向(前後方向)に延びる天井部ガイド溝103に係合している。また、折戸ドア110の前側ドア片112には、図11(A)に示すように、室内側の下部中央位置にドア駆動ユニット107のリンク機構108が連結されている。
【0003】
これにより、ドア駆動ユニット107が前側ドア片112を引っ張る方向に動作することで、前側ドア片112がヒンジ機構112jのヒンジピンを中心に左回動し、後側ドア片114の軸部114jが天井部ガイド溝103に沿って前方に移動する(図11(B)参照)。これにより、折戸ドア110が折り畳まれて、乗降口105が開放される。
また、ドア駆動ユニット107が前側ドア片112を押圧する方向に動作することで、前側ドア片112がヒンジ機構112jのヒンジピンを中心に右回動し、後側ドア片114の軸部114jが天井部ガイド溝103に沿って後方に移動する。これにより、折戸ドア110が展開されて、乗降口105が閉鎖される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−49458号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両の折戸ドア装置では、折戸ドア110の前側ドア片112をドア駆動ユニット107のリンク機構108により押圧することで、その折戸ドア110を展開する構成である。このため、折戸ドア110をスムーズに展開させるためには、図11(B)に示すように、全開位置で折戸ドア110の畳み角θを確保しておく必要がある。即ち、折戸ドア110を完全に折り畳まない状態にしておく必要がある。
仮に、畳み角θを零にした場合、即ち、全開位置で折戸ドア110を完全に折り畳んだ場合、図11(C)に示すように、ドア駆動ユニット107が前側ドア片112を押圧する際に、後側ドア片114が軸部114jを中心に回転して、折戸ドア110が展開不能となることがある(2点鎖線参照)。したがって、折戸ドア110を確実に展開させるためには、折戸ドア110を完全に折り畳まずに前側ドア片112と後側ドア片114との成す角(畳み角θ)を確保しておく必要がある。
このように、全開位置で折戸ドア110を完全に折り畳むことができないため、乗降口の開口幅が狭められるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗降口を開く際に折戸ドアを完全に折り畳めるようにして、全開時の乗降口の開口幅を極力広くできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、縦に折り畳み可能なドアで、幅方向一端側がヒンジ機構により車両の乗降口の幅方向一端側に水平回転可能な状態で連結され、幅方向他端側が前記乗降口の幅方向に延びるガイド溝に沿って移動可能なように、そのガイド溝に係合している折戸ドアと、その折戸ドアを折り畳み、あるいは展開させることで、前記乗降口を開閉するドア駆動ユニットとを備える車両の折戸ドア装置であって、前記ドア駆動ユニットは、前記ガイド溝に沿って移動可能に構成された可動部と、前記可動部を前記ガイド溝に沿って移動させる駆動ユニット本体とを有しており、前記可動部が前記折戸ドアの幅方向他端側に連結されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、ドア駆動ユニットの可動部が乗降口の幅方向に延びるガイド溝に沿って移動可能な構成で、その可動部に折戸ドアの幅方向他端側が連結されている。このため、折戸ドアの幅方向他端側がドア駆動ユニットの力を受けて、そのドア駆動ユニットの可動部と共にガイド溝に沿って移動できるようになる。したがって、例えば、折戸ドアが完全に折り畳まれても、展開時に折戸ドアが幅方向他端側を中心に回動して展開不能になるような不具合は生じない。
即ち、折戸ドアを完全に折り畳んで乗降口を全開にできるため、乗降口の全開時の開口幅を広くできる。
【0009】
請求項2の発明によると、折戸ドアがドア駆動ユニットの動作により展開させられて乗降口を閉じた状態で、その折戸ドアを前記乗降口の全閉位置方向に押圧するドア閉ロック機構を備えていることを特徴とする。
このため、ドア駆動ユニットは、折戸ドアを展開させるのに必要な動力があれば良く、折戸ドアをウェザーストリップ(乗降口周縁のシール材)の弾性力に抗して閉めきるための動力は不要になる。即ち、折戸ドアを閉めきるための動力をドア閉ロック機構側に持たせられるようになる。したがって、ドア駆動ユニットの動力を必要最小限に抑えることができる。
【0010】
請求項3の発明によると、ガイド溝とドア駆動ユニットとは、乗降口の天井部分に設けられていることを特徴とする。
このため、ガイド溝とドア駆動ユニットが乗降の邪魔にならない。
請求項4の発明によると、駆動ユニット本体は、滑車と、前記滑車に掛けられることで、前記ガイド溝に沿う無限軌道状に構成されている紐状部材と、前記滑車が正転、あるいは逆転するように前記紐状部材を移動させる駆動装置とを有しており、可動部が前記紐状部材の所定位置に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明によると、ドア閉ロック機構は、折戸ドアの上端部に設けられたロック爪と、乗降口の天井部分に設けられ、前記ロック爪と係合不能な待機位置と、前記ロック爪と係合し、そのロック爪を全閉位置方向に押圧可能なロック位置との間で移動できるように構成されたストライカと、前記ストライカを前記待機位置とロック位置間で移動させるストライカ駆動機構とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、乗降口を開く際に折戸ドアを完全に折り畳むことができるため、全開時の乗降口の開口幅を極力広くできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両の折戸ドア装置を備える小型バスの模式斜視図である。
【図2】前記小型バスの折戸ドアを車室外から見た正面図(A図)、A図のB-B矢視断面図(B図)である。
【図3】前記折戸ドアの全閉状態(展開状態)を表す平面図である。
【図4】前記折戸ドアの全開途中状態(折り畳み途中状態)を表す平面図である。
【図5】本実施形態に係る車両の折戸ドア装置のドア閉ロック機構を表す側面図である。
【図6】折戸ドアの展開途中とドア駆動ユニットを表す模式斜視図である。
【図7】図6のVII-VII矢視断面図である。
【図8】図6のVIII-VIII矢視断面図である。
【図9】図6のIX-IX矢視断面図である。
【図10】ドア閉ロック機構のストライカユニットを表す縦断面図である。
【図11】従来の折戸ドア装置を表す模式斜視図(A図)、折戸ドアの全開状態を表す平面図(B図)、折戸ドアを閉じようとする際の展開不能状態を表す平面図(C図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、図1から図10に基づいて本発明の実施形態1に係る車両の折戸ドア装置について説明する。ここで、本実施形態は、本発明を小型バスの折戸ドア装置に適用したものであり、図中における前後左右及び上下は、前記小型バスの前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<折戸ドア10の概要について>
前記小型バス3の車体4には、図1に示すように、左側の中央前寄りの位置に乗客が乗り降りするための乗降口4hが形成されており、その乗降口4hが折戸ドア10によって開閉されるように構成されている。
折戸ドア10は、図2(A)の車外側正面図に示すように、縦に長い長方形状に形成された前側ドア片12と後側ドア片14とを備えており、その前側ドア片12の後端部と後側ドア片14の前端部とが上部、中央部、及び下部に設けられたヒンジ機構13u,13m,13dによって水平回動可能な状態で連結されている。また、前側ドア片12の前端上下には、その前側ドア片12を水平回動可能な状態で乗降口4hの前端位置(前部支柱5(図3、図4参照)の近傍)に連結する主ヒンジ機構11のヒンジピン11pが上下に一定寸法だけ突出した状態で取付けられている。さらに、乗降口4hの天井部分には、図4、図5、図9等に示すように、乗降口4hの両側に設けられた前部支柱5から後部支柱6までその乗降口4hの幅方向(前後方向)に延びるガイド溝7が設けられている。そして、そのガイド溝7に後側ドア片14の後端上部に設けられたガイドピン14pの転動ローラ15が、図9等に示すように、前記ガイド溝7に沿って移動可能なように収納されている。
【0016】
上記構成により、手動で乗降口4hを開放する場合には、図2(A)において折戸ドア10の操作ハンドル10hを押し込む方向に操作する。これにより、折戸ドア10の前側ドア片12がヒンジピン11pを中心に室内側に回動(図3において左回動)し、後側ドア片14が前側ドア片12に引っ張られて、その前側ドア片12に重なる方向に回動する。これにより、図4に示すように、折戸ドア10が折り畳まれて、乗降口4hが開放される。
また、図4に示す開放位置で折戸ドア10を室内側から押圧する方向に操作すると、前側ドア片12がヒンジピン11pを中心に車外側に回動(右回動)することで、後側ドア片14が前側ドア片12に押されて、その前側ドア片12と連続する方向に回動する。これにより、図3に示すように、折戸ドア10が展開して、乗降口4hが閉じられる。
また、車体4の乗降口4hの天井部分には、図6等に示すように、折戸ドア10を自動で開閉するためのドア駆動ユニット20がガイド溝7に沿って設けられている。なお、図6ではガイド溝7は省略されている。
さらに、折戸ドア10(前側ドア片12)の室内側の上部と乗降口4hの天井部分とには、折戸ドア10が全閉近傍位置にあるときに、その折戸ドア10を全閉位置まで移動させて閉めきり、さらにこの位置でロックするドア閉ロック機構30が設けられている(図5等参照)。
【0017】
<ドア駆動ユニット20について>
ドア駆動ユニット20は、折戸ドア10の後端上部(ガイドピン14p、転動ローラ15)を乗降口4hのガイド溝7に沿って前進、あるいは後進させることで、折戸ドア10を自動で折り畳み、あるいは展開するための装置である。ドア駆動ユニット20は、図6に示すように、乗降口4hのガイド溝7に沿って無限軌道状に構成されたワイヤ22と、乗降口4h(ガイド溝7)の後端位置で縦に配置され、前記ワイヤ22が掛けられるように構成された滑車24と、乗降口4h(ガイド溝7)の前端位置に設置されて、滑車24が左回転、あるいは右回転するように前記ワイヤ22を滑車24に対して移動させる駆動装置25と、前記滑車24の下側に配置されたワイヤ22の所定位置に固定されて、前記ワイヤ22と共に移動可能に構成された可動部27とから構成されている。
ドア駆動ユニット20のワイヤ22、滑車24、及び可動部27は、図7、図8、図9に示すように、ガイド溝7の内側に収納されている。そして、前記可動部27が、図9に示すように、折戸ドア10の転動ローラ15を回転自在に支持するガイドピン14pに連結されている。
ドア駆動ユニット20の駆動装置25は、ワイヤ22をガイド溝7の前端位置側で支える縦滑車(図示省略)と、その縦滑車と同軸に固定された滑車側歯車(図示省略)と、その滑車側歯車と噛合する歯車機構(図示省略)と、歯車機構を駆動させるモータ(図示省略)とから構成されている。
【0018】
上記構成により、駆動装置25のモータが正転方向に回転すると、図6における下側のワイヤ22が駆動装置25に引き込まれ、上側のワイヤ22が駆動装置25から押し出されることで、滑車24が左回転するようになる。これにより、下側のワイヤ22に固定された可動部27が前進し、折戸ドア10の後端上部に設けられたガイドピン14p、転動ローラ15が可動部27に引っ張られてガイド溝7内を前進するようになる。この結果、折戸ドア10の前側ドア片12が後側ドア片14に押されてヒンジピン11pを中心に左回動し、後側ドア片14がガイドピン14pを中心にその前側ドア片12に重なる方向に回動する。これにより、図4に示すように、折戸ドア10が折り畳まれて、乗降口4hが開放される。
また、駆動装置25のモータが逆転方向に起動されると、図6における下側のワイヤ22が駆動装置25から押し出され、上側のワイヤ22が駆動装置25に引き込まれることで、滑車24が右回転するようになる。これにより、下側のワイヤ22に固定された可動部27が後進し、折戸ドア10の後端上部に設けられたガイドピン14p、転動ローラ15が可動部27に引っ張られてガイド溝7内を後進するようになる。この結果、折戸ドア10の前側ドア片12が後側ドア片14に引っ張られてヒンジピン11pを中心に右回動し、後側ドア片14がガイドピン14pを中心に前側ドア片12と連続する方向に回動する。これにより、折戸ドア10が展開して、乗降口4hが全閉近傍位置まで閉じられる。
即ち、前記ワイヤ22が本発明の紐状部材に相当する。
【0019】
<ドア閉ロック機構30について>
ドア閉ロック機構30は、折戸ドア10が全閉近傍位置にあるときにその折戸ドア10を全閉位置まで押圧し、折戸ドア10をウェザーストリップ(図示省略)の弾性力に抗して閉めきるとともに、この位置でロックする機構である。ドア閉ロック機構30は、図5等に示すように、折戸ドア10(前側ドア片12)側に設けられたロック機構本体32と、乗降口4hの天井部分に設けられて、前記ロック機構本体32のロック爪33が係合可能に構成されたストライカユニット40とから構成されている。
ロック機構本体32は、前側ドア片12の内側の回動自由端側上端位置に固定されるハウジング31を備えている。ハウジング31には、ロック爪33が上下動可能な状態で収納されており、そのロック爪33の上端部に形成された爪本体部33kが前記ハウジング31から上方に突出可能なように構成されている。また、ハウジング31内には、ロック爪33の周囲に、そのロック爪33を上方に押上げる方向に付勢されたスプリング35が収納されている。さらに、ハウジング31には、スプリング35のバネ力に抗してロック爪33を押し下げて、爪本体部33kをハウジング31内に収納するロック解除ハンドル36が上下回動可能な状態で装着されている。
さらに、ロック爪33は、棒状リンク37によって、図2(B)に示すように、前側ドア片12の内側の中央レベル位置に設けられた手動ロック解除装置38に連結されている。
【0020】
ストライカユニット40は、図3に示すように、折戸ドア10が全閉近傍位置まで展開した状態でロック機構本体32のロック爪33と平面的に重なる位置に位置決めされている。ストライカユニット40は、図5、図10に示すように、乗降口4hの天井部分に固定されるハウジング41を備えている。ハウジング41内には、車両前後方向に延びる水平な回転軸43jが軸心回りに回転可能な状態で支持されており、その回転軸43jに一対の支持アーム43の基端部が固定されている。そして、両支持アーム43の先端部間にローラ状のストライカ45が水平に支持されている。
【0021】
前記回転軸43jには、図10に示すように、両支持アーム43を上下回動させるストライカ駆動機構47のウォームホィール47hが固定されている。そして、前記ウォームホィール47hにストライカ駆動機構47のウォーム47wが縦向きに位置決めされた状態で噛合している。さらに、ハウジング41の上側には、ウォーム47wを回転させるためのモータ47mが設けられている。上記構成により、前記モータ47mが正転、あるいは逆転することで、ウォームホィール47hとウォーム47wとの噛合作用により、両支持アーム43が上方に回動、あるいは下方に回動して、ストライカ45が移動するようになる。
また、ハウジング41には、支持アーム43の回動上限ストッパ41uと回動下限ストッパ41dとが設けられている。そして、支持アーム43が回動上限ストッパ41uに当接している状態で、ストライカ45はロック機構本体32のロック爪33と係合不能になる。また、支持アーム43が上限位置(回動上限ストッパ41uに当接している位置)から下方に回動する過程で、ストライカ45が全閉近傍位置にあるロック機構本体32のロック爪33を押圧して全閉位置まで移動させる。
即ち、ストライカユニット40の支持アーム43の上限位置が本発明におけるストライカの待機位置に相当し、支持アーム43の下限位置が本発明におけるストライカのロック位置に相当する。
【0022】
<折戸ドア装置の動作について>
全閉状態の折戸ドア10を自動動作で開く場合には、ドア開スイッチ(図示省略)を操作する。これにより、先ず、乗降口4hの天井部分に設置されたストライカユニット40のモータ47mが駆動され、支持アーム43が上方に回動する。これにより、ストライカ45が折戸ドア10のロック機構本体32のロック爪33から外れ、折戸ドア10の閉ロック状態が解除される。
なお、支持アーム43が回動上限ストッパ41uに当接し、支持アーム43の上回動が妨げられてモータ47mの負荷電流が増加すると、制御装置(図示省略)によりモータ47mが自動的に停止させられる。
次に、ドア駆動ユニット20の駆動装置25が駆動して、ワイヤ22が滑車24を左回転させる方向に移動する。これにより、下側のワイヤ22に固定された可動部27が前進し、折戸ドア10の後端上部に設けられたガイドピン14p、転動ローラ15が可動部27に引っ張られてガイド溝7内を前進する。これにより、図6に示すように、折戸ドア10が折り畳まれる。そして、ドア駆動ユニット20の可動部27が前進限位置まで到達すると、折戸ドア10が畳み角θ=0となるまで完全に折り畳まれ、乗降口4hが完全に開放される。
なお、ドア駆動ユニット20の可動部27が前進限位置まで到達し、可動部27の前進が妨げられて駆動装置25のモータの負荷電流が増加すると、制御装置(図示省略)により前記モータが自動的に停止させられる。
ここで、例えば、リミットスイッチ等の信号により前記モータを停止させる構成でも可能である。
【0023】
次に、全開状態の折戸ドア10を自動動作で閉じる場合には、ドア閉スイッチ(図示省略)を操作する。これにより、ドア駆動ユニット20の駆動装置25が駆動して、ワイヤ22が滑車24を右回転させる方向に移動する。これにより、下側のワイヤ22に固定された可動部27が後進し、折戸ドア10の後端上部に設けられたガイドピン14p、転動ローラ15が可動部27に引っ張られてガイド溝7内を後進する。これにより、折戸ドア10が展開するようになる。そして、ドア駆動ユニット20の可動部27が後進限位置まで到達すると、折戸ドア10が展開されて全閉近傍位置に保持される。そして、駆動装置25のモータが停止する。
次に、ストライカユニット40のモータ47mが駆動され、支持アーム43が下方に回動する。これにより、支持アーム43の回動過程でストライカ45が、図5に示すように、折戸ドア10のロック機構本体32のロック爪33を車外方向(全閉位置方向)に押圧し、折戸ドア10をウェザーストリップの弾性力に抗して閉めきって、この位置にロックできるようになる。
なお、手動でドア閉ロック機構30の閉ロック状態を解除する場合には、ロック解除ハンドル36、あるいは手動ロック解除装置38を操作してロック爪33をスプリング35のバネ力に抗して下降させる。これにより、ロック爪33がストライカ45から外れ、ドア閉ロック機構30の閉ロック状態が解除される。
【0024】
<本実施形態に係る車両のドア構造の長所について>
本実施形態に係る車両の折戸ドア装置によると、ドア駆動ユニット20の可動部27が乗降口4hの幅方向に延びるガイド溝7に沿って移動可能な構成で、その可動部27に折戸ドア10の後端上部に設けられたガイドピン14pが連結されている。このため、折戸ドア10の後端上部がドア駆動ユニット20の力を受けて、そのドア駆動ユニット20の可動部27と共にガイド溝7に沿って移動できるようになる。したがって、例えば、折戸ドア10が完全に折り畳まれても、展開時に折戸ドア10が後端上部(ガイドピン14p)を中心に回動して展開不能になるような不具合は生じない。
即ち、折戸ドア10を完全に折り畳んで乗降口4hを全開にできるため、乗降口4hの全開時の開口幅を広くできる。
【0025】
また、本実施形態に係る折戸ドア装置では、折戸ドア10がドア駆動ユニット20の動作により展開させられて乗降口4hを閉じた状態で、その折戸ドア10を乗降口4hの全閉位置方向に押圧するドア閉ロック機構30を備えている。このため、ドア駆動ユニット20は、折戸ドア10を展開させるのに必要な動力があれば良く、折戸ドア10をウェザーストリップの弾性力に抗して閉めきるための動力は不要になる。即ち、折戸ドア10を閉めきるための動力をドア閉ロック機構30側に持たせられるようになる。したがって、ドア駆動ユニット20の動力を必要最小限にすることができる。
また、ガイド溝7とドア駆動ユニット20とは、乗降口4hの天井部分に設けられているため、そのガイド溝7とドア駆動ユニット20が乗降の邪魔にならない。
【0026】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ドア駆動ユニット20を可動部27、ワイヤ22、滑車24、及び駆動装置25から構成する例を示した。しかし、例えば、ドア駆動ユニットとしてボールネジ・アンド・ナット機構等を利用し、ナット部に可動部27を連結する構成でも可能である。
また、本実施形態では、ストライカユニット40の支持アーム43、及びストライカ45を下方に回動させ、そのストライカ45により折戸ドア10のロック爪33を押圧して折戸ドア10を全閉近傍位置から全閉位置まで移動させる例を示した。しかし、ストライカ45を定位置に固定し、例えば、ロック爪33に傾斜面等を形成して、ロック爪33を上動させる過程で前記傾斜面をストライカ45に当接させ、前記傾斜面とストライカ45との摺動作用で折戸ドア10を全閉近傍位置から全閉位置まで移動させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0027】
4h 乗降口
7 ガイド溝
10 折戸ドア
11 主ヒンジ機構
12 前側ドア片
14p ガイドピン
14 後側ドア片
15 転動ローラ
20 ドア駆動ユニット
22 ワイヤ(駆動ユニット本体、紐状部材)
24 滑車(駆動ユニット本体)
25 駆動装置(駆動ユニット本体)
27 可動部
30 ドア閉ロック機構
33 ロック爪
40 ストライカユニット
45 ストライカ
47 ストライカ駆動機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦に折り畳み可能なドアで、幅方向一端側がヒンジ機構により車両の乗降口の幅方向一端側に水平回転可能な状態で連結され、幅方向他端側が前記乗降口の幅方向に延びるガイド溝に沿って移動可能なように、そのガイド溝に係合している折戸ドアと、その折戸ドアを折り畳み、あるいは展開させることで、前記乗降口を開閉するドア駆動ユニットとを備える車両の折戸ドア装置であって、
前記ドア駆動ユニットは、
前記ガイド溝に沿って移動可能に構成された可動部と、
前記可動部を前記ガイド溝に沿って移動させる駆動ユニット本体とを有しており、
前記可動部が前記折戸ドアの幅方向他端側に連結されていることを特徴とする車両の折戸ドア装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の折戸ドア装置であって、
前記折戸ドアが前記ドア駆動ユニットの動作により展開させられて前記乗降口を閉じた状態で、その折戸ドアを前記乗降口の全閉位置方向に押圧するドア閉ロック機構を備えていることを特徴とする車両の折戸ドア装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両の折戸ドア装置であって、
前記ガイド溝と前記ドア駆動ユニットとは、前記乗降口の天井部分に設けられていることを特徴とする車両の折戸ドア装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両の折戸ドア装置であって、
前記駆動ユニット本体は、
滑車と、
前記滑車に掛けられることで、前記ガイド溝に沿う無限軌道状に構成されている紐状部材と、
前記滑車が正転、あるいは逆転するように前記紐状部材を移動させる駆動装置とを有しており、
前記可動部が前記紐状部材の所定位置に固定されていることを特徴とする車両の折戸ドア装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載された車両の折戸ドア装置であって、
ドア閉ロック機構は、
前記折戸ドアの上端部に設けられたロック爪と、
前記乗降口の天井部分に設けられ、前記ロック爪と係合不能な待機位置と、前記ロック爪と係合し、そのロック爪を全閉位置方向に押圧可能なロック位置との間で移動できるように構成されたストライカと、
前記ストライカを前記待機位置とロック位置間で移動させるストライカ駆動機構とを有していることを特徴とする車両の折戸ドア装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207462(P2012−207462A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74242(P2011−74242)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】