説明

車両の走行安全装置

【課題】カーブの走行時に適切な速度制御を行う。
【解決手段】検出された車両状態と適正車両状態とを比較する比較部63による比較結果において自車両の車両状態が適正車両状態にないときに、自車両に設けられたブレーキアクチュエータ15を作動させるブレーキ制御部44と、カーブ認識部61により認識されたカーブの走行時における車両状態をカーブに対応させて記憶するカーブ通過車両状態記憶部66とを備え、適正車速設定部62は、カーブに対応させて記憶された車両状態に基づき、適正車速を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両等の移動体が走行する際の速度履歴を道路位置に対応させて蓄積するナビゲーションシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、例えば連続カーブの走行時に、カーブの走行初期での速度履歴とカーブの構成部位とに基づいて運転特性を作成し、同等形状のカーブを走行する際に運転特性に応じた速度制御を行う速度制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−207348号公報
【特許文献2】特開2005−202579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係るナビゲーションシステムにおいては、速度履歴を道路位置に対応させて蓄積するだけであるから、未走行のカーブに対して速度履歴のデータを有効利用した適切な速度制御を行うことは困難であり、速度制御の信頼性を向上させるためには、道路位置に対応した膨大な速度履歴のデータが必要になるという問題が生じる。
また、上記従来技術に係る速度制御装置においては、峠道等のように連続カーブを構成する複数のカーブの形状がほぼ同等であると仮定していることから、互いに形状の異なるカーブが連続する場合には、適切な速度制御を行うことが困難になる虞がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、カーブの走行時に適切な速度制御を行うことが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置は、道路データを記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部23)と、自車両の位置を検出する自車位置検出手段(例えば、実施の形態での現在位置検出部21)と、自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段(例えば、実施の形態でのジャイロセンサ32および車速センサ33およびアクセル開度センサ51およびブレーキペダルセンサ52およびスロットル開度センサ53および加速度センサ54および車輪速センサ55)と、前記道路データに基づいて自車両の進行方向に存在するカーブを認識するカーブ認識手段(例えば、実施の形態でのカーブ認識部61)と、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段(例えば、実施の形態での適正車速設定部62)と、前記車両状態検出手段により検出された前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段により設定された前記適正車両状態とを比較する比較手段(例えば、実施の形態での比較部63)と、前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置(例えば、実施の形態でのブレーキアクチュエータ15)を作動させる作動手段(例えば、実施の形態でのブレーキ制御部44)とを備える車両の走行安全装置であって、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブの走行時における前記車両状態を前記カーブに対応させて記憶するカーブ通過車両状態記憶手段(例えば、実施の形態でのカーブ通過車両状態記憶部66)を備え、前記適正車両状態設定手段は、前記カーブに対応させて記憶された前記車両状態に基づき、前記適正車両状態を設定することを特徴としている。
【0005】
上記の車両の走行安全装置によれば、認識されたカーブの走行時に検出された車両状態をカーブに対応させて記憶しておき、記憶された車両状態に基づいてカーブ走行時の適正車両状態を設定することにより、カーブに対して安全装置を適切に作動させることができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置は、自車両の速度に対する目標車速を設定する目標車速設定手段(例えば、実施の形態での目標車速設定部57)と、自車両の速度が前記目標車速と等しくなるように制御すると共に、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブと自車両の位置との間の距離が所定値以下の場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて制御を行う道路形状対応走行制御手段(例えば、実施の形態での速度制御部41)とを備え、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路形状対応走行制御手段の作動状態毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0007】
上記の車両の走行安全装置によれば、道路形状対応走行制御手段の作動状態毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶することから、カーブに対する安全装置の作動に対して運転者が違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路データおよび前記自車両の位置に基づいて道路上での自車両の進行方向を検知し、前記進行方向毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0009】
上記の車両の走行安全装置によれば、進行方向毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶することから、例えば自車両の進行方向に応じて走行路の勾配が異なる場合であっても、適切に安全装置を作動させることができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の走行安全装置では、路面状態を検知する路面状態検知手段(例えば、実施の形態での車輪速センサ55)を備え、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記路面状態毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0011】
上記の車両の走行安全装置によれば、走行路の路面状態毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶することから、適切に安全装置を作動させることができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の走行安全装置は、自車両周辺の照度を検知する照度検出手段(例えば、実施の形態での周囲光センサ56)を備え、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記自車両周辺の照度に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0013】
上記の車両の走行安全装置によれば、周囲の光毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶することから、昼夜に関わりなく適切に安全装置を作動させることができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行安全装置は、自車両周辺の雨滴を検知する雨滴検出手段(例えば、実施の形態での雨滴センサ)を備え、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記雨滴検出手段により前記雨滴が検出されたか否か毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0015】
上記の車両の走行安全装置によれば、雨滴の有無毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶することから、天候に関わりなく適切に安全装置を作動させることができる。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の走行安全装置は、前記道路データおよび前記自車両の位置に基づいて、自車両が道路上を走行しているか否かを判定する道路上走行判定手段(例えば、実施の形態でのナビゲーション処理部22)を備え、前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路上走行判定手段により自車両が前記カーブ認識手段により認識された前記カーブを実際に走行したと判定された場合に、前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴としている。
【0017】
上記の車両の走行安全装置によれば、実際に走行したカーブに対して学習を行うことができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記車両状態は通過速度であり、前記適正車両状態は適正通過速度であることを特徴としている。
【0019】
上記の車両の走行安全装置によれば、適正通過速度に応じて適切に安全装置を作動させることができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記適正車両状態設定手段は、前記カーブ対応して記憶された前記通過速度のうち最高速度および平均速度および最低速度のうちの何れかに基づいて前記適正通過速度を設定することを特徴としている。
【0021】
上記の車両の走行安全装置によれば、適正通過速度に応じて適切に安全装置を作動させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の車両の走行安全装置によれば、認識されたカーブの走行時に検出された車両状態をカーブに対応させて記憶しておき、記憶された車両状態に基づいてカーブ走行時の適正車両状態を設定することにより、カーブに対して安全装置を適切に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば、内燃機関11の駆動力を、オートマチックトランスミッション(AT)あるいは無段自動変速機(CVT)等のトランスミッション(T/M)12を介して車両の駆動輪に伝達する車両に搭載され、ナビゲーション装置13と、制御装置14と、ブレーキアクチュエータ15および警報装置(図示略)を具備する安全装置(図示略)とを備えて構成されている。
【0025】
ナビゲーション装置13は、例えば現在位置検出部21と、ナビゲーション処理部22と、地図データ記憶部23と、入力部24と、表示部25とを備えて構成されている。
さらに、現在位置検出部21は、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号や、例えば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(Differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部31と、水平面内での自車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(例えば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸回りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(例えば、ヨーレート等)を検出するジャイロセンサ32と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ33とを備えて構成され、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。
【0026】
地図データ記憶部23は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部23は、例えば表示部25において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路データを格納している。
【0027】
ナビゲーション処理部22は、例えば、地図データ記憶部23から取得される道路データに対して、現在位置検出部21における測位信号および自律航法の算出処理のそれぞれ、又は、何れかから得られる車両の現在位置の情報に基づいてマップマッチングを行い、位置検出の結果を補正すると共に、検出された車両の現在位置、あるいは、各種スイッチやキーボード等からなる入力部24を介して操作者により入力された適宜の車両の位置に対して、表示部25での地図表示を制御する。
また、ナビゲーション処理部22は、例えば車両の経路探索や経路誘導等の処理を実行し、地図データ記憶部23から取得される道路データと共に、例えば目的地までの経路情報や各種の付加情報を表示部25へ出力する。
【0028】
制御装置14は、速度制御部41と、エンジン制御部42と、変速制御部43と、ブレーキ制御部44とを備えて構成され、運転者によるアクセルペダルの操作量に係るアクセル開度を検出するアクセル開度センサ51と、運転者によるブレーキペダルの操作量を検出するブレーキペダルセンサ52と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ53と、車両の前後加速と横加速度を検出する加速度センサ54と、車両の各車輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサ55と、車両周辺の光を検知する周囲光センサ56とから出力される各検出信号に加えて、後述するクルーズ制御において操作者あるいは外部の制御装置により目標車速設定部57を介して設定される目標車速の信号が入力されている。
【0029】
速度制御部41は、走行路の道路形状および運転者による運転操作に応じた介入制御の実行を可能としつつ、目標車速設定部57から入力される目標車速を維持するようにして、例えばスロットル開度やブレーキ液圧等を制御し、車両を自動的に加速または減速させる速度制御を行う。
例えば図2(a)に示すように、運転者の運転操作によって直接的に速度が変更されるマニュアル走行時においては、進行方向前方のカーブに対して、前回のマニュアル走行時の履歴速度(カーブ履歴速度)が目標速度として設定される。そして、カーブ入口の手前位置において、運転者の運転操作に応じて車両の速度が目標速度以下となる場合(例えば、図2(a)に示す今回のマニュアル走行時のカーブ通過速度A)には、介入制御は実行されないように設定されている。一方、カーブ入口の手前位置において、車両の速度が目標速度よりも大きい場合には、カーブ入口において、少なくとも車両の速度(例えば、図2(a)に示す介入制御による速度B)が目標速度と等しくなるようにして、介入制御による減速が実行される。
【0030】
また、例えば図2(b)に示すように、目標車速設定部57から入力される目標車速を維持するようにして速度が変更されるクルーズ制御時においては、先ず、カーブ入口の手前位置において、例えばアクセルペダルの踏み戻しやブレーキ操作等に応じて運転者の減速意志が検出されると、前回のクルーズ制御時の履歴速度(カーブ履歴速度)が目標速度として設定され、カーブ入口において、少なくとも車両の速度(例えば、図2(b)に示す減速制御による速度C1)が目標速度と等しくなるようにして、介入制御による減速が実行される。さらに、この減速制御の実行時に、例えば運転者による減速操作の実行(例えば、ブレーキペダルの踏み増し等)が検出されると、目標速度がより小さな値に変更され、カーブ入口において、少なくとも車両の速度(例えば、図2(b)に示す減速制御による速度C2)が目標速度と等しくなるようにして、介入制御による減速が実行される。
【0031】
また、速度制御部41は、現在位置検出部21により検出された自車両の現在位置が、例えば地図データ記憶部23に記憶されている道路データに応じた道路上に位置している状態(オンルート状態)であるか否かを判定し、かつカーブ認識部61により認識された認識カーブを自車両が実際に走行したか否かを判定する。
【0032】
例えば図3および図4に示すように、自車両Pの進行方向前方において、道路データに応じた2つの走行路γ,δと、対応する道路データが存在しない2つの未知の走行路α,βとが存在する状態で、現在位置検出部21により検出された自車両Pの現在位置が、認識カーブγ上に位置する場合には、オンルート状態かつ認識カーブ走行状態であると判定される。
また、図3および図4において、現在位置検出部21により検出された自車両Pの現在位置が、認識カーブγとは異なる、道路データに応じた走行路δ上に位置する場合には、オンルート状態かつ認識カーブ非走行状態であると判定される。
また、図3および図4において、自車位置検出部12により検出された自車両Pの現在位置が、対応する道路データが存在しない未知の走行路α,β上に位置する場合には、オフルート状態かつ認識カーブ非走行状態であると判定される。
【0033】
さらに、速度制御部41は、カーブ認識部61と、適正車速設定部62と、比較部63と、作動部64と、カーブ通過車両状態記憶部66とを備えて構成されている。
【0034】
カーブ認識部61は、地図データ記憶部23に記憶された道路データを取得し、この道路データに基づいて自車両の進行方向の道路形状として道路上に存在するカーブを検出する。
例えばカーブ認識部61は、道路データの基礎となるノードつまり道路形状を把握するための点と、リンクつまり各ノードを結ぶ線とに基づいて、カーブの形状を認識する。そして、例えばカーブの径や曲率および極性、カーブの長さ(カーブの深さ)、カーブの通過に要する旋回角等からなるカーブ形状値を算出し、適正車速設定部62へ出力する。
【0035】
適正車速設定部62は、カーブ認識部61にて認識されたカーブ形状値に基づいて、このカーブを適正に通過可能な車両の速度(適正速度VS)を算出する。そして、適正車速設定部62は設定した適正速度VSのデータを比較部63へ出力する。
ここで、適正車速設定部62は、カーブ通過時に車両の横方向に発生する加速度(横加速度)を算出する横加速度算出部62aを備えている。すなわち、先ず、横加速度算出部62aは、カーブ認識部61にて認識されたカーブの形状に基づいて、このカーブを適正に通過する際に許容される横加速度を算出する。次に、適正車速設定部62は、この横加速度を車両に発生させる車両の速度を算出し、この速度を適正速度VSとして設定する。
なお、カーブ通過時に自車両に許容される横加速度は、路面状況、タイヤの状況、積載の状態等により変化するため、これらを更に考慮して適正速度を設定するようにしてもよい。
【0036】
比較部63は、現在位置検出部21の車速センサ33にて検出した車両の速度(現在速度)VPと、適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとを比較して、この比較結果を作動部64へ出力する。
作動部64は、比較部63での比較結果に基づいてエンジン制御部42および変速制御部43およびブレーキ制御部44の作動を制御する。例えば、比較部63での比較結果において、車速センサ33にて検出した現在速度VPと適正車速設定部62にて設定した適正速度VSとが異なる場合、例えば検出された車両の現在速度VPが適正速度VSよりも高い状態等のように車両が適正車両状態にない場合には、警報装置を作動させて運転者の注意を喚起したり、ブレーキ制御部44を介してブレーキアクチュエータ15を作動させて自動的に車両を減速させる。
【0037】
カーブ通過車両状態記憶部66は、カーブ認識部61により認識されたカーブの走行時における車両状態、例えば車速等をカーブに対応させて記憶する。
例えば、カーブ通過車両状態記憶部66は、マニュアル走行時あるいはクルーズ制御時毎に対応して認識カーブの走行時における車両状態を記憶する。
また、例えばカーブ通過車両状態記憶部66は、道路データおよび自車両の現在位置に基づいて道路上での自車両の進行方向を検知し、この進行方向毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶する。
また、例えばカーブ通過車両状態記憶部66は、車輪速センサ55の出力に基づき、例えば走行路の路面の摩擦係数等の路面状態を検知し、この路面状態毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶する。
また、例えばカーブ通過車両状態記憶部66は、周囲光センサ56の出力に基づき、自車両周辺の光毎に対応してカーブの走行時における車両状態を記憶する。
また、例えばカーブ通過車両状態記憶部66は、雨滴センサ(図示略)の出力に基づき、雨滴が検出されたか否か毎に対応して、カーブの走行時における車両状態を記憶する。
また、例えばカーブ通過車両状態記憶部66は、自車両がカーブ認識部61により認識されたカーブを実際に走行した(オンルート状態)と判定された場合に、このカーブの走行時における車両状態を記憶する。
【0038】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作、特に、学習処理について添付図面を参照しながら説明する。
【0039】
先ず、図5に示すステップS01においては、走行路の道路形状に応じた介入制御の実行を可能としたクルーズ制御の実行中であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS14に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS02に進む。
そして、ステップS02においては、マニュアル走行時であると判断する。
そして、ステップS03においては、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて、進行方向前方に存在するカーブを認識したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS04に進む。
【0040】
次に、ステップS04においては、認識したカーブに対してカーブ履歴速度が記憶されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、このステップS05においては、認識したカーブ(認識カーブ)の形状から、この認識カーブを適正に通過するための目標車速を算出し、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進み、このステップS06においては、マニュアル走行時のカーブ履歴速度を目標速度として取得する。
そして、ステップS07においては、自車両がカーブに進入したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS08に進む。
【0041】
そして、ステップS08においては、カーブ通過時の速度(カーブ通過速度)を検出する。
そして、ステップS09においては、自車両がカーブ出口を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS08に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS10に進む。
【0042】
そして、ステップS10においては、自車両の現在位置が、地図データ記憶部23に格納された道路データに応じた道路上に位置している状態(オンルート状態)であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS11に進む。
そして、ステップS11においては、例えばカーブ通過時の平均速度や、カーブ通過時の最大横加速度に対応する速度や、カーブ進入時の速度や、カーブ通過時の最低速度等の何れかを算出し、カーブ通過学習速度として設定する。
【0043】
そして、ステップS12においては、カーブ履歴速度がカーブ通過学習速度よりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進む
そして、ステップS13においては、カーブ通過学習速度によりカーブ履歴速度を修正あるいは追加し、一連の処理を終了する。
このステップS13では、マニュアル走行時においては、カーブ通過学習速度によってカーブ履歴速度を更新したり、カーブ通過学習速度を含む所定数のカーブ履歴速度のうちの最高速度によってカーブ履歴速度を更新したり、カーブ通過学習速と所定数のカーブ履歴速度との平均値によってカーブ履歴速度を更新してもよい。
【0044】
一方、ステップS01における判定結果が「YES」の場合にはステップS14に進み、地図データ記憶部23に格納された道路データに基づいて、進行方向前方に存在するカーブを認識したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS15に進む。
【0045】
次に、ステップS15においては、認識したカーブに対してカーブ履歴速度が記憶されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS16に進み、このステップS16においては、認識したカーブ(認識カーブ)の形状から、この認識カーブを適正に通過するための目標車速を算出し、ステップS18に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS17に進み、このステップS17においては、クルーズ制御時のカーブ履歴速度を目標速度として取得する。
そして、ステップS18においては、自車両がカーブに進入したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS19に進む。
【0046】
そして、ステップS19においては、カーブ通過時の速度(カーブ通過速度)を検出する。
そして、ステップS20においては、自車両がカーブ出口を通過したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS19に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS20に進む。
【0047】
そして、ステップS21においては、自車両の現在位置が、地図データ記憶部23に格納された道路データに応じた道路上に位置している状態(オンルート状態)であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS22に進む。
そして、ステップS22においては、例えばカーブ通過時の平均速度や、カーブ通過時の最大横加速度に対応する速度や、カーブ進入時の速度や、カーブ通過時の最低速度等の何れかを算出し、カーブ通過学習速度として設定する。
【0048】
そして、ステップS23においては、カーブ履歴速度とカーブ通過学習速度とが相違するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進む
そして、ステップS24においては、カーブ通過学習速度によりカーブ履歴速度を修正あるいは追加し、一連の処理を終了する。
このステップS24では、クルーズ制御の実行時においては、カーブ通過学習速度によってカーブ履歴速度を更新したり、カーブ通過学習速と所定数のカーブ履歴速度との平均値によってカーブ履歴速度を更新してもよい。
【0049】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、認識されたカーブの走行時に検出された車両状態をカーブに対応させて記憶しておき、記憶された車両状態に基づいてカーブ走行時の適正車両状態を設定することにより、カーブに対して適切な減速を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2(a),(b)はマニュアル走行時およびクルーズ制御時での車両の速度の時間変化の一例を示す図である。
【図3】各走行路と自車両の位置との一例を示す図である。
【図4】各走行路からの逸脱量と、各走行路上の位置との一例を示す図である。
【図5】図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 車両の走行安全装置
15 ブレーキアクチュエータ(安全装置)
21 現在位置検出部(自車位置検出手段)
23 地図データ記憶部(記憶手段)
32 ジャイロセンサ(車両状態検出手段)
33 車速センサ(車両状態検出手段)
44 ブレーキ制御部(作動手段)
51 アクセル開度センサ(車両状態検出手段)
52 ブレーキペダルセンサ(車両状態検出手段)
53 スロットル開度センサ(車両状態検出手段)
54 加速度センサ(車両状態検出手段)
55 車輪速センサ(車両状態検出手段)
61 カーブ認識部(カーブ認識手段)
62 適正車速設定部(適正車両状態設定手段)
63 比較部(比較手段)
66 カーブ通過車両状態記憶部(カーブ通過車両状態記憶手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路データを記憶する記憶手段と、
自車両の位置を検出する自車位置検出手段と、
自車両の車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記道路データに基づいて自車両の進行方向に存在するカーブを認識するカーブ認識手段と、
前記カーブ認識手段により認識された前記カーブを適正に通過可能な適正車両状態を設定する適正車両状態設定手段と、
前記車両状態検出手段により検出された前記車両状態と、前記適正車両状態設定手段により設定された前記適正車両状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果において前記自車両の車両状態が前記適正車両状態にないときに、自車両に設けられた安全装置を作動させる作動手段とを備える車両の走行安全装置であって、
前記カーブ認識手段により認識された前記カーブの走行時における前記車両状態を前記カーブに対応させて記憶するカーブ通過車両状態記憶手段を備え、
前記適正車両状態設定手段は、前記カーブに対応させて記憶された前記車両状態に基づき、前記適正車両状態を設定することを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
自車両の速度に対する目標車速を設定する目標車速設定手段と、
自車両の速度が前記目標車速と等しくなるように制御すると共に、前記カーブ認識手段により認識された前記カーブと自車両の位置との間の距離が所定値以下の場合に、前記比較手段による比較結果に基づいて制御を行う道路形状対応走行制御手段とを備え、
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路形状対応走行制御手段の作動状態毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路データおよび前記自車両の位置に基づいて道路上での自車両の進行方向を検知し、前記進行方向毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の走行安全装置。
【請求項4】
路面状態を検知する路面状態検知手段を備え、
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記路面状態毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項5】
自車両周辺の照度を検知する照度検出手段を備え、
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記自車両周辺の照度に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項6】
自車両周辺の雨滴を検知する雨滴検出手段を備え、
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記雨滴検出手段により前記雨滴が検出されたか否か毎に対応して前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項7】
前記道路データおよび前記自車両の位置に基づいて、自車両が道路上を走行しているか否かを判定する道路上走行判定手段を備え、
前記カーブ通過車両状態記憶手段は、前記道路上走行判定手段により自車両が前記カーブ認識手段により認識された前記カーブを実際に走行したと判定された場合に、前記カーブの走行時における前記車両状態を記憶することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項8】
前記車両状態は通過速度であり、前記適正車両状態は適正通過速度であることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1つに記載の車両の走行安全装置。
【請求項9】
前記適正車両状態設定手段は、前記カーブ対応して記憶された前記通過速度のうち最高速度および平均速度および最低速度のうちの何れかに基づいて前記適正通過速度を設定することを特徴とする請求項8に記載の車両の走行安全装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−59432(P2008−59432A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237531(P2006−237531)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】