車両の燃料タンク配設構造
【課題】フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保可能な燃料タンク配設構造を提供する。
【解決手段】燃料タンク３０を、該タンク３０の外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材３２，３３により車体に固定する
【解決手段】燃料タンク３０を、該タンク３０の外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材３２，３３により車体に固定する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両における燃料タンクの配設構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
自動車等の車両の車室のフロアパネルには、一般に、車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成されると共に、該フロアパネルにおけるトンネル部の左右には、前席シートや後席シートが配設され、例えば前後に２名ずつ合計４名が着座可能に構成される。
【０００３】
また、車両にはエンジン駆動用の燃料を貯蔵する燃料タンクが設けられるが、この燃料タンクの配設構造として、特許文献１や特許文献２には、車室のフロアパネルにおける後席シートが配設される部分の下方や、後席シート後方のリヤフロアの下方に、燃料タンクを配設した構造が開示されている。また、前記特許文献２には、後席シート後方のリヤフロアの上方に燃料タンクを配設した構造も開示されている。
【０００４】
【特許文献１】特開平６−２１１１６９号公報
【特許文献２】特開平５−６２７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、デザイン上、車体の全高を低くして、全体的にコンパクトにしたい場合があるが、このような車両においては、フロアパネルの高さが低くなると共に、リヤフロア上方の空間が少なくなり、その結果、十分な容量の燃料タンクを設けられない場合が生じ得る。そこで、例えば後席シートを廃止して前席シートのみとし、後席シートが配設されていた空間を利用して燃料タンクを配設することが考えられるが、この場合、乗車定員が例えば４名から２名に半減し、少人数しか乗車できなくなる。
【０００６】
そこで、本願出願人は、前述のようなコンパクトな車両において、２名より多い多人数乗車と、大型の燃料タンクの配設とを両立可能な車両の燃料タンク配設構造を、先の出願（特願２００８−２８５２０５号）において提案したところである。詳しくは、フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部を他方側のフロア部よりも低くし、かつ、前記他方側のフロア部の上方に前記後席シートを配設すると共に、前記一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設するようにしたものである。
【０００７】
ところで、フロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、該燃料タンクの容量を大きくするには、該タンクの上下寸法を可能な限り大きくすることが望ましく、また、燃料タンクの車体への固定構造としては、例えば燃料タンクの下部と第２フロア部とをブラケットを介して結合することが考えられる。しかし、このような構造の場合、燃料タンクの地上面やフロア面に対する重心が高くなり、その結果、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクが慣性により変位や振動を起こしやすい。また、この変位や振動により燃料タンクの下部に変形応力が発生し、該応力が大きな場合には燃料タンクが破損する虞がある。
【０００８】
そこで、本発明は、フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保可能な燃料タンク配設構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【００１０】
まず、本願の請求項１に記載の発明は、車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成された車両の燃料タンク配設構造であって、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に、燃料タンクが配設されていると共に、該燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されていることを特徴とする。
【００１１】
また、請求項２に記載の発明は、前記請求項１に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部が、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部よりも低くされていることを特徴とする。
【００１２】
また、請求項３に記載の発明は、前記請求項１または請求項２に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回していることを特徴とする。
【００１３】
また、請求項４に記載の発明は、前記請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材には、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部が設けられていることを特徴とする。
【００１４】
また、請求項５に記載の発明は、前記請求項４に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材が複数設けられている場合に、前記変位許容部は、各バンド部材に設けられていることを特徴とする。
【００１５】
また、請求項６に記載の発明は、前記請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されていることを特徴とする。
【００１６】
また、請求項７に記載の発明は、前記請求項１から請求項６のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部と、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部との少なくとも一方の下方に第２の燃料タンクが配設されていることを特徴とする。
【００１７】
また、請求項８に記載の発明は、前記請求項１から請求項７のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部の上方に配設された前記燃料タンクは水素を貯蔵するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１８】
次に、本発明の効果について説明する。
【００１９】
まず、請求項１に記載の発明では、車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成されているものにおいて、前記フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設したものである。これによれば、全高が低いコンパクトな車両であっても、車室後部におけるトンネル部の車幅方向一方側のスペースを利用して十分な容量の燃料タンクを配設することができる。また、トンネル部を挟んで他方側のフロア部については、例えば後席シートの配設等、他の用途に利用することができる。そして、この他方側のフロア部上に後席シートを配設した場合には、多人数乗車も実現することができる。
【００２０】
また、本発明においては、燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されているから、該燃料タンクの前記一方側フロア部に対する微小な変位が許容される。したがって、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクに局部的に大きな変形応力が生じるのが抑制され、該燃料タンクが破損するのが防止されることとなる。また、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクが大きく振動、変位するのが抑制されることとなる。このように本発明によれば、燃料タンクを前記一方側のフロア部の上方に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保して配設することができる。
【００２１】
また、請求項２に記載の発明によれば、前記一方側のフロア部を、前記フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の他方側のフロア部よりも低くしたから、前記一方側のフロア部の上方の車室空間の高さが前記他方側のフロア部の上方の車室空間の高さよりも大きくなる。したがって、前記一方側のフロア部の上方に配設される燃料タンクを、該一方側のフロア部を低くしない場合と比べ、大型化することができる。
【００２２】
また、請求項３に記載の発明によれば、前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回しているから、急減速、急加速時や他車両との衝突時における燃料タンクの振動、変位を良好に抑制することができる。
【００２３】
ところで、他車両との衝突時、特に高速走行時における衝突時には、燃料タンクに生じる慣性力（衝突時に生じる慣性力は、衝突により燃料タンクに間接的に入力される衝撃荷重ということができる）が大きいので、バンド部材の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生し、この応力により前記固定部の破損が生じる虞がある。
【００２４】
そこで、請求項４に記載の発明においては、前記バンド部材に、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部を設けたものであり、これによれば、衝突時に燃料タンクに生じた慣性が大きいときには、変位許容部が延び変形し、これによりバンド部材の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生するのが防止されることとなる。したがって、バンド部材の端部と車体との固定部の破損が防止されることとなる。
【００２５】
また、請求項５に記載の発明によれば、前記バンド部材が複数設けられている場合に、前記変位許容部は、各バンド部材に設けられているから、各バンド部材において、前記請求項４の効果が得られることとなる。
【００２６】
また、請求項６に記載の発明によれば、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されているから、多人数乗車を実現することができる。すなわち、多人数乗車と大型の燃料タンクの配設とを両立することができる。
【００２７】
ところで、燃料タンクをフロアパネルの上方に配設したことにより、前記一方側のフロア部や、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の下方に、高さは低いが、空間が生じることとなる。
【００２８】
そこで、請求項７に記載の発明においては、前記一方側のフロア部と前記他方側のフロア部との少なくとも一方の下方の空間を有効利用して、第２の燃料タンクを配設したものである。ここで、第２の燃料タンクは、前記一方側のフロア部上方の燃料タンクと同種の燃料を貯蔵するもの、あるいは他種の燃料を貯蔵するもののいずれとして利用してもよく、同種の燃料のときには、燃料の貯蔵量を増大させることができる。また、他種の燃料の場合には、２種類の燃料を利用可能なハイブリッド式エンジン等に対応することが可能となる。
【００２９】
また、請求項８に記載の発明によれば、燃料タンクに水素を貯蔵する場合に、請求項１〜７の効果が得られることとなる。そして、請求項７を受けている場合には、フロアパネル下方の燃料タンクに例えばガソリンや軽油等、他の種類の燃料を貯蔵すれば、水素と他種燃料とを利用可能なハイブリッド式エンジンに対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３０】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の燃料タンク配設構造について説明する。
【００３１】
まず、図１により、本実施の形態に係る車両１の車体構造について簡単に説明すると、本実施の形態に係る車両１の車体前部にはエンジンＥＧが配設されるエンジンルームＥが形成され、その後方にはダッシュパネル２を挟んで車室Ｒが設けられている。ダッシュパネル２の下端部には、車室Ｒの床面を構成するフロアパネル３の前端部が接合されている。
【００３２】
フロアパネル３の後部には、前部のフロントフロア部３ａよりも段上げされることによりキックアップフロア部３ｂが形成され、その後方には、該キックアップフロア部３ｂよりもさらに段上げされることにより荷物等を載置可能なリヤフロア部３ｃが形成されている。
【００３３】
また、図２、図３にも示すように、フロアパネル３の車幅方向中央には、上方に膨出し、車体前後方向でダッシュパネル２とリヤフロア部３ｃの前端との間において車体前後方向に延びるトンネル部３ｄが形成されている。トンネル部３ｄの上面には、車体前後方向に延びるトンネルレインフォースメント４が接合されている。ここで、トンネル部３ｄの内部には、図１に示すように、エンジンＥＧの後部に連結された変速機ＴＲ、該変速機ＴＲから後方に延び、後輪ＷＲに差動装置ＤＦを介して動力を伝達するプロペラシャフトＰＳが配設されていると共に、図３に示すように、変速機ＴＲのケースと差動装置ＤＦのケースとを連結するパワープラントフレームＰＦ、エンジンＥＧの排気管ＥＰ（マフラー等を含む）が配設されている。
【００３４】
また、図２、図３に示すように、フロアパネル３におけるリヤフロア部３ｃよりも前方部分の左右両側端部に沿って車体前後方向に延びるサイドシル５，５が接合され（サイドシル５，５は、サイドシルインナやサイドシルアウタにより図３に示すように閉断面体として構成されているが、図２においてはサイドシルインナ５ａのみを図示している）、該サイドシル５，５の後部側に連続するようにリヤサイドフレーム６，６が後方に延びている。
【００３５】
また、図１、図２に示すように、サイドシル５とトンネル部３ｄとの間、及び左右のリヤサイドフレーム６，６間には、車体前側から順に、第１クロスメンバ７，７、第２クロスメンバ８，８、第３クロスメンバ９、第４クロスメンバ１０が設けられている。第２クロスメンバ８，８は前記キックアップフロア部３ｂの角部に配設され、第３クロスメンバ９は、前記リヤフロア部３ｃの角部に配設されている。
【００３６】
また、フロアパネル３のフロントフロア部３ａの下面には、サイドシル５とトンネル部８との間の車幅方向略中間位置において、車体前後方向に延びるフロアフレーム１１が接合されている。なお、フロアフレーム１１の前端には、エンジンルームＥ内の左右両サイドを車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム１２が連続するように設けられている。
【００３７】
そして、フロアパネル３のフロントフロア部３ａの上方には、前席シート２１，２１が配設されている。なお、本実施の形態に係る車両１においては、トンネル部３ｄの左側の前席シート２１（２１Ｌ）は運転席用、トンネル部３ｄの右側の前席シート２１（２１Ｒ）は助手席用とされている。
【００３８】
ここで、本実施の形態に係る車両１においては、デザイン上、車体の全高を低くし、かつ全体的にコンパクトにするために、フロアパネル２の高さ位置が相対的に低くされると共に、車体後部がスラント形状とされて、リヤフロア部３ｃ上方の車室スペースが少なくなっている。そして、その結果、解決課題で説明したような課題が存在している。
【００３９】
そこで、本実施の形態においては、図３に示すように、キックアップフロア部３ｂの上面の高さをトンネル部３ｄの左右で異ならせている。より詳しく説明すると、図４、図５にも示すように、助手席用の前席シート２１Ｒ後方のキックアップフロア部３ｂ（特許請求の範囲の「フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部」に相当する。以後、第１キックアップフロア部３ｂ１という）は、前後方向で第２クロスメンバ８とリヤフロア部３ｃとの間、車幅方向でトンネル部３ｄとサイドシル５との間において下方へ凹まされており、これにより、運転席用の前席シート２１Ｌ後方のキックアップフロア部３ｂ（特許請求の範囲の「フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部」に相当する。以後、第２キックアップフロア部３ｂ２という）よりも低くされている。したがって、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方空間は、第２キックアップフロア部３ｂ２の上方空間よりも大きくなっている。
【００４０】
そして、第２キックアップフロア部３ｂ２の上方には、後席シート２２が配設され、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方には、第１燃料タンク３０が配設されている。
【００４１】
後席シート２２は、図３、図４に示すように、第２キックアップフロア部３ｂ２の上面に取り付けられたシートクッション２２Ａと、シートバック２２Ｂとで構成されている。シートバック２２Ｂは、リクライニングヒンジピン２２Ｂ１とリクライニングヒンジブラケット２２Ｂ２等からなるリクライニング機構を備え、リクライニングヒンジピン２２Ｂ１を支点として、図４の矢印α方向（前後方向）にリクライニング可能に、かつほぼ水平な状態まで前倒可能に構成されている。そして、シートバック２２Ｂを前倒状態とさせたときには、シートバック２２Ｂの背面と後方のリヤフロア部３ｃとで拡大荷物載置領域が形成されるようになっている。つまり、補助的な使用が想定される後席シート２２のスペースを、荷物載置領域として有効に利用することができるようになっている。
【００４２】
ここで、本車両のエンジンＥＧは、水素及びガソリンの両方を燃料として利用可能なハイブリッドエンジンであり、前記第１燃料タンク３０は、水素を貯蔵するためのものであり、ガソリンを貯蔵するための第２燃料タンク６０は、キックアップフロア部３ｂ下方の空間を利用して配設されている。以下、これらのタンク３０，６０の構造等について図３〜図５により順次説明する。
【００４３】
まず、キックアップフロア部３ｂ上方の第１燃料タンク３０について説明すると、図２、図３、図５に示すように、略球形をしており、例えば１００Ｌ程度の容量を確保可能なようになっている。該燃料タンク３０の外面には、該タンク３０の内部と外部との間で燃料の流通を可能とさせるバルブ機構３１が突出させて設けられている。このバルブ機構３１は、タンク３０内部への燃料供給のためのものであり、燃料供給のためにバルブ機構３１に外部ホースを接続すると、接続を検出して電気制御弁が開き、該タンク３０の内部と外部との間で燃料（液体及び気体の両方を含む）の流通を可能とさせるように構成されている。
【００４４】
また、バルブ機構３１は、前記第１燃料タンク３０の外面における第１キックアップフロア部３ｂ１に近い方の車体側部１５に対向しない部分に設けられている。詳しくは、第１燃料タンク３０の下部で、かつサイドシル５及びリヤサイドフレーム６とほぼ同じ高さ位置に、特にサイドシル５に対してはその上下高さ範囲内に収まるように配設されている。
【００４５】
第１燃料タンク３０は、第１キックアップフロア部３ｂ１の上面に取り付けられた支持部材３７上に載置され、第１、第２バンド部材３２，３２，３３，３３により車体に固定されている。詳しくは、第１バンド部材３２，３２は第１燃料タンク３０を車体前後方向に巻回し、第２バンド部材３３，３３は、第１燃料タンク３０を車幅方向に巻回している。なお、タンク３０の表面には、これらのバンド部材３２，３２，３３，３３が嵌り、巻回方向と直行する方向にずれるのを防止する凹溝３０ａ…３０ａが形成されている。
【００４６】
第１バンド部材３２，３２は、前端部が第１キックアップフロア部３ｂ１の前端部に、後端部がリヤフロア部３ｃの前端部に、それぞれ締結部材３４，３４により固定され、第２バンド部材３３，３３は、車幅方向内端部がトンネルレインフォースメント４に、車幅方向外端部がサイドシル５に、それぞれ締結部材３５，３５により固定されている。
【００４７】
また、第１バンド部材３２，３２は、金属材により形成されていると共に、冂状に屈曲する変位許容部３２ａ，３２ａが設けられており、前後の端部間に張力が作用すると、前記変位許容部３２ａ，３２ａの屈曲が少なくなって、延び変形可能なように構成されている。すなわち、第１燃料タンク３０への衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンク３０の所定量の変位が許容されるようになっている。なお、第２バンド部材３３，３３にもそれぞれ、同様の変位許容部３３ａ，３３ａが設けられている。ここで、所定量は、燃料タンク３０の固定が解除されない程度の量である。
【００４８】
また、車両１には、図２、図３、図５に示すように、車室Ｒ空間を、前記第１燃料タンク３０が配設される空間Ｒｔとそれ以外の空間Ｒｐとに区画する隔壁５０が設けられている。この隔壁５０は、第１燃料タンク３０を、側方、前後、及び上方から覆うように、側壁部５０ａと、前壁部５０ｂと、後壁部５０ｃと、上壁部５０ｄとを有し、側壁部５０ａの下端部がトンネルレインフォースメント４に、前壁部５０ｂの下端部が第１キックアップフロア部３ｂ１の前壁部 に、後壁部５０ｃの下端部がリヤフロア部３ｃの前端部近傍に、上壁部５０ｃの車幅方向外端部がフロントドア開口１ａ後方の車体側部１５の内面（インナパネル１６）に、それぞれ締結具５１…５１により固定されている。なお、上壁部５０ｄの高さは、運転席から、図示しない車体後面部の開口や車体側部１５の開口１ｂを介して後方視界を確保可能なように設定されている。
【００４９】
ここで、第１キックアップフロア部３ｂ１は、前述のように、前後方向で第２クロスメンバ８とリヤフロア部３ｃとの間、車幅方向でトンネル部３ｄとサイドシル５との間において下方へ凹まされた構造とされており、前記燃料タンク３０は、下部がこの凹部３ｂ１ｕ内に嵌るように配設されている。すなわち、燃料タンク３０の車幅方向外方近傍には車体側部１５（サイドシル５を含む）が、車幅方向内方近傍にはトンネル部３ｄ及びトンネルレインフォースメント４の側壁部３ｄａ，４ａ（なお、これらの側壁部３ｄａ，４ａをまとめて、以下、適宜「トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ」という。なお、側壁部３ｄｓの下部は凹部３ｂ１ｕの車幅方向内方側の側壁部でもある）が、前方近傍には凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆが、後方近傍には第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（その下部は凹部３ｂ１ｕの後壁部でもある）が存在している。その場合に、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓは、下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜しており、側突時に燃料タンク３０を上方に移動させるガイド部Ｇｓを構成する。また、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒは、後側ほど高くなるように傾斜しており、前後突時に燃料タンク３０を上方に移動させるガイド部Ｇｆｒを構成する。
【００５０】
次に、キックアップフロア部３ｂ下方の第２燃料タンク６０について説明すると、該第２燃料タンク６０は、第１、第２キックアップフロア部３ｂ１，３ｂ２の下方に設けられ、これらのフロア部３ｂ１，３ｂ２間に渡って車幅方向に延びる形状をしている。詳しくは、図６にも示すように、第１キックアップフロア部３ｂ１の下方に配置される第１タンク部６０ａと、第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に配置され、高さ方向で第１タンク部６０ａよりも高く、かつ容量が大きい第２タンク部６０ｂと、これらのタンク部６０ａ，６０ｂの内側上部間を接続する略門形状の連結タンク部６０ｃとを有し、非対称鞍型とされている。ここで、第１、第２タンク６０ａ，６０ｂの後部には、図４〜図６に示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒの背面に沿って立上がる隆起部６０ｄ，６０ｅが一体形成されており、これらの隆起部６０ｄ，６０ｅによって、第２燃料タンク６０のタンク容量の拡大が図られている。
【００５１】
そして、第２燃料タンク６０は、図３〜図５に示すように、第１タンク部６０ａ及び第２タンク部６０ｂにおいて、バンド部材６１，６２によりフロアパネル３に支持されている。バンド部材６１，６２は、前端部がフロントフロア部３ａの後端部に、後端部が第３クロスメンバ９に、それぞれ締結部材６３，６３により固定されている。ここで、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂ部との間には、前述のように排気管ＥＰや、プロペラシャフトＰＳや、パワープラントフレームＰＦ等が配設されているので、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを別部材として構成することも可能であるが、本実施の形態においては、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを連結タンク部６０ｃにより連結して一体化したので、これらを２本のバンド部材６１，６２だけで車体に取り付けることができる。すなわち、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを別部材として構成した場合、安定して取り付けるためには、各タンクごとに２本ずつのバンド部材が必要となるが、本実施の形態によれば、合計で２本のバンド部材６１，６２だけでよいので、車体への支持構造等の簡略化を図ることができると共に、組付け性の向上を図ることができる。
【００５２】
次に第１の実施の形態に係る車両の燃料タンク配設構造の作用、効果を説明する。
【００５３】
まず、本実施の形態においては、車室Ｒの前部においてフロアパネル３上に前席シート２１，２１が配設されていると共に、該フロアパネル３に車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部３ｄが形成されているものにおいて、前記フロアパネル３における前席シート２１，２１後方のトンネル部３ｄの車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に燃料タンク３０を配設したものである。これによれば、全高が低いコンパクトな車両であっても、車室後部におけるトンネル部３ｄの車幅方向一方側のスペースを利用して十分な容量の燃料タンク３０を配設することができる。また、トンネル部３ｄを挟んで車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２の上方には、後席シート３０を配設したものである。これによれば、多人数乗車を実現することができる。すなわち、本実施の形態によれば、多人数乗車と大型の燃料タンクの配設とを両立することができる。
【００５４】
ここで、このような構造を採用した背景には、コンパクトな車体の車両（例えばスポーツタイプの車両）では、実際上１名または２名程度で乗車する機会が多く、２名分の前席シート２１，２１に加え、１名分の後席シート２２を予備として設けておけば実用上ほとんど問題がないという思想が存在している。
【００５５】
また、本実施の形態においては、車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１を、車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２よりも低くしたから、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方の車室空間の高さが第２キックアップフロア部３ｂ２の上方の車室空間の高さよりも大きくなる。したがって、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に配設される燃料タンク３０を、該第１キックアップフロア部３ｂ１を低くしない場合と比べ、大型化することができる。
【００５６】
ところで、第１燃料タンク３０をフロアパネル２の上方に配設したことにより、第１キックアップフロア部３ｂ１及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に、高さは低いが、空間が生じることとなる。
【００５７】
そこで、第１キックアップフロア部３ｂ１及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方の空間を有効利用して、これらのフロア部３ｂ１，３ｂ２間に渡って車幅方向に延びる第２燃料タンク６０を配設するようにしたものである。これによれば、一方のキックアップフロア部の下方の空間のみを利用する場合よりも大容量の燃料を貯蔵することができる。また、本実施の形態においては、第２燃料タンク６０には、第１燃料タンク３０とは他種の燃料を貯蔵するようにしており、２種類の燃料を利用可能なハイブリッド式エンジンに対応することができる。なお、燃料がガソリンや軽油である場合には、第１燃料タンク、第２燃料タンクの両方を利用することも可能であり、この場合、燃料の貯蔵量を増大させることができる。
【００５８】
また、車室Ｒの空間を、前記第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に配設された第１燃料タンク３０が配設される空間Ｒｔとそれ以外の空間Ｒｐとに区画する隔壁５０が設けられているから、フロアパネル２の上方に第１燃料タンク３０を配設した場合でも、前記それ以外の空間Ｒｐの安全性を良好に確保することができる。
【００５９】
また、バルブ機構３１は、第１燃料タンク３０の外面における第１キックアップフロア部３ｂ１に近い方の車体側部１５に対向しない部分、詳しくは第１燃料タンク３０の下部にフロアパネル２に対向して設けられているから、該車体側部１５に他車両の側突等があって車体側部１５が車室側へ変位した場合でも、フロアパネル２自体の車幅方向剛性により、第１燃料タンク３０におけるバルブ機構３１が設けられた下部側が保護され、バルブ機構３１への当接が回避される。したがって、バルブ機構３１の破損等が良好に抑制されることとなる。
【００６０】
また、フロアパネル２の前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の側部に車体前後方向に延びる閉断面体のサイドシル５（フレーム）が設けられているから、該フロアパネル２の車体前後方向に対する剛性が向上する。そして、前記バルブ機構３１は、サイドシル５とほぼ同じ高さ位置に配設されているから、車体の第１キックアップフロア部３ｂ１側に側面衝突等があった場合に、第１燃料タンク３０におけるバルブ機構３１が設けられた下部側がより良好に保護されて、バルブ機構３１の破損等が一層良好に抑制されることとなる。
【００６１】
また、燃料タンク３０は、該タンク３０の外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材３２，３３により車体に固定されているから、該燃料タンク３０の第１キックアップフロア部３ｂ１に対する微小な変位が許容される。したがって、急減速、急加速時や他車両との衝突（衝突というときは、側突と前後突との両方を含む。以下同じ）時に、燃料タンク３０に局部的に大きな変形応力が生じるのが抑制され、該燃料タンク３０が破損するのが防止されることとなる。また、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンク３０が大きく振動、変位するのが抑制されることとなる。このように本実施の形態によれば、燃料タンク３０を、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保して配設することができる。
【００６２】
また、バンド部材３２，３３は複数設けられ、燃料タンク３０を車体前後方向及び車幅方向に巻回しているから、急減速、急加速時における燃料タンク３０の振動、変位を良好に抑制することができる。
【００６３】
ところで、他車両との衝突時、特に高速走行時における衝突時には、燃料タンク３０に生じる慣性力（衝突時に生じる慣性力は、衝突により燃料タンク３０に間接的に入力される衝撃荷重ということができる）が大きいので、バンド部材３２，３３の端部と車体（トンネルレインフォースメント５，サイドシル５、第１キックアップフロア部３ｂ１の前壁部３ｂ１ｋ、リヤフロア部３ｃ）との締結部材３４，３５による固定部に大きな引っ張り応力が発生し、この応力により前記固定部の破損が生じる虞がある。
【００６４】
しかし、本実施の形態によれば、バンド部材３２，３３に、燃料タンク３０への衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンク３０の所定量の変位を許容する変位許容部３２ａ，３３ａを設けたものであり、これによれば、衝突時に燃料タンク３０に生じた慣性が大きいときには、変位許容部３２ａ，３３ａが延び変形し、これによりバンド部材３２，３３の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生するのが防止されることとなる。したがって、バンド部材３２，３３の端部と車体との固定部の破損が防止されることとなる。なお、このように燃料タンク３０が変位した場合でも、バンド部材３２，３２，３３，３３は凹溝３０ａ…３０ａに嵌っているので、脱落せず、燃料タンク３０が確実に保持されることとなる。
【００６５】
また、側突や前後突により車体から燃料タンク３０に直接衝撃荷重が入力されたときにも、変位許容部３２ａ，３３ａが延び変形し、これにより燃料タンク３０が後述するように前記ガイド部Ｇｓ，Ｇｆｒに沿って上方に移動可能となる。
【００６６】
また、変位許容部３２ａ，３３ａは、各バンド部材３２，３３に設けられているから、各バンド部材３２，３３において、バンド部材３２，３３の端部と車体との固定部の破損の防止効果が得られると共に、側突及び前後突のいずれの場合でも燃料タンク３０が上方に移動可能となる。
【００６７】
また、本実施の形態においては、他車両との衝突時において以下のような作用、効果が得られる。すなわち、図７に示すように、例えば車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１側の車体側部１５（以下、適宜、「第１フロア部側車体側部１５」という）に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、仮想線で示すように、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が第１フロア部側車体側部１５によりトンネル部３ｄ側に押され、該タンク３０の下部が、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該側壁部３ｄｓは下部側ほど車幅方向中央から外方に離れるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２側の車体側部１５（以下、適宜「第２フロア部側車体側部１５」という）に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると（図示せず）、該トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ（ガイド部Ｇｓ）が燃料タンク３０の下部に当接し、該燃料タンク３０が前記第１フロア部側車体側部１５側に押されることとなる。その場合に、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓは下部側ほど車幅方向中央から外方に離れるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、左右のいずれの車体側部１５，１５に側突があった場合でも、燃料タンク３０の下部が第１フロア部側車体側部１５とトンネル部３ｄとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に側突安全性を確保して配設することができる。
【００６８】
また、図８に示すように、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って仮想線で示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｆｒ）も前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が前記後壁部３ｂ１ｒにより前方に押されることとなる。その場合に、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒは、後側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し（図示せず）、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆも後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が前記前壁部３ｂ１ｆにより後方に押され、該タンク３０の下部が、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該後壁部３ｂ１ｒは後側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００６９】
なお、第１の実施の形態においては、側突用のガイド部Ｇｓは、第１キックアップフロア部３ｂ１側のトンネル部３ｄの側壁部３ｄｓを下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜させることにより構成し、前後突用のガイド部Ｇｆｒは、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒを後側ほど高くなるように傾斜させることにより構成したが、これらのガイド部Ｇｓ，Ｇｆｒの他の構成例を、第２〜第６の実施の形態において説明する。なお、符号は、第１の実施の形態と同一のものを用いる。
【００７０】
すなわち、第２の実施の形態においては、図９に示すように、側突用のガイド部Ｇｓは、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）に接合された第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓを、下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜させることにより構成されている。なお、サイドシル５は、図９からわかるように、インナパネル５ａの上端が前記一方側フロア部３ｂ１よりも高くされている。なお、それ以外の構成は、第１の実施の形態と同様とされている。
【００７１】
第２の実施の形態によれば、例えば前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の第１フロア部側車体側部１５に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、仮想線で示すように、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）が燃料タンク３０の下部に当接し、該燃料タンク３０がトンネル部３ｄ側に押されることとなる。その場合に、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓが下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車幅方向他方側の他方側車体側部１５に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると（図示せず）、該トンネル部３ｄにより燃料タンク３０が第１フロア部側車体側部１５側に押され、該タンク３０の下部が、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該側部３ｂ１ｓは下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本発明によれば、左右のいずれの車体側部に側突があった場合でも、燃料タンク３０の下部が第１フロア部側車体側部１５とトンネル部３ｄとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に側突安全性を確保して配設することができる。
【００７２】
次に、第３の実施の形態について説明する。第３の実施の形態においては、図１０に示すように、前後突用のガイド部Ｇｆｒは、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆを、前側ほど高くなるように傾斜させることにより構成されている。
【００７３】
第３の実施の形態によれば、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って仮想線で示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒも前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が該後壁部３ｂ１ｒにより前方に押され、該タンク３０の下部が、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）に当接することとなる。その場合に、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆは前側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し（図示せず）、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）も後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が該前壁部３ｂ１ｆにより後方に押されることとなる。その場合に、この前壁部３ｂ１ｆは、前側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００７４】
次に、第４の実施の形態について説明する。第４の実施の形態においては、図１１に示すように、側突用のガイド部Ｇｓとして、第１、第２の実施形態で説明したガイド部Ｇｓの両方が設けられている。すなわち、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓが、下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜すると共に、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓが、下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜している。
【００７５】
第４の実施の形態によれば、例えば前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の第１フロア部側車体側部１５に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）が下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、この側部３ｂ１ｓにより、第２の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、第２キックアップフロア部３ｂ２側の第２フロア部側車体側部１５に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓにより、第１の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。
【００７６】
そして、特に、本実施の形態によれば、燃料タンク３０の下部の両側方にガイド部Ｇｓが設けられているから、仮に一方のガイド部Ｇｓによる上方への移動量が少なかった場合でも、他方のガイド部Ｇｓに当接するとさらに上方へ移動させられることとなる。すなわち、確実に燃料タンク３０が上方に移動することとなる。
【００７７】
次に、第５の実施の形態について説明する。第５の実施の形態においては、図１２に示すように、前後方向用のガイド部Ｇｆｒとして、第１、第３の実施形態で説明したガイド部Ｇｆｒの両方が設けられている。すなわち、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆが、前側ほど高くなるように傾斜し、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒが後側ほど高くなるように傾斜している。
【００７８】
第５の実施の形態によれば、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｆｒ）も前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒが後側ほど高くなるように傾斜しているから、第１の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）も後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、この前壁部３ｂ１ｆが前側ほど高くなるように傾斜しているから、第３の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。このように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００７９】
そして、特に、本実施の形態によれば、燃料タンク３０の下部の前後両近傍にガイド部Ｇｆｒが設けられているから、仮に一方のガイド部Ｇｆｒによる上方への移動量が少なかった場合でも、他方のガイド部Ｇｆｒに当接するとさらに上方へ移動させられることとなる。すなわち、確実に燃料タンク３０が上方に移動することとなる。
【００８０】
次に、第６の実施の形態について説明する。第６の実施の形態は、図１３に示すように、前記第４の実施の形態における側突用のガイド部Ｇｓのうち車幅方向外方のものを、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）における第１キックアップフロア部３ｂ１よりも上方に突出する部分５ａｓを下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜させることにより構成したものである。
【００８１】
第６の実施の形態によれば、側突があった場合、燃料タンク３０が、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）で構成されたガイド部Ｇｓにより、第４の実施の形態同様に、燃料タンク３０が上方に移動することとなる。なお、この構造は、第１の実施の形態においても適用可能である。
【００８２】
次に、第７の実施の形態について説明する。第７の実施の形態においては、図１４に示すように、フロアパネル１０３における前席シート１２１後方のトンネル部１０３ｄの車幅方向一方側の第１フロア部１０３ｂ１にキックアップ部は設けられていないが、上方に突出してクロスメンバ１０５が設けられている。また、一方側のフロア部１０３ｂ１の後方には、段上げされることによりリヤフロア部１０３ｃが設けられている。燃料タンク１３０は、これらのクロスメンバ１０５の後壁１０５ｆと、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒとの間に下部が嵌るように配設されている。そして、本実施の形態においては、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒを、後側ほど高くなるように傾斜させることにより、前突用のガイド部Ｇｆｒが構成されている。
【００８３】
第７の実施の形態によれば、前突や後突により車体前方または車体後方から衝撃荷重Ｆｆ，Ｆｒが入力されたときに、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒにより、第１の実施の形態同様に、燃料タンク１３０が上方に移動させられることとなる。すなわち、本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク１３０の下部が、クロスメンバ１０５の後壁１０５ｆと第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク１３０を第１フロア部１０３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００８４】
なお、前記各実施の形態においては、フロアパネル３（１０３）上方の第１燃料タンク３０（１３０）は、水素を貯蔵するものであるが、ガソリンや軽油等の燃料を貯蔵するものとして利用することも可能である。
【００８５】
また、前記各実施の形態においては、エンジンはハイブリッドエンジンであるが、本発明に係る燃料タンクの配設構造は、水素専用、ガソリン専用のエンジンにも適用可能である。そして、この場合においても、第１キックアップフロア部３ｂ１、及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に、同種の燃料を貯蔵する第２のタンクを設けてもよく、こうすることにより、燃料の貯蔵量を増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【００８６】
本発明は、フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保可能な燃料タンク配設構造を提供することができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００８７】
【図１】本発明の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造が適用された車両の側面図である。
【図２】同車両の平面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ断面図である。
【図４】図２のＢ−Ｂ断面図である。
【図５】図２のＣ−Ｃ断面図である。
【図６】第２燃料タンクの単体斜視図である。
【図７】車幅方向から車体に衝撃荷重が入力されたときの作用を示す図３相当の図である。
【図８】車体後方から車体に衝撃荷重が入力されたときの作用を示す図３相当の図である。
【図９】本発明の第２の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１０】本発明の第３の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図５相当の断面図である。
【図１１】本発明の第４の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１２】本発明の第５の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１３】本発明の第６の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図５相当の断面図である。
【図１４】本発明の第７の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図４相当の断面図である。
【符号の説明】
【００８８】
１ 車両
３ フロアパネル
３ｂ１ 第１キックアップフロア部（車幅方向一方側のフロア部）
３ｂ１ｆ 凹部の前壁部
３ｂ１ｒ 第１キックアップフロア部の後壁部
３ｂ１ｓ フロアパネルの側部
３ｂ２ 第２キックアップフロア部（車幅方向他方側のフロア部）
３ｄ トンネル部
３ｄｓ トンネル部の側壁部
５ サイドシル
５ａ サイドシルインナパネル（フロアパネルの側端部に接合される側壁部）
５ａｓ ガイド部（前記フレームの側壁部における前記一方側フロア部よりも上方に突出する部分）
１５ 車体側部
２１ 前席シート
２２ 後席シート
３１ バルブ機構
３２，３３ バンド部材
３２ａ，３３ａ 変位許容部
３０ 第１燃料タンク（燃料タンク）
５０ 隔壁
６０ 第２燃料タンク（第２の燃料タンク）
Ｇｓ 側突用のガイド部
Ｇｆｒ 前後突用のガイド部
Ｒ 車室
Ｒｔ 燃料タンクが配設される空間
Ｒｐ それ以外の空間
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両における燃料タンクの配設構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【０００２】
自動車等の車両の車室のフロアパネルには、一般に、車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成されると共に、該フロアパネルにおけるトンネル部の左右には、前席シートや後席シートが配設され、例えば前後に２名ずつ合計４名が着座可能に構成される。
【０００３】
また、車両にはエンジン駆動用の燃料を貯蔵する燃料タンクが設けられるが、この燃料タンクの配設構造として、特許文献１や特許文献２には、車室のフロアパネルにおける後席シートが配設される部分の下方や、後席シート後方のリヤフロアの下方に、燃料タンクを配設した構造が開示されている。また、前記特許文献２には、後席シート後方のリヤフロアの上方に燃料タンクを配設した構造も開示されている。
【０００４】
【特許文献１】特開平６−２１１１６９号公報
【特許文献２】特開平５−６２７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
ところで、デザイン上、車体の全高を低くして、全体的にコンパクトにしたい場合があるが、このような車両においては、フロアパネルの高さが低くなると共に、リヤフロア上方の空間が少なくなり、その結果、十分な容量の燃料タンクを設けられない場合が生じ得る。そこで、例えば後席シートを廃止して前席シートのみとし、後席シートが配設されていた空間を利用して燃料タンクを配設することが考えられるが、この場合、乗車定員が例えば４名から２名に半減し、少人数しか乗車できなくなる。
【０００６】
そこで、本願出願人は、前述のようなコンパクトな車両において、２名より多い多人数乗車と、大型の燃料タンクの配設とを両立可能な車両の燃料タンク配設構造を、先の出願（特願２００８−２８５２０５号）において提案したところである。詳しくは、フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部を他方側のフロア部よりも低くし、かつ、前記他方側のフロア部の上方に前記後席シートを配設すると共に、前記一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設するようにしたものである。
【０００７】
ところで、フロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、該燃料タンクの容量を大きくするには、該タンクの上下寸法を可能な限り大きくすることが望ましく、また、燃料タンクの車体への固定構造としては、例えば燃料タンクの下部と第２フロア部とをブラケットを介して結合することが考えられる。しかし、このような構造の場合、燃料タンクの地上面やフロア面に対する重心が高くなり、その結果、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクが慣性により変位や振動を起こしやすい。また、この変位や振動により燃料タンクの下部に変形応力が発生し、該応力が大きな場合には燃料タンクが破損する虞がある。
【０００８】
そこで、本発明は、フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保可能な燃料タンク配設構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【００１０】
まず、本願の請求項１に記載の発明は、車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成された車両の燃料タンク配設構造であって、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に、燃料タンクが配設されていると共に、該燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されていることを特徴とする。
【００１１】
また、請求項２に記載の発明は、前記請求項１に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部が、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部よりも低くされていることを特徴とする。
【００１２】
また、請求項３に記載の発明は、前記請求項１または請求項２に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回していることを特徴とする。
【００１３】
また、請求項４に記載の発明は、前記請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材には、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部が設けられていることを特徴とする。
【００１４】
また、請求項５に記載の発明は、前記請求項４に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記バンド部材が複数設けられている場合に、前記変位許容部は、各バンド部材に設けられていることを特徴とする。
【００１５】
また、請求項６に記載の発明は、前記請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されていることを特徴とする。
【００１６】
また、請求項７に記載の発明は、前記請求項１から請求項６のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部と、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部との少なくとも一方の下方に第２の燃料タンクが配設されていることを特徴とする。
【００１７】
また、請求項８に記載の発明は、前記請求項１から請求項７のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、前記一方側のフロア部の上方に配設された前記燃料タンクは水素を貯蔵するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１８】
次に、本発明の効果について説明する。
【００１９】
まず、請求項１に記載の発明では、車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成されているものにおいて、前記フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設したものである。これによれば、全高が低いコンパクトな車両であっても、車室後部におけるトンネル部の車幅方向一方側のスペースを利用して十分な容量の燃料タンクを配設することができる。また、トンネル部を挟んで他方側のフロア部については、例えば後席シートの配設等、他の用途に利用することができる。そして、この他方側のフロア部上に後席シートを配設した場合には、多人数乗車も実現することができる。
【００２０】
また、本発明においては、燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されているから、該燃料タンクの前記一方側フロア部に対する微小な変位が許容される。したがって、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクに局部的に大きな変形応力が生じるのが抑制され、該燃料タンクが破損するのが防止されることとなる。また、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンクが大きく振動、変位するのが抑制されることとなる。このように本発明によれば、燃料タンクを前記一方側のフロア部の上方に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保して配設することができる。
【００２１】
また、請求項２に記載の発明によれば、前記一方側のフロア部を、前記フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の他方側のフロア部よりも低くしたから、前記一方側のフロア部の上方の車室空間の高さが前記他方側のフロア部の上方の車室空間の高さよりも大きくなる。したがって、前記一方側のフロア部の上方に配設される燃料タンクを、該一方側のフロア部を低くしない場合と比べ、大型化することができる。
【００２２】
また、請求項３に記載の発明によれば、前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回しているから、急減速、急加速時や他車両との衝突時における燃料タンクの振動、変位を良好に抑制することができる。
【００２３】
ところで、他車両との衝突時、特に高速走行時における衝突時には、燃料タンクに生じる慣性力（衝突時に生じる慣性力は、衝突により燃料タンクに間接的に入力される衝撃荷重ということができる）が大きいので、バンド部材の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生し、この応力により前記固定部の破損が生じる虞がある。
【００２４】
そこで、請求項４に記載の発明においては、前記バンド部材に、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部を設けたものであり、これによれば、衝突時に燃料タンクに生じた慣性が大きいときには、変位許容部が延び変形し、これによりバンド部材の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生するのが防止されることとなる。したがって、バンド部材の端部と車体との固定部の破損が防止されることとなる。
【００２５】
また、請求項５に記載の発明によれば、前記バンド部材が複数設けられている場合に、前記変位許容部は、各バンド部材に設けられているから、各バンド部材において、前記請求項４の効果が得られることとなる。
【００２６】
また、請求項６に記載の発明によれば、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されているから、多人数乗車を実現することができる。すなわち、多人数乗車と大型の燃料タンクの配設とを両立することができる。
【００２７】
ところで、燃料タンクをフロアパネルの上方に配設したことにより、前記一方側のフロア部や、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の下方に、高さは低いが、空間が生じることとなる。
【００２８】
そこで、請求項７に記載の発明においては、前記一方側のフロア部と前記他方側のフロア部との少なくとも一方の下方の空間を有効利用して、第２の燃料タンクを配設したものである。ここで、第２の燃料タンクは、前記一方側のフロア部上方の燃料タンクと同種の燃料を貯蔵するもの、あるいは他種の燃料を貯蔵するもののいずれとして利用してもよく、同種の燃料のときには、燃料の貯蔵量を増大させることができる。また、他種の燃料の場合には、２種類の燃料を利用可能なハイブリッド式エンジン等に対応することが可能となる。
【００２９】
また、請求項８に記載の発明によれば、燃料タンクに水素を貯蔵する場合に、請求項１〜７の効果が得られることとなる。そして、請求項７を受けている場合には、フロアパネル下方の燃料タンクに例えばガソリンや軽油等、他の種類の燃料を貯蔵すれば、水素と他種燃料とを利用可能なハイブリッド式エンジンに対応することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３０】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の燃料タンク配設構造について説明する。
【００３１】
まず、図１により、本実施の形態に係る車両１の車体構造について簡単に説明すると、本実施の形態に係る車両１の車体前部にはエンジンＥＧが配設されるエンジンルームＥが形成され、その後方にはダッシュパネル２を挟んで車室Ｒが設けられている。ダッシュパネル２の下端部には、車室Ｒの床面を構成するフロアパネル３の前端部が接合されている。
【００３２】
フロアパネル３の後部には、前部のフロントフロア部３ａよりも段上げされることによりキックアップフロア部３ｂが形成され、その後方には、該キックアップフロア部３ｂよりもさらに段上げされることにより荷物等を載置可能なリヤフロア部３ｃが形成されている。
【００３３】
また、図２、図３にも示すように、フロアパネル３の車幅方向中央には、上方に膨出し、車体前後方向でダッシュパネル２とリヤフロア部３ｃの前端との間において車体前後方向に延びるトンネル部３ｄが形成されている。トンネル部３ｄの上面には、車体前後方向に延びるトンネルレインフォースメント４が接合されている。ここで、トンネル部３ｄの内部には、図１に示すように、エンジンＥＧの後部に連結された変速機ＴＲ、該変速機ＴＲから後方に延び、後輪ＷＲに差動装置ＤＦを介して動力を伝達するプロペラシャフトＰＳが配設されていると共に、図３に示すように、変速機ＴＲのケースと差動装置ＤＦのケースとを連結するパワープラントフレームＰＦ、エンジンＥＧの排気管ＥＰ（マフラー等を含む）が配設されている。
【００３４】
また、図２、図３に示すように、フロアパネル３におけるリヤフロア部３ｃよりも前方部分の左右両側端部に沿って車体前後方向に延びるサイドシル５，５が接合され（サイドシル５，５は、サイドシルインナやサイドシルアウタにより図３に示すように閉断面体として構成されているが、図２においてはサイドシルインナ５ａのみを図示している）、該サイドシル５，５の後部側に連続するようにリヤサイドフレーム６，６が後方に延びている。
【００３５】
また、図１、図２に示すように、サイドシル５とトンネル部３ｄとの間、及び左右のリヤサイドフレーム６，６間には、車体前側から順に、第１クロスメンバ７，７、第２クロスメンバ８，８、第３クロスメンバ９、第４クロスメンバ１０が設けられている。第２クロスメンバ８，８は前記キックアップフロア部３ｂの角部に配設され、第３クロスメンバ９は、前記リヤフロア部３ｃの角部に配設されている。
【００３６】
また、フロアパネル３のフロントフロア部３ａの下面には、サイドシル５とトンネル部８との間の車幅方向略中間位置において、車体前後方向に延びるフロアフレーム１１が接合されている。なお、フロアフレーム１１の前端には、エンジンルームＥ内の左右両サイドを車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム１２が連続するように設けられている。
【００３７】
そして、フロアパネル３のフロントフロア部３ａの上方には、前席シート２１，２１が配設されている。なお、本実施の形態に係る車両１においては、トンネル部３ｄの左側の前席シート２１（２１Ｌ）は運転席用、トンネル部３ｄの右側の前席シート２１（２１Ｒ）は助手席用とされている。
【００３８】
ここで、本実施の形態に係る車両１においては、デザイン上、車体の全高を低くし、かつ全体的にコンパクトにするために、フロアパネル２の高さ位置が相対的に低くされると共に、車体後部がスラント形状とされて、リヤフロア部３ｃ上方の車室スペースが少なくなっている。そして、その結果、解決課題で説明したような課題が存在している。
【００３９】
そこで、本実施の形態においては、図３に示すように、キックアップフロア部３ｂの上面の高さをトンネル部３ｄの左右で異ならせている。より詳しく説明すると、図４、図５にも示すように、助手席用の前席シート２１Ｒ後方のキックアップフロア部３ｂ（特許請求の範囲の「フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部」に相当する。以後、第１キックアップフロア部３ｂ１という）は、前後方向で第２クロスメンバ８とリヤフロア部３ｃとの間、車幅方向でトンネル部３ｄとサイドシル５との間において下方へ凹まされており、これにより、運転席用の前席シート２１Ｌ後方のキックアップフロア部３ｂ（特許請求の範囲の「フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部」に相当する。以後、第２キックアップフロア部３ｂ２という）よりも低くされている。したがって、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方空間は、第２キックアップフロア部３ｂ２の上方空間よりも大きくなっている。
【００４０】
そして、第２キックアップフロア部３ｂ２の上方には、後席シート２２が配設され、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方には、第１燃料タンク３０が配設されている。
【００４１】
後席シート２２は、図３、図４に示すように、第２キックアップフロア部３ｂ２の上面に取り付けられたシートクッション２２Ａと、シートバック２２Ｂとで構成されている。シートバック２２Ｂは、リクライニングヒンジピン２２Ｂ１とリクライニングヒンジブラケット２２Ｂ２等からなるリクライニング機構を備え、リクライニングヒンジピン２２Ｂ１を支点として、図４の矢印α方向（前後方向）にリクライニング可能に、かつほぼ水平な状態まで前倒可能に構成されている。そして、シートバック２２Ｂを前倒状態とさせたときには、シートバック２２Ｂの背面と後方のリヤフロア部３ｃとで拡大荷物載置領域が形成されるようになっている。つまり、補助的な使用が想定される後席シート２２のスペースを、荷物載置領域として有効に利用することができるようになっている。
【００４２】
ここで、本車両のエンジンＥＧは、水素及びガソリンの両方を燃料として利用可能なハイブリッドエンジンであり、前記第１燃料タンク３０は、水素を貯蔵するためのものであり、ガソリンを貯蔵するための第２燃料タンク６０は、キックアップフロア部３ｂ下方の空間を利用して配設されている。以下、これらのタンク３０，６０の構造等について図３〜図５により順次説明する。
【００４３】
まず、キックアップフロア部３ｂ上方の第１燃料タンク３０について説明すると、図２、図３、図５に示すように、略球形をしており、例えば１００Ｌ程度の容量を確保可能なようになっている。該燃料タンク３０の外面には、該タンク３０の内部と外部との間で燃料の流通を可能とさせるバルブ機構３１が突出させて設けられている。このバルブ機構３１は、タンク３０内部への燃料供給のためのものであり、燃料供給のためにバルブ機構３１に外部ホースを接続すると、接続を検出して電気制御弁が開き、該タンク３０の内部と外部との間で燃料（液体及び気体の両方を含む）の流通を可能とさせるように構成されている。
【００４４】
また、バルブ機構３１は、前記第１燃料タンク３０の外面における第１キックアップフロア部３ｂ１に近い方の車体側部１５に対向しない部分に設けられている。詳しくは、第１燃料タンク３０の下部で、かつサイドシル５及びリヤサイドフレーム６とほぼ同じ高さ位置に、特にサイドシル５に対してはその上下高さ範囲内に収まるように配設されている。
【００４５】
第１燃料タンク３０は、第１キックアップフロア部３ｂ１の上面に取り付けられた支持部材３７上に載置され、第１、第２バンド部材３２，３２，３３，３３により車体に固定されている。詳しくは、第１バンド部材３２，３２は第１燃料タンク３０を車体前後方向に巻回し、第２バンド部材３３，３３は、第１燃料タンク３０を車幅方向に巻回している。なお、タンク３０の表面には、これらのバンド部材３２，３２，３３，３３が嵌り、巻回方向と直行する方向にずれるのを防止する凹溝３０ａ…３０ａが形成されている。
【００４６】
第１バンド部材３２，３２は、前端部が第１キックアップフロア部３ｂ１の前端部に、後端部がリヤフロア部３ｃの前端部に、それぞれ締結部材３４，３４により固定され、第２バンド部材３３，３３は、車幅方向内端部がトンネルレインフォースメント４に、車幅方向外端部がサイドシル５に、それぞれ締結部材３５，３５により固定されている。
【００４７】
また、第１バンド部材３２，３２は、金属材により形成されていると共に、冂状に屈曲する変位許容部３２ａ，３２ａが設けられており、前後の端部間に張力が作用すると、前記変位許容部３２ａ，３２ａの屈曲が少なくなって、延び変形可能なように構成されている。すなわち、第１燃料タンク３０への衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンク３０の所定量の変位が許容されるようになっている。なお、第２バンド部材３３，３３にもそれぞれ、同様の変位許容部３３ａ，３３ａが設けられている。ここで、所定量は、燃料タンク３０の固定が解除されない程度の量である。
【００４８】
また、車両１には、図２、図３、図５に示すように、車室Ｒ空間を、前記第１燃料タンク３０が配設される空間Ｒｔとそれ以外の空間Ｒｐとに区画する隔壁５０が設けられている。この隔壁５０は、第１燃料タンク３０を、側方、前後、及び上方から覆うように、側壁部５０ａと、前壁部５０ｂと、後壁部５０ｃと、上壁部５０ｄとを有し、側壁部５０ａの下端部がトンネルレインフォースメント４に、前壁部５０ｂの下端部が第１キックアップフロア部３ｂ１の前壁部 に、後壁部５０ｃの下端部がリヤフロア部３ｃの前端部近傍に、上壁部５０ｃの車幅方向外端部がフロントドア開口１ａ後方の車体側部１５の内面（インナパネル１６）に、それぞれ締結具５１…５１により固定されている。なお、上壁部５０ｄの高さは、運転席から、図示しない車体後面部の開口や車体側部１５の開口１ｂを介して後方視界を確保可能なように設定されている。
【００４９】
ここで、第１キックアップフロア部３ｂ１は、前述のように、前後方向で第２クロスメンバ８とリヤフロア部３ｃとの間、車幅方向でトンネル部３ｄとサイドシル５との間において下方へ凹まされた構造とされており、前記燃料タンク３０は、下部がこの凹部３ｂ１ｕ内に嵌るように配設されている。すなわち、燃料タンク３０の車幅方向外方近傍には車体側部１５（サイドシル５を含む）が、車幅方向内方近傍にはトンネル部３ｄ及びトンネルレインフォースメント４の側壁部３ｄａ，４ａ（なお、これらの側壁部３ｄａ，４ａをまとめて、以下、適宜「トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ」という。なお、側壁部３ｄｓの下部は凹部３ｂ１ｕの車幅方向内方側の側壁部でもある）が、前方近傍には凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆが、後方近傍には第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（その下部は凹部３ｂ１ｕの後壁部でもある）が存在している。その場合に、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓは、下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜しており、側突時に燃料タンク３０を上方に移動させるガイド部Ｇｓを構成する。また、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒは、後側ほど高くなるように傾斜しており、前後突時に燃料タンク３０を上方に移動させるガイド部Ｇｆｒを構成する。
【００５０】
次に、キックアップフロア部３ｂ下方の第２燃料タンク６０について説明すると、該第２燃料タンク６０は、第１、第２キックアップフロア部３ｂ１，３ｂ２の下方に設けられ、これらのフロア部３ｂ１，３ｂ２間に渡って車幅方向に延びる形状をしている。詳しくは、図６にも示すように、第１キックアップフロア部３ｂ１の下方に配置される第１タンク部６０ａと、第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に配置され、高さ方向で第１タンク部６０ａよりも高く、かつ容量が大きい第２タンク部６０ｂと、これらのタンク部６０ａ，６０ｂの内側上部間を接続する略門形状の連結タンク部６０ｃとを有し、非対称鞍型とされている。ここで、第１、第２タンク６０ａ，６０ｂの後部には、図４〜図６に示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒの背面に沿って立上がる隆起部６０ｄ，６０ｅが一体形成されており、これらの隆起部６０ｄ，６０ｅによって、第２燃料タンク６０のタンク容量の拡大が図られている。
【００５１】
そして、第２燃料タンク６０は、図３〜図５に示すように、第１タンク部６０ａ及び第２タンク部６０ｂにおいて、バンド部材６１，６２によりフロアパネル３に支持されている。バンド部材６１，６２は、前端部がフロントフロア部３ａの後端部に、後端部が第３クロスメンバ９に、それぞれ締結部材６３，６３により固定されている。ここで、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂ部との間には、前述のように排気管ＥＰや、プロペラシャフトＰＳや、パワープラントフレームＰＦ等が配設されているので、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを別部材として構成することも可能であるが、本実施の形態においては、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを連結タンク部６０ｃにより連結して一体化したので、これらを２本のバンド部材６１，６２だけで車体に取り付けることができる。すなわち、第１タンク部６０ａと第２タンク部６０ｂとを別部材として構成した場合、安定して取り付けるためには、各タンクごとに２本ずつのバンド部材が必要となるが、本実施の形態によれば、合計で２本のバンド部材６１，６２だけでよいので、車体への支持構造等の簡略化を図ることができると共に、組付け性の向上を図ることができる。
【００５２】
次に第１の実施の形態に係る車両の燃料タンク配設構造の作用、効果を説明する。
【００５３】
まず、本実施の形態においては、車室Ｒの前部においてフロアパネル３上に前席シート２１，２１が配設されていると共に、該フロアパネル３に車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部３ｄが形成されているものにおいて、前記フロアパネル３における前席シート２１，２１後方のトンネル部３ｄの車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に燃料タンク３０を配設したものである。これによれば、全高が低いコンパクトな車両であっても、車室後部におけるトンネル部３ｄの車幅方向一方側のスペースを利用して十分な容量の燃料タンク３０を配設することができる。また、トンネル部３ｄを挟んで車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２の上方には、後席シート３０を配設したものである。これによれば、多人数乗車を実現することができる。すなわち、本実施の形態によれば、多人数乗車と大型の燃料タンクの配設とを両立することができる。
【００５４】
ここで、このような構造を採用した背景には、コンパクトな車体の車両（例えばスポーツタイプの車両）では、実際上１名または２名程度で乗車する機会が多く、２名分の前席シート２１，２１に加え、１名分の後席シート２２を予備として設けておけば実用上ほとんど問題がないという思想が存在している。
【００５５】
また、本実施の形態においては、車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１を、車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２よりも低くしたから、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方の車室空間の高さが第２キックアップフロア部３ｂ２の上方の車室空間の高さよりも大きくなる。したがって、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に配設される燃料タンク３０を、該第１キックアップフロア部３ｂ１を低くしない場合と比べ、大型化することができる。
【００５６】
ところで、第１燃料タンク３０をフロアパネル２の上方に配設したことにより、第１キックアップフロア部３ｂ１及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に、高さは低いが、空間が生じることとなる。
【００５７】
そこで、第１キックアップフロア部３ｂ１及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方の空間を有効利用して、これらのフロア部３ｂ１，３ｂ２間に渡って車幅方向に延びる第２燃料タンク６０を配設するようにしたものである。これによれば、一方のキックアップフロア部の下方の空間のみを利用する場合よりも大容量の燃料を貯蔵することができる。また、本実施の形態においては、第２燃料タンク６０には、第１燃料タンク３０とは他種の燃料を貯蔵するようにしており、２種類の燃料を利用可能なハイブリッド式エンジンに対応することができる。なお、燃料がガソリンや軽油である場合には、第１燃料タンク、第２燃料タンクの両方を利用することも可能であり、この場合、燃料の貯蔵量を増大させることができる。
【００５８】
また、車室Ｒの空間を、前記第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に配設された第１燃料タンク３０が配設される空間Ｒｔとそれ以外の空間Ｒｐとに区画する隔壁５０が設けられているから、フロアパネル２の上方に第１燃料タンク３０を配設した場合でも、前記それ以外の空間Ｒｐの安全性を良好に確保することができる。
【００５９】
また、バルブ機構３１は、第１燃料タンク３０の外面における第１キックアップフロア部３ｂ１に近い方の車体側部１５に対向しない部分、詳しくは第１燃料タンク３０の下部にフロアパネル２に対向して設けられているから、該車体側部１５に他車両の側突等があって車体側部１５が車室側へ変位した場合でも、フロアパネル２自体の車幅方向剛性により、第１燃料タンク３０におけるバルブ機構３１が設けられた下部側が保護され、バルブ機構３１への当接が回避される。したがって、バルブ機構３１の破損等が良好に抑制されることとなる。
【００６０】
また、フロアパネル２の前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の側部に車体前後方向に延びる閉断面体のサイドシル５（フレーム）が設けられているから、該フロアパネル２の車体前後方向に対する剛性が向上する。そして、前記バルブ機構３１は、サイドシル５とほぼ同じ高さ位置に配設されているから、車体の第１キックアップフロア部３ｂ１側に側面衝突等があった場合に、第１燃料タンク３０におけるバルブ機構３１が設けられた下部側がより良好に保護されて、バルブ機構３１の破損等が一層良好に抑制されることとなる。
【００６１】
また、燃料タンク３０は、該タンク３０の外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材３２，３３により車体に固定されているから、該燃料タンク３０の第１キックアップフロア部３ｂ１に対する微小な変位が許容される。したがって、急減速、急加速時や他車両との衝突（衝突というときは、側突と前後突との両方を含む。以下同じ）時に、燃料タンク３０に局部的に大きな変形応力が生じるのが抑制され、該燃料タンク３０が破損するのが防止されることとなる。また、急減速、急加速時や他車両との衝突時に、燃料タンク３０が大きく振動、変位するのが抑制されることとなる。このように本実施の形態によれば、燃料タンク３０を、第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保して配設することができる。
【００６２】
また、バンド部材３２，３３は複数設けられ、燃料タンク３０を車体前後方向及び車幅方向に巻回しているから、急減速、急加速時における燃料タンク３０の振動、変位を良好に抑制することができる。
【００６３】
ところで、他車両との衝突時、特に高速走行時における衝突時には、燃料タンク３０に生じる慣性力（衝突時に生じる慣性力は、衝突により燃料タンク３０に間接的に入力される衝撃荷重ということができる）が大きいので、バンド部材３２，３３の端部と車体（トンネルレインフォースメント５，サイドシル５、第１キックアップフロア部３ｂ１の前壁部３ｂ１ｋ、リヤフロア部３ｃ）との締結部材３４，３５による固定部に大きな引っ張り応力が発生し、この応力により前記固定部の破損が生じる虞がある。
【００６４】
しかし、本実施の形態によれば、バンド部材３２，３３に、燃料タンク３０への衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンク３０の所定量の変位を許容する変位許容部３２ａ，３３ａを設けたものであり、これによれば、衝突時に燃料タンク３０に生じた慣性が大きいときには、変位許容部３２ａ，３３ａが延び変形し、これによりバンド部材３２，３３の端部と車体との固定部に大きな引っ張り応力が発生するのが防止されることとなる。したがって、バンド部材３２，３３の端部と車体との固定部の破損が防止されることとなる。なお、このように燃料タンク３０が変位した場合でも、バンド部材３２，３２，３３，３３は凹溝３０ａ…３０ａに嵌っているので、脱落せず、燃料タンク３０が確実に保持されることとなる。
【００６５】
また、側突や前後突により車体から燃料タンク３０に直接衝撃荷重が入力されたときにも、変位許容部３２ａ，３３ａが延び変形し、これにより燃料タンク３０が後述するように前記ガイド部Ｇｓ，Ｇｆｒに沿って上方に移動可能となる。
【００６６】
また、変位許容部３２ａ，３３ａは、各バンド部材３２，３３に設けられているから、各バンド部材３２，３３において、バンド部材３２，３３の端部と車体との固定部の破損の防止効果が得られると共に、側突及び前後突のいずれの場合でも燃料タンク３０が上方に移動可能となる。
【００６７】
また、本実施の形態においては、他車両との衝突時において以下のような作用、効果が得られる。すなわち、図７に示すように、例えば車幅方向一方側の第１キックアップフロア部３ｂ１側の車体側部１５（以下、適宜、「第１フロア部側車体側部１５」という）に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、仮想線で示すように、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が第１フロア部側車体側部１５によりトンネル部３ｄ側に押され、該タンク３０の下部が、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該側壁部３ｄｓは下部側ほど車幅方向中央から外方に離れるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車幅方向他方側の第２キックアップフロア部３ｂ２側の車体側部１５（以下、適宜「第２フロア部側車体側部１５」という）に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると（図示せず）、該トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓ（ガイド部Ｇｓ）が燃料タンク３０の下部に当接し、該燃料タンク３０が前記第１フロア部側車体側部１５側に押されることとなる。その場合に、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓは下部側ほど車幅方向中央から外方に離れるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、左右のいずれの車体側部１５，１５に側突があった場合でも、燃料タンク３０の下部が第１フロア部側車体側部１５とトンネル部３ｄとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に側突安全性を確保して配設することができる。
【００６８】
また、図８に示すように、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って仮想線で示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｆｒ）も前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が前記後壁部３ｂ１ｒにより前方に押されることとなる。その場合に、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒは、後側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し（図示せず）、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆも後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が前記前壁部３ｂ１ｆにより後方に押され、該タンク３０の下部が、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該後壁部３ｂ１ｒは後側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００６９】
なお、第１の実施の形態においては、側突用のガイド部Ｇｓは、第１キックアップフロア部３ｂ１側のトンネル部３ｄの側壁部３ｄｓを下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜させることにより構成し、前後突用のガイド部Ｇｆｒは、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒを後側ほど高くなるように傾斜させることにより構成したが、これらのガイド部Ｇｓ，Ｇｆｒの他の構成例を、第２〜第６の実施の形態において説明する。なお、符号は、第１の実施の形態と同一のものを用いる。
【００７０】
すなわち、第２の実施の形態においては、図９に示すように、側突用のガイド部Ｇｓは、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）に接合された第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓを、下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜させることにより構成されている。なお、サイドシル５は、図９からわかるように、インナパネル５ａの上端が前記一方側フロア部３ｂ１よりも高くされている。なお、それ以外の構成は、第１の実施の形態と同様とされている。
【００７１】
第２の実施の形態によれば、例えば前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の第１フロア部側車体側部１５に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、仮想線で示すように、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）が燃料タンク３０の下部に当接し、該燃料タンク３０がトンネル部３ｄ側に押されることとなる。その場合に、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓが下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車幅方向他方側の他方側車体側部１５に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると（図示せず）、該トンネル部３ｄにより燃料タンク３０が第１フロア部側車体側部１５側に押され、該タンク３０の下部が、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）に当接することとなる。その場合に、該側部３ｂ１ｓは下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本発明によれば、左右のいずれの車体側部に側突があった場合でも、燃料タンク３０の下部が第１フロア部側車体側部１５とトンネル部３ｄとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に側突安全性を確保して配設することができる。
【００７２】
次に、第３の実施の形態について説明する。第３の実施の形態においては、図１０に示すように、前後突用のガイド部Ｇｆｒは、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆを、前側ほど高くなるように傾斜させることにより構成されている。
【００７３】
第３の実施の形態によれば、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って仮想線で示すように第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒも前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が該後壁部３ｂ１ｒにより前方に押され、該タンク３０の下部が、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）に当接することとなる。その場合に、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆは前側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し（図示せず）、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）も後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、該燃料タンク３０が該前壁部３ｂ１ｆにより後方に押されることとなる。その場合に、この前壁部３ｂ１ｆは、前側ほど高くなるように傾斜しているから、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。以上のように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００７４】
次に、第４の実施の形態について説明する。第４の実施の形態においては、図１１に示すように、側突用のガイド部Ｇｓとして、第１、第２の実施形態で説明したガイド部Ｇｓの両方が設けられている。すなわち、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓが、下部側ほど車幅方向中央から離れるように傾斜すると共に、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓが、下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜している。
【００７５】
第４の実施の形態によれば、例えば前記第１キックアップフロア部３ｂ１側の第１フロア部側車体側部１５に他車両等の側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ１が入力されて、該第１フロア部側車体側部１５がトンネル部３ｄ側に変位すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の側部３ｂ１ｓ（ガイド部Ｇｓ）が下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜しているから、この側部３ｂ１ｓにより、第２の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、第２キックアップフロア部３ｂ２側の第２フロア部側車体側部１５に側突により側方から衝撃荷重Ｆｓ２が入力されて、該第２フロア部側車体側部１５及びトンネル部３ｄが前記第１フロア部側車体側部１５側に変位すると、トンネル部３ｄの側壁部３ｄｓにより、第１の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。
【００７６】
そして、特に、本実施の形態によれば、燃料タンク３０の下部の両側方にガイド部Ｇｓが設けられているから、仮に一方のガイド部Ｇｓによる上方への移動量が少なかった場合でも、他方のガイド部Ｇｓに当接するとさらに上方へ移動させられることとなる。すなわち、確実に燃料タンク３０が上方に移動することとなる。
【００７７】
次に、第５の実施の形態について説明する。第５の実施の形態においては、図１２に示すように、前後方向用のガイド部Ｇｆｒとして、第１、第３の実施形態で説明したガイド部Ｇｆｒの両方が設けられている。すなわち、凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆが、前側ほど高くなるように傾斜し、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒが後側ほど高くなるように傾斜している。
【００７８】
第５の実施の形態によれば、例えば車体後部に他車両等の後突により車体後方から衝撃荷重Ｆｒが入力されて車体後部が前方に変位し、これに伴って第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒ（ガイド部Ｇｆｒ）も前方に変位して燃料タンク３０に当接すると、第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒが後側ほど高くなるように傾斜しているから、第１の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。一方、車体前部に前突により車体前方から衝撃荷重Ｆｆが入力されて車体前部が後方に変位し、これに伴って凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆ（ガイド部Ｇｆｒ）も後方に変位して燃料タンク３０に当接すると、この前壁部３ｂ１ｆが前側ほど高くなるように傾斜しているから、第３の実施の形態同様、燃料タンク３０が上方へ押し上げられる、つまり上方に移動させられることとなる。このように本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク３０の下部が凹部３ｂ１ｕの前壁部３ｂ１ｆと第１キックアップフロア部３ｂ１の後壁部３ｂ１ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク３０を第１キックアップフロア部３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００７９】
そして、特に、本実施の形態によれば、燃料タンク３０の下部の前後両近傍にガイド部Ｇｆｒが設けられているから、仮に一方のガイド部Ｇｆｒによる上方への移動量が少なかった場合でも、他方のガイド部Ｇｆｒに当接するとさらに上方へ移動させられることとなる。すなわち、確実に燃料タンク３０が上方に移動することとなる。
【００８０】
次に、第６の実施の形態について説明する。第６の実施の形態は、図１３に示すように、前記第４の実施の形態における側突用のガイド部Ｇｓのうち車幅方向外方のものを、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）における第１キックアップフロア部３ｂ１よりも上方に突出する部分５ａｓを下部側ほど車幅方向中央に近くなるように傾斜させることにより構成したものである。
【００８１】
第６の実施の形態によれば、側突があった場合、燃料タンク３０が、サイドシル５のインナパネル５ａ（側壁部）で構成されたガイド部Ｇｓにより、第４の実施の形態同様に、燃料タンク３０が上方に移動することとなる。なお、この構造は、第１の実施の形態においても適用可能である。
【００８２】
次に、第７の実施の形態について説明する。第７の実施の形態においては、図１４に示すように、フロアパネル１０３における前席シート１２１後方のトンネル部１０３ｄの車幅方向一方側の第１フロア部１０３ｂ１にキックアップ部は設けられていないが、上方に突出してクロスメンバ１０５が設けられている。また、一方側のフロア部１０３ｂ１の後方には、段上げされることによりリヤフロア部１０３ｃが設けられている。燃料タンク１３０は、これらのクロスメンバ１０５の後壁１０５ｆと、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒとの間に下部が嵌るように配設されている。そして、本実施の形態においては、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒを、後側ほど高くなるように傾斜させることにより、前突用のガイド部Ｇｆｒが構成されている。
【００８３】
第７の実施の形態によれば、前突や後突により車体前方または車体後方から衝撃荷重Ｆｆ，Ｆｒが入力されたときに、第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒにより、第１の実施の形態同様に、燃料タンク１３０が上方に移動させられることとなる。すなわち、本実施の形態によれば、車体に前後のいずれの方向から衝撃衝突が入力された場合でも、燃料タンク１３０の下部が、クロスメンバ１０５の後壁１０５ｆと第１フロア部１０３ｂ１後端の縦壁１０３ｒとで挟まれるのが防止される。すなわち、燃料タンク１３０を第１フロア部１０３ｂ１の上方に前後突安全性を確保して配設することができる。
【００８４】
なお、前記各実施の形態においては、フロアパネル３（１０３）上方の第１燃料タンク３０（１３０）は、水素を貯蔵するものであるが、ガソリンや軽油等の燃料を貯蔵するものとして利用することも可能である。
【００８５】
また、前記各実施の形態においては、エンジンはハイブリッドエンジンであるが、本発明に係る燃料タンクの配設構造は、水素専用、ガソリン専用のエンジンにも適用可能である。そして、この場合においても、第１キックアップフロア部３ｂ１、及び第２キックアップフロア部３ｂ２の下方に、同種の燃料を貯蔵する第２のタンクを設けてもよく、こうすることにより、燃料の貯蔵量を増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【００８６】
本発明は、フロアパネルにおける前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に燃料タンクを配設する場合に、急減速、急加速時や他車両との衝突時における安全性を確保可能な燃料タンク配設構造を提供することができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【００８７】
【図１】本発明の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造が適用された車両の側面図である。
【図２】同車両の平面図である。
【図３】図２のＡ−Ａ断面図である。
【図４】図２のＢ−Ｂ断面図である。
【図５】図２のＣ−Ｃ断面図である。
【図６】第２燃料タンクの単体斜視図である。
【図７】車幅方向から車体に衝撃荷重が入力されたときの作用を示す図３相当の図である。
【図８】車体後方から車体に衝撃荷重が入力されたときの作用を示す図３相当の図である。
【図９】本発明の第２の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１０】本発明の第３の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図５相当の断面図である。
【図１１】本発明の第４の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１２】本発明の第５の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図３相当の断面図である。
【図１３】本発明の第６の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図５相当の断面図である。
【図１４】本発明の第７の実施形態に係る車両の燃料タンク配設構造についての図４相当の断面図である。
【符号の説明】
【００８８】
１ 車両
３ フロアパネル
３ｂ１ 第１キックアップフロア部（車幅方向一方側のフロア部）
３ｂ１ｆ 凹部の前壁部
３ｂ１ｒ 第１キックアップフロア部の後壁部
３ｂ１ｓ フロアパネルの側部
３ｂ２ 第２キックアップフロア部（車幅方向他方側のフロア部）
３ｄ トンネル部
３ｄｓ トンネル部の側壁部
５ サイドシル
５ａ サイドシルインナパネル（フロアパネルの側端部に接合される側壁部）
５ａｓ ガイド部（前記フレームの側壁部における前記一方側フロア部よりも上方に突出する部分）
１５ 車体側部
２１ 前席シート
２２ 後席シート
３１ バルブ機構
３２，３３ バンド部材
３２ａ，３３ａ 変位許容部
３０ 第１燃料タンク（燃料タンク）
５０ 隔壁
６０ 第２燃料タンク（第２の燃料タンク）
Ｇｓ 側突用のガイド部
Ｇｆｒ 前後突用のガイド部
Ｒ 車室
Ｒｔ 燃料タンクが配設される空間
Ｒｐ それ以外の空間
【特許請求の範囲】
【請求項１】
車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成された車両の燃料タンク配設構造であって、
前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に、燃料タンクが配設されていると共に、
該燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項２】
前記請求項１に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部が、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部よりも低くされていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項３】
前記請求項１または請求項２に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回していることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項４】
前記請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材には、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部が設けられていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項５】
前記請求項４に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材が複数設けられている場合に、
前記変位許容部は、各バンド部材に設けられていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項６】
前記請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項７】
前記請求項１から請求項６のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部と、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部との少なくとも一方の下方に第２の燃料タンクが配設されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項８】
前記請求項１から請求項７のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部の上方に配設された前記燃料タンクは水素を貯蔵するものであることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項１】
車室の前部においてフロアパネル上に前席シートが配設されていると共に、該フロアパネルに車幅方向中央において上方へ膨出し、車体前後方向に延びるトンネル部が形成された車両の燃料タンク配設構造であって、
前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向一方側のフロア部の上方に、燃料タンクが配設されていると共に、
該燃料タンクは、該タンクの外面に巻回され、端部が車体に固定されたバンド部材により車体に固定されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項２】
前記請求項１に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部が、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部よりも低くされていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項３】
前記請求項１または請求項２に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材は、複数設けられ、前記燃料タンクを車体前後方向及び車幅方向に巻回していることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項４】
前記請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材には、前記燃料タンクへの衝撃荷重の入力時に延び変形し、該燃料タンクの所定量の変位を許容する変位許容部が設けられていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項５】
前記請求項４に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記バンド部材が複数設けられている場合に、
前記変位許容部は、各バンド部材に設けられていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項６】
前記請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部の上方に後席シートが配設されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項７】
前記請求項１から請求項６のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部と、前記フロアパネルにおける前記前席シート後方のトンネル部の車幅方向他方側のフロア部との少なくとも一方の下方に第２の燃料タンクが配設されていることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【請求項８】
前記請求項１から請求項７のいずれか１項に記載の車両の燃料タンク配設構造において、
前記一方側のフロア部の上方に配設された前記燃料タンクは水素を貯蔵するものであることを特徴とする車両の燃料タンク配設構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【公開番号】特開２０１０−１１１２８０（Ｐ２０１０−１１１２８０Ａ）
【公開日】平成２２年５月２０日（２０１０．５．２０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２８５５９５（Ｐ２００８−２８５５９５）
【出願日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【出願人】（０００００３１３７）マツダ株式会社 (6,115)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年５月２０日（２０１０．５．２０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１１月６日（２００８．１１．６）
【出願人】（０００００３１３７）マツダ株式会社 (6,115)
【Ｆターム（参考）】
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