車両の熱源制御装置
【課題】車両に搭載された複数の熱源からの熱供給を制御する熱源制御装置において、熱を供給するために消費される燃料量を減少させる。
【解決手段】空調御装置54は、複数の熱源(効率可変及び冷却水、ヒートポンプシステム30)から熱交換部(ヒータコア23、室内熱交換器37)へ供給されるように要求される要求熱量を算出する。エネルギ制御装置51は、各熱源について供給する熱量と熱費との関係を算出し、この関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する。
【解決手段】空調御装置54は、複数の熱源(効率可変及び冷却水、ヒートポンプシステム30)から熱交換部(ヒータコア23、室内熱交換器37)へ供給されるように要求される要求熱量を算出する。エネルギ制御装置51は、各熱源について供給する熱量と熱費との関係を算出し、この関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱源からの熱供給を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両で消費される燃料量を減少させる観点から、様々な技術が開発されている。例えば、車載主機として、エンジンに加えて電動機を備えるハイブリッド車や、車両の停止時にエンジンを自動停止するアイドルストップシステムが開発されている。
【0003】
一般に、車室内の暖房においては、エンジンから冷却水等に廃棄される熱を利用している。しかしながら、上記の例に挙げた省燃費車においては、アイドルストップや、エンジン自体の効率向上により、エンジンから廃棄される熱量が減少し、エンジンからの廃熱だけでは暖房に必要な熱量を確保できないおそれがある。
【0004】
そこで、エンジンからの廃熱を利用した暖房装置の他に、電動機で駆動されるヒートポンプ式の暖房装置を備える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3704788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のものでは、車室内の暖房に使用される熱源が複数存在することとなり、エネルギの効率的利用の観点から、どちらの熱源をどれだけ使用するかという問題が生じる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、複数の熱源から熱を供給する指針が確立されておらず、未だ改善の余地を残すものとなっている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された複数の熱源からの熱供給を制御する熱源制御装置において、熱を供給するために消費される燃料量を減少させることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給を制御する熱源制御装置であって、前記複数の熱源から前記熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量を算出する要求熱量算出手段と、各熱源について、供給する熱量と、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費との関係を算出する熱費算出手段と、各熱源から供給する熱量と前記熱費との関係に基づいて、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の前記熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する熱量配分決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本願発明者らは、熱を供給するために熱源で消費される燃料量を少なくするために、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を小さくすることを考案した。そして、熱を供給するために複数の熱源全体で消費される燃料量を少なくするためには、複数の熱源全体の熱費を小さくすればよいという結論に至った。
【0012】
この点、上記構成によれば、複数の熱源から熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量が算出される。一方、各熱源について、供給する熱量と上記熱費との関係が算出される。
【0013】
そして、各熱源から供給する熱量と熱費との関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量を供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、前記熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量を算出する熱量増分燃料量算出手段を備え、前記熱量配分決定手段は、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つ各熱源の前記熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量が算出される。この熱量増分燃料量は、熱源から供給される熱量を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものである。
【0016】
複数の熱源により要求熱量を供給する場合に、各熱源から熱量を供給する配分(各熱源の供給負荷配分)を以下のように決定することにより、複数の熱源全体の熱費を最小とすることができる。その結果、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0017】
例えば、熱源1及び熱源2により熱交換部へ熱を供給する場合に、熱源1及び熱源2の熱量増分燃料量が、それぞれ200[g/kWh]及び210[g/kWh]であるとする。そして、熱源1から供給する熱量を1[kW]増加させ、熱源2から供給する熱量を1[kW]減少させたとする。その結果、熱源1及び熱源2により供給される熱量の合計は変わらないが、熱源1及び熱源2で消費される燃料量の合計は10[g/h]減少することとなる。
【0018】
すなわち、上記内容は、複数の熱源間で熱量増分燃料量に差がある場合には、供給する熱量の合計を変えずに、消費される燃料量を減少させることができることを意味する。換言すれば、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致した状態は、消費される燃料量をそれ以上減少させることができない状態である。したがって、その状態を形成するように各熱源の供給負荷配分を決定することにより、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0019】
この点、上記構成によれば、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つ各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量を供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各熱源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、各熱源において熱量と前記熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する熱量関係算出手段を備え、前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更しつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その各熱源の熱量の合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、各熱源において熱量と熱量増分燃料量との関係である熱量関係が算出される。このため、熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更する場合に、各熱源において熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量を算出することができる。
【0022】
そして、その各熱源の熱量の合計が要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明では、前記熱量関係算出手段は各熱源において供給可能な熱量の上限値を設定し、前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて増加させつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その熱量が前記上限値に達した熱源においては供給する熱量を前記上限値とし、その他の熱源から供給する熱量と前記上限値との合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0024】
一般に、各熱源には供給可能な熱量の上限値が存在する。このため、熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更する際に、一部の熱源において熱量増分燃料量に対応する熱量が上限値に達する場合がある。
【0025】
この場合、供給する熱量が上限値に達していない複数の熱源では、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの熱源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する熱量が上限値に達している熱源では、その他の熱源との間で熱量増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0026】
例えば、熱源1及び熱源2により要求熱量が供給されている状態において、供給する熱量が上限値に達している熱源1の熱量増分燃料量が200[g/kWh]であり、供給する熱量が上限値に達していない熱源2の熱量増分燃料量が210[g/kWh]であるとする。この場合、上述したように、熱源1から供給する熱量を1[kW]増加させ、熱源2から供給する熱量を1[kW]減少させれば、熱源1及び熱源2により要求熱量を供給しつつ、熱源1及び熱源2で消費される燃料量の合計を10[g/h]減少させることができる。しかしながら、熱源1では供給する熱量が上限値に達しているため、供給する熱量をそれ以上増加させることができない。したがって、熱源1及び熱源2で消費される燃料量をそれ以上減少させることができず、その状態において消費される燃料量が最も少なくなる。
【0027】
この点、上記構成によれば、各熱源において供給可能な熱量の上限値が設定され、熱量増分燃料量が各熱源で互いに一致させられて増加されつつ、各熱源において熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量が算出される。そして、その熱量が上限値に達した熱源においては供給する熱量が上限値とされ、その他の熱源で消費される燃料量が最も少なくなるように、各熱源から熱量を供給する配分が決定される。
【0028】
すなわち、供給する熱量が上限値に達していない熱源においては、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの熱源から供給される熱量と、供給する熱量が上限値に達した熱源の熱量との合計が要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分が決定される。したがって、供給する熱量が上限値に達していない熱源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいては複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明では、前記熱量関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における前記熱量関係を算出することを特徴とする。
【0030】
各熱源における熱量増分燃料量は、エンジンの運転状態に応じて変化する。例えば、点火時期遅角や可変動弁機構の状態変更により熱を供給する熱源や、エンジンの排気が有する熱エネルギを利用する熱源、熱源としての冷却水等では、この熱量増分燃料量がエンジンの運転状態に応じて変化する。このため、各熱源における熱量と熱量増分燃料量との関係(熱量関係)も、エンジンの運転状態に応じて変化することとなる。
【0031】
この点、上記構成によれば、車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における上記熱量関係が算出される。このため、その時々のエンジンの運転状態に応じて、各熱源から熱量を供給する配分を適切に決定することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明では、前記複数の熱源は、前記車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して前記熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、前記エンジンには、前記冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されており、前記エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、前記電動ポンプによる前記冷却水の吐出量を制御するポンプ制御手段を備えることを特徴とする。
【0033】
一般に、車室内の暖房においては、エンジンから冷却水に廃棄される熱を利用している。ここで、冷却水からヒータコア等の熱交換部へ供給される熱量は、熱交換部を流通する冷却水の流量に応じて変化する。
【0034】
この点、上記構成によれば、複数の熱源は、車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、エンジンには、冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されている。そして、エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、電動ポンプによる冷却水の吐出量が制御されるため、熱交換部へ供給される熱量を適切に制御することができる。
【0035】
請求項7に記載の発明では、前記複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0036】
電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源、例えばヒートポンプ等においては、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を、どのように扱うかが問題となる。
【0037】
この点、上記構成によれば、複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて熱費が算出される。このため、電動熱源の電力費を熱費に換算することができ、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分を決定することができる。
【0038】
請求項8に記載の発明では、前記車両には複数の電源が搭載されており、前記複数の電源から前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力を算出する要求電力算出手段と、各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、を備え、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0039】
電動熱源に供給される電力は、燃料を消費することによって生み出される。したがって、電動熱源に電力を供給するために消費される燃料量を減少させることにより、電動熱源の熱費を減少させることができる。ここで、上述した請求項1に記載の発明と同様の考え方により、電力を供給するために複数の電源全体で消費される燃料量を少なくすることができる。
【0040】
すなわち、上記構成によれば、車両には複数の電源が搭載されており、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力、すなわち複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給すべき電力が算出される。一方、各電源について、供給する電力と上記電力費との関係が算出される。
【0041】
そして、各電源から供給する電力と電力費との関係に基づいて、複数の電源から供給される電力の合計が要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ要求電力を供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0042】
その上で、電動熱源について、最小の電力費に基づいて熱費が算出される。このため、各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を最適化した状態において、電動熱源の熱費を算出することができる。そして、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源が電動熱源を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0043】
請求項9に記載の発明では、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つ各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0044】
上記構成によれば、上述した請求項2に記載の発明と同様の考え方により、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。この電力増分燃料量は、電源から供給される電力を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものである。
【0045】
そして、複数の電源から供給される電力の合計が要求電力に一致し、且つ各電源の電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ要求電力を供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0046】
請求項10に記載の発明では、各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更しつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0047】
上記構成によれば、上述した請求項3に記載の発明と同様の考え方により、各電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更する場合に、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力を算出することができる。
【0048】
そして、その各電源の電力の合計が要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0049】
請求項11に記載の発明では、前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて増加させつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0050】
一般に、各電源には供給可能な電力の上限値が存在する。このため、電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更する際に、一部の電源において電力増分燃料量に対応する電力が上限値に達する場合がある。
【0051】
この場合、供給する電力が上限値に達していない複数の電源では、各電源の電力増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの電源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する電力が上限値に達している電源では、その他の電源との間で電力増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の電源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0052】
この点、上記構成によれば、上述した請求項4に記載の発明と同様の考え方により、各電源において供給可能な電力の上限値が設定され、電力増分燃料量が各電源で互いに一致させられて増加されつつ、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。そして、その電力が上限値に達した電源においては供給する電力が上限値とされ、その他の電源で消費される燃料量が最も少なくなるように、各電源から電力を供給する配分が決定される。
【0053】
すなわち、供給する電力が上限値に達していない電源においては、各電源の電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源から供給される電力と、供給する電力が上限値に達した電源の電力との合計が要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力が上限値に達していない電源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいては複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0054】
請求項12に記載の発明では、前記複数の電源はバッテリを含み、前記電力関係算出手段は、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて前記一定値としつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が前記要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする。
【0055】
バッテリでは、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。したがって、バッテリでは、供給する電力に対しては電力増分燃料量が変化しない。換言すれば、バッテリでは、電力増分燃料量を変化させずに、供給する電力を変更することができる。
【0056】
この点、上記構成によれば、複数の電源はバッテリを含み、バッテリにおいて電力に対する電力増分燃料量が一定値とされる。そして、電力増分燃料量が各電源で互いに一致させられて上記一定値とされ、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。このとき、一般にバッテリを除く電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。
【0057】
そして、バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が要求電力に一致するように、バッテリから供給される電力が決定される。このため、バッテリ及びその他の電源により電力を供給する場合において、要求電力を供給することができるとともに、消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0058】
請求項13に記載の発明では、前記車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、前記電動熱源を含む前記電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力を算出する負荷要求電力算出手段と、前記バッテリを除く電源から前記バッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する充電要求電力算出手段と、各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、を備え、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0059】
バッテリに充電する場合には、この充電に使用される電力も含めて、複数の電源から供給すべき電力を算出する必要がある。なお、バッテリに充電する場合、すなわち充電要求電力が0でない場合には、バッテリからは電力が供給されない。一方、バッテリから放電する場合には、バッテリに充電されず、充電要求電力が0となる。
【0060】
この点、上記構成によれば、車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、バッテリを除く電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力が算出される。また、バッテリを除く電源からバッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力が算出される。一方、各電源について、供給する電力と上記電力費との関係が算出される。
【0061】
そして、各電源から供給する電力と電力費との関係に基づいて、バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、負荷要求電力及び充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費が最小となるように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリの充電に使用される電力も含めた総要求電力を供給することができるとともに、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0062】
その上で、電動熱源について、最小の電力費に基づいて熱費が算出される。このため、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を最適化した状態において、電動熱源の熱費を算出することができる。そして、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源が電動熱源を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0063】
請求項14に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段と、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つ前記バッテリを除く各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0064】
上記構成によれば、バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。
【0065】
そして、バッテリを除く各電源の電力増分燃料量が互いに一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0066】
請求項15に記載の発明では、各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて変更しつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0067】
上記構成によれば、各電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、バッテリを除く各電源で電力増分燃料量を互いに一致させて変更する場合に、バッテリを除く各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力を算出することができる。
【0068】
そして、その各電源の電力の合計が総要求電力に一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0069】
請求項16に記載の発明では、前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて増加させつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0070】
上記構成によれば、各電源において供給可能な電力の上限値が設定され、バッテリを除く各電源で電力増分燃料量が互いに一致させられて増加されつつ、バッテリを除く各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。そして、その電力が上限値に達した電源においては供給する電力が上限値とされ、その他の電源で消費される燃料量が最も少なくなるように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。
【0071】
すなわち、供給する電力が上限値に達していない電源においては、各電源の電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源から供給される電力と、供給する電力が上限値に達した電源の電力との合計が総要求電力に一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力が上限値に達していない電源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいてはバッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0072】
請求項17に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源から前記配分により前記負荷要求電力を供給するとともに前記バッテリへの充電を行う際に、前記バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費を算出する充電電力費算出手段を備え、前記充電要求電力算出手段は、前記充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力を前記充電要求電力とすることを特徴とする。
【0073】
上述したように、バッテリでは、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。このため、バッテリに充電するために消費される燃料量が少ない状態でバッテリに充電することにより、バッテリから電力を供給する場合に消費される燃料量を減少させることができる。
【0074】
ここで、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を考えると、この電力費を小さくすることにより、消費される燃料量を少なくすることができる。そして、複数の電源から電力を供給する場合には、複数の電源全体の電力費を小さくすることにより、複数の電源全体で消費される燃料量を少なくすることができる。
【0075】
この点、上記構成によれば、バッテリを除く各電源から上記配分(各電源の最適な供給負荷配分)により負荷要求電力を供給するとともにバッテリへの充電を行う際に、バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費が算出される。
【0076】
そして、充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で要求電力が算出されるため、バッテリを除く各電源の供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源全体で充電電力費が基準よりも少ない状態でバッテリに充電することができる。さらに、充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力が充電要求電力とされるため、消費される燃料量が基準よりも少ない状態において、バッテリに効率的に充電することができる。その結果、バッテリの充電及び放電を通じて、複数の電源全体で消費される燃料量を減少させることかできる。
【0077】
請求項18に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源から前記配分により電力を供給する際に、前記バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、前記総要求電力で割った最適電力費を算出する最適電力費算出手段を備え、前記電力増分燃料量算出手段は、電力と前記最適電力費とに基づいて、前記バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出し、前記電力関係算出手段は、前記合計電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出するとともに、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、前記電力配分決定手段は、前記充電要求電力が0である場合に、前記電力増分燃料量を前記一定値としつつ、前記合計電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力と前記合計電源から供給する電力との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする。
【0078】
上記構成によれば、バッテリを除く各電源から上記配分(各電源の最適な供給負荷配分)により電力を供給する際に、バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、総要求電力で割った最適電力費が算出される。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。すなわち、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくした場合において、バッテリを除く複数の電源が1つの合計電源とみなされ、この合計電源について電力増分燃料量が算出される。
【0079】
そして、合計電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出されるとともに、バッテリにおいて電力に対する電力増分燃料量が一定値とされる。ここで、合計電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。これに対して、バッテリでは、電力増分燃料量が一定値とされた状態において、供給する電力を変更することができる。
【0080】
また、充電要求電力が0である場合には、バッテリから電力を供給することができる。そして、バッテリから供給する電力と合計電源から供給する電力との合計が総要求電力に一致するように、バッテリから供給される電力が決定される。このため、バッテリ及びその他の電源から電力を供給する場合において、総要求電力を供給することができるとともに、消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0081】
請求項19に記載の発明では、前記電力関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における前記電力関係を算出することを特徴とする。
【0082】
各電源における電力増分燃料量は、エンジンの運転状態に応じて変化する。例えば、エンジンを動力源とする発電機や、エンジンの排気が有する運動エネルギ又は熱エネルギを利用する発電機、エンジンの冷却水が有する熱エネルギを利用する発電機等では、この電力増分燃料量がエンジンの運転状態に応じて変化する。このため、各電源における電力と電力増分燃料量との関係(電力関係)も、エンジンの運転状態に応じて変化することとなる。
【0083】
この点、上記構成によれば、車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における上記電力関係が算出される。このため、その時々のエンジンの運転状態に応じて、各電源から電力を供給する配分を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本システムにおける熱供給及び電力供給の制御概要を示すブロック図。
【図2】本システムの全体構成を示す模式図。
【図3】熱供給制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】要求熱量を算出するための機能ブロック図。
【図5】エンジン動作点と燃料消費率との関係を示すマップ。
【図6】エンジン動作点と追加熱量との関係を示す図。
【図7】追加熱量発生による燃料増加量を示すグラフ。
【図8】供給熱量と熱費との関係を示す熱費特性図。
【図9】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図10】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図11】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図12】総供給熱量と最適配分熱量との関係を示すグラフ。
【図13】ベース熱量配分の処理手順を示すフローチャート。
【図14】電力供給制御の処理手順を示すフローチャート。
【図15】冷却水温度と燃料消費量との関係を示すグラフ。
【図16】廃熱発電電力と燃料増加量との関係を示す図。
【図17】供給電力と電力増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図18】総供給電力と最適配分電力との関係を示すグラフ。
【図19】充電要求電力算出の処理手順を示すフローチャート。
【図20】バッテリ残容量と負荷要求電力と基準電力費との関係を示すマップ。
【図21】充電電力と充電電力費と基準電力費との関係を示すグラフ。
【図22】充電電力と充電電力費と基準電力費との関係を示すグラフ。
【図23】ベース電力配分の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0086】
本実施形態は、車室内の暖房に際して、車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給、及び複数の電源から複数の電気負荷への電力供給を制御するシステムとして具体化している。
【0087】
図1に、本システムにおける熱供給及び電力供給の制御概要を示す。同図に示すように、本システムでは、複数の暖房熱源から各熱交換部へ熱を供給するために消費される燃料を最も少なくすべく、各熱源から熱を供給する配分(各熱源の供給負荷配分)を決定する。
【0088】
複数の熱源としては、エンジンの冷却水の熱量及びヒートポンプを備えている。エンジンの冷却水には、エンジンから熱を供給し、その際にはエンジンの廃熱量調整手段(1),(2),(3)(エンジン熱源)を使用する。したがって、複数の熱源には、エンジンの廃熱量調整手段(1),(2),(3)が含まれる。
【0089】
このとき、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて熱を創出するために消費される燃料量が最も少なくなるように、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて熱を供給する組み合わせを決定する。具体的には、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を考慮して、廃熱量調整手段(1),(2),(3)全体の熱費が最も小さくなるように熱管理を行う(熱創出制御)。そして、冷却水の熱管理において、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて指令熱量が供給されるようにエンジンを制御する。
【0090】
さらに、冷却水からヒータコア(熱交換部)を介して車室内の空気へ供給する熱量と、ヒートポンプシステム(電動熱源)の室内熱交換器(熱交換部)から車室内の空気へ供給する熱量とを考慮する。そして、冷却水及びヒートポンプシステムから車室内の空気へ熱を供給するために消費される燃料量が最も少なくなるように、冷却水及びヒートポンプシステムから熱を供給する配分を決定する。
【0091】
この際にも、冷却水及びヒートポンプシステム全体の熱費が最も小さくなるように熱管理を行う(最適配分アルゴリズム)。そして、車室内空気の熱管理において、冷却水へ供給されるように要求する要求熱量を冷却水の熱管理へ送信するとともに、ヒートポンプシステムから指令熱量が供給されるように制御する。なお、ヒータコアから指令熱量が供給されるように制御する。
【0092】
また、車両は複数の電源を備えており、ヒートポンプシステムを駆動する際に、ヒートポンプシステムを含む電気負荷へ電力を供給するために消費される熱量が最も少なくなるように、各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を決定する。
【0093】
複数の電源としては、エンジンの発電機、バッテリ、及びエンジンからの廃熱を利用した廃熱発電機を備えている。ここで、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を考慮して、これらの電源全体の熱費が最も小さくなるように電力管理を行う(最適配分アルゴリズム)。そして、車室内空気の熱管理において、ヒートポンプシステムを含む電気負荷へ供給されるように要求する要求電力を電力管理へ送信するとともに、電力管理において各電源から指令電力が供給されるように制御する。
【0094】
ヒートポンプシステムの熱費を算出する際には、上記のように各電源の最適な供給負荷配分により電力を供給する場合において、ヒートポンプシステムに電力を供給するために消費される燃料量を考慮する。そして、この電力を供給するために消費される燃料量が、ヒートポンプシステムから熱を供給するために消費される燃料量であると考える。
【0095】
以上のように、車室内の暖房に際して、本システム全体で消費される燃料量が最も少なくなるように、各部における熱供給及び電力供給を制御する。
【0096】
図2に、本システムの全体構成を示す。同図に示すように、本システムは、エンジン10を備えている。エンジン10は、火花点火式の多気筒ガソリンエンジンであり、スロットルバルブ、吸気バルブ、排気バルブ、燃料噴射弁、点火装置、及び吸排気の各バルブの開閉タイミングをそれぞれ調整する吸気側バルブ駆動機構及び排気側バルブ駆動機構等を備えている。
【0097】
エンジン10の駆動力は、駆動軸11を介して変速機12に伝達され、さらにデファレンシャル13を介して車軸14及び車輪15に伝達される。一方、車両の減速時には、車輪15の回転力が、車軸14及びデファレンシャル13を介して変速機12に伝達され、さらに駆動軸11を介してエンジン10に伝達される。
【0098】
エンジン10のシリンダブロックやシリンダヘッドの内部にはウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケットに冷却水が循環供給されることで、エンジン10の冷却が行われる。ウォータジャケットには冷却水配管等からなる冷却水循環経路21が接続されており、その循環経路21には、冷却水を循環させるための電動ポンプ22が設けられている。そして、電動ポンプ22の吐出量が変更されることにより、循環経路21を循環する冷却水の流量が調整される。
【0099】
循環経路21は、エンジン10の出口側においてヒータコア23(熱交換部)に向けて延び、ヒータコア23を経由して再びエンジン10に戻るようにして設けられている。ヒータコア23には、ブロアファン24から空調風が送り込まれるようになっており、空調風がヒータコア23又はその付近を通過することで、ヒータコア23からの受熱により空調風が加熱され、温風が車室内に供給される。
【0100】
このような構成において、電動ポンプ22の吐出量及びブロアファン24の駆動状態が制御されることにより、冷却水からヒータコア23を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
【0101】
また、循環経路21の途中には、廃熱発電機25(電源)が設けられている。廃熱発電機25は、廃熱回生器を備えており、廃熱回生器は冷却水の熱を動力に変換する。廃熱発電機25は、廃熱回生器によって変換された動力により発電し、その電力を電源回路40に供給する。廃熱発電機25の駆動状態が制御されることにより、その発電量が調整される。
【0102】
また、本システムは、ヒートポンプシステム30(電動熱源)を備えている。このヒートポンプシステム30は、電動コンプレッサ31と、コンプレッサ用インバータ32と、室内熱交換器37(熱交換部)と、室外熱交換器34と、ファン35と、膨張弁36と、アキュムレータ33と、これらを接続する冷媒配管等からなる冷媒循環経路39と、ヒートポンプ制御装置38とを備えている。
【0103】
電動コンプレッサ31は冷媒を圧縮して加熱し、この加熱された冷媒が室内熱交換器37へ送出される。そして、上記ブロアファン24から空調風が送り込まれ、空調風が室内熱交換器37の付近を通過することで、室内熱交換器37からの受熱により空調風が加熱され、温風が車室内に供給される。このとき、冷媒は放熱により冷却される。
【0104】
室内熱交換器37を流通した冷媒は膨張弁36により減圧され、室外熱交換器34へ送出される。そして、ファン35により室外熱交換器34へ外気が送り込まれ、この外気からの受熱により冷媒が加熱される。この加熱された冷媒は、アキュムレータ33を経由して電動コンプレッサ31に送出される。
【0105】
電動コンプレッサ31はコンプレッサ用インバータ32から供給される電力により駆動され、インバータ32はヒートポンプ制御装置38によって制御される。そして、ヒートポンプ制御装置38及びインバータ32を通じて、電動コンプレッサ31の駆動状態が制御されることにより、ヒートポンプシステム30から室内熱交換器37を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
【0106】
本システムは、電源として、上記廃熱発電機25の他に、エンジン10の駆動力により駆動される発電機41(エンジン発電機)、及び充放電を行うバッテリ43を備えている。発電機41は、オルタネータやモータジェネレータである。上記の各電源は、電源回路40に接続されており、この電源回路40へ電力を供給する。また、バッテリ43は、電源回路40から供給される電力により充電される。
【0107】
発電機41の駆動状態が制御されることにより、その発電量が調整される。なお、発電機41は、車両の減速時において、車輪15から変速機12等を介してエンジン10に伝達される回転力に基づいて回生発電を行う。
【0108】
また、この電源回路40には、電気負荷として、上記電動ポンプ22、上記コンプレッサ用インバータ32、負荷42、及び補機等を含む電気負荷が接続されている。そして、これらの電気負荷には、電源回路40を通じて電力が供給される。
【0109】
本システムは、エネルギ制御装置51、エンジン制御装置52、発電機制御装置53、及び空調制御装置54を備えている。これらの制御装置51〜54は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種制御を実施する。
【0110】
エネルギ制御装置51は、空調制御装置54を通じて、上記電動ポンプ22、ブロアファン24、及びヒートポンプ制御装置38を制御する。また、エネルギ制御装置51は、発電機制御装置53を通じて、廃熱発電機25及び発電機41の駆動状態を制御する。さらに、エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52を通じて、エンジン10の運転状態を制御する。
【0111】
本システムでは、エアコンのオン/オフが切り替え操作されるA/Cスイッチ61、運転者が車室内温度の目標値(目標温度)を設定するための温度設定スイッチ62、車室内温度を検出する車室内温度センサ63、外気温を検出する外気温センサ64、ヒータコア23又は室内熱交換器37からエアコン吹き出し口を介して車室内へ送られる空調風の温度(吹出口温度)を検出する吹出口温度センサ65等を備えている。これらの各センサ等の信号は、空調制御装置54に適宜入力される。
【0112】
エンジン制御装置52は、エンジン10の運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。本システムでは、エンジン10の回転速度を検出する回転速度センサ67、吸入空気量や吸気管負圧といったエンジン10の負荷を検出するエンジン負荷センサ68、ウォータジャケット内の冷却水の温度を検出する水温センサ69、車両の速度を検出する車速センサ66等を備えている。これら各センサの検出信号は、エンジン制御装置52に適宜入力される。
【0113】
エンジン制御装置52は、上述した各種センサから検出信号を入力し、それらの検出信号に基づいて燃料噴射弁による燃料噴射制御、点火装置による点火時期制御、吸気側及び排気側のバルブ駆動機構によるバルブタイミング制御、スロットルバルブによる吸気量制御を実施する。
【0114】
上記の各種制御において基本的には、エンジン10の運転状態に応じてエンジン軸効率(燃料消費率)が異なる。この点に鑑み、その時々の運転状態において、エンジン軸効率が最高となるように、適合データ等に基づいて各種制御を実施する。
【0115】
ここで、本システムでは、エンジン10の熱エネルギである廃熱の発生量(発生熱量)を増加させる場合、その廃熱増加に伴う燃料増加量が最も少なくなるように、発生熱量を増加させるための制御(熱創出制御)を実施する。熱創出制御について具体的には、本制御システムは、発生熱量を増加させるためのエンジン10の廃熱量調整手段を複数備えている。そして、暖房要求等の熱利用要求が生じた場合、その複数の廃熱量調整手段全体の上記熱費が最も小さくなるように、廃熱量調整手段の組み合わせを決定する。
【0116】
熱創出制御について更に詳しく説明する。本システムでは、例えば、
・点火時期を遅角させると廃熱量が増加すること
・吸気バルブの開弁時期を進角側に変更すると(吸気早開きにすると)廃熱量が増加すること
・排気バルブの開弁時期を遅角側に変更すると(排気遅開きにすると)廃熱量が増加すること
等のうち1つ又は複数を利用することによりエンジン廃熱量の増加を図っている。また、エンジン10の廃熱量調整手段として本実施形態では、例えば、
(1)排気バルブの遅開きを実施する手段
(2)吸気バルブの早開きを実施する手段
(3)点火遅角を実施する手段
を備えている。
【0117】
図3に、本システムによる熱供給制御の処理手順を示す。この処理は、所定の周期をもって繰返し実行される。また、この処理と並行して、電力供給制御の処理が、所定の周期をもって繰返し実行される。なお、これらの熱供給制御及び電力供給制御の各ステップにおける処理の詳細については後述する。
【0118】
空調制御装置54は、運転者の暖房要求に応じて、複数の熱源から熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量を算出する(S11)。そして、空調制御装置54は、この要求熱量をエネルギ制御装置51へ送信する。
【0119】
続いて、エネルギ制御装置51は、各熱源の熱費を算出する(S12)。このとき、ヒートポンプシステム30の熱費は、供給する熱量と、使用する電力を供給するために消費される燃料量とから算出する。その際に、その電力を供給するために消費される燃料量が、最も少なくなるように複数の電源からの電力供給を制御する。この電力供給制御については後述する。
【0120】
続いて、エネルギ制御装置51は、各熱源において熱費0の状態(熱を供給するために消費される燃料量が0の状態)で供給することのできる熱量であるベース熱量を算出する(S13)。エネルギ制御装置51は、各熱源の熱費に基づいて、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として求める。そして、この関数に基づいて、供給する熱量と、この関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する。さらに、この熱量関係に基づいて、熱を供給するために熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算を行う(S14)。
【0121】
続いて、この最適化演算の結果に基づいて、要求熱量に対して各熱源のベース熱量を配分し、要求熱量の残りである残要求熱量を追加要求熱量として各熱源に配分する(S15)。その後、各熱源について、配分されたベース熱量と配分された残要求熱量との和として、各熱源に対する指令熱量を算出する(S16)。
【0122】
そして、エネルギ制御装置51は、空調制御装置54及びエンジン制御装置へ各熱源に対する指令熱量を送信し、空調制御装置54及びエンジン制御装置は、この指令熱量が供給されるように各熱源を制御する。
【0123】
図14に、本システムによる電力供給制御の処理手順を示す。この処理は、上記熱供給制御の処理と並行して、所定の周期をもって繰返し実行される。
【0124】
エネルギ制御装置51は、各電源において単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を算出するとともに(S41)、各電源において電力費0の状態(電力を供給するために消費される燃料量が0の状態)で供給することのできる電力であるベース電力を算出する(S42)。エネルギ制御装置51は、上記熱量の場合と同様にして、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、供給する電力と、この関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する。そして、この電力関係に基づいて、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算を行う(S43)。そして、このように最適化された電力の供給負荷配分に基づいて、ヒートポンプシステム30(電動熱源)の熱費を算出する(S44)。上述した熱供給制御のS12においては、ヒートポンプシステム30についてこのように算出された熱費が使用される。
【0125】
エネルギ制御装置51は、ヒートポンプシステム30が熱を供給するために要求する電力を空調制御装置54から受信するとともに、その他の電気負荷が要求する電力を受信し、それらに基づいてバッテリ43を除く電源から供給すべき負荷要求電力を算出する(S45)。加えて、エネルギ制御装置51は、バッテリ43を除く電源からバッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する(S46)。このとき、バッテリ43に充電する電力の電力費が基準よりも少ない状態で、最大の電力となるように充電要求電力を算出する。また、負荷要求電力と充電要求電力との合計である総要求電力を算出する。
【0126】
そして、エネルギ制御装置51は、上記最適化演算の結果に基づいて、総要求電力に対して各電源のベース電力を配分し、総要求電力の残りである残要求電力を追加要求電力として各電源に配分する(S47)。各電源について、配分されたベース電力と配分された追加要求電力との和として、各電源に対する指令電力を算出する(S48)。なお、充電要求電力が0である場合には、バッテリ43を除く各電源の供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源を1つの電源とみなした合計電源とバッテリ43とにおいて、最適な供給負荷配分を決定する。
【0127】
その後、エネルギ制御装置51は、この充電要求電力とその際に消費される燃料量とに基づいて、バッテリ43の電力費を更新する(S49)。
【0128】
次に、上述した熱供給制御における各ステップの処理の詳細について説明する。
【0129】
図4は、図3のS11において、要求熱量Qreqを算出するための機能ブロック図である。空調制御装置54は、吹出口温度・風量算出部M1、及び要求熱量算出部M2を備えている。
【0130】
吹出口温度・風量算出部M1では、マップ等を用いることにより、車速センサ66で検出される車速Vcと、温度設定スイッチ62で設定されるエアコン設定温度Tsetと、車室内温度センサ63で検出される車室内温度Tinと、外気温センサ64で検出される外気温Toutとをパラメータとして、エアコン吹き出し口温度の要求値(要求吹出口温度Treq)及びエアコン吹き出し口風量の要求値(要求吹出風量Vreq)を算出する。
【0131】
要求熱量算出部M2では、マップ等を用いることにより、吹出口温度・風量算出部M1で算出した要求吹出口温度Treq及び要求吹出風量Vreqと、外気温Toutとをパラメータとして要求熱量Qreqを算出する。
【0132】
次に、図3のS12において、各熱源の熱費を算出する処理の詳細について説明する。
【0133】
図5に、エンジン10の運転状態と燃料消費率との関係を表すマップの一例を示す。同図では、エンジン10の運転状態として、エンジン回転速度及びエンジントルクについて示している。
【0134】
本システムでは、エンジン10において燃料の燃焼により生じるエネルギのうち、熱エネルギを、エンジン10の冷却水を媒体として回収し再利用することでシステム全体としての燃費改善を図るようにしている。
【0135】
エンジン10の熱創出制御は、例えばエンジン軸効率最良点でのエンジン運転中に熱利用要求があり、その熱利用要求に伴い要求熱量Qreqが増加した場合において、エンジン軸効率最良点での発生熱量では要求熱量Qreqを満足できないときに、その熱量不足分を補うべく実施される。
【0136】
この場合、要求熱量Qreqを満足させるには、例えば図6に示すように、エンジン10の動作点をエンジン軸効率最良点Aから、前記廃熱量調整手段を用いて、これとは異なる点A’に移行させることにより、エンジン廃熱量をエンジン軸効率最良点Aでの発生熱量(追加熱量=0)よりも熱量ΔQだけ増加させる必要がある。このA→A’のエンジン動作点の移行により、エンジン軸効率最良点よりも燃料増加側(燃費悪化側)にエンジン10の動作点が移行され、エンジン軸効率最良点Aでの発生熱量(ベース熱量)に対して増加分の熱量(追加熱量ΔQ)が生成されることとなる。
【0137】
図7は、熱利用要求に伴い追加熱量を発生させる場合の燃料消費量について説明するための図である。図中、(a)はエンジン軸効率最良点Aで運転している場合の燃料消費量[g/h]を示し、(b)はエンジン軸効率最良点Aから点A’に移行させた場合の燃料消費量[g/h]を示している。
【0138】
エンジン軸効率最良点Aでは、例えばエンジン10の燃料燃焼エネルギのうち約25%が運動エネルギとしてのエンジン10の軸出力に変換され、約25%が冷却損失となり、その残りが補機損失や排気損失などのその他の損失となる。冷却損失分の熱エネルギはエンジン冷却水を媒体として回収され、その回収熱が車室内の暖房やエンジン暖機等に利用される。
【0139】
そして、熱利用要求に伴い要求熱量Qreqが増加したときにエンジン軸効率最良点Aでの冷却損失のみでは要求熱量Qreqを満足できない場合には、エンジン熱創出制御によりその不足分の熱量を追加熱量として発生させる。このとき、追加熱量の発生に伴い燃料消費量が増加することとなるが、燃費悪化抑制の観点からすると、追加熱量発生に伴う燃料増加量は極力小さいことが望ましい。そこで、熱創出制御は、同量の追加熱量発生に際して、燃料増加量が最小になるような、前記廃熱量調整手段(1),(2),(3),の組み合わせを決定し、追加熱量の発生を制御する。
【0140】
さらに、本願発明者らの知見によれば、所望量のエンジン廃熱を発生させる場合、その熱発生のための燃料増加量が、熱量増加を開始する時のエンジン動作点(エンジン10の運転状態)に応じて変化する。例えば、エンジン10を軸効率最良点で制御しているときに要求熱量Qreqを満足できなくなった場合、要求熱量Qreqの不足分を補うべくエンジン10の発生熱量を増加させる必要がある。
【0141】
このとき、熱量増加を開始する時のエンジン動作点が、図5における動作点Xの場合と、動作点Xとは異なる動作点Yの場合とでは、同量のエンジン廃熱を増加させるのに必要な燃料増加量が相違する。すなわち、熱量増加開始時におけるエンジン動作点に応じて、エンジン発生熱量に対する燃料増加量(燃料増加率)が異なる。また、燃料増加率は、エンジン動作点の他に、外気温等によっても相違する。
【0142】
燃料増加率について更に説明する。燃料増加率は、熱源としてのエンジン10から冷却水に供給される熱量(廃熱量)を増加させる場合の燃料消費に関するパラメータである。具体的には、エンジン熱創出制御により創出される増加分の熱量(追加熱量ΔQ)と、その追加熱量ΔQを発生させた場合に、燃料増加量が最小となるように廃熱量調整手段を組み合わせて使用した時の燃料噴射量の増加分(燃料増加量ΔF)との比率である。例えば、燃料増加率の1つとして、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を採用することができる。
【0143】
熱費Ct[g/kWh]=燃料増加量ΔF[g/h]/追加熱量ΔQ[kW]
図8は、エンジン動作点X(図5参照)における追加熱量ΔQ(供給熱量)に対する熱費Ctの関係を示す熱費特性図である。この熱費特性図は、予め実験等に基づいて算出してもよいし、モデル等に基づいてその都度算出してもよい。なお、この処理が、熱費算出手段としての処理に相当する。同図に示すように、熱費Ctは追加熱量ΔQに応じて異なり、例えばエンジン動作点Xの熱費特性では、追加熱量ΔQの設定範囲内において極小点を有している。
【0144】
追加熱量ΔQに対する熱費Ctの関係はエンジン動作点ごとに相違しており、例えば所定量の追加熱量Q1を発生させる場合には、動作点Xよりも動作点Yの方が熱費Ctが小さくなる。このため、エンジン10の発生熱量を追加熱量Q1だけ増加させる場合、その熱量増加開始時のエンジン動作点がYの場合には、動作点Xの場合に比べて燃料増加量が少なくて済む。すなわち、エンジン10の発生熱量を増加させる場合、エンジン10の熱エネルギを燃費の観点において効率よく発生できる場合とそうでない場合とがある。したがって、本システムでは、エンジン動作点(エンジン10の運転状態)に応じて、上記熱費特性図を算出している。
【0145】
また、本システムでは、熱源として、上記廃熱量調整手段(エンジン熱源)の他に、ヒートポンプシステム30(電動熱源)を備えている。このため、ヒートポンプシステム30についても、熱費特性図を算出している。
【0146】
具体的には、ヒートポンプシステム30では供給される電力により熱を創出することから、この電力を発電機41等の電源から供給するために消費される燃料量を考慮する。ここで、電力を供給するために消費される燃料消費量は、後述する図14のS43において、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化した、最適負荷配分で電力を供給した場合の、供給電力に対する単位電力当たりの燃料消費量(電力費)を算出して用いる。
【0147】
次に、図3のS13において、各熱源のベース熱量を算出する処理の詳細について説明する。
【0148】
廃熱量調整手段等のエンジン熱源においては、図7に示すように、エンジン軸効率最良点でエンジン10を運転している場合に、冷却損失分となっている熱エネルギをベース熱量とする。エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52からエンジン運転状態等の情報を受信し、エンジン運転状態等に基づいてこのベース熱量を算出する。
【0149】
ヒートポンプシステム30等の電動熱源においては、車両減速中に発電機41の回生発電により供給される電力、及び廃熱発電機25のベース電力により供給される電力によって、創出することのできる最大熱量をベース熱量とする。その際に、エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52からエンジン運転状態等の情報を受信し、エンジン運転状態等に基づいてベース熱量を算出する。なお、廃熱発電機25のベース電力については後述する。
【0150】
そして、エネルギ制御装置51は、各熱源のベース熱量を合計して、熱源全体の総ベース熱量Qbas_allを算出する。
【0151】
次に、図3のS14において、熱を供給するために熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算する処理の詳細について説明する。
【0152】
エネルギ制御装置51は、上記各熱源の熱費特性図に基づいて、各熱源において供給する熱量Qの複数点について、それぞれ対応する燃料消費量Fを算出する。具体的には、下記の式により、それぞれの燃料消費量Fを算出する。
【0153】
燃料消費量F=熱費Ct×熱量Q
そして、熱量Q及び燃料消費量Fの複数のデータに基づいて、これを最小二乗法等により二次関数に近似する。すなわち、燃料消費量Fを、供給する熱量Qの二次関数で表す。各熱源において、熱量Qと燃料消費量Fとの関係はそれぞれ異なったものとなる。なお、一般に、燃料消費量Fは、供給する熱量Qの二次〜四次の関数で近似することができる。
【0154】
ここで、複数の熱源により要求熱量Qreqを供給するとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくする各熱源の供給負荷配分は、以下の最適化問題を解くことにより求めることができる。すなわち、総要求熱量Qall、各熱源の供給熱量Q1,Q2,・・・,Qn、そのときに消費される燃料量F1,F2,・・・,Fnとして、
制約条件:Qall=Q1+Q2+・・・+Qn
目的関数:f=F1(Q1)+F2(Q2)+・・・+Fn(Qn)
において、総消費燃料量fを最も小さくする各熱源の供給負荷配分を求める問題となる。この問題の最適解は、以下のように、ラグランジュの未定乗数法によって求めることができる。
【0155】
目的関数:f(x1,x2,・・・,xn)
制約条件:g1(x1,x2,・・・,xn)=0
g2(x1,x2,・・・,xn)=0
g3(x1,x2,・・・,xn)=0
・
・
・
gm(x1,x2,・・・,xn)=0
決定変数:x1,x2,・・・,xn
という原問題を、新たな変数λ1,λ2,・・・,λm(ラグランジュ乗数)を導入し、下式のような制約条件のない問題に変換する。
【0156】
目的関数:L(x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm)
決定変数:x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm
ここで、Lはラグランジュ関数と呼ばれており、下式のように定義される。
【0157】
L(x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm)=f(x1,x2,・・・,xn)+λ1g1(x1,x2,・・・,xn)+・・・+λmg(x1,x2,・・・,xn)
一般に、x1,x2,・・・,xnが上記原問題の最適解であるための必要条件は、下式で表される。
【0158】
【数1】
この方式を、上述した各熱源の供給負荷配分の問題に適用すると、ラグランジュ関数は下式のように定義される。
【0159】
【数2】
最適解となるための必要条件は、各熱源の熱量Qiとラグランジュ乗数λとに対する上記数式2の1階微分が、それぞれ0になることである。すなわち、下記の数式3,4を満足するQ1,Q2,・・・Qnが、問題の最適解となる。
【0160】
【数3】
【0161】
【数4】
上記数式4は、制約条件そのものであることから、最適解は下式を満足する解として求めることができる。
【0162】
【数5】
ここで、dF/dQは、熱源から供給される熱量を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものであり、熱量増分燃料量と呼ぶこととする。上式は、この熱量増分燃料量が全ての熱源で等しいとき、すなわち各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致するときに、複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなること意味している。この原理は、一般に等λ則と呼ばれている。
【0163】
図9は、供給熱量Qと熱量増分燃料量dF/dQとの関係を示すグラフである。ここでは、熱源1,2,3の熱量増分燃料量dF/dQが、それぞれλ1,λ2,λ3の特性を有するものとする。このとき、燃料消費量Fは熱量Qの二次関数(aQ2+bQ+c)で近似されているため、この関数を熱量Qで1階微分すると一次関数(2aQ+b)となる。なお、このような、供給熱量Qと熱量増分燃料量dF/dQとの関係を熱量関係と呼ぶこととする。そして、この熱量関係を算出する処理が、熱量関係算出手段としての処理に相当する。
【0164】
同図において、特定のλsを仮定して横軸に平行な直線を引くと、この直線と各熱源の熱量増分燃料量との交点が求められる。このとき、それぞれの交点では、熱量増分燃料量の値が等しくなっており、上記数式5が満たされている。したがって、各交点における供給熱量Q1,Q2,Q3の合計が総要求熱量Qallに等しくなっていれば、上記数式4も同時に満たされることとなる。換言すれば、λsの値を変更して直線を上下させ、各交点における供給熱量Q1,Q2,Q3の合計が、総要求熱量Qallに等しくなる位置を求めればよい。
【0165】
また、一般に、各熱源には供給可能な熱量の上限値Qmax及び下限値Qminが存在する。このため、熱量増分燃料量dF/dQを各熱源で互いに一致させて変更する際に、一部の熱源において熱量増分燃料量に対応する熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達する場合がある。
【0166】
この場合、供給する熱量が上限値Qmax及び下限値Qminに達していない複数の熱源では、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの熱源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達している熱源では、その他の熱源との間で熱量増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0167】
したがって、このように供給可能な熱量の上限値Qmax及び下限値Qminによる制約を考慮した場合の最適解の条件は、下記の数式6〜8で表される。
【0168】
【数6】
【0169】
【数7】
【0170】
【数8】
ここで、上記の数式6〜8の条件は、模式的に図10のように表すことができる。
【0171】
すなわち、供給熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達した場合には、供給熱量はそれらの値によって制限される。したがって、各熱源の供給熱量が、各熱源の熱量増分燃料量と特定のλsとの交点における供給熱量となるようにするためには、各熱源の供給熱量の上限値Qmax及び下限値Qminにおいて、熱量増分燃料量を縦軸に並行にそれぞれ上下へ変化させればよい。このような図によれば、各熱源の熱量増分燃料量と特定のλsとの交点における供給熱量として、各熱源の供給熱量を求めることができる。
【0172】
例えば、同図において、各熱源1〜3の各供給熱量Q1〜Q3は、λsの直線との交点における供給熱量として求めることができる。すなわち、熱源1の供給熱量Q1は下限値Q1min(=0)と上限値Q1maxとの間の供給熱量Q1となり、熱源2の供給熱量Q2は下限値Q2min(=0)と上限値Q2maxとの間の供給熱量Q2となり、熱源3の供給熱量Q3は上限値Q3maxとなる。
【0173】
続いて、このようにして求めた熱量関係に基づいて、要求熱量Qreq(総供給熱量)と各熱源の供給負荷配分(最適配分熱量)との関係を算出する。ここでは、説明の簡便化のために、熱源が2つの場合について説明する。
【0174】
図11に示すように、供給熱量に対する熱源1,2の熱量増分燃料量が、それぞれλ1,λ2で表されるとする。このとき、各熱源1,2の供給熱量を最適に配分しつつ、その時々の供給熱量Q1,Q2の合計を求める。
【0175】
詳しくは、各熱源1,2の供給熱量が下限値となる場合の熱量増分燃料量のうち最小の熱量増分燃料量(λmin)から、特定のλsの値を増加させて直線を上へ移動させる。そして、その時々について、特定のλsの直線との交点における各熱源1,2の供給熱量Q1,Q2と、それらの合計Q1+Q2とを算出する。この処理を、各熱源1,2の供給熱量が上限値となる場合の熱量増分燃料量のうち、最大の熱量増分燃料量(λmax)まで行う。そして、各熱源1,2の供給熱量Q1,Q2の合計Q1+Q2(総供給熱量)と、各熱源の供給熱量Q1,Q2(最適配分熱量)との関係を算出する。
【0176】
この関係を図に表したものが図12である。
【0177】
同図に示すように、例えば、要求熱量QreqがQ1+Q2である場合には、横軸の総供給熱量がQ1+Q2となる点を探し、それ対応する各熱源1,2の最適配分熱量Q1,Q2を縦軸で読取ればよい。したがって、要求熱量Qreqが算出された場合に、各熱源1,2の最適な供給負荷配分(供給熱量Q1,Q2)を算出することができる。
【0178】
次に、図3のS15において、要求熱量Qreqに対して各熱源i(ここで、i=1の熱源をエンジンの冷却水熱量、i=2の熱源をヒートポンプとする。)のベース熱量Qbas(i)を配分し、要求熱量Qreqの残りである残要求熱量Qreq_lefを各熱源iに配分する処理の詳細について説明する。
【0179】
図13に、ベース熱量配分の処理手順を示す。
【0180】
各熱源iのベース熱量Qbas(i)の合計である総ベース熱量Qbas_allが、要求熱量Qreq以上であるか否か判定する(S21)。すなわち、要求熱量Qreqを総ベース熱量Qbas_allに全て配分することができるか否か、換言すれば、総ベース熱量Qbas_allによって要求熱量Qreqを供給することができるか否か判定する。
【0181】
総ベース熱量Qbas_allが要求熱量Qreq以上であると判定された場合には(S21:YES)、カウンタiをリセットする(S22)。そして、要求熱量Qreqを各熱源iのベース熱量Qbas(i)に配分した残りである残要求熱量Qreq_lefを、まずは要求熱量Qreqとし、全てのベース熱量Qbas(i)を一旦0とする(S23)。
【0182】
続いて、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上であるか否か判定する(S24)。すなわち、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)によって、残要求熱量Qreq_lefを供給することができるか否か判定する。
【0183】
上記判定において、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上でないと判定された場合には(S24:NO)、i番目の熱源のベース熱量に対して供給を要求する要求ベース熱量Qabas(i)を、ベース熱量Qbas(i)とする(S25)。すなわち、i番目の熱源に対して、ベース熱量Qbas(i)を全て供給するように要求する。
【0184】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを、残要求熱量Qreq_lefからi番目の熱源のベース熱量Qbas(i)を引いた値に更新し(S26)、カウンタiを1つ進める(S27)。
【0185】
このようにS24〜S27の処理を繰返し、残要求熱量Qreq_lefを各熱源iのベース熱量Qbas(i)に順次配分する。そして、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上であると判定された場合には(S24:YES)、i番目の熱源の要求ベース熱量Qabas(i)を残要求熱量Qreq_lefとする(S28)。すなわち、最後に残った残要求熱量Qreq_lefを、i番目の熱源のベース熱量に配分する。
【0186】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを0にした後(S29)、この一連の処理を一旦終了する(END)。すなわち、最後に残った残要求熱量Qreq_lefが、i番目の熱源のベース熱量に配分されたため、残要求熱量Qreq_lefを0とする。
【0187】
一方、総ベース熱量Qbas_allが要求熱量Qreq以上でないと判定された場合には(S21:NO)、全て熱源iの要求ベース熱量Qabas(i)をベース熱量Qbas(i)とする(S31)。すなわち、総ベース熱量Qbas_allによって要求熱量Qreqを供給することができないため、全ての熱源iに対してベース熱量Qbas(i)を全て供給するように要求する。
【0188】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを、残要求熱量Qreq_lefから総ベース熱量Qbas_allを引いた値に更新し(S32)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0189】
次に、各熱源iについて、ベース熱量Qbas(i)以外に供給を要求する追加要求熱量Qapl(i)の配分を決定する。
【0190】
ここで、残要求熱量Qreq_lefが0である場合には、各熱源iの追加要求熱量Qapl(i)を全て0とする。すなわち、この場合には、各熱源iに対して、ベース熱量Qbas(i)以外に熱量の供給を要求する必要がない。
【0191】
一方、残要求熱量Qreq_lefが0でない場合には、上述した熱量関係に基づいて、残要求熱量Qreq_lefを供給する場合において、各熱源iの追加要求熱量Qapl(i)の配分を決定する。すなわち、図12の例では、総供給熱量(Q1+Q2)を残要求熱量Qreq_lefとして、これに対応する各熱源iの最適配分熱量(Q1,Q2)を決定し、これを追加要求熱量Qapl(i)とする。これにより、熱費が0でない状態で供給する熱量(ベース熱量以外の熱量)を、各熱源iに最適に配分することができる。なお、この一連の処理が、熱量配分決定手段としての処理に相当する。
【0192】
その後、図3のS16において、各熱源iについて、配分されたベース熱量(要求ベース熱量Qabas(i))と配分された追加要求熱量Qapl(i)との和として、各熱源iに対する指令熱量Qa(i)を算出する。
【0193】
エネルギ制御装置51は、空調制御装置54及びエンジン制御装置へ各熱源iに対する指令熱量Qa(i)を送信し、空調制御装置54及びエンジン制御装置は、この指令熱量Qa(i)が供給されるように各熱源iを制御する。このとき、空調制御装置54は、ヒータコア23から車室内へ供給される熱量が指令熱量Qa(1)となるように、上記電動ポンプ22及びブロアファン24の駆動状態を制御する。また、熱創出制御は、指令熱量Qa(1)を発生すべく、各エンジン廃熱量調整手段を利用してエンジンの発生熱量を制御する。
【0194】
また、空調制御装置54は、ヒートポンプ制御装置38に指令をだして、ヒートポンプシステムから車室内へ供給される熱量が指令熱量Qa(2)になるように制御する。同時に、空調制御装置54はヒートポンプシステムが指令熱量Qa(2)を発生するために必要な電力を算出する。
【0195】
同様にして、上記の熱供給制御と並行して実行される電力供給制御における各ステップの処理の詳細について説明する。
【0196】
まず、図14のS41において、各電源において単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を算出する手順、及び図14のS42において、各電源のベース電力を算出する処理の詳細について説明する。
【0197】
発電機41の電力費は、発電機41の発電電力Pを発生させるために発電電力がゼロの場合のエンジントルクに対する、エンジンに必要な増加トルクΔTeを算出し、この増加トルクΔTeを発生させるために必要な燃料増加量ΔFに基づいて、燃料増加量ΔFを発電電力Pで割ることで算出することができる。
【0198】
この増加トルクΔTeは、発電電力、発電機41の発電効率、及びエンジン回転速度に基づいて算出することができる。そして、増加トルクΔTeを発生するために必要な燃料増加量ΔFは、エンジン動作点がエンジントルクの増加側へ変化したことにより、燃料消費率が変化し(例えば、図5のYからY‘への変化)、それにより生じた燃料消費量の変化として算出することができる。また、発電機41は、車両の減速時において、車輪15から変速機12等を介してエンジン10に伝達される回転力に基づいて回生発電を行う。このため、車両の減速時において発電機41により回生発電が行われている場合には、発電機41の電力費を0となるため、ベース電力を回生可能な最大発電電力とする。また、回生発電を行っていない時のベース電力はゼロとなる。
【0199】
廃熱発電機25では、エンジン10の冷却水の熱を利用して発電を行うため、この発電に伴って冷却水温度が低下した場合のエンジン摩擦損失等の増加によって生じる増加燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考える。
【0200】
ここで、エンジン10の冷却水温度と燃料消費量との関係は、図15のように表される。なお、この関係は、予め実験等に基づいて算出することができる。
【0201】
同図に示すように、冷却水温度がベース温度Twbよりも高い場合には、冷却水温度がベース温度Twbに至るまでは廃熱発電の発電電力を増加(冷却温度を低下)させても燃料消費量は増加しない。
【0202】
一方、冷却水温度がベース温度Twbよりも低くなるほど、エンジン10の摩擦抵抗等が大きくなるため、燃料消費量が増加する。このため、同図に示すように、例えば現在の冷却水温度が温度Tw2、廃熱発電を行った場合に冷却水温度がΔTwだけ低下し、温度がTw1になると予測される場合には、燃料消費量がΔFだけ増加し、廃熱発電によりΔFだけ燃料が消費されると考えることができる。
【0203】
したがって、廃熱発電機25による発電に伴う冷却水の低下温度ΔTwと、この低下温度ΔTwに対応する燃料増加量ΔFとの関係から、廃熱発電機25の電力費を算出することができる。この低下温度ΔTwは、廃熱発電機25の発電量、発電効率、及び冷却水系の熱容量に基づいて算出することができる。
【0204】
そして、廃熱発電機25の供給電力(廃熱発電電力)と、電力を供給するために消費される燃料量(燃料増加量ΔF)との関係は、図16のように表される。
【0205】
同図に示すように、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも小さい場合には、燃料増加量ΔFが0となる。このベース電力Pbasは、図15のベース温度Twbに対応しており、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも小さい場合には、冷却水温度がベース温度Twbよりも低下しないことを意味している。そして、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも大きくなると、冷却水温度がベース温度Twbよりも低下し、その低下に伴って燃料増加量ΔFが大きくなる。
【0206】
そして、廃熱発電機25の供給電力と、電力を供給するために消費される燃料量とに基づいて、発熱発電電力がベース電力Pbasよりも大きい部分について、廃熱発電機25の電力費を算出する。具体的には、燃料増加量ΔFを廃熱発電電力Pとベース電力Pbasの差分で割ることにより、電力費を算出する。これにより、廃熱発電機25について、供給電力に対する電力費の関係を示す電力費特性図を作成する。
【0207】
そして、各電源のベース電力を合計して、電源全体の総ベース電力Pbas_allを算出する。なお、バッテリ43の電力費については後述する。また、バッテリ43のベース電力は0である。
【0208】
次に、図14のS43において、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算する処理の詳細について説明する。この処理の手順は、上述した熱量の場合と同様である。すなわち、熱量Q、熱量増分燃料量dF/dQ、及び熱量関係を、それぞれ電力P、電力増分燃料量dF/dP、電力関係に代えて、ラグランジュの未定乗数法により最適解を求めればよい。なお、この処理が、電力増分燃料量算出手段としての処理に相当する。
【0209】
ここでは、熱量の場合と比較して、以下の点が異なっている。
【0210】
まず、バッテリ43を除く複数の電源(廃熱発電機25、発電機41)について、各電源の最適な供給負荷配分を決定する。なお、この処理が、電力配分決定手段としての処理に相当する。この処理の手順は、上述した熱量の場合と同様である。その際には、エネルギ制御装置51(電力関係算出手段)は、エンジン10の運転状態に応じて、各電源における上記電力関係を算出する。
【0211】
次に、バッテリ43を除く各電源から上記の最適な供給負荷配分により電力を供給する際に、バッテリ43を除く各電源で消費される燃料量の合計を、要求電力で割った最適電力費を算出する。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリ43を除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する。
【0212】
すなわち、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくした場合において、バッテリ43を除く複数の電源を1つの合計電源とみなし、この合計電源について電力増分燃料量を算出する。そして、合計電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する。
【0213】
バッテリ43では、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。したがって、バッテリ43では、供給する電力に対しては電力増分燃料量が変化しない。換言すれば、バッテリ43では、電力増分燃料量を変化させずに、供給する電力を変更することができる。
【0214】
ここで、バッテリ43に充電するために消費される燃料量は、バッテリ43を除く電源である発電機41及び廃熱発電機25の供給負荷配分を最適化した上で、発電機41及び廃熱発電機25がそれぞれ供給する電力とそれぞれの電力費とに基づいて算出する。そして、バッテリ43では、供給する電力に対して電力増分燃料量が変化しないため、電力増分燃料量と電力費とが等しくなる。
【0215】
図17に、電源1(バッテリ43)及び電源2(合計電源)について、供給電力Pと電力増分燃料量dF/dPとの関係である電力関係を示す。この電力関係に基づいて、各電源の供給電力の合計(総供給電力)と、各電源の供給電力(最適配分電力)との関係を算出する。
【0216】
同図に示すように、供給電力に対する電源1,2の電力増分燃料量が、それぞれλ1,λ2で表されるとする。このとき、各電源1,2の供給電力を最適に配分しつつ、その時々の供給電力P1,P2の合計を求める。
【0217】
詳しくは、バッテリ43の電力増分燃料量(λ1)は一定値(λ1s)であるため、電源1の電力増分燃料量と電源2の電力増分燃料量とが一致するのは特定のλsが一定値λ1sに一致する場合のみとなる。このため、特定のλsが一定値λ1sよりも小さい場合には、電源2の電力増分燃料量(λ2)と特定のλsの直線との交点によって、電源2から供給する電力P2が求まり、電源1から供給する電力P1は0となる。特定のλsが一定値λ1sに一致する場合には、電源2から供給する電力P2は一定となり、電源1の供給電力P1が増加する。電源1の供給電力P1が上限値P1maxに達した後は、電源2から供給する電力P1maxで一定となり、電源2の電力増分燃料量(λ2)と特定のλsの直線との交点によって、電源2から供給する電力P2が求まる。
【0218】
そして、その時々について、特定のλsの直線との交点における各電源1,2の供給電力P1,P2と、それらの合計P1+P2とを算出する。この関係を図に表したものが図18である。この図に基づいて、横軸の総供給電力が要求電力Preqとなる点を探し、それ対応する各電源1,2の最適配分電力P1,P2を縦軸で読取ればよい。したがって、要求電力Preqaが算出された場合に、各電源1(バッテリ),2(合計電源)の最適な供給負荷配分(供給電力P1,P2)を算出することができる。ひいては、電源2(合計電源)への供給負荷配分(供給電力P2)に対する、合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分は、前述のように算出されているため、バッテリ43を含む各電源の最適な供給負荷配分を算出することができる。なお、この処理が、電力配分決定手段としての処理に相当する。
【0219】
次に、図14のS44において、このように最適化された電力の供給負荷配分に基づいて、ヒートポンプシステム30の熱費を算出し、上述した熱供給制御において、ヒートポンプシステム30について、このように算出された熱費を使用する。このヒートポンプシステム30の熱費算出処理は、図3のS12の熱費算出処理と一体の処理である。
【0220】
次に、図14のS45において、ヒートポンプシステム30が熱を供給するために要求する電力を空調制御装置54から受信するとともに、その他の電気負荷(負荷42、電動ポンプ22、コンプレッサ用インバータ32等)が要求する電力を受信し、それらに基づいて負荷要求電力Preqを算出する。
【0221】
次に、図14のS46において、バッテリ43を除く電源から、バッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力Preqcを算出する処理の詳細について説明する。
【0222】
図19に、充電要求電力Preqcを算出する処理手の順を示す。この処理は、エネルギ制御装置51によって実行される。
【0223】
同図に示すように、バッテリ43に充電する際の電力の上限値Pcmaxを算出する(S71)。この上限値Pcmaxは、現在のバッテリ43の状態(バッテリ温度等)において、充電時にバッテリ43の電圧が所定値を超えない最大の電力値として設定されている。なお、バッテリ43の容量が判定値以上であり、充電することができない場合には、上限値Pcmaxを0にする。
【0224】
続いて、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1を算出する(S72)。ここで、上記負荷要求電力Preqが総ベース電力Pbas_allよりも大きい場合には、充電要求電力Preqc1を0とし、総ベース電力で賄いきれない電力である負荷残要求電力Preq_lefを、負荷要求電力Preqから総ベース電力Pbas_allを引いた値とする。すなわち、総ベース電力Pbas_allは、全て負荷要求電力Preqに配分されるため、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1を0とする。一方、上記負荷要求電力Preqが総ベース電力Pbas_allよりも小さい場合には、総ベース電力Pbas_allから負荷要求電力Preqを引いた残りを充電要求電力Preqc1とし、負荷残要求電力Preq_lefを0とする。
【0225】
続いて、バッテリ43に単位電力充電するために消費される燃料量である充電電力費Ccを算出する(S73)。バッテリ43に充電するために消費される燃料量は、バッテリを含む各電源の最適な供給負荷配分(S43で算出)で負荷残要求電力Preq_lefを供給した場合の各電源の燃料消費量の合計値から、負荷残要求電力Preq_lefと総ベース電力以外に対する充電電力Pcとの合計電力を、バッテリを除く複数の電源(合計電源)から最適な供給配分(S43で算出)で供給した場合に増加した、合計電源の総燃料消費量の増加量ΔFcで表され、充電電力Pcに対する関数として表される。
【0226】
増加量ΔFcは、充電電力Pcで充電した場合の充電を行わない場合に対する燃料消費量の増分となり、充電電力費Ccは増加量ΔFcを充電電力Pcで割ることで求められる。ここで、充電電力Pcの最大値は、合計電源がベース電力以外に供給可能な最大電力をPreq_lef+Pcが超えず、かつ、充電電力Pcと充電要求電力Preqc1との和が、充電する際の電力の上限値Pcmaxを超えない範囲で求める。
【0227】
続いて、バッテリ43に充電するか否かの基準となる基準電力費Cprfを算出する(S74)。図20に示すように、この基準電力費Cprfは、バッテリ残容量が少ないほど大きくなり、また負荷要求電力Preqが大きいほど大きくなる。
【0228】
続いて、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2を算出する(S75)。ここでは、図21に示すように、充電電力費Ccと基準電力費Cprfとを比較して、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる充電電力Pcが存在しない場合には、バッテリ43に充電する際の電力費が高くなるため、バッテリ43に充電しない。
【0229】
一方、図22に示すように、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる充電電力Pcが存在する場合には、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で最大の充電電力Pcを、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2とする。
【0230】
その後、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1と、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2との合計である充電要求電力Preqcを算出する(S76)。このとき、充電要求電力Preqcが、バッテリ43に充電する際の電力の上限値Pcmaxを超える場合には、充電要求電力Preqcを上限値Pcmaxとする。そして、この一連の処理を一旦終了する。なお、この一連の処理が、充電要求電力算出手段としての処理に相当する。
【0231】
次に、図14のS47において、負荷要求電力Preq及び充電要求電力Precの合計である総要求電力Preqaに対して各電源iのベース電力Pbas(i)を配分し、総要求電力Preqaの残りである残要求電力Preqa_lefを各電源iに配分する処理の詳細について説明する。
【0232】
図23に、ベース電力配分の処理手順を示す。なお、この手順は、基本的には図13に示したベース熱量を配分する手順と同様であるため、説明を簡略化する。
【0233】
各電源iのベース電力Pbas(i)の合計である総ベース電力Pbas_allが、総要求電力Preqa以上であるか否か判定する(S51)。
【0234】
総ベース電力Pbas_allが総要求電力Preqa以上であると判定され場合には(S51:YES)、カウンタiをリセットする(S52)。そして、総要求電力Preqaを各電源i(i=1の電源を廃熱発電機25、i=2の電源を発電機41とする。)のベース電力Pbas(i)に配分した残りである残要求電力Preqa_lefを、まずは総要求電力Preqaとし、全てのベース電力Pbas(i)を一旦0とする(S53)。
【0235】
続いて、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上であるか否か判定する(S54)。
【0236】
上記判定において、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上でないと判定された場合には(S54:NO)、i番目の電源のベース電力に対して供給を要求する要求ベース電力Pabas(i)を、ベース電力Pbas(i)とする(S55)。
【0237】
続いて、残要求電力Preqa_lefを、残要求電力Preqa_lefからi番目の電源のベース電力Pbas(i)を引いた値に更新し(S56)、カウンタiを1つ進める(S57)。
【0238】
このようにS54〜S57の処理を繰返し、残要求電力Preqa_lefを各電源iのベース電力Pbas(i)に順次配分する。そして、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上であると判定された場合には(S54:YES)、i番目の電源の要求ベース電力Pabas(i)を残要求電力Preqa_lefとする(S58)。
【0239】
続いて、残要求電力Preqa_lefを0にした後(S59)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0240】
一方、総ベース電力Pbas_allが総要求電力Preqa以上でないと判定された場合には(S51:NO)、全て電源iの要求ベース電力Pabas(i)をベース電力Pbas(i)とする(S61)。
【0241】
続いて、残要求電力Preqa_lefを、残要求電力Preqa_lefから総ベース電力Pbas_allを引いた値に更新し(S62)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0242】
次に、各電源iについて、ベース電力Pbas(i)以外に供給を要求する追加要求電力Papl(i)の配分を決定する。
【0243】
ここで、残要求電力Preqa_lefが0である場合には、各電源iの追加要求電力Papl(i)を全て0とする。
【0244】
一方、残要求電力Preqa_lefが0でない場合には、上述した電力関係に基づいて、残要求電力Preqa_lefを供給する場合において、各電源iの追加要求電力Papl(i)の配分を決定する。
【0245】
このとき、バッテリ43の充電要求電力Preqcが0である場合には、バッテリ43からも電力を供給する。具体的には、S43で算出したバッテリ43を含む各電源の最適な供給負荷配分から、総供給電力を残要求電力Preqa_lefとした場合の、バッテリ43と合計電源への配分電力を決定し、さらに、同じくS43で算出した、前記合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分から、合計電源の総供給電力を合計電源への配分電力とした場合の廃熱発電機25及び発電機41への供給負荷配分を決定し、それぞれ追加要求電力Papl(1)、Papl(2)とする。
【0246】
バッテリ43の充電要求電力Preqcが0でない場合には、バッテリ43に充電する。この際は、バッテリ43からの給電が行えないため、S43で算出した、前記合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分から、合計電源の総供給電力を残要求電力Preqa_lefとした場合の廃熱発電機25及び発電機41への供給負荷配分を決定し、それぞれ追加要求電力Papl(1)、Papl(2)とする。
【0247】
これにより、電力費が0でない状態で供給する電力(ベース電力以外の電力)を、各電源iに最適に配分することができる。
【0248】
次に、図14のS48において、各電源iについて、配分されたベース電力(要求ベース電力Pabas(i))と配分された残要求電力(追加要求電力Papl(i))との和として、各電源iに対する指令電力Pa(i)を算出する。
【0249】
エネルギ制御装置51は、発電機制御装置53へ各電源iに対する指令電力Pa(i)を送信し、発電機制御装置53、この指令電力Pa(i)が供給されるように各電源iを制御する。
【0250】
次に、図14のS49において、エネルギ制御装置51は、上記充電要求電力Preqcとその充電により消費される燃料量とに基づいて、バッテリ43の電力費を更新する。すなわち、それまでにバッテリ43に充電するために消費された燃料量に、今回消費される燃料量を足した合計燃料量を求める。ここで、今回バッテリ43に充電するために充電された燃料量は、前記充電電力Pcと充電電力費Ccの関係により求める。また、それまでにバッテリ43に充電するために供給された電力量に、今回供給される電力を足した合計電力量を求める。そして、合計燃料量を合計電力量で割って、バッテリ43の新たな電力費を算出する。
【0251】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0252】
・複数の熱源(冷却水熱量、ヒートポンプシステム30)から熱交換部(ヒータコア23、室内熱交換器37)へ供給されるように要求される要求熱量Qreq、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量が算出される。一方、各熱源iについて、供給する熱量と熱費Ctとの関係が算出される。
【0253】
そして、各熱源iから供給する熱量と熱費Ctとの関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量Qreqに一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費Ctが最小となるように、各熱源iから熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量Qreqを供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0254】
・各熱源iにおいて熱を供給するために消費される燃料量Fi(Qi)を熱量Qiの関数として、熱量Qiの関数を熱量Qiで微分した微分値である熱量増分燃料量dF/dQが算出される。各熱源iの熱量増分燃料量が互いに一致した状態は、消費される燃料量をそれ以上減少させることができない状態である。したがって、その状態を形成するように各熱源iの供給負荷配分を決定することにより、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0255】
そして、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量Qreqに一致し、且つ各熱源iの熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源iから熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量Qreqを供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。さらに、各熱源iの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0256】
・各熱源iにおいて熱量Qiと熱量増分燃料量との関係である熱量関係が算出される。このため、熱量増分燃料量を各熱源iで互いに一致させて変更する場合に、各熱源iにおいて熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量Qiを算出することができる。
【0257】
そして、その各熱源iの熱量Qiの合計が要求熱量Qreqに一致するように、各熱源iから熱量を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0258】
・各熱源iにおいて供給可能な熱量Qiの上限値Qimaxが設定され、熱量増分燃料量が各熱源iで互いに一致させられて増加されつつ、各熱源iにおいて熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量Qiが算出される。そして、その熱量Qiが上限値Qimaxに達した熱源iにおいては供給する熱量Qiが上限値Qimaxとされ、その他の熱源jで消費される燃料量Fj(Qj)が最も少なくなるように、各熱源jから熱量を供給する配分が決定される。
【0259】
すなわち、供給する熱量Qjが上限値に達していない熱源jにおいては、各熱源jの熱量増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの熱源jから供給される熱量Qjと、供給する熱量Qiが上限値Qimaxに達した熱源iの熱量Qiとの合計が要求熱量Qreqに一致するように、各熱源i,jから熱量Qi,Qjを供給する配分が決定される。したがって、供給する熱量Qjが上限値に達していない熱源jで消費される燃料量Fj(Qj)を最も少なくすることができ、ひいては複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0260】
・車両に搭載されたエンジン10の運転状態に応じて、各熱源iにおける上記熱量関係が算出される。このため、その時々のエンジン10の運転状態に応じて、各熱源iから熱量Qiを供給する配分を適切に決定することができる。
【0261】
・複数の熱源は、車両に搭載されたエンジン10の冷却水を介してヒータコア23へ熱を供給するエンジン10の熱創出制御を含み、エンジン10には、冷却水を吐出する電動ポンプ22が搭載されている。そして、熱創出制御から供給される熱量に基づいて、電動ポンプ22による冷却水の吐出量が制御されるため、ヒータコア23へ供給される熱量を適切に制御することができる。
【0262】
・複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給するヒートポンプシステム30を含み、ヒートポンプシステム30について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費Cpに基づいて熱費Ctが算出される。このため、ヒートポンプシステム30の電力費Cpを熱費Ctに換算することができ、この熱費Ctに基づいて各熱源iから熱を供給する配分を決定することができる。
・車両には複数の電源(発電機41、廃熱発電機25、バッテリ43)が搭載されており、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷(電動ポンプ22、コンプレッサ用インバータ32、負荷42等)へ供給されるように要求される負荷要求電力Preq、すなわち複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ供給すべき電力が算出される。一方、各電源iについて、供給する電力Piと上記電力費Cpとの関係が算出される。
【0263】
そして、各電源iから供給する電力Piと電力費Cpとの関係に基づいて、複数の電源から供給される電力の合計が負荷要求電力Preqに一致し、且つその負荷要求電力Preqを供給する電源全体の電力費が最小となるように、各電源iから電力Piを供給する配分が決定される。このため、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0264】
その上で、ヒートポンプシステム30について、最小の電力費に基づいて熱費Ctが算出される。このため、各電源iから電力Piを供給する配分(各電源iの供給負荷配分)を最適化した状態において、ヒートポンプシステム30の熱費Ctを算出することができる。そして、この熱費Ctに基づいて各熱源iから熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源がヒートポンプシステム30を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0265】
・各電源iにおいて電力Piを供給するために消費される燃料量Fi(Pi)を電力Piの関数として、電力Piの関数を電力Piで微分した微分値である電力増分燃料量dF/dPが算出される。そして、複数の電源から供給される電力の合計が負荷要求電力Preqに一致し、且つ各電源iの電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源iから電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。さらに、各電源iの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0266】
・各電源iにおいて電力Piと電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、電力増分燃料量を各電源iで互いに一致させて変更する場合に、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piを算出することができる。
【0267】
そして、その各電源iの電力Piの合計が負荷要求電力Preqに一致するように、各電源iから電力Piを供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0268】
・各電源iにおいて供給可能な電力Piの上限値Pimaxが設定され、電力増分燃料量が各電源iで互いに一致させられて増加されつつ、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piが算出される。そして、その電力Piが上限値Pimaxに達した電源iにおいては供給する電力Piが上限値Pimaxとされ、その他の電源jで消費される燃料量Fj(Pj)が最も少なくなるように、各電源jから電力Pjを供給する配分が決定される。
【0269】
すなわち、供給する電力Pjが上限値Pjmaxに達していない電源jにおいては、各電源jの電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源jから供給される電力Pjと、供給する電力Piが上限値Pimaxに達した電源iの電力Piとの合計が負荷要求電力Preqに一致するように、各電源i,jから電力Pi,Pjを供給する配分が決定される。したがって、供給する電力Pjが上限値Pjmaxに達していない電源jで消費される燃料量Fj(Pj)を最も少なくすることができ、ひいては複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0270】
・複数の電源はバッテリ43を含み、バッテリ43において電力に対する電力増分燃料量が一定値λ1sとされる。そして、電力増分燃料量が各電源iで互いに一致させられて上記一定値λ1sとされ、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piが算出される。このとき、バッテリ43を除く電源k(廃熱発電機25、発電機41)では、電力増分燃料量が一定値λ1sとされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。
【0271】
そして、バッテリ43から供給する電力P1とその他の電源kから供給する電力P2との合計が負荷要求電力Preqに一致するように、バッテリ43から供給される電力P1が決定される。このため、バッテリ43及びその他の電源kにより電力を供給する場合において、負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0272】
・車両にはバッテリ43を含む複数の電源が搭載されており、ヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力Preqが算出される。また、バッテリ43を除く電源kからバッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力Preqcが算出される。一方、各電源iについて、供給する電力Piと上記電力費Cpとの関係が算出される。
【0273】
そして、各電源iから供給する電力Piと電力費Cpとの関係に基づいて、バッテリ43を除く複数の電源kから供給される電力の合計が、負荷要求電力Preq及び充電要求電力Preqcの合計である総要求電力Preqaに一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費Cpが最小となるように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリ43の充電に使用される電力も含めた総要求電力Preqaを供給することができるとともに、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0274】
・バッテリ43を除く各電源kにおいて、電力Pkを供給するために消費される燃料量Fk(Pk)を電力Pkの関数として、電力Pkの関数を電力Pkで微分した微分値である電力増分燃料量dF/dPが算出される。そして、バッテリ43を除く各電源kの電力増分燃料量が互いに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力Pkを供給する配分が決定される。このため、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源kの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0275】
・各電源iにおいて電力Piと電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、バッテリ43を除く各電源kで電力増分燃料量を互いに一致させて変更する場合に、バッテリを除く各電源kにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Pkを算出することができる。
【0276】
そして、その各電源kの電力Pkの合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力Pkを供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0277】
・各電源iにおいて供給可能な電力Piの上限値Pimaxが設定され、バッテリ43を除く各電源kで電力増分燃料量が互いに一致させられて増加されつつ、バッテリ43を除く各電源kにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Pkが算出される。そして、その電力Pkが上限値Pkmaxに達した電源kにおいては供給する電力Pkが上限値Pkmaxとされ、その他の電源lで消費される燃料量Fl(Pl)が最も少なくなるように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。
【0278】
すなわち、供給する電力Plが上限値Plmaxに達していない電源lにおいては、各電源lの電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源lから供給される電力Plと、供給する電力Pkが上限値Pkmaxに達した電源kの電力Pkとの合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力Plが上限値Plmaxに達していない電源lで消費される燃料量Fl(Pl)を最も少なくすることができ、ひいてはバッテリ43を除く複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0279】
・バッテリ43を除く各電源kから上記配分(各電源kの最適な供給負荷配分)により電力Pkを供給するとともにバッテリ43への充電を行う際に、バッテリ43の充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費Ccが算出される。
【0280】
そして、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で充電要求電力Preqcが算出されるため、バッテリ43を除く各電源kの供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源全体で消費される総消費燃料量fが基準よりも少ない状態でバッテリ43に充電することができる。さらに、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で最大の電力が充電要求電力Preqcとされるため、バッテリ43に効率的に充電することができる。その結果、バッテリ43の充電及び放電を通じて、複数の電源全体で消費される燃料量を減少させることかできる。
【0281】
・バッテリ43を除く各電源kから上記配分により電力を供給する際に、バッテリ43を除く各電源kで消費される燃料量の合計を、総要求電力Preqaで割った最適電力費が算出される。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリ43を除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力P2を供給するために消費される燃料量F2(P2)を電力P2の関数として、電力P2の関数を電力P2で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。すなわち、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量F2(P2)を最も少なくした場合において、バッテリ43を除く複数の電源が1つの合計電源とみなされ、この合計電源について電力増分燃料量が算出される。
【0282】
そして、合計電源において電力P2と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出されるとともに、バッテリ43において電力P1に対する電力増分燃料量が一定値とされる。ここで、合計電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力P2は特定の値に固定されることとなる。これに対して、バッテリ43では、電力増分燃料量が一定値λ1sとされた状態において、供給する電力P1を変更することができる。
【0283】
また、充電要求電力Preqcが0である場合には、バッテリ43から電力P1を供給することができる。そして、バッテリ43から供給する電力P1と合計電源から供給する電力P2との合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43から供給される電力P1が決定される。このため、バッテリ43及びその他の電源kから電力を供給する場合において、総要求電力Preqaを供給することができるとともに、総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0284】
・車両に搭載されたエンジン10の運転状態に応じて、各電源iにおける上記電力関係が算出される。このため、その時々のエンジン10の運転状態に応じて、各電源iから電力Piを供給する配分を適切に決定することができる。
【0285】
上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
【0286】
・バッテリ43を除く複数の電源(廃熱発電機25、発電機41)について、各電源の最適な供給負荷配分を決定し、これらの電源から最適な供給負荷配分により電力を供給する際に、これらの電源を1つの合計電源とみなした。そして、この合計電源とバッテリ43とで、最適な供給負荷配分を決定するようにしたが、廃熱発電機25、発電機41、及びバッテリ43で最適な供給負荷配分を決定してもよい。
【0287】
・複数の電源の数は、任意に設定することができる。
【0288】
・ヒートポンプシステム30に代えて、PTCヒータを採用してもよい。この場合には、PTCヒータに供給する電力と、PTCヒータから供給される熱量とが等しいと考えることができるため、PTCヒータについて熱費等を求める演算が容易となる。また、複数の熱源の数は、任意に設定することができる。
【0289】
・電力により駆動される電動熱源が複数の熱源に含まれていない場合には、熱供給制御と電力供給制御とを独立して実行してもよい。また、熱供給制御及び電力供給制御の一方のみを実行してもよい。
【0290】
・各熱源から供給する熱量と熱費との関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する際に、総当り演算により決定することもできる。
【0291】
・点火時期の制御に代えて燃料噴射時期を制御することにより、ディーゼルエンジンに具体化することもできる。
【符号の説明】
【0292】
10…エンジン、23…ヒータコア、25…廃熱発電機、30…ヒートポンプシステム、37…室内熱交換器、41…発電機、43…バッテリ、51…エネルギ制御装置、52…エンジン制御装置、53…発電制御装置、54…空調制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱源からの熱供給を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両で消費される燃料量を減少させる観点から、様々な技術が開発されている。例えば、車載主機として、エンジンに加えて電動機を備えるハイブリッド車や、車両の停止時にエンジンを自動停止するアイドルストップシステムが開発されている。
【0003】
一般に、車室内の暖房においては、エンジンから冷却水等に廃棄される熱を利用している。しかしながら、上記の例に挙げた省燃費車においては、アイドルストップや、エンジン自体の効率向上により、エンジンから廃棄される熱量が減少し、エンジンからの廃熱だけでは暖房に必要な熱量を確保できないおそれがある。
【0004】
そこで、エンジンからの廃熱を利用した暖房装置の他に、電動機で駆動されるヒートポンプ式の暖房装置を備える構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3704788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のものでは、車室内の暖房に使用される熱源が複数存在することとなり、エネルギの効率的利用の観点から、どちらの熱源をどれだけ使用するかという問題が生じる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、複数の熱源から熱を供給する指針が確立されておらず、未だ改善の余地を残すものとなっている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、車両に搭載された複数の熱源からの熱供給を制御する熱源制御装置において、熱を供給するために消費される燃料量を減少させることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0010】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給を制御する熱源制御装置であって、前記複数の熱源から前記熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量を算出する要求熱量算出手段と、各熱源について、供給する熱量と、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費との関係を算出する熱費算出手段と、各熱源から供給する熱量と前記熱費との関係に基づいて、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の前記熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する熱量配分決定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本願発明者らは、熱を供給するために熱源で消費される燃料量を少なくするために、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を小さくすることを考案した。そして、熱を供給するために複数の熱源全体で消費される燃料量を少なくするためには、複数の熱源全体の熱費を小さくすればよいという結論に至った。
【0012】
この点、上記構成によれば、複数の熱源から熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量が算出される。一方、各熱源について、供給する熱量と上記熱費との関係が算出される。
【0013】
そして、各熱源から供給する熱量と熱費との関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量を供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、前記熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量を算出する熱量増分燃料量算出手段を備え、前記熱量配分決定手段は、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つ各熱源の前記熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量が算出される。この熱量増分燃料量は、熱源から供給される熱量を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものである。
【0016】
複数の熱源により要求熱量を供給する場合に、各熱源から熱量を供給する配分(各熱源の供給負荷配分)を以下のように決定することにより、複数の熱源全体の熱費を最小とすることができる。その結果、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0017】
例えば、熱源1及び熱源2により熱交換部へ熱を供給する場合に、熱源1及び熱源2の熱量増分燃料量が、それぞれ200[g/kWh]及び210[g/kWh]であるとする。そして、熱源1から供給する熱量を1[kW]増加させ、熱源2から供給する熱量を1[kW]減少させたとする。その結果、熱源1及び熱源2により供給される熱量の合計は変わらないが、熱源1及び熱源2で消費される燃料量の合計は10[g/h]減少することとなる。
【0018】
すなわち、上記内容は、複数の熱源間で熱量増分燃料量に差がある場合には、供給する熱量の合計を変えずに、消費される燃料量を減少させることができることを意味する。換言すれば、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致した状態は、消費される燃料量をそれ以上減少させることができない状態である。したがって、その状態を形成するように各熱源の供給負荷配分を決定することにより、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0019】
この点、上記構成によれば、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つ各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量を供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各熱源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明では、各熱源において熱量と前記熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する熱量関係算出手段を備え、前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更しつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その各熱源の熱量の合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、各熱源において熱量と熱量増分燃料量との関係である熱量関係が算出される。このため、熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更する場合に、各熱源において熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量を算出することができる。
【0022】
そして、その各熱源の熱量の合計が要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明では、前記熱量関係算出手段は各熱源において供給可能な熱量の上限値を設定し、前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて増加させつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その熱量が前記上限値に達した熱源においては供給する熱量を前記上限値とし、その他の熱源から供給する熱量と前記上限値との合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0024】
一般に、各熱源には供給可能な熱量の上限値が存在する。このため、熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更する際に、一部の熱源において熱量増分燃料量に対応する熱量が上限値に達する場合がある。
【0025】
この場合、供給する熱量が上限値に達していない複数の熱源では、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの熱源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する熱量が上限値に達している熱源では、その他の熱源との間で熱量増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0026】
例えば、熱源1及び熱源2により要求熱量が供給されている状態において、供給する熱量が上限値に達している熱源1の熱量増分燃料量が200[g/kWh]であり、供給する熱量が上限値に達していない熱源2の熱量増分燃料量が210[g/kWh]であるとする。この場合、上述したように、熱源1から供給する熱量を1[kW]増加させ、熱源2から供給する熱量を1[kW]減少させれば、熱源1及び熱源2により要求熱量を供給しつつ、熱源1及び熱源2で消費される燃料量の合計を10[g/h]減少させることができる。しかしながら、熱源1では供給する熱量が上限値に達しているため、供給する熱量をそれ以上増加させることができない。したがって、熱源1及び熱源2で消費される燃料量をそれ以上減少させることができず、その状態において消費される燃料量が最も少なくなる。
【0027】
この点、上記構成によれば、各熱源において供給可能な熱量の上限値が設定され、熱量増分燃料量が各熱源で互いに一致させられて増加されつつ、各熱源において熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量が算出される。そして、その熱量が上限値に達した熱源においては供給する熱量が上限値とされ、その他の熱源で消費される燃料量が最も少なくなるように、各熱源から熱量を供給する配分が決定される。
【0028】
すなわち、供給する熱量が上限値に達していない熱源においては、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの熱源から供給される熱量と、供給する熱量が上限値に達した熱源の熱量との合計が要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分が決定される。したがって、供給する熱量が上限値に達していない熱源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいては複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明では、前記熱量関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における前記熱量関係を算出することを特徴とする。
【0030】
各熱源における熱量増分燃料量は、エンジンの運転状態に応じて変化する。例えば、点火時期遅角や可変動弁機構の状態変更により熱を供給する熱源や、エンジンの排気が有する熱エネルギを利用する熱源、熱源としての冷却水等では、この熱量増分燃料量がエンジンの運転状態に応じて変化する。このため、各熱源における熱量と熱量増分燃料量との関係(熱量関係)も、エンジンの運転状態に応じて変化することとなる。
【0031】
この点、上記構成によれば、車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における上記熱量関係が算出される。このため、その時々のエンジンの運転状態に応じて、各熱源から熱量を供給する配分を適切に決定することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明では、前記複数の熱源は、前記車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して前記熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、前記エンジンには、前記冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されており、前記エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、前記電動ポンプによる前記冷却水の吐出量を制御するポンプ制御手段を備えることを特徴とする。
【0033】
一般に、車室内の暖房においては、エンジンから冷却水に廃棄される熱を利用している。ここで、冷却水からヒータコア等の熱交換部へ供給される熱量は、熱交換部を流通する冷却水の流量に応じて変化する。
【0034】
この点、上記構成によれば、複数の熱源は、車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、エンジンには、冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されている。そして、エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、電動ポンプによる冷却水の吐出量が制御されるため、熱交換部へ供給される熱量を適切に制御することができる。
【0035】
請求項7に記載の発明では、前記複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0036】
電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源、例えばヒートポンプ等においては、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を、どのように扱うかが問題となる。
【0037】
この点、上記構成によれば、複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて熱費が算出される。このため、電動熱源の電力費を熱費に換算することができ、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分を決定することができる。
【0038】
請求項8に記載の発明では、前記車両には複数の電源が搭載されており、前記複数の電源から前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力を算出する要求電力算出手段と、各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、を備え、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0039】
電動熱源に供給される電力は、燃料を消費することによって生み出される。したがって、電動熱源に電力を供給するために消費される燃料量を減少させることにより、電動熱源の熱費を減少させることができる。ここで、上述した請求項1に記載の発明と同様の考え方により、電力を供給するために複数の電源全体で消費される燃料量を少なくすることができる。
【0040】
すなわち、上記構成によれば、車両には複数の電源が搭載されており、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力、すなわち複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給すべき電力が算出される。一方、各電源について、供給する電力と上記電力費との関係が算出される。
【0041】
そして、各電源から供給する電力と電力費との関係に基づいて、複数の電源から供給される電力の合計が要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ要求電力を供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0042】
その上で、電動熱源について、最小の電力費に基づいて熱費が算出される。このため、各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を最適化した状態において、電動熱源の熱費を算出することができる。そして、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源が電動熱源を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0043】
請求項9に記載の発明では、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つ各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0044】
上記構成によれば、上述した請求項2に記載の発明と同様の考え方により、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。この電力増分燃料量は、電源から供給される電力を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものである。
【0045】
そして、複数の電源から供給される電力の合計が要求電力に一致し、且つ各電源の電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源から電動熱源を含む電気負荷へ要求電力を供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0046】
請求項10に記載の発明では、各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更しつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0047】
上記構成によれば、上述した請求項3に記載の発明と同様の考え方により、各電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更する場合に、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力を算出することができる。
【0048】
そして、その各電源の電力の合計が要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0049】
請求項11に記載の発明では、前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて増加させつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0050】
一般に、各電源には供給可能な電力の上限値が存在する。このため、電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更する際に、一部の電源において電力増分燃料量に対応する電力が上限値に達する場合がある。
【0051】
この場合、供給する電力が上限値に達していない複数の電源では、各電源の電力増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの電源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する電力が上限値に達している電源では、その他の電源との間で電力増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の電源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0052】
この点、上記構成によれば、上述した請求項4に記載の発明と同様の考え方により、各電源において供給可能な電力の上限値が設定され、電力増分燃料量が各電源で互いに一致させられて増加されつつ、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。そして、その電力が上限値に達した電源においては供給する電力が上限値とされ、その他の電源で消費される燃料量が最も少なくなるように、各電源から電力を供給する配分が決定される。
【0053】
すなわち、供給する電力が上限値に達していない電源においては、各電源の電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源から供給される電力と、供給する電力が上限値に達した電源の電力との合計が要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力が上限値に達していない電源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいては複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0054】
請求項12に記載の発明では、前記複数の電源はバッテリを含み、前記電力関係算出手段は、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて前記一定値としつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が前記要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする。
【0055】
バッテリでは、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。したがって、バッテリでは、供給する電力に対しては電力増分燃料量が変化しない。換言すれば、バッテリでは、電力増分燃料量を変化させずに、供給する電力を変更することができる。
【0056】
この点、上記構成によれば、複数の電源はバッテリを含み、バッテリにおいて電力に対する電力増分燃料量が一定値とされる。そして、電力増分燃料量が各電源で互いに一致させられて上記一定値とされ、各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。このとき、一般にバッテリを除く電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。
【0057】
そして、バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が要求電力に一致するように、バッテリから供給される電力が決定される。このため、バッテリ及びその他の電源により電力を供給する場合において、要求電力を供給することができるとともに、消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0058】
請求項13に記載の発明では、前記車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、前記電動熱源を含む前記電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力を算出する負荷要求電力算出手段と、前記バッテリを除く電源から前記バッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する充電要求電力算出手段と、各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、を備え、前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする。
【0059】
バッテリに充電する場合には、この充電に使用される電力も含めて、複数の電源から供給すべき電力を算出する必要がある。なお、バッテリに充電する場合、すなわち充電要求電力が0でない場合には、バッテリからは電力が供給されない。一方、バッテリから放電する場合には、バッテリに充電されず、充電要求電力が0となる。
【0060】
この点、上記構成によれば、車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、バッテリを除く電源から電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力が算出される。また、バッテリを除く電源からバッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力が算出される。一方、各電源について、供給する電力と上記電力費との関係が算出される。
【0061】
そして、各電源から供給する電力と電力費との関係に基づいて、バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、負荷要求電力及び充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費が最小となるように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリの充電に使用される電力も含めた総要求電力を供給することができるとともに、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0062】
その上で、電動熱源について、最小の電力費に基づいて熱費が算出される。このため、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を最適化した状態において、電動熱源の熱費を算出することができる。そして、この熱費に基づいて各熱源から熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源が電動熱源を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0063】
請求項14に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段と、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つ前記バッテリを除く各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0064】
上記構成によれば、バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。
【0065】
そして、バッテリを除く各電源の電力増分燃料量が互いに一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源の最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0066】
請求項15に記載の発明では、各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて変更しつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0067】
上記構成によれば、各電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、バッテリを除く各電源で電力増分燃料量を互いに一致させて変更する場合に、バッテリを除く各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力を算出することができる。
【0068】
そして、その各電源の電力の合計が総要求電力に一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0069】
請求項16に記載の発明では、前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて増加させつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする。
【0070】
上記構成によれば、各電源において供給可能な電力の上限値が設定され、バッテリを除く各電源で電力増分燃料量が互いに一致させられて増加されつつ、バッテリを除く各電源において電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力が算出される。そして、その電力が上限値に達した電源においては供給する電力が上限値とされ、その他の電源で消費される燃料量が最も少なくなるように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。
【0071】
すなわち、供給する電力が上限値に達していない電源においては、各電源の電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源から供給される電力と、供給する電力が上限値に達した電源の電力との合計が総要求電力に一致するように、バッテリを除く各電源から電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力が上限値に達していない電源で消費される燃料量を最も少なくすることができ、ひいてはバッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0072】
請求項17に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源から前記配分により前記負荷要求電力を供給するとともに前記バッテリへの充電を行う際に、前記バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費を算出する充電電力費算出手段を備え、前記充電要求電力算出手段は、前記充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力を前記充電要求電力とすることを特徴とする。
【0073】
上述したように、バッテリでは、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。このため、バッテリに充電するために消費される燃料量が少ない状態でバッテリに充電することにより、バッテリから電力を供給する場合に消費される燃料量を減少させることができる。
【0074】
ここで、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を考えると、この電力費を小さくすることにより、消費される燃料量を少なくすることができる。そして、複数の電源から電力を供給する場合には、複数の電源全体の電力費を小さくすることにより、複数の電源全体で消費される燃料量を少なくすることができる。
【0075】
この点、上記構成によれば、バッテリを除く各電源から上記配分(各電源の最適な供給負荷配分)により負荷要求電力を供給するとともにバッテリへの充電を行う際に、バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費が算出される。
【0076】
そして、充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で要求電力が算出されるため、バッテリを除く各電源の供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源全体で充電電力費が基準よりも少ない状態でバッテリに充電することができる。さらに、充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力が充電要求電力とされるため、消費される燃料量が基準よりも少ない状態において、バッテリに効率的に充電することができる。その結果、バッテリの充電及び放電を通じて、複数の電源全体で消費される燃料量を減少させることかできる。
【0077】
請求項18に記載の発明では、前記バッテリを除く各電源から前記配分により電力を供給する際に、前記バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、前記総要求電力で割った最適電力費を算出する最適電力費算出手段を備え、前記電力増分燃料量算出手段は、電力と前記最適電力費とに基づいて、前記バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出し、前記電力関係算出手段は、前記合計電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出するとともに、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、前記電力配分決定手段は、前記充電要求電力が0である場合に、前記電力増分燃料量を前記一定値としつつ、前記合計電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力と前記合計電源から供給する電力との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする。
【0078】
上記構成によれば、バッテリを除く各電源から上記配分(各電源の最適な供給負荷配分)により電力を供給する際に、バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、総要求電力で割った最適電力費が算出される。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。すなわち、バッテリを除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくした場合において、バッテリを除く複数の電源が1つの合計電源とみなされ、この合計電源について電力増分燃料量が算出される。
【0079】
そして、合計電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出されるとともに、バッテリにおいて電力に対する電力増分燃料量が一定値とされる。ここで、合計電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。これに対して、バッテリでは、電力増分燃料量が一定値とされた状態において、供給する電力を変更することができる。
【0080】
また、充電要求電力が0である場合には、バッテリから電力を供給することができる。そして、バッテリから供給する電力と合計電源から供給する電力との合計が総要求電力に一致するように、バッテリから供給される電力が決定される。このため、バッテリ及びその他の電源から電力を供給する場合において、総要求電力を供給することができるとともに、消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0081】
請求項19に記載の発明では、前記電力関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における前記電力関係を算出することを特徴とする。
【0082】
各電源における電力増分燃料量は、エンジンの運転状態に応じて変化する。例えば、エンジンを動力源とする発電機や、エンジンの排気が有する運動エネルギ又は熱エネルギを利用する発電機、エンジンの冷却水が有する熱エネルギを利用する発電機等では、この電力増分燃料量がエンジンの運転状態に応じて変化する。このため、各電源における電力と電力増分燃料量との関係(電力関係)も、エンジンの運転状態に応じて変化することとなる。
【0083】
この点、上記構成によれば、車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における上記電力関係が算出される。このため、その時々のエンジンの運転状態に応じて、各電源から電力を供給する配分を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本システムにおける熱供給及び電力供給の制御概要を示すブロック図。
【図2】本システムの全体構成を示す模式図。
【図3】熱供給制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】要求熱量を算出するための機能ブロック図。
【図5】エンジン動作点と燃料消費率との関係を示すマップ。
【図6】エンジン動作点と追加熱量との関係を示す図。
【図7】追加熱量発生による燃料増加量を示すグラフ。
【図8】供給熱量と熱費との関係を示す熱費特性図。
【図9】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図10】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図11】供給熱量と熱量増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図12】総供給熱量と最適配分熱量との関係を示すグラフ。
【図13】ベース熱量配分の処理手順を示すフローチャート。
【図14】電力供給制御の処理手順を示すフローチャート。
【図15】冷却水温度と燃料消費量との関係を示すグラフ。
【図16】廃熱発電電力と燃料増加量との関係を示す図。
【図17】供給電力と電力増分燃料量との関係を示すグラフ。
【図18】総供給電力と最適配分電力との関係を示すグラフ。
【図19】充電要求電力算出の処理手順を示すフローチャート。
【図20】バッテリ残容量と負荷要求電力と基準電力費との関係を示すマップ。
【図21】充電電力と充電電力費と基準電力費との関係を示すグラフ。
【図22】充電電力と充電電力費と基準電力費との関係を示すグラフ。
【図23】ベース電力配分の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0086】
本実施形態は、車室内の暖房に際して、車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給、及び複数の電源から複数の電気負荷への電力供給を制御するシステムとして具体化している。
【0087】
図1に、本システムにおける熱供給及び電力供給の制御概要を示す。同図に示すように、本システムでは、複数の暖房熱源から各熱交換部へ熱を供給するために消費される燃料を最も少なくすべく、各熱源から熱を供給する配分(各熱源の供給負荷配分)を決定する。
【0088】
複数の熱源としては、エンジンの冷却水の熱量及びヒートポンプを備えている。エンジンの冷却水には、エンジンから熱を供給し、その際にはエンジンの廃熱量調整手段(1),(2),(3)(エンジン熱源)を使用する。したがって、複数の熱源には、エンジンの廃熱量調整手段(1),(2),(3)が含まれる。
【0089】
このとき、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて熱を創出するために消費される燃料量が最も少なくなるように、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて熱を供給する組み合わせを決定する。具体的には、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を考慮して、廃熱量調整手段(1),(2),(3)全体の熱費が最も小さくなるように熱管理を行う(熱創出制御)。そして、冷却水の熱管理において、廃熱量調整手段(1),(2),(3)を用いて指令熱量が供給されるようにエンジンを制御する。
【0090】
さらに、冷却水からヒータコア(熱交換部)を介して車室内の空気へ供給する熱量と、ヒートポンプシステム(電動熱源)の室内熱交換器(熱交換部)から車室内の空気へ供給する熱量とを考慮する。そして、冷却水及びヒートポンプシステムから車室内の空気へ熱を供給するために消費される燃料量が最も少なくなるように、冷却水及びヒートポンプシステムから熱を供給する配分を決定する。
【0091】
この際にも、冷却水及びヒートポンプシステム全体の熱費が最も小さくなるように熱管理を行う(最適配分アルゴリズム)。そして、車室内空気の熱管理において、冷却水へ供給されるように要求する要求熱量を冷却水の熱管理へ送信するとともに、ヒートポンプシステムから指令熱量が供給されるように制御する。なお、ヒータコアから指令熱量が供給されるように制御する。
【0092】
また、車両は複数の電源を備えており、ヒートポンプシステムを駆動する際に、ヒートポンプシステムを含む電気負荷へ電力を供給するために消費される熱量が最も少なくなるように、各電源から電力を供給する配分(各電源の供給負荷配分)を決定する。
【0093】
複数の電源としては、エンジンの発電機、バッテリ、及びエンジンからの廃熱を利用した廃熱発電機を備えている。ここで、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を考慮して、これらの電源全体の熱費が最も小さくなるように電力管理を行う(最適配分アルゴリズム)。そして、車室内空気の熱管理において、ヒートポンプシステムを含む電気負荷へ供給されるように要求する要求電力を電力管理へ送信するとともに、電力管理において各電源から指令電力が供給されるように制御する。
【0094】
ヒートポンプシステムの熱費を算出する際には、上記のように各電源の最適な供給負荷配分により電力を供給する場合において、ヒートポンプシステムに電力を供給するために消費される燃料量を考慮する。そして、この電力を供給するために消費される燃料量が、ヒートポンプシステムから熱を供給するために消費される燃料量であると考える。
【0095】
以上のように、車室内の暖房に際して、本システム全体で消費される燃料量が最も少なくなるように、各部における熱供給及び電力供給を制御する。
【0096】
図2に、本システムの全体構成を示す。同図に示すように、本システムは、エンジン10を備えている。エンジン10は、火花点火式の多気筒ガソリンエンジンであり、スロットルバルブ、吸気バルブ、排気バルブ、燃料噴射弁、点火装置、及び吸排気の各バルブの開閉タイミングをそれぞれ調整する吸気側バルブ駆動機構及び排気側バルブ駆動機構等を備えている。
【0097】
エンジン10の駆動力は、駆動軸11を介して変速機12に伝達され、さらにデファレンシャル13を介して車軸14及び車輪15に伝達される。一方、車両の減速時には、車輪15の回転力が、車軸14及びデファレンシャル13を介して変速機12に伝達され、さらに駆動軸11を介してエンジン10に伝達される。
【0098】
エンジン10のシリンダブロックやシリンダヘッドの内部にはウォータジャケットが形成されており、このウォータジャケットに冷却水が循環供給されることで、エンジン10の冷却が行われる。ウォータジャケットには冷却水配管等からなる冷却水循環経路21が接続されており、その循環経路21には、冷却水を循環させるための電動ポンプ22が設けられている。そして、電動ポンプ22の吐出量が変更されることにより、循環経路21を循環する冷却水の流量が調整される。
【0099】
循環経路21は、エンジン10の出口側においてヒータコア23(熱交換部)に向けて延び、ヒータコア23を経由して再びエンジン10に戻るようにして設けられている。ヒータコア23には、ブロアファン24から空調風が送り込まれるようになっており、空調風がヒータコア23又はその付近を通過することで、ヒータコア23からの受熱により空調風が加熱され、温風が車室内に供給される。
【0100】
このような構成において、電動ポンプ22の吐出量及びブロアファン24の駆動状態が制御されることにより、冷却水からヒータコア23を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
【0101】
また、循環経路21の途中には、廃熱発電機25(電源)が設けられている。廃熱発電機25は、廃熱回生器を備えており、廃熱回生器は冷却水の熱を動力に変換する。廃熱発電機25は、廃熱回生器によって変換された動力により発電し、その電力を電源回路40に供給する。廃熱発電機25の駆動状態が制御されることにより、その発電量が調整される。
【0102】
また、本システムは、ヒートポンプシステム30(電動熱源)を備えている。このヒートポンプシステム30は、電動コンプレッサ31と、コンプレッサ用インバータ32と、室内熱交換器37(熱交換部)と、室外熱交換器34と、ファン35と、膨張弁36と、アキュムレータ33と、これらを接続する冷媒配管等からなる冷媒循環経路39と、ヒートポンプ制御装置38とを備えている。
【0103】
電動コンプレッサ31は冷媒を圧縮して加熱し、この加熱された冷媒が室内熱交換器37へ送出される。そして、上記ブロアファン24から空調風が送り込まれ、空調風が室内熱交換器37の付近を通過することで、室内熱交換器37からの受熱により空調風が加熱され、温風が車室内に供給される。このとき、冷媒は放熱により冷却される。
【0104】
室内熱交換器37を流通した冷媒は膨張弁36により減圧され、室外熱交換器34へ送出される。そして、ファン35により室外熱交換器34へ外気が送り込まれ、この外気からの受熱により冷媒が加熱される。この加熱された冷媒は、アキュムレータ33を経由して電動コンプレッサ31に送出される。
【0105】
電動コンプレッサ31はコンプレッサ用インバータ32から供給される電力により駆動され、インバータ32はヒートポンプ制御装置38によって制御される。そして、ヒートポンプ制御装置38及びインバータ32を通じて、電動コンプレッサ31の駆動状態が制御されることにより、ヒートポンプシステム30から室内熱交換器37を介して車室内へ供給される熱量が制御される。
【0106】
本システムは、電源として、上記廃熱発電機25の他に、エンジン10の駆動力により駆動される発電機41(エンジン発電機)、及び充放電を行うバッテリ43を備えている。発電機41は、オルタネータやモータジェネレータである。上記の各電源は、電源回路40に接続されており、この電源回路40へ電力を供給する。また、バッテリ43は、電源回路40から供給される電力により充電される。
【0107】
発電機41の駆動状態が制御されることにより、その発電量が調整される。なお、発電機41は、車両の減速時において、車輪15から変速機12等を介してエンジン10に伝達される回転力に基づいて回生発電を行う。
【0108】
また、この電源回路40には、電気負荷として、上記電動ポンプ22、上記コンプレッサ用インバータ32、負荷42、及び補機等を含む電気負荷が接続されている。そして、これらの電気負荷には、電源回路40を通じて電力が供給される。
【0109】
本システムは、エネルギ制御装置51、エンジン制御装置52、発電機制御装置53、及び空調制御装置54を備えている。これらの制御装置51〜54は、CPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種制御を実施する。
【0110】
エネルギ制御装置51は、空調制御装置54を通じて、上記電動ポンプ22、ブロアファン24、及びヒートポンプ制御装置38を制御する。また、エネルギ制御装置51は、発電機制御装置53を通じて、廃熱発電機25及び発電機41の駆動状態を制御する。さらに、エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52を通じて、エンジン10の運転状態を制御する。
【0111】
本システムでは、エアコンのオン/オフが切り替え操作されるA/Cスイッチ61、運転者が車室内温度の目標値(目標温度)を設定するための温度設定スイッチ62、車室内温度を検出する車室内温度センサ63、外気温を検出する外気温センサ64、ヒータコア23又は室内熱交換器37からエアコン吹き出し口を介して車室内へ送られる空調風の温度(吹出口温度)を検出する吹出口温度センサ65等を備えている。これらの各センサ等の信号は、空調制御装置54に適宜入力される。
【0112】
エンジン制御装置52は、エンジン10の運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。本システムでは、エンジン10の回転速度を検出する回転速度センサ67、吸入空気量や吸気管負圧といったエンジン10の負荷を検出するエンジン負荷センサ68、ウォータジャケット内の冷却水の温度を検出する水温センサ69、車両の速度を検出する車速センサ66等を備えている。これら各センサの検出信号は、エンジン制御装置52に適宜入力される。
【0113】
エンジン制御装置52は、上述した各種センサから検出信号を入力し、それらの検出信号に基づいて燃料噴射弁による燃料噴射制御、点火装置による点火時期制御、吸気側及び排気側のバルブ駆動機構によるバルブタイミング制御、スロットルバルブによる吸気量制御を実施する。
【0114】
上記の各種制御において基本的には、エンジン10の運転状態に応じてエンジン軸効率(燃料消費率)が異なる。この点に鑑み、その時々の運転状態において、エンジン軸効率が最高となるように、適合データ等に基づいて各種制御を実施する。
【0115】
ここで、本システムでは、エンジン10の熱エネルギである廃熱の発生量(発生熱量)を増加させる場合、その廃熱増加に伴う燃料増加量が最も少なくなるように、発生熱量を増加させるための制御(熱創出制御)を実施する。熱創出制御について具体的には、本制御システムは、発生熱量を増加させるためのエンジン10の廃熱量調整手段を複数備えている。そして、暖房要求等の熱利用要求が生じた場合、その複数の廃熱量調整手段全体の上記熱費が最も小さくなるように、廃熱量調整手段の組み合わせを決定する。
【0116】
熱創出制御について更に詳しく説明する。本システムでは、例えば、
・点火時期を遅角させると廃熱量が増加すること
・吸気バルブの開弁時期を進角側に変更すると(吸気早開きにすると)廃熱量が増加すること
・排気バルブの開弁時期を遅角側に変更すると(排気遅開きにすると)廃熱量が増加すること
等のうち1つ又は複数を利用することによりエンジン廃熱量の増加を図っている。また、エンジン10の廃熱量調整手段として本実施形態では、例えば、
(1)排気バルブの遅開きを実施する手段
(2)吸気バルブの早開きを実施する手段
(3)点火遅角を実施する手段
を備えている。
【0117】
図3に、本システムによる熱供給制御の処理手順を示す。この処理は、所定の周期をもって繰返し実行される。また、この処理と並行して、電力供給制御の処理が、所定の周期をもって繰返し実行される。なお、これらの熱供給制御及び電力供給制御の各ステップにおける処理の詳細については後述する。
【0118】
空調制御装置54は、運転者の暖房要求に応じて、複数の熱源から熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量を算出する(S11)。そして、空調制御装置54は、この要求熱量をエネルギ制御装置51へ送信する。
【0119】
続いて、エネルギ制御装置51は、各熱源の熱費を算出する(S12)。このとき、ヒートポンプシステム30の熱費は、供給する熱量と、使用する電力を供給するために消費される燃料量とから算出する。その際に、その電力を供給するために消費される燃料量が、最も少なくなるように複数の電源からの電力供給を制御する。この電力供給制御については後述する。
【0120】
続いて、エネルギ制御装置51は、各熱源において熱費0の状態(熱を供給するために消費される燃料量が0の状態)で供給することのできる熱量であるベース熱量を算出する(S13)。エネルギ制御装置51は、各熱源の熱費に基づいて、各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として求める。そして、この関数に基づいて、供給する熱量と、この関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する。さらに、この熱量関係に基づいて、熱を供給するために熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算を行う(S14)。
【0121】
続いて、この最適化演算の結果に基づいて、要求熱量に対して各熱源のベース熱量を配分し、要求熱量の残りである残要求熱量を追加要求熱量として各熱源に配分する(S15)。その後、各熱源について、配分されたベース熱量と配分された残要求熱量との和として、各熱源に対する指令熱量を算出する(S16)。
【0122】
そして、エネルギ制御装置51は、空調制御装置54及びエンジン制御装置へ各熱源に対する指令熱量を送信し、空調制御装置54及びエンジン制御装置は、この指令熱量が供給されるように各熱源を制御する。
【0123】
図14に、本システムによる電力供給制御の処理手順を示す。この処理は、上記熱供給制御の処理と並行して、所定の周期をもって繰返し実行される。
【0124】
エネルギ制御装置51は、各電源において単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を算出するとともに(S41)、各電源において電力費0の状態(電力を供給するために消費される燃料量が0の状態)で供給することのできる電力であるベース電力を算出する(S42)。エネルギ制御装置51は、上記熱量の場合と同様にして、各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、供給する電力と、この関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する。そして、この電力関係に基づいて、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算を行う(S43)。そして、このように最適化された電力の供給負荷配分に基づいて、ヒートポンプシステム30(電動熱源)の熱費を算出する(S44)。上述した熱供給制御のS12においては、ヒートポンプシステム30についてこのように算出された熱費が使用される。
【0125】
エネルギ制御装置51は、ヒートポンプシステム30が熱を供給するために要求する電力を空調制御装置54から受信するとともに、その他の電気負荷が要求する電力を受信し、それらに基づいてバッテリ43を除く電源から供給すべき負荷要求電力を算出する(S45)。加えて、エネルギ制御装置51は、バッテリ43を除く電源からバッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する(S46)。このとき、バッテリ43に充電する電力の電力費が基準よりも少ない状態で、最大の電力となるように充電要求電力を算出する。また、負荷要求電力と充電要求電力との合計である総要求電力を算出する。
【0126】
そして、エネルギ制御装置51は、上記最適化演算の結果に基づいて、総要求電力に対して各電源のベース電力を配分し、総要求電力の残りである残要求電力を追加要求電力として各電源に配分する(S47)。各電源について、配分されたベース電力と配分された追加要求電力との和として、各電源に対する指令電力を算出する(S48)。なお、充電要求電力が0である場合には、バッテリ43を除く各電源の供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源を1つの電源とみなした合計電源とバッテリ43とにおいて、最適な供給負荷配分を決定する。
【0127】
その後、エネルギ制御装置51は、この充電要求電力とその際に消費される燃料量とに基づいて、バッテリ43の電力費を更新する(S49)。
【0128】
次に、上述した熱供給制御における各ステップの処理の詳細について説明する。
【0129】
図4は、図3のS11において、要求熱量Qreqを算出するための機能ブロック図である。空調制御装置54は、吹出口温度・風量算出部M1、及び要求熱量算出部M2を備えている。
【0130】
吹出口温度・風量算出部M1では、マップ等を用いることにより、車速センサ66で検出される車速Vcと、温度設定スイッチ62で設定されるエアコン設定温度Tsetと、車室内温度センサ63で検出される車室内温度Tinと、外気温センサ64で検出される外気温Toutとをパラメータとして、エアコン吹き出し口温度の要求値(要求吹出口温度Treq)及びエアコン吹き出し口風量の要求値(要求吹出風量Vreq)を算出する。
【0131】
要求熱量算出部M2では、マップ等を用いることにより、吹出口温度・風量算出部M1で算出した要求吹出口温度Treq及び要求吹出風量Vreqと、外気温Toutとをパラメータとして要求熱量Qreqを算出する。
【0132】
次に、図3のS12において、各熱源の熱費を算出する処理の詳細について説明する。
【0133】
図5に、エンジン10の運転状態と燃料消費率との関係を表すマップの一例を示す。同図では、エンジン10の運転状態として、エンジン回転速度及びエンジントルクについて示している。
【0134】
本システムでは、エンジン10において燃料の燃焼により生じるエネルギのうち、熱エネルギを、エンジン10の冷却水を媒体として回収し再利用することでシステム全体としての燃費改善を図るようにしている。
【0135】
エンジン10の熱創出制御は、例えばエンジン軸効率最良点でのエンジン運転中に熱利用要求があり、その熱利用要求に伴い要求熱量Qreqが増加した場合において、エンジン軸効率最良点での発生熱量では要求熱量Qreqを満足できないときに、その熱量不足分を補うべく実施される。
【0136】
この場合、要求熱量Qreqを満足させるには、例えば図6に示すように、エンジン10の動作点をエンジン軸効率最良点Aから、前記廃熱量調整手段を用いて、これとは異なる点A’に移行させることにより、エンジン廃熱量をエンジン軸効率最良点Aでの発生熱量(追加熱量=0)よりも熱量ΔQだけ増加させる必要がある。このA→A’のエンジン動作点の移行により、エンジン軸効率最良点よりも燃料増加側(燃費悪化側)にエンジン10の動作点が移行され、エンジン軸効率最良点Aでの発生熱量(ベース熱量)に対して増加分の熱量(追加熱量ΔQ)が生成されることとなる。
【0137】
図7は、熱利用要求に伴い追加熱量を発生させる場合の燃料消費量について説明するための図である。図中、(a)はエンジン軸効率最良点Aで運転している場合の燃料消費量[g/h]を示し、(b)はエンジン軸効率最良点Aから点A’に移行させた場合の燃料消費量[g/h]を示している。
【0138】
エンジン軸効率最良点Aでは、例えばエンジン10の燃料燃焼エネルギのうち約25%が運動エネルギとしてのエンジン10の軸出力に変換され、約25%が冷却損失となり、その残りが補機損失や排気損失などのその他の損失となる。冷却損失分の熱エネルギはエンジン冷却水を媒体として回収され、その回収熱が車室内の暖房やエンジン暖機等に利用される。
【0139】
そして、熱利用要求に伴い要求熱量Qreqが増加したときにエンジン軸効率最良点Aでの冷却損失のみでは要求熱量Qreqを満足できない場合には、エンジン熱創出制御によりその不足分の熱量を追加熱量として発生させる。このとき、追加熱量の発生に伴い燃料消費量が増加することとなるが、燃費悪化抑制の観点からすると、追加熱量発生に伴う燃料増加量は極力小さいことが望ましい。そこで、熱創出制御は、同量の追加熱量発生に際して、燃料増加量が最小になるような、前記廃熱量調整手段(1),(2),(3),の組み合わせを決定し、追加熱量の発生を制御する。
【0140】
さらに、本願発明者らの知見によれば、所望量のエンジン廃熱を発生させる場合、その熱発生のための燃料増加量が、熱量増加を開始する時のエンジン動作点(エンジン10の運転状態)に応じて変化する。例えば、エンジン10を軸効率最良点で制御しているときに要求熱量Qreqを満足できなくなった場合、要求熱量Qreqの不足分を補うべくエンジン10の発生熱量を増加させる必要がある。
【0141】
このとき、熱量増加を開始する時のエンジン動作点が、図5における動作点Xの場合と、動作点Xとは異なる動作点Yの場合とでは、同量のエンジン廃熱を増加させるのに必要な燃料増加量が相違する。すなわち、熱量増加開始時におけるエンジン動作点に応じて、エンジン発生熱量に対する燃料増加量(燃料増加率)が異なる。また、燃料増加率は、エンジン動作点の他に、外気温等によっても相違する。
【0142】
燃料増加率について更に説明する。燃料増加率は、熱源としてのエンジン10から冷却水に供給される熱量(廃熱量)を増加させる場合の燃料消費に関するパラメータである。具体的には、エンジン熱創出制御により創出される増加分の熱量(追加熱量ΔQ)と、その追加熱量ΔQを発生させた場合に、燃料増加量が最小となるように廃熱量調整手段を組み合わせて使用した時の燃料噴射量の増加分(燃料増加量ΔF)との比率である。例えば、燃料増加率の1つとして、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費を採用することができる。
【0143】
熱費Ct[g/kWh]=燃料増加量ΔF[g/h]/追加熱量ΔQ[kW]
図8は、エンジン動作点X(図5参照)における追加熱量ΔQ(供給熱量)に対する熱費Ctの関係を示す熱費特性図である。この熱費特性図は、予め実験等に基づいて算出してもよいし、モデル等に基づいてその都度算出してもよい。なお、この処理が、熱費算出手段としての処理に相当する。同図に示すように、熱費Ctは追加熱量ΔQに応じて異なり、例えばエンジン動作点Xの熱費特性では、追加熱量ΔQの設定範囲内において極小点を有している。
【0144】
追加熱量ΔQに対する熱費Ctの関係はエンジン動作点ごとに相違しており、例えば所定量の追加熱量Q1を発生させる場合には、動作点Xよりも動作点Yの方が熱費Ctが小さくなる。このため、エンジン10の発生熱量を追加熱量Q1だけ増加させる場合、その熱量増加開始時のエンジン動作点がYの場合には、動作点Xの場合に比べて燃料増加量が少なくて済む。すなわち、エンジン10の発生熱量を増加させる場合、エンジン10の熱エネルギを燃費の観点において効率よく発生できる場合とそうでない場合とがある。したがって、本システムでは、エンジン動作点(エンジン10の運転状態)に応じて、上記熱費特性図を算出している。
【0145】
また、本システムでは、熱源として、上記廃熱量調整手段(エンジン熱源)の他に、ヒートポンプシステム30(電動熱源)を備えている。このため、ヒートポンプシステム30についても、熱費特性図を算出している。
【0146】
具体的には、ヒートポンプシステム30では供給される電力により熱を創出することから、この電力を発電機41等の電源から供給するために消費される燃料量を考慮する。ここで、電力を供給するために消費される燃料消費量は、後述する図14のS43において、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化した、最適負荷配分で電力を供給した場合の、供給電力に対する単位電力当たりの燃料消費量(電力費)を算出して用いる。
【0147】
次に、図3のS13において、各熱源のベース熱量を算出する処理の詳細について説明する。
【0148】
廃熱量調整手段等のエンジン熱源においては、図7に示すように、エンジン軸効率最良点でエンジン10を運転している場合に、冷却損失分となっている熱エネルギをベース熱量とする。エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52からエンジン運転状態等の情報を受信し、エンジン運転状態等に基づいてこのベース熱量を算出する。
【0149】
ヒートポンプシステム30等の電動熱源においては、車両減速中に発電機41の回生発電により供給される電力、及び廃熱発電機25のベース電力により供給される電力によって、創出することのできる最大熱量をベース熱量とする。その際に、エネルギ制御装置51は、エンジン制御装置52からエンジン運転状態等の情報を受信し、エンジン運転状態等に基づいてベース熱量を算出する。なお、廃熱発電機25のベース電力については後述する。
【0150】
そして、エネルギ制御装置51は、各熱源のベース熱量を合計して、熱源全体の総ベース熱量Qbas_allを算出する。
【0151】
次に、図3のS14において、熱を供給するために熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算する処理の詳細について説明する。
【0152】
エネルギ制御装置51は、上記各熱源の熱費特性図に基づいて、各熱源において供給する熱量Qの複数点について、それぞれ対応する燃料消費量Fを算出する。具体的には、下記の式により、それぞれの燃料消費量Fを算出する。
【0153】
燃料消費量F=熱費Ct×熱量Q
そして、熱量Q及び燃料消費量Fの複数のデータに基づいて、これを最小二乗法等により二次関数に近似する。すなわち、燃料消費量Fを、供給する熱量Qの二次関数で表す。各熱源において、熱量Qと燃料消費量Fとの関係はそれぞれ異なったものとなる。なお、一般に、燃料消費量Fは、供給する熱量Qの二次〜四次の関数で近似することができる。
【0154】
ここで、複数の熱源により要求熱量Qreqを供給するとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくする各熱源の供給負荷配分は、以下の最適化問題を解くことにより求めることができる。すなわち、総要求熱量Qall、各熱源の供給熱量Q1,Q2,・・・,Qn、そのときに消費される燃料量F1,F2,・・・,Fnとして、
制約条件:Qall=Q1+Q2+・・・+Qn
目的関数:f=F1(Q1)+F2(Q2)+・・・+Fn(Qn)
において、総消費燃料量fを最も小さくする各熱源の供給負荷配分を求める問題となる。この問題の最適解は、以下のように、ラグランジュの未定乗数法によって求めることができる。
【0155】
目的関数:f(x1,x2,・・・,xn)
制約条件:g1(x1,x2,・・・,xn)=0
g2(x1,x2,・・・,xn)=0
g3(x1,x2,・・・,xn)=0
・
・
・
gm(x1,x2,・・・,xn)=0
決定変数:x1,x2,・・・,xn
という原問題を、新たな変数λ1,λ2,・・・,λm(ラグランジュ乗数)を導入し、下式のような制約条件のない問題に変換する。
【0156】
目的関数:L(x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm)
決定変数:x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm
ここで、Lはラグランジュ関数と呼ばれており、下式のように定義される。
【0157】
L(x1,x2,・・・,xn,λ1,λ2,・・・,λm)=f(x1,x2,・・・,xn)+λ1g1(x1,x2,・・・,xn)+・・・+λmg(x1,x2,・・・,xn)
一般に、x1,x2,・・・,xnが上記原問題の最適解であるための必要条件は、下式で表される。
【0158】
【数1】
この方式を、上述した各熱源の供給負荷配分の問題に適用すると、ラグランジュ関数は下式のように定義される。
【0159】
【数2】
最適解となるための必要条件は、各熱源の熱量Qiとラグランジュ乗数λとに対する上記数式2の1階微分が、それぞれ0になることである。すなわち、下記の数式3,4を満足するQ1,Q2,・・・Qnが、問題の最適解となる。
【0160】
【数3】
【0161】
【数4】
上記数式4は、制約条件そのものであることから、最適解は下式を満足する解として求めることができる。
【0162】
【数5】
ここで、dF/dQは、熱源から供給される熱量を微小量増加させた場合に、消費される燃料量がどれだけ増加するかを示すものであり、熱量増分燃料量と呼ぶこととする。上式は、この熱量増分燃料量が全ての熱源で等しいとき、すなわち各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致するときに、複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなること意味している。この原理は、一般に等λ則と呼ばれている。
【0163】
図9は、供給熱量Qと熱量増分燃料量dF/dQとの関係を示すグラフである。ここでは、熱源1,2,3の熱量増分燃料量dF/dQが、それぞれλ1,λ2,λ3の特性を有するものとする。このとき、燃料消費量Fは熱量Qの二次関数(aQ2+bQ+c)で近似されているため、この関数を熱量Qで1階微分すると一次関数(2aQ+b)となる。なお、このような、供給熱量Qと熱量増分燃料量dF/dQとの関係を熱量関係と呼ぶこととする。そして、この熱量関係を算出する処理が、熱量関係算出手段としての処理に相当する。
【0164】
同図において、特定のλsを仮定して横軸に平行な直線を引くと、この直線と各熱源の熱量増分燃料量との交点が求められる。このとき、それぞれの交点では、熱量増分燃料量の値が等しくなっており、上記数式5が満たされている。したがって、各交点における供給熱量Q1,Q2,Q3の合計が総要求熱量Qallに等しくなっていれば、上記数式4も同時に満たされることとなる。換言すれば、λsの値を変更して直線を上下させ、各交点における供給熱量Q1,Q2,Q3の合計が、総要求熱量Qallに等しくなる位置を求めればよい。
【0165】
また、一般に、各熱源には供給可能な熱量の上限値Qmax及び下限値Qminが存在する。このため、熱量増分燃料量dF/dQを各熱源で互いに一致させて変更する際に、一部の熱源において熱量増分燃料量に対応する熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達する場合がある。
【0166】
この場合、供給する熱量が上限値Qmax及び下限値Qminに達していない複数の熱源では、各熱源の熱量増分燃料量が互いに一致する場合に、それらの熱源で消費される燃料量が最も少なくなる。一方、供給する熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達している熱源では、その他の熱源との間で熱量増分燃料量が必ずしも一致しないこととなるが、その場合であっても複数の熱源全体で消費される燃料量が最も少なくなる。
【0167】
したがって、このように供給可能な熱量の上限値Qmax及び下限値Qminによる制約を考慮した場合の最適解の条件は、下記の数式6〜8で表される。
【0168】
【数6】
【0169】
【数7】
【0170】
【数8】
ここで、上記の数式6〜8の条件は、模式的に図10のように表すことができる。
【0171】
すなわち、供給熱量が上限値Qmax又は下限値Qminに達した場合には、供給熱量はそれらの値によって制限される。したがって、各熱源の供給熱量が、各熱源の熱量増分燃料量と特定のλsとの交点における供給熱量となるようにするためには、各熱源の供給熱量の上限値Qmax及び下限値Qminにおいて、熱量増分燃料量を縦軸に並行にそれぞれ上下へ変化させればよい。このような図によれば、各熱源の熱量増分燃料量と特定のλsとの交点における供給熱量として、各熱源の供給熱量を求めることができる。
【0172】
例えば、同図において、各熱源1〜3の各供給熱量Q1〜Q3は、λsの直線との交点における供給熱量として求めることができる。すなわち、熱源1の供給熱量Q1は下限値Q1min(=0)と上限値Q1maxとの間の供給熱量Q1となり、熱源2の供給熱量Q2は下限値Q2min(=0)と上限値Q2maxとの間の供給熱量Q2となり、熱源3の供給熱量Q3は上限値Q3maxとなる。
【0173】
続いて、このようにして求めた熱量関係に基づいて、要求熱量Qreq(総供給熱量)と各熱源の供給負荷配分(最適配分熱量)との関係を算出する。ここでは、説明の簡便化のために、熱源が2つの場合について説明する。
【0174】
図11に示すように、供給熱量に対する熱源1,2の熱量増分燃料量が、それぞれλ1,λ2で表されるとする。このとき、各熱源1,2の供給熱量を最適に配分しつつ、その時々の供給熱量Q1,Q2の合計を求める。
【0175】
詳しくは、各熱源1,2の供給熱量が下限値となる場合の熱量増分燃料量のうち最小の熱量増分燃料量(λmin)から、特定のλsの値を増加させて直線を上へ移動させる。そして、その時々について、特定のλsの直線との交点における各熱源1,2の供給熱量Q1,Q2と、それらの合計Q1+Q2とを算出する。この処理を、各熱源1,2の供給熱量が上限値となる場合の熱量増分燃料量のうち、最大の熱量増分燃料量(λmax)まで行う。そして、各熱源1,2の供給熱量Q1,Q2の合計Q1+Q2(総供給熱量)と、各熱源の供給熱量Q1,Q2(最適配分熱量)との関係を算出する。
【0176】
この関係を図に表したものが図12である。
【0177】
同図に示すように、例えば、要求熱量QreqがQ1+Q2である場合には、横軸の総供給熱量がQ1+Q2となる点を探し、それ対応する各熱源1,2の最適配分熱量Q1,Q2を縦軸で読取ればよい。したがって、要求熱量Qreqが算出された場合に、各熱源1,2の最適な供給負荷配分(供給熱量Q1,Q2)を算出することができる。
【0178】
次に、図3のS15において、要求熱量Qreqに対して各熱源i(ここで、i=1の熱源をエンジンの冷却水熱量、i=2の熱源をヒートポンプとする。)のベース熱量Qbas(i)を配分し、要求熱量Qreqの残りである残要求熱量Qreq_lefを各熱源iに配分する処理の詳細について説明する。
【0179】
図13に、ベース熱量配分の処理手順を示す。
【0180】
各熱源iのベース熱量Qbas(i)の合計である総ベース熱量Qbas_allが、要求熱量Qreq以上であるか否か判定する(S21)。すなわち、要求熱量Qreqを総ベース熱量Qbas_allに全て配分することができるか否か、換言すれば、総ベース熱量Qbas_allによって要求熱量Qreqを供給することができるか否か判定する。
【0181】
総ベース熱量Qbas_allが要求熱量Qreq以上であると判定された場合には(S21:YES)、カウンタiをリセットする(S22)。そして、要求熱量Qreqを各熱源iのベース熱量Qbas(i)に配分した残りである残要求熱量Qreq_lefを、まずは要求熱量Qreqとし、全てのベース熱量Qbas(i)を一旦0とする(S23)。
【0182】
続いて、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上であるか否か判定する(S24)。すなわち、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)によって、残要求熱量Qreq_lefを供給することができるか否か判定する。
【0183】
上記判定において、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上でないと判定された場合には(S24:NO)、i番目の熱源のベース熱量に対して供給を要求する要求ベース熱量Qabas(i)を、ベース熱量Qbas(i)とする(S25)。すなわち、i番目の熱源に対して、ベース熱量Qbas(i)を全て供給するように要求する。
【0184】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを、残要求熱量Qreq_lefからi番目の熱源のベース熱量Qbas(i)を引いた値に更新し(S26)、カウンタiを1つ進める(S27)。
【0185】
このようにS24〜S27の処理を繰返し、残要求熱量Qreq_lefを各熱源iのベース熱量Qbas(i)に順次配分する。そして、i番目の熱源のベース熱量Qbas(i)が、残要求熱量Qreq_lef以上であると判定された場合には(S24:YES)、i番目の熱源の要求ベース熱量Qabas(i)を残要求熱量Qreq_lefとする(S28)。すなわち、最後に残った残要求熱量Qreq_lefを、i番目の熱源のベース熱量に配分する。
【0186】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを0にした後(S29)、この一連の処理を一旦終了する(END)。すなわち、最後に残った残要求熱量Qreq_lefが、i番目の熱源のベース熱量に配分されたため、残要求熱量Qreq_lefを0とする。
【0187】
一方、総ベース熱量Qbas_allが要求熱量Qreq以上でないと判定された場合には(S21:NO)、全て熱源iの要求ベース熱量Qabas(i)をベース熱量Qbas(i)とする(S31)。すなわち、総ベース熱量Qbas_allによって要求熱量Qreqを供給することができないため、全ての熱源iに対してベース熱量Qbas(i)を全て供給するように要求する。
【0188】
続いて、残要求熱量Qreq_lefを、残要求熱量Qreq_lefから総ベース熱量Qbas_allを引いた値に更新し(S32)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0189】
次に、各熱源iについて、ベース熱量Qbas(i)以外に供給を要求する追加要求熱量Qapl(i)の配分を決定する。
【0190】
ここで、残要求熱量Qreq_lefが0である場合には、各熱源iの追加要求熱量Qapl(i)を全て0とする。すなわち、この場合には、各熱源iに対して、ベース熱量Qbas(i)以外に熱量の供給を要求する必要がない。
【0191】
一方、残要求熱量Qreq_lefが0でない場合には、上述した熱量関係に基づいて、残要求熱量Qreq_lefを供給する場合において、各熱源iの追加要求熱量Qapl(i)の配分を決定する。すなわち、図12の例では、総供給熱量(Q1+Q2)を残要求熱量Qreq_lefとして、これに対応する各熱源iの最適配分熱量(Q1,Q2)を決定し、これを追加要求熱量Qapl(i)とする。これにより、熱費が0でない状態で供給する熱量(ベース熱量以外の熱量)を、各熱源iに最適に配分することができる。なお、この一連の処理が、熱量配分決定手段としての処理に相当する。
【0192】
その後、図3のS16において、各熱源iについて、配分されたベース熱量(要求ベース熱量Qabas(i))と配分された追加要求熱量Qapl(i)との和として、各熱源iに対する指令熱量Qa(i)を算出する。
【0193】
エネルギ制御装置51は、空調制御装置54及びエンジン制御装置へ各熱源iに対する指令熱量Qa(i)を送信し、空調制御装置54及びエンジン制御装置は、この指令熱量Qa(i)が供給されるように各熱源iを制御する。このとき、空調制御装置54は、ヒータコア23から車室内へ供給される熱量が指令熱量Qa(1)となるように、上記電動ポンプ22及びブロアファン24の駆動状態を制御する。また、熱創出制御は、指令熱量Qa(1)を発生すべく、各エンジン廃熱量調整手段を利用してエンジンの発生熱量を制御する。
【0194】
また、空調制御装置54は、ヒートポンプ制御装置38に指令をだして、ヒートポンプシステムから車室内へ供給される熱量が指令熱量Qa(2)になるように制御する。同時に、空調制御装置54はヒートポンプシステムが指令熱量Qa(2)を発生するために必要な電力を算出する。
【0195】
同様にして、上記の熱供給制御と並行して実行される電力供給制御における各ステップの処理の詳細について説明する。
【0196】
まず、図14のS41において、各電源において単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費を算出する手順、及び図14のS42において、各電源のベース電力を算出する処理の詳細について説明する。
【0197】
発電機41の電力費は、発電機41の発電電力Pを発生させるために発電電力がゼロの場合のエンジントルクに対する、エンジンに必要な増加トルクΔTeを算出し、この増加トルクΔTeを発生させるために必要な燃料増加量ΔFに基づいて、燃料増加量ΔFを発電電力Pで割ることで算出することができる。
【0198】
この増加トルクΔTeは、発電電力、発電機41の発電効率、及びエンジン回転速度に基づいて算出することができる。そして、増加トルクΔTeを発生するために必要な燃料増加量ΔFは、エンジン動作点がエンジントルクの増加側へ変化したことにより、燃料消費率が変化し(例えば、図5のYからY‘への変化)、それにより生じた燃料消費量の変化として算出することができる。また、発電機41は、車両の減速時において、車輪15から変速機12等を介してエンジン10に伝達される回転力に基づいて回生発電を行う。このため、車両の減速時において発電機41により回生発電が行われている場合には、発電機41の電力費を0となるため、ベース電力を回生可能な最大発電電力とする。また、回生発電を行っていない時のベース電力はゼロとなる。
【0199】
廃熱発電機25では、エンジン10の冷却水の熱を利用して発電を行うため、この発電に伴って冷却水温度が低下した場合のエンジン摩擦損失等の増加によって生じる増加燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考える。
【0200】
ここで、エンジン10の冷却水温度と燃料消費量との関係は、図15のように表される。なお、この関係は、予め実験等に基づいて算出することができる。
【0201】
同図に示すように、冷却水温度がベース温度Twbよりも高い場合には、冷却水温度がベース温度Twbに至るまでは廃熱発電の発電電力を増加(冷却温度を低下)させても燃料消費量は増加しない。
【0202】
一方、冷却水温度がベース温度Twbよりも低くなるほど、エンジン10の摩擦抵抗等が大きくなるため、燃料消費量が増加する。このため、同図に示すように、例えば現在の冷却水温度が温度Tw2、廃熱発電を行った場合に冷却水温度がΔTwだけ低下し、温度がTw1になると予測される場合には、燃料消費量がΔFだけ増加し、廃熱発電によりΔFだけ燃料が消費されると考えることができる。
【0203】
したがって、廃熱発電機25による発電に伴う冷却水の低下温度ΔTwと、この低下温度ΔTwに対応する燃料増加量ΔFとの関係から、廃熱発電機25の電力費を算出することができる。この低下温度ΔTwは、廃熱発電機25の発電量、発電効率、及び冷却水系の熱容量に基づいて算出することができる。
【0204】
そして、廃熱発電機25の供給電力(廃熱発電電力)と、電力を供給するために消費される燃料量(燃料増加量ΔF)との関係は、図16のように表される。
【0205】
同図に示すように、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも小さい場合には、燃料増加量ΔFが0となる。このベース電力Pbasは、図15のベース温度Twbに対応しており、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも小さい場合には、冷却水温度がベース温度Twbよりも低下しないことを意味している。そして、廃熱発電電力がベース電力Pbasよりも大きくなると、冷却水温度がベース温度Twbよりも低下し、その低下に伴って燃料増加量ΔFが大きくなる。
【0206】
そして、廃熱発電機25の供給電力と、電力を供給するために消費される燃料量とに基づいて、発熱発電電力がベース電力Pbasよりも大きい部分について、廃熱発電機25の電力費を算出する。具体的には、燃料増加量ΔFを廃熱発電電力Pとベース電力Pbasの差分で割ることにより、電力費を算出する。これにより、廃熱発電機25について、供給電力に対する電力費の関係を示す電力費特性図を作成する。
【0207】
そして、各電源のベース電力を合計して、電源全体の総ベース電力Pbas_allを算出する。なお、バッテリ43の電力費については後述する。また、バッテリ43のベース電力は0である。
【0208】
次に、図14のS43において、電力を供給するために電源全体で消費される燃料量が最も少なくなるように最適化演算する処理の詳細について説明する。この処理の手順は、上述した熱量の場合と同様である。すなわち、熱量Q、熱量増分燃料量dF/dQ、及び熱量関係を、それぞれ電力P、電力増分燃料量dF/dP、電力関係に代えて、ラグランジュの未定乗数法により最適解を求めればよい。なお、この処理が、電力増分燃料量算出手段としての処理に相当する。
【0209】
ここでは、熱量の場合と比較して、以下の点が異なっている。
【0210】
まず、バッテリ43を除く複数の電源(廃熱発電機25、発電機41)について、各電源の最適な供給負荷配分を決定する。なお、この処理が、電力配分決定手段としての処理に相当する。この処理の手順は、上述した熱量の場合と同様である。その際には、エネルギ制御装置51(電力関係算出手段)は、エンジン10の運転状態に応じて、各電源における上記電力関係を算出する。
【0211】
次に、バッテリ43を除く各電源から上記の最適な供給負荷配分により電力を供給する際に、バッテリ43を除く各電源で消費される燃料量の合計を、要求電力で割った最適電力費を算出する。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリ43を除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する。
【0212】
すなわち、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくした場合において、バッテリ43を除く複数の電源を1つの合計電源とみなし、この合計電源について電力増分燃料量を算出する。そして、合計電源において電力と電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する。
【0213】
バッテリ43では、充電するために消費される燃料量が、電力を供給するために消費される燃料量であると考えることができる。したがって、バッテリ43では、供給する電力に対しては電力増分燃料量が変化しない。換言すれば、バッテリ43では、電力増分燃料量を変化させずに、供給する電力を変更することができる。
【0214】
ここで、バッテリ43に充電するために消費される燃料量は、バッテリ43を除く電源である発電機41及び廃熱発電機25の供給負荷配分を最適化した上で、発電機41及び廃熱発電機25がそれぞれ供給する電力とそれぞれの電力費とに基づいて算出する。そして、バッテリ43では、供給する電力に対して電力増分燃料量が変化しないため、電力増分燃料量と電力費とが等しくなる。
【0215】
図17に、電源1(バッテリ43)及び電源2(合計電源)について、供給電力Pと電力増分燃料量dF/dPとの関係である電力関係を示す。この電力関係に基づいて、各電源の供給電力の合計(総供給電力)と、各電源の供給電力(最適配分電力)との関係を算出する。
【0216】
同図に示すように、供給電力に対する電源1,2の電力増分燃料量が、それぞれλ1,λ2で表されるとする。このとき、各電源1,2の供給電力を最適に配分しつつ、その時々の供給電力P1,P2の合計を求める。
【0217】
詳しくは、バッテリ43の電力増分燃料量(λ1)は一定値(λ1s)であるため、電源1の電力増分燃料量と電源2の電力増分燃料量とが一致するのは特定のλsが一定値λ1sに一致する場合のみとなる。このため、特定のλsが一定値λ1sよりも小さい場合には、電源2の電力増分燃料量(λ2)と特定のλsの直線との交点によって、電源2から供給する電力P2が求まり、電源1から供給する電力P1は0となる。特定のλsが一定値λ1sに一致する場合には、電源2から供給する電力P2は一定となり、電源1の供給電力P1が増加する。電源1の供給電力P1が上限値P1maxに達した後は、電源2から供給する電力P1maxで一定となり、電源2の電力増分燃料量(λ2)と特定のλsの直線との交点によって、電源2から供給する電力P2が求まる。
【0218】
そして、その時々について、特定のλsの直線との交点における各電源1,2の供給電力P1,P2と、それらの合計P1+P2とを算出する。この関係を図に表したものが図18である。この図に基づいて、横軸の総供給電力が要求電力Preqとなる点を探し、それ対応する各電源1,2の最適配分電力P1,P2を縦軸で読取ればよい。したがって、要求電力Preqaが算出された場合に、各電源1(バッテリ),2(合計電源)の最適な供給負荷配分(供給電力P1,P2)を算出することができる。ひいては、電源2(合計電源)への供給負荷配分(供給電力P2)に対する、合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分は、前述のように算出されているため、バッテリ43を含む各電源の最適な供給負荷配分を算出することができる。なお、この処理が、電力配分決定手段としての処理に相当する。
【0219】
次に、図14のS44において、このように最適化された電力の供給負荷配分に基づいて、ヒートポンプシステム30の熱費を算出し、上述した熱供給制御において、ヒートポンプシステム30について、このように算出された熱費を使用する。このヒートポンプシステム30の熱費算出処理は、図3のS12の熱費算出処理と一体の処理である。
【0220】
次に、図14のS45において、ヒートポンプシステム30が熱を供給するために要求する電力を空調制御装置54から受信するとともに、その他の電気負荷(負荷42、電動ポンプ22、コンプレッサ用インバータ32等)が要求する電力を受信し、それらに基づいて負荷要求電力Preqを算出する。
【0221】
次に、図14のS46において、バッテリ43を除く電源から、バッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力Preqcを算出する処理の詳細について説明する。
【0222】
図19に、充電要求電力Preqcを算出する処理手の順を示す。この処理は、エネルギ制御装置51によって実行される。
【0223】
同図に示すように、バッテリ43に充電する際の電力の上限値Pcmaxを算出する(S71)。この上限値Pcmaxは、現在のバッテリ43の状態(バッテリ温度等)において、充電時にバッテリ43の電圧が所定値を超えない最大の電力値として設定されている。なお、バッテリ43の容量が判定値以上であり、充電することができない場合には、上限値Pcmaxを0にする。
【0224】
続いて、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1を算出する(S72)。ここで、上記負荷要求電力Preqが総ベース電力Pbas_allよりも大きい場合には、充電要求電力Preqc1を0とし、総ベース電力で賄いきれない電力である負荷残要求電力Preq_lefを、負荷要求電力Preqから総ベース電力Pbas_allを引いた値とする。すなわち、総ベース電力Pbas_allは、全て負荷要求電力Preqに配分されるため、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1を0とする。一方、上記負荷要求電力Preqが総ベース電力Pbas_allよりも小さい場合には、総ベース電力Pbas_allから負荷要求電力Preqを引いた残りを充電要求電力Preqc1とし、負荷残要求電力Preq_lefを0とする。
【0225】
続いて、バッテリ43に単位電力充電するために消費される燃料量である充電電力費Ccを算出する(S73)。バッテリ43に充電するために消費される燃料量は、バッテリを含む各電源の最適な供給負荷配分(S43で算出)で負荷残要求電力Preq_lefを供給した場合の各電源の燃料消費量の合計値から、負荷残要求電力Preq_lefと総ベース電力以外に対する充電電力Pcとの合計電力を、バッテリを除く複数の電源(合計電源)から最適な供給配分(S43で算出)で供給した場合に増加した、合計電源の総燃料消費量の増加量ΔFcで表され、充電電力Pcに対する関数として表される。
【0226】
増加量ΔFcは、充電電力Pcで充電した場合の充電を行わない場合に対する燃料消費量の増分となり、充電電力費Ccは増加量ΔFcを充電電力Pcで割ることで求められる。ここで、充電電力Pcの最大値は、合計電源がベース電力以外に供給可能な最大電力をPreq_lef+Pcが超えず、かつ、充電電力Pcと充電要求電力Preqc1との和が、充電する際の電力の上限値Pcmaxを超えない範囲で求める。
【0227】
続いて、バッテリ43に充電するか否かの基準となる基準電力費Cprfを算出する(S74)。図20に示すように、この基準電力費Cprfは、バッテリ残容量が少ないほど大きくなり、また負荷要求電力Preqが大きいほど大きくなる。
【0228】
続いて、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2を算出する(S75)。ここでは、図21に示すように、充電電力費Ccと基準電力費Cprfとを比較して、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる充電電力Pcが存在しない場合には、バッテリ43に充電する際の電力費が高くなるため、バッテリ43に充電しない。
【0229】
一方、図22に示すように、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる充電電力Pcが存在する場合には、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で最大の充電電力Pcを、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2とする。
【0230】
その後、総ベース電力Pbas_allに対する充電要求電力Preqc1と、総ベース電力Pbas_all以外に対する充電要求電力Preqc2との合計である充電要求電力Preqcを算出する(S76)。このとき、充電要求電力Preqcが、バッテリ43に充電する際の電力の上限値Pcmaxを超える場合には、充電要求電力Preqcを上限値Pcmaxとする。そして、この一連の処理を一旦終了する。なお、この一連の処理が、充電要求電力算出手段としての処理に相当する。
【0231】
次に、図14のS47において、負荷要求電力Preq及び充電要求電力Precの合計である総要求電力Preqaに対して各電源iのベース電力Pbas(i)を配分し、総要求電力Preqaの残りである残要求電力Preqa_lefを各電源iに配分する処理の詳細について説明する。
【0232】
図23に、ベース電力配分の処理手順を示す。なお、この手順は、基本的には図13に示したベース熱量を配分する手順と同様であるため、説明を簡略化する。
【0233】
各電源iのベース電力Pbas(i)の合計である総ベース電力Pbas_allが、総要求電力Preqa以上であるか否か判定する(S51)。
【0234】
総ベース電力Pbas_allが総要求電力Preqa以上であると判定され場合には(S51:YES)、カウンタiをリセットする(S52)。そして、総要求電力Preqaを各電源i(i=1の電源を廃熱発電機25、i=2の電源を発電機41とする。)のベース電力Pbas(i)に配分した残りである残要求電力Preqa_lefを、まずは総要求電力Preqaとし、全てのベース電力Pbas(i)を一旦0とする(S53)。
【0235】
続いて、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上であるか否か判定する(S54)。
【0236】
上記判定において、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上でないと判定された場合には(S54:NO)、i番目の電源のベース電力に対して供給を要求する要求ベース電力Pabas(i)を、ベース電力Pbas(i)とする(S55)。
【0237】
続いて、残要求電力Preqa_lefを、残要求電力Preqa_lefからi番目の電源のベース電力Pbas(i)を引いた値に更新し(S56)、カウンタiを1つ進める(S57)。
【0238】
このようにS54〜S57の処理を繰返し、残要求電力Preqa_lefを各電源iのベース電力Pbas(i)に順次配分する。そして、i番目の電源のベース電力Pbas(i)が、残要求電力Preqa_lef以上であると判定された場合には(S54:YES)、i番目の電源の要求ベース電力Pabas(i)を残要求電力Preqa_lefとする(S58)。
【0239】
続いて、残要求電力Preqa_lefを0にした後(S59)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0240】
一方、総ベース電力Pbas_allが総要求電力Preqa以上でないと判定された場合には(S51:NO)、全て電源iの要求ベース電力Pabas(i)をベース電力Pbas(i)とする(S61)。
【0241】
続いて、残要求電力Preqa_lefを、残要求電力Preqa_lefから総ベース電力Pbas_allを引いた値に更新し(S62)、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0242】
次に、各電源iについて、ベース電力Pbas(i)以外に供給を要求する追加要求電力Papl(i)の配分を決定する。
【0243】
ここで、残要求電力Preqa_lefが0である場合には、各電源iの追加要求電力Papl(i)を全て0とする。
【0244】
一方、残要求電力Preqa_lefが0でない場合には、上述した電力関係に基づいて、残要求電力Preqa_lefを供給する場合において、各電源iの追加要求電力Papl(i)の配分を決定する。
【0245】
このとき、バッテリ43の充電要求電力Preqcが0である場合には、バッテリ43からも電力を供給する。具体的には、S43で算出したバッテリ43を含む各電源の最適な供給負荷配分から、総供給電力を残要求電力Preqa_lefとした場合の、バッテリ43と合計電源への配分電力を決定し、さらに、同じくS43で算出した、前記合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分から、合計電源の総供給電力を合計電源への配分電力とした場合の廃熱発電機25及び発電機41への供給負荷配分を決定し、それぞれ追加要求電力Papl(1)、Papl(2)とする。
【0246】
バッテリ43の充電要求電力Preqcが0でない場合には、バッテリ43に充電する。この際は、バッテリ43からの給電が行えないため、S43で算出した、前記合計電源を構成する廃熱発電機25及び発電機41への最適な供給負荷配分から、合計電源の総供給電力を残要求電力Preqa_lefとした場合の廃熱発電機25及び発電機41への供給負荷配分を決定し、それぞれ追加要求電力Papl(1)、Papl(2)とする。
【0247】
これにより、電力費が0でない状態で供給する電力(ベース電力以外の電力)を、各電源iに最適に配分することができる。
【0248】
次に、図14のS48において、各電源iについて、配分されたベース電力(要求ベース電力Pabas(i))と配分された残要求電力(追加要求電力Papl(i))との和として、各電源iに対する指令電力Pa(i)を算出する。
【0249】
エネルギ制御装置51は、発電機制御装置53へ各電源iに対する指令電力Pa(i)を送信し、発電機制御装置53、この指令電力Pa(i)が供給されるように各電源iを制御する。
【0250】
次に、図14のS49において、エネルギ制御装置51は、上記充電要求電力Preqcとその充電により消費される燃料量とに基づいて、バッテリ43の電力費を更新する。すなわち、それまでにバッテリ43に充電するために消費された燃料量に、今回消費される燃料量を足した合計燃料量を求める。ここで、今回バッテリ43に充電するために充電された燃料量は、前記充電電力Pcと充電電力費Ccの関係により求める。また、それまでにバッテリ43に充電するために供給された電力量に、今回供給される電力を足した合計電力量を求める。そして、合計燃料量を合計電力量で割って、バッテリ43の新たな電力費を算出する。
【0251】
以上詳述した本実施形態は以下の利点を有する。
【0252】
・複数の熱源(冷却水熱量、ヒートポンプシステム30)から熱交換部(ヒータコア23、室内熱交換器37)へ供給されるように要求される要求熱量Qreq、すなわち複数の熱源から熱交換部へ供給すべき熱量が算出される。一方、各熱源iについて、供給する熱量と熱費Ctとの関係が算出される。
【0253】
そして、各熱源iから供給する熱量と熱費Ctとの関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量Qreqに一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費Ctが最小となるように、各熱源iから熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量Qreqを供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0254】
・各熱源iにおいて熱を供給するために消費される燃料量Fi(Qi)を熱量Qiの関数として、熱量Qiの関数を熱量Qiで微分した微分値である熱量増分燃料量dF/dQが算出される。各熱源iの熱量増分燃料量が互いに一致した状態は、消費される燃料量をそれ以上減少させることができない状態である。したがって、その状態を形成するように各熱源iの供給負荷配分を決定することにより、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0255】
そして、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量Qreqに一致し、且つ各熱源iの熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源iから熱を供給する配分が決定される。このため、複数の熱源から熱交換部へ要求熱量Qreqを供給することができるとともに、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。さらに、各熱源iの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0256】
・各熱源iにおいて熱量Qiと熱量増分燃料量との関係である熱量関係が算出される。このため、熱量増分燃料量を各熱源iで互いに一致させて変更する場合に、各熱源iにおいて熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量Qiを算出することができる。
【0257】
そして、その各熱源iの熱量Qiの合計が要求熱量Qreqに一致するように、各熱源iから熱量を供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0258】
・各熱源iにおいて供給可能な熱量Qiの上限値Qimaxが設定され、熱量増分燃料量が各熱源iで互いに一致させられて増加されつつ、各熱源iにおいて熱量関係に基づき熱量増分燃料量に対応する熱量Qiが算出される。そして、その熱量Qiが上限値Qimaxに達した熱源iにおいては供給する熱量Qiが上限値Qimaxとされ、その他の熱源jで消費される燃料量Fj(Qj)が最も少なくなるように、各熱源jから熱量を供給する配分が決定される。
【0259】
すなわち、供給する熱量Qjが上限値に達していない熱源jにおいては、各熱源jの熱量増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの熱源jから供給される熱量Qjと、供給する熱量Qiが上限値Qimaxに達した熱源iの熱量Qiとの合計が要求熱量Qreqに一致するように、各熱源i,jから熱量Qi,Qjを供給する配分が決定される。したがって、供給する熱量Qjが上限値に達していない熱源jで消費される燃料量Fj(Qj)を最も少なくすることができ、ひいては複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0260】
・車両に搭載されたエンジン10の運転状態に応じて、各熱源iにおける上記熱量関係が算出される。このため、その時々のエンジン10の運転状態に応じて、各熱源iから熱量Qiを供給する配分を適切に決定することができる。
【0261】
・複数の熱源は、車両に搭載されたエンジン10の冷却水を介してヒータコア23へ熱を供給するエンジン10の熱創出制御を含み、エンジン10には、冷却水を吐出する電動ポンプ22が搭載されている。そして、熱創出制御から供給される熱量に基づいて、電動ポンプ22による冷却水の吐出量が制御されるため、ヒータコア23へ供給される熱量を適切に制御することができる。
【0262】
・複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給するヒートポンプシステム30を含み、ヒートポンプシステム30について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費Cpに基づいて熱費Ctが算出される。このため、ヒートポンプシステム30の電力費Cpを熱費Ctに換算することができ、この熱費Ctに基づいて各熱源iから熱を供給する配分を決定することができる。
・車両には複数の電源(発電機41、廃熱発電機25、バッテリ43)が搭載されており、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷(電動ポンプ22、コンプレッサ用インバータ32、負荷42等)へ供給されるように要求される負荷要求電力Preq、すなわち複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ供給すべき電力が算出される。一方、各電源iについて、供給する電力Piと上記電力費Cpとの関係が算出される。
【0263】
そして、各電源iから供給する電力Piと電力費Cpとの関係に基づいて、複数の電源から供給される電力の合計が負荷要求電力Preqに一致し、且つその負荷要求電力Preqを供給する電源全体の電力費が最小となるように、各電源iから電力Piを供給する配分が決定される。このため、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0264】
その上で、ヒートポンプシステム30について、最小の電力費に基づいて熱費Ctが算出される。このため、各電源iから電力Piを供給する配分(各電源iの供給負荷配分)を最適化した状態において、ヒートポンプシステム30の熱費Ctを算出することができる。そして、この熱費Ctに基づいて各熱源iから熱を供給する配分が決定されるため、複数の熱源がヒートポンプシステム30を含む場合であっても、複数の熱源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0265】
・各電源iにおいて電力Piを供給するために消費される燃料量Fi(Pi)を電力Piの関数として、電力Piの関数を電力Piで微分した微分値である電力増分燃料量dF/dPが算出される。そして、複数の電源から供給される電力の合計が負荷要求電力Preqに一致し、且つ各電源iの電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源iから電力を供給する配分が決定される。このため、複数の電源からヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。さらに、各電源iの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0266】
・各電源iにおいて電力Piと電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、電力増分燃料量を各電源iで互いに一致させて変更する場合に、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piを算出することができる。
【0267】
そして、その各電源iの電力Piの合計が負荷要求電力Preqに一致するように、各電源iから電力Piを供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0268】
・各電源iにおいて供給可能な電力Piの上限値Pimaxが設定され、電力増分燃料量が各電源iで互いに一致させられて増加されつつ、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piが算出される。そして、その電力Piが上限値Pimaxに達した電源iにおいては供給する電力Piが上限値Pimaxとされ、その他の電源jで消費される燃料量Fj(Pj)が最も少なくなるように、各電源jから電力Pjを供給する配分が決定される。
【0269】
すなわち、供給する電力Pjが上限値Pjmaxに達していない電源jにおいては、各電源jの電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源jから供給される電力Pjと、供給する電力Piが上限値Pimaxに達した電源iの電力Piとの合計が負荷要求電力Preqに一致するように、各電源i,jから電力Pi,Pjを供給する配分が決定される。したがって、供給する電力Pjが上限値Pjmaxに達していない電源jで消費される燃料量Fj(Pj)を最も少なくすることができ、ひいては複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0270】
・複数の電源はバッテリ43を含み、バッテリ43において電力に対する電力増分燃料量が一定値λ1sとされる。そして、電力増分燃料量が各電源iで互いに一致させられて上記一定値λ1sとされ、各電源iにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Piが算出される。このとき、バッテリ43を除く電源k(廃熱発電機25、発電機41)では、電力増分燃料量が一定値λ1sとされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力は特定の値に固定されることとなる。
【0271】
そして、バッテリ43から供給する電力P1とその他の電源kから供給する電力P2との合計が負荷要求電力Preqに一致するように、バッテリ43から供給される電力P1が決定される。このため、バッテリ43及びその他の電源kにより電力を供給する場合において、負荷要求電力Preqを供給することができるとともに、消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0272】
・車両にはバッテリ43を含む複数の電源が搭載されており、ヒートポンプシステム30を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力Preqが算出される。また、バッテリ43を除く電源kからバッテリ43へ充電のために供給されるように要求される充電要求電力Preqcが算出される。一方、各電源iについて、供給する電力Piと上記電力費Cpとの関係が算出される。
【0273】
そして、各電源iから供給する電力Piと電力費Cpとの関係に基づいて、バッテリ43を除く複数の電源kから供給される電力の合計が、負荷要求電力Preq及び充電要求電力Preqcの合計である総要求電力Preqaに一致し、且つその電力を供給する電源全体の電力費Cpが最小となるように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。このため、バッテリ43の充電に使用される電力も含めた総要求電力Preqaを供給することができるとともに、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0274】
・バッテリ43を除く各電源kにおいて、電力Pkを供給するために消費される燃料量Fk(Pk)を電力Pkの関数として、電力Pkの関数を電力Pkで微分した微分値である電力増分燃料量dF/dPが算出される。そして、バッテリ43を除く各電源kの電力増分燃料量が互いに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力Pkを供給する配分が決定される。このため、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。さらに、各電源kの最適な供給負荷配分を決定する上で、その組み合わせを総当りで演算する必要がないため、演算負荷の増加を抑制することができる。
【0275】
・各電源iにおいて電力Piと電力増分燃料量との関係である電力関係が算出される。このため、バッテリ43を除く各電源kで電力増分燃料量を互いに一致させて変更する場合に、バッテリを除く各電源kにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Pkを算出することができる。
【0276】
そして、その各電源kの電力Pkの合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力Pkを供給する配分が決定されるため、演算負荷の増加を更に抑制しつつ、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量を最も少なくすることができる。
【0277】
・各電源iにおいて供給可能な電力Piの上限値Pimaxが設定され、バッテリ43を除く各電源kで電力増分燃料量が互いに一致させられて増加されつつ、バッテリ43を除く各電源kにおいて電力関係に基づき電力増分燃料量に対応する電力Pkが算出される。そして、その電力Pkが上限値Pkmaxに達した電源kにおいては供給する電力Pkが上限値Pkmaxとされ、その他の電源lで消費される燃料量Fl(Pl)が最も少なくなるように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。
【0278】
すなわち、供給する電力Plが上限値Plmaxに達していない電源lにおいては、各電源lの電力増分燃料量が互いに一致させられて増加される。そして、それらの電源lから供給される電力Plと、供給する電力Pkが上限値Pkmaxに達した電源kの電力Pkとの合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43を除く各電源kから電力を供給する配分が決定される。したがって、供給する電力Plが上限値Plmaxに達していない電源lで消費される燃料量Fl(Pl)を最も少なくすることができ、ひいてはバッテリ43を除く複数の電源全体で消費される総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0279】
・バッテリ43を除く各電源kから上記配分(各電源kの最適な供給負荷配分)により電力Pkを供給するとともにバッテリ43への充電を行う際に、バッテリ43の充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費Ccが算出される。
【0280】
そして、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で充電要求電力Preqcが算出されるため、バッテリ43を除く各電源kの供給負荷配分を最適化した上で、これらの電源全体で消費される総消費燃料量fが基準よりも少ない状態でバッテリ43に充電することができる。さらに、充電電力費Ccが基準電力費Cprfよりも小さくなる範囲内で最大の電力が充電要求電力Preqcとされるため、バッテリ43に効率的に充電することができる。その結果、バッテリ43の充電及び放電を通じて、複数の電源全体で消費される燃料量を減少させることかできる。
【0281】
・バッテリ43を除く各電源kから上記配分により電力を供給する際に、バッテリ43を除く各電源kで消費される燃料量の合計を、総要求電力Preqaで割った最適電力費が算出される。そして、電力と最適電力費とに基づいて、バッテリ43を除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力P2を供給するために消費される燃料量F2(P2)を電力P2の関数として、電力P2の関数を電力P2で微分した微分値である電力増分燃料量が算出される。すなわち、バッテリ43を除く複数の電源全体で消費される燃料量F2(P2)を最も少なくした場合において、バッテリ43を除く複数の電源が1つの合計電源とみなされ、この合計電源について電力増分燃料量が算出される。
【0282】
そして、合計電源において電力P2と電力増分燃料量との関係である電力関係が算出されるとともに、バッテリ43において電力P1に対する電力増分燃料量が一定値とされる。ここで、合計電源では、電力増分燃料量が一定値とされた場合には、その電力増分燃料量に対応する電力P2は特定の値に固定されることとなる。これに対して、バッテリ43では、電力増分燃料量が一定値λ1sとされた状態において、供給する電力P1を変更することができる。
【0283】
また、充電要求電力Preqcが0である場合には、バッテリ43から電力P1を供給することができる。そして、バッテリ43から供給する電力P1と合計電源から供給する電力P2との合計が総要求電力Preqaに一致するように、バッテリ43から供給される電力P1が決定される。このため、バッテリ43及びその他の電源kから電力を供給する場合において、総要求電力Preqaを供給することができるとともに、総消費燃料量fを最も少なくすることができる。
【0284】
・車両に搭載されたエンジン10の運転状態に応じて、各電源iにおける上記電力関係が算出される。このため、その時々のエンジン10の運転状態に応じて、各電源iから電力Piを供給する配分を適切に決定することができる。
【0285】
上記実施形態に限定されず、例えば次のように実施することもできる。
【0286】
・バッテリ43を除く複数の電源(廃熱発電機25、発電機41)について、各電源の最適な供給負荷配分を決定し、これらの電源から最適な供給負荷配分により電力を供給する際に、これらの電源を1つの合計電源とみなした。そして、この合計電源とバッテリ43とで、最適な供給負荷配分を決定するようにしたが、廃熱発電機25、発電機41、及びバッテリ43で最適な供給負荷配分を決定してもよい。
【0287】
・複数の電源の数は、任意に設定することができる。
【0288】
・ヒートポンプシステム30に代えて、PTCヒータを採用してもよい。この場合には、PTCヒータに供給する電力と、PTCヒータから供給される熱量とが等しいと考えることができるため、PTCヒータについて熱費等を求める演算が容易となる。また、複数の熱源の数は、任意に設定することができる。
【0289】
・電力により駆動される電動熱源が複数の熱源に含まれていない場合には、熱供給制御と電力供給制御とを独立して実行してもよい。また、熱供給制御及び電力供給制御の一方のみを実行してもよい。
【0290】
・各熱源から供給する熱量と熱費との関係に基づいて、複数の熱源から供給される熱量の合計が要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する際に、総当り演算により決定することもできる。
【0291】
・点火時期の制御に代えて燃料噴射時期を制御することにより、ディーゼルエンジンに具体化することもできる。
【符号の説明】
【0292】
10…エンジン、23…ヒータコア、25…廃熱発電機、30…ヒートポンプシステム、37…室内熱交換器、41…発電機、43…バッテリ、51…エネルギ制御装置、52…エンジン制御装置、53…発電制御装置、54…空調制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給を制御する熱源制御装置であって、
前記複数の熱源から前記熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量を算出する要求熱量算出手段と、
各熱源について、供給する熱量と、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費との関係を算出する熱費算出手段と、
各熱源から供給する熱量と前記熱費との関係に基づいて、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の前記熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する熱量配分決定手段と、
を備えることを特徴とする車両の熱源制御装置。
【請求項2】
各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、前記熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量を算出する熱量増分燃料量算出手段を備え、
前記熱量配分決定手段は、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つ各熱源の前記熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項3】
各熱源において熱量と前記熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する熱量関係算出手段を備え、
前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更しつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その各熱源の熱量の合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする請求項2に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項4】
前記熱量関係算出手段は各熱源において供給可能な熱量の上限値を設定し、
前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて増加させつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その熱量が前記上限値に達した熱源においては供給する熱量を前記上限値とし、その他の熱源から供給する熱量と前記上限値との合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする請求項3に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項5】
前記熱量関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における前記熱量関係を算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項6】
前記複数の熱源は、前記車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して前記熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、
前記エンジンには、前記冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されており、
前記エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、前記電動ポンプによる前記冷却水の吐出量を制御するポンプ制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項7】
前記複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項8】
前記車両には複数の電源が搭載されており、
前記複数の電源から前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力を算出する要求電力算出手段と、
各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、
各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、
を備え、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項9】
各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つ各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項8に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項10】
各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更しつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項9に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項11】
前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて増加させつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項10に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項12】
前記複数の電源はバッテリを含み、
前記電力関係算出手段は、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて前記一定値としつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が前記要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする請求項10又は11に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項13】
前記車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、
前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力を算出する負荷要求電力算出手段と、
前記バッテリを除く電源から前記バッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する充電要求電力算出手段と、
各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、
各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、
を備え、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項14】
前記バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段と、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つ前記バッテリを除く各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項13に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項15】
各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて変更しつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項14に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項16】
前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて増加させつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項15に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項17】
前記バッテリを除く各電源から前記配分により前記負荷要求電力を供給するとともに前記バッテリへの充電を行う際に、前記バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費を算出する充電電力費算出手段を備え、
前記充電要求電力算出手段は、前記充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力を前記充電要求電力とすることを特徴とする請求項15又は16に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項18】
前記バッテリを除く各電源から前記配分により電力を供給する際に、前記バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、前記総要求電力で割った最適電力費を算出する最適電力費算出手段を備え、
前記電力増分燃料量算出手段は、電力と前記最適電力費とに基づいて、前記バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出し、
前記電力関係算出手段は、前記合計電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出するとともに、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、
前記電力配分決定手段は、前記充電要求電力が0である場合に、前記電力増分燃料量を前記一定値としつつ、前記合計電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力と前記合計電源から供給する電力との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする請求項15又は16に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項19】
前記電力関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における前記電力関係を算出することを特徴とする請求項10〜12、15〜18のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項1】
車両に搭載された複数の熱源から熱交換部への熱供給を制御する熱源制御装置であって、
前記複数の熱源から前記熱交換部へ供給されるように要求される要求熱量を算出する要求熱量算出手段と、
各熱源について、供給する熱量と、単位熱量を供給するために消費される燃料量である熱費との関係を算出する熱費算出手段と、
各熱源から供給する熱量と前記熱費との関係に基づいて、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つその熱を供給する熱源全体の前記熱費が最小となるように、各熱源から熱を供給する配分を決定する熱量配分決定手段と、
を備えることを特徴とする車両の熱源制御装置。
【請求項2】
各熱源において熱を供給するために消費される燃料量を熱量の関数として、前記熱量の関数を熱量で微分した微分値である熱量増分燃料量を算出する熱量増分燃料量算出手段を備え、
前記熱量配分決定手段は、前記複数の熱源から供給される熱量の合計が前記要求熱量に一致し、且つ各熱源の前記熱量増分燃料量が互いに一致するように、各熱源から熱を供給する配分を決定することを特徴とする請求項1に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項3】
各熱源において熱量と前記熱量増分燃料量との関係である熱量関係を算出する熱量関係算出手段を備え、
前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて変更しつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その各熱源の熱量の合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする請求項2に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項4】
前記熱量関係算出手段は各熱源において供給可能な熱量の上限値を設定し、
前記熱量配分決定手段は、前記熱量増分燃料量を各熱源で互いに一致させて増加させつつ、各熱源において前記熱量関係に基づき前記熱量増分燃料量に対応する熱量を算出し、その熱量が前記上限値に達した熱源においては供給する熱量を前記上限値とし、その他の熱源から供給する熱量と前記上限値との合計が前記要求熱量に一致するように、各熱源から熱量を供給する配分を決定することを特徴とする請求項3に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項5】
前記熱量関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各熱源における前記熱量関係を算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項6】
前記複数の熱源は、前記車両に搭載されたエンジンの冷却水を介して前記熱交換部へ熱を供給するエンジン熱源を含み、
前記エンジンには、前記冷却水を吐出する電動ポンプが搭載されており、
前記エンジン熱源から供給される熱量に基づいて、前記電動ポンプによる前記冷却水の吐出量を制御するポンプ制御手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項7】
前記複数の熱源は、電力を熱に変換してその熱を供給する電動熱源を含み、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、単位電力を供給するために消費される燃料量である電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項8】
前記車両には複数の電源が搭載されており、
前記複数の電源から前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される要求電力を算出する要求電力算出手段と、
各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、
各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、
を備え、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項9】
各電源において電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記複数の電源から供給される電力の合計が前記要求電力に一致し、且つ各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項8に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項10】
各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて変更しつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項9に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項11】
前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて増加させつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記要求電力に一致するように、各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項10に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項12】
前記複数の電源はバッテリを含み、
前記電力関係算出手段は、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、
前記電力配分決定手段は、前記電力増分燃料量を各電源で互いに一致させて前記一定値としつつ、各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力とその他の電源から供給する電力との合計が前記要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする請求項10又は11に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項13】
前記車両にはバッテリを含む複数の電源が搭載されており、
前記電動熱源を含む電気負荷へ供給されるように要求される負荷要求電力を算出する負荷要求電力算出手段と、
前記バッテリを除く電源から前記バッテリへ充電のために供給されるように要求される充電要求電力を算出する充電要求電力算出手段と、
各電源について供給する電力と前記電力費との関係を算出する電力費算出手段と、
各電源から供給する電力と前記電力費との関係に基づいて、前記バッテリを除く複数の電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つその電力を供給する電源全体の前記電力費が最小となるように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定する電力配分決定手段と、
を備え、
前記熱費算出手段は、前記電動熱源について、前記最小の電力費に基づいて前記熱費を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項14】
前記バッテリを除く各電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出する電力増分燃料量算出手段と、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く電源から供給される電力の合計が、前記負荷要求電力及び前記充電要求電力の合計である総要求電力に一致し、且つ前記バッテリを除く各電源の前記電力増分燃料量が互いに一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項13に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項15】
各電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出する電力関係算出手段を備え、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて変更しつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その各電源の電力の合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項14に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項16】
前記電力関係算出手段は各電源において供給可能な電力の上限値を設定し、
前記電力配分決定手段は、前記バッテリを除く各電源で前記電力増分燃料量を互いに一致させて増加させつつ、前記バッテリを除く各電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、その電力が前記上限値に達した電源においては供給する電力を前記上限値とし、その他の電源から供給する電力と前記上限値との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリを除く各電源から電力を供給する配分を決定することを特徴とする請求項15に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項17】
前記バッテリを除く各電源から前記配分により前記負荷要求電力を供給するとともに前記バッテリへの充電を行う際に、前記バッテリの充電量を単位充電量増加させるために消費される燃料量である充電電力費を算出する充電電力費算出手段を備え、
前記充電要求電力算出手段は、前記充電電力費が基準値よりも小さくなる範囲内で最大の電力を前記充電要求電力とすることを特徴とする請求項15又は16に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項18】
前記バッテリを除く各電源から前記配分により電力を供給する際に、前記バッテリを除く各電源で消費される燃料量の合計を、前記総要求電力で割った最適電力費を算出する最適電力費算出手段を備え、
前記電力増分燃料量算出手段は、電力と前記最適電力費とに基づいて、前記バッテリを除く電源を合計して1つの電源とみなした合計電源において、電力を供給するために消費される燃料量を電力の関数として、前記電力の関数を電力で微分した微分値である電力増分燃料量を算出し、
前記電力関係算出手段は、前記合計電源において電力と前記電力増分燃料量との関係である電力関係を算出するとともに、前記バッテリにおいて電力に対する前記電力増分燃料量を一定値とし、
前記電力配分決定手段は、前記充電要求電力が0である場合に、前記電力増分燃料量を前記一定値としつつ、前記合計電源において前記電力関係に基づき前記電力増分燃料量に対応する電力を算出し、前記バッテリから供給する電力と前記合計電源から供給する電力との合計が前記総要求電力に一致するように、前記バッテリから供給する電力を決定することを特徴とする請求項15又は16に記載の車両の熱源制御装置。
【請求項19】
前記電力関係算出手段は、前記車両に搭載されたエンジンの運転状態に応じて、各電源における前記電力関係を算出することを特徴とする請求項10〜12、15〜18のいずれか1項に記載の車両の熱源制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−201488(P2011−201488A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72922(P2010−72922)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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