説明

車両の車体フレーム構造

【課題】 車両の車体フレーム構造、特に前輪用サスペンションを支持するフロントフレームを改良することで、ラジエータ、補機類等を保護するとともにラジエータを水没し難くすることにある。
【解決手段】 車体フレーム11の前部に、前輪用サスペンションを支持するフロントフレーム12を設け、このフロントフレーム12にラジエータ、補機類を取付けた車両の車体フレーム構造において、フロントフレーム12の上部に車両前方側を開放するU字状フレーム157を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体フレーム構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の車体フレーム構造として、車体フレームの前部にラジエターを取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3442742号公報
【0003】
特許文献1を以下に説明する。なお、符号については同公報に記載されているものを使用した。
特許文献1の図1、図2及び図6には、車体フレームFに、車両前後方向に延びる左右一対の上部パイプ21,21と、これらの上部パイプ21,21の下方で車両前後方向に延びる左右一対の下部パイプ22,22と、これらの上部パイプ21と下部パイプ22との前端同士を結合する左右一対の第1前部パイプ23,23とを備え、第1前部パイプ23の前部にブラケット36を介してラジエター45を取付け、上部パイプ21の前部に前車輪用サスペンションを支持するブラケット32を取付けた不整地走行車が記載されている。なお、図1及び図2には、前フェンダー12、前フェンダー12の上部に取付けたキャリア、車両の前部をガードするガード部材も記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両では、車体フレームFの前部に取付けたラジエター45や補機類等は、車体前部のガード部材で保護されているが、車両側方部の配慮が必要であり、また、不整地走行車は河川、沼地等を走行する場合もあり、ラジエター45や補機類の水没への対策を施す必要もある
【0005】
本発明の目的は、車両の車体フレーム構造、特に前輪用サスペンションを支持するフロントフレームを改良することで、ラジエータ、補機類等を保護するとともにラジエータを水没し難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームの前部に前輪用サスペンションを支持するフロントフレームを設け、このフロントフレームにラジエータ、補機類を取付けた車両の車体フレーム構造において、フロントフレームの上部に車両前方側を開放するU字状フレームを備えることを特徴とする。
【0007】
フロントフレームの上部に車両前方側を開放するU字状フレームを備えて、フロントフレームの上部にU字状フレームで囲まれる空間を形成し、この空間にラジエータ、補機類を配置する。また、U字状フレームにラジエータを取付けて、ラジエータを車両の高い位置に配置する。
【0008】
請求項2に係る発明は、U字状フレームにより、前部にラジエータ、後部にステアリングシャフトを包含することを特徴とする。
U字状フレームの前部でラジエータを保護し、U字状フレームの後部でステアリングシャフトを保護する。
【0009】
請求項3に係る発明は、U字状フレームの開放側にバンパを連結したことを特徴とする。
U字状フレームの開放側の各端部にバンパを連結することで、U字フレームの剛性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、フロントフレームの上部に車両前方側を開放するU字状フレームを備えるので、フロントフレームの上部にU字状フレームで囲まれる空間を形成することができ、この空間にラジエータ、補機類を配置することができて、ラジエータ、補機類をU字状フレームで周囲から保護することが可能になる。
【0011】
また、U字状フレームにラジエータを取付けることで、ラジエータを車両の高い位置に配置することができ、例えば、河川、沼地等を走行する際に、ラジエータを水没し難くすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、U字状フレームにより、前部にラジエータ、後部にステアリングシャフトを包含するので、U字状フレームの前部でラジエータを保護し、U字状フレームの後部でステアリングシャフトを保護することができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、U字状フレームの開放側にバンパを連結したので、U字フレームの剛性を高めることができ、U字状フレーム内に配置したラジエータ、補機類等をより確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車体フレーム構造を採用した車両の側面図であり、車両10は、車体フレーム11(フロントフレーム12、センタフレーム13及びリヤフレーム14からなる。)と、左右の前輪18,18と、センタフレーム13に取付けたパワーユニット21(エンジン22及び変速機23からなる。)と、エンジン22へ空気及び燃料を供給するためにエンジン22の後方に設けた吸気装置26と、エンジン22の前部から後方へ延ばした排気装置27と、リヤフレーム14の上部に傾斜可能に取付けた荷台28と、左右の後輪31,31とを備える二人乗りの不整地走行車両である。
吸気装置26は、エンジン22側に接続したキャブレタ33と、このキャブレタ33に接続したエアクリーナ装置35とを備える。
【0015】
ここで、11aはバンパ支持パイプ、11bはバンパ、11cはバンパ11bとフロントフレーム12の上部とを連結する連結パイプ、36はフロントフレーム12で支持したラジエータ、37は燃料タンク、38はパワーユニット21側と客室側とを隔てる上側隔壁、39はパワーユニット21側と車体の左右縁部側とを隔てる左右一対のサイド隔壁(手前側の符号39のみ示す。)、40は上記の燃料タンク37、上側隔壁38、左右のサイド隔壁39,39で囲まれるエンジンルーム、41はフロントカバー、42はハンドル、43,44(手前側の符号43のみ示す。)はセンタフレーム13に取付けた左右のシート、45は前輪18,18を操舵するためにハンドル42に連結するとともにフロントフレーム12で支持した分割式のステアリングシャフト、46,46(手前側の符号46のみ示す。)はリヤフェンダ、47,47(手前側の符号47のみ示す。)はセンタフレーム13に立てた左右のロールバー、48,48(手前側の符号48のみ示す。)はフロントフレーム12とロールバー47,47に渡したアッパフレーム、49,49(手前側の符号49のみ示す。)はテールランプである。
【0016】
図2は本発明に係る車両の平面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。)であり、車体フレーム11のセンタフレーム13に左右一対のセンタサイドフレーム51,51を設け、これらのセンタサイドフレーム51,51にシートフレーム部材52を取付け、このシートフレーム部材52に左右のシート43,44を取付け、また、車体フレーム11のリヤフレーム14に左右一対のリヤサイドフレーム54,54を設け、これらのリヤサイドフレーム54,54間に平面視で、吸気装置26を構成するエアクリーナ本体56と、排気装置27を構成するマフラ57を配置したことを示す。
【0017】
シートフレーム部材52は、シート43,44を支持するシート支持プレート65,65と、これらのシート支持プレート65,65を連結する連結フレーム66と、各シート支持プレート65から側方に突出させた側部フレーム67とからなり、肘掛け(不図示)を支持する。
リヤフレーム14は、左右一対のリヤサイドフレーム54,54に荷台28を取付けた部材である。
【0018】
燃料タンク37はシート43,44の下方に且つ車幅方向に延びるように配置した部品である。
上側隔壁38は、車体左右方向の幅を左右のセンタサイドフレーム51,51の間隔とほぼ同一とし、車両前後方向の長さを平面視でほぼパワーユニット21が隠れる長さとした部材である。サイド隔壁39は、センタサイドフレーム51の側面にほぼ沿って配置した部材である。
【0019】
図3は本発明に係るフロントフレーム及びセンタフレームを示す側面図であり、フロントフレーム12は、センタサイドフレーム51に連結したフロントロアフレーム151と、このフロントロアフレーム151から立ち上げたフロントメイン起立フレーム152及びフロントサブ起立フレーム153と、フロントメイン起立フレーム152の途中から車両前方斜め上方に延ばすとともにフロントサブ起立フレーム153の上端に連結した中間サイドフレーム154と、この中間サイドフレーム154からほぼ上方に延ばした上部起立フレーム156と、この上部起立フレーム156及びフロントメイン起立フレーム152の各上端で支持したU字状フレーム157とを備え、上記したフロントロアフレーム151、フロントサブ起立フレーム153、中間サイドフレーム154、上部起立フレーム156はそれぞれ左右一対設けた部材である。
【0020】
フロントロアフレーム151は、サスペンションアーム(ロアアーム)を支持するロアブラケット161を取付けた部材であり、中間サイドフレーム154はサスペンションアーム(アッパアーム)を支持するアッパブラケット162を取付けた部材である。
【0021】
フロントサブ起立フレーム153は、断面コ字状の構造用部材であり、サスペンションアーム(ロアアーム及びアッパアーム)を支持する部材でもある。
U字状フレーム157は、フロント側サスペンションの緩衝部材となるクッションユニットの一端を支持するクッション支持ブラケット163を取付けた部材である。
【0022】
センタフレーム13は、センタサイドフレーム51から立ち上げたセンタメイン起立フレーム166及びセンタサブ起立フレーム167と、センタメイン起立フレーム166の途中から車両前方へ延ばすとともにセンタサブ起立フレーム167の上端に連結したセンタ上部フレーム168と、センタメイン起立フレーム166及びセンタサブ起立フレーム167のそれぞれに渡して取付けたセンタ中間フレーム169とを備える。
【0023】
ここで、171はフロントフレーム12のフロントメイン起立フレーム152とセンタフレーム13のセンタサブ起立フレーム167との間にセンタサイドフレーム51と平行に渡して取付けたサブフレームである。
【0024】
センタメイン起立フレーム166は、リヤフレーム14(図1参照)を連結するための上部突出部173、この上部突出部173に取付けた上部連結部材174、下部突出部176、この下部突出部176に取付けた下部連結部材177を備える。
サブフレーム171は、乗員が足を載せる床板を取付ける部材である。
【0025】
図4は本発明に係る車体フレームの平面図であり、フロントフレーム12は、左右のフロントロアフレーム151,151間に渡して取付けた第1クロスパイプ181と、左右のフロントメイン起立フレーム152,152間に渡して取付けた第2クロスパイプ182と、左右のフロントサブ起立フレーム153,153間に渡して取付けた第3クロスパイプ183と、左右の中間サイドフレーム154,154間に渡して取付けた第4クロスパイプ184と、U字状フレーム157の車幅方向に渡して取付けた第5クロスパイプ185と、第2クロスパイプ182及び第4クロスパイプ184のそれぞれに渡して取付けた前後連結パイプ187,187とを備える。
【0026】
第3クロスパイプ183は、ラジエータ36(図1参照)の下端を支持するラジエータ下端支持ブラケット191を取付けた部材であり、第5クロスパイプ185は、ラジエータ36の上部を支持するラジエータ上部支持ブラケット192,192を前方へ突出するように取付けた部材である。
【0027】
U字状フレーム157は、車両前後方向に延びる前後延出部157a,157aと、車幅方向に延びる左右延出部157bとを一体成形したものであり、その内側に空間193を形成することができ、この空間193内に、ラジエータ36、補機類(例えば、電装部品)等を配置することが可能になり、これらのラジエータ36、補機類等を、特に車両側方から保護することができる。
また、U字状フレーム157は、前後延出部157a,157aで左右のアッパフレーム48(図1参照)を支持する部材でもある。
【0028】
図中、194は左右のセンタサイドフレーム51,51に渡して連結するとともに左右のフロントロアフレーム151,151の各後端を連結したロアクロスメンバ、195はセンタサイドフレーム51,51間に渡して取付けたセンタ第1クロスメンバ、196はセンタメイン起立フレーム166,166に渡して取付けたセンタ第2クロスメンバである。
【0029】
図5は図3の5矢視図であり、フロントフレーム12でラジエータ36を支持したことを示す。詳しくは、ラジエータ36の下端を、第3クロスパイプ183に設けたラジエータ下端支持ブラケット191に取付け、ラジエータ36の上部の側面を、第5クロスパイプ185に設けたラジエータ上部支持ブラケット192,192にステー198を介して取付けたことを示す。U字状フレーム157は、ラジエータ36の上部を囲み、ラジエータ36、特にラジエータ36の両側部を前後延出部157a,157aで保護する。
【0030】
以上の図3及び図4で説明したように、本発明は第1に、車体フレーム11の前部に、前輪用サスペンションを支持する前輪用サスペンション支持部としてのフロントサブ起立フレーム153、ロアブラケット161、アッパブラケット162を備えるフロントフレーム12を設け、このフロントフレーム12にラジエータ36(図1参照)、補機類を取付けた車両10(図1参照)の車体フレーム構造において、フロントフレーム12の上部に車両前方側を開放するU字状フレーム157を備えることを特徴とする。
【0031】
フロントフレーム12の上部に車両前方側を開放するU字状フレーム157を備えるので、フロントフレーム12の上部にU字状フレーム157で囲まれる空間193を形成することができ、この空間193にラジエータ36、補機類を配置することができて、ラジエータ36、補機類をU字状フレーム157で周囲から保護することが可能になる。
【0032】
また、U字状フレーム157にラジエータ36を取付けることで、ラジエータ36を車両10の高い位置に配置することができ、例えば、河川、沼地等を走行する際に、ラジエータ36を水没し難くすることができる。
【0033】
本発明は第2に、図1及び図2に示したように、U字状フレーム157により、前部にラジエータ36、後部にステアリングシャフト45を包含することを特徴とする。
U字状フレーム157により、前部にラジエータ36、後部にステアリングシャフト45を包含するので、U字状フレーム157の前部でラジエータ36を保護し、U字状フレーム157の後部でステアリングシャフト45を保護することができる。
【0034】
本発明は第3に、U字状フレーム157の開放側にバンパ11bを連結したので、U字フレーム157の剛性を高めることができ、U字状フレーム157内に配置したラジエータ36、補機類等をより確実に保護することができる。
【0035】
尚、本実施形態では、図4に示したように、U字状としたU字状フレーム157でラジエータ36等を保護する構造としたが、これに限らず、U字状フレーム157に代えてロ(読みは「ろ」)字状のフレームでラジエータ等を保護する構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の車体フレーム構造は、不整地走行車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る車体フレーム構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の平面図である。
【図3】本発明に係るフロントフレーム及びセンタフレームを示す側面図である。
【図4】本発明に係る車体フレームの平面図である。
【図5】図3の5矢視図である。
【符号の説明】
【0038】
10…車両、11…車体フレーム、11b…バンパ、12…フロントフレーム、36…ラジエータ、45…ステアリングシャフト、153,161,162…前輪用サスペンション支持部(フロントサブ起立フレーム、ロアブラケット、アッパブラケット)、193…空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前部に前輪用サスペンションを支持するフロントフレームを設け、このフロントフレームにラジエータ、補機類を取付けた車両の車体フレーム構造において、
前記フロントフレームは、上部に車両前方側を開放するU字状フレームを備えることを特徴とする車両の車体フレーム構造。
【請求項2】
前記U字状フレームは、前部にラジエータ、後部にステアリングシャフトを包含することを特徴とする請求項1記載の車両の車体フレーム構造。
【請求項3】
前記U字状フレームは、開放側にバンパを連結したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の車体フレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−103369(P2006−103369A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289066(P2004−289066)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】