説明

車両の機器搭載構造

【課題】フロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持する。
【解決手段】フロントサイドフレーム2の車幅方向内側の側面に互いに前後方向に離間して固定され、バキュームポンプユニット1が締結部材によって締結固定された前側及び後側固定ブラケット4,5を設ける。バキュームポンプユニット1と前側固定ブラケット4との第1締結部C1は、衝突時にフロントサイドフレーム2が座屈変形することによって前側固定ブラケット4が後側に移動したときにその締結が解除される。バキュームポンプユニット1と後側固定ブラケット5との締結部は、フロントサイドフレーム2側の第2締結部C2と、フロントサイドフレーム2とは反対側の第3締結部C3とからなる。第2締結部C2は、衝突時に第1締結部C1の締結が解除された後にバキュームポンプユニット1が第3締結部C3を中心としてフロントサイドフレーム2とは反対側に回動すべくその締結が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントサイドフレームに機器を配設した車両の機器搭載構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントサイドフレームにブレーキ用バキュームポンプ等の機器を配設することが従来技術として知られている。例えば、特許文献1では、フロントサイドフレームにインバータをインバータ取付具を介して取り付けている。このインバータ取付具は、インバータが載置される載置部と、この載置部を支持する支持部とを備えている。載置部は、前後一対のF字状パイプ部材を有している。前側F字状パイプ部材の連結部は、後側F字状パイプ部材の連結部に挿入されている。そして、両F字状パイプ部材は、車両の衝突時に互いに車両前後方向にスライドするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−35181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントサイドフレームは、車両衝突時にその衝撃吸収を行うため、座屈変形するようになっている。ここで、特許文献1では、インバータが載置部に固定されているため、インバータによって、車両衝突時における両F字状パイプ部材のスライドが妨げられ、フロントサイドフレームの屈曲変形特性が阻害されるという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、車両のフロントサイドフレームに機器を配設した車両の機器搭載構造において、フロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、車両の衝突時に機器が、該機器と後側固定ブラケットとの締結部のうち車両のフロントサイドフレームとは反対側の締結部を中心としてフロントサイドフレームとは反対側に回動するように、フロントサイドフレームに機器を配設したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明は、車両のフロントサイドフレームに機器を配設した車両の機器搭載構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記フロントサイドフレームの車幅方向一方側の側面に互いに車両前後方向に離間して固定され、上記機器が締結部材によって締結固定された前側及び後側固定ブラケットを備えており、上記機器と上記前側固定ブラケットとの締結部は、車両の衝突時に上記フロントサイドフレームが座屈変形することによって上記前側固定ブラケットが車両後側に移動したときにその締結が解除される第1締結部からなっており、上記機器と上記後側固定ブラケットとの締結部は、上記フロントサイドフレーム側の第2締結部と、上記フロントサイドフレームとは反対側の第3締結部とからなっており、上記第2締結部は、車両の衝突時に上記第1締結部の締結が解除された後に上記機器が上記第3締結部を中心として上記フロントサイドフレームとは反対側に回動すべく、その締結が解除されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、車両の衝突時にフロントサイドフレームが座屈変形することによって前側固定ブラケットが車両後側に移動したときに、機器と前側固定ブラケットとの第1締結部の締結が解除され、その後に、機器が、機器と後側固定ブラケットとの締結部のうちフロントサイドフレームとは反対側の第3締結部を中心としてフロントサイドフレームとは反対側に回動するように、機器と後側固定ブラケットとの締結部のうちフロントサイドフレーム側の第2締結部の締結が解除される。このように、車両の衝突時に機器がフロントサイドフレームとは反対側に回動して退避するため、前側及び後側固定ブラケット間の突っ張りがなくなり、機器によってフロントサイドフレームの屈曲変形特性が阻害されることがない。したがって、フロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記締結部材は、ボルト及びナットを有しており、上記第1締結部は、上記機器又は上記前側固定ブラケットに車両前後方向に延びるように形成され、上記ボルトが挿通されるスリットを有していて、車両の衝突時に上記ボルトが該スリットから離脱することによって、その締結が解除されるように構成されており、上記第2締結部は、上記機器又は上記後側固定ブラケットに車幅方向に延びるように形成され、上記ボルトが挿通されるスリットを有していて、車両の衝突時に上記ボルトが該スリットから離脱することによって、その締結が解除されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、車両の衝突時にボルトがスリットから離脱することによって、第1及び第2締結部の締結が解除されるため、簡単な構成でフロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、車両の走行駆動用モータを上記フロントサイドフレームにマウント支持するマウント装置をさらに備えており、上記マウント装置は、上記走行駆動用モータに固定されたモータ側ブラケットと、上記フロントサイドフレームに固定された車体側ブラケットと、該両ブラケット間に配設されたマウント本体とを有しており、上記後側固定ブラケットは、上記車体側ブラケットと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、後側固定ブラケットを、車両の走行駆動用モータをフロントサイドフレームにマウント支持するマウント装置の車体側ブラケットと一体に形成しているため、後側固定ブラケットの剛性を向上させることができる。
【0014】
第4の発明は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、上記後側固定ブラケットは、その前端に車両後側に向かって上記フロントサイドフレームとは反対側に傾斜するように形成され、車両の衝突時に上記機器が当接することによって該機器が回動するのを促進する回動促進部を有していることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、後側固定ブラケットに、その前端に車両後側に向かってフロントサイドフレームとは反対側に傾斜するように形成され、車両の衝突時に機器が当接することによって機器が回動するのを促進する回動促進部を設けているため、車両の衝突時に確実に、機器がフロントサイドフレームとは反対側に回動して退避するので、フロントサイドフレームの屈曲変形特性をより一層良好に維持することができる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、上記フロントサイドフレームの車幅方向両側の側面には、車両の衝突時に該フロントサイドフレームが座屈変形するのを促進する変形促進部がそれぞれ形成されており、上記変形促進部のうち上記フロントサイドフレームの車幅方向一方側の側面に形成されたものは、該車幅方向一方側の側面における上記前側及び後側固定ブラケットが固定された部分以外の部分に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、フロントサイドフレームが座屈変形するのを促進する変形促進部を、フロントサイドフレームの車幅方向一方側の側面における前側及び後側固定ブラケットが固定された部分以外の部分に形成しているため、前側及び後側固定ブラケットによってフロントサイドフレームの屈曲変形特性が阻害されることがなく、フロントサイドフレームの屈曲変形特性をより一層良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両の衝突時にフロントサイドフレームが座屈変形することによって前側固定ブラケットが車両後側に移動したときに、機器と前側固定ブラケットとの第1締結部の締結が解除され、その後に、機器が、機器と後側固定ブラケットとの締結部のうちフロントサイドフレームとは反対側の第3締結部を中心としてフロントサイドフレームとは反対側に回動するように、機器と後側固定ブラケットとの締結部のうちフロントサイドフレーム側の第2締結部の締結が解除されるため、前側及び後側固定ブラケット間の突っ張りがなくなり、機器によってフロントサイドフレームの屈曲変形特性が阻害されることがなく、フロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る機器搭載構造が適用された電気自動車の前部のモータルーム内にブレーキ用バキュームポンプユニットを配設した状態を車両前側から見た図である。
【図2】モータルーム内にバキュームポンプユニットを配設した状態を上側から見た図である。
【図3】モータルーム内にバキュームポンプユニットを配設した状態を下側から見た図である。
【図4】モータルーム内にバキュームポンプユニットを配設した状態を車両左側から見た図である。
【図5】バキュームポンプユニットを取り外した状態を車両左前側かつ上側から見た図である。
【図6】上側ブラケットを示す平面図である。
【図7】下側ブラケットを示す平面図である。
【図8】バキュームポンプユニットの、車両の前面衝突前の状態を上側から見た図である。
【図9】バキュームポンプユニットの、車両の前面衝突直後の状態を上側から見た図である。
【図10】バキュームポンプユニットの、車両の前面衝突直後であって図9から僅かに経過した後の状態を上側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明の実施形態に係る機器搭載構造が適用された電気自動車(以下、単に車両という)の前部のモータルーム内にブレーキ用バキュームポンプユニット1(以下、単にバキュームポンプユニット1という)を機器として配設した状態を示し、図1は、車両前側から見た図であり、図2は、上側から見た図であり、図3は、下側から見た図であり、図4は、車両左側から見た図である。図5は、バキュームポンプユニット1を取り外した状態を車両左前側かつ上側から見た図である。上記車両についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。また、図2〜図5において、車両前側を矢印Frで示している。
【0022】
上記モータルーム内の車幅方向両端部には、横断面略矩形状の左右一対のフロントサイドフレーム2(図1〜図5では右側フロントサイドフレーム2のみ図示)が前後方向に延びるように配設されている。これら両フロントサイドフレーム2の前端には、クラッシュカン3(後述する図8〜図10のみ図示)がそれぞれ配設されている。右側フロントサイドフレーム2の左側側面(車幅方向内側の側面)に、前側及び後側固定ブラケット4,5を介して、上記バキュームポンプユニット1が配設されている。各フロントサイドフレーム2の車幅方向両側の側面には、車両の前面衝突時に該フロントサイドフレーム2が座屈変形するのを促進する凹状ビード2a(変形促進部)がそれぞれ形成されている。本実施形態では、右側フロントサイドフレーム2の右側側面には、凹状ビード2aが3つ形成されている一方、その左側側面には凹状ビード2aが1つ形成されている。この左側側面に形成された凹状ビード2aは、該左側側面における前側及び後側固定ブラケット4,5が固定された部分以外の部分、具体的には、前側及び後側固定ブラケット4,5の間に形成されている。
【0023】
上記バキュームポンプユニット1は、略円柱状をなしているバキュームポンプ本体10と、略環状をなしている上側ブラケット11(図6も参照)と、略環状をなしている下側ブラケット12(図7も参照)と、ハーネス13と、キャッチタンク14とを有している。バキュームポンプ本体10は、上側及び下側ブラケット11,12の中央開口を通って、上側部分が上側ブラケット11から上側に、下側部分が下側ブラケット12から下側にそれぞれ突出している。バキュームポンプ本体10の上側部分の前側及び後側は、該バキュームポンプ本体10にそれぞれ配設された前側及び後側マウントラバー15を介して、上側ブラケット11の前側及び後側部分にそれぞれマウント支持されている。
【0024】
上記上側ブラケット11は、その周方向に互いに間隔を開けて配設された3つのマウントラバー16を介して、下側ブラケット12にマウント支持されている。上記下側ブラケット12は、略環状をなしかつ3つのマウントラバー16が周方向に互いに間隔を開けて配設されたブラケット本体12aと、このブラケット本体12aの前側部分から前側に向かって右側(車幅方向外側)に傾斜した状態で延びている第1片部12bと、ブラケット本体12aの後側部分の右側から後側に向かって右側に傾斜した状態で延びている第2片部12cと、ブラケット本体12aの後側部分の左側(車幅方向内側)から後側に延びている第3片部12dと、ブラケット本体12aの後側部分から上側に延びている上側鉛直部12eとを有している。ブラケット本体12aの下面には、その前側部分から下側に延びている下側鉛直部12fが配設されている。尚、図7では、図を見易くするため、上側及び下側鉛直部12e,12fの図示を省略している。
【0025】
上記ブラケット本体12aと上記第1片部12bとの間には、段部が該第1片部12bが該ブラケット本体12aよりも上下方向高さ位置が僅かに低くなるように形成されている。第1片部12bの先端部には、第1スリット17が前後方向に延びかつ後側に開口するように形成されている。この第1スリット17の幅は、後側に行くに従って徐々に大きくなっている。これにより、バキュームポンプユニット1の前側固定ブラケット4への組付性が向上する。上記第2片部12cの先端部には、第2スリット18が車幅方向に延びかつ右側に開口するように形成されている。この第2スリット18の幅は、右側に行くに従って徐々に大きくなっている。これにより、バキュームポンプユニット1の後側固定ブラケット5への組付性が向上する。上記第3片部12dの中央部分には、円状のポンプ側挿通孔19が形成されている。上記上側鉛直部12eには、上記ハーネス13が取付部材20を介して取付固定されている。上記下側鉛直部12fには、上記キャッチタンク14が取付固定されている。
【0026】
上記前側固定ブラケット4は、右側フロントサイドフレーム2の左側側面の前端部に固定されている。前側固定ブラケット4は、上下方向に延びかつ右側フロントサイドフレーム2の左側側面と締結部材(ボルト及びナット)40を介して結合された右側鉛直部41と、この右側鉛直部41の上端から左側に延びている水平部42と、この水平部42の前端の左側部分から下側に延びている前側鉛直部43と、水平部42の後端の右側部分から下側に延びている後側鉛直部44とを有している。右側鉛直部41は、前側及び後側鉛直部43,44よりも上下方向長さが長い。水平部42の前側部分の左側における上記第1スリット17に対応する部分には、円状の第1挿通孔42aが形成されている。また、水平部42の後側部分の左側には、切欠き42bが上記バキュームポンプ本体10の下側部分に対応するように形成されている。前側鉛直部43は、後側鉛直部44よりも上下方向長さが短い。
【0027】
上記後側固定ブラケット5は、右側フロントサイドフレーム2の左側側面における前側固定ブラケット4が固定された部分よりも後側部分に上記前側固定ブラケット4と前後方向に離間して固定されている。後側固定ブラケット5は、車幅方向に延びている水平部50と、この水平部50の前端における中央部から左端までの部分から、後側に向かって左側(右側フロントサイドフレーム2とは反対側)に直線的に傾斜した状態で下側に延びている回動促進部51と、水平部50の後端の右側部分から下側に延びている鉛直部52とを有している。水平部50は、上記前側固定ブラケット4の水平部42と上下方向高さ位置が略同じになっている。水平部50の右端部における上記第2スリット18に対応する部分には、円状の第2挿通孔50aが形成されている。また、水平部の左端部における上記ポンプ側挿通孔19に対応する部分には、円状の第3挿通孔50bが形成されている。回動促進部51は、上記バキュームポンプ本体10の下側部分に対応するように形成されていて、鉛直部52よりも上下方向長さが短くなっている。
【0028】
上記バキュームポンプユニット1は、上記第1挿通孔42a及び上記第1スリット17にこの順に挿通された第1ボルト60及び第1ナット61(締結部材)によって、上記前側固定ブラケット4の水平部42の上面に締結固定されている一方、上記第2挿通孔50a及び上記第2スリット18にこの順に挿通された第2ボルト62及び第2ナット63、並びに、上記第3挿通孔50b及び上記ポンプ側挿通孔19にこの順に挿通された第3ボルト64及び第3ナット65によって、上記後側固定ブラケット5の水平部50の上面に締結固定されている。これら各ボルト60,62,64は、第1〜第3挿通孔42a,50a,50bの周縁部にその下側から溶接固定されている。以下、バキュームポンプユニット1と前側固定ブラケット4との締結部を第1締結部C1(第1片部12b(第1スリット17の周縁部)及び前側固定ブラケット4における該第1片部12bに対応する部分)と、バキュームポンプユニット1と後側固定ブラケット5との締結部のうち、右側(右側フロントサイドフレーム2側)のものを第2締結部C2(第2片部12c(第2スリット18の周縁部)及び後側固定ブラケット5における該第2片部12cに対応する部分)と、左側(右側フロントサイドフレーム2から離間する側)のものを第3締結部C3(第3片部12d(ポンプ側挿通孔19の周縁部)及び後側固定ブラケット5における該第3片部12dに対応する部分)という。
【0029】
上記左右のフロントサイドフレーム2間に、上記車両を駆動するパワーユニット(図示せず)が配設されている。このパワーユニットは、走行駆動用モータを含むモータユニットと、該モータユニットのモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構を含むトランスアクスルとが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなるものである。パワーユニットの全体としての軸心は、車幅方向に延びている。本実施形態では、トランスアクスルがモータユニットの左側に位置する。
【0030】
パワーユニットの左右両端部は、左側及び右側マウント装置7(図1〜図5では右側マウント装置7のみ図示)を介して、左右のフロントサイドフレーム2にそれぞれマウント支持(弾性支持)されている。右側マウント装置7は、モータ側ブラケット70と、車体側ブラケット71と、これら両ブラケット70,71間(詳しくは、後述の第1及び第3ブラケット70a,72間)に配設された、ゴムブッシュを含むマウント本体(図示せず)とを有している。モータ側ブラケット70は、マウント本体に連結された第1ブラケット70aと、この第1ブラケット70aと締結部材70bを介して結合されかつパワーユニットに固定された第2ブラケット(図示せず)とからなる。また、車体側ブラケット71は、上記マウント本体に連結された第3ブラケット72と、第3ブラケット72と締結部材73を介して結合されかつ右側のフロントサイドフレーム2に固定された第4ブラケット74とからなる。
【0031】
上記第4ブラケット74は、フレーム側ブラケット75と、マウント側前側ブラケット76と、マウント側後側ブラケット77とを有している。フレーム側ブラケット75は、前後方向に延びかつ右側フロントサイドフレーム2の上面と締結部材78を介して結合された第1水平部75aと、この第1水平部75aの左端から下側に延びている鉛直部75bと、この鉛直部75bの下端から左側に延びている第2水平部75cとを有している。
【0032】
上記マウント側両ブラケット76,77は、上記第2水平部75cの上面の前側及び後側部分に互いに前後方向に離間してそれぞれ固定されている。マウント側各ブラケット76,77は、車幅方向に延びる水平部76a,77aと、この水平部76a,77aの前後端から下側にそれぞれ延びかつ第2水平部75cに結合された前後一対の鉛直部76b,77bとを有している。これら各鉛直部76b,77bの下面の左側部分は、左側に向かって上側に傾斜している。マウント側前側ブラケット76の前側鉛直部76bの前面には、板状部材79が取付固定されている。
【0033】
マウント側前側ブラケット76の水平部76aの上面には、上記後側固定ブラケット5の鉛直部52の下端が溶接固定されている。また、後側固定ブラケット5の水平部50及び鉛直部52の右端は、上記フレーム側ブラケット75における鉛直部75bの左側側面の前端部に溶接固定されている。以上のようにして、後側固定ブラケット5は、上記車体側ブラケット71と一体に形成されている。
【0034】
上記第3ブラケット72の前側及び後側部分は、締結部材73を介して、マウント側前側及び後側ブラケット76,77の水平部76a,77aの上面に、その左側部分は、締結部材73を介して、フレーム側ブラケット75の第1水平部75aの上面に、それぞれ締結固定されている。
【0035】
以下、バキュームポンプユニット1の、車両の前面衝突時の状態を説明する。図8は、バキュームポンプユニット1の、車両の前面衝突前の状態を上側から見た図であり、図9は、バキュームポンプユニット1の、車両の前面衝突直後の状態を上側から見た図であり、図10は、バキュームポンプユニット1の、車両の前面衝突直後であって図9から僅かに経過した後の状態を上側から見た図である。尚、図8〜図10では、車両の右側オフセット衝突時の状態を示しており、第1及び第2締結部C1,C2の締結解除の様子を見易くするため、第1〜第3ナット61,63,65の図示を省略している。また、図8〜図10において、車両前側を矢印Frで示している。
【0036】
車両において前面衝突が生じた場合、その前面衝突が、クラッシュカン3及びフロントサイドフレーム2の両方が潰れるような衝突時には、図9に示すように、左右のフロントサイドフレーム2が座屈変形する(前後方向に潰れる)ことによって、その衝撃吸収が行われる。このとき、右側フロントサイドフレーム2の前端部の座屈変形に伴って、右側フロントサイドフレーム2の前端部に固定された前側固定ブラケット4が後側に移動する。この前側固定ブラケット4の前端部の後退によって、第1ボルト60が第1スリット17の後側開口を通って該第1スリット17から離脱して、第1締結部C1の締結が解除される。
【0037】
そして、第1締結部C1の締結解除後に、前側固定ブラケット4の切欠き42bがバキュームポンプ本体10の下側部分の前側に当接すること等によって、図10に示すように、第2ボルト62が第2スリット18の右側開口を通って該第2スリット18から離脱して、第2締結部C2の締結が解除されるとともに、バキュームポンプユニット1が逃げ場を求めて、第3締結部C3(第3ボルト64。図8のみ図示)を中心として左側(右側フロントサイドフレーム2とは反対側)に回動する。つまり、バキュームポンプユニット1は、前面衝突が生じた場合、その衝撃力が第3締結部C3の締結力よりも遙かに大きいため、第1及び第2締結部C1,C2の締結が解除されると、第3締結部C3の締結状態が維持された状態で該第3締結部C3を中心として回動するようになっている。このとき、バキュームポンプ本体10の下側部分の後側が、後側に向かって左側に傾斜している回動促進部51(図3等を参照)に当接(干渉)することによって、バキュームポンプユニット1が左側に回動するのが促進される。
【0038】
以上のように、車両の前面衝突時にバキュームポンプユニット1が左側に回動することによって、前側及び後側固定ブラケット4,5間の突っ張りがなくなり、フロントサイドフレーム2が前端から後端へと順次、座屈変形していく。
【0039】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、車両の前面衝突時に右側フロントサイドフレーム2が座屈変形することによって前側固定ブラケット4が後側に移動したときに、バキュームポンプユニット1と前側固定ブラケット4との第1締結部C1の締結が解除され、その後に、バキュームポンプユニット1が、バキュームポンプユニット1と後側固定ブラケット5との締結部のうち右側フロントサイドフレーム2とは反対側の第3締結部C3を中心として右側フロントサイドフレーム2とは反対側に回動するように、バキュームポンプユニット1と後側固定ブラケット5との締結部のうち右側フロントサイドフレーム2側の第2締結部C2の締結が解除される。このように、車両の前面衝突時にバキュームポンプユニット1が右側フロントサイドフレーム2とは反対側に回動して退避するため、前側及び後側固定ブラケット4,5間の突っ張りがなくなり、バキュームポンプユニット1によって右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性が阻害されることがない。したがって、右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性を良好に維持することができる。
【0040】
また、車両の前面衝突時に第1及び第2ボルト60,61が第1及び第2スリット17,18から離脱することによって、第1及び第2締結部C1,C2の締結が解除されるため、簡単な構成で右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性を良好に維持することができる。
【0041】
また、後側固定ブラケット5を、車両の走行駆動用モータを右側フロントサイドフレーム2にマウント支持するマウント装置7の車体側ブラケット71と一体に形成しているため、後側固定ブラケット5の剛性を向上させることができる。
【0042】
また、後側固定ブラケット5に、その前端に後側に向かって右側フロントサイドフレーム2とは反対側に傾斜するように形成され、車両の前面衝突時にバキュームポンプユニット1が当接することによってバキュームポンプユニット1が回動するのを促進する回動促進部51を設けているため、車両の前面衝突時に確実に、バキュームポンプユニット1が右側フロントサイドフレーム2とは反対側に回動して退避するので、右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性をより一層良好に維持することができる。
【0043】
また、右側フロントサイドフレーム2が座屈変形するのを促進する凹状ビード2aを、右側フロントサイドフレーム2の左側側面における前側及び後側固定ブラケット4,5が固定された部分以外の部分に形成しているため、前側及び後側固定ブラケット4,5によって右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性が阻害されることがなく、右側フロントサイドフレーム2の屈曲変形特性をより一層良好に維持することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、機器搭載構造を電気自動車に適用したが、電気自動車以外の他の車両、例えば、ハイブリッド車等に適用してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、機器をバキュームポンプユニット1としたが、これに限らず、例えば、電動ウォーターポンプユニットや二次電池ユニット、負圧を蓄える蓄圧タンクユニット等であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、バキュームポンプユニット1を右側フロントサイドフレーム2に配設したが、左側フロントサイドフレームに配設してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、バキュームポンプユニット1をフロントサイドフレーム2の車幅方向内側の側面に配設したが、車幅方向外側の側面に配設してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、第1及び第2締結部C1,C2を単数としたが、複数としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、第1及び第2スリット17,18をバキュームポンプユニット1に形成したが、それぞれ、前側及び後側固定ブラケット4,5に形成してもよい。この場合、第1スリットを前側に、第2スリットを左側に開口させる。そして、バキュームポンプユニット1に第1及び第2スリット17,18の代わりに円状の挿通孔を形成する。
【0050】
また、上記実施形態では、回動促進部51を直線的に傾斜させたが、曲線的に傾斜させてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、変形促進部を凹状ビード2aとしたが、これに限らず、例えば、凸状ビードとしてもよい。
【0052】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0053】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明に係る車両の機器搭載構造は、フロントサイドフレームの屈曲変形特性を良好に維持することが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 バキュームポンプユニット(機器)
17 第1スリット
18 第2スリット
2 フロントサイドフレーム
2a 凹状ビード(変形促進部)
4 前側固定ブラケット
5 後側固定ブラケット
51 回動促進部
60 第1ボルト(締結部材)
61 第1ナット(締結部材)
62 第2ボルト(締結部材)
63 第2ナット(締結部材)
64 第3ボルト(締結部材)
65 第3ナット(締結部材)
7 マウント装置
70 モータ側ブラケット
71 車体側ブラケット
C1 第1締結部
C2 第2締結部
C3 第3締結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントサイドフレームに機器を配設した車両の機器搭載構造であって、
上記フロントサイドフレームの車幅方向一方側の側面に互いに車両前後方向に離間して固定され、上記機器が締結部材によって締結固定された前側及び後側固定ブラケットを備えており、
上記機器と上記前側固定ブラケットとの締結部は、車両の衝突時に上記フロントサイドフレームが座屈変形することによって上記前側固定ブラケットが車両後側に移動したときにその締結が解除される第1締結部からなっており、
上記機器と上記後側固定ブラケットとの締結部は、上記フロントサイドフレーム側の第2締結部と、上記フロントサイドフレームとは反対側の第3締結部とからなっており、
上記第2締結部は、車両の衝突時に上記第1締結部の締結が解除された後に上記機器が上記第3締結部を中心として上記フロントサイドフレームとは反対側に回動すべく、その締結が解除されるように構成されていることを特徴とする車両の機器搭載構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の機器搭載構造において、
上記締結部材は、ボルト及びナットを有しており、
上記第1締結部は、上記機器又は上記前側固定ブラケットに車両前後方向に延びるように形成され、上記ボルトが挿通されるスリットを有していて、車両の衝突時に上記ボルトが該スリットから離脱することによって、その締結が解除されるように構成されており、
上記第2締結部は、上記機器又は上記後側固定ブラケットに車幅方向に延びるように形成され、上記ボルトが挿通されるスリットを有していて、車両の衝突時に上記ボルトが該スリットから離脱することによって、その締結が解除されるように構成されていることを特徴とする車両の機器搭載構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の機器搭載構造において、
車両の走行駆動用モータを上記フロントサイドフレームにマウント支持するマウント装置をさらに備えており、
上記マウント装置は、上記走行駆動用モータに固定されたモータ側ブラケットと、上記フロントサイドフレームに固定された車体側ブラケットと、該両ブラケット間に配設されたマウント本体とを有しており、
上記後側固定ブラケットは、上記車体側ブラケットと一体に形成されていることを特徴とする車両の機器搭載構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の機器搭載構造において、
上記後側固定ブラケットは、その前端に車両後側に向かって上記フロントサイドフレームとは反対側に傾斜するように形成され、車両の衝突時に上記機器が当接することによって該機器が回動するのを促進する回動促進部を有していることを特徴とする車両の機器搭載構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の機器搭載構造において、
上記フロントサイドフレームの車幅方向両側の側面には、車両の衝突時に該フロントサイドフレームが座屈変形するのを促進する変形促進部がそれぞれ形成されており、
上記変形促進部のうち上記フロントサイドフレームの車幅方向一方側の側面に形成されたものは、該車幅方向一方側の側面における上記前側及び後側固定ブラケットが固定された部分以外の部分に形成されていることを特徴とする車両の機器搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−112270(P2013−112270A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262189(P2011−262189)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】