車両の負圧タンク配置構造
【課題】負圧タンクを車両衝突時の損傷を防ぎつつデッドスペースを利用して合理的に配置することができるとともに、該負圧タンクへの負圧配管の接続作業性を高めることができる車両の負圧タンク配置構造を提供すること。
【解決手段】ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタ1と、該ブースタ1に負圧を供給する電動負圧ポンプ2と、該電動負圧ポンプ2で発生した負圧を蓄える負圧タンク3を備えた車両の前記負圧タンク3の配置構造として、前記負圧タンク3を車両のフロアトンネル17内に前後方向に沿って配置する。
【解決手段】ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタ1と、該ブースタ1に負圧を供給する電動負圧ポンプ2と、該電動負圧ポンプ2で発生した負圧を蓄える負圧タンク3を備えた車両の前記負圧タンク3の配置構造として、前記負圧タンク3を車両のフロアトンネル17内に前後方向に沿って配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ操作力をアシストするブースタに供給する負圧を蓄えておくための負圧タンクの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエンジンを駆動源として走行するガソリン車等においては、運転者によるブレーキペダルの踏力をアシストするブースタの駆動源としてエンジンの吸気負圧が使用されている。
【0003】
ところが、駆動源として電動モータを使用する電気自動車にはエンジンが搭載されていないため、ブースタの駆動源としてエンジンの吸気負圧を使用することができない。このため、電気自動車には負圧を発生する電動負圧ポンプや負圧を蓄えておく負圧タンク等によって構成される負圧供給装置が設けられ、この負圧供給装置によってブースタに負圧が供給されるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−329701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気自動車に設けられる負圧供給装置においては、負圧タンクの配置は車両衝突時の影響や負圧配管の接続作業性等を考慮してなされる必要がある。例えば、比較的大きな負圧タンクを車体のダッシュパネルの前方付近に配置した場合には、特にダッシュパネル前方の長さが短い車両にあっては、車両衝突時に負圧タンクがバンパによって押されて後退してダッシュパネルを押し、車室に影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、負圧タンクを車両衝突時の損傷を防ぎつつデッドスペースを利用して合理的に配置することができるとともに、該負圧タンクへの負圧配管の接続作業性を高めることができる車両の負圧タンク配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタと、該ブースタに負圧を供給する電動負圧ポンプと、該電動負圧ポンプで発生した負圧を蓄える負圧タンクを備えた車両の前記負圧タンクの配置構造として、前記負圧タンクを車両のフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記負圧タンクの前端部に配管接続部を配置し、該配管接続部を前記フロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記配管接続部のうち、前記電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部を前記ブースタに接続されるブースタ側配管接続部をよりも上方に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記負圧タンクをブラケットを介して前記フロアトンネルの上面部に固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記ブラケットを前記負圧タンクに固定される第1のブラケットと前記フロアトンネル側に固定される第2のブラケットとで構成し、両者をゴムブッシュを介して結合したことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記第1又は第2ブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、電気自動車等において配置される部品が少ないフロアトンネル内のデッドスペースを利用して負圧タンクを合理的に配置することができる。又、フロアトンネル内は車両の衝突による車体の変形の影響を受けにくい場所であるため、ダッシュパネルの前方の長さが短い車両であっても、フロアトンネル内に配置される負圧タンクの損傷を防ぐことができ、ブースタへの負圧の安定した供給が可能となってブレーキ装置に対する信頼性が高められる。
【0014】
更に、負圧タンクをフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したため、その容量を容易に確保することができ、ブレーキ使用時のブースタへの負圧の安定した供給が可能となって運転者のブレーキ操作時の踏力が軽減される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、負圧タンクの前端部に配管接続部を配置したため、ダッシュパネルに沿って配索された負圧配管と負圧タンクとの接続が容易となり、配管作業性が高められる。又、配管接続部をフロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたため、負圧配管のフロアトンネル内への引き込みが不要となり、配管のレイアウトが容易となる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、配管接続部のうち、電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部をブースタに接続されるブースタ側配管接続部よりも上方に配置したため、負圧タンク内に残留する水や異物の電動負圧ポンプ側への吸引が抑制され、電動負圧ポンプの耐久性と信頼性が高められる。又、フロアトンネルの前端部上面は上方に屈曲し、前方に向かって上向きに傾斜しながらダッシュパネルに接続されており、この上向きに傾斜する上面に沿って負圧タンクを比較的高い位置に配置することができるため、該負圧タンクの飛石等による損傷を抑制することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、負圧タンクをブラケットを介して剛性の高いフロアトンネルの上面部に容易に固定することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、負圧タンクをフロアトンネルに固定するためのブラケットを2分割したため、負圧タンクをコンパクトなスペースであるフロアトンネル内に配置することができるとともに、負圧タンクの車両搭載性と組付性が高められる。又、負圧タンクは防振材であるゴムブッシュを介してフロアトンネルに固定されるため、電動負圧ポンプから負圧配管を経て負圧タンクに伝達された振動がゴムブッシュによって吸収されて車室への伝播が遮断され、車室内の静粛性が高められる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、第1又は第2のブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したため、車両衝突時の変形が負圧タンクや負圧配管及びフロアトンネルにまで及んだ場合に負圧タンクの固定が外れてフリーとなり、該負圧タンクとこれに接続された負圧配管が車体の変形を阻害することがなく、又、これらの負圧タンクと負圧配管が車体の変形の影響を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の負圧供給装置の基本構成を示す分解斜視図である。
【図2】車両の負圧供給装置の配置構造を示す車体前部を左前上方から見た破断斜視図である。
【図3】車両の負圧供給装置の配置構造を示す車体前部の部分正面面である。
【図4】電動負圧ポンプの取付状態を示す部分斜視図である。
【図5】電動負圧ポンプの取付状態を示す部分側面図(図4の矢視A方向の図)である。
【図6】図4のB部拡大詳細図である。
【図7】ブラケットのフロントクロスメンバへの固定構造を示す底面図である。
【図8】ブラケットの斜視図である。
【図9】排気ホースの配置構造を示す電動負圧ポンプの斜視図である。
【図10】図9の矢視C方向の図である。
【図11】負圧タンクの取付構造を示す正面図である。
【図12】第1のブラケットの平面図である。
【図13】図12のD−D線断面図である。
【図14】第1のブラケットを裏面側から見た斜視図である。
【図15】第2のブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の負圧供給装置の基本構成を示す分解斜視図であって、図示の負圧供給装置は、電気自動車の不図示のブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を負圧を利用して倍力するブースタ1と、該ブースタ1に負圧を供給する電動負圧ポンプ2と、該電動負圧ポンプ2で発生した負圧を蓄える負圧タンク3を備えている。そして、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3とは負圧配管4によって互いに連通しており、負圧タンク3とブースタ1とは負圧配管5によって互いに連通している。
【0023】
上記ブースタ1の中央部に突出するロッド6の端部には不図示のブレーキ装置のブレーキアームが連結されており、該ブレーキアームの下端に設けられたブレーキペダルを運転者が踏み込むと、ロッド6が押されてマスタシリンダ7にブレーキ油圧が発生するが、運転者の踏力は大気圧と負圧との差圧を利用して発生する力を駆動源として作動するブースタ1によって倍力されるために運転者の肉体的負担が軽減される。
【0024】
前記電動負圧ポンプ2は、これに一体に設けられた不図示の電動モータによって駆動されて負圧を発生するものであって、後述のようにブラケット8を介して車体前部の左右方向右側部に取り付けられる。又、前記負圧タンク3は、円筒容器状のタンクであって、その上面にはプレート状の第1のブラケット9が取り付けられている。
【0025】
電動負圧ポンプ2と負圧タンク3とを連通させる前記負圧配管4は、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3にそれぞれ接続される可撓性ホース4a,4bと、これらの可撓性ホース4a,4b同士を接続する金属パイプ4cによって構成されている。ここで、可撓性ホース4aにはフィルタ10が接続されている。又、金属パイプ4cの中間には車体(ダッシュパネル14)への取り付けに使用される取付ブラケット11が挿通固着されている。
【0026】
又、負圧タンク3とブースタ1とを連通させる前記負圧配管5は、負圧タンク3とブースタ1にそれぞれ接続される可撓性ホース5a,5bと、これらの可撓性ホース5a,5b同士を接続する金属パイプ5cによって構成されている。ここで、金属パイプ5cの一端には車体への取付用の取付ブラケット12が結着されており、中間部にはグロメット13が挿通している。
【0027】
次に、以上のように構成された負圧供給装置の車体への配置構造を図2及び図3に基づいて説明する。
【0028】
図2は本発明に係る負圧供給装置の配置構造を示す車体前部を左前上方から見た破断斜視図、図3は同車体前部の部分正面面であり、図2に示すように、ブースタ1は、車両右側部のダッシュパネル14よりも後方の車室内に配置されており、電動負圧ポンプ2は、車体前部であって車両左右方向においてブースタ1が設けられた側と同側である右側部に配置されている。具体的には、電動負圧ポンプ2は、右側のフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16との接合箇所の内角部に配置され、前記ブラケット8によってフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に固定されている。尚、電動負圧ポンプ2の取付構造の詳細は後述する。
【0029】
又、前記負圧タンク3は、車両の左右方向中央に前後方向に沿って形成されたフロアトンネル17内にその長手方向(円筒容器の軸方向)を前後方向に沿って配置されている。そして、図1に示すように、負圧タンク3の前端面には上下2本のパイプ状の配管接続部18,19がフロアトンネル17の前端縁から車両前方へと突出している。ここで、上下2本の配管接続部18,19のうち、一方の配管接続部18は電動負圧ポンプ2に連なる負圧配管4の可撓性ホース4bが接続されるポンプ側配管接続部であり、他方の配管接続部19はブースタ1に連なる負圧配管5の可撓性ホース5aが接続されるブースタ側接続部であるが、図示のようにポンプ側配管接続部18はブースタ側配管接続部19よりも上方に配置されている。
【0030】
而して、負圧タンク3は、図3に示すように前記第1のブラケット9とこれに結合された第2のブラケット20によってフロアトンネル17の上面部の下面に取り付けられるが、その取付構造の詳細は後述する。
【0031】
ところで、前記負圧配管4においては、ダッシュパネル14に沿って配索される部分が金属パイプ4cで構成され、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3に接続される部分(金属パイプ4cの両側部分)が可撓性ホース4a,4bによって構成されている。ここで、図1に示すように、電動負圧ポンプ2の中間高さ位置には不図示の吸気口に連なるパイプ状の配管接続部21が突設されており、この配管接続部21には負圧配管4の可撓性ホース(吸気ホース)4aの一端が差し込まれて固定されている。
【0032】
而して、負圧配管4の可撓性ホース4aは、電動負圧ポンプ2の側部から車両中央側に向かって水平に延びた後、垂直上方に立ち上がり、その後は右側方に向かって略直角に折り曲げられ、ダッシュパネル14に向かって斜め上方へと延びている。ここで、図3に示すように、フィルタ10よりも負圧タンク3側となる可撓性ホース4aの途中には、空気の負圧タンク3側への逆流を阻止するチェックバルブ22が設けられている。
【0033】
又、可撓性ホース4aに連なる金属パイプ4cは、ダッシュパネル14の前面に沿って配索され、その一部は取付ブラケット11及びクランプ24によってダッシュパネル14の前面に固定されている。この金属パイプ4cは、可撓性ホース4aから上方へと立ち上がった後、車幅方向中央のフロアトンネル17内に配置された負圧タンク3に向かって左側方に延び、その端部には略L字形状の可撓性ホース4bが接続されている。そして、可撓性ホース4bの先端は車両後方に向かって略直角に折り曲げられて負圧タンク3の上側の配管接続部18に差し込まれて接続されている。
【0034】
他方の負圧配管5の可撓性ホース5aは、略L字状に形成されて負圧配管4の可撓性ホース4bに沿って配されており、その一端は車両後方に向かって略直角に折り曲げられ、負圧タンク3の下方の配管接続部19に差し込まれて接続されている。そして、可撓性ホース5aに連なる金属パイプ5cはダッシュパネル14の前面に沿って負圧配管4の金属パイプ4cに沿って配されており、その一部はダッシュパネル14に形成された不図示の円孔を貫通してダッシュパネル14の裏側(後面側)の車室内に入り込んでいる。そして、金属パイプ5cの車室内の部分は取付ブラケット12に挿通するネジ23(図1参照)によってダッシュパネル14の裏面(後面)に固定されている。尚、負圧配管5の金属パイプ5cのダッシュパネル14の前面に沿う部分と負圧配管4の金属パイプ4cとはクランプ24によって互いに固定されるとともにダッシュパネル14の前面に固定されている。又、ダッシュパネル14に形成された不図示の円孔と金属パイプ5cとの間の隙間は、グロメット13によってシールされて、車室内への埃や音の侵入を防止している。
【0035】
上記金属パイプ5cの車室内の端部に連なる可撓性ホース5bは、車室内に配置されたブースタ1に向かって立ち上がり、その端部はブースタ1に接続されている。
【0036】
次に、電動負圧ポンプ2の取付構造の詳細を図4〜図8に基づいて以下に説明する。
【0037】
図4は電動負圧ポンプの取付状態を示す部分斜視図、図5は同部分側面図(図4の矢視A方向の図)、図6は図4のB部拡大詳細図、図7はブラケットのフロントクロスメンバへの固定構造を示す底面図、図8はブラケットの斜視図である。
【0038】
図4に示すように、電動負圧ポンプ2は、右側のフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16との接合箇所の内角部に垂直に起立した状態で配置され、ブラケット8によってフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に固定されているが、この電動負圧ポンプ2を固定するブラケット8の構成を図8に基づいて説明する。
【0039】
上記ブラケット8は、板金のプレス成形品であって、その水平な上壁8Aには半円状の切欠き8aが形成され、上壁8Aからはステー8Bが垂直に起立するとともに、L字状に屈曲されたステー8Cが下方に向けて形成されている。ここで、両ステー8B,8Cは互いに直交しており、一方のステー8Bはフロントサイドメンバ15への取付面を構成し、その端部には車両前方向(当該ブラケット8の取付状態において車両前方向)に開いた切欠き25が形成されている。又、他方のステー8Cの水平な面はフロントクロスメンバ16への取付面を構成しており、この取付面の両側(車両左右方向両側)には互いに向き合う切欠き26が形成されている。更に、上壁8Aの前記切欠き8aを挟んで向かい合う2箇所には円孔27が形成されており、上壁8Aの下面の各円孔27の周囲には不図示のナットが溶接されている。
【0040】
又、ブラケット8の上壁8Aからは平面視六角形を成す揺動規制部8Dが下方に延びており、この揺動規制部8Dは、上壁8Aに形成された切欠き8aの下方に該切欠き8aと同心的に形成されている。尚、揺動規制部8Dの内接円直径と切欠き8aの内径は何れも電動負圧ポンプ2の下半部の外径よりも大きく設定されている。
【0041】
ところで、電動負圧ポンプ2は、図4及び図5に示すように円柱状を成しており、その上部外周に形成されたフランジ部2Aの相対向する2箇所からは取付ブラケット2aが径方向外方に向かって水平に延びており、各取付ブラケット2aにはゴムマウント28がそれぞれ挿通固着されている。
【0042】
而して、電動負圧ポンプ2は、これを垂直に起立させた状態で、その下半部をブラケット8の切欠き8aと揺動規制部8Dに上方から通し、2つのゴムマウント28をブラケット8の上壁8Aに載置することによってブラケット8によって垂直に支持される。この状態では電動負圧ポンプ2の上半部はブラケット8の上壁8Aから垂直上方へと突出しており、下半部はブラケット8の下端部に形成された六角枠状の揺動規制部8Dによってその周囲が囲まれている。尚、図4に示すように、ブラケット8の揺動規制部8Dには複数の揺動防止マウント29(図4には1つのみ図示)が取り付けられており、各揺動防止マウント29は電動負圧ポンプ2の下半部の外周との間に所定の隙間を確保した状態で電動負圧ポンプ2の下半部の外周と対向し、電動負圧ポンプ2の下半部に当接することによって該電動負圧ポンプ2の揺動を抑制する機能を果たす。
【0043】
上述のように電動負圧ポンプ2に取り付けられた2つのゴムマウント28をブラケット8の上壁8A上に載置することによって電動負圧ポンプ2がブラケット8の上壁8Aによって垂直に吊り下げ支持されると、各ゴムマウント28の不図示の金属製カラーをブラケット8の上壁8Aに形成された円孔27に合わせ、金属製カラーに上方から挿通するボルト30をブラケット8の円孔27に通し、その端部をブラケット8の上壁8Aの下面に溶接された不図示のナットにねじ込むことによって、電動負圧ポンプ2がゴムマウント28を介してブラケット8に縦置き状態で取り付けられる。
【0044】
そして、電動負圧ポンプ2が取り付けられたブラケット8は、図4〜図6に示すように、そのステー8Bの先端に形成された切欠き25にゴムブッシュ31を嵌め込み、このゴムブッシュ31に水平に挿通するボルト32をフロントサイドメンバ15の内面(車両中央側の縦壁面)の裏側に溶接されたナット33に締め付けることによって1点がフロントサイドメンバ15の内面に取り付けられる。又、ブラケット8のステー8Cの水平面はフロントクロスメンバ16の下面を構成する水平面に下方から当てられ、これの両端に形成された切欠き26に下方からそれぞれ挿通するボルト34をフロントクロスメンバ16の水平面に溶接されたナット35(図4参照)にねじ込むことによって、ブラケット8は2点がフロントクロスメンバ16に取り付けられている。従って、電動負圧ポンプ2は、2つのゴムマウント28を介してブラケット87に取り付けられ、ブラケット8はフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に取り付けられている。
【0045】
ところで、図4及び図5に示すように、ブラケット8には電動負圧ポンプ2への駆動電源を供給するハーネス36が引き回されて配索されており、該ハーネス36の端部に結着されたカプラ37はブラケット8のステー8Bの端部に取り付けられている。ここで、図5に示すように、ブラケット8のフロントサイドメンバ15への取り付けに際してボルト32を締め付けるための工具のスペースを確保するため、ハーネス36はボルト32を迂回してU字状に折り曲げられて配索されている。
【0046】
又、電動負圧ポンプ2の中間高さ位置には不図示の排気口が下方に向かって開口しており、この排気口には排気ホース38が接続されている。ここで、排気ホース38の配置構造を図9及び図10に基づいて以下に説明する。
【0047】
図9は排気ホースの配置構造を示す電動負圧ポンプの斜視図、図10は図9の矢視C方向の図であって、排気ホース38は、電動負圧ポンプ2に開口する排気口から下方に延びた後に折り曲げられて電動負圧ポンプ2の下半部外周に沿って斜め上方へと立ち上がり、その後は垂直に起立した後に略直角に折り曲げられて水平に延びた後、電動負圧ポンプ2の頂部よりも上方へと垂直に立ち上がっている。そして、垂直に立ち上がった排気ホース38は、再び略直角に折り曲げられて水平に延び、その端部が略直角下方に折り曲げられ、その先端は電動負圧ポンプ2に向かって開口している。従って、この排気ホース38の先端からは排気が下方に向かって排出され、この排出される排気は電動負圧ポンプ2に吹き付けられる。
【0048】
そして、図2に示すように、排気ホース38の垂直に起立する部分は、電動負圧ポンプ2の配管接続部(吸気口)21に接続された負圧配管4の排気ホース(吸気ホース)4aの垂直に立ち上がる部分にクランプ39によって固定保持(クランプ)されている。
【0049】
次に、前記負圧タンク3の取付構造の詳細を図11〜図15に基づいて以下に説明する。
【0050】
図11は負圧タンクの取付構造を示す正面図、図12は第1のブラケットの平面図、図13は図12のD−D線断面図、図14は同第1のブラケットを裏面側から見た斜視図、図15は第2のブラケットの斜視図である。
【0051】
前述のように負圧タンク3は、車体フロアの車両左右方向中央で上方に膨出状態に形成されたフロアトンネル17内にその長手方向を車両の前後方向に沿って配置される。そして、負圧タンク3は図11に示すように2分割された第1及び第2のブラケット9,20を介してフロアトンネル17の上面に取り付けられている。
【0052】
上記第1のブラケット9は、負圧タンク3の上面に取り付けられる矩形の板金部材であって、図12〜図14に示すように、幅方向中央部が上方に隆起した断面ハット状に成形されており、上方に隆起した中央部分の2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所であって、負圧タンク3の長手方向に沿った2箇所)には円孔40が形成されている。そして、第1のブラケット9の中央部分の裏面の各円孔40の周りには、図14に示すようにナット41が溶接されている。又、第1のブラケット9の左右のフランジ9aの各2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所)には円孔42がそれぞれ形成されている。つまり、第1のブラケット9は、その略矩形形状の4隅が負圧タンク3に固定されている。
【0053】
又、第2のブラケット20は、フロアトンネル17の上面部の下面に取り付けられる板金部材であって、これは図15に示すように階段状に屈曲成形されており、その上段側の取付面20Aの端部2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所)には円孔43が形成されている。又、この第2のブラケット20の下段側の取付面20Bの2箇所にはボルト挿通孔44が形成されており、これらのボルト挿通孔44には、取付状態において車両右側方(上段側の取付面20Aが配置される側と異なる側)に向かって開く切欠き44aがそれぞれ形成されている。
【0054】
而して、第1のブラケット9は、図11に示すようにフランジ9aを負圧タンク3の上面に立設されたブロック状の複数の取付座45の上面に当て、各フランジ9aの2箇所にそれぞれ形成された円孔42に上方から挿通するネジ46を取付座45にねじ込むことによって負圧タンク3の上面に取り付けられる。
【0055】
他方、第2のブラケット20の下段側の取付面20Bの2箇所に形成されたボルト挿通孔44にはゴムブッシュ47がそれぞれ嵌め込まれており、第2のブラケット20は、その下段側の取付面20Bを第1のブラケット9の上方に隆起する中央部分に当て、各ゴムブッシュ47に上方から挿通するボルト48を第1のブラケット9の裏面に溶接されたナット41にねじ込むことによってゴムブッシュ47を介して第1のブラケット9に取り付けられる。つまり、第1のブラケット9は、その略矩形形状の4隅が負圧タンク3に固定され、その中央部分が第2のブラケット20に取り付けられる。そして、ゴムブッシュ47の下方に負圧タンク3の重心が配置されており、取付状態の安定化が図られている。
【0056】
而して、上述のように第1及び第2のブラケット9,20が取り付けられた負圧タンク3は、図11に示すように、フロアトンネル17の上面部から下方に向けて突設された2本のスタッドボルト49(図11には1本のみ図示)に第2のブラケット20の上段側の取付面20Aに形成された円孔43を通した状態で、第2のブラケット20の上段側の取付面20Aをフロアトンネル17の上面部に下方から当て、各スタッドボルト49にそれぞれ螺合するナット50を締め付けることによって、負圧タンク3が第1及び第2のブラケット9,20とゴムブッシュ47を介してフロアトンネル17の上面部に取り付けられる。図11に示したように、2本のスタッドボルト49は車両の左右方向で負圧タンク3の左側側方に配置され、下方から見たときに負圧タンク3の側方にスタッドボルト49を現出させ、負圧タンク3の取付作業空間を確保して、下方からの締付作業を容易としている。
【0057】
而して、以上の取付構造によって車体に取り付けられた電動負圧ポンプ2と負圧タンク3を含む負圧供給装置においては、不図示の負圧センサによって検出されるブースタ1内の負圧が不足すると電動負圧ポンプ2が駆動され、この電動負圧ポンプ2によって発生する負圧は負圧配管4を経て負圧タンク3に蓄えられる。
【0058】
そして、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、ブースタ1によって運転者の踏力が倍力されてマスタシリンダ7に伝達されるため、運転者の肉体的負担が軽減される。尚、ブースタ1で負圧が消費されると、負圧タンク3に蓄えられている負圧が負圧配管5を経てブースタ1へと供給される。このため、負圧タンク3の負圧が不足すると、電動負圧ポンプ2が駆動されて負圧タンク3に負圧が補充される。
【0059】
以上において、本発明に係る負圧タンク3の配置構造によれば、電気自動車において配置される部品が少ないフロアトンネル17内のデッドスペースを利用して比較的大きな負圧タンク3でも合理的に配置することができる。そして、フロアトンネル17内は車両の衝突による車体の変形の影響を受けにくい場所であるため、ダッシュパネル14の前方の長さが短い車両であっても、車体の変形の支障とならず、更に、フロアトンネル17内に配置される負圧タンク3の損傷を防ぐことができ、ブースタ1への負圧の安定した供給が可能となってブレーキ装置に対する信頼性が高められる。
【0060】
又、負圧タンク3をフロアトンネル17内に前後方向に沿って配置したため、その容量を容易に確保することができ、比較的大きな負圧タンク3を設定することができ、ブレーキ使用時のブースタ1への負圧の安定した供給が可能となって運転者のブレーキ操作時の踏力が軽減される。
【0061】
更に、本実施の形態では、負圧タンク3の前端部に配管接続部18,19を配置したため、ダッシュパネル14に沿って配索された負圧配管4,5と負圧タンク3との接続が容易となり、配管作業性が高められる。この場合、配管接続部18,19をフロアトンネル17の前端縁から車両前方に突出させたため、負圧配管4,5のフロアトンネル17内への引き込みが不要となり、組付作業性が向上するとともに、略L字状に形成されている可撓性ホース5a及び可撓性ホース4bのダッシュパネル14に沿った部分から屈曲して配管接続部18,19に延びる部分の長さを短くすることが可能となって、屈曲形状部分の振動が抑制されてクランプ等が廃止でき、負圧配管4,5のレイアウトが容易となる。そして、本実施の形態では、配管接続部18,19のうち、電動負圧ポンプ2に接続されるポンプ側配管接続部18をブースタ1に接続されるブースタ側配管接続部19よりも上方に配置したため、負圧タン3ク内に残留する水や異物の電動負圧ポンプ2側への吸引が抑制され、電動負圧ポンプ2の耐久性と信頼性が高められる。又、フロアトンネル17の前端部上面は上方に屈曲し、前方に向かって上向きに傾斜しながらダッシュパネル14に接続されており、この上向きに傾斜する上面に沿って負圧タンク3を比較的高い位置に配置することができるため、該負圧タンク3の飛石等による損傷を抑制することができる。
【0062】
又、本実施の形態では、負圧タンク3を第1及び第2のブラケット9,20を介して剛性の高いフロアトンネル17の上面部に容易に固定することができる。ここで、負圧タンク3をフロアトンネル17の固定するためのブラケットとして2分割された第1及び第2のブラケット9,20を使用したため、負圧タンク3をコンパクトなスペースであるフロアトンネル17内に安定して配置することができるとともに、負圧タンク3の車両搭載性と組付性が高められる。又、負圧タンク3は防振材であるゴムブッシュ47を介してフロアトンネル17に固定されるため、電動負圧ポンプ2から負圧配管4を経て負圧タンク3に伝達された振動がゴムブッシュ47によって吸収されて車室への伝播が遮断され、車室内の静粛性が高められるとともに、車両の走行に伴う負圧タンク3自体の振動に対して、応力の集中を回避してブラケットの耐久性と信頼性を向上させることができる。
【0063】
更に、本実施の形態では、第2のブラケット20に設けられたボルト挿通孔44に切欠き44aを形成したため、車両衝突時に負圧タンク3の固定が外れてフリーとなり、該負圧タンク3とこれに接続された負圧配管4,5が車体の変形を阻害することがなく、又、これらの負圧タンク3と負圧配管4,5が車体の変形の影響を受けることがない。
【0064】
尚、以上は本発明を駆動源として電動モータを使用する電気自動車に設けられる負圧供給装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、駆動源としてエンジンと電動モータを併用するハイブリッド車に設けられる負圧供給装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 ブースタ
2 電動負圧ポンプ
3 負圧タンク
4,5 負圧配管
9 第1のブラケット
17 フロアトンネル
18,19 配管接続部
20 第2のブラケット
44 ボルト挿通孔
44a ボルト挿通孔の切欠き
47 ゴムブッシュ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ操作力をアシストするブースタに供給する負圧を蓄えておくための負圧タンクの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエンジンを駆動源として走行するガソリン車等においては、運転者によるブレーキペダルの踏力をアシストするブースタの駆動源としてエンジンの吸気負圧が使用されている。
【0003】
ところが、駆動源として電動モータを使用する電気自動車にはエンジンが搭載されていないため、ブースタの駆動源としてエンジンの吸気負圧を使用することができない。このため、電気自動車には負圧を発生する電動負圧ポンプや負圧を蓄えておく負圧タンク等によって構成される負圧供給装置が設けられ、この負圧供給装置によってブースタに負圧が供給されるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−329701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電気自動車に設けられる負圧供給装置においては、負圧タンクの配置は車両衝突時の影響や負圧配管の接続作業性等を考慮してなされる必要がある。例えば、比較的大きな負圧タンクを車体のダッシュパネルの前方付近に配置した場合には、特にダッシュパネル前方の長さが短い車両にあっては、車両衝突時に負圧タンクがバンパによって押されて後退してダッシュパネルを押し、車室に影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、負圧タンクを車両衝突時の損傷を防ぎつつデッドスペースを利用して合理的に配置することができるとともに、該負圧タンクへの負圧配管の接続作業性を高めることができる車両の負圧タンク配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタと、該ブースタに負圧を供給する電動負圧ポンプと、該電動負圧ポンプで発生した負圧を蓄える負圧タンクを備えた車両の前記負圧タンクの配置構造として、前記負圧タンクを車両のフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記負圧タンクの前端部に配管接続部を配置し、該配管接続部を前記フロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記配管接続部のうち、前記電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部を前記ブースタに接続されるブースタ側配管接続部をよりも上方に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記負圧タンクをブラケットを介して前記フロアトンネルの上面部に固定したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記ブラケットを前記負圧タンクに固定される第1のブラケットと前記フロアトンネル側に固定される第2のブラケットとで構成し、両者をゴムブッシュを介して結合したことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記第1又は第2ブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、電気自動車等において配置される部品が少ないフロアトンネル内のデッドスペースを利用して負圧タンクを合理的に配置することができる。又、フロアトンネル内は車両の衝突による車体の変形の影響を受けにくい場所であるため、ダッシュパネルの前方の長さが短い車両であっても、フロアトンネル内に配置される負圧タンクの損傷を防ぐことができ、ブースタへの負圧の安定した供給が可能となってブレーキ装置に対する信頼性が高められる。
【0014】
更に、負圧タンクをフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したため、その容量を容易に確保することができ、ブレーキ使用時のブースタへの負圧の安定した供給が可能となって運転者のブレーキ操作時の踏力が軽減される。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、負圧タンクの前端部に配管接続部を配置したため、ダッシュパネルに沿って配索された負圧配管と負圧タンクとの接続が容易となり、配管作業性が高められる。又、配管接続部をフロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたため、負圧配管のフロアトンネル内への引き込みが不要となり、配管のレイアウトが容易となる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、配管接続部のうち、電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部をブースタに接続されるブースタ側配管接続部よりも上方に配置したため、負圧タンク内に残留する水や異物の電動負圧ポンプ側への吸引が抑制され、電動負圧ポンプの耐久性と信頼性が高められる。又、フロアトンネルの前端部上面は上方に屈曲し、前方に向かって上向きに傾斜しながらダッシュパネルに接続されており、この上向きに傾斜する上面に沿って負圧タンクを比較的高い位置に配置することができるため、該負圧タンクの飛石等による損傷を抑制することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、負圧タンクをブラケットを介して剛性の高いフロアトンネルの上面部に容易に固定することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、負圧タンクをフロアトンネルに固定するためのブラケットを2分割したため、負圧タンクをコンパクトなスペースであるフロアトンネル内に配置することができるとともに、負圧タンクの車両搭載性と組付性が高められる。又、負圧タンクは防振材であるゴムブッシュを介してフロアトンネルに固定されるため、電動負圧ポンプから負圧配管を経て負圧タンクに伝達された振動がゴムブッシュによって吸収されて車室への伝播が遮断され、車室内の静粛性が高められる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、第1又は第2のブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したため、車両衝突時の変形が負圧タンクや負圧配管及びフロアトンネルにまで及んだ場合に負圧タンクの固定が外れてフリーとなり、該負圧タンクとこれに接続された負圧配管が車体の変形を阻害することがなく、又、これらの負圧タンクと負圧配管が車体の変形の影響を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の負圧供給装置の基本構成を示す分解斜視図である。
【図2】車両の負圧供給装置の配置構造を示す車体前部を左前上方から見た破断斜視図である。
【図3】車両の負圧供給装置の配置構造を示す車体前部の部分正面面である。
【図4】電動負圧ポンプの取付状態を示す部分斜視図である。
【図5】電動負圧ポンプの取付状態を示す部分側面図(図4の矢視A方向の図)である。
【図6】図4のB部拡大詳細図である。
【図7】ブラケットのフロントクロスメンバへの固定構造を示す底面図である。
【図8】ブラケットの斜視図である。
【図9】排気ホースの配置構造を示す電動負圧ポンプの斜視図である。
【図10】図9の矢視C方向の図である。
【図11】負圧タンクの取付構造を示す正面図である。
【図12】第1のブラケットの平面図である。
【図13】図12のD−D線断面図である。
【図14】第1のブラケットを裏面側から見た斜視図である。
【図15】第2のブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の負圧供給装置の基本構成を示す分解斜視図であって、図示の負圧供給装置は、電気自動車の不図示のブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を負圧を利用して倍力するブースタ1と、該ブースタ1に負圧を供給する電動負圧ポンプ2と、該電動負圧ポンプ2で発生した負圧を蓄える負圧タンク3を備えている。そして、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3とは負圧配管4によって互いに連通しており、負圧タンク3とブースタ1とは負圧配管5によって互いに連通している。
【0023】
上記ブースタ1の中央部に突出するロッド6の端部には不図示のブレーキ装置のブレーキアームが連結されており、該ブレーキアームの下端に設けられたブレーキペダルを運転者が踏み込むと、ロッド6が押されてマスタシリンダ7にブレーキ油圧が発生するが、運転者の踏力は大気圧と負圧との差圧を利用して発生する力を駆動源として作動するブースタ1によって倍力されるために運転者の肉体的負担が軽減される。
【0024】
前記電動負圧ポンプ2は、これに一体に設けられた不図示の電動モータによって駆動されて負圧を発生するものであって、後述のようにブラケット8を介して車体前部の左右方向右側部に取り付けられる。又、前記負圧タンク3は、円筒容器状のタンクであって、その上面にはプレート状の第1のブラケット9が取り付けられている。
【0025】
電動負圧ポンプ2と負圧タンク3とを連通させる前記負圧配管4は、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3にそれぞれ接続される可撓性ホース4a,4bと、これらの可撓性ホース4a,4b同士を接続する金属パイプ4cによって構成されている。ここで、可撓性ホース4aにはフィルタ10が接続されている。又、金属パイプ4cの中間には車体(ダッシュパネル14)への取り付けに使用される取付ブラケット11が挿通固着されている。
【0026】
又、負圧タンク3とブースタ1とを連通させる前記負圧配管5は、負圧タンク3とブースタ1にそれぞれ接続される可撓性ホース5a,5bと、これらの可撓性ホース5a,5b同士を接続する金属パイプ5cによって構成されている。ここで、金属パイプ5cの一端には車体への取付用の取付ブラケット12が結着されており、中間部にはグロメット13が挿通している。
【0027】
次に、以上のように構成された負圧供給装置の車体への配置構造を図2及び図3に基づいて説明する。
【0028】
図2は本発明に係る負圧供給装置の配置構造を示す車体前部を左前上方から見た破断斜視図、図3は同車体前部の部分正面面であり、図2に示すように、ブースタ1は、車両右側部のダッシュパネル14よりも後方の車室内に配置されており、電動負圧ポンプ2は、車体前部であって車両左右方向においてブースタ1が設けられた側と同側である右側部に配置されている。具体的には、電動負圧ポンプ2は、右側のフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16との接合箇所の内角部に配置され、前記ブラケット8によってフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に固定されている。尚、電動負圧ポンプ2の取付構造の詳細は後述する。
【0029】
又、前記負圧タンク3は、車両の左右方向中央に前後方向に沿って形成されたフロアトンネル17内にその長手方向(円筒容器の軸方向)を前後方向に沿って配置されている。そして、図1に示すように、負圧タンク3の前端面には上下2本のパイプ状の配管接続部18,19がフロアトンネル17の前端縁から車両前方へと突出している。ここで、上下2本の配管接続部18,19のうち、一方の配管接続部18は電動負圧ポンプ2に連なる負圧配管4の可撓性ホース4bが接続されるポンプ側配管接続部であり、他方の配管接続部19はブースタ1に連なる負圧配管5の可撓性ホース5aが接続されるブースタ側接続部であるが、図示のようにポンプ側配管接続部18はブースタ側配管接続部19よりも上方に配置されている。
【0030】
而して、負圧タンク3は、図3に示すように前記第1のブラケット9とこれに結合された第2のブラケット20によってフロアトンネル17の上面部の下面に取り付けられるが、その取付構造の詳細は後述する。
【0031】
ところで、前記負圧配管4においては、ダッシュパネル14に沿って配索される部分が金属パイプ4cで構成され、電動負圧ポンプ2と負圧タンク3に接続される部分(金属パイプ4cの両側部分)が可撓性ホース4a,4bによって構成されている。ここで、図1に示すように、電動負圧ポンプ2の中間高さ位置には不図示の吸気口に連なるパイプ状の配管接続部21が突設されており、この配管接続部21には負圧配管4の可撓性ホース(吸気ホース)4aの一端が差し込まれて固定されている。
【0032】
而して、負圧配管4の可撓性ホース4aは、電動負圧ポンプ2の側部から車両中央側に向かって水平に延びた後、垂直上方に立ち上がり、その後は右側方に向かって略直角に折り曲げられ、ダッシュパネル14に向かって斜め上方へと延びている。ここで、図3に示すように、フィルタ10よりも負圧タンク3側となる可撓性ホース4aの途中には、空気の負圧タンク3側への逆流を阻止するチェックバルブ22が設けられている。
【0033】
又、可撓性ホース4aに連なる金属パイプ4cは、ダッシュパネル14の前面に沿って配索され、その一部は取付ブラケット11及びクランプ24によってダッシュパネル14の前面に固定されている。この金属パイプ4cは、可撓性ホース4aから上方へと立ち上がった後、車幅方向中央のフロアトンネル17内に配置された負圧タンク3に向かって左側方に延び、その端部には略L字形状の可撓性ホース4bが接続されている。そして、可撓性ホース4bの先端は車両後方に向かって略直角に折り曲げられて負圧タンク3の上側の配管接続部18に差し込まれて接続されている。
【0034】
他方の負圧配管5の可撓性ホース5aは、略L字状に形成されて負圧配管4の可撓性ホース4bに沿って配されており、その一端は車両後方に向かって略直角に折り曲げられ、負圧タンク3の下方の配管接続部19に差し込まれて接続されている。そして、可撓性ホース5aに連なる金属パイプ5cはダッシュパネル14の前面に沿って負圧配管4の金属パイプ4cに沿って配されており、その一部はダッシュパネル14に形成された不図示の円孔を貫通してダッシュパネル14の裏側(後面側)の車室内に入り込んでいる。そして、金属パイプ5cの車室内の部分は取付ブラケット12に挿通するネジ23(図1参照)によってダッシュパネル14の裏面(後面)に固定されている。尚、負圧配管5の金属パイプ5cのダッシュパネル14の前面に沿う部分と負圧配管4の金属パイプ4cとはクランプ24によって互いに固定されるとともにダッシュパネル14の前面に固定されている。又、ダッシュパネル14に形成された不図示の円孔と金属パイプ5cとの間の隙間は、グロメット13によってシールされて、車室内への埃や音の侵入を防止している。
【0035】
上記金属パイプ5cの車室内の端部に連なる可撓性ホース5bは、車室内に配置されたブースタ1に向かって立ち上がり、その端部はブースタ1に接続されている。
【0036】
次に、電動負圧ポンプ2の取付構造の詳細を図4〜図8に基づいて以下に説明する。
【0037】
図4は電動負圧ポンプの取付状態を示す部分斜視図、図5は同部分側面図(図4の矢視A方向の図)、図6は図4のB部拡大詳細図、図7はブラケットのフロントクロスメンバへの固定構造を示す底面図、図8はブラケットの斜視図である。
【0038】
図4に示すように、電動負圧ポンプ2は、右側のフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16との接合箇所の内角部に垂直に起立した状態で配置され、ブラケット8によってフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に固定されているが、この電動負圧ポンプ2を固定するブラケット8の構成を図8に基づいて説明する。
【0039】
上記ブラケット8は、板金のプレス成形品であって、その水平な上壁8Aには半円状の切欠き8aが形成され、上壁8Aからはステー8Bが垂直に起立するとともに、L字状に屈曲されたステー8Cが下方に向けて形成されている。ここで、両ステー8B,8Cは互いに直交しており、一方のステー8Bはフロントサイドメンバ15への取付面を構成し、その端部には車両前方向(当該ブラケット8の取付状態において車両前方向)に開いた切欠き25が形成されている。又、他方のステー8Cの水平な面はフロントクロスメンバ16への取付面を構成しており、この取付面の両側(車両左右方向両側)には互いに向き合う切欠き26が形成されている。更に、上壁8Aの前記切欠き8aを挟んで向かい合う2箇所には円孔27が形成されており、上壁8Aの下面の各円孔27の周囲には不図示のナットが溶接されている。
【0040】
又、ブラケット8の上壁8Aからは平面視六角形を成す揺動規制部8Dが下方に延びており、この揺動規制部8Dは、上壁8Aに形成された切欠き8aの下方に該切欠き8aと同心的に形成されている。尚、揺動規制部8Dの内接円直径と切欠き8aの内径は何れも電動負圧ポンプ2の下半部の外径よりも大きく設定されている。
【0041】
ところで、電動負圧ポンプ2は、図4及び図5に示すように円柱状を成しており、その上部外周に形成されたフランジ部2Aの相対向する2箇所からは取付ブラケット2aが径方向外方に向かって水平に延びており、各取付ブラケット2aにはゴムマウント28がそれぞれ挿通固着されている。
【0042】
而して、電動負圧ポンプ2は、これを垂直に起立させた状態で、その下半部をブラケット8の切欠き8aと揺動規制部8Dに上方から通し、2つのゴムマウント28をブラケット8の上壁8Aに載置することによってブラケット8によって垂直に支持される。この状態では電動負圧ポンプ2の上半部はブラケット8の上壁8Aから垂直上方へと突出しており、下半部はブラケット8の下端部に形成された六角枠状の揺動規制部8Dによってその周囲が囲まれている。尚、図4に示すように、ブラケット8の揺動規制部8Dには複数の揺動防止マウント29(図4には1つのみ図示)が取り付けられており、各揺動防止マウント29は電動負圧ポンプ2の下半部の外周との間に所定の隙間を確保した状態で電動負圧ポンプ2の下半部の外周と対向し、電動負圧ポンプ2の下半部に当接することによって該電動負圧ポンプ2の揺動を抑制する機能を果たす。
【0043】
上述のように電動負圧ポンプ2に取り付けられた2つのゴムマウント28をブラケット8の上壁8A上に載置することによって電動負圧ポンプ2がブラケット8の上壁8Aによって垂直に吊り下げ支持されると、各ゴムマウント28の不図示の金属製カラーをブラケット8の上壁8Aに形成された円孔27に合わせ、金属製カラーに上方から挿通するボルト30をブラケット8の円孔27に通し、その端部をブラケット8の上壁8Aの下面に溶接された不図示のナットにねじ込むことによって、電動負圧ポンプ2がゴムマウント28を介してブラケット8に縦置き状態で取り付けられる。
【0044】
そして、電動負圧ポンプ2が取り付けられたブラケット8は、図4〜図6に示すように、そのステー8Bの先端に形成された切欠き25にゴムブッシュ31を嵌め込み、このゴムブッシュ31に水平に挿通するボルト32をフロントサイドメンバ15の内面(車両中央側の縦壁面)の裏側に溶接されたナット33に締め付けることによって1点がフロントサイドメンバ15の内面に取り付けられる。又、ブラケット8のステー8Cの水平面はフロントクロスメンバ16の下面を構成する水平面に下方から当てられ、これの両端に形成された切欠き26に下方からそれぞれ挿通するボルト34をフロントクロスメンバ16の水平面に溶接されたナット35(図4参照)にねじ込むことによって、ブラケット8は2点がフロントクロスメンバ16に取り付けられている。従って、電動負圧ポンプ2は、2つのゴムマウント28を介してブラケット87に取り付けられ、ブラケット8はフロントサイドメンバ15とフロントクロスメンバ16に取り付けられている。
【0045】
ところで、図4及び図5に示すように、ブラケット8には電動負圧ポンプ2への駆動電源を供給するハーネス36が引き回されて配索されており、該ハーネス36の端部に結着されたカプラ37はブラケット8のステー8Bの端部に取り付けられている。ここで、図5に示すように、ブラケット8のフロントサイドメンバ15への取り付けに際してボルト32を締め付けるための工具のスペースを確保するため、ハーネス36はボルト32を迂回してU字状に折り曲げられて配索されている。
【0046】
又、電動負圧ポンプ2の中間高さ位置には不図示の排気口が下方に向かって開口しており、この排気口には排気ホース38が接続されている。ここで、排気ホース38の配置構造を図9及び図10に基づいて以下に説明する。
【0047】
図9は排気ホースの配置構造を示す電動負圧ポンプの斜視図、図10は図9の矢視C方向の図であって、排気ホース38は、電動負圧ポンプ2に開口する排気口から下方に延びた後に折り曲げられて電動負圧ポンプ2の下半部外周に沿って斜め上方へと立ち上がり、その後は垂直に起立した後に略直角に折り曲げられて水平に延びた後、電動負圧ポンプ2の頂部よりも上方へと垂直に立ち上がっている。そして、垂直に立ち上がった排気ホース38は、再び略直角に折り曲げられて水平に延び、その端部が略直角下方に折り曲げられ、その先端は電動負圧ポンプ2に向かって開口している。従って、この排気ホース38の先端からは排気が下方に向かって排出され、この排出される排気は電動負圧ポンプ2に吹き付けられる。
【0048】
そして、図2に示すように、排気ホース38の垂直に起立する部分は、電動負圧ポンプ2の配管接続部(吸気口)21に接続された負圧配管4の排気ホース(吸気ホース)4aの垂直に立ち上がる部分にクランプ39によって固定保持(クランプ)されている。
【0049】
次に、前記負圧タンク3の取付構造の詳細を図11〜図15に基づいて以下に説明する。
【0050】
図11は負圧タンクの取付構造を示す正面図、図12は第1のブラケットの平面図、図13は図12のD−D線断面図、図14は同第1のブラケットを裏面側から見た斜視図、図15は第2のブラケットの斜視図である。
【0051】
前述のように負圧タンク3は、車体フロアの車両左右方向中央で上方に膨出状態に形成されたフロアトンネル17内にその長手方向を車両の前後方向に沿って配置される。そして、負圧タンク3は図11に示すように2分割された第1及び第2のブラケット9,20を介してフロアトンネル17の上面に取り付けられている。
【0052】
上記第1のブラケット9は、負圧タンク3の上面に取り付けられる矩形の板金部材であって、図12〜図14に示すように、幅方向中央部が上方に隆起した断面ハット状に成形されており、上方に隆起した中央部分の2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所であって、負圧タンク3の長手方向に沿った2箇所)には円孔40が形成されている。そして、第1のブラケット9の中央部分の裏面の各円孔40の周りには、図14に示すようにナット41が溶接されている。又、第1のブラケット9の左右のフランジ9aの各2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所)には円孔42がそれぞれ形成されている。つまり、第1のブラケット9は、その略矩形形状の4隅が負圧タンク3に固定されている。
【0053】
又、第2のブラケット20は、フロアトンネル17の上面部の下面に取り付けられる板金部材であって、これは図15に示すように階段状に屈曲成形されており、その上段側の取付面20Aの端部2箇所(取付状態において車両前後方向に離間した2箇所)には円孔43が形成されている。又、この第2のブラケット20の下段側の取付面20Bの2箇所にはボルト挿通孔44が形成されており、これらのボルト挿通孔44には、取付状態において車両右側方(上段側の取付面20Aが配置される側と異なる側)に向かって開く切欠き44aがそれぞれ形成されている。
【0054】
而して、第1のブラケット9は、図11に示すようにフランジ9aを負圧タンク3の上面に立設されたブロック状の複数の取付座45の上面に当て、各フランジ9aの2箇所にそれぞれ形成された円孔42に上方から挿通するネジ46を取付座45にねじ込むことによって負圧タンク3の上面に取り付けられる。
【0055】
他方、第2のブラケット20の下段側の取付面20Bの2箇所に形成されたボルト挿通孔44にはゴムブッシュ47がそれぞれ嵌め込まれており、第2のブラケット20は、その下段側の取付面20Bを第1のブラケット9の上方に隆起する中央部分に当て、各ゴムブッシュ47に上方から挿通するボルト48を第1のブラケット9の裏面に溶接されたナット41にねじ込むことによってゴムブッシュ47を介して第1のブラケット9に取り付けられる。つまり、第1のブラケット9は、その略矩形形状の4隅が負圧タンク3に固定され、その中央部分が第2のブラケット20に取り付けられる。そして、ゴムブッシュ47の下方に負圧タンク3の重心が配置されており、取付状態の安定化が図られている。
【0056】
而して、上述のように第1及び第2のブラケット9,20が取り付けられた負圧タンク3は、図11に示すように、フロアトンネル17の上面部から下方に向けて突設された2本のスタッドボルト49(図11には1本のみ図示)に第2のブラケット20の上段側の取付面20Aに形成された円孔43を通した状態で、第2のブラケット20の上段側の取付面20Aをフロアトンネル17の上面部に下方から当て、各スタッドボルト49にそれぞれ螺合するナット50を締め付けることによって、負圧タンク3が第1及び第2のブラケット9,20とゴムブッシュ47を介してフロアトンネル17の上面部に取り付けられる。図11に示したように、2本のスタッドボルト49は車両の左右方向で負圧タンク3の左側側方に配置され、下方から見たときに負圧タンク3の側方にスタッドボルト49を現出させ、負圧タンク3の取付作業空間を確保して、下方からの締付作業を容易としている。
【0057】
而して、以上の取付構造によって車体に取り付けられた電動負圧ポンプ2と負圧タンク3を含む負圧供給装置においては、不図示の負圧センサによって検出されるブースタ1内の負圧が不足すると電動負圧ポンプ2が駆動され、この電動負圧ポンプ2によって発生する負圧は負圧配管4を経て負圧タンク3に蓄えられる。
【0058】
そして、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、ブースタ1によって運転者の踏力が倍力されてマスタシリンダ7に伝達されるため、運転者の肉体的負担が軽減される。尚、ブースタ1で負圧が消費されると、負圧タンク3に蓄えられている負圧が負圧配管5を経てブースタ1へと供給される。このため、負圧タンク3の負圧が不足すると、電動負圧ポンプ2が駆動されて負圧タンク3に負圧が補充される。
【0059】
以上において、本発明に係る負圧タンク3の配置構造によれば、電気自動車において配置される部品が少ないフロアトンネル17内のデッドスペースを利用して比較的大きな負圧タンク3でも合理的に配置することができる。そして、フロアトンネル17内は車両の衝突による車体の変形の影響を受けにくい場所であるため、ダッシュパネル14の前方の長さが短い車両であっても、車体の変形の支障とならず、更に、フロアトンネル17内に配置される負圧タンク3の損傷を防ぐことができ、ブースタ1への負圧の安定した供給が可能となってブレーキ装置に対する信頼性が高められる。
【0060】
又、負圧タンク3をフロアトンネル17内に前後方向に沿って配置したため、その容量を容易に確保することができ、比較的大きな負圧タンク3を設定することができ、ブレーキ使用時のブースタ1への負圧の安定した供給が可能となって運転者のブレーキ操作時の踏力が軽減される。
【0061】
更に、本実施の形態では、負圧タンク3の前端部に配管接続部18,19を配置したため、ダッシュパネル14に沿って配索された負圧配管4,5と負圧タンク3との接続が容易となり、配管作業性が高められる。この場合、配管接続部18,19をフロアトンネル17の前端縁から車両前方に突出させたため、負圧配管4,5のフロアトンネル17内への引き込みが不要となり、組付作業性が向上するとともに、略L字状に形成されている可撓性ホース5a及び可撓性ホース4bのダッシュパネル14に沿った部分から屈曲して配管接続部18,19に延びる部分の長さを短くすることが可能となって、屈曲形状部分の振動が抑制されてクランプ等が廃止でき、負圧配管4,5のレイアウトが容易となる。そして、本実施の形態では、配管接続部18,19のうち、電動負圧ポンプ2に接続されるポンプ側配管接続部18をブースタ1に接続されるブースタ側配管接続部19よりも上方に配置したため、負圧タン3ク内に残留する水や異物の電動負圧ポンプ2側への吸引が抑制され、電動負圧ポンプ2の耐久性と信頼性が高められる。又、フロアトンネル17の前端部上面は上方に屈曲し、前方に向かって上向きに傾斜しながらダッシュパネル14に接続されており、この上向きに傾斜する上面に沿って負圧タンク3を比較的高い位置に配置することができるため、該負圧タンク3の飛石等による損傷を抑制することができる。
【0062】
又、本実施の形態では、負圧タンク3を第1及び第2のブラケット9,20を介して剛性の高いフロアトンネル17の上面部に容易に固定することができる。ここで、負圧タンク3をフロアトンネル17の固定するためのブラケットとして2分割された第1及び第2のブラケット9,20を使用したため、負圧タンク3をコンパクトなスペースであるフロアトンネル17内に安定して配置することができるとともに、負圧タンク3の車両搭載性と組付性が高められる。又、負圧タンク3は防振材であるゴムブッシュ47を介してフロアトンネル17に固定されるため、電動負圧ポンプ2から負圧配管4を経て負圧タンク3に伝達された振動がゴムブッシュ47によって吸収されて車室への伝播が遮断され、車室内の静粛性が高められるとともに、車両の走行に伴う負圧タンク3自体の振動に対して、応力の集中を回避してブラケットの耐久性と信頼性を向上させることができる。
【0063】
更に、本実施の形態では、第2のブラケット20に設けられたボルト挿通孔44に切欠き44aを形成したため、車両衝突時に負圧タンク3の固定が外れてフリーとなり、該負圧タンク3とこれに接続された負圧配管4,5が車体の変形を阻害することがなく、又、これらの負圧タンク3と負圧配管4,5が車体の変形の影響を受けることがない。
【0064】
尚、以上は本発明を駆動源として電動モータを使用する電気自動車に設けられる負圧供給装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、駆動源としてエンジンと電動モータを併用するハイブリッド車に設けられる負圧供給装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 ブースタ
2 電動負圧ポンプ
3 負圧タンク
4,5 負圧配管
9 第1のブラケット
17 フロアトンネル
18,19 配管接続部
20 第2のブラケット
44 ボルト挿通孔
44a ボルト挿通孔の切欠き
47 ゴムブッシュ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタと、該ブースタに負圧を供給する電動負圧ポンプと、該電動負圧ポンプで発生した負圧を蓄える負圧タンクを備えた車両の前記負圧タンクの配置構造であって、
前記負圧タンクを車両のフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したことを特徴とする車両の負圧タンク配置構造。
【請求項2】
前記負圧タンクの前端部に配管接続部を配置し、該配管接続部を前記フロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたことを特徴とする請求項1記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項3】
前記配管接続部のうち、前記電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部を前記ブースタに接続されるブースタ側配管接続部をよりも上方に配置したことを特徴とする請求2記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項4】
前記負圧タンクをブラケットを介して前記フロアトンネルの上面に固定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項5】
前記ブラケットを前記負圧タンクに固定される第1のブラケットと前記フロアトンネル側に固定される第2のブラケットとで構成し、両者をゴムブッシュを介して結合したことを特徴とする請求項4記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項6】
前記第1又は第2ブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したことを特徴とする請求項5記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項1】
ブレーキペダルに加えられる運転者の踏力を倍力するブースタと、該ブースタに負圧を供給する電動負圧ポンプと、該電動負圧ポンプで発生した負圧を蓄える負圧タンクを備えた車両の前記負圧タンクの配置構造であって、
前記負圧タンクを車両のフロアトンネル内に前後方向に沿って配置したことを特徴とする車両の負圧タンク配置構造。
【請求項2】
前記負圧タンクの前端部に配管接続部を配置し、該配管接続部を前記フロアトンネルの前端縁から車両前方に突出させたことを特徴とする請求項1記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項3】
前記配管接続部のうち、前記電動負圧ポンプに接続されるポンプ側配管接続部を前記ブースタに接続されるブースタ側配管接続部をよりも上方に配置したことを特徴とする請求2記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項4】
前記負圧タンクをブラケットを介して前記フロアトンネルの上面に固定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項5】
前記ブラケットを前記負圧タンクに固定される第1のブラケットと前記フロアトンネル側に固定される第2のブラケットとで構成し、両者をゴムブッシュを介して結合したことを特徴とする請求項4記載の車両の負圧タンク配置構造。
【請求項6】
前記第1又は第2ブラケットにそれぞれ設けられたボルト挿通孔の一方に切欠きを形成したことを特徴とする請求項5記載の車両の負圧タンク配置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−166698(P2012−166698A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29591(P2011−29591)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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