説明

車両の空調装置

【課題】ヒートポンプによる車室の暖房を行いつつ同暖房に車両の熱源からの廃熱を利用する際、それによる車室の効果的な暖房を実現しながら的確に消費電力を抑える。
【解決手段】車室5の暖房時、その暖房を行うための蒸気圧縮式のヒートポンプ6のコンプレッサ7、及び熱源1からの廃熱を暖房に利用すべく冷却水を循環させる水循環回路3のウォータポンプ2を駆動するための電力の合計値が、要求暖房能力を満たせる値となるように、且つ基準値以下となるように、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される。これにより、ヒートポンプ6による車室5の暖房を行いつつ、水循環回路3の冷却水を用いて上記暖房に熱源1からの廃熱を利用する際、要求暖房能力を満たすことの可能な効果的な車室5の暖房を行いながら、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力を上記基準値以下の小さい値に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車などの熱源の少ない車両では、その熱源からの廃熱を利用して車室の暖房を行う空調装置を設けたとしても、同装置によって暖房要求に見合った車両の暖房を実現することはできない可能性がある。このため、車両の空調装置に蒸気圧縮式のヒートポンプを設け、そのヒートポンプを用いて車室の暖房を行うことが考えられる。
【0003】
詳しくは、上記ヒートポンプは、熱媒体を圧縮して吐出するコンプレッサと、同コンプレッサにより圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行う高圧側熱交換器と、同高圧側熱交換器での放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁と、同膨張弁にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行う低圧側熱交換器とを備えている。こうしたヒートポンプでは、コンプレッサの駆動により熱媒体が高圧側熱交換器、膨張弁、及び低圧側熱交換器といった機器を順に通過し、それによって熱媒体の循環が行われる。そして、ヒートポンプによる車室の暖房は、上記高圧側熱交換器を通過する高温の熱媒体の熱を車室に送られる空気に付与することによって実現される。
【0004】
ところで、上記ヒートポンプによる車室の暖房を効果的に行うためには、車両の熱源からの廃熱を可能な限り車室の暖房に利用することが好ましい。ここで、車両には熱源を冷却するための冷却水をウォータポンプの駆動を通じて循環させる水循環回路が設けられており、その冷却水が熱源との間で熱交換されることにより同熱源からの廃熱の冷却水による回収が行われる。このため、特許文献1に示すように、水循環回路における冷却水の熱をヒートポンプの低圧側熱交換器を通過する熱媒体に付与することにより、上記熱源からの廃熱を車室の暖房に利用することができる。
【0005】
これは、ヒートポンプにおいては、低圧側熱交換器を通過する熱媒体が上記冷却水からの熱を受けて温度上昇すると、その熱媒体がコンプレッサにより圧縮されて昇温した状態となって高圧側熱交換器を通過する際の同熱媒体の温度も上昇するためである。そして、上述したように高圧側熱交換器を通過する熱媒体の温度を上昇させると、同熱媒体の熱を車室に送られる空気に付与することによる車室の暖房が効果的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−171346公報(段落[0017]、[0019]、[0022]、図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したヒートポンプによる車室の暖房を行う際にはコンプレッサを駆動するための電力が必要になり、車両の熱源からの廃熱を上記暖房に利用する際には水循環回路のウォータポンプを駆動するための電力が必要になる。このため、車室の効果的な暖房を実現するために必要な電力は、コンプレッサでの消費電力とウォータポンプでの消費電力との合計値になる。このように車室の効果的な暖房を実現するためにコンプレッサだけでなくウォータポンプでも電力が消費されるため、それらコンプレッサ及びウォータポンプの駆動の仕方によっては、上記消費電力の合計値が上記暖房をヒートポンプだけで実現した場合のコンプレッサでの消費電力よりも大きくなるおそれがある。従って、ヒートポンプによる車室の暖房を行いつつ同暖房に車両の熱源からの廃熱を利用する際、そうした暖房を行うためのコンプレッサ及びウォータポンプの駆動をそれらの消費電力の合計値を抑制しつつ行う面で更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ヒートポンプによる車室の暖房を行いつつ同暖房に車両の熱源からの廃熱を利用する際、それによる車室の効果的な暖房を実現しながら的確に消費電力を抑えることができる車両の空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、ウォータポンプの駆動を通じて水循環回路を冷却水が循環することにより、車両の熱源が上記冷却水によって冷却されるとともに同熱源からの廃熱が同冷却水によって回収される。車室の暖房時には、ウォータポンプの駆動を通じて車両の熱源からの廃熱を回収した冷却水の熱がヒートポンプの低圧側熱交換器を通過する熱媒体に付与されるとともに、コンプレッサの駆動を通じてヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱が車室に送られる空気に付与される。ヒートポンプの低圧側熱交換器を通過する熱媒体が上記冷却水からの熱を受けて温度上昇すると、その熱媒体がコンプレッサにより圧縮されて昇温した状態となって高圧側熱交換器を通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。このように高圧側熱交換器を通過する熱媒体の温度を上昇させることで、同熱媒体の熱を車室に送られる空気に付与することによる車室の暖房が効果的に行われる。
【0010】
ここで、上記効果的な暖房を実現するためにはウォータポンプ及びコンプレッサの駆動が必要になる。このことから、上記暖房を実現するためのウォータポンプ及びコンプレッサの駆動に必要な電力は、コンプレッサでの消費電力とウォータポンプでの消費電力との合計値になる。請求項1記載の発明では、上記消費電力の合計値が車室の暖房要求を満たせる値となるように、且つ同合計値が基準値以下となるように、制御手段によってウォータポンプ及びコンプレッサが駆動される。こうした制御手段によるウォータポンプ及びコンプレッサの駆動により、ヒートポンプによる車室の暖房を行いつつ同暖房に車両の熱源からの廃熱を利用する際、上記暖房要求を満たすことの可能な効果的な車室の暖房を行いながら、それらウォータポンプ及びコンプレッサの消費電力を上記基準値以下の小さい値に抑えることができる。
【0011】
なお、車室の暖房時における制御手段でのウォータポンプ及びコンプレッサの駆動については、請求項2記載の発明のように、ウォータポンプを駆動するための電力とコンプレッサを駆動するための電力との合計値が、車室の暖房要求を満たし得る最小値となるように行うことが好ましい。これにより、暖房要求を満たすための車室の暖房を行うに当たり、その暖房を実現するためのウォータポンプ及びコンプレッサの消費電力の合計値を最小に抑えることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、車室の暖房時に制御手段によってウォータポンプ及びコンプレッサを駆動する際、その駆動が水循環回路の冷却水の温度及び車室内の空気の温度を加味して行われる。ここで、暖房要求を満たす車室の暖房を実現するためのウォータポンプ及びコンプレッサの消費電力の合計値は、水循環回路の冷却水の温度や車室内の空気の温度によって変わる。請求項3記載の発明では、水循環回路の冷却水の温度及び車室内の空気の温度を加味してウォータポンプ及びコンプレッサが駆動されるため、それらの温度に基づいて上記消費電力の合計値が変わるとしても、それに合わせて同合計値が小さく抑えられるようウォータポンプ及びコンプレッサを駆動することが可能になる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、車両の走行時に車室を暖房する際、ウォータポンプの駆動を通じて水循環回路を循環する冷却水の熱がラジエータにて外気に放出されると、その冷却水からの熱を受けて昇温した外気がヒートポンプの低圧側熱交換器に流れて同熱交換器内の熱媒体と熱交換される。これにより、水循環回路の冷却水の熱が外気を介してヒートポンプの低圧側熱交換器を通過する熱媒体に付与される。ここで、暖房要求を満たすための車室の上記暖房を実現するためのウォータポンプ及びコンプレッサの消費電力の合計値は、ラジエータにて冷却水からの熱を受ける前の上記外気の温度、及び車両の走行時にラジエータから低圧側熱交換器に流れる外気の流量によって変わる。請求項4記載の発明では、上記外気の温度及び流量を加味してウォータポンプ及びコンプレッサが駆動されるため、それら外気の温度及び流量に応じて上記消費電力の合計値が変わるとしても、それに合わせて同合計値が小さく抑えられるようウォータポンプ及びコンプレッサを駆動することが可能になる。
【0014】
なお、車室の暖房時における制御手段でのウォータポンプ及びコンプレッサの駆動については、車室の暖房要求に基づきウォータポンプの駆動指令値及びコンプレッサの駆動指令値を求め、それら求められた駆動指令値に基づいて行うことが考えられる。より具体的には、請求項5記載の発明のように、ウォータポンプの駆動指令値及びコンプレッサの駆動指令値を求めるためのマップとして、水循環回路の冷却水の温度、車室内の空気の温度、ラジエータで冷却水からの熱を受ける前の外気の温度、及び車両の走行時にラジエータから低圧側熱交換器に流れる外気の流量といった各種のパラメータの値に応じて複数のマップを設定しておき、それらマップのうちから上記各種のパラメータの現在値に対応したマップを選択する。そして、選択したマップを参照して車室の暖房要求に基づきウォータポンプの駆動指令値及び前記コンプレッサの駆動指令値を求め、それら求められた駆動指令値に基づいてウォータポンプ及びコンップレッサを駆動する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における空調装置の構成を示す概略図。
【図2】同空調装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】同空調装置におけるウォータポンプ及びコンプレッサの駆動指令値を求めるためのマップ。
【図4】車室を暖房するためのウォータポンプ及びコンプレッサの駆動手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を電気自動車の空調装置に具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
電気自動車には、図1に示すように、モータ、インバータ、及び充電器など電気自動車の熱源1を冷却するための冷却水をウォータポンプ2の駆動を通じて循環させる水循環回路3が設けられている。そして、水循環回路3内の冷却水が熱源1との間で熱交換されることにより、その熱源1が上記冷却水によって冷却されるとともに同熱源1からの廃熱が上記冷却水によって回収される。このように熱源1からの廃熱を回収した冷却水は温度上昇するため、同冷却水の過度な温度上昇を抑制すべく水循環回路3には冷却水の熱を外気に放出するラジエータ4が設けられている。
【0017】
電気自動車には、車室5の冷房や暖房といった空調を行うための空調装置が設けられている。ただし、電気自動車のような熱源1で生じる熱が少ない車両では、その熱源1からの廃熱を利用した車室5の暖房では暖房要求を満たせない可能性がある。このため、電気自動車の空調装置は、車室5の暖房を行うための装置として、蒸気圧縮式のヒートポンプ6を備えている。
【0018】
このヒートポンプ6には熱媒体を圧縮して吐出する電動式のコンプレッサ7が設けられている。そして、このコンプレッサ7の駆動を通じて、上記熱媒体がヒートポンプ6内を循環する。また、ヒートポンプ6は、コンプレッサ7により圧縮されて昇温した熱媒体からの放熱を行う高圧側熱交換器8と、同高圧側熱交換器8での放熱後の熱媒体を膨張させる膨張弁9と、同膨張弁9にて膨張して温度低下した熱媒体への吸熱を行う低圧側熱交換器10とを備えている。ヒートポンプ6における低圧側熱交換器10の下流であって且つコンプレッサ7の上流には、上記低圧側熱交換器10を通過した熱媒体を気体と液体とに分離するアキュムレータ11が設けられている。
【0019】
こうしたヒートポンプ6では、コンプレッサ7の駆動を通じて、熱媒体がコンプレッサ7、高圧側熱交換器8、膨張弁9、低圧側熱交換器10、及びアキュムレータ11といった機器を順に通過する。そして、空調装置は、ヒートポンプ6の上記高圧側熱交換器8を通過する高温の熱媒体の熱を利用して車室5の暖房を行う。同車室5の暖房は、具体的には、ヒートポンプ6の上記高圧側熱交換器8を通過する熱媒体の熱を、空調ファン13の駆動を通じて車室5に送られる空気に付与することで実現される。
【0020】
また、電気自動車の空調装置では、上記ヒートポンプ6による車室5の暖房を効果的に行うことを意図して、水循環回路3における冷却水の熱をヒートポンプ6の低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与することが行われる。ヒートポンプ6においては、低圧側熱交換器10を通過する熱媒体が上記冷却水からの熱を受けて温度上昇すると、その熱媒体がコンプレッサ7により圧縮されて昇温した状態となって高圧側熱交換器8を通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。このように高圧側熱交換器8を通過する熱媒体の温度を上昇させると、同熱媒体の熱を車室5に送られる空気に付与することによる車室5の暖房が効果的に行われる。
【0021】
また、水循環回路3における冷却水の熱をヒートポンプ6の低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与する構造としては、水循環回路3のラジエータ4をヒートポンプ6の低圧側熱交換器10における車両前側(図中左側)に設けるという構造が用いられている。この場合、電気自動車の走行時、ウォータポンプ2の駆動を通じて水循環回路3を循環する冷却水の熱がラジエータ4にて外気に放出されると、その冷却水からの熱を受けて昇温した外気がヒートポンプ6の低圧側熱交換器10周りに流れて同熱交換器10内の熱媒体と熱交換される。これにより、水循環回路3の冷却水の熱が外気を介してヒートポンプ6の低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与される。なお、ラジエータ4及び低圧側熱交換器10の近傍には、ラジエータ4から低圧側熱交換器10に向けての外気の流れを生じさせる電動ファン12が設けられている。
【0022】
次に、空調装置の電気的構成について図2を参照して説明する。
空調装置には、同装置の各種機器を駆動制御するための電子制御装置21が設けられている。この電子制御装置21は、上記各種機器の駆動制御に係る演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
【0023】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示すセンサ及びスイッチ等からの信号が入力される。
・車室5内の空気の温度(室温Tr)を検出する室温センサ22。
【0024】
・車室5での日射量を検出する日射量センサ23。
・車室5外の空気、すなわち車両の外部の空気の温度(外気温To)を検出する外気温センサ24。
【0025】
・車室5の温度を調整するために電気自動車の乗員により操作される室温設定スイッチ25。
・車室5内に空調のために送られる空気として外気を利用する外気導入モードと、同空気として車室5内の空気を利用する内気循環モードとを切り換えるべく、電気自動車の乗員により操作される内外気切換スイッチ26。
【0026】
・水循環回路3内の冷却水の温度(冷却水温Twev)を検出する水温センサ27。
・電気自動車の車速Vを検出する車速センサ28。
電子制御装置21の出力ポートには、ウォータポンプ2の駆動回路、コンプレッサ7の駆動回路、電動ファン12の駆動回路、及び空調ファン13の駆動回路等が接続されている。
【0027】
電子制御装置21は、室温センサ22により検出される室温Tr、日射量センサ23により検出される日射量、外気温センサ24により検出される外気温To、及び、室温設定スイッチ25により設定される車室5内の設定温度などに基づき、空調のために車室5内に送られる空気の温度の目標値である目標吹き出し温TAOを求める。更に、電子制御装置21は、上記求めた目標吹き出し温TAOに基づいて空調のために車室5内に送られる空気の流量である目標吹き出し量Vaを求める。そして、電子制御装置21は、上記求めた目標吹き出し量Vaに対応した流量の空気が車室5に送られるよう空調ファン13を駆動する。
【0028】
また、電子制御装置21は、車室5の暖房要求に相当する要求暖房能力Qhを求める。この要求暖房能力Qhは、空調装置による車室5に対する単位時間当たりの熱移動量の要求値を表しており、目標吹き出し量Va、空気の比熱Cpa、空気の密度ρa、目標吹き出し温TAO、及び外気温Toに基づき、以下に示す式(1)を用いて求められる。なお、この式(1)で用いられる空気の比熱Cpa及び密度ρaは空気の比熱及び密度の標準的な値(固定値)であり、外気温Toはラジエータ4で冷却水からの熱を受けていない外気の温度である。
【0029】
Qh=Va・Cpa・ρa・(TAO−To) …(1)
Qh :要求暖房能力
Va :目標吹き出し量
Cpa:空気の比熱
ρa :空気の密度
TAO:目標吹き出し温
To :外気温
ここで、車室5の暖房要求(要求暖房能力Qh)を満たすべく行われる車室5の暖房について、図1を参照して詳しく説明する。
【0030】
車室5の暖房時には、コンプレッサ7の駆動を通じてヒートポンプ6の高圧側熱交換器8を通過する熱媒体の温度が上昇される。そして、高圧側熱交換器8を通過する上記熱媒体の熱が、空調ファン13の駆動を通じて車室5に送られる空気に付与されることで車室5の暖房が行われる。また、車室5の暖房時には、ウォータポンプ2の駆動を通じて熱源1からの廃熱を回収した冷却水の熱がヒートポンプ6の低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与される。詳しくは、水循環回路3を循環する冷却水の熱がラジエータ4にて外気に放出されると、その冷却水からの熱を受けて昇温した外気が電気自動車の走行や電動ファン12の駆動を通じて例えば風量Vbでヒートポンプ6の低圧側熱交換器10に向けて流れる。そして、上記昇温した外気が低圧側熱交換器10内の熱媒体と熱交換されることにより、水循環回路3の冷却水の熱が外気を介してヒートポンプ6の低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与される。ヒートポンプ6においては、低圧側熱交換器10を通過する熱媒体が上記冷却水からの熱を受けて温度上昇すると、上述したように高圧側熱交換器8を通過する際の同熱媒体の温度も上昇する。その結果、高圧側熱交換器8を通過する熱媒体の熱を車室5に送られる空気に付与することによって実現される同車室5の暖房が効果的なものとなる。
【0031】
ところで、上述した車室5の効果的な暖房を実現するためにはウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動が必要になることから、上記暖房に必要な電力はウォータポンプ2での消費電力Lwpとコンプレッサ7での消費電力Lhpとの合計値である合計電力Ltになる。この実施形態では、車室5の暖房時、上記合計電力Ltが車室の暖房要求(要求暖房能力Qh)を満たせる値となるように、且つ上記合計電力Ltが基準値以下となるように、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される。こうしたウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動により、ヒートポンプ6による車室5の暖房を行いつつ同暖房に熱源1からの廃熱を利用する際、上記暖房要求を満たすことの可能な効果的な車室5の暖房を行いながら、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力を上記基準値以下の小さい値に抑えることができる。
【0032】
次に、車室5の暖房時におけるウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動の仕方について詳しく説明する。
ウォータポンプ2の駆動は駆動指令値tLwpに基づいて行われ、コンプレッサ7の駆動は駆動指令値tLhpに基づいて行われる。これら駆動指令値tLwp,tLhpは、式(1)を用いて求められた要求暖房能力Qhに基づき、例えば図3に示すマップを参照して求められる。同マップにおいては、横軸がウォータポンプ2を駆動するための電力とされるとともに、縦軸がコンプレッサ7を駆動するための電力とされており、所定の要求暖房能力Qhを満たし得るウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせが実線で示されている。こうした駆動電力の組み合わせを示す実線のうち原点に近いものほど、要求暖房能力Qhが小さい値であるときの上記駆動電力の組み合わせを示している。また、合計電力Ltを一定とした条件下でのウォータポンプ2の消費電力Lwpとコンプレッサ7の消費電力Lhpとの組み合わせを図3に二点鎖線で示すと、そのときの合計電力Ltが小さい値になるほど上記組み合わせを示す二点鎖線が原点に近いものとなる。
【0033】
ここで、現在の要求暖房能力Qhが例えば「Qh1」であるとすると、その「Qh1」に相当する実線上の任意の点で示されるウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせで、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動すれば、上記要求暖房能力Qh(Qh1)を満たすことが可能にはなる。ただし、本実施形態では、要求暖房能力Qhを満たす際のウォータポンプ2の消費電力Lwpとコンプレッサ7の消費電力Lhpとの合計電力Ltが基準値未満となるようにされる。なお、この基準値は、要求暖房能力Qhを満たすことの可能な合計電力Ltの最小値Ltminに対し所定値a分だけ大きい値となるよう、上記要求暖房能力Qhに基づいて可変設定される。ちなみに、要求暖房能力Qhが上述したように「Qh1」である場合、基準値は図3の「Lt1」とされる。この「Lt1」は、同図から分かるように、最小値Ltminに所定値aを加算した値となる。
【0034】
そして、図3における「Qh1」に相当する実線上であって、「Qh1」と「Lt1」との交点P1,P2間に位置する任意の点で示されるウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせで、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される。詳しくは、上記任意の点でのウォータポンプ2の駆動電力が同ウォータポンプ2の駆動指令値tLwpとされるとともに、上記任意の点でのコンプレッサ7の駆動電力が同コンプレッサ7の駆動指令値tLhpとされる。そして、ウォータポンプ2の駆動指令値tLwpに基づき同駆動指令値tLwpに対応する駆動電力でウォータポンプ2が駆動されるとともに、コンプレッサ7の駆動指令値tLhpに基づき同駆動指令値tLhpに対応する目標回転速度Neとなるようコンプレッサ7が駆動される。このようにウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することで、暖房要求を満たすことの可能な効果的な車室5の暖房を行いながら、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力Lwp,Lhpの合計値である合計電力Ltを小さい値に抑えることができる。
【0035】
なお、基準値を設定するための上記所定値aは、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7での消費電力抑制を考慮しつつ「0」よりも大きい値とすることが考えられるが、必ずしも「0」より大きい値とする必要はなく「0」とすることも可能である。このように所定値aを「0」とした場合、「Lt1」が最小値Ltminと重なって同最小値Ltmin(=Lt1)が基準値とされる。このため、図3の例では「Qh1」に相当する実線上であって、「Qh1」と最小値Ltminとの交点P3で示されるウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせで、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される。このようにウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することで、暖房要求を満たすための車室5の暖房を行うに当たり、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力Lwp,Lhpの合計値である合計電力Ltを最小に抑えることができる。
【0036】
ちなみに、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpを求めるためのマップとしては、図3に示すマップだけでなく、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの値に応じて設定された複数のマップが用意されている。そして、このように設定された複数のマップのうちから上記各種のパラメータの現在値に対応したマップが選択され、その選択されたマップを参照して車室5の暖房要求(要求暖房能力Qh)に基づきウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められる。ウォータポンプ2及びコンプレッサ7は、上述したように求められる駆動指令値tLwp,tLhpに基づいて駆動される。
【0037】
従って、車室5を暖房すべくウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される際には、その駆動が冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの値を加味して行われるようになる。ここで、暖房要求(要求暖房能力Qh)を満たす車室5の暖房を実現するためのウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力Lwp,Lhpの合計値である合計電力Ltは、冷却水温Twev、室温Tr(内気循環モード時のみ)、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータによって変わる。しかし、こうした各種のパラメータの値を加味してウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することで、それらパラメータに基づいて上記合計電力Ltが変わるとしても、それに合わせて同合計電力Ltが小さく抑えられるようウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することが可能になる。
【0038】
次に、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpを求めるための上記複数のマップの設定の仕方について説明する。
冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbを一定とした条件のもと、ウォータポンプ2を所定の駆動電力で駆動したときのラジエータ4の後方(低圧側熱交換器10側)の空気の温度が、次の式(2)を用いてラジエータ後方空気温Tevbとして算出される。
【0039】
Tevb=(cmmin/cmc)・φev・(Twev−To)+To …(2)
Tevb :ラジエータ後方空気温
cmmin:水当量
cmc :水当量
φev :熱交換効率
Twev :冷却水温
To :外気温
なお、式(2)において、水当量cmminはラジエータ4周りを通過する外気の水当量とラジエータ4内を通過する冷却水の水当量とのうちの小さい方を表しており、水当量cmcはラジエータ4周りを通過する外気の水当量を表している。また、熱交換効率φevは、ラジエータ4周りを通過する外気とラジエータ4内を通過する冷却水との熱交換効率を表しており、上記外気の流量(風量Vb)及び上記冷却水の流量に応じて可変設定される。ちなみに、上記風量Vbは車速V及び電動ファン12の駆動指令値に基づき求めることが可能であり、上記冷却水の流量はウォータポンプ2の駆動電力(駆動指令値tLwp)に基づいて求めることが可能である。
【0040】
続いて、上記式(2)を用いて算出されたラジエータ後方空気温Tevbで、所定の要求暖房能力Qhを満たすことの可能なコンプレッサ7の駆動電力が求められる。これにより、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbを一定とした条件下で、上記所定の要求暖房能力Qhを満たすためのウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせが得られる。そして、要求暖房能力Qhを固定した状態で、ウォータポンプ2の駆動電力を変化させてゆき、その変化毎にコンプレッサ7の駆動電力を求めることで、上記要求暖房能力Qhを満たすためのウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との組み合わせが複数得られるようになる。
【0041】
そして、上述したように得られるウォータポンプ2の駆動電力とコンプレッサ7の駆動電力との複数の組み合わせを、横軸がウォータポンプ2の駆動電力であり且つ縦軸がコンプレッサ7の駆動電力となるマップ上にプロットしてゆくことで、同マップ上に上記要求暖房能力Qhに対応した一つの実線が描かれる。そして、要求暖房能力Qhを適宜変更して上記と同様の手順を繰り返すことにより、変更した要求暖房能力Qh毎に対応する実線が上記マップ上に描かれる。更に、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの値をそれぞれ適宜変更した状態で、以上の手順を繰り返すことにより上記各種のパラメータの値に応じた複数のマップが作成される。
【0042】
このように作成(設定)された複数のマップは、電子制御装置21のROMに記憶される。ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpを求める際には、電子制御装置21のROMに記憶された複数のマップのうち、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの現在値に対応したマップが選択される。そして、このように選択されたマップを参照して、要求暖房能力Qhに基づきウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められる。
【0043】
次に、車室5を暖房するためのウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動手順について、暖房ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。この暖房ルーチンは、車室5の暖房要求があるときに電子制御装置21を通じて所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0044】
同ルーチンにおいては、まず目標吹き出し温TAO、室温Tr、及び外気温Toが取り込まれる(S101)。そして、外気温To、目標吹き出し温TAO、及び、その目標吹き出し温TAOから求められる目標吹き出し量Vaに基づき、式(1)を用いて要求暖房能力Qhが算出される(S102)。また、冷却水温Twev、及び車速Vの取り込みも行われる(S103)。こうして取り込まれた車速Vは、電動ファン12の駆動指令値と併せて、ラジエータ4周りを通過する外気の流量である風量Vbの算出に用いられる。
【0045】
そして、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの現在値に基づき、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpを求めるためのマップの選択が行われる(S104)。詳しくは、電子制御装置21のROMに記憶された複数のマップのうちから、上記各種のパラメータの現在値に対応したマップが選択される。こうして選択されたマップを参照して、現在の要求暖房能力Qhに基づきウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められる。具体的には、上記要求暖房能力Qhを満たすことができ、且つ、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動するための合計電力Ltが基準値(「Ltmin+α」)以下となるように、より好ましくは合計電力Ltが最小値Ltminとなるように、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められる。
【0046】
ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められると、それら駆動指令値tLwp,tLhpに基づき、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される(S106)。すなわち、ウォータポンプ2は駆動指令値tLwpに対応した駆動電力で駆動され、コンプレッサ7は駆動指令値tLhpに対応した目標回転速度Neに基づいて駆動される。このようにウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することで、車室5の暖房要求(要求暖房能力Qh)を満たしながら、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動するための合計電力Ltを小さい値に抑えることが可能になる。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車室5の暖房時、水循環回路3のウォータポンプ2及びヒートポンプ6のコンプレッサ7を駆動するための合計電力Ltが要求暖房能力Qhを満たせる値となるように、且つ上記合計電力Ltが基準値以下となるように、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される。これにより、ヒートポンプ6による車室5の暖房を行いつつ、水循環回路3の冷却水を用いて上記暖房に熱源1からの廃熱を利用する際、要求暖房能力Qhを満たすことの可能な効果的な車室5の暖房を行いながら、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力を上記基準値以下の小さい値に抑えることができる。
【0048】
なお、上記基準値は、要求暖房能力Qhを満たすことの可能な合計電力Ltの最小値Ltminに対し所定値a分だけ大きい値となるよう、上記要求暖房能力Qhに基づいて可変設定される。ここで、上記基準値を設定するために用いられる所定値aを「0」とすれば、要求暖房能力Qhを満たすことの可能な合計電力Ltの最小値Ltminが基準値とされるようになる。このように基準値を設定することで、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動を通じて要求暖房能力Qhを満たすための車室5の暖房を行うに当たり、それらウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動するための合計電力Ltを最小に抑えることができる。
【0049】
(2)車室5を暖房すべくウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動される際には、その駆動が冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの値を加味して行われる。詳しくは、ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpを求めるためのマップとして、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbといった各種のパラメータの値に応じて設定された複数のマップが用意される。そして、このように設定された複数のマップのうちから上記各種のパラメータの現在値に対応したマップが選択され、その選択されたマップを参照して要求暖房能力Qhに基づきウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpが求められる。こうして求められた駆動指令値tLwp,tLhpに基づきウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動されるため、その駆動を上述した各種のパラメータを加味して行うことが可能になる。
【0050】
ここで、要求暖房能力Qhを満たす車室5の暖房を実現するためのウォータポンプ2及びコンプレッサ7の消費電力Lwp,Lhpの合計値である合計電力Ltは、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbによって変わる。例えば、冷却水温Twev及び外気温Toが高くなるほど、また風量Vbが多くなるほど、ラジエータ4を通過する冷却水から外気を介して低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に付与される熱が多くなることから、要求暖房能力Qhを満たし得る合計電力Ltが小さくなる傾向がある。また、内気循環モード時には室温Trが高くなるほど、空調のために車室5に送られる空気の温度が高くなることから、要求暖房能力Qhを満たし得る合計電力Ltが小さくなる傾向がある。このように上記各種のパラメータの値によって合計電力Ltが変わるものの、それらパラメータの値を加味してウォータポンプ2及びコンプレッサ7が駆動されるため、上記各種のパラメータに基づく合計電力Ltの変化に合わせて、同合計電力Ltが小さく抑えられるようウォータポンプ2及びコンプレッサ7を駆動することが可能になる。
【0051】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・ウォータポンプ2及びコンプレッサ7の駆動指令値tLwp,tLhpに関しては、マップを参照して求める代わりに、式(2)を利用して求めるようにすることも可能である。
【0052】
・駆動指令値tLwp,tLhpを求める際に加味されるパラメータとして、冷却水温Twev、室温Tr、外気温To、及び風量Vbを例示したが、これらパラメータのうちの一つもしくは複数のみを加味して駆動指令値tLwp,tLhpを求めるようにしてもよい。
【0053】
・水循環回路3のラジエータ4をヒートポンプ6の低圧側熱交換器10と接触させ、そのラジエータ4を通過する冷却水の熱が外気を介することなく低圧側熱交換器10を通過する熱媒体に伝達されるようにしてもよい。この場合、駆動指令値tLwp,tLhpを求めるためのマップを選択する際に用いられる各種のパラメータに、風量Vbを含める必要はなくなる。
【0054】
・ヒートポンプ6は、熱媒体の循環経路を切り換えるなどして、車室5の暖房のみならず同車室5の冷房にも用いられるものであってもよい。
・熱源の少ない車両のうち電気自動車以外の車両、例えば内燃機関とモータとを動力源とするハイブリッド自動車に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…熱源、2…ウォータポンプ、3…水循環回路、4…ラジエータ、5…車室、6…ヒートポンプ、7…コンプレッサ、8…高圧側熱交換器、9…膨張弁、10…低圧側熱交換器、11…アキュムレータ、12…電動ファン、13…空調ファン、21…電子制御装置(制御手段)、22…室温センサ、23…日射量センサ、24…外気温センサ、25…室温設定スイッチ、26…内外気切換スイッチ、27…水温センサ、28…車速センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサの駆動に基づき熱媒体が高圧側熱交換器、膨張弁、及び低圧側熱交換を通過して循環するヒートポンプと、車両の熱源を冷却するための冷却水をウォータポンプの駆動を通じて循環させる水循環回路とを備え、車室の暖房時には、前記水循環回路を循環する冷却水の熱が前記ヒートポンプの低圧側熱交換器を通過する熱媒体に付与されるとともに、前記ヒートポンプの高圧側熱交換器を通過する熱媒体の熱が前記車室に送られる空気に付与される車両の空調装置において、
車室の暖房時、前記ウォータポンプを駆動するための電力と前記コンプレッサを駆動するための電力との合計値が車室の暖房要求を満たせる値となるように、且つ前記合計値が基準値以下となるように、前記ウォータポンプ及び前記コンプレッサを駆動する制御手段を備える
ことを特徴とする車両の空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車室の暖房時、前記ウォータポンプを駆動するための電力と前記コンプレッサを駆動するための電力との合計値が車室の暖房要求を満たし得る最小値となるよう、前記ウォータポンプ及び前記コンプレッサを駆動する
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記水循環回路の冷却水の温度、及び前記車室内の空気の温度を加味して、前記ウォータポンプ及び前記コンプレッサの駆動を行う
請求項1記載の車両の空調装置。
【請求項4】
前記水循環回路は、そこを循環する冷却水の熱を外気に放出するラジエータを備えており、
前記ラジエータは、前記ヒートポンプの低圧側熱交換器における車両前側に設けられており、
前記制御手段は、前記ラジエータで冷却水からの熱を受ける前の外気の温度、及び車両の走行時に前記ラジエータから前記低圧側熱交換器に流れる外気の流量を加味して、前記ウォータポンプ及び前記コンプレッサの駆動を行う
請求項3記載の車両の空調装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ウォータポンプの駆動指令値及び前記コンプレッサの駆動指令値を求めるためのマップとして、前記水循環回路の冷却水の温度、前記車室内の空気の温度、前記ラジエータで冷却水からの熱を受ける前の外気の温度、及び、車両の走行時に前記ラジエータから前記低圧側熱交換器に流れる外気の流量といった各種のパラメータの値に応じて設定された複数のマップを有しており、それらマップのうちから前記パラメータの現在値に対応したマップを選択し、その選択したマップを参照して車室の暖房要求に基づき前記ウォータポンプの駆動指令値及び前記コンプレッサの駆動指令値を求め、それら求められた駆動指令値に基づいて前記ウォータポンプ及び前記コンプレッサを駆動する
請求項4記載の車両の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−250639(P2012−250639A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125453(P2011−125453)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】