説明

車両の評価指標作成システム

【課題】定常的な車体への振動負担を表現できるようなデータを車両の評価指標として採用することを目的とする。
【解決手段】車両1に搭載されたGセンサ11が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値G毎の測定頻度Nを集計し、車体加速度値Gとその測定頻度Nの積の総和Σ(G×N)であるX値に応じた車両1の評価指標を記憶媒体に記録し、また、Gセンサ11が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値が異常に上昇した回数に相当するY値に応じた車両1の評価指標を記憶媒体に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の評価指標作成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中古車売買市場で、どの程度安全かつ丁寧な運転で中古車が使用されたかを判断する評価指標として、当該中古車の単位走行距離当たりの急制動(例えば、車体加速度0.9G以上の急制動)の発生回数のデータを使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−213324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような計算式で表される急制動発生比率では、ある閾値の車体加速度値を超えたときの車両への振動負担を表現しているに過ぎず、その閾値以下の車体加速度における車両への振動負担が全く考慮されていないので、定常的な車体への振動負担を表現できない。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、定常的な車体への振動負担を表現できるようなデータを車両の評価指標として採用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両(1)に搭載されたGセンサ(11)が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値G毎の測定頻度Nを集計し、車体加速度値Gとその測定頻度Nの積の総和Σ(G×N)であるX値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする評価指標作成システムである。このようになっていることで、定常的な車体への振動負担を表現できるようなX値のデータを車両(1)の評価指標として採用することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の評価指標作成システムにおいて、前記Gセンサ(11)が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値が異常に上昇した回数に相当するY値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする。
【0008】
このようになっていることで、突発的な車体への振動負担を表現できるようなY値のデータを車両(1)の評価指標として採用することができ、X値とY値で、定常的に車両にかかる負担と突発的に車両にかかる負担の両方とも表現でき、中古車査定時の車の痛み具合を公平に表現することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の評価指標作成システムにおいて、前記Gセンサ(11)と、前記車両(1)に搭載される通信機(12)と、前記車両(1)に搭載されるECU(13)と、前記車両(1)の外部に設置されたセンタ(5)と、を備え、前記ECU(13)は、繰り返し前記Gセンサ(11)が出力した車体加速度値を取得して記憶媒体に蓄積し、前記記憶媒体に繰り返し蓄積された複数個の車体加速度値を定期的または必要に応じて、前記通信機(12)を用いて前記センタ(5)に送信し、
前記センタ(5)は、前記車両(1)から受信した前記複数個の車体加速度値を用いて、前記X値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする。このようになっていることで、センタ(5)において、遠隔の車両(1)のX値を算出することができ、ECU(13)の処理負荷が低減される。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の評価指標作成システムにおいて、前記Gセンサ(11)と、前記車両(1)に搭載される通信機(12)と、前記車両(1)に搭載されるECU(13)と、前記車両(1)の外部に設置されたセンタ(5)と、を備え、前記ECU(13)は、繰り返し前記Gセンサ(11)が出力した車体加速度値を取得して記憶媒体に蓄積し、前記記憶媒体に繰り返し蓄積された複数個の車体加速度値を定期的または必要に応じて、前記通信機(12)を用いて前記センタ(5)に送信し、
前記センタ(5)は、前記車両(1)から受信した前記複数個の車体加速度値を用いて、前記X値および前記Y値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする。このようになっていることで、センタ(5)において、遠隔の車両(1)のX値を算出することができ、ECU(13)の処理負荷が低減される。
【0011】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る評価指標作成システムの構成図である。
【図2】車両のECUが実行する処理のフローチャートである。
【図3】センタ5が実行する処理のフローチャートである。
【図4】X値計算の概要を例示するグラフである。
【図5】Y値計算の概要を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る評価指標作成システムの構成を示す。この評価指標作成システムは、複数の車両1〜4、および、センタ5を備えている。
【0014】
車両1〜4のそれぞれは、同等の構成および作動の車載システムを備えている。図1では、代表として、車両1の車載システムの構成を示す。この車載システムは、Gセンサ11、通信機12、およびECU13を備え、これらは車内LANを介して互いに信号をやり取りしている。
【0015】
Gセンサ11は、車体加速度(例えば車体前後加速度。ここでは、前方向の加速度も後ろ方向の加速度も値は正であるとする)を検出して出力する周知のセンサである。通信機12は、センタ5と通信するための無線通信装置である。ECU13は、この通信機12を用いてセンタ5と通信できるようになっている。なお、通信機12とセンタ5の間の接続経路については、通信機12とセンタ5が直接無線で接続するようになっていてもよいし、無線基地局および有線ネットワーク(例えばインターネット)を介して接続するようになっていてもよい。
【0016】
ECU13は、CPU、RAM、ROM、不揮発性記憶媒体(例えばフラッシュメモリ)等を備えた周知のマイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されているプログラムを実行し、RAM、不揮発性記憶媒体に対しデータの読み書きを行うことで、後述する処理を実現するようになっている。以下、CPUの実行する処理を、ECU13が実行する処理として説明する。
【0017】
センタ5は、図示しないが、CPU、RAM、ROM、不揮発性記憶媒体(例えば磁気記憶媒体)、通信インターフェース等を備えている。CPUがROMまたは不揮発性記憶媒体に記録されているプログラムを実行し、RAM、不揮発性記憶媒体に対しデータの読み書きを行うことで、後述する処理を実現し、それにより、後述するX値とY値に関する証明書6を作成するようになっている。以下、センタ5のCPUが実行する処理を、センタ5が実行する処理として説明する。
【0018】
以下、車両1に搭載された車載システムとセンタ5の作動について説明するが、車両2〜4の作動も、車両1と同じである。
【0019】
図2に、ECU13の実行する処理のフローチャートを示す。ECU13は、車両の走行中、この図2の処理を繰り返し定期的に(例えば、0.1秒に1回)実行しており、まずステップ110で、Gセンサ11の出力に基づいて車体加速度値を取得し、続いてステップ120で、取得した車体加速度値を不揮発性記憶媒体に追加記録する。続いてステップ130で、送信タイミングが訪れたか否かを判定し、訪れない場合は、今回の図2の処理を終了し、次回の図2の処理を開始する。このように、ECU13は、Gセンサ11が出力した車体加速度値を繰り返し定期的に取得して不揮発性記憶媒体に追加蓄積していく。
【0020】
そして、ある回の図2の処理において、ステップ130で送信タイミングが訪れたと判定した場合は、ステップ140に進む。ECU13は、定期的に(例えば、10日周期で)送信タイミングが訪れたと判定するようになっていてもよい。またあるいは、ユーザが車両に搭載された操作部(図示せず)に対して送信開始の旨の操作を行ったことに基づいて、送信タイミングが訪れたと判定するようになっていてもよいし、その他必要に応じて送信タイミングが訪れたと判定するようになっていてもよい。
【0021】
ステップ140に進むと、ECU13は、不揮発性記憶媒体に複数個蓄積されている車体加速度値のすべてを読み出し、通信機12を用いてセンタ5に送信する。この際、一緒に自車両の識別番号も送信する。
【0022】
センタ5は、このように送信された識別番号および複数個の車体加速度値を、通信インターフェースを用いて受信する。そして、受信した識別番号および複数個の車体加速度値に基づいた証明書6のデータを作成するため、図3の処理を実行する。
【0023】
この図3の処理において、まずステップ210では、受信した上記複数個の車体加速度値に基づいて、車両1を対象とする車体加速度値G毎の測定頻度Nを集計する。すなわち、車体加速度値Gのヒストグラムを作成する。図4に、複数のA車、B車、C車それぞれのヒストグラムを例示する。
【0024】
続いてステップ220では、直前のステップ210で集計された車体加速度値G毎の測定頻度Nに基づいて、車両1のX値を算出する。X値の算出方法は、以下の通りである。ステップ220で作成した車両1のヒストグラムを用いて、車両1における車体加速度値Gとその測定頻度Nの積の総和Σ(G×N)を算出する。ここで、Σは、すべての車体加速度値Gについての総和である。この算出値が車両1のX値であり、車両1がA車の場合、斜線20の面積に該当する。
【0025】
続いてステップ230では、直前のステップ210で集計された車体加速度値G毎の測定頻度Nに基づいて、車両1のY値を算出する。Y値の算出方法は、以下の通りである。ステップ230で作成した車両1のヒストグラム(図5に示す)を用いて、異常判定閾値Tを超える車体加速度値Gについての測定頻度Nの総和ΣNを算出する。ここで、Σは、異常判定閾値Tを超えるすべての車体加速度値Gについての総和である。この算出値が車両1のY値である。
【0026】
ここで、異常判定閾値Tは、あらかじめ定められた固定値であってもよい。あるいは、直前のステップ210で集計された車体加速度値G毎の測定頻度Nに基づいて、異常判定閾値Tを決定してもよい。例えば、直前のステップ210で集計された車体加速度値G毎の測定頻度Nに基づいて車体加速度値Gの分布の標準偏差σおよび平均値μを算出し、平均値μよりも標準偏差σの2倍だけ大きい値を異常判定閾値Tとしてもよい。つまり、異常判定閾値Tは、それを超えれば車体加速度値が異常に上昇したと判定できる値であれば、どのようなものでもよい。したがって、Y値は、車体加速度値が異常に上昇した回数である。
【0027】
続いてステップ240では、ステップ220、230で作成したX値およびY値を用いて、車両1の証明書データを作成し、センタ5の不揮発性記憶媒体に記録する。この証明書データには、ECU13から受信した車両1の識別番号を含める。
【0028】
また、証明書データには、X値およびY値そのものを含めるようになっていてもよいし、X値の3段階評価(良、普通、不良)およびY値の3段階評価を含めるようになっていてもよい。
【0029】
また、X値が所定の閾値Xaよりも小さいときにのみX値が低い旨を表示し、Y値が所定の閾値Yaよりも小さいときにのみY値が低い旨を表示するようになっていてもよい。このとき、閾値Xaおよび閾値Yaは、それぞれ、センタ5で算出した複数の車両のX値の平均値およびY値の平均値であってもよい。
【0030】
ステップ240の後、センタ5による車両1の証明書データ作成処理は終了する。このようにして記録された車両1の証明書データは、紙に印刷して発行し、車両1と共に保管してもよいし、証明書データをECU13の不揮発性記憶媒体に記録してもよい。このようにすることで、証明書データを、車両1の査定材料として活用できる。
【0031】
このように、車両の査定に用いるための合理的な方法として、定常的な車体への振動負担としてX値を計測して、突発的な車体への振動負担をY値として計測して、車両振動の車体への負荷を計算する。この値を車両1の評価指標として採用することにより、中古車査定時の車両1の痛み具合を公平に表現することができる。
【0032】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。例えば、以下のような形態も許容される。
【0033】
例えば、上記実施携帯では、センタ5で車両1のヒストグラムを算出し、X値、Y値を算出している。この場合、評価指標作成システムがセンタ5単体で構成されると捉えることもでき、車両1とセンタ5で評価指標作成システムが構成されると捉えることもできる。
【0034】
しかし、必ずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両1のECU13がヒストグラムを算出してセンタ5に送信し、センタ5がヒストグラムに基づいてX値、Y値を算出するようになっていてもよい。あるいは、ECU13がX値、Y値まで算出し、X値、Y値をセンタ5に送信し、センタ5がこのX値、Y値に基づいて証明書データを作成してもよい。
【0035】
あるいは、X値、Y値の算出証明書データの作成、記録まで、ECU13が行うようになっていてもよい。この場合、ECU13単体で評価指標作成システムが構成されると捉えることもできる。
【0036】
また、上記の実施形態において、ECU13およびセンタ5がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1〜4 車両
5 センタ
6 証明書
11 Gセンサ
12 通信機
13 ECU
20 X値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されたGセンサ(11)が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値G毎の測定頻度Nを集計し、車体加速度値Gとその測定頻度Nの積の総和Σ(G×N)であるX値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする評価指標作成システム。
【請求項2】
前記Gセンサ(11)が繰り返し出力した車体加速度値を用いて、車体加速度値が異常に上昇した回数に相当するY値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする請求項1に記載の評価指標作成システム。
【請求項3】
前記Gセンサ(11)と、前記車両(1)に搭載される通信機(12)と、前記車両(1)に搭載されるECU(13)と、前記車両(1)の外部に設置されたセンタ(5)と、を備え、
前記ECU(13)は、繰り返し前記Gセンサ(11)が出力した車体加速度値を取得して記憶媒体に蓄積し、前記記憶媒体に繰り返し蓄積された複数個の車体加速度値を定期的または必要に応じて、前記通信機(12)を用いて前記センタ(5)に送信し、
前記センタ(5)は、前記車両(1)から受信した前記複数個の車体加速度値を用いて、前記X値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする請求項1に記載の評価指標作成システム。
【請求項4】
前記Gセンサ(11)と、前記車両(1)に搭載される通信機(12)と、前記車両(1)に搭載されるECU(13)と、前記車両(1)の外部に設置されたセンタ(5)と、を備え、
前記ECU(13)は、繰り返し前記Gセンサ(11)が出力した車体加速度値を取得して記憶媒体に蓄積し、前記記憶媒体に繰り返し蓄積された複数個の車体加速度値を定期的または必要に応じて、前記通信機(12)を用いて前記センタ(5)に送信し、
前記センタ(5)は、前記車両(1)から受信した前記複数個の車体加速度値を用いて、前記X値および前記Y値に応じた前記車両(1)の評価指標を記憶媒体に記録することを特徴とする請求項2に記載の評価指標作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221407(P2012−221407A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89212(P2011−89212)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)