説明

車両の換気装置

【課題】走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても車室内の換気を効率良く行うことが可能な車両の換気装置を提供すること。
【解決手段】前側換気扇11及び後側換気扇12は、非密閉状態に区画された車室の内外を連通する第1の貫通孔及び第2の貫通孔に配置され、車室内の空気を車室外へ排出する排気回転状態と停止状態とに設定可能である。車速センサ15は、バス1の速度を検出する。判定部19は、車速センサ15により検出されたバス1の速度が20km/h以下であるか否かを判定する。判定部19は、車室内が換気を必要とする要換気状態であるか否かを判定する。制御部20は、前側換気扇11及び後側換気扇12を制御する。制御部20は、車室内が要換気状態であると判定部19が判定し、且つバス1の速度が20km/h以下であると判定部19が判定したとき、前側換気扇11及び後側換気扇12を排気回転状態に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給気ファンと排気ファンと二酸化炭素検出器とを備え、二酸化炭素濃度がある一定値に到達すると、給気ファン及び排気ファンの換気風量を調整して車内空気の二酸化炭素濃度を一定に保持する車両用換気装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−6800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、高速で走行中の車両の場合、強い走行風を受けるため、走行風を利用して車室内への外気の流入量を増大させて車室内の換気効率を高めることが可能である。
【0005】
これに対し、車両の停車時又は低速走行時においては、走行風を受けない又は受ける走行風が弱いため、走行風を利用して車室内への外気の流入量を増大させて車室内の換気効率を高めることが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても車室内の換気を効率良く行うことが可能な車両の換気装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様に係る車両の換気装置は、少なくとも一つの換気扇と、車速検出手段と、車速判定手段と、換気判定手段と、制御手段とを備える。
【0008】
換気扇は、非密閉状態に区画された車室の内外を連通する通気路に配置され、車室内の空気を車室外へ排出する排気回転状態と停止状態とに設定可能である。車速検出手段は、車両の速度を検出する。車速判定手段は、車速検出手段により検出された車両の速度が所定速度以下であるか否かを判定する。換気判定手段は、車室内が換気を必要とする要換気状態であるか否かを判定する。制御手段は、換気扇を制御する。制御手段は、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、且つ車両の速度が所定速度以下であると車速判定手段が判定したとき、換気扇を排気回転状態に設定する。
【0009】
上記構成では、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、且つ車両の速度が所定速度以下であると車速判定手段が判定したとき、換気扇が排気回転状態に設定されて車室内の空気が車室外へ排出される。排気回転状態の換気扇によって車室内の空気が車室外へ排出され、車室内が車室外(大気圧)よりも負圧となると、車室内が通気路以外で外部と連通する部分(例えば、構造上必然的に生じる隙間など)から外気が車室内へ流入する。ここで、車室内が通気路以外で外部と連通する部分は、構造上車室内の広い範囲に亘って存在していることから、換気扇の給気能力に依存して外気を通気路から車室内に流入させるよりも、車室内の単位時間当たりの換気量を増大させることができる。すなわち、非密閉状態に区画された車室内を強制的に負圧にすることにより、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても車室内の換気を効率良く行うことができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係る車両の換気装置は、第1の態様に係る車両の換気装置であって、濃度検出手段を備える。
【0011】
濃度検出手段は、車室内の二酸化炭素濃度を検出する。換気判定手段は、濃度検出手段により検出された車室内の二酸化炭素濃度が所定値以上であるときに車室内が要換気状態であると判定する。
【0012】
上記構成では、例えば乗員の増加によって車室内の二酸化炭素濃度が高くなり、車室内の二酸化炭素濃度が所定値以上となった場合に車室内が要換気状態であると判定されて換気扇が排気回転状態に設定される。従って、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時に車室内の二酸化炭素濃度が高くなった場合であっても、車室内を強制的に負圧にすることによって車室内の換気を効率良く行い、車室内の二酸化炭素濃度を迅速に低減させることができる。
【0013】
また、本発明の第3の態様に係る車両の換気装置は、第2の態様に係る車両の換気装置であって、第2の濃度検出手段と濃度判定手段とを備える。
【0014】
第2の濃度検出手段は、車室外の二酸化炭素濃度を検出する。濃度判定手段は、濃度検出手段により検出された車室内の二酸化炭素濃度が第2の濃度検出手段により検出された車室外の二酸化炭素濃度以上であるか否かを判定する。換気扇は、車室の上部前方の第1の通気路に配置された第1の換気扇と、車室の上部で第1の通気路よりも後方の第2の通気路に配置された第2の換気扇とを含む。第2の換気扇は、排気回転状態と停止状態と車室外の空気を車室内へ供給する給気回転状態とに設定可能である。制御手段は、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、車室内の二酸化炭素濃度が車室外の二酸化炭素濃度以上であると濃度判定手段が判定し、且つ車両の速度が所定速度以下であると車速判定手段が判定したとき、第1の換気扇及び第2の換気扇を排気回転状態に設定し、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、車室内の二酸化炭素濃度が車室外の二酸化炭素濃度以上であると濃度判定手段が判定し、且つ車両の速度が所定速度を超えていると車速判定手段が判定したとき、第1の換気扇を排気回転状態に設定するとともに第2の換気扇を排気回転状態に設定する。
【0015】
上記構成では、車室内が要換気状態であり、車室内の二酸化炭素濃度が車室外の二酸化炭素濃度以上であり、且つ車両の速度が所定速度以下である場合、第1の換気扇及び第2の換気扇が排気回転状態に設定されて、第1の換気扇及び第2の換気扇によって車室内の空気が排出される。これにより、第1の換気扇及び第2の換気扇の何れか1つを排気回転状態に設定して車室内の空気を排出するよりも車室内の空気の単位時間当たりの排出量を増大させることができるため、車室内を効率良く負圧にして車室内の換気をより効率良く行うことができる。
【0016】
一方、車室内が要換気状態であり、車室内の二酸化炭素濃度が車室外の二酸化炭素濃度以上であり、且つ車両の速度が所定速度を超えている場合、給気回転状態の第2の換気扇が第2の通気路から外気を車室内へ流入させるため、走行風を利用して車室内の換気を行うことができる。
【0017】
また、第1の換気扇を排気回転状態に設定し、この第1の換気扇よりも後方に配置した第2の換気扇を給気回転状態に設定しているため、車室内の空気が第2の通気路から第1の通気路に向かって走行風の流れと逆向きに流通する。ここで、車室内の空気を走行風の流れと同じ向きに流通させた場合(第1の換気扇によって外気を車室内へ流入して第2の換気扇によって車室内の空気を車室外へ排出した場合)、流入した外気が車室内を循環せずに第1の通気路から第2の通気路へ短絡して流通し易い。これに対し、上記構成では、車室内の空気を走行風と逆向きに流通させているので、車室内に流入した外気が通気路間を短絡し難く、車室内に流入した外気を車室内の広い範囲に循環させることができ、車室内の二酸化炭素濃度を効率良く低減させることができる。
【0018】
従って、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時には車室内を負圧に設定し、また、走行風の寄与を受け易い速度で車両が走行しているときには走行風を積極的に利用することによって、車室内の換気効率をそれぞれ向上させて、車室内の二酸化炭素濃度を迅速に低減させることができる。
【0019】
また、車室外の二酸化炭素濃度が車室内の二酸化炭素濃度を超えている場合には、車室内の換気を行わないため、二酸化炭素濃度の高い外気が車室内へ流入することを確実に防止することができる。
【0020】
さらに、第1の換気扇及び第2の換気扇が車室の上部に配置されているため、車室の前面(車両の進行方向の前面)に配置した場合に比べて、排気回転状態に設定された第1の換気扇及び第2の換気扇が走行風の影響を受け難い。すなわち、排気回転状態に設定された第1の換気扇及び第2の換気扇によって車室内の空気を排出する際に走行風が抵抗となり難いため、走行風の影響による排出量の減少を最小限に抑えることができる。
【0021】
また、本発明の第4の態様に係る車両の換気装置は、第2の態様又は第3の態様に係る車両の換気装置であって、排気回転状態における換気扇は、第1の所定回転速度とこの第1の所定回転速度よりも速い第2の所定回転速度とに設定可能である。制御手段は、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、濃度検出手段により検出された車室内の二酸化炭素濃度が所定値以上で且つ第2の所定値未満であり、且つ車両の速度が所定速度以下であると車速判定手段が判定したとき、排気回転状態の換気扇を第1の所定回転速度に設定し、車室内が要換気状態であると換気判定手段が判定し、濃度検出手段により検出された車室内の二酸化炭素濃度が第2の所定値以上であり、且つ車両の速度が所定速度以下であると車速判定手段が判定したとき、換気扇を第2の所定回転速度に設定する。
【0022】
上記構成では、例えば乗員の数が少なく車室内の二酸化炭素濃度が比較的低い場合には、換気扇が第1の所定回転速度に設定され、乗員の数が増加して車室内の二酸化炭素濃度が高くなった場合には、換気扇が第1の所定回転速度よりも速い第2の所定回転速度に設定されて、第1の所定回転速度に設定した場合よりも単位時間当たりの換気量が増大する。
【0023】
これにより、車室内の二酸化炭素濃度が高い状態では、第2の所定回転速度の換気扇によって車室内の換気を行うことにより、車室内の二酸化炭素濃度を効率良く低減させることができる。一方、車室内の二酸化炭素濃度が比較的低い状態では、第1の所定回転速度の換気扇によって車室内の換気を行うことにより、少なくとも車室内の二酸化炭素濃度が上昇するのを抑止することができる。ここで、換気扇を第1の所定回転速度に設定すると、第2の所定回転速度に設定した場合よりも車室内の単位時間当たりの換気量が少なくなるため、車室内の二酸化炭素濃度が比較的低い状態において必要以上に車室内の換気を行うことがない。
【0024】
従って、車室内の二酸化炭素濃度に応じて換気扇の回転速度を変更することにより、換気扇によって余分なエネルギーを消費することを防止することができる。
【0025】
また、本発明の第5の態様に係る車両の換気装置は、第1の態様〜第4の態様の何れかに係る車両の換気装置であって、温度検出手段を備える。
【0026】
温度検出手段は、車室内の温度を検出する。換気判定手段は、温度検出手段により検出された車室内の温度が所定温度以上であるときに車室内が要換気状態であると判定する。
【0027】
上記構成では、例えば真夏の炎天下時、車両を屋外に長時間駐車して高温の空気が車室内に充満した状態でエンジンを始動した際に車室内が要換気状態であると判定されて、換気扇が排気回転状態に設定される。これにより、車室内の高温の空気が車室外へ排出されるとともに、車室内が車室外よりも負圧となって通気路以外で外部と連通する部分から外気が車室内へ流入する。すなわち、真夏の炎天下時などのように、車室内の温度が日射等の影響によって外気の温度よりも高くなる状況において、車室内よりも温度の低い外気が車室内に流入して車室内の温度が低下する。従って、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても、車室内を強制的に負圧にして車室内の換気を効率良く行うことによって、上昇した車室内の温度を外気温と同程度まで迅速に低下させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても車室内の換気を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の換気装置を備えたバスを示す模式図である。
【図2】換気装置を示すブロック図である。
【図3】前側換気扇及び後側換気扇を給気又は排気回転状態に設定して換気回数を測定した比較実験の結果を示す図であり、(a)はバスを0−20km/hの範囲内で走行させた場合の実験結果、(b)はバスを20−60km/hの範囲内で走行させた場合の実験結果である。
【図4】CPUの制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の換気装置を備えたバスを示す模式図、図2は換気装置を示すブロック図である。図3は前側換気扇及び後側換気扇を給気又は排気回転状態に設定して換気回数を測定した比較実験の結果を示す図であり、(a)はバスを0−20km/hの範囲内で走行させた場合の実験結果、(b)はバスを20−60km/hの範囲内で走行させた場合の実験結果である。図4はCPUの制御内容を示すフローチャートである。なお、以下の説明において、前後方向は車両の進行方向前後を示し、内外方向は車幅方向の内外を示す。
【0031】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るバス(車両)1は、略箱形状のボディ2と換気装置3とタイヤ4等を備えている。
【0032】
ボディ2は、車室の内外を連通する右側前方ドア開口(図示せず)、左側前方ドア開口5、左側中央ドア開口6及び複数の窓開口7と、右側前方ドア開口、左側前方ドア開口5及び左側中央ドア開口6を開閉自在に覆う複数のドア8と、複数の窓開口7を開閉自在に覆う複数の窓9とを有し、車室の内外を区画している。また、ボディ2の上部前方、具体的には、ボディ2の前端部に設けられる運転席(図示せず)の略真上には第1の貫通孔(通気路、第1の通気路)2aが設けられ、ボディ2の上部で第1の貫通孔よりも後方には第2の貫通孔(通気路、第2の通気路)2bが設けられて、それぞれ車室の内外を連通している。
【0033】
右側前方ドア開口、左側前方ドア開口5及び左側中央ドア開口6は、ボディ2の右側部前方、左側部前方及び左側部中央にそれぞれ設けられ、複数の窓開口7は、ボディ2の右側部上方及び左側部上方に設けられている。
【0034】
これら右側前方ドア開口、左側前方ドア開口5及び左側中央ドア開口6と閉状態の各ドア8の間、さらに、複数の窓開口7と閉状態の各窓9との間には、それぞれ構造上必然的に生じる隙間(図示せず)が存在している。この隙間は、車室の内外に圧力差が生じることによって圧力の高い側から圧力の低い側へ空気を流通させる。
【0035】
換気装置3は、制御装置10と前側換気扇(換気扇、第1の換気扇)11と後側換気扇(換気扇、第2の換気扇)12とCO2センサ(濃度検出手段)13とガスセンサ(第2の濃度検出手段)14と車速センサ(車速検出手段)15と温度センサ(温度検出手段)16等を備えている。
【0036】
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)17とこのCPU17を駆動させる電源18等を有し、バス1の車内に搭載されている。
【0037】
CPU17には、判定部(換気判定手段、車速判定手段、濃度判定手段)19と制御部(制御手段)20とが設けられている。CPU17は、各センサから検出信号を受信し、後述する所定のタイミングで、前側換気扇11及び後側換気扇12に対して制御信号を出力している。
【0038】
前側換気扇11は、羽根(図示せず)とこの羽根を正回転又は逆回転させるモータ21等を有し、第1の貫通孔2aに配置されている。後側換気扇12は、羽根(図示せず)とこの羽根を正回転又は逆回転させるモータ22等を有し、第2の貫通孔2bに配置されている。
【0039】
前側換気扇11は、羽根が正方向に回転することによって、車室内の空気を車室外に排出する排気回転状態に設定され、羽根が逆方向に回転することによって、車室外から空気を給気する給気回転状態に設定される。また、モータ22の回転速度を変更することによって、羽根の回転速度を第1の所定回転速度とこの第1の所定回転速度よりも回転速度が速い第2の所定回転速度とに設定可能である。具体的には、モータ21が、制御部20から通常排気信号を受信することによって、羽根を正方向に第1の所定回転速度で回転させて前側換気扇11を通常排気状態に設定し、急速排気信号を受信することによって、羽根を正方向に第2の所定回転速度で回転させて前側換気扇11を急速排気状態に設定する。さらに、制御部20から通常給気信号を受信することによって、羽根を逆方向に第1の所定回転速度で回転させて前側換気扇11を通常給気状態に設定し、急速給気信号を受信することによって、羽根を逆方向に第2の所定回転速度で回転させて前側換気扇11を急速給気状態に設定する。また、制御部20から停止信号を受信した場合には、羽根の回転を停止して前側換気扇11を停止状態に設定する。なお、後側換気扇12も上記前側換気扇11と同様に制御されるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
CO2センサ13は、ボディ2の後部上方に設けられ、車室内の二酸化炭素濃度(以下、車室内CO2濃度と称する)を検出する。このCO2センサ13が検出した車室内CO2濃度は、判定部19に出力される。
【0041】
ガスセンサ14は、車室外の二酸化炭素濃度(以下、車室外CO2濃度と称する)を検出する。このガスセンサ14が検出した車室外CO2濃度は、判定部19に出力される。
【0042】
車速センサ15は、タイヤ4の回転数を計測し、計測された回転数に基づいてバス1の車速を算出する。車速センサ15が算出した車速は、判定部19に出力される。
【0043】
温度センサ16は、車室内の温度を検出する。温度センサ16が検出した車室内の温度は、判定部19に出力される。
【0044】
判定部19は、CO2センサ13からの車室内CO2濃度が所定値(本実施形態では、0.1%)以上であるか否かを判定し、車室内CO2濃度が所定値以上である場合に、車室内が要換気状態であると判定する。また、判定部19は、車室内CO2濃度が所定値未満であると判定した場合には、車室内の温度が所定温度(本実施形態では、30℃)以上であるか否かを判定し、車室内の温度が所定温度以上である場合に、車室内が要換気状態であると判定する。
【0045】
さらに、判定部19は、車室内が要換気状態であると判定すると、車室外CO2濃度と車室内CO2濃度とを比較し、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上である場合には、換気可能状態であると判定する。
【0046】
また、判定部19は、車室内が換気可能状態であると判定すると、車速センサ15からの車速が所定速度(本実施形態では、20km/h)以下であるか否かを判定し、所定速度以下である場合には、バス1の走行状態が停車状態又は低速走行状態であると判定する。なお、所定速度は、30km/h以内に設定することが好ましく、20km/hに設定することがより好ましい。
【0047】
一方、車速センサ15からの車速が所定速度を超えていると判定した場合、判定部19は、車速センサ15からの車速が所定速度よりも速い第2の所定速度(本実施形態では、60km/h)以下であるか否かを判定し、第2の所定速度以下である場合にはバス1の走行状態が中速走行状態であると判定し、第2の所定速度を超えている場合にはバス1の走行状態が高速走行状態であると判定する。
【0048】
また、判定部19は、バス1の走行状態が停車状態又は低速走行状態又は中速走行状態であると判定した場合、車室内CO2濃度が所定値以上且つこの所定値よりも大きい第2の所定値(本実施形態では、0.15%)未満であるか否かを判定し、判定結果を制御部20に出力する。
【0049】
制御部20は、判定部19からの判定結果に基づいて、前側換気扇11及び後側換気扇12にそれぞれ制御信号を出力する。具体的には、車室内が要換気状態であり、バス1の走行状態が停車状態又は低速走行状態であり、且つ車室内CO2濃度が所定値以上且つ第2の所定値未満であると判定部19が判定した場合、制御部20は、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22にそれぞれ通常排気信号を出力する。
【0050】
また、車室内が要換気状態であり、バス1の走行状態が停車状態又は低速走行状態であり、且つ車室内CO2濃度が第2の所定値以上であると判定部19が判定した場合には、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22にそれぞれ急速排気信号を出力する。
【0051】
さらに、車室内が要換気状態であり、バス1の走行状態が中速走行状態であり、且つ車室内CO2濃度が所定値以上且つ第2の所定値未満であると判定部19が判定した場合、制御部20は、前側換気扇11のモータ21に通常排気信号を出力するとともに後側換気扇のモータ22に通常給気信号を出力する。
【0052】
また、車室内が要換気状態であり、バス1の走行状態が中速走行状態であり、且つ車室内CO2濃度が第2の所定値以上であると判定部19が判定した場合、前側換気扇11のモータ21に急速排気信号を出力するとともに後側換気扇12のモータ22に急速給気信号を出力する。
【0053】
また、バス1の走行状態が高速走行状態であると判定部19が判定した場合には、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22に停止信号を出力する。
【0054】
なお、上述した前側換気扇11及び後側換気扇12の各回転状態は、前側換気扇11及び後側換気扇12を備えたバス1を用いた換気実験の結果に基づいて設定されている。以下、図3に基づいて換気実験について説明する。
【0055】
この実験では、バス1の車室内の二酸化炭素濃度が所定の高い濃度となるようにバス1の車室内に二酸化炭素を充満させ、この状態のまま所定の範囲内の速度でバス1を走行させ、前側換気扇11を排気回転状態又は給気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を排気回転状態又は給気回転状態に設定することによって、所定時間経過後の車室内の二酸化炭素濃度を計測し、その減衰から単位時間当たりの換気量を算出し、この算出した換気量をバス1の容積で除算することによって換気回数を求めている。すなわち、換気回数とは、単位時間当たりにバス1の車室内の空気が車室外の空気(外気)と入れ替わる回数を示す値である。
【0056】
図3(a)に示すように、具体的には、バス1を0−20km/hの範囲内で走行させ、前側換気扇11を排気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を排気回転状態に設定した場合(試験No.1)と、前側換気扇11を排気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を給気回転状態に設定した場合(試験No.2)と、前側換気扇11を給気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を排気回転状態に設定した場合(試験No.3)と、前側換気扇11を給気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を給気回転状態に設定した場合(試験No.4)とで、それぞれの換気回数を求めている。
【0057】
さらに、図3(b)に示すように、バス1を20−60km/hの範囲内で走行させ、前側換気扇11を排気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を排気回転状態に設定した場合(試験No.5)と、前側換気扇11を排気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を給気回転状態に設定した場合(試験No.6)と、前側換気扇11を給気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を排気回転状態に設定した場合(試験No.7)と、前側換気扇11を給気回転状態に設定するとともに後側換気扇12を給気回転状態に設定した場合(試験No.8)とで、それぞれの換気回数を求めている。
【0058】
ここで、換気回数とは、上述したように、単位時間当たりにバス1の車室内の空気が車室外の空気と入れ替わる回数を示す値であり、この換気回数が多いほど車室内の換気効率が良いといえる。図3(a)及び図3(b)では、換気回数を△、○、◎で示し、△、○、◎の順で換気回数が多いものとした。
【0059】
この実験によれば、図3(a)に示すように、バス1を0−20km/hの範囲内で走行させた場合、前側換気扇11と後側換気扇12との両方を排気回転状態に設定することで換気回数が◎となり(試験No.1)、前側換気扇11を排気回転状態に設定し、後側換気扇12を給気回転状態に設定することで換気回数が○となる(試験No.2)。さらに、前側換気扇11を給気回転状態に設定し、後側換気扇12を排気回転状態に設定することで換気回数が○となり(試験No.3)、前側換気扇11と後側換気扇12との両方を給気回転状態に設定することで換気回数が△となる(試験No.4)。
【0060】
一方、図3(b)に示すように、バス1を20−60km/hの範囲内で走行させた場合には、前側換気扇11と後側換気扇12との両方を排気回転状態に設定することで換気回数が○となり(試験No.5)、前側換気扇11を排気回転状態に設定し、後側換気扇12を給気回転状態に設定することで換気回数が◎となる(試験No.6)。さらに、前側換気扇11を給気回転状態に設定し、後側換気扇12を排気回転状態に設定することで換気回数が△となり(試験No.7)、前側換気扇11と後側換気扇12との両方を給気回転状態に設定することで換気回数が△となる(試験No.8)。
【0061】
係る実験結果から、換気回数が最も良い値を示す前側換気扇11及び後側換気扇12の給気・排気回転状態は、バス1が0−20km/hの範囲内で走行するか20−60km/hの範囲内で走行するかによって異なり、バス1が0−20km/hの範囲内で走行する場合には、前側換気扇11と後側換気扇12との両方を排気回転状態に設定し、20−60km/hの範囲内で走行する場合には、前側換気扇11を排気回転状態に設定し、後側換気扇12を給気回転状態に設定することによって、0−60km/hの全ての速度で車室内の換気を効率良く行えることがわかる。
【0062】
次に、CPU17が実行する換気制御処理について、図4に基づいて説明する。CPU17は、バス1のエンジン(図示せず)の始動によって本処理を開始し、エンジンが停止するまで本処理を所定時間毎に繰り返して実行する。
【0063】
また、CPU17の記憶部(図示せず)には、車速を順次記憶する車速記憶領域と、車室内CO2濃度と車室外CO2濃度とを順次記憶するCO2濃度記憶領域と、車室内の温度を順次記憶する温度記憶領域とが設けられている。
【0064】
本処理を開始すると、まずCO2濃度記憶領域から最新の車室内CO2濃度を読み出し、読み出した車室内CO2濃度が0.1%以上であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0065】
車室内CO2濃度が0.1%以上(車室内CO2濃度≧0.1%)である場合(ステップS1:Yes)、すなわち、車室内が要換気状態である場合には、CO2濃度記憶領域から最新の車室内CO2濃度と車室外CO2濃度とを読み出し、車室外CO2濃度と車室内CO2濃度とを比較して車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上(車室内CO2濃度≧車室外CO2濃度)であるか否かを判定する(ステップS2)。なお、この判定に用いる車室内CO2濃度は、ステップS1で読み出した車室内CO2濃度であってもよい。
【0066】
車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上であると判定した場合(ステップS2:Yes)、すなわち、換気可能状態であると判定した場合には、車速記憶領域から最新の車速を読み出し、読み出した車速が20km/h以下(車速≦20km/h)であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0067】
車速が20km/h以下であると判定した場合(ステップS3:Yes)、すなわち、バス1の走行状態が停車状態又は低速走行状態であると判定した場合には、CO2濃度記憶領域から最新の車室内CO2濃度を読み出し、読み出した車室内CO2濃度が0.15%未満(車室内CO2濃度<0.15%)であるか否かを判定する(ステップS4)。そして、車室内CO2濃度が0.15%未満であると判定した場合(ステップS4:Yes)には、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22に通常排気信号を出力し(ステップS5)、本処理を終了する。これにより、前側換気扇11及び後側換気扇12が通常排気状態に設定される。前側換気扇11及び後側換気扇12が排気回転状態のとき、前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の空気が車室外へ排気され、車室内が車室外(大気圧)よりも負圧となり、車室外の空気が隙間をから車室内へ流入して、車室内の換気が行われる。
【0068】
一方、ステップS4において、車室内CO2濃度が0.15%以上であると判定した場合(ステップS4:No)には、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22に急速排気信号を出力し(ステップS6)、本処理を終了する。これにより、前側換気扇11及び後側換気扇12が急速排気状態に設定される。前側換気扇11及び後側換気扇12が急速排気状態のとき、上記前側換気扇11及び後側換気扇12が通常排気状態に設定された場合よりも、前側換気扇11及び後側換気扇12による排気量が増大する。これにより、車室内が車室外よりもさらに負圧となり、より多くの車室外の空気が車室内へ流入する。従って、前側換気扇11及び後側換気扇12が急速排気状態に設定された場合の換気量は、前側換気扇11及び後側換気扇12が通常排気状態に設定された場合の換気量よりも多くなる。
【0069】
また、ステップS3において、車速が20km/hを超えていると判定した場合(ステップS3:No)には、読み出した車速が60km/h以下(車速≦60km/h)であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0070】
車速が60km/h以下であると判定した場合(ステップS7:Yes)、すなわち、バス1の走行状態が中速走行状態であると判定した場合には、CO2濃度記憶領域から最新の車室内CO2濃度を読み出し、読み出した車室内CO2濃度が0.15%未満であるか否かを判定する(ステップS8)。そして、読み出した車室内CO2濃度が0.15%未満である場合(ステップS8:Yes)には、前側換気扇11のモータ21に通常排気信号を出力するとともに後側換気扇12のモータ22に通常給気信号を出力し(ステップS9)、本処理を終了する。これにより、前側換気扇11が通常排気状態に設定されるとともに後側換気扇12が通常給気状態に設定されて、前側換気扇11と後側換気扇12とによって車室内の換気が行われる。
【0071】
一方、ステップS8において、CO2濃度記憶領域から読み出した最新の車室内CO2濃度が0.15%以上であった場合(ステップS8:No)には、前側換気扇11のモータ21に急速排気信号を出力するとともに後側換気扇12のモータ22に急速給気信号を出力し(ステップS10)、本処理を終了する。これにより、前側換気扇11が急速排気状態に設定されるとともに後側換気扇12が急速給気状態に設定される。そして、前側換気扇11が急速排気状態に設定され後側換気扇12が急速給気状態に設定された場合の換気量は、上記前側換気扇11が通常排気状態に設定され後側換気扇12が通常給気状態に設定された場合の換気量よりも多くなる。
【0072】
また、ステップS7において、車速が60km/hを超えていると判定した場合(ステップS7:No)、すなわち、バスの走行状態が高速走行状態であると判定した場合には、前側換気扇11のモータ21及び後側換気扇12のモータ22に停止信号を出力し(ステップS11)、本処理を終了する。これにより、前側換気扇11及び後側換気扇12が停止状態に設定される。バス1の走行状態が高速走行状態の場合には、走行風によって生じる車室の内外の圧力差によって比較的多くの空気が隙間を流通して、車室内の換気が行われる。
【0073】
さらに、ステップS1において、車室内CO2濃度が0.1%未満であると判定した場合(ステップS1:No)には、車室内の温度が30℃以上(車室内の温度≧30℃)であるか否かを判定する(ステップS12)。そして、車室内の温度が30℃以上であると判定した場合(ステップS12:Yes)、すなわち、要換気状態であると判定した場合には、ステップS2の処理へ進む。
【0074】
なお、ステップS12において、車室内の温度が30℃未満であると判定した場合(ステップS12:No)には、換気装置による換気を行わないものとして、ステップS2以降の処理を実行せずに本処理を終了する。
【0075】
また、ステップS2において、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度未満であると判定した場合(ステップS2:No)、すなわち、換気可能状態ではないと判定した場合には、車室内の換気を行うことによって車室内CO2濃度が上昇する可能性があるため、ステップS3以降の処理を実行せずに本処理を終了する。
【0076】
このように、本実施形態によれば、車室内が要換気状態であると判定部19が判定し、且つバス1の速度が20km/h以下であると判定部19が判定したとき、前側換気扇11及び後側換気扇12が排気回転状態に設定されて車室内の空気が車室外へ排出される。排気回転状態の前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の空気が車室外へ排出され、車室内が車室外よりも負圧となると、車室内が第1の貫通孔2a及び第2の貫通孔2b以外で外部と連通する隙間から外気が車室内へ流入する。この隙間は、構造上車室内の広い範囲に亘って存在していることから、前側換気扇11及び後側換気扇12の給気能力に依存して外気を第1の貫通孔2a又は第2の貫通孔2bから車室内に流入させるよりも、車室内の単位時間当たりの換気量を増大させることができる。すなわち、非密閉状態に区画された車室内を強制的に負圧にすることにより、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても車室内の換気を効率良く行うことができる。
【0077】
また、乗員の増加によって車室内CO2濃度が高くなり、車室内CO2濃度が0.1%以上となった場合に車室内が要換気状態であると判定されて前側換気扇11及び後側換気扇12が排気回転状態に設定されるため、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時に車室内CO2濃度が高くなった場合であっても、車室内を強制的に負圧にすることによって車室内の換気を効率良く行い、車室内CO2濃度を迅速に低減させることができる。
【0078】
さらに、車室内が要換気状態であり、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上であり、且つバス1の速度が20km/h以下である場合、前側換気扇11及び後側換気扇12が排気回転状態に設定されて、前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の空気が排出される。これにより、前側換気扇11及び後側換気扇12の何れか1つを排気回転状態に設定して車室内の空気を排出するよりも車室内の空気の単位時間当たりの排出量を増大させることができるため、車室内を効率良く負圧にして車室内の換気をより効率良く行うことができる。
【0079】
一方、車室内が要換気状態であり、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上であり、且つバス1の速度が20km/hを超えている場合、給気回転状態の後側換気扇12が第2の貫通孔2bから外気を車室内へ流入させるため、走行風を利用して車室内の換気を行うことができる。
【0080】
また、前側換気扇11を排気回転状態に設定し、この前側換気扇11よりも後方に配置した後側換気扇12を給気回転状態に設定しているため、車室内の空気が第2の貫通孔2bから第1の貫通孔2aに向かって走行風の流れと逆向きに流通する。ここで、車室内の空気を走行風の流れと同じ向きに流通させた場合(前側換気扇11によって外気を車室内へ流入して後側換気扇12によって車室内の空気を車室外へ排出した場合)、流入した外気が車室内を循環せずに第1の貫通孔2aから第2の貫通孔2bへ短絡して流通し易い。これに対し、本実施形態では、車室内の空気を走行風と逆向きに流通させているので、車室内に流入した外気が第1の貫通孔2aと第2の貫通孔2bとの間を短絡し難く、車室内に流入した外気を車室内の広い範囲に循環させることができ、車室内CO2濃度を効率良く低減させることができる。
【0081】
従って、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時には車室内を負圧に設定し、また、走行風の寄与を受け易い速度でバス1が走行しているときには走行風を積極的に利用することによって、車室内の換気効率をそれぞれ向上させて、車室内CO2濃度を迅速に低減させることができる。
【0082】
また、車室外CO2濃度が車室内CO2濃度を超えている場合には、車室内の換気を行わないため、二酸化炭素濃度の高い外気が車室内へ流入することを確実に防止することができる。
【0083】
さらに、前側換気扇11及び後側換気扇12が車室の上部に配置されているため、車室の前面(バス1の前面)に配置した場合に比べて、排気回転状態に設定された前側換気扇11及び後側換気扇12が走行風の影響を受け難い。すなわち、排気回転状態に設定された前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の空気を排出する際に走行風が抵抗となり難いため、走行風の影響による排出量の減少を最小限に抑えることができる。
【0084】
また、乗員の数が少なく車室内CO2濃度が比較的低い場合には、前側換気扇11及び後側換気扇12が第1の所定回転速度に設定され、乗員の数が増加して車室内CO2濃度が高くなった場合には、前側換気扇11及び後側換気扇12が第1の所定回転速度よりも速い第2の所定回転速度に設定されて、第1の所定回転速度に設定した場合よりも単位時間当たりの換気量が増大するため、車室内CO2濃度が高い状態では、第2の所定回転速度の前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の換気を行うことにより、車室内CO2濃度を効率良く低減させることができる。一方、車室内CO2濃度が比較的低い状態では、第1の所定回転速度の前側換気扇11及び後側換気扇12によって車室内の換気を行うことにより、車室内CO2濃度が上昇するのを抑止することができる。ここで、前側換気扇11及び後側換気扇12を第1の所定回転速度に設定すると、第2の所定回転速度に設定した場合よりも車室内の単位時間当たりの換気量が少なくなるため、車室内CO2濃度が比較的低い状態において必要以上に車室内の換気を行うことがない。
【0085】
従って、車室内CO2濃度に応じて前側換気扇11及び後側換気扇12の回転速度を変更することにより、前側換気扇11及び後側換気扇12によって余分なエネルギーを消費することを防止することができる。
【0086】
また、真夏の炎天下時、バス1を屋外に長時間駐車して高温の空気が車室内に充満した状態でエンジンを始動した際に車室内が要換気状態であると判定されて、前側換気扇11及び後側換気扇12が排気回転状態に設定されるため、車室内の高温の空気が車室外へ排出されるとともに、車室内が車室外よりも負圧となって第1の貫通孔2a及び第2の貫通孔2b以外で外部と連通する隙間から外気が車室内へ流入する。すなわち、真夏の炎天下時などのように、車室内の温度が日射等の影響によって外気の温度よりも高くなる状況において、車室内よりも温度の低い外気が車室内に流入して車室内の温度が低下する。従って、走行風の寄与を受け難い停車時や低速走行時であっても、車室内を強制的に負圧にして車室内の換気を効率良く行うことによって、上昇した車室内の温度を車室外の温度(外気温)と同程度まで迅速に低下させることができる。
【0087】
さらに、バス1の走行状態が高速走行状態の場合には、前側換気扇11及び後側換気扇12を停止状態に設定し、走行風により生じる車室の内外の圧力差を利用して隙間から車室内の換気を行っているため、前側換気扇11及び後側換気扇12によって余分なエネルギーを消費することを防止することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、第2の所定速度が60km/hである場合を説明したが、例えば、70km/hであってもよい。また、所定値が0.1%である場合に限られず、0.15%であってもよい。さらに、第2の所定値が0.15%である場合に限られず、0.2%であってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、車室内CO2濃度が所定値以上であるか否かを判定した後、車室内CO2濃度が第2の所定値未満であるか否かを判定して車室内CO2濃度に応じて前側換気扇11及び後側換気扇12の回転速度を設定しているが、車室内CO2濃度が第2の所定値未満であるか否かの判定を行わずに、車室内CO2濃度が所定値以上である場合に前側換気扇11及び後側換気扇12を一定の回転速度で作動させてもよい。
【0090】
また、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上であるか否かを判定して、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上である場合に車室内の換気を行っているが、車室内CO2濃度が車室外CO2濃度以上であるか否かの判定を行わずに車室内CO2濃度が所定値以上であると判定した場合に車室内の換気を行ってもよい。
【0091】
さらに、CO2センサ13によって車室内の二酸化炭素濃度を検出する場合に限られず、例えば、左側前方ドア開口5及び左側中央ドア開口6に乗員の乗り降りを検出する赤外線センサを設け、この赤外線センサによってバス1の車室内の乗員の数を算出し、予め設定された乗員1人の単位時間当たりの二酸化炭素排出量とバス1の容積とに基づいて、二酸化炭素濃度を推定してもよい。
【0092】
また、車室内の温度が所定温度以上であると判定した後、車室内の温度が車室外の外気温以上であるか否かを判定し、車室内の温度が車室外の温度以上である場合に車室内の換気を行うようにしてもよい。係る場合には、車室外の温度を検出するセンサを別途設けるとよい。これにより、車室外の温度が車室内の温度を超えている場合には車室内の換気を行わないため、温度の高い外気が車室内へ流入することを確実に防止することができる。
【0093】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、車室が非密閉状態に区画された様々な車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 バス(車両)
2a 第1の貫通孔(通気路、第1の通気路)
2b 第2の貫通孔(通気路、第2の通気路)
11 前側換気扇(換気扇、第1の換気扇)
12 後側換気扇(換気扇、第2の換気扇)
13 CO2センサ(濃度検出手段)
14 ガスセンサ(第2の濃度検出手段)
15 車速センサ(速度検出手段)
16 温度センサ(温度検出手段)
19 判定部(換気判定手段、車速判定手段、濃度判定手段)
20 制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非密閉状態に区画された車室の内外を連通する通気路に配置され、車室内の空気を車室外へ排出する排気回転状態と停止状態とに設定可能な少なくとも一つの換気扇と、
車両の速度を検出する車速検出手段と、
前記車速検出手段により検出された前記車両の速度が所定速度以下であるか否かを判定する車速判定手段と、
前記車室内が換気を必要とする要換気状態であるか否かを判定する換気判定手段と、
前記換気扇を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記車室内が要換気状態であると前記換気判定手段が判定し、且つ前記車両の速度が前記所定速度以下であると前記車速判定手段が判定したとき、前記換気扇を前記排気回転状態に設定する
ことを特徴とする車両の換気装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の換気装置であって、
前記車室内の二酸化炭素濃度を検出する濃度検出手段を備え、
前記換気判定手段は、前記濃度検出手段により検出された前記車室内の二酸化炭素濃度が所定値以上であるときに前記車室内が前記要換気状態であると判定する
ことを特徴とする車両の換気装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の換気装置であって、
車室外の二酸化炭素濃度を検出する第2の濃度検出手段と、
前記濃度検出手段により検出された前記車室内の二酸化炭素濃度が前記第2の濃度検出手段により検出された前記車室外の二酸化炭素濃度以上であるか否かを判定する濃度判定手段と、を備え、
前記換気扇は、前記車室の上部前方の第1の通気路に配置された第1の換気扇と、前記車室の上部で前記第1の通気路よりも後方の第2の通気路に配置された第2の換気扇とを含み、
前記第2の換気扇は、前記排気回転状態と前記停止状態と前記車室外の空気を前記車室内へ供給する給気回転状態とに設定可能であり、
前記制御手段は、前記車室内が要換気状態であると前記換気判定手段が判定し、前記車室内の二酸化炭素濃度が前記車室外の二酸化炭素濃度以上であると前記濃度判定手段が判定し、且つ前記車両の速度が前記所定速度以下であると前記車速判定手段が判定したとき、前記第1の換気扇及び前記第2の換気扇を前記排気回転状態に設定し、前記車室内が要換気状態であると前記換気判定手段が判定し、前記車室内の二酸化炭素濃度が前記車室外の二酸化炭素濃度以上であると前記濃度判定手段が判定し、且つ前記車両の速度が前記所定速度を超えていると前記車速判定手段が判定したとき、前記第1の換気扇を前記排気回転状態に設定するとともに前記第2の換気扇を前記給気回転状態に設定する
ことを特徴とする車両の換気装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の車両の換気装置であって、
前記排気回転状態における換気扇は、第1の所定回転速度とこの第1の所定回転速度よりも速い第2の所定回転速度とに設定可能であり、
前記制御手段は、前記車室内が要換気状態であると前記換気判定手段が判定し、前記濃度検出手段により検出された前記車室内の二酸化炭素濃度が前記所定値以上で且つ第2の所定値未満であり、且つ前記車両の速度が前記所定速度以下であると前記車速判定手段が判定したとき、前記排気回転状態の換気扇を前記第1の所定回転速度に設定し、前記車室内が要換気状態であると前記換気判定手段が判定し、前記濃度検出手段により検出された前記車室内の二酸化炭素濃度が前記第2の所定値以上であり、且つ前記車両の速度が前記所定速度以下であると前記車速判定手段が判定したとき、前記換気扇を前記第2の所定回転速度に設定する
ことを特徴とする車両の換気装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の車両の換気装置であって、
前記車室内の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記換気判定手段は、前記温度検出手段により検出された前記車室内の温度が所定温度以上であるときに前記車室内が前記要換気状態であると判定する
ことを特徴とする車両の換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173519(P2010−173519A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19472(P2009−19472)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】