説明

車両の走行支援装置

【課題】 自車両周辺の外界の状況を精度良く検知し、自車両の走行支援を適切に行う。
【解決手段】 受信電力検知部25は情報送受信部12にて受信した対象物情報の受信電力を発信元である各他車両毎に算出する。受信電力算出部29は自車両と他車両との相対距離に応じて、自車両と他車両との車車間通信で検知される受信電力を算出する。見通し判定部30は受信電力検知部25にて検知された各他車両毎の受信電力と、受信電力算出部29にて算出された受信電力とを比較し、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定する。走行支援判定部31は自車両と他車両との相対的な見通し状態と、道路形状認識部26にて検知された自車両の進行方向の道路形状と、相対速度判定部28にて算出された自車両と他車両との相対速度とに基づき、走行支援レベルを設定し、走行支援レベルに応じて制動装置16および警報装置17を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば横断歩道や交差点等を含む所定道路領域を運転支援エリアとして設定し、この運転支援エリア内を走行中の車両に対して、一時停止等の交通規制の情報や、他車両の存在や走行状態に関する情報を提供し、車両の走行を支援する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−67596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係る装置においては、車両の運転者による外界の視認状態に関わらずに各種の情報や警報等が提供されることから、例えば車両の運転者が一時停止等の交通規制を示す標識や他車両の存在や走行状態を視認可能な状態であっても、不必要に各種の情報が過剰な頻度で提供されることで、運転者が煩わしさを感じてしまうという問題が生じる。
また、このような運転支援エリアが設定されていない走行領域では、運転者の視覚に加えて、例えばレーダーやカメラ等の外界センサによって交差点の状況や他車両の有無を検知することになる。
しかしながら、運転者の視認可能領域内や外界センサの検知可能領域内であっても障害物等が存在する場合には、交差点や他車両を精度良く検知することができないという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両周辺の外界の状況を精度良く検知し、この検知結果に応じて自車両の走行支援を適切に行うことが可能な車両の走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行支援装置は、他車両から出力される他車両情報を通信により取得する通信手段(例えば、実施の形態での情報送受信部12)と、該通信手段により取得した前記他車両情報に基づき自車両の走行支援を行う走行支援手段(例えば、実施の形態での制動装置16および警報装置17)とを備える車両の走行支援装置であって、前記通信手段により受信した電波の受信電力を算出する受信電力算出手段(例えば、実施の形態での受信電力検知部25)と、前記受信電力算出手段により算出された前記受信電力と、所定の基準受信電力とを比較し、該比較の結果に基づき、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定する見通し推定手段(例えば、実施の形態での見通し判定部30)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、受信電力算出手段により算出された受信電力と、所定の基準受信電力、例えば自車両と他車両との間の距離に応じて変化する受信電力との比較結果に基づき自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定することで、例えば自車両と他車両との間に建造物等の遮蔽物が存在し、カメラやレーダ等による相互の検知や視認が不可能な状態であっても、推定精度を向上させることができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行支援装置は、予め道路地図データを記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段(例えば、実施の形態での地図データ記憶部14)または自車両の外部から道路地図データを取得するデータ取得手段を備え、前記走行支援手段は、前記道路地図データに基づき、自車両の進行方向に交差点が存在するか否かを判定し、該判定にて交差点が存在する場合に、自車両が該交差点に接近あるいは該交差点を通過する際に、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に基づき、自車両の走行支援を行うことを特徴としている。
【0007】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、自車両が交差点を走行する際に、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両の存在を精度良く認識することができ、適切な走行支援を行うことができる。
【0008】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に応じた支援程度の走行支援動作を実行することを特徴としている。
【0009】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、見通し状態に応じた適切な走行支援動作を実行することで、例えば自車両の運転者が走行支援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0010】
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態の不良の程度が増大することに伴い、他車両に対する自車両の乗員の注意を喚起する程度を増大させることを特徴としている。
【0011】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、見通し状態の不良の程度が増大することに伴い、他車両に対する自車両の乗員の注意を喚起する程度を増大させることで、例えば自車両の運転者が走行支援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止しつつ、適切な走行支援を行うことができる。
【0012】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記走行支援手段は、他車両の存在を自車両の乗員に報知することを特徴としている。
【0013】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両の存在を的確に報知することができる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記走行支援手段は、少なくとも、自車両を自動的に減速させる、あるいは、自車両を減速させる運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力することを特徴としている。
【0015】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両に対し、自車両との接触や衝突等が発生することを防止することができる。
【0016】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記走行支援動作は、少なくとも、他車両の存在を自車両の乗員に報知する第1支援動作、または、自車両を自動的に減速させる動作あるいは自車両を減速させる運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力する第2支援動作であり、前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に応じて、前記第1支援動作または前記第2支援動作を選択して実行することを特徴としている。
【0017】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、見通し状態に応じた適切な支援動作を選択することで、例えば自車両の運転者が援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止することができる。
【0018】
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記他車両情報は他車両の少なくとも位置を含み、前記走行支援手段は、前記通信手段により取得した複数の他車両から出力された複数の前記他車両情報のうち、自車両に最も近接した位置の他車両から出力された前記他車両情報に基づき、自車両の走行支援を行うことを特徴としている。
【0019】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、自車両の走行の支障となる可能性が相対的に高い自車両に最も近接した位置の他車両の他車両情報により、適切な走行支援を行うことができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の走行支援装置では、前記他車両情報は他車両の少なくとも位置を含み、前記走行支援手段は、複数の他車両から出力された複数の前記他車両情報を前記通信手段により取得した場合に、自車両に近接した位置の他車両に対してほど、前記支援程度を増大させることを特徴としている。
【0021】
上記構成の車両の走行支援装置によれば、自車両に近接する他車両ほど支援程度を増大させることで、自車両の走行の支障となる可能性が相対的に高くなる他車両ほど支援程度が高くなり、適切な走行支援を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、例えば自車両と他車両との間に建造物等の遮蔽物が存在し、カメラやレーダ等による相互の検知や視認が不可能な状態であっても、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を精度良く推定することができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、自車両が交差点を走行する際に、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両の存在を精度良く認識することができ、適切な走行支援を行うことができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、見通し状態に応じた適切な走行支援動作を実行することで、例えば自車両の運転者が走行支援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止することができる。
さらに、請求項4に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、見通し状態の不良の程度が増大することに伴い、他車両に対する自車両の乗員の注意を喚起する程度を増大させることで、例えば自車両の運転者が走行支援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止しつつ、適切な走行支援を行うことができる。
【0024】
さらに、請求項5に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両の存在を的確に報知することができる。
さらに、請求項6に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、例えば建造物等の遮蔽物が存在することで相互に検知あるいは視認することが不可能な他車両に対し、自車両との接触や衝突等が発生することを防止することができる。
【0025】
さらに、請求項7に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、見通し状態に応じた適切な支援動作を選択することで、例えば自車両の運転者が援動作に対して違和感を感じてしまうことを防止することができる。
さらに、請求項8に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、自車両の走行の支障となる可能性が相対的に高い自車両に最も近接した位置の他車両の他車両情報により、適切な走行支援を行うことができる。
さらに、請求項9に記載の本発明の車両の走行支援装置によれば、自車両に近接する他車両ほど支援程度を増大させることで、自車両の走行の支障となる可能性が相対的に高くなる他車両ほど支援程度が高くなり、適切な走行支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行支援装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の走行支援装置10は、例えば、外界監視装置11と、情報送受信部12と、自車両情報検出部13と、地図データ記憶部14と、処理装置15と、制動装置16と、警報装置17とを備えて構成されている。
【0027】
外界監視装置11は、例えば可視光領域や赤外線領域にて撮像可能なCCDカメラやC−MOSカメラ等からなるカメラおよび画像処理部と、例えばレーザ光やミリ波等のレーダおよびレーダ制御部とを備えて構成されている。
カメラは、例えばフロントウィンドウの車室内側でルームミラー近傍の位置に配置され、フロントウィンドウ越しに自車両の進行方向前方の所定検知範囲の外界を撮影する。
画像処理部は、カメラにより撮影して得た画像に対して、例えばフィルタリングや二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成して処理装置15へ出力する。
また、レーダは、例えば自車両のボディのノーズ部や車室内のフロントウィンドウ近傍等に配置され、処理装置15からレーダ制御部へ入力される制御指令に応じたレーダ制御部の制御により、レーザ光やミリ波等の発信信号を適宜の検知方向(例えば、自車両の進行方向前方等)に向けて発信すると共に、この発信信号が自車両の外部の物体(検知対象物)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、反射信号と発信信号とを混合してビート信号を生成して処理装置15へ出力する。
【0028】
情報送受信部12は、他車両に搭載された情報送受信部との間の車車間通信により各種情報の送受信を行う。ここで、他車両から発信される対象物情報は、他車両の車両状態に係る情報、例えば速度および位置に加えて、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)や操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)や、方向指示器やブレーキのオン/オフ状態等である。
【0029】
自車両情報検出部13は、自車両情報として、例えば自車両の走行速度(車速)を検出する車速センサや、例えば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号や自車両の外部の情報発信装置から発信される位置信号や例えば道路上に配置された基点マーカとの磁気作用等、さらには、適宜のジャイロセンサや加速度センサ等の検出結果に基づいて自車両の現在位置や進行方向を検出する位置センサや、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)やヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)や操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)を検出する各センサや、方向指示器やブレーキのオン/オフ状態を検知する各センサ等を備えて構成されている。
【0030】
地図データ記憶部14は、例えばハードディスク装置等の磁気ディスク装置や、例えばCD−ROMやCD−RやMOやDVD等の光ディスク装置等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体からなる。そして、地図データ記憶部14は、例えばナビゲーション装置(図示略)や表示装置において地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路情報を格納している。
【0031】
処理装置15は、例えば、対象物位置情報抽出部21と、対象物速度情報抽出部22と、自車両位置情報抽出部23と、自車両速度情報抽出部24と、受信電力検知部25と、道路形状認識部26と、相対位置判定部27と、相対速度判定部28と、受信電力算出部29と、見通し判定部30と、走行支援判定部31とを備えて構成されている。
【0032】
対象物位置情報抽出部21は、情報送受信部12にて受信した対象物情報から他車両の位置情報を抽出する。
対象物速度情報抽出部22は、情報送受信部12にて受信した対象物情報から他車両の速度情報を抽出する。
なお、対象物位置情報抽出部21および対象物速度情報抽出部22は、必要に応じて、例えば情報送受信部12での情報受信に要する時間を考慮して他車両の位置情報や速度情報の変動を補正し、他車両の現在の位置情報や速度情報を推定可能である。
【0033】
自車両位置情報抽出部23は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の現在の位置情報を抽出する。
自車両速度情報抽出部24は、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報から自車両の現在の速度情報を抽出する。
なお、自車両位置情報抽出部23および自車両速度情報抽出部24は、必要に応じて、例えば自車両情報検出部13での検出動作に要する時間を考慮して自車両の位置情報や速度情報の変動を補正し、自車両の現在の位置情報や速度情報を推定可能である。
【0034】
受信電力検知部25は、情報送受信部12にて受信した対象物情報の受信電力を、対象物情報の発信元である各他車両毎に算出する。
道路形状認識部26は、地図データ記憶部14に格納された地図データと、外界監視装置11から入力される画像データまたはビート信号とに基づき、自車両の進行方向の道路形状、例えば、交差点やT字路や高速道路での合流地点等の有無、道路の車線数等を検出する。
【0035】
相対位置判定部27は、例えば、対象物位置情報抽出部21にて抽出した他車両の位置情報のうち、特に、自車両の進行方向前方の所定領域を走行する先行車両の位置情報と、自車両位置情報抽出部23にて抽出した自車両の位置情報と、地図データ記憶部14に格納された地図データとに基づき、例えばマップマッチング等を行い、道路上における自車両と他車両との相対位置の情報を生成し、受信電力算出部29へ出力する。
相対速度判定部28は、例えば、対象物速度情報抽出部22にて抽出した他車両の速度情報と、自車両速度情報抽出部24にて抽出した自車両の速度情報とに基づき、自車両と他車両との相対速度の情報を生成し、走行支援判定部31へ出力する。
【0036】
受信電力算出部29は、相対位置判定部27にて算出した自車両と他車両との相対位置の情報のうち、特に自車両と他車両との相対距離に応じて、自車両と他車両との間の車車間通信で検知される受信電力を算出する。
見通し判定部30は、受信電力検知部25にて検知された各他車両毎の受信電力と、受信電力算出部29にて算出された受信電力とを比較し、この比較結果に基づき、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定し、この推定結果を走行支援判定部31へ出力する。
【0037】
例えば図2に示すように、進行方向前方のT字路に向かい走行する自車両Pに対して、自車両Pの走行路に交差する交差道路を走行する第1の他車両Qおよび第2の他車両Rが存在する状態で、例えば自車両Pと第1の他車両Qとの間に障害物等が存在せず、回折や散乱等の発生していない直達波Wqによって車車間通信の送受信が行われる場合には、受信電力検知部25にて検知される受信電波の受信電力は、例えば下記数式(1)に示すように記述される。
なお、下記数式(1)における空間伝搬損失Lは、例えば自車両Pおよび第1の他車両Qの各アンテナ間距離Dqと、電波の周波数fと、光速cとに基づき、例えば下記数式(2)に示すように記述される。
【0038】
【数1】

【0039】
【数2】

【0040】
一方、例えば自車両Pと第2の他車両Rとの間に建造物等の障害物が存在し、回折波Wrによって車車間通信の送受信が行われる場合には、受信電力検知部25にて検知される受信電波の受信電力は、例えば下記数式(3)に示すように記述され、空間伝搬損失L’は、例えば自車両Pおよび第2の他車両Rの各アンテナ間距離Drと、電波の周波数fと、光速cとに基づき、例えば下記数式(2)に示すように記述される。
【0041】
【数3】

【0042】
【数4】

【0043】
つまり、自車両Pと第1の他車両Qとの間の車車間通信では、受信電波の受信電力は自車両Pおよび第1の他車両Qの各アンテナ間距離Dqに基づき算出可能であり、受信電力算出部29にて上記数式(1)および数式(2)に基づき算出される受信電力と、受信電力検知部25にて検知される第1の他車両Qに対する受信電力とが同等の値となる。
これに対して、自車両Pと第2の他車両Rとの間の車車間通信では、回折損失が存在することから、受信電力算出部29にて上記数式(1)および数式(2)に相当する数式(つまり、回折損失を含まず、自車両Pおよび第2の他車両Rの各アンテナ間距離Drにより記述される数式)に基づき算出される受信電力は、受信電力検知部25にて検知される第2の他車両Rに対する受信電力よりも大きな値となる。
これにより、受信電力検知部25にて検知された各他車両毎の受信電力から受信電力算出部29にて算出された受信電力を減算して得た電力差の大きさに応じて、見通し状態の不良の程度を検知することができ、この電力差が大きくなることに伴い、見通し状態の不良の程度が大きくなる。
【0044】
走行支援判定部31は、見通し判定部30にて推定された自車両と他車両との間の相対的な見通し状態と、道路形状認識部26にて検知された自車両の進行方向の道路形状と、相対速度判定部28にて算出された自車両と他車両との相対速度とに基づき、走行支援レベルを設定し、この走行支援レベルに応じて、制動装置16および警報装置17を作動させる。例えば、走行支援判定部31は、見通し状態の不良の程度が大きくなることに伴い、また、自車両と他車両との相対速度が増大することに伴い、走行支援レベルが高くなるように設定する。
【0045】
制動装置16は、例えばブレーキ制御装置やスロットル制御装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えばブレーキ液圧やスロットル開度等を制御して自車両に制動力を作用させる。
【0046】
警報装置17は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えばシートベルト装置や操舵制御装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて自車両の乗員が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイールに自車両の運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させることによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させることによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカ等であって、処理装置15から入力される制御信号に応じて所定の警報音や音声等を出力することによって、自車両が適正車両状態にないことを自車両の乗員に認識させる。
【0047】
本実施の形態による車両の走行支援装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行支援装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
【0048】
先ず、図3に示すステップS01においては、情報送受信部12にて受信した対象物情報から他車両走行情報として、位置および速度等を取得する。
次に、ステップS02においては、情報送受信部12にて受信した対象物情報の受信電力を、対象物情報の発信元である各他車両毎に算出する。
次に、ステップS03においては、自車両情報検出部13にて検出した自車両情報として、自車両の現在位置および現在速度等の情報を取得する。
【0049】
次に、ステップS04においては、上記数式(1)および数式(2)に相当する数式(つまり、回折損失を含まず、自車両および他車両の各アンテナ間距離により記述される数式)に基づき受信電力を算出する。
次に、ステップS05においては、受信電力検知部25にて検知された各他車両毎の受信電力と、受信電力算出部29にて算出された受信電力とを比較し、この比較結果に基づき、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定する。
【0050】
次に、ステップS06においては、地図データ記憶部14に格納された地図データと、外界監視装置11の検知結果とに基づき、自車両の進行方向の道路形状、例えば、交差点やT字路や高速道路での合流地点等の有無、道路の車線数等を検出する。
次に、ステップS07においては、推定された自車両と他車両との間の相対的な見通し状態と、道路形状認識部26にて検知された自車両の進行方向の道路形状とに基づき、走行支援レベルを設定する。
【0051】
次に、ステップS08においては、自車両の進行方向前方に交差点が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進む。
ステップS09においては、見通し状態が不良であるか否かを判定する。
ステップS09での判定結果が「NO」の場合、例えば自車両と他車両との間に障害物等が存在しないと判定される場合には、ステップS10に進み、このステップS10においては、情報提供処理として、例えば音声出力等によって自車両の周辺に他車両が存在することを自車両の運転者に報知し、一連の処理を終了する。
一方、ステップS09での判定結果が「YES」の場合、例えば自車両と他車両との間に障害物等が存在し、互いに直接的に視認することができないと判定される場合には、ステップS11に進む。
【0052】
ステップS11においては、走行支援レベルが高いか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、注意喚起処理として、例えば音声出力等によって自車両に対して死角となる領域に他車両が存在することを自車両の運転者に報知すると共に、例えばナビゲーション装置の表示装置等において他車両を強調表示し、自車両を減速させる運転の実行を促す注意喚起を行い、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進み、このステップS13においては、警報・制動制御の処理として、例えば音声出力等によって自車両に対して死角となる領域に他車両が存在することを自車両の運転者に報知すると共に、例えばナビゲーション装置の表示装置等において他車両を強調表示し、さらに、例えば制動装置16により自動的に自車両を減速させ、一連の処理を終了する。
【0053】
上述したように、本実施の形態による車両の走行支援装置10によれば、地図データ記憶部14に格納された地図データや外界監視装置11の検知結果に加えて、自車両周辺の他車両との車車間通信での受信電力に基づき推定した相対的な見通し状態に応じて走行支援動作の動作内容を変更することで、他車両を直接的に視認できない状態であっても、自車両に対して適切な走行支援を行うことができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態においては、見通し状態の不良の程度が大きくなることに伴い、また、自車両と他車両との相対速度が増大することに伴い、走行支援レベルが高くなるように設定するとしたが、これに限定されず、例えば自車両周辺の複数の他車両から対象物情報を受信した場合には、自車両に対する相対位置が近接した位置の他車両ほど、取得した対象物情報の重要度を増大させ、見通し状態の不良の程度が大きくなることに伴い、また、取得した対象物情報の重要度が増大することに伴い、走行支援レベルが高くなるように設定してもよい。
さらに、自車両周辺の複数の他車両から対象物情報を受信した場合に走行支援動作を実行する際には、自車両に対する相対位置が最も近接した位置の他車両から取得した対象物情報に基づき設定した走行支援レベルに応じて制動装置16および警報装置17を作動させてもよい。
【0055】
なお、上述した実施の形態において、車両の走行支援装置10は、地図データ記憶部14を備えるとしたが、これに限定されず、例えば自車両の外部に設置された地図データサーバから適宜のタイミングで通信により地図データを取得する地図データ取得部を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の走行支援装置の構成図である。
【図2】自車両Pと、自車両Pの進行方向前方のT字路に向かい走行する第1および第2の他車両Q,Rの相対位置の一例を示す図である。
【図3】図1に示す車両の走行支援装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
10 車両の走行支援装置
12 情報送受信部(通信手段)
14 地図データ記憶部(データ記憶手段)
16 制動装置(走行支援手段)
17 警報装置(走行支援手段)
25 受信電力検知部(受信電力算出手段)
30 見通し判定部(見通し推定手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両から出力される他車両情報を通信により取得する通信手段と、
該通信手段により取得した前記他車両情報に基づき自車両の走行支援を行う走行支援手段とを備える車両の走行支援装置であって、
前記通信手段により受信した電波の受信電力を算出する受信電力算出手段と、
前記受信電力算出手段により算出された前記受信電力と、所定の基準受信電力とを比較し、該比較の結果に基づき、自車両と他車両との間の相対的な見通し状態を推定する見通し推定手段とを備えることを特徴とする車両の走行支援装置。
【請求項2】
予め道路地図データを記憶する自車両に搭載されたデータ記憶手段または自車両の外部から道路地図データを取得するデータ取得手段を備え、
前記走行支援手段は、前記道路地図データに基づき、自車両の進行方向に交差点が存在するか否かを判定し、該判定にて交差点が存在する場合に、自車両が該交差点に接近あるいは該交差点を通過する際に、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に基づき、自車両の走行支援を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行支援装置。
【請求項3】
前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に応じた支援程度の走行支援動作を実行することを特徴とする請求項2に記載の車両の走行支援装置。
【請求項4】
前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態の不良の程度が増大することに伴い、他車両に対する自車両の乗員の注意を喚起する程度を増大させることを特徴とする請求項3に記載の車両の走行支援装置。
【請求項5】
前記走行支援手段は、他車両の存在を自車両の乗員に報知することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両の走行支援装置。
【請求項6】
前記走行支援手段は、少なくとも、自車両を自動的に減速させる、あるいは、自車両を減速させる運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力することを特徴とする請求項2から請求項5の何れか1つに記載の車両の走行支援装置。
【請求項7】
前記走行支援動作は、少なくとも、他車両の存在を自車両の乗員に報知する第1支援動作、または、自車両を自動的に減速させる動作あるいは自車両を減速させる運転の実行を促す報知を自車両の乗員に出力する第2支援動作であり、
前記走行支援手段は、前記見通し推定手段により推定された前記見通し状態に応じて、前記第1支援動作または前記第2支援動作を選択して実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両の走行支援装置。
【請求項8】
前記他車両情報は他車両の少なくとも位置を含み、
前記走行支援手段は、前記通信手段により取得した複数の他車両から出力された複数の前記他車両情報のうち、自車両に最も近接した位置の他車両から出力された前記他車両情報に基づき、自車両の走行支援を行うことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1つに記載の車両の走行支援装置。
【請求項9】
前記他車両情報は他車両の少なくとも位置を含み、
前記走行支援手段は、複数の他車両から出力された複数の前記他車両情報を前記通信手段により取得した場合に、自車両に近接した位置の他車両に対してほど、前記支援程度を増大させることを特徴とする請求項3に記載の車両の走行支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−24103(P2006−24103A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203295(P2004−203295)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】