説明

車両の車体上部構造

【課題】天井部における天井パネルの組み付け作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保たれるようにする。
【解決手段】車両の車体上部構造は、車体2の上面を形成するルーフパネル30と、ルーフパネル30の下方近傍に位置して車体2内部の車室9の上面を形成する天井部31とを備える。天井部31は、その外縁部を構成する天井枠部材34と、天井枠部材34で囲まれた天井開口35をその上方から閉じ、外縁部がルーフパネル30と天井枠部材34との間に形成された各間隙40〜42に挿入されると共に外縁部が天井枠部材34の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネル45とを有する。天井パネル45が車室9側から天井枠部材34の上面側に向かって天井開口35を通過できるようにする。天井パネル45の外縁部から天井開口35を通し車室9側に挿入可能とされる可撓性手掛体51を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井枠部材に囲まれた天井開口をその上方から閉じて、その外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルを有した車両の車体上部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体上部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体上部構造は、車体の上面を形成するルーフパネルと、このルーフパネルの下方近傍に位置して車体内部の車室の上面を形成する天井部とを備えている。この天井部は、その外縁部を構成する天井枠部材と、この天井枠部材で囲まれた天井開口をその上方から閉じ、外縁部が上記ルーフパネルと天井枠部材との間に形成された各間隙に挿入されると共に上記外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有している。この場合、天井パネルは、車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって上記天井開口を通過可能とされている。
【0003】
上記構成において、天井部における天井パネルの組み付け作業をする場合には、まず、この天井パネルを車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって天井開口を通過させる。次に、上記ルーフパネルと天井枠部材との各前縁部同士の間に形成された前部間隙に上記天井パネルの前縁部を深く挿入し、これにより、上記ルーフパネルと天井枠部材との各後縁部同士の間に形成された後部間隙の前方近傍に、上記天井パネルの後縁部を位置させる。次に、この天井パネルを後方移動させて、この天井パネルの後縁部を上記後部間隙に適量挿入すれば、この天井パネルの組み付け作業が終る。
【0004】
上記の場合、天井パネルの前縁部を前部間隙に深く挿入させた状態から、上記天井パネルの後縁部を後部間隙に挿入させようとして、この天井パネルを後方移動させる場合、通常、作業者は、この天井パネルの下面にその手の手のひらを圧接させてこの手を後方移動させる。そして、この際、天井パネルの下面と手のひらとの間に生じる摩擦力により、この天井パネルが後方移動させられて、その後縁部が上記後部間隙に適量挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−315237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記天井パネルの組み付け作業において、上記したように天井パネルを後方移動させるときには、この天井パネルの下面に手のひらを圧接させるが、この場合、この手のひらの圧接により、天井パネルの下面に汚れ、凹み、傷付きなどの汚損が生じるおそれがある。そして、この場合には、車室の見栄えが阻害されて車両の商品価値が低下するという不都合を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、天井部が、天井枠部材と、この天井枠部材に囲まれた天井開口をその上方から閉じて、その外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有した車両の車体上部構造において、上記天井部における天井パネルの組み付け作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保たれるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車体2の上面を形成するルーフパネル30と、このルーフパネル30の下方近傍に位置して車体2内部の車室9の上面を形成する天井部31とを備え、この天井部31が、その外縁部を構成する天井枠部材34と、この天井枠部材34で囲まれた天井開口35をその上方から閉じ、外縁部が上記ルーフパネル30と天井枠部材34との間に形成された各間隙40〜42に挿入されると共に上記外縁部が上記天井枠部材34の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネル45とを有し、この天井パネル45が車室9側から上記天井枠部材34の上面側に向かって上記天井開口35を通過できるようにした車両の車体上部構造において、
上記天井パネル45の外縁部から上記天井開口35を通し車室9側に挿入可能とされる可撓性手掛体51を設けたことを特徴とする車両の車体上部構造である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車体の上面を形成するルーフパネルと、このルーフパネルの下方近傍に位置して車体内部の車室の上面を形成する天井部とを備え、この天井部が、その外縁部を構成する天井枠部材と、この天井枠部材で囲まれた天井開口をその上方から閉じ、外縁部が上記ルーフパネルと天井枠部材との間に形成された各間隙に挿入されると共に上記外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有し、この天井パネルが車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって上記天井開口を通過できるようにした車両の車体上部構造において、
上記天井パネルの外縁部から上記天井開口を通し車室側に挿入可能とされる可撓性手掛体を設けている。
【0012】
このため、上記天井部における天井パネルの組み付け作業は、例えば、次のようにすることができる。
【0013】
なお、上記天井パネルが矩形状である場合において、この矩形状の天井パネルにつき、その一辺に沿う、ある一方向を前方とし、この一方向の逆方向を後方としたとき、この天井パネルの外縁部のうち、その前縁部に上記手掛体を設け、上記一方向に直交する水平方向を左右方向とする。
【0014】
そして、まず、上記天井パネルを車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって上記天井開口を通過させ、上記天井パネルの外縁部を上記天井枠部材の上面に載置する。この際、上記天井パネルの後縁部を把持した作業者による作業により、上記天井パネルを移動させて、次のように隙間と他の隙間とを生じさせる。
【0015】
即ち、左右方向での一方向における上記天井開口の側部開口縁部と上記天井パネルの側縁部との間に、前後方向の各部幅寸法が均一で幅の狭い上記隙間を生じさせる。これにより、上記天井開口に対する左右方向での天井パネルの初期位置決めを行なう。また、これと共に、上記天井開口の後部開口縁部と上記天井パネルの後縁部との間に作業者の手を挿入可能なだけの幅の狭い他の隙間を生じさせる。これにより、上記天井開口に対する前後方向での天井パネルの初期位置決めを行なう。
【0016】
また、上記したように天井パネルの移動により上記隙間と他の隙間とを生じさせる一方、上記各手掛体の自由端部を上記天井開口を通し車室側に挿入させる。この場合、上記各手掛体への作業者の手掛けによる引張荷重により、上記天井パネルの移動作業を補助することができる。
【0017】
次に、上記天井パネルの後縁部を作業者が把持した状態で、上記天井パネルを上記一方向に向かって側方移動させ、まず、上記隙間を閉じる。また、更に、上記天井パネルを側方移動させて、左右方向で、上記天井開口の開口中心に天井パネルのパネル中心を目視により合致させる。これにより、上記天井パネルの左右各側縁部が左右の各側部間隙にそれぞれ適量挿入された状態となる。
【0018】
次に、車室における作業者がその手で上記手掛体に手掛けして、後方や下方に引張し、上記天井パネルを後方移動させる。この場合、天井パネルの前縁部への上記手掛体の連結部が上記天井開口を通し車室側に露出する直前まで上記天井パネルを後方移動させる。すると、上記他の隙間が閉じられると共に上記天井パネルの前、後縁部が前後方向の各前、後部間隙にそれぞれ適量挿入された状態となる。
【0019】
次に、上記天井パネルと天井枠部材との各前縁部同士の間の隙間を通し上記手掛体を上記前部間隙に押し込み、この前部間隙内に収容させれば、上記天井パネルの組み付け作業が終る。
【0020】
このため、上記した天井パネルの組み付け作業において、上記天井枠部材の上面に沿うよう上記天井パネルを移動させ、この天井パネルの外縁部を上記各間隙に適量挿入させようとする場合、上記した天井パネルの移動は、作業者が上記手掛体に手を掛けて引張荷重を与えることにより、容易にすることができる。よって、上記天井部における天井パネルの組み付け作業が容易にできる。しかも、上記天井パネルの移動は上記手掛体に手を掛けることにより達成されて、上記天井パネルへの手の接触が抑制されることから、その分、手の接触による天井パネルの汚損の発生が防止されて、車室の見栄えが良好に保たれる。
【0021】
また、上記手掛体を設けた本発明における天井パネルの組み付け作業は、手掛体に手を掛けて引張荷重を与える、という手作業を要するものであるため、特に、ピックアップトラックのような小型車に採用される比較的小さい形状の天井パネルの組み付け作業にとって有益である。
【0022】
また、上記発明によれば、天井部における天井パネルの組み付け作業は容易にでき、かつ、このようにした場合でも、車室の見栄えは良好に保たれることから、上記天井部をルーフパネル側に吊ったりクリップで取り付けたりするような構成複雑なものにしないで足り、よって、上記発明のものは、生産性が向上して安価に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図3のI−I線矢視断面図である。
【図2】車両の側面図である。
【図3】車両の部分平面部分破断図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面部分破断図である。
【図5】図3のV−V線矢視断面部分破断図である。
【図6】車体の部分斜視展開図である。
【図7】図3のVII−VII線矢視断面図で、手掛体を自由状態にした図である。
【図8】天井パネルの組み付け方法の前段を示す図である。
【図9】天井パネルの組み付け方法の後段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両の車体上部構造に関し、天井部が、天井枠部材と、この天井枠部材に囲まれた天井開口をその上方から閉じて、その外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有した車両の車体上部構造において、上記天井部における天井パネルの組み付け作業が容易にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車室の見栄えが良好に保たれるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0025】
即ち、車両の車体上部構造は、車体の上面を形成するルーフパネルと、このルーフパネルの下方近傍に位置して車体内部の車室の上面を形成する天井部とを備える。この天井部は、その外縁部を構成する天井枠部材と、この天井枠部材で囲まれた天井開口をその上方から閉じ、外縁部が上記ルーフパネルと天井枠部材との間に形成された各間隙に挿入されると共に上記外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有している。この天井パネルは車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって上記天井開口を通過できることとされている。上記天井パネルの外縁部から上記天井開口を通し車室側に挿入可能とされる可撓性手掛体が設けられている。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図1〜6において、符号1は、ピックアップトラックで例示される車両である。また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示し、下記する左右とは上記前方に向かっての車体2の幅方向をいうものとする。
【0028】
上記車体2は、その前部を構成する運転台3と、後部を構成してこの運転台3に連設される荷台4とを備え、上記車体2は、前、後車輪5,6により走行面7上に支持されている。上記運転台3の内部が車室9とされ、上記車両1は、車体2の平面視(図3)で、この車体2の幅方向の中心を通る車体中心線10を基準として左右対称形とされている。
【0029】
上記運転台3の側部にドア開口13が形成され、このドア開口13を開閉可能に閉じるサイドドア14が設けられている。また、上記運転台3の前上部にフロントウィンド15が設けられている。
【0030】
上記運転台3は板金製で、その下部を構成する車体フレーム18から上方に延出するそれぞれ左右一対の前ピラー19,19および後ピラー20,20と、運転台3の上部の左右各側部においてそれぞれ前後方向に延び、上記前、後ピラー19,20の各延出端部に跨るように支持されるルーフサイドレール21と、左右に延び、上記左右前ピラー19,19の各延出端部に跨るように支持される前ヘッダパネル22と、上下かつ左右に延び、上記左右後ピラー20,20に跨るように支持される後パネル23とを有している。
【0031】
上記後パネル23は、この後パネル23を全体的に構成する後パネル本体26と、この後パネル本体26の上端縁部から一体的に後方に向かって延出する外向きフランジ27とを有している。
【0032】
上記運転台3は、この運転台3の上面を形成するルーフパネル30を備えている。このルーフパネル30の左右各側縁部はそれぞれ上記各ルーフサイドレール21の外側部に結合され、上記ルーフパネル30の前縁部は上記前ヘッダパネル22の前縁部に結合され、上記ルーフパネル30の後縁部は上記後パネル23の外向きフランジ27の後縁部に結合されている。
【0033】
上記の場合、前、後ピラー19,20と、ルーフサイドレール21およびルーフパネル30の外側縁部とで囲まれた空間が前記ドア開口13とされている。また、左右前ピラー19,19の各上部と、前ヘッダパネル22およびルーフパネル30の前縁部とで囲まれた空間に前記フロントウィンド15が設けられている。
【0034】
上記車体2の運転台3は、上記ルーフパネル30の下方近傍に位置し、上記車室9の上面を形成する天井部31を備えている。この天井部31は、車体2の平面視で、その外縁部を構成する矩形状の天井枠部材34を有し、この天井枠部材34で囲まれるようこの天井枠部材34の内側に矩形状の天井開口35が形成されている。
【0035】
具体的には、上記天井枠部材34は、前記左右ルーフサイドレール21,21、前ヘッダパネル22、および後パネル23の外向きフランジ27により構成されている。また、上記天井開口35は車体2の幅方向に長い長方形状をなし、上記天井開口35の車体2の幅方向における開口中心36は上記車体中心線10に合致している。
【0036】
上記左右各ルーフサイドレール21の頂部にはそれぞれゴム製の弾性体39が嵌合固着され、これら各ルーフサイドレール21および各弾性体39と上記ルーフパネル30左右各側縁部との間には車体2の幅方向で車室9の内方に向かって開く側部間隙40が形成されている。また、上記前ヘッダパネル22と上記ルーフパネル30の前縁部との間には後方に向かって開く前部間隙41が形成されている。また、上記後パネル23の外向きフランジ27と上記ルーフパネル30の後縁部との間には前方に向かって開く後部間隙42が形成されている。
【0037】
上記天井部31は、上記天井開口35をその上方から閉じ、外縁部の長手方向の各部分が、それぞれ上記各間隙40〜42に適量挿入されると共に上記天井枠部材34の上面に載置されて支持される天井パネル45と、上記ルーフパネル30と天井パネル45との各外縁部の間に介設され、この天井パネル45を上記天井枠部材34の上面に弾性的に圧接させる弾性圧接体46とを有している。
【0038】
具体的には、車体2の平面視で、上記天井パネル45は上記天井開口35と相似状の矩形状であって、車体2の幅方向に長い長方形状をなしている。上記天井パネル45は、その車体2の幅方向でのパネル中心47が上記天井開口35の開口中心36に合致するよう上記天井部31に組み付けられている。
【0039】
上記天井パネル45は樹脂製で、全体的に弾性かつ可撓性を有している。この天井パネル45を屈曲してコンパクトにさせるなどしてやれば、この天井パネル45は、上記運転台3の外部から上記ドア開口13を通過して上記車室9側に挿入可能とされている。また、上記天井パネル45をコンパクトにしたり、車体2の平面視で上記天井開口35の開口中心36に対し上記天井パネル45のパネル中心47を傾斜させたりしてやれば、上記天井パネル45は、上記車室9側から上記天井枠部材34の上面側に向かう方向で上記天井開口35を通過可能とされ、また、これとは逆方向にも上記天井開口35を通過可能とされている。
【0040】
前記弾性圧接体46は、上記天井パネル45の前縁部上面に取り付けられ左右等間隔に配置される複数個(9個)のものと、この天井パネル45の後縁部上面に取り付けられ左右等間隔に配置される複数個(3個)のものとで構成されている。
【0041】
上記天井枠部材34を構成する後パネル23において、その後パネル本体26から外向きフランジ27への遷移部における角部に凹形状の目印部49が形成され、この目印部49は車体2の幅方向で上記車体中心線10上に配置されている。また、上記天井パネル45の後縁部であって、上記パネル中心47上に切り欠き状の他の目印部50が形成されている。
【0042】
上記天井パネル45の外縁部である前縁部に、上記パネル中心47を中心として左右振り分け状に一対の可撓性手掛体51,51が取り付けられている。これら各手掛体51は、それぞれ環形状の紐材で形成され、その一部分が上記天井パネル45の前縁部に形成された取付孔52に挿通されて、上記天井パネル45の前縁部に取り付けられている。上記各手掛体51の自由端部に、車室9における作業者54がその手55により手掛けが可能とされる。この手掛けとは、上記各手掛体51の自由端部を把持したり、その環形状の内側に手55の指を引っ掛けたりすることである。
【0043】
車両1の通常時、図1中実線で示すように、上記各手掛体51は上記前部間隙41内に収納される。一方、後述する天井部31における天井パネル45の組み付け作業時には、図1中一点鎖線、二点鎖線で示すように、上記各手掛体51は上記天井パネル45の前縁部から延出して、その自由端部が上記天井開口35を通し車室9側に垂下状に挿入可能とされている。
【0044】
図1,3〜5,8,9を参照して、上記構成の天井部31における天井パネル45の組み付け作業する場合の組み付け方法につき説明する。
【0045】
上記天井パネル45の組み付け作業に際しては、まず、この組み付け作業の前段として天井パネル45を車室9側から上記天井枠部材34の上面側に向かって上記天井開口35を通過させる。この作業は、車室9における作業者54がその手55で主に上記天井パネル45の後縁部を把持して行なう。
【0046】
次に、図1,4,5中、各一点鎖線と、特に図8とで示すように、上記天井開口35を通過させた天井パネル45の外縁部を、この通過作業に連続する作業として上記天井枠部材34の上面に載置する。
【0047】
また、この際、上記天井パネル45の後縁部を把持した作業者54による作業により、上記弾性圧接体46による弾性力に対抗しながら上記天井パネル45を移動させて、次のように隙間57と他の隙間58とを生じさせる。
【0048】
即ち、左右方向での一方向(右方向)における上記天井開口35の側部開口縁部と上記天井パネル45の側縁部との間に、前後方向の各部幅寸法が均一で幅の狭い上記隙間57を生じさせる。これにより、上記天井開口35に対する左右方向での天井パネル45の初期位置決めを行なう。また、これと共に、上記天井開口35の後部開口縁部と上記天井パネル45の後縁部との間に作業者54の手55を挿入可能なだけの幅の狭い他の隙間58を生じさせる。これにより、上記天井開口35に対する前後方向での天井パネル45の初期位置決めを行なう。
【0049】
また、上記したように天井パネル45の移動により上記隙間57と他の隙間58とを生じさせる一方、上記各手掛体51の自由端部を上記天井開口35を通し車室9側に挿入させる。この場合、上記各手掛体51への作業者54の手掛けによる引張荷重により、上記天井パネル45の移動作業を補助することができる。
【0050】
次に、この組み付け作業の後段として、上記天井パネル45の後縁部を作業者54が把持した状態で、上記天井パネル45を上記一方向(右方向)に向かって側方移動Aさせ、まず、上記隙間57を閉じる。また、更に、上記天井パネル45を側方移動Aさせて、上記左右手掛体51,51を目視で上記天井開口35の開口中心36上に位置させ、その一方、上記天井枠部材34の目印部49に上記天井パネル45の他の目印部50を目視で合致させる。つまり、左右方向で、上記天井開口35の開口中心36に天井パネル45のパネル中心47を目視により合致させる。これにより、上記天井パネル45の左右各側縁部が上記した左右の各側部間隙40にそれぞれ適量挿入された状態となる。なお、上記側方移動Aは平行移動であってもよく、天井パネル45の前部側と後部側とを交互に側方移動Aさせてもよい。
【0051】
次に、図9で示すように、車室9における作業者54がその両手55で上記天井パネル45の各手掛体51に手掛けして、図1中二点鎖線で示すように後方や下方に引張し、上記天井パネル45をできるだけ平行に後方移動Bさせる。この場合、天井パネル45の前縁部への上記各手掛体51の連結部(取付孔52)が上記天井開口35を通し車室9側に露出する直前まで上記天井パネル45を後方移動Bさせる。すると、上記他の隙間58が閉じられると共に上記天井パネル45の前、後縁部が上記した前後方向の各前、後部間隙41,42にそれぞれ適量挿入された状態となって、図1〜4中実線の状態となる。
【0052】
次に、この組み付け作業の終段として、上記弾性圧接体46の弾性力に対抗して、上記天井パネル45の前縁部と上記天井枠部材34の前ヘッダパネル22との間の隙間を通し上記各手掛体51を樹脂製のヘラなどを用いて上記前部間隙41に押し込み、この前部間隙41内に収容させれば(図1中実線)、上記天井パネル45の組み付け作業が終る。
【0053】
上記構成によれば、天井パネル45の組み付け作業において、まず、前記したように、前後方向の各部幅寸法が均一な隙間57を生じさせ、これにより、上記天井開口35に対する左右方向での天井パネル45の初期位置決めがなされる。このため、上記天井パネル45の側方移動A時に上記隙間57の幅寸法が前後方向の各部で均等に漸減する状態を観ておけば、上記天井パネル45の前後方向の各部をそれぞれ適量だけ側方移動Aさせることが精度よくできる。よって、上記天井パネル45の左右各側縁部を上記した左右の各側部間隙40にそれぞれ適量挿入させることが精度よくできる。
【0054】
また、前記したように、天井パネル45の側方移動Aは、作業者54が主にその手55で天井パネル45の後縁部を把持して行なうが、この天井パネル45の後縁部は、上記組み付け作業の後段で上記後部間隙42に挿入される。このため、この組み付け作業の終了後には、上記天井パネル45の後縁部が車室9側から見えることが防止される。よって、上記天井パネル45の後縁部を作業者54が把持したことにより、仮にこの後縁部に汚損が生じたとしても、この汚損が車室9側から見えることは防止され、車室9の見栄えが良好に保たれる。
【0055】
また、前記したように、天井パネル45の外縁部から天井開口35を通し車室9側に挿入可能とされる可撓性手掛体51を設けている。
【0056】
このため、上記天井パネル45の組み付け作業において、上記天井枠部材34の上面に沿うよう上記天井パネル45を移動させ、この天井パネル45の外縁部を上記各間隙40〜42に適量挿入させようとする場合、上記した天井パネル45の移動は、作業者54が上記各手掛体51に手55を掛けて引張荷重を与えることにより、容易にすることができる。よって、上記天井部31における天井パネル45の組み付け作業が容易にできる。しかも、上記天井パネル45の移動は上記各手掛体51に手55を掛けることにより達成されて、上記天井パネル45への手55の接触が抑制されることから、その分、手55の接触による天井パネル45の汚損の発生が防止されて、車室9の見栄えが良好に保たれる。
【0057】
ここで、仮に、上記各間隙40〜42の上下方向の間隙寸法が小さいとすると、その分、これら間隙40〜42に挿入された天井パネル45の外縁部が上記ルーフパネル30の外縁部の下面や天井枠部材34の上面に圧接するときの圧接力が、より大きくなりがちとなる。そして、このように天井パネル45の外縁部の圧接力が大きくなると、この天井パネル45の組み付け作業時に、上記天井パネル45の下面への手のひらの摩擦力で作業者54が天井パネル45を移動させようとしても、この移動は、上記した大きい圧接力に基づく大きい摩擦抵抗によって阻害されることとなり、よって、この天井パネル45の組み付け作業は煩雑になると考えられる。
【0058】
しかし、前記実施例によれば、天井パネル45の組み付け作業時の移動は、上記した手のひらの摩擦力に大きくは頼ることなく、作業者54が手掛体51に手55を掛けて引張荷重を与えることにより容易にできる。このため、上記した各間隙40〜42の上下方向の間隙寸法を、ある程度小さくしたとしても、天井パネル45の組み付け作業は容易にできることから、上記各間隙40〜42の上下方向の間隙寸法を小さくすることができる。よって、その分、上記天井部31の天井枠部材34の位置を高くして車室9の上下寸法を大きくすることができ、つまり、上記各手掛体51を設けたことにより、車室9内の居住スペースを大きくして、その居住性を向上させることができる。
【0059】
また、上記手掛体51を設けた天井部31における天井パネル45の組み付け作業は、手掛体51に手55を掛けて引張荷重を与える、という手作業を要するものであるため、特に、ピックアップトラックのような小型車に採用される比較的小さい形状の天井パネル45の組み付け作業にとって有益である。
【0060】
また、上記構成によれば、天井部31における天井パネル45の組み付け作業が容易にでき、かつ、このようにした場合でも、車室9の見栄えは良好に保たれることから、上記天井部31をルーフパネル30側に吊ったりクリップで取り付けたりするような構成複雑なものにしないで足り、よって、上記手掛体51を設けた天井部31は、その生産性が向上して安価に形成できる。
【0061】
一方、上記のように組み付けた天井パネル45を修理したり、新しいものに交換したりする場合など、この天井パネル45を取り外す場合には、例えば、次のようにすればよい。
【0062】
即ち、まず、マイナスドライバーなどを用いて上記前部間隙41内から各手掛体51の自由端部を車室9側に引っ張り出す。次に、上記天井部31における天井パネル45の組み付け作業時と同様に上記各手掛体51に手掛けして上記天井パネル45を後方移動させ、上記天井開口35の前部開口縁部と上記天井パネル45の前縁部との間に隙間を生じさせる。そして、上記各手掛体51に下方に向かう引張荷重を与えるなどして、上記天井パネル45を上記天井枠部材34の上面側から車室9側に向かって上記天井開口35を通過させる。すると、上記天井パネル45の取り外しができる。そして、このように天井パネル45を取り外す作業をする場合にも、上記各手掛体51の有効利用が可能なため、天井部31における上記各手掛体51の設定は極めて有益である。
【0063】
また、上記各手掛体51を設けたことにより、上記天井部31における天井パネル45の取り付け、取り外し作業の繰り返しサービスが容易に提供可能となる。
【0064】
なお、以上は図示の例によるが、上記天井部31の構成は、乗用車や大型車にも適用可能である。また、上記天井枠部材34の上面への天井パネル45の圧接は、この天井パネル45自体が有する弾性により達成されるようにしてもよく、この場合、上記弾性圧接体46は設けなくてもよい。また、上記手掛体51は、天井パネル45の前縁部に加え、もしくはこれ以外の外縁部に設けてもよい。また、上記手掛体51を単一のみ設ける場合には、天井パネル45のパネル中心47上に設けることが好ましい。また、上記手掛体51は、一本の紐で構成してもよく、ベルト形状のものであってもよい。
【0065】
また、上記天井パネル45の後縁部に上記手掛体51を設けた場合には、上記天井パネル45の組み付け作業時には、上記他の隙間58は上記天井開口35の前部開口縁部と上記天井パネル45の前縁部との間に形成すればよく、かつ、上記天井パネル45に引張荷重を与えて、この天井パネル45を前方に移動させるようにすればよい。また、上記天井パネル45の側縁部に上記手掛体51を設けた場合には、上記天井パネル45に引張荷重を与えて、この天井パネル45を車体2の幅方向に移動させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 車体
3 運転台
9 車室
10 車体中心線
30 ルーフパネル
31 天井部
34 天井枠部材
35 天井開口
36 開口中心
39 弾性体
40 間隙
41 間隙
42 間隙
45 天井パネル
46 弾性圧接体
47 パネル中心
49 目印部
50 他の目印部
51 手掛体
52 取付孔
54 作業者
55 手
57 隙間
58 他の隙間
A 側方移動
B 後方移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の上面を形成するルーフパネルと、このルーフパネルの下方近傍に位置して車体内部の車室の上面を形成する天井部とを備え、この天井部が、その外縁部を構成する天井枠部材と、この天井枠部材で囲まれた天井開口をその上方から閉じ、外縁部が上記ルーフパネルと天井枠部材との間に形成された各間隙に挿入されると共に上記外縁部が上記天井枠部材の上面に弾性的に圧接されて支持される天井パネルとを有し、この天井パネルが車室側から上記天井枠部材の上面側に向かって上記天井開口を通過できるようにした車両の車体上部構造において、
上記天井パネルの外縁部から上記天井開口を通し車室側に挿入可能とされる可撓性手掛体を設けたことを特徴とする車両の車体上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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