説明

車両の操縦部構造

【課題】ステップフロアにバッテリの固定機能を持たせ、バッテリの取り外しを容易にする。
【解決手段】ステップフレーム(22)を、左右の板枠体(22a,22a)と左右方向のフレーム枠体(22c)と底板(22b)で構成する。ステップフロア(21)の前側下部に前側係止凹部(21f)を設け、後側に包囲凹部(21b)を設ける。バッテリ載置部にバッテリ(23)を載置した状態で、ステップフロア(21)を装着すると、ステップフロア(21)の包囲凹部(21b)によってバッテリ(23)の移動が規制される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等の車両の操縦部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばコンバインにおいて、フロントコラム下のステップ部分の下方位置に、バッテリを取出自在に設けたものは公知である(特許文献1)。
また、コンバインにおいて、ステップの後部で座席を配置支持するシートコラム内に、コントローラ取付台を回動自在に軸支し、このコントローラ取付台上にコントローラ仕組みを配置し、このコントローラ取付台の下方にバッテリを配置したものは公知である(特許文献2)。
【0003】
また、コンバインにおいて、補助ステップにバッテリ台を設け、ステップの側板の一部を開口し、外部からその開口を通してバッテリの液量を確認できるようにしたものは公知である(特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−318163号公報
【特許文献2】実開昭62−153818号公報
【特許文献3】実開昭60−254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のものは、フロントコラム下のステップフロアの下方位置にバッテリを配設するにあたり、バッテリを所定位置で固定するための専用の固定手段を必要とし、また、バッテリとステップフロアとの間に広い空間部が形成されているので、ステップフロアが地面から高い位置にあり、乗降がしにくいという不具合があった。
【0005】
また、前記特許文献2のものは、ステップフロアの後部シートコラム内に、コントローラ取付台を回動自在に設け、このコントローラ取付台上にコントローラ仕組みを配置し、このコントローラ取付台の下方にバッテリをボルト・ナットで取り付けるものであり、バッテリのメンテナンス時にはボルト・ナットを取り外してバッテリを取り出す必要があり、手間がかかるという不具合があった。
【0006】
また、前記特許文献3のものは、補助ステップに設けたバッテリ台上にバッテリを載置するものであり、バッテリを特別の固定手段で支持する必要があった。
そこで、この発明はコンバインのステップフロアの下方にバッテリを配設するにあたり、ステップフロアを工夫することにより、ステップフロアにバッテリの固定機能を持たせて前記不具合を解消し、バッテリの取り外しを迅速容易にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、走行車体(1)上に設けた操縦部(3)のステップフレーム(22)を、上下方向姿勢の左右の板枠体(22a,22a)と該左の板枠体(22a)と右の板枠体(22a)との間を連結する左右方向のフレーム枠体(22c)と底板(22b)によって上部を開放した平面視で四辺形状の枠体に構成し、該ステップフレーム(22)の上部開放部を覆うように合成樹脂材からなる平面視四辺形状のステップフロア(21)を着脱自在に設け、該ステップフロア(21)の前側下部に前側係止凹部(21f)を設け、該前側係止凹部(21f)の後側に下方に向けて開口した包囲凹部(21b)を設け、前記ステップフレーム(21)の底板(22b)の前側部にバッテリ載置部を設け、該バッテリ載置部にバッテリ(23)を載置した状態で、ステップフロア(21)の前側係止凹部(21f)を前記フレーム枠体(22c)に係合させて該ステップフロア(21)をステップフレーム(22)の上部に装着すると、前記バッテリ(23)の上側部にステップフロア(21)の包囲凹部(21b)の前後側面と左右側面およびステップフロア(21)の下面が接近し、該ステップフロア(21)によってバッテリ(23)の移動が規制される構成としたことを特徴とする車両の操縦部構造とする。
【0008】
この構成によると、ステップフレーム22の底板22bのバッテリ載置部にバッテリ23を載置した状態で、ステップフロア21の前側係止凹部21fをステップフレーム22側の左右方向のフレーム枠体22cに係止し、ステップフロア21の後側部を下方に回動しステップフレーム22の上部開放部を閉鎖すると、バッテリ23の上部を包囲凹部21bの前後側面と左右側面及び上面が接近して位置規制し、バッテリ23の移動が規制される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、ステップフレーム22の上部開放部をステップフロア21の装着によって閉鎖することにより、ステップフレーム22に搭載したバッテリ23の移動を包囲凹部21bにより規制することができて、バッテリ23を簡単に固定することができ、また、ステップフレーム22からステップフロア21を取り外すと、バッテリ23を簡単に取り外すことができ、バッテリ23のメンテナンスを容易に行うことができる。また、ステップフレーム22の上下高さを低くしオペレータのステップフロア21への乗降が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
まず、図1及び図2により本発明を具備するコンバインの全体構成について説明する。図1にはコンバインの全体側面図、図2にはその平面図が図示されている。
【0011】
コンバインの走行車体1の下方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車体1上には、右側前部に座席付きの操縦部3を、その後方にはエンジン(図示省略)及び穀粒収納用のグレンタンク4を配設し、走行車体1の左側部に脱穀部5を搭載し、走行車体1の前側部には刈取搬送部7を昇降自在に設けている。
【0012】
次に、図3に基づき操縦部3の具体構成について説明する。
操縦部3の座席3aの前側部には、フロント操作ボックス3bを、左側部にはサイド操作ボックス3cを設けている。フロント操作ボックス3bの右側端部にパワステレバー11を、正面部にモニタ表示器12を設けている。また、サイド操作ボックス3cには、前側から後側にかけてエンジンの燃料噴射量を調節するアクセルレバー14、エンジンからの走行動力及び作業動力を無段変速する無段変速装置(図示省略)変速用の主変速レバー15、副変速装置(図示省略)変速用の副変速レバー16、刈取搬送部7及び脱穀部5のフィードチエンの動力を入切する刈取脱穀クラッチレバー17を配設している。
【0013】
次に、図3乃至図7に基づき操縦部3のステップフロア20について説明する。
走行車体1から立ち上げたステップフレーム22の上部に操縦部3を搭載し、ステップフレーム22の上方を合成樹脂材のステップフロア21により着脱自在に閉鎖している。ステップフレーム22を上下方向に沿った左右の板枠体22a,22a、底板22b、左右の板枠体22a,22aの前側部の間を連結するフレームパイプ22cにより、平面視四角形状で上方を開口した構成としている。ステップフレーム21の底面22bにおける前側端部左右中央には、バッテリ23の載置部を構成し、この右側方に操作ぺダル24を設けている。
【0014】
ステップフロア21の前後左右端部を上下方向のフロア枠側板21a,…により構成し、ステップフロア21の前側端部には下方が開口している包囲凹部21bを構成している。そして、バッテリ23をステップフレーム22の底板22bに搭載した状態で、ステップフロア21によりステップフレーム22の上部開口部を閉鎖すると、ステップフロア21の包囲凹部21bにバッテリ23の上部が下方から嵌合し、包囲凹部21bの前後側面、左右側面及び上面がバッテリ23の上部に接近し、ずれを規制し位置決めするように構成している。
【0015】
また、ステップフレーム22の上下方向に沿った左右の板枠体22a,22aの前側上部間を左右方向に沿ったフレームパイプ22cで連結補強している。また、ステップフロア21の前側下部には前側係止凹部21fを、後側下部には後側係止凸部21gを設けている。また、ステップフロア21の前後左右のフロア枠側板21a,…の下端部をステップフレーム22の左右の板枠体22a,22aの上端部に上側から嵌合できるように構成している。
【0016】
しかして、ステップフレーム22のフレームパイプ22cにステップフロア21の前側係止凹部21fを嵌合して、後側部を下方に回動すると、ステップフロア21の後側係止凸部21gがステップフロア22の底板22bの凹部(図示省略)に嵌入すると共に、ステップフレーム22の左右の板枠体22a,…にステップフロア21の前後左右のフロア枠側板21a,…が嵌合し、前後左右のずれが防止され位置決めされる構成である。
【0017】
前記構成によると、ステップフレーム22にステップフロア21を上方から嵌合装着すると、ステップフレーム22の底板22bに載せたバッテリ23の上部をステップフロア21の包囲凹部21bの前後側面、左右側面及び上面で接近状態で覆うようにし規制固定するので、バッテリ23の規制固定が簡単に完了し、また、ステップフレーム22からステップフロア21を取り外すことにより、バッテリ23を簡単に取り外すことができ、メンテナンスが容易になる。
【0018】
次に、図8に基づきステップフロア21の上面構成について説明する。
ステップフロア21のオペレータが運転作業時に足を載せる内側の作業フロア部21cには、左右方向の狭い凹溝26a,…、及び、所定幅の凸条26b,…を前後に交互に隣接配置した前後方向滑り止めを構成している。また、オペレータが乗降時に足を載せる右側部の乗降フロア部21dには、前後方向の細い凹溝26c,…、及び、凸条26d,…を左右に交互に隣接配置した左右方向滑り止めを構成している。
【0019】
また、作業フロア部21cの左側端部を高位に、乗降フロア部21dを低位に配設し、作業フロア部21cの低面を内側ほど高く乗降フロア部21dに近づくほど低くなる傾斜面21eに構成している。しかして、作業フロア部21cに落下した水を乗降フロア部21dに案内排除できる。
【0020】
また、作業フロア部21cの前記傾斜面21eには、前記凸条26b,…を乗降フロア部21dに近づくに従って高くし、凸条26b,…の上面を水平面に構成し、左右方向の凹溝26a,…を乗降フロア部21dに近づくほど深くしている。
【0021】
前記構成によると、オペレータが座席3aに座った運転作業時には、作業フロア部21cには左右方向の多数の凸条26b,…により水平面が形成されて足が前後に滑りにくく、また、乗降時には乗降フロア部21dの前後方向の凹溝26c,…及び凸条26d,…により、左右方向に滑りにくく、足を引っ掛けるようなこともなく、安全なステップフロア21とすることができ、また、作業フロア部21cの水捌けを良くすることができる。
【0022】
また、乗降フロア部21dに前後方向に平行な複数の細い凹溝26c,…及び凸条26d,…を構成するにあたり、例えばゴムにより別体で構成し、乗降フロア部21dに着脱自在に螺子止めするように構成してもよい。このようにすると、乗降フロア部21dを更に滑りにくくすることができる。
【0023】
次に、図9に基づきコンバインの伝動構成について説明する。
エンジン(図示省略)から走行クローラ2,2への伝動構成について説明する。操縦部4の後方下部にエンジン(図示省略)を配設し、エンジンの動力がベルト伝動装置(図示省略)を経て走行ミッションケース31上部のHST(静油圧式無段変速装置)32の入力軸32aに伝達される。HST32で正逆切替及び無段変速された動力は、HST出力軸32b、後述のクラッチ機構42を経由して走行ミッションケース31上部のミッション入力軸33に伝動される。
【0024】
ミッション入力軸33に伝達された動力は、副変速装置34により低速、中速、高速に変速され、センターギヤ35、左右サイドクラッチ装置36,36、センターギヤ35の後続ギヤ群35a、デフ機構37、左右走行ギヤ38,38を経て左右走行伝動軸39,39、左右駆動スプロケット40,40、走行クローラ2,2に伝達される。
【0025】
また、センターギヤ35とデフ機構37,37との間に軸架したクラッチ軸50に旋回クラッチ51と直進クラッチ52を並設し、この旋回クラッチ51,直進クラッチ52を択一的に入切するように構成している。
【0026】
しかして、直進クラッチ52の入りで旋回クラッチ51の切り時には、センターギヤ35、直進クラッチ52、後続ギヤ群35a、デフ機構37、左右走行ギヤ38,38を経て左右走行伝動軸39,39に直進動力が伝達される。また、旋回クラッチ51の入りで直進クラッチ52の切り時には、左右サイドクラッチ装置36,36の入/切により、センターギヤ35、旋回クラッチ51、後続ギヤ群35a、デフ機構37、左右走行ギヤ38,38を経て、左右走行伝動軸39,39に旋回動力が伝達される。
【0027】
また、走行ミッションケース31の上部には、HST出力軸32b及びクラッチ軸43を同一軸上に軸架し、HST出力軸32b及びクラッチ軸43にクラッチ機構42を設けている。クラッチ機構42を図9(B)に示すように、ミッション入力軸33に接続したり、また、HST出力軸32bから刈取クラッチ機構42を経由してクラッチ軸43に動力を伝達し、更に、クラッチ軸43からクラッチギヤ44、ギヤ45、ミッション入力軸33、ミッション入力軸33の一端に取り付けた刈取プーリ47を経由して、刈取搬送部7及び脱穀部5のフィードチエンに動力を伝達している。なお、ミッション入力軸33が副変速走行34により回転しているときには、変速に同期した動力が刈取プーリ47に伝達される。
【0028】
前記構成によると、走行を停止した状態でも、刈取クラッチ機構42をクラッチ軸43に接続すると、HST出力軸32bから刈取クラッチ機構42を経由して、刈取搬送部7及び脱穀部5のフィードチエンに動力を伝達することができ、畔際刈取作業等で走行を停止した状態で、刈取搬送部7にある既刈取穀稈を脱穀部5に搬送することができる。
【0029】
次に、図10に基づき前記刈取クラッチ機構42の操作構成について説明する。
操縦部3のサイド操作ボックス3cには、前記HST32変速用のHSTレバー61を設け、HSTレバー61を左右方向軸61a及び前後方向軸61b回りに軸支し、ガイド溝62の前後方向の中立位置62a、前進位置62b、後進位置62c、及び、左右方向の中立位置62c、連係解除位置62dに操作可能に構成している。
【0030】
また、操縦部3にはブレーキぺダル63を設け、ブレーキぺダル63にはブレーキワイヤ64の一端を長孔を介して連結し、他端を走行ミッションケース31内に設けたブレーキ装置(図示省略)に連結している。ブレーキぺダル63には、クラッチワイヤ65を介して前記左右サイドクラッチ装置36,36(図9に示す)に連動連結している。しかして、ブレーキぺダル63を踏み込むと、左右サイドクラッチ装置36,36を切りにした後に、ブレーキ装置(図示省略)を制動する構成である。
【0031】
また、HSTレバー61にはぺダル連動ワイヤ66を取り付けて、係止アーム66aを作動可能に構成し、HSTレバー61を中立位置62aに操作すると、踏み込み位置にあるブレーキぺダル63を連係アーム62aが係止するように構成している。
【0032】
前記構成によると、ブレーキぺダル63を踏み込むと、左右サイドクラッチ装置36,36を切りにし、次いでブレーキ装置(図示省略)を制動する。次いで、HSTレバー61を中立位置62aに操作すると、踏み込み位置にあるブレーキぺダル63を連係アーム62aが係止し、ブレーキぺダル63は固定される。従って、傾斜地でもコンバインを確実に停止させることができる。
【0033】
この状態で、刈取クラッチ操作具(図示省略)を操作し、前記刈取クラッチ機構42をクラッチ軸43に接続すると、走行車体1を停止状態で刈取搬送部7及び脱穀部5のフィードチエンに動力を伝達し、刈取搬送部7にある既刈取穀稈を脱穀部5に搬送することができる。
【0034】
また、HSTレバー61を中立位置62cから連係解除位置62dに操作すると、ブレーキぺダル63から連係アーム62aが離脱し、ブレーキぺダル63はバネにより復帰回動し、ブレーキ装置の制動が解除され、左右サイドクラッチ装置36,36が入りに復帰する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】操縦部の平面図
【図4】操縦部の側面図
【図5】操縦部の正面図
【図6】ステップフロアの底面図、側面図
【図7】ステップフレーム、ステップフロアの斜視図
【図8】ステップフロアの平面図、側面図、背面図
【図9】走行ミッションケースの展開切断正面図、側面図
【図10】操作装置の斜視図、平面図、正面図
【符号の説明】
【0036】
1 走行車体
3 操縦部
21 ステップフロア
21b 包囲凹部
22 ステップフレーム
22a 左右の板枠体
22b 底板
22c フレーム枠体(フレームパイプ)
23 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)上に設けた操縦部(3)のステップフレーム(22)を、上下方向姿勢の左右の板枠体(22a,22a)と該左の板枠体(22a)と右の板枠体(22a)との間を連結する左右方向のフレーム枠体(22c)と底板(22b)によって上部を開放した平面視で四辺形状の枠体に構成し、該ステップフレーム(22)の上部開放部を覆うように合成樹脂材からなる平面視四辺形状のステップフロア(21)を着脱自在に設け、該ステップフロア(21)の前側下部に前側係止凹部(21f)を設け、該前側係止凹部(21f)の後側に下方に向けて開口した包囲凹部(21b)を設け、前記ステップフレーム(21)の底板(22b)の前側部にバッテリ載置部を設け、該バッテリ載置部にバッテリ(23)を載置した状態で、ステップフロア(21)の前側係止凹部(21f)を前記フレーム枠体(22c)に係合させて該ステップフロア(21)をステップフレーム(22)の上部に装着すると、前記バッテリ(23)の上側部にステップフロア(21)の包囲凹部(21b)の前後側面と左右側面およびステップフロア(21)の下面が接近し、該ステップフロア(21)によってバッテリ(23)の移動が規制される構成としたことを特徴とする車両の操縦部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−125017(P2009−125017A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304450(P2007−304450)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】