説明

車両の衝撃吸収構造

【課題】衝撃吸収部材支持ブラケットをフロアトンネルに強固に固定して倒れを防止することで衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を確保する。
【解決手段】左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル13上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケット15に衝撃吸収部材16を支持するとともに、フロアトンネル13の下面にスチフナ34を重ね合わせ、衝撃吸収部材支持ブラケット15およびスチフナ34でフロアトンネル13を上下から挟んで固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシートを前記衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる車両の衝撃吸収構造は、下記特許文献1により公知である。
【0003】
このものは、車両のフロアトンネルの上面に台座部(衝撃吸収部材支持ブラケット)および衝撃吸収体(衝撃吸収部材)を2段重ねで配置し、側面衝突時にシートが干渉する上側の衝撃吸収体を下側の台座部よりも高強度にすることで、全体の重量を低減しながら衝撃吸収効果を高めるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、側面衝突時にシートから衝撃吸収部材に入力される荷重が大きい場合には、衝撃吸収部材支持ブラケットを補強することで衝突荷重を吸収性能を更に高めることが必要となる。しかしながら、衝撃吸収部材支持ブラケットを補強しても、それが固定されるフロアトンネルの強度が低いと衝撃吸収部材支持ブラケットが横方向に倒れてしまい、衝撃吸収部材を効率的に圧壊して衝撃吸収能力を発揮させることができないという問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、衝撃吸収部材支持ブラケットをフロアトンネルに強固に固定して倒れを防止することで衝撃吸収部材の衝撃吸収能力を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシートを前記衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両の衝撃吸収構造において、前記フロアトンネルの下面にスチフナを重ね合わせ、前記衝撃吸収部材支持ブラケットおよび前記スチフナで前記フロアトンネルを上下から挟んで固定することを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記スチフナは、前記フロアトンネルの上壁および左右の側壁に沿うように逆U字状に形成され、左右方向に延びる主補強ビードにより補強されることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記スチフナは、前記フロアトンネルおよび前記衝撃吸収部材支持ブラケットに接合される複数の接合部を備えるとともに、前記複数の接合部の間を通って前記主補強ビードに接続される副補強ビードを備えることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0010】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項3の構成に加えて、前記副補強ビードの高さは前記主補強ビードの高さよりも低いことを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0011】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項1〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、ハンドブレーキ装置を支持するハンドブレーキ支持ブラケットと前記スチフナとは前記フロアトンネルに共締めされることを特徴とする車両の衝撃吸収構造が提案される。
【0012】
尚、実施の形態の第1〜第3副補強ビード34b,34c,34dは本発明の副補強ビードに対応し、実施の形態の第1〜第3接合部34e,34f,34gは本発明の接合部に対応する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によれば、左右のフロントシートに挟まれたフロアトンネル上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケットに衝撃吸収部材を支持したので、車両の側面衝突時にフロントシートを衝撃吸収部材に干渉させて衝突エネルギーを吸収することができる。このとき、フロアトンネルの下面にスチフナを重ね合わせ、衝撃吸収部材支持ブラケットおよびスチフナでフロアトンネルを上下から挟んで固定するので、フロアトンネルに対する衝撃吸収部材支持ブラケットの取付強度を高め、車両の側面衝突時にフロアトンネルに対して衝撃吸収部材支持ブラケットが横方向に倒れて衝撃吸収部材が充分な衝突エネルギーの吸収効果を発揮できなくなる事態を未然に防止することができる。
【0014】
また請求項2の構成によれば、スチフナは、フロアトンネルの上壁および左右の側壁に沿うように逆U字状に形成されるので、スチフナおよびフロアトンネルを強固に一体化してスチフナによるフロアトンネルの補強効果を高めることができ、しかもスチフナを左右方向に延びる主補強ビードで補強したので、側面衝突に対するスチフナの強度を更に高めることができる。
【0015】
また請求項3の構成によれば、スチフナは、フロアトンネルおよび衝撃吸収部材支持ブラケットに接合される複数の接合部と、それら複数の接合部の間を通って主補強ビードに接続される副補強ビードとを備えるので、接合部、主補強ビードおよび副補強ビードの相乗効果でスチフナの強度を更に高めることができる。
【0016】
また請求項4の構成によれば、副補強ビードの高さは主補強ビードの高さよりも低いので、側面衝突に対するスチフナの強度を高める主補強ビードの機能が副補強ビードにより損なわれるのを防止しながら、副補強ビードによりスチフナ全体の強度を高めることができる。
【0017】
また請求項5の構成によれば、ハンドブレーキ装置を支持するハンドブレーキ支持ブラケットとスチフナとをフロアトンネルに共締めしたので、スチフナおよびハンドブレーキ支持ブラケットの協働によりフロアトンネルの補強効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動車のフロントシート部の側面図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】衝撃吸収部材の分解斜視図。
【図4】図2の4−4線断面図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】スチフナの斜視図。
【図7】図6の7(A)−7(A)線断面図および7(B)−7(B)線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1に示すように、左右のフロントシート11,11の間にフロアパネル12から上方に突出して車体前後方向に延びるフロアトンネル13が配置されており、フロアトンネル13の上面はひじ掛け14aを有するセンターコンソール14で覆われる。センターコンソール14の内部であってひじ掛け14aの下方位置には、フロアトンネル13の上面に固定された衝撃吸収部材支持ブラケット15と、その衝撃吸収部材支持ブラケット15の上面に固定された衝撃吸収部材16とが配置される。また衝撃吸収部材支持ブラケット15の前方のフロアトンネル13の上面にハンドブレーキ支持ブラケット17が固定されており、ハンドブレーキ支持ブラケット17の上面に固定されたハンドブレーキ装置18のレバー部18aがセンターコンソール14の開口部を貫通して車室内に突出する。ハンドブレーキ装置18のレバー部18aに一端を結合されたブレーキケーブル19,19が、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前壁およびフロアトンネル13の上壁を貫通し、フロアトンネル13の内部を経て後輪の駐車ブレーキに接続される。
【0021】
図2〜図5から明らかなように、衝撃吸収部材支持ブラケット15は前部ブラケット21および後部ブラケット22で構成される。板金プレス製の前部ブラケット21は車体左右方向に延びる板状の前壁21aを備えており、前壁21aの上縁に上向きに開放するU字状の開口21bが形成されるとともに、前壁21aの下縁が前方に折り曲げられて取付部21cが形成される。また前部ブラケット21の上部の左右両側に2個のボルト孔21d,21dが形成されるとともに、取付部21cの左右両側に2個のボルト孔21e,21eが形成される。
【0022】
板金プレス製の後部ブラケット22は左右の側壁22a,22aおよび後壁22bを有して平面視でコ字状を成しており、側壁22a,22aの前縁が左右方向外側に折り曲げられて取付部22c,22cが形成され、それらの取付部22c,22cの上部にボルト孔22d,22dが形成される。また側壁22a,22aの下縁の前部が左右方向外側に折り曲げられて取付部22e,22eが形成されるとともに、側壁22a,22aの下縁の後部に上向きに凹む切欠き22f,22fが形成される。更に後壁22bの下縁が後向きに折り曲げられて二つの取付部22g,22gが形成され、かつ後壁22bの中央部に円形の点検窓22hが形成される。
【0023】
衝撃吸収部材16は、前部部材23、左右の側部部材24,24および後部部材25で構成される。板金プレス製の前部部材23は車体左右方向に延びる板状の前壁23aを備えており、その左右の側縁に前方に折り曲げられた取付部23b,23bを備えるとともに、その上縁に前方に折り曲げられた取付部23cを備える。左側の側部部材24は水平方向に延びる上壁24aと、前後方向に延びる側壁24bと、側壁24bの下端から左右方向内向きに延びた後に下向きに延びる脚部24cと、脚部24cの上部前端から垂下するブラケット24dとを備えており、脚部24cおよびブラケット24dにはそれぞれボルト孔24e,24fが形成される。右側の側部部材24は上述した左側の側部部材24と実質的に左右対称な形状である。
【0024】
後部部材25は、左右方向に延びる後壁25aと、後壁25aの下縁から前方に向かって水平に延びる下壁25bと、下壁25bの左右の側縁から下向きに延びる一対の脚部25c,25cとを備える。後壁25aの上縁および左右両側縁は後向きに折り曲げられて取付部25d;25e,25eが形成される。下壁25bには2個の円形の肉抜き孔25f,25fが形成されるとともに、下壁25bの前縁は下向きに折り曲げられて取付部25gが形成され、かつ左右の脚部25c,25cにはそれぞれボルト孔25h,25hが形成される。
【0025】
衝撃吸収部材支持ブラケット15が取り付けられるフロアトンネル13の上壁13aおよび左右の側壁13b,13bの下面に板金プレス製の矩形状のスチフナ34を重ね合わせることで、フロアトンネル13に対する衝撃吸収部材支持ブラケット15の取付強度が高められる。図6および図7から明らかなように、スチフナ34は、フロアトンネル13の断面形状に沿うように全体として逆U字状に湾曲している。
【0026】
スチフナ34の後部には左右方向に直線状に延びる1本の主補強ビード34aが溝状の形成されるとともに、前記主補強ビード34aよりも浅い溝状の第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dが前後方向および左右方向に形成される。第1副補強ビード34bはスチフナ34の前部を左右方向に直線状に延び、第2副補強ビード34cはスチフナ34の前縁の左右方向中央部から前記第1副補強ビード34bに交差する位置まで後方に延び、左右一対の第3副補強ビード34d,34dは前記第2副補強ビード34cからスチフナ34の後縁に達する位置まで、前記主補強ビード34aを横断して後方に延びている。
【0027】
スチフナ34の前部には、第1副補強ビード34bおよび第2副補強ビード34cにより区画されて高く盛り上がる左右一対の第1接合部34e,34eが形成され、スチフナ34の前後方向中間部には、主補強ビード34a,第1副補強ビード34bおよび一対の第3副補強ビード34d,34dにより区画されて高く盛り上がる3個の第2接合部34f…が形成され、スチフナ34の後部には、主補強ビード34aおよび一対の第3副補強ビード34d,34dにより区画されて高く盛り上がる3個の第3接合部34g…が形成される。左右の第1接合部34e,34eの裏面には、それぞれウエルドナット27,27が設けられる。
【0028】
衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aと後部ブラケット22の側壁22a,22aの取付部22c,22cとを溶接W1した後、後部ブラケット22の側壁22a,22aの取付部22e,22eと、後部ブラケット22の後壁22bの取付部22g,22gとがフロアトンネル13の上面に溶接W2される。このとき、後部ブラケット22の左右の側壁22a,22aの取付部22e,22eの前側の2カ所の溶接W2が、スチフナ34の3個の第2接合部34f…のうちの左右2個の第2接合部34f,34fを一体に溶接し、かつ後側の2カ所の溶接W2が、スチフナ34の3個の第3接合部34g…のうちの左右2個の第3接合部34g,34gを一体に溶接する。
【0029】
そしてハンドブレーキ支持ブラケット17の後端が前部ブラケット21の前壁21aの取付部21cの上面に重ね合わされ、ハンドブレーキ支持ブラケット17の後端と、前壁21aの取付部21cのボルト孔21e,21eと、フロアトンネル13と、スチフナ34の左右の第1接合部34e,34eとを貫通した2本のボルト26,26をウエルドナット27,27に螺合することで、ハンドブレーキ支持ブラケット17、前部ブラケット21、フロアトンネル13およびスチフナ34が共締めされる。上記共締め構造を採用することで、ハンドブレーキ支持ブラケット17、前部ブラケット21およびスチフナ34を別個にフロアトンネル13に締結する場合に比べて、締結部材の数を削減するとともに、衝撃吸収部材支持ブラケット15の取付強度を高めることができる。
【0030】
このようにして組み立てられた衝撃吸収部材支持ブラケット15を前後方向から見ると、後部ブラケット22の側壁22a,22aは下部から上部に向かって間隔がハ字状に狭まっている。
【0031】
衝撃吸収部材16は、前部部材23の前壁23aの取付部23b,23b;23cと、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aの前端と、左右の側部部材24,24の側壁24b,24bの前端とが溶接W3され、後部部材25の後壁25aの取付部25d;25e,25eと、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aの後端と、左右の側部部材24,24の側壁24b,24bの後端とが溶接W4され、左右の側部部材24,24の上壁24a,24aどうしが溶接W5され、後部部材25の下壁25bの取付部25gが前部部材23の前壁23aの上部後面に溶接W6されて組み立てられる。この状態で、左右の側部部材24,24の脚部24c,24cの左右方向内側に後部部材25の脚部25c,25cが重ね合わされ、右側の脚部24c,25cおよび左側の脚部24c,25cは前後方向から見ると下部から上部に向かって間隔がハ字状に狭まっている。
【0032】
このようにして組み立てられた衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15の上に重ね合わせると、衝撃吸収部材16の左右の脚部24c,25c;24c,25cの左右方向内面が、衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22のハ字状に傾斜する側壁22a,22aの左右方向外側面に当接する。この状態で、衝撃吸収部材16の左右の脚部24c,25c;24c,25cのボルト孔24e,25h;24e,25hと、衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22の側壁22a,22aとを貫通する2本のボルト28,28がウエルドナット29,29に螺合する。また衝撃吸収部材支持ブラケット15の後部ブラケット22のボルト孔22d,22dと、前部ブラケット21のボルト孔21d,21dと、衝撃吸収部材16の左右の側部部材24,24のブラケット24d,24dと、衝撃吸収部材16の前部部材23とを貫通する2本のボルト30,30がウエルドナット31,31に螺合する。
【0033】
衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15の上部に組付けるとき、衝撃吸収部材16の重ね合わされた前壁23aおよび左右のブラケット24d,24dの後面と、左右の脚部24c,24cの前縁との間に溝α(図2参照)が形成されており、この溝αを衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aの上縁に上方から係合させるとともに、衝撃吸収部材16のハ字状に下開きになった左右の脚部24c,25c;24c,25cの内面を衝撃吸収部材支持ブラケット15のハ字状に下開きになった左右の側壁22a,22aの外面に重ね合わせることで、衝撃吸収部材支持ブラケット15に対して衝撃吸収部材16を容易に位置決めすることができる。
【0034】
このようにしてフロアトンネル13の上面に衝撃吸収部材支持ブラケット15および衝撃吸収部材16が上下2段に固定された状態で、それらの左右両側面および上面がセンターコンソール14(図1参照)で覆われる。そして一端がブラケット32を介してハンドブレーキ支持ブラケット17の上面に固定されたブレーキケーブル19,19のアウターチューブ19a,19aの他端は、前部ブラケット21の開口21bを通過して衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部に導かれ、そこからフロアトンネル13の上面に形成されてグロメット33,33で覆われた2個の開口13a,13aを通過して後輪側に延出し、一端がハンドブレーキ装置18のレバー部18aに接続されたインナーケーブル19b,19bが前記アウターチューブ19a,19aの内部に摺動自在に嵌合する。
【0035】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0036】
車両の側面衝突によりフロントシート11が車体内向きに移動すると、そのシートクッションの内側面がセンターコンソール14を介して衝撃吸収部材16の側面に衝突し、フロントシート11の内部のシートフレームから衝撃吸収部材16に荷重が作用するが、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aが剪断方向の荷重を受け止めるので、強度の高い衝撃吸収部材16がフロントシート11から伝達される衝突エネルギーを吸収し、フロントシート11の車体内向きの移動を阻止して乗員の生存空間を確保することができる。特に、衝撃吸収部材16は、前壁23a、後壁25a、上壁24a,24a、下壁25bおよび左右の側壁24b,24bを有する完全なボックス構造であるため、その強度が極めて高くなって充分な衝撃吸収効果を得ることができる。
【0037】
また衝撃吸収部材支持ブラケット15の強度を高くしても、それが取り付けられるフロアトンネル13の強度が低いと、側面衝突の荷重によって衝撃吸収部材支持ブラケット15がフロアトンネル13を変形させながら横に倒れてしまい、衝撃吸収部材16に充分な衝撃吸収効果を発揮させることができなくなる。しかしながら本実施の形態によれば、フロアトンネル13の下面にスチフナ34を重ね合わせ、衝撃吸収部材支持ブラケット15およびスチフナ34でフロアトンネル13を上下から挟んで固定するので、フロアトンネル13に対する衝撃吸収部材支持ブラケット15の取付強度を高め、車両の側面衝突時にフロアトンネル13に対して衝撃吸収部材支持ブラケット15が横方向に倒れて衝撃吸収部材16が充分な衝突エネルギーの吸収効果を発揮できなくなる事態を未然に防止することができる。
【0038】
特に、スチフナ34はフロアトンネル13の上壁13aおよび左右の側壁13b,13bに沿うように逆U字状に形成されるので、スチフナ34およびフロアトンネル13を強固に一体化してスチフナ34によるフロアトンネル13の補強効果を高めることができ、しかもスチフナ34を左右方向に延びる主補強ビード34aで補強したので、側面衝突に対するスチフナ34の強度を更に高めることができる。
【0039】
更に、スチフナ34は、フロアトンネル13および衝撃吸収部材支持ブラケット15に接合される第1〜第3接合部34e,34e;34f…;34g…と、それら第1〜第3接合部34e,34e;34f…;34g…の間を通って主補強ビード34aに接続される第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dとを備えるので、第1〜第3接合部34e,34e;34f…;34g…、主補強ビード34aおよび第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dの相乗効果でスチフナ34の強度を更に高めることができる。このとき、第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dの高さは主補強ビード34aの高さよりも低いので、側面衝突に対するスチフナ34の強度を高める主補強ビード34aの機能が第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dにより損なわれるのを防止しながら、第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dによりスチフナ34全体の強度を高めることができる。
【0040】
しかもハンドブレーキ装置18を支持するハンドブレーキ支持ブラケット17とスチフナ34とをフロアトンネル13にボルト26,26およびウエルドナット27,27で共締めしたので、スチフナ34およびハンドブレーキ支持ブラケット17の協働によりフロアトンネル13の補強効果を更に高めることができる。
【0041】
ところで、フロアトンネル13の上面にハンドブレーキ装置18および衝撃吸収部材支持ブラケット15が前後に隣接して配置されているため、ハンドブレーキ装置18から後方に延びるブレーキケーブル19,19が衝撃吸収部材支持ブラケット15と干渉してレイアウトが困難になる問題がある。しかしながら、本実施の形態によれば、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aに形成した開口21bと、フロアトンネル13の上面に形成した開口13a,13aとを通してブレーキケーブル19,19をレイアウトすることで上記問題を解決することができる。
【0042】
一方、衝撃吸収部材支持ブラケット15の前部ブラケット21の前壁21aに開口21bを形成すると、その開口21bを形成したことにより前部ブラケット21の強度が大幅に低下してしまい、車両の側面衝突時に衝撃吸収部材支持ブラケット15が容易に変形してしまうことで、せっかく高強度に構成した衝撃吸収部材16が充分な衝撃吸収効果を発揮できなくなる虞がある。
【0043】
しかしながら本実施の形態によれば、前部ブラケット21の前壁21aのU字状の開口21bの上端開放部が衝撃吸収部材16の前部部材23の下端により閉塞されており、かつ衝撃吸収部材16の前部部材23は逆U字状に形成された上壁24a,24aおよび左右の側壁24b,24bに接続されて補強されているため、開口21bを形成したことによる前部ブラケット21の強度低下を充分に補い、衝撃吸収部材支持ブラケット15および衝撃吸収部材16を合わせたトータルの強度を高めて衝撃吸収効果を高めることができる。
【0044】
更に、衝撃吸収部材16の左右の側壁24b,24bから垂下する左右の脚部24c,24cを衝撃吸収部材支持ブラケット15の左右の側壁22a,22aに重ね合わせて固定するので、衝撃吸収部材16を衝撃吸収部材支持ブラケット15に強固に一体化して衝撃吸収効果を更に高めることができる。
【0045】
また衝撃吸収部材支持ブラケット15の後壁22bには点検窓22hが形成されているため、この点検窓22hを通して衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部に配置されたブレーキケーブル19,19のメンテナンスを容易に行うことができる。更にまた、ブレーキケーブル19,19は衝撃吸収部材支持ブラケット15の内部で二股に分かれてフロアトンネル13の2個の開口13a,13aに導かれるが、このとき前記開口13a,13aの近くの衝撃吸収部材支持ブラケット15の左右の側壁22a,22aに切欠き22f,22fが形成されているため、二股になったブレーキケーブル19,19が衝撃吸収部材支持ブラケット15と干渉するのを防止することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、スチフナ34の主補強ビード34aおよび第1〜第3副補強ビード34b;34c;34d,34dの形状は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
11 フロントシート
13 フロアトンネル
13a 上壁
13b 側壁
15 衝撃吸収部材支持ブラケット
16 衝撃吸収部材
17 ハンドブレーキ支持ブラケット
18 ハンドブレーキ装置
34 スチフナ
34a 主補強ビード
34b 第1副補強ビード(副補強ビード)
34c 第2副補強ビード(副補強ビード)
34d 第3副補強ビード(副補強ビード)
34e 第1接合部(接合部)
34f 第2接合部(接合部)
34g 第3接合部(接合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のフロントシート(11)に挟まれたフロアトンネル(13)上に固定した衝撃吸収部材支持ブラケット(15)に衝撃吸収部材(16)を支持し、車両の側面衝突時に前記フロントシート(11)を前記衝撃吸収部材(16)に干渉させて衝突エネルギーを吸収する車両の衝撃吸収構造において、
前記フロアトンネル(13)の下面にスチフナ(34)を重ね合わせ、前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)および前記スチフナ(34)で前記フロアトンネル(13)を上下から挟んで固定することを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記スチフナ(34)は、前記フロアトンネル(13)の上壁(13a)および左右の側壁(13b)に沿うように逆U字状に形成され、左右方向に延びる主補強ビード(34a)により補強されることを特徴とする、請求項1に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記スチフナ(34)は、前記フロアトンネル(13)および前記衝撃吸収部材支持ブラケット(15)に接合される複数の接合部(34e,34f,34g)を備えるとともに、前記複数の接合部(34e,34f,34g)の間を通って前記主補強ビード(34a)に接続される副補強ビード(34b,34c,34d)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記副補強ビード(34b,34c,34d)の高さは前記主補強ビード(34a)の高さよりも低いことを特徴とする、請求項3に記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項5】
ハンドブレーキ装置(18)を支持するハンドブレーキ支持ブラケット(17)と前記スチフナ(34)とは前記フロアトンネル(13)に共締めされることを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の車両の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−218934(P2011−218934A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89183(P2010−89183)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】