説明

車両の走行支援装置及び車両の走行支援方法

【課題】降車している運転手が車両を押し歩きする場合に、該押し歩きを支援することができる車両の走行支援装置及び車両の走行支援方法を提供する。
【解決手段】自動二輪車両の制御装置は、自動二輪車両の停車中に運転手が降車していると判定された第1のタイミングt1後に、該判定結果が維持された状態で自動二輪車両の移動開始が検知された場合(第3のタイミングt3)、車載のエンジンのエンジン回転数NEに基づく駆動力を駆動輪に伝達させる支援制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降車した運転手が自動二輪車両を押し歩く際の支援制御を行う車両の走行支援装置及び走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の走行支援装置として、例えば特許文献1に記載の走行支援装置が提案されている。この走行支援装置を搭載する自動二輪車両には、そのシートに運転手が着座していることを検知するためのシートセンサが設けられている。そして、走行支援装置では、シートセンサからの検知信号に基づき運転手がシートに着座していないことを検知した場合に、運転手が降車したと判断され、制御モードが通常制御モードから押し歩き制御モードに切り替えられる。
【0003】
なお、「通常制御モード」とは、運転手がシートに着座する際において該運転手によるアクセルスロットの操作量に基づいた駆動力を動力源から発生させ、車両を進行方向前側に走行させる制御モードである。また、「押し歩き制御モード」とは、運転手が自動二輪車両を押し歩く際に、出力が設定値範囲内に制限された状態で動力源を駆動させる制御モードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−51853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートセンサを用いて運転手が降車したか否かを判断する方法では、運転手の臀部がシートから離れたタイミングで運転手が降車したと判断される。そして、運転手が降車したと判断されると、制御モードが押し歩き制御モードに設定される。
【0006】
そのため、運転手の降車途中で自動二輪車両が傾いた不安定な状態で、運転手が降車したと判断され、制御モードが押し歩き制御モードに設定される。また、運転手が立ち乗りする場合にも、運転手の臀部がシートから離れたことにより、運転手が降車したと誤判断され、制御モードが押し歩き制御モードに設定される。すなわち、運転手が自動二輪車両を未だ押し歩きしていない場合や押し歩く意志がない場合でも、制御モードが押し歩き制御モードに設定されるおそれがある。こうした場合、自動二輪車両は、運転手が意図しない挙動を示すおそれがある。
【0007】
また、上記走行支援装置では、スタンド(「センタースタンド」ともいう。)によって後輪を路面から浮かした状態で自動二輪車両が駐車される場合であっても、運転手の臀部がシートから離間していると、制御モードが押し歩き制御モードに設定される。この場合、押し歩き制御モードに設定されているために、路面から離間している後輪が、動力源から伝達される駆動力によって回転するおそれがある。こうした後輪の回転は、運転手の意図に反する回転であって運転手に不快感を与えるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、降車している運転手が車両を押し歩きする場合に、該押し歩きを支援することができる車両の走行支援装置及び車両の走行支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、降車している運転手による車両(11)の押し歩きを支援するための車両の運転支援装置であって、運転手が降車しているか否かを判定する降車判定手段(50、S11−6)と、車両(11)の進行方向に沿った移動を検知する移動検知手段(50、S11−8)と、車両(11)の停車中に前記降車判定手段(50、S11−6)によって運転手が降車していると判定された後に、該判定結果が維持された状態で前記移動検知手段(50、S11−8)によって車両(11)の移動開始が検知された場合に、車載の動力源(13)で発生した駆動力を駆動輪(RW)に伝達させる支援制御を行う支援制御手段(50、S16〜S24)と、を備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、車両の停車中に運転手が降車中であると判定され、該判定結果が維持された状態で車両の進行方向に沿った移動開始が検知された場合には、運転手に車両を押し歩く意志が有ると判断される。そして、支援制御が開始されると、運転手による車両の押し歩きが好適に支援される。一方、運転手が降車しただけでは支援制御が行われない。つまり、運転手に車両の押し歩く意志がないと判断される場合には、支援制御が行われない。したがって、降車している運転手が車両を押し歩きする場合に、該押し歩きを支援することができる。
【0011】
本発明の車両の走行支援装置において、前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、前記支援制御の開始条件の成立時において、前記動力源(13)からの駆動力の発生態様を調整すべく操作される駆動操作部(12)が操作されるときに、車両(11)の車体速度に相当する速度相当値(VWR,VS,NE)が、運転手による車両(11)の押し歩きの支援用として設定された基準速度相当値(VWt1,VWth2,VSth)以下となるように前記支援制御を行うことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、運転手に車両を押し歩く意志が有ると判断された場合には、運転手によって駆動操作部が操作されると、支援制御が行われる。しかも、支援制御時においては、速度相当値が基準速度相当値以下に抑えられるため、運転手による駆動操作部の操作によって、車両の速度が高速になり過ぎることが抑制される。そのため、動力源からの駆動力を利用する運転手による車両の押し歩きを、安全を確保した状態で支援することができる。
【0013】
本発明の車両の走行支援装置において、前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、前記支援制御時において、速度相当値(VWR,VS,NE)が前記基準速度相当値(VWt1,VWth2,VSth)未満であるときには、前記駆動操作部(12)の操作量(AC)が多い場合には少ない場合よりも車両(11)を高速で移動させるべく前記動力源(13)を制御することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、速度相当値が基準速度相当値未満である場合には、運転手による駆動操作部の操作態様に基づき車体速度が調整される。そのため、安全性を確保しつつ、運転手の意図に沿った速度で車両が移動するように運転手による車両の押し歩きを支援することができる。
【0015】
本発明の車両の走行支援装置において、前記支援制御は、前記動力源(13)からの駆動力が伝達される駆動輪(RW)に伝達される駆動力と、前記駆動輪(RW)及び前記動力源(13)からの駆動力が伝達されない従動輪(FW)の少なくとも一方に対する制動力と、を調整する制御であることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、駆動輪及び従動輪のうち少なくとも一方に制動力を自動的に付与するための制動装置が車両に搭載される場合には、動力源だけではなく制動装置も制御することにより、運転手による車両の押し歩きが支援される。そのため、動力源の制御だけの支援制御と比較して、支援制御に伴う車体速度相当値を精密に制御することができる。
【0017】
本発明の車両の走行支援装置は、障害物(100)を車両(11)が乗り越えたか否かを判定する乗越え判定手段(50、S23)をさらに備え、前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、前記支援制御中において、前記乗越え判定手段(50、S23)によって車両(11)が障害物(100)を乗り越えたと判定された場合には、前記駆動輪(RW)の車輪速度(VWR)を減速させるための減速制御を行うことが好ましい。
【0018】
車両が障害物を乗り越える際には、障害物がない場合と比較して大きな駆動力を必要とする。そのため、車両が障害物を乗り越えると、大きな駆動力によって、運転手の意図に反した車両の加速が発生するおそれがある。そこで、本発明では、車両が障害物を乗り越えた場合には、減速制御によって駆動輪の車輪速度が減速される。そのため、障害物の乗り越え後における車両の不必要な加速の発生を抑制することができる。
【0019】
本発明の車両の走行支援装置は、車両(11)の姿勢が不安定であること、又は不安定となる傾向を検知する不安定検知手段(50、S11−1,S11−3)をさらに備え、前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、前記不安定検知手段(50、S11−1,S11−3)によって車両(11)の姿勢が不安定であること、又は不安定となる傾向が検知された場合には、車両を停車させること、及び前記駆動輪(RW)への動力伝達を規制することのうち少なくとも一つを実行することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、車両の姿勢が不安定であること、又は不安定となる傾向が検知された場合には、車両を停車させること、及び動力源からの駆動力の発生を禁止することのうち少なくとも一つが実行される。すなわち、車両の姿勢の安定性が確保できない、又は確保できなくなるおそれがある場合には、動力源の駆動を伴う支援制御が行われない。そして、支援制御が行われない間に、運転手は、車両の姿勢を安定化させることができる。
【0021】
本発明の車両の走行支援装置は、車両の左右方向における傾斜角(θ)を取得する傾斜角取得手段(50、S11−2)をさらに備え、前記不安定検知手段(50、S11−3)は、前記傾斜角取得手段(50、S11−2)によって取得された傾斜角(θ)の絶対値が、車両(11)の姿勢が安定か否かの判断基準として設定された基準角度(θth)を超える場合に、車両(11)の姿勢が不安定であることを検知することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、車両が左右方向に傾斜している場合には、車両の姿勢が不安定であると判断される。
本発明の車両の走行支援装置において、前記不安定検知手段(50、S11−1)は、車両(11)のハンドルバー(22F,22R)を運転手が両手で操作していない場合に、車両(11)の姿勢が不安定となる傾向であることを検知することが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ハンドルバーが両手で操作されていない場合には、車両の姿勢が不安定になる可能性があると判断される。
本発明は、降車している運転手による車両(11)の押し歩きを支援する支援制御を実行させるための車両の運転支援方法であって、車両の停車中に、運転手が降車しているか否かを判定させる降車判定ステップ(S11−6)と、車両(11)の停車中に前記降車判定ステップ(S11−6)で運転手が降車していると判定した後に、該判定結果が維持された状態で車両(11)の進行方向に沿った移動開始を検知させる移動開始検知ステップ(S11−8)と、車両(11)の移動開始を検知した場合に、車載の動力源(13)で発生する駆動力を用いた前記支援制御の実行を許可する支援許可ステップ(S11−9)と、を有することを要旨とする。
【0024】
上記構成によれば、上記車両の走行支援装置と同等の作用・効果を得ることができる。
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の走行支援装置を備える自動二輪車両の一実施形態を説明するブロック図。
【図2】制動装置の構成を示す構成図。
【図3】押し歩き支援処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図4】支援必要情報取得処理ルーチンを説明するフローチャート。
【図5】支援制御時におけるアクセル開度、シートセンサから出力される検出信号、自動二輪車両の車体速度及びエンジン回転数の変化を説明するタイミングチャート。
【図6】自動二輪車両を模式的に示す正面図。
【図7】運転手による自動二輪車両の押し歩きが障害物によって妨げられる様子を模式的に説明する側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の走行支援装置を備えた自動二輪車両を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
【0027】
図1に示すように、自動二輪車両11は、前側に配置される従動輪FWと、該従動輪FWの後方に配置される駆動輪RWとを備えている。また、自動二輪車両11の図示しない本体フレームは、運転手による駆動操作部の一例としてのアクセルスロットル12の操作量に基づいた駆動力を発生させる動力源の一例としてのエンジン13を支持している。このエンジン13で発生した駆動力は、変速装置14を介して駆動輪RWに伝達される。
【0028】
また、自動二輪車両11には、車輪FW,RWに制動力を付与するための制動装置20が設けられている。本実施形態の制動装置20は、車輪FW,RW毎に設けられたホイールシリンダ21F,21R内にホイールシリンダ圧を発生させ、該ホイールシリンダ圧に応じた制動力を車輪FW,RWに付与する構成となっている。こうした制動装置20は、図1及び図2に示すように、運転手の右手で操作するハンドルバー22Fの手前に配置される第1ブレーキレバー23Fの操作量に応じたマスタシリンダ圧が発生する第1マスタシリンダ24Fを備えている。また、制動装置20は、運転手の左手で操作するハンドルバー22Rの手前に配置される第2ブレーキレバー23Rの操作量に応じたマスタシリンダ圧が発生する第2マスタシリンダ24Rを備えている。
【0029】
さらに、制動装置20には、マスタシリンダ24F,24Rに接続される2系統の液圧回路31F,31Rを有するブレーキアクチュエータ30が設けられている。これら各液圧回路31F,31Rのうち、第1液圧回路31Fには、第1マスタシリンダ24Fと、従動輪FW用のホイールシリンダ21Fとが接続されている。また、第2液圧回路31Rには、第2マスタシリンダ24Rと、駆動輪RW用のホイールシリンダ21Rとが接続されている。そして、運転手が第1ブレーキレバー23Fを操作した場合には、その操作量に基づいたブレーキ液が第1マスタシリンダ24Fから第1液圧回路31Fを介してホイールシリンダ21Fに供給される。同様に、運転手が第2ブレーキレバー23Rを操作した場合には、その操作量に基づいたブレーキ液が第2マスタシリンダ24Rから第2液圧回路31Rを介してホイールシリンダ21Rに供給される。その結果、ホイールシリンダ21F,21Rでは、流入したブレーキ液量に応じたホイールシリンダ圧が発生する。
【0030】
図2に示すように、ブレーキアクチュエータ30において、液圧回路31F,31Rとマスタシリンダ24F、24Rとを接続させる連結経路32F,32Rには、マスタシリンダ24F、24R内のマスタシリンダ圧とホイールシリンダ21F,21R内のホイールシリンダ圧との間で差圧を発生させるべく作動する常開型のリニア電磁弁である差圧弁33F,33Rが設けられている。また、液圧回路31F,31Rには、ホイールシリンダ21F,21R内のホイールシリンダ圧の増圧を規制する際に作動する常開型の電磁弁である増圧弁34F,34Rと、ホイールシリンダ圧を減圧させる際に作動する常閉型の電磁弁である減圧弁35F,35Rとが設けられている。
【0031】
また、液圧回路31F,31Rには、ホイールシリンダ21F,21Rから減圧弁35F,35Rを介して流出したブレーキ液を一時貯留するためのリザーバ36F,36Rと、モータ37の回転に基づき作動するポンプ38F,38Rとが接続されている。リザーバ36F,36Rは、吸入用流路39F,39Rを介してポンプ38F,38Rに接続されると共に、マスタ側流路40F,40Rを介して連結経路32F,32Rにおいて差圧弁33F,33Rよりもマスタシリンダ24F,24R側に接続されている。また、ポンプ38F,38Rは、供給用流路41F,41Rを介して液圧回路31F,31Rにおける増圧弁34F,34Rと差圧弁33F,33Rの間の接続部位42F,42Rに接続されている。そして、ポンプ38F,38Rは、モータ37が回転した場合に、リザーバ36F,36R及びマスタシリンダ24F,24R側から吸入用流路39F,39R及びマスタ側流路40F,40Rを介してブレーキ液を吸引し、該ブレーキ液を供給用流路41F,41R内に吐出する。
【0032】
次に、本実施形態の自動二輪車両11を制御する走行支援装置としての制御装置50について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、制御装置50には、運転手によるアクセルスロットル12の操作量、即ちアクセル開度を検出するためのアクセル開度センサSE1、各車輪FW,RWの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE2,SE3、及び自動二輪車両11の前後方向における加速度を検出するための加速度センサSE4が電気的に接続されている。また、制御装置50には、自動二輪車両11のシート51に運転手が着座しているか否かを検知するためのシートセンサSE5、各ハンドルバー22F,22Rを運転手が操作しているか否かを検知するための操作検知センサSE6,SE7、及び自動二輪車両11の左右方向における傾斜角を検出するための角度センサSE8が電気的に接続されている。
【0033】
なお、操作検知センサSE6,SE7としては、例えば、運転手がハンドルバー22F,22Rを操作する際に発生する歪み量を検出するための歪みゲージなどが挙げられる。また、角度センサSE8としては、例えば、被検出対象物のロールオーバーを検出するためのジャイロなどを利用したロール角センサなどが挙げられる。
【0034】
こうした制御装置50には、エンジン13の駆動制御及び変速装置14の変速制御を司るエンジン制御部52と、ブレーキアクチュエータ30の制動制御を司るブレーキ制御部53とを備えている。これら各制御部52,53は、CPU、ROM及びRAMなどを有するデジタルコンピュータを含んで構成されている。こうした各制御部52,53は、図示しないバスなどを介して各種情報及び各種指令の送受信を行っている。
【0035】
ところで、自動二輪車両11では、降車した運転手による押し歩きが行われることがある。この場合、自転車と比較して自動二輪車両11の重量は重いため、運転手は、アクセルスロットル12を少しだけ操作し、エンジン13からの駆動力を利用して自動二輪車両11の押し歩きを行うことがある。
【0036】
そこで次に、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援する際に制御装置50が実行する押し歩き支援処理ルーチンについて、図3及び図4に示すフローチャートと、図5に示すタイミングチャートと、図6及び図7に示す図面とを参照して説明する。
【0037】
さて、押し歩き支援処理ルーチンは、予め設定された所定時間毎(例えば、10ミリ秒毎)に実行される。この押し歩き支援処理ルーチンにおいて、制御装置50は、車輪FW,RW毎に設けられた各車輪速度センサSE2,SE3からの検出信号に基づき自動二輪車両11の車体速度を取得する。そして、制御装置50は、取得した車体速度に基づき、車両が停車中であるか否かを判定する(ステップS10)。本実施形態の車輪速度センサSE2,SE3を用いると、センサの性能による限界によって、検出限界速度(例えば、3km/h)未満である場合には、車体速度の演算精度が極端に低下する。すなわち、実際には自動二輪車両11が動いていても、演算された車体速度が「0(零)km/h」となってしまう。そのため、ステップS10では、取得した車体速度が検出限界速度以下である場合には停車中であると判定され、車体速度が検出限界速度を超える場合には停車中ではないと判定される。
【0038】
そして、自動二輪車両11が停車中ではないと判定した場合(ステップS10:NO)、制御装置50は、押し歩き支援処理ルーチンを一旦終了する。一方、自動二輪車両11が停車中であると判定した場合(ステップS10:YES)、制御装置50は、押し歩きを支援するか否かを判断するために必要な情報を取得する支援必要情報取得処理を行う(ステップS11)。
【0039】
図4のフローチャートに示すように、支援必要情報取得処理ルーチンにおいて、制御装置50は、各操作検知センサSE6,SE7からの検出信号に基づき、ハンドルバー22F,22Rが両手で操作されているか否かを判定する(ステップS11−1)。すなわち、ステップS11−1では、各ハンドルバー22F,22Rが運転手の両手で握られているか否かによって、自動二輪車両11の姿勢が不安定になる可能性があるか否かが判定される。したがって、本実施形態では、制御装置50が、自動二輪車両11の姿勢が不安定となる傾向であることを検知する不安定検知手段としても機能する。
【0040】
そして、各ハンドルバー22F,22Rのうち少なくとも一方が操作されていない場合(ステップS11−1:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS11−4に移行する。一方、各ハンドルバー22F,22Rが共に操作されている場合(ステップS11−1:YES)、制御装置50は、角度センサSE8からの検出信号に基づき、自動二輪車両11の左右方向における傾斜角θ(以下、単に「傾斜角」ともいう。)を取得する(ステップS11−2)。したがって、本実施形態では、制御装置50が、傾斜角取得手段としても機能する。
【0041】
ここで、図6に示すように、自動二輪車両11が路面に対してほぼ垂直に立っている場合、角度センサSE8からの検出信号に基づき演算された傾斜角θは「0°」である。しかし、例えば運転手の降車時などで、自動二輪車両11を傾けた場合などでは、傾斜角θは「0°」とは異なる角度となる。そして、傾斜角θの絶対値が大きくなり過ぎると、自動二輪車両11の姿勢が不安定になる。
【0042】
図4のフローチャートに戻り、制御装置50は、ステップS11−2で取得した傾斜角θの絶対値が予め設定された基準角度θth以下であるか否かを判定する(ステップS11−3)。この基準角度θthは、自動二輪車両11の姿勢が不安定であるか否かの判断基準として設定された角度であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。より具体的には、基準角度θthは、運転手が車体の傾斜の増加(即ち、傾斜角θの絶対値の増加)を抑えきれなくなる力(例えば、10kgf)を規定し、車体のロールによってハンドル位置でのロール方向に発生する力が規定の力を超える角度を予め求め、該角度に基づいた値(例えば、余裕度などを加味した値)に設定される。
【0043】
そして、傾斜角θの絶対値が基準角度θth以下である場合(ステップS11−3:YES)、制御装置50は、自動二輪車両11の姿勢が安定していると判断し、その処理を後述するステップS11−5に移行する。一方、傾斜角θの絶対値が基準角度θthよりも大きい場合(ステップS11−3:NO)、制御装置50は、自動二輪車両11の姿勢が不安定であると判断し、その処理を次のステップS11−4に移行する。したがって、本実施形態では、制御装置50が、自動二輪車両11の傾斜角θの絶対値が基準角度θthを超えたことを契機に、自動二輪車両11の姿勢が不安定であることを検知する不安定検知手段としても機能する。
【0044】
ステップS11−4において、制御装置50は、支援禁止フラグFLG1をオンにセットする。この支援禁止フラグFLG1は、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援するための支援制御の実行を禁止する際に「オン」にセットされるフラグである。その後、制御装置50は、その処理を後述するステップS11−10に移行する。
【0045】
ステップS11−5において、制御装置50は、支援禁止フラグFLG1をオフにセットする。続いて、制御装置50は、シートセンサSE5からの検出信号に基づき、運転手が自動二輪車両11から降車しているか否かを判定する(ステップS11−6)。このステップS11−6では、運転手の臀部がシート51から離間したタイミングで、運転手が降車したと判定される。そのため、例えば、運転手の降車途中、及び運転手が自動二輪車両11を立ち乗りする場合であっても、制御装置50は、運転手が降車していると判定する。したがって、本実施形態では、制御装置50が、運転手が降車しているか否かを判定する降車判定手段としても機能する。また、ステップS11−6が、停車中に運転手が降車しているか否かを判定させる降車判定ステップに相当する。
【0046】
そして、運転手が乗車していると判定された場合(ステップS11−6:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS11−10に移行する。一方、運転手が降車していると判定された場合(ステップS11−6:YES)、制御装置50は、車輪速度センサSE2からの検出信号に基づき、従動輪FWの車輪速度VWFを取得する(ステップS11−7)。
【0047】
続いて、制御装置50は、取得した従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」ではないか否かを判定する(ステップS11−8)。従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」ではないということは、自動二輪車両11が進行方向に沿って移動していることを示している。本実施形態の車輪速度センサを用いた車輪速度の演算では、センサの性能による限界によって、検出限界速度(例えば、3km/h)未満である場合には、演算精度が極端に低下する。すなわち、実際には従動輪FWが動いていても、演算された車輪速度VWFが「0(零)km/h」となってしまう。そのため、ステップS11−8では、取得した車輪速度VWFが検出限界速度以下である場合には車輪速度VWFが「0(零)」と判定される。したがって、本実施形態では、制御装置50が、自動二輪車両11の移動を検知する移動検知手段としても機能する。また、ステップS11−8が、停車中に運転手が降車していると判定した後に、該判定結果を維持した状態で自動二輪車両11の移動開始を検知させる移動開始検知ステップに相当する。
【0048】
そして、車輪速度VWFが「0(零)」ではない場合(ステップS11−8:YES)、制御装置50は、支援許可フラグFLG2をオンにセットし(ステップS11−9)、支援必要情報取得処理ルーチンを終了する。この支援許可フラグFLG2は、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援するための支援制御の実行を許可する際に「オン」にセットされるフラグである。したがって、本実施形態では、ステップS11−9が、自動二輪車両11の移動開始を検知した場合に、支援制御の実行を許可する支援許可ステップに相当する。一方、車輪速度VWFが「0(零)」である場合(ステップS11−8:NO)、制御装置50は、その処理を次のステップS11−10に移行する。
【0049】
ステップS11−10において、制御装置50は、支援許可フラグFLG2をオフにセットする。その後、制御装置50は、支援必要情報取得処理ルーチンを終了する。
図3のフローチャートに戻り、ステップS11の支援必要情報取得処理が終了すると、制御装置50は、支援禁止フラグFLG1がオフであるか否かを判定する(ステップS12)。支援禁止フラグFLG1がオンである場合(ステップS12:NO)、制御装置50は、アクセルキャンセル処理を行う(ステップS13)。具体的には、制御装置50のエンジン制御部52は、運転手によるアクセルスロットル12の操作に関係なく、エンジン13の回転数(以下、「エンジン回転数」ともいう。)を、アクセルスロットル12の操作量が「0(零)」の場合の回転数(即ち、アイドリング時の回転数)にさせる。このとき、制御装置50は、エンジン13からの駆動力が駆動輪RWに伝達されないように変速装置14を制御してもよい。つまり、アクセルキャンセル処理とは、駆動輪RWへの動力伝達を規制するための処理である。
【0050】
続いて、制御装置50のブレーキ制御部53は、各車輪FW,RWの回転駆動が停止されるようにブレーキアクチュエータ30を駆動させる停車処理を行う(ステップS14)。具体的には、ブレーキ制御部53は、差圧弁33F,33R及びモータ37(即ち、ポンプ38F,38R)を作動させ、各ホイールシリンダ21F,21R内のホイールシリンダ圧を増圧させる(図2参照)。その後、制御装置50は、その処理を前述したステップS11に移行する。なお、アクセルキャンセル処理(ステップS13)は、停車処理(ステップS14)の後に行ってもよいし、停車処理(ステップS14)と同時に行ってもよい。
【0051】
その一方で、支援禁止フラグFLG1がオフである場合(ステップS12:YES)、制御装置50は、支援許可フラグFLG2がオンであるか否かを判定する(ステップS15)。支援許可フラグFLG2がオフである場合(ステップS15:NO)、制御装置50は、運転手の自動二輪車両11からの降車、及び自動二輪車両11の移動開始のうち少なくとも一方が未検知であるため、押し歩き支援処理ルーチンを一旦終了する。一方、支援許可フラグFLG2がオンである場合(ステップS15:YES)、制御装置50は、支援制御の実行条件が成立しているため、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援するための支援制御を行う。したがって、本実施形態では、制御装置50が、支援制御手段としても機能する。
【0052】
具体的には、制御装置50は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づき、アクセルスロットル12の操作量であるアクセル開度ACを取得する(ステップS16)。続いて、制御装置50は、取得したアクセル開度ACに所定の補正ゲイン値αを乗算することにより、開度補正値ACH(=AC×α)を取得する(ステップS17)。なお、補正ゲイン値αは、「0(零)」よりも大きく且つ「1」未満の値(例えば、0.3)に設定されている。
【0053】
そして、制御装置50のエンジン制御部52は、エンジン回転数が開度補正値ACHに基づいた回転数となるようにエンジン制御処理を行う(ステップS18)。その結果、エンジン回転数がアクセル開度ACに基づいた回転数となるように通常エンジン制御処理を行う場合と比較して、エンジン回転数が少なくなる分、駆動輪RWに伝達される駆動力が小さくなる。続いて、制御装置50は、車輪速度センサSE3からの検出信号に基づき、駆動輪RWの車輪速度VWRを取得する(ステップS19)。
【0054】
そして、制御装置50は、ステップS19で取得した車輪速度VWRが予め設定された第1基準速度VWth1を超えているか否かを判定する(ステップS20)。この第1基準速度VWth1は、自動二輪車両11の車体速度を、運転手が自動二輪車両11を安全に押し歩ける程度の速度とするために設定された基準値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。駆動輪RWの車輪速度VWRが第1基準速度VWth1以下である場合(ステップS20:NO)、制御装置50は、現時点の自動二輪車両11の車体速度が、運転手が自動二輪車両11を安全に押し歩ける程度の速度であると判断し、その処理を前述したステップS11に移行する。
【0055】
一方、駆動輪RWの車輪速度VWRが第1基準速度VWth1を超えている場合(ステップS20:YES)、制御装置50のエンジン制御部52は、現時点の自動二輪車両11の車体速度が速いと判断し、エンジン出力制限処理を行う(ステップS21)。例えば、エンジン制御部52は、エンジン回転数がこれ以上多くならないようなエンジン制御を行う。つまり、ステップS21では、自動二輪車両11の車体速度に相当する速度相当値の一例としての駆動輪RWの車輪速度VWRが、基準速度相当値の一例としての第1基準速度VWth1以下となるように、エンジン13で発生する駆動力が調整される。
【0056】
ここで、図5のタイミングチャートに示すように、車両の停車中に、シートセンサSE5からの検出信号が「Hi」から「Low」になると、運転手の臀部がシート51から離間したため、運転手が降車したと判断される(第1のタイミングt1)。その後、運転手が両手でハンドルバー22F,22Rで操作する状態で、アクセルスロットル12を操作すると、エンジン回転数NEが大きくなる(第2のタイミングt2)。なお、支援制御が開始される第3のタイミングt3以前では、アクセル開度ACに基づいた上記通常エンジン制御が行われる。
【0057】
こうしてエンジン13からの駆動力が駆動輪RWに伝達されると、自動二輪車両11が前方に移動し始める。そして、従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」よりも大きな値になると、自動二輪車両11の移動開始が検知される(第3のタイミングt3)。この時点では運転手が降車した状態が維持されているため、支援制御が開始される。すると、アクセル開度ACに補正ゲイン値αを乗算した開度補正値ACHに基づいたエンジン制御が開始される。その結果、運転手によるアクセルスロットル12の操作量の増加に伴うエンジン回転数NEの上昇量は、上記通常エンジン制御処理が行われる場合と比較して少なくなる。
【0058】
すると、駆動輪RWの車輪速度VWR、即ち自動二輪車両11の車体速度VSの加速度は、上記通常エンジン制御処理が行われる場合と比較して小さい。すなわち、車体速度VSは、上記検出限界速度よりも大きな基準速度VSthを超えにくい。そして、車体速度VSが基準速度VSthを超えない間においては、アクセル開度ACが大きくなるに連れて、車体速度VSが高速となるようにエンジン制御が行われる。
【0059】
しかし、車体速度VSが基準速度VSthに到達すると、エンジン回転数NEがそれ以上多くならないようにエンジン出力制限処理が行われる(第4のタイミングt4)。その結果、車体速度VSは、基準速度VSth程度で維持される。
【0060】
なお、支援制御は、運転手がアクセルスロットル12を操作していない場合であっても開始される。すなわち、エンジン13からの駆動力を利用しないで運転手が押し歩きを開始し、従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」よりも大きな値となると、支援許可フラグFLG2がオンになる。この状態で運転手がアクセルスロットル12を操作すると、開度補正値ACHに基づいたエンジン制御が行われる。
【0061】
図3のフローチャートに戻り、上記エンジン出力制限処理が行われると、制御装置50は、車輪速度センサSE3からの検出信号に基づき、駆動輪RWの車輪速度VWRを取得する(ステップS22)。このステップS22では、上記エンジン出力制限処理の開始後における駆動輪RWの車輪速度VWRが取得される。続いて、制御装置50は、ステップS22で取得した車輪速度VWRが予め設定された第2基準速度VWth2を超えているか否かを判定する(ステップS23)。この第2基準速度VWth2は、自動二輪車両11の車体速度VSを、運転手が自動二輪車両11を安全に押し歩ける程度の速度とするために設定された基準値である。こうした第2基準速度VWth2は、第1基準速度VWth1よりも大きな値に設定されている。
【0062】
そして、駆動輪RWの車輪速度VWRが第2基準速度VWth2以下である場合(ステップS23:NO)、制御装置50は、現時点の車体速度VSが、運転手が自動二輪車両11を安全に押し歩ける程度の速度であると判断し、その処理を前述したステップS11に移行する。一方、駆動輪RWの車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えている場合(ステップS23:YES)、制御装置50のブレーキ制御部53は、現時点の車体速度VSが速いと判断し、各車輪FW,RWに対して制動力が付与されるようにブレーキアクチュエータ30を駆動させるブレーキ制御処理(減速制御)を行う(ステップS24)。具体的には、ブレーキ制御部53は、差圧弁33F,33R及びモータ37(即ち、ポンプ38F,38R)を作動させ、各ホイールシリンダ21F,21R内のホイールシリンダ圧を増圧させる(図2参照)。つまり、ステップS24では、自動二輪車両11の車体速度に相当する速度相当値の一例としての駆動輪RWの車輪速度VWRが、基準速度相当値の一例としての第2基準速度VWth2以下となるように、車輪FW,RWに制動力が付与される。その後、制御装置50は、押し歩き支援処理ルーチンを一旦終了する。
【0063】
なお、図7に示すように、自動二輪車両11の走行する路面には、自動二輪車両11の走行の妨げになり得る障害物100が存在することがある。こうした障害物100としては、例えば、石などの物体、段差などが挙げられる。障害物100が路面上に存在すると、今までの自動二輪車両11を移動させるための推進力だけでは、自動二輪車両11に障害物100を乗り越えさせることが困難となる。
【0064】
こうした場合、運転手は、アクセル開度ACがさらに大きくなるようにアクセルスロットル12を操作する。自動二輪車両11が障害物100を乗り越えられない場合、該障害物100によって、自動二輪車両11の車体速度VS、即ち駆動輪RWの車輪速度VWRは、それ以前よりも低速となっている。そのため、アクセル開度ACが大きくなると、エンジン回転数NEを上昇させるべくエンジン13が駆動する。すると、自動二輪車両11は、より大きな推進力を得ることになり、障害物100を乗り越える。
【0065】
しかし、障害物100を乗り越えた直後においては、エンジン回転数NEが大きな値となっている。そのため、エンジン出力制限処理を行ったとしても、車体速度VSが基準速度VSthを超えることがある。すなわち、エンジン出力制限処理だけでは、自動二輪車両11による障害物100の乗り越え直後の車体速度VSの制御が適切に行えない。そこで、本実施形態では、エンジン出力制限処理を行っても、駆動輪RWの車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えている場合には、上記ブレーキ制御が行われる。したがって、本実施形態では、上記ステップS23の判定処理を行う制御装置50が、障害物100を自動二輪車両11が乗り越えたか否かを判定する乗越え判定手段としても機能する。
【0066】
すると、車輪速度VWRが第2基準速度VWth2以下となるまでの間、各車輪FW,RWに対して制動力が付与される。その結果、自動二輪車両11が速やかに減速されるため、自動二輪車両11が勢いよく加速する事態が回避される。そして、車体速度VSが第2基準速度VWth2以下になると、上記ブレーキ制御が終了し、各車輪FW,RWに制動力が付与されなくなる。しかし、この時点では、エンジン回転数NEも十分に小さくなっているため、駆動輪RWに伝達される駆動力も小さくなっている。その結果、車体速度VSは基準速度VSth前後となっており、運転手による自動二輪車両11の押し歩きが好適に支援される。
【0067】
なお、駆動輪RWの車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えた場合に上記ブレーキ制御が行われるような制御構成にしたことにより、エンジン13の駆動力を利用しない運転手による押し歩きによって、車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えた場合にも、上記ブレーキ制御が行われる。そのため、降坂路で押し歩きされる自動二輪車両11の車体速度VSが速くなり過ぎることが、上記ブレーキ制御の実行によって、自動的に抑制される。
【0068】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)自動二輪車両11の停車中に運転手が降車中であると判定され、該判定結果が維持された状態で自動二輪車両11の移動開始が検知されたときには、運転手に自動二輪車両11を押し歩く意志が有ると判断され、支援制御の実行が許可される。そのため、運転手が降車しただけでは支援制御が行われない。例えば、車載のスタンドを利用して駐輪している場合には、支援制御が行われない。また、運転手の降車途中では、従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」であるため、支援制御が開始されない。したがって、降車している運転手が自動二輪車両11を押し歩きする場合に、該押し歩きを支援することができる。
【0069】
(2)運転手が降車しているか否かは、運転手の臀部がシート51から離間しているか否かで判断される。そのため、実際には運転手が降車していない場合であっても、運転手が腰を浮かして乗車すると(即ち、運転手が立ち乗りしていると)、臀部がシート51から離間しているために、降車していると誤判定される。しかし、本実施形態では、自動二輪車両11の走行中に運転手が降車したと判定されたとしても、支援制御は行われない。そのため、運転手の乗車中に支援制御が誤って行われることを回避できる。
【0070】
(3)本実施形態では、支援制御の実行条件が成立しても、運転手がアクセルスロットル12を操作しない場合には、エンジン13の駆動を利用した支援制御が行われない。そのため、エンジン13からの駆動を利用した押し歩きを行いたいという意志を運転手が有する場合には、支援制御の実行によって、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援することができる。
【0071】
(4)支援制御中においてアクセルスロットル12が操作される場合には、車体速度VSが基準速度VSth以下となるように支援制御が行われる。そのため、支援制御の実行に伴い車体速度VSが速くなり過ぎるという事態を回避することができる。つまり、車体速度VSが基準速度VSthを超えることが許可される支援制御の場合と比較して、安全性を確保した状態で運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援することができる。
【0072】
(5)また、支援制御中において車体速度VSが基準速度VSth未満である場合には、運転手によるアクセルスロットル12の操作量が多いほど、駆動輪RWに伝達される駆動力が大きくなるようにエンジン制御が行われる。したがって、運転手の意図に沿った車体速度VSで自動二輪車両11が移動するように運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援することができる。
【0073】
(6)本実施形態の支援制御では、開度補正値ACHに基づきエンジン制御処理が行われる。そのため、アクセル開度ACに基づいた上記通常エンジン制御処理が行われる場合と比較して、運転手は、支援制御中における車体速度VSをきめ細かく調整することができる。したがって、運転手の意図に沿った車体速度VSで自動二輪車両11が移動するように運転手による自動二輪車両11の押し歩きを支援することができる。
【0074】
(7)本実施形態の支援制御では、エンジン13からの駆動力だけではなく、各車輪FW,RWに対する制動制御も行われる。そのため、エンジン13の制御だけの支援制御と比較して、支援制御に伴う車両の車体速度VSを、より精密に制御することができ、ひいては運転手による自動二輪車両11の押し歩きを好適に支援することができる。
【0075】
(8)自動二輪車両11に障害物100を乗り越えさせるためには、障害物100がない場合と比較して大きな駆動力が必要となる。そのため、運転手は、アクセル開度ACを調整して駆動輪RWに伝達される駆動力を大きくし、自動二輪車両11に障害物100を乗り越えさせる。しかし、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えた直後においては、大きな駆動力によって、運転手の意図に反した自動二輪車両11の急加速が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、自動二輪車両11の乗り越え直後における自動二輪車両11の急加速によって、駆動輪RWの車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えた場合には、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えたと判定される。そして、各車輪FW,RWに対して制動力を付与させることにより、自動二輪車両11を減速させる。そのため、障害物100の乗り越え後における自動二輪車両11の不必要な加速の発生を抑制することができる。したがって、運転手による自動二輪車両11の押し歩きを、より安全に支援することができる。
【0076】
(9)自動二輪車両11の傾斜角θが大きく、自動二輪車両11の姿勢が不安定であることが検知された場合には、支援制御の実行が禁止される。また、運転手が両手でハンドルバー22F,22Rを操作していない場合には、自動二輪車両11の姿勢が不安定になるおそれがあるため、支援制御の実行が禁止される。すなわち、自動二輪車両11の姿勢の安定性が確保できない、又は安全性が確保できなくなるおそれがある場合には、エンジン13の駆動を伴う支援制御が行われない。そして、支援制御が行われない間に、運転手は、自動二輪車両11の姿勢を安定化させることができる。
【0077】
(10)また、支援制御の実行中に、自動二輪車両11の傾斜角θが大きくなったり、両手のうち少なくとも一方の手をハンドルバー22F,22Rから離したりすることがある。こうした場合には、支援制御を終了させただけでは、駆動輪RWへの動力伝達が直ぐには解消されない。そこで、本実施形態では、支援制御の実行中に支援禁止フラグFLG1がオンになった場合には、駆動輪RWへの動力伝達が規制されると共に、各車輪FW,RWに制動力が付与される。その結果、自動二輪車両11を速やかに停車させることができる。そして、運転手は、停車中に、自動二輪車両11の姿勢を安定化させることができる。
【0078】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・実施形態において、第1基準速度VWth1及び第2基準速度VWth2を、自動二輪車両11の走行する路面の勾配に応じた値としてもよい。人間の歩行速度は、登坂路よりも降坂路のほうが速くなりやすい。そこで、第1基準速度VWth1及び第2基準速度VWth2を、路面が降坂路である場合には登坂路である場合よりも大きな値に設定してもよい。
【0079】
また、路面が降坂路である場合には、第1基準速度VWth1及び第2基準速度VWth2を、急勾配である場合には緩勾配である場合よりも大きな値に設定してもよい。また、路面が登坂路である場合には、第1基準速度VWth1及び第2基準速度VWth2を、急勾配である場合には緩勾配である場合よりも小さな値に設定してもよい。
【0080】
・実施形態において、自動二輪車両11には、エンジン回転数NEを検出するためのセンサを設けてもよい。この場合、ステップS19では、速度相当値の一例としてのエンジン回転数NEを取得し、ステップS20では、取得したエンジン回転数NEが基準速度相当値の一例としての回転数基準値を超えたか否かを判定してもよい。つまり、エンジン出力制限処理を、駆動輪RWの車輪速度VWRではなく、エンジン回転数NEに基づき行うか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
また、この場合、上記回転数基準値を、路面が降坂路である場合には登坂路である場合よりも小さな値に設定してもよい。これは、路面が降坂路である場合には、自動二輪車両11に加わる重力が該自動二輪車両11を移動させるための推進力として作用する一方、路面が登坂路である場合には、重力が自動二輪車両11の前方への移動を規制する力として作用するためである。
【0082】
さらに、路面が降坂路である場合には、上記回転数基準値を、急勾配である場合には緩勾配である場合よりも小さな値に設定してもよい。また、路面が登坂路である場合には、上記回転数基準値を、急勾配である場合には緩勾配である場合よりも大きな値に設定してもよい。
【0083】
なお、路面の勾配の検出方法としては、加速度センサSE4からの検出信号に基づき取得される加速度(「Gセンサ値」ともいう。)と、車体速度VSを時間微分した車体速度微分値との差分に基づき勾配を検出する方法が挙げられる。
【0084】
・実施形態において、支援禁止フラグFLG1がオンである場合には、アクセルキャンセル処理(ステップS13)及び停車処理(ステップS14)のうち何れか一方のみ行うようにしてもよい。
【0085】
・実施形態において、ステップS11−1の処理を省略してもよい。この場合、自動二輪車両11には、操作検知センサSE6,SE7を設けなくてもよい。
・実施形態において、ステップS11−2,S11−3の処理を省略してもよい。この場合、自動二輪車両11には、角度センサSE8を設けなくてもよい。
【0086】
・実施形態において、ステップS24では、ブレーキ制御処理と共に、アクセルキャンセル処理を行ってもよい。また、ステップS24では、減速制御としてアクセルキャンセル処理を、ブレーキ制御処理の代わりに行ってもよい。
【0087】
・支援制御中に自動二輪車両11が障害物100を乗り越えた場合には、自動二輪車両11の加速度が急激に大きな値となる。そこで、支援制御中において、加速度が予め設定された基準値を超えた場合に、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えたと判定してもよい。そして、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えたと判定された場合には、上記ブレーキ制御処理(ステップS24)及びアクセルキャンセル処理のうち少なくとも一方の処理を行ってもよい。
【0088】
・支援制御中に自動二輪車両11が障害物100を乗り越えた場合には、自動二輪車両11の加速度が急激に大きな値となる。そのため、運転手は、アクセル開度ACが「0(零)」又は「0(零)」に近い値となるようにアクセルスロットル12を操作することがある。そこで、支援制御中において、自動二輪車両11の急加速を検知した直後に、アクセル開度ACが「0(零)」又は「0(零)」に近い値になった場合には、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えた可能性有りと判定してもよい。そして、車体速度VSが基準速度VSth以下となるまでの間では、上記ブレーキ制御処理(ステップS24)を行ってもよい。
【0089】
・支援制御中に自動二輪車両11の前輪(従動輪FW)が障害物100に接触すると、自動二輪車両11の移動が障害物100によって妨げられることがある。この場合、アクセル開度ACが「0(零)」ではなく、且つ従動輪FWに対する制動力が「0(零)」であっても、従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」となることがある。そこで、支援制御の実行中に、アクセル開度ACが基準開度以上であること、従動輪FWに対する制動力が「0(零)」であること、及び従動輪FWの車輪速度VWFが「0(零)」であることが検知された場合には、自動二輪車両11の移動が障害物100によって妨げられていると判定し、障害物乗越え制御を行ってもよい。
【0090】
障害物乗越え制御としては、例えば、車体速度VSが規定の速度となるように、エンジン13から駆動輪RWに伝達される駆動力と、各車輪FW,RWに伝達される制動力とを調整する制御が挙げられる。そして、障害物乗越え制御の実行によって、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えた場合には、駆動力を急減させると共に、車輪FW,RWに対する制動力を大きくし、自動二輪車両11の急加速を抑制するようにしてもよい。このように構成すると、運転手によるアクセルスロットル12の操作態様に関係なく、自動二輪車両11に障害物100を乗り越えさせることができる。
【0091】
また、このように従動輪FWに制動力が付与されていないことを検知するためには、第1ブレーキレバー23Fの操作の有無を検知するためのブレーキスイッチを、自動二輪車両11に設けることが好ましい。
【0092】
また、自動二輪車両11が障害物100を乗り越えたことの検出方法としては、自動二輪車両11の急加速の他に、エンジン13と駆動輪RWとの間の動力伝達機構を構成するクラッチのスリップ量に基づき検出する方法がある。スリップ量とは、動力伝達経路における上流側のクラッチ構成部材と、下流側のクラッチ構成部材との回転差に応じた値である。
【0093】
・実施形態において、支援制御中におけるブレーキ制御(例えば、ステップS24のブレーキ制御処理)では、各車輪FW,RWのうち何れか一方にのみ制動力が付与されるようにブレーキアクチュエータ30を駆動させてもよい。
【0094】
・実施形態において、上記ステップS23,S24の処理を省略してもよい。この場合、自動二輪車両11に搭載されるブレーキアクチュエータ30は、運転手によるブレーキレバー23F,23Rが操作されない場合には、車輪FW,RWに制動力を付与できない構成のアクチュエータであってもよい。このように押し歩きの走行支援時にブレーキ制御を行わない構成の場合、エンジン制御部52により、走行支援装置が構成される。
【0095】
・実施形態において、上記ステップS17の処理を省略してもよい。この場合、ステップS18では、駆動輪RWの車輪速度VWRが第1基準速度VWth1未満である間、エンジン回転数NEがアクセル開度ACに応じた回転数となるようにエンジン制御処理が行われる。
【0096】
・実施形態において、支援制御中での車体速度VSを、アクセル開度ACに応じて段階的に設定してもよい。例えば、アクセル開度ACが「0(零)」よりも大きく且つ第1の開度以下である場合には、車体速度VSが第1の速度となるように制御を行い、アクセル開度ACが第1の開度よりも大きく且つ第2の開度(>第1の開度)以下である場合には、車体速度VSが第2の速度(>第1の速度)となるように制御してもよい。さらに、アクセル開度ACが第2の開度よりも大きく且つ第3の開度(>第4の開度)以下である場合には、車体速度VSが第3の速度(>第2の速度)となるように制御してもよい。
【0097】
・また、自動二輪車両11には、支援制御中における車体速度VSの上限値(即ち、基準速度VSth)を設定するための操作部を設けてもよい。
・また、自動二輪車両11には、支援制御中において補正ゲイン値αの値を調整するための操作部を設けてもよい。この場合、上記ステップS17では、運転手による操作部の操作によって設定された補正ゲイン値αを用い、開度補正値ACHが演算される。
【0098】
・実施形態において、支援制御を、運転手によるアクセルスロットル12の操作の有無に関係なく行ってもよい。この場合、停車中に降車していると判定され、その後、運転手が自身の力によって自動二輪車両11を移動させた場合にも、支援制御が開始される。
【0099】
・実施形態において、自動二輪車両11には、支援制御開始ボタンを設けてもよい。そして、停車中に降車していると判定され、その後、自動二輪車両11の移動開始が検知されてから、支援制御開始ボタンが操作されたことを検知した場合に、支援制御を行うようにしてもよい。この場合、支援制御中に運転手がアクセルスロットル12を操作した場合には、その操作量、即ちアクセル開度ACとは無関係に、エンジン13を制御するようにしてもよい。
【0100】
・実施形態において、自動二輪車両11の移動開始の検知には、加速度センサSE4からの検出信号を用いてもよい。この場合、上記ステップS11−8では、加速度センサSE4を用いて取得された自動二輪車両11の前後方向における加速度が「0(零)」よりも大きな値に設定された加速度基準値を超えた場合に、自動二輪車両11の前方への移動が開始したと判定される。
【0101】
・実施形態において、エンジン13の駆動力を利用しない運転手による押し歩きによって、車輪速度VWRが第2基準速度VWth2を超えた場合には、上記ブレーキ制御を行わなくてもよい。
【0102】
・自動二輪車両11には、運転手を含め複数の乗員を乗車させることが可能な車両もある。こうした自動二輪車両11には、運転手の降車を検知するためのシートセンサSE5に加え、同乗者の降車を検知するためのシートセンサを別途設けてもよい。そして、停車中に自動二輪車両11に一人も乗車していないことを検知し、この状態で自動二輪車両11の移動開始を検知した場合に、支援制御を行うようにしてもよい。
【0103】
また、同乗者が乗車していても、停車中に運転手の降車を検知し、この状態で自動二輪車両11の移動開始を検知した場合に、支援制御を行うようにしてもよい。
・実施形態において、自動二輪車両11は、後輪でもある駆動輪RWに制動力を付与する際に操作される操作部として、運転手の右足で操作するブレーキペダルを設けた車両であってもよい。
【0104】
・実施形態において、自動二輪車両11に搭載される動力源は、ガソリンなどの化石燃料を利用するエンジン13以外の他の動力源(例えば、電動モータ)であってもよい。また、本発明の走行支援装置を搭載する自動二輪車両11を、化石燃料を利用するエンジン13と電動モータとを備える所謂ハイブリッド車両に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0105】
11…自動二輪車両、12…駆動操作部の一例としてのアクセルスロットル、13…動力源の一例としてのエンジン、22F,22R…ハンドルバー、50…走行支援装置の一例としての制御装置(降車判定手段、移動検知手段、支援制御手段、乗越え判定手段、不安定検知手段、傾斜角取得手段)、100…障害物、AC…操作量の一例としてのアクセル開度、FW…従動輪、NE…速度相当値の一例としてのエンジン回転数、RW…駆動輪、VS…速度相当値の一例としての車体速度、VWR…速度相当値の一例としての駆動輪の車輪速度、VWth1…基準速度の一例としての第1基準速度、VWth2…基準速度の一例としての第2基準速度、θ…傾斜角、θth…基準角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
降車している運転手による車両(11)の押し歩きを支援するための車両の運転支援装置であって、
運転手が降車しているか否かを判定する降車判定手段(50、S11−6)と、
車両(11)の進行方向に沿った移動を検知する移動検知手段(50、S11−8)と、
車両(11)の停車中に前記降車判定手段(50、S11−6)によって運転手が降車していると判定された後に、該判定結果が維持された状態で前記移動検知手段(50、S11−8)によって車両(11)の移動開始が検知された場合に、車載の動力源(13)で発生した駆動力を駆動輪(RW)に伝達させる支援制御を行う支援制御手段(50、S16〜S24)と、を備えることを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項2】
前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、
前記支援制御の開始条件の成立時において、前記動力源(13)からの駆動力の発生態様を調整すべく操作される駆動操作部(12)が操作されるときに、
車両(11)の車体速度に相当する速度相当値(VWR,VS,NE)が、運転手による車両(11)の押し歩きの支援用として設定された基準速度相当値(VWt1,VWth2,VSth)以下となるように前記支援制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行支援装置。
【請求項3】
前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、
前記支援制御時において、速度相当値(VWR,VS,NE)が前記基準速度相当値(VWt1,VWth2,VSth)未満であるときには、
前記駆動操作部(12)の操作量(AC)が多い場合には少ない場合よりも車両(11)を高速で移動させるべく前記動力源(13)を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両の走行支援装置。
【請求項4】
前記支援制御は、
前記動力源(13)からの駆動力が伝達される駆動輪(RW)に伝達される駆動力と、
前記駆動輪(RW)及び前記動力源(13)からの駆動力が伝達されない従動輪(FW)の少なくとも一方に対する制動力と、を調整する制御であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両の走行支援装置。
【請求項5】
障害物(100)を車両(11)が乗り越えたか否かを判定する乗越え判定手段(50、S23)をさらに備え、
前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、
前記支援制御中において、前記乗越え判定手段(50、S23)によって車両(11)が障害物(100)を乗り越えたと判定された場合には、
前記駆動輪(RW)の車輪速度(VWR)を減速させるための減速制御を行うことを特徴とする請求項2〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の走行支援装置。
【請求項6】
車両(11)の姿勢が不安定であること、又は不安定となる傾向を検知する不安定検知手段(50、S11−1,S11−3)をさらに備え、
前記支援制御手段(50、S16〜S24)は、
前記不安定検知手段(50、S11−1,S11−3)によって車両(11)の姿勢が不安定であること、又は不安定となる傾向が検知された場合には、
車両を停車させること、
及び前記駆動輪(RW)への動力伝達を規制すること
のうち少なくとも一つを実行することを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の走行支援装置。
【請求項7】
車両の左右方向における傾斜角(θ)を取得する傾斜角取得手段(50、S11−2)をさらに備え、
前記不安定検知手段(50、S11−3)は、前記傾斜角取得手段(50、S11−2)によって取得された傾斜角(θ)の絶対値が、車両(11)の姿勢が安定か否かの判断基準として設定された基準角度(θth)を超える場合に、車両(11)の姿勢が不安定であることを検知することを特徴とする請求項6に記載の車両の走行支援装置。
【請求項8】
前記不安定検知手段(50、S11−1)は、車両(11)のハンドルバー(22F,22R)を運転手が両手で操作していない場合に、車両(11)の姿勢が不安定となる傾向であることを検知することを特徴とする請求項6に記載の車両の走行支援装置。
【請求項9】
降車している運転手による車両(11)の押し歩きを支援する支援制御を実行させるための車両の運転支援方法であって、
車両の停車中に、運転手が降車しているか否かを判定させる降車判定ステップ(S11−6)と、
車両(11)の停車中に前記降車判定ステップ(S11−6)で運転手が降車していると判定した後に、該判定結果が維持された状態で車両(11)の進行方向に沿った移動開始を検知させる移動開始検知ステップ(S11−8)と、
車両(11)の移動開始を検知した場合に、車載の動力源(13)で発生する駆動力を用いた前記支援制御の実行を許可する支援許可ステップ(S11−9)と、を有することを特徴とする車両の走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224232(P2012−224232A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94086(P2011−94086)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】