説明

車両の車体前部構造

【課題】車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供する。
【解決手段】本発明による車両の車体前部構造によれば、ラジエタ42と、このラジエタを収容するシュラウド枠部38と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャ10と、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材34と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材50と、を備え、足払い部材は、シュラウド枠部の下部と、バンパフェイシャの下部との間に配置され、所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、この足払い部材には、その足払い部材の所定の上下幅の断面において延びるように、エンジンの吸気ダクトに接続される所定の容積を有するレゾネータ72が一体的に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体前部構造に係り、特に、足払い部材を有する車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、バンパ内には、車両の歩行者への衝突の際に歩行者の脚部への衝撃力をやわらげる衝撃吸収部材が設けられている。一方、近年、車両の歩行者への衝突の際における歩行者の頭部への衝撃をよりやわらげるため、上述した衝撃吸収部材の下方で歩行者の脚部を衝突時に前方に払うための所謂足払い部材を設けたものが知られている(特許文献1)。つまり、脚部を前方に払われた歩行者は、およそバンパを中心に回転し、頭部がボンネットに衝突し、歩行者の頭部への衝撃をボンネットで吸収するようにしているのである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−010424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両の他車などへの衝突時における衝突安全性の向上が要望され、また、デザイン面ではフロントオーバーハングの短縮化が要望されており、そのため、エンジンルーム内でのエンジンなどのレイアウト、或いは、フレーム部材のレイアウトが制約を受けることが多くなってきている。また、排ガス規制による触媒の大型化によるエンジンルーム内のレイアウトの制約を受けることもある。
【0005】
ここで、フロントサイドフレームより車幅方向内方側は、エンジン本体の他、エアコンコンプレッサ、バッテリ、吸気ダクト、ECUなどの補機類が多く、上述した制約下で、それらを如何に配置するかが設計上の難点となることが多い。つまり、エンジンや補機類などでスペースが埋め尽くされ、余分なスペースが無いことが多い。特に、過給機付きエンジンや排気量の大きいエンジンなどでは、そのような問題が顕著である。そのような場合、例えば、レゾネータは、所定の容積を必要とするので、余計にエンジンルーム内での配置が困難となる。そこで、従来は、エンジンルーム内に散在する空きスペースに、小容量の複数のレゾネータを配置するなどしており、性能が悪い上にコストもかかっていた。
【0006】
本発明者らは、そのような問題を抱えつつ、フレーム部材やエンジンや補機類などを如何に配置するかを考えた場合、ラジエタとバンパとの間には、通常、何らかの空間、或いは、上述した衝撃吸収部材や足払い部材などがあり、それらの占める領域を有効に活用し得る可能性があることに着目した。一方、ラジエタの前に何かしらの機器を置くとエンジンの冷却効率が下がることになる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明による車両の車体前部構造によれば、ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、足払い部材は、シュラウド枠部の下部と、バンパフェイシャの下部との間に配置され、所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、この足払い部材には、その足払い部材の所定の上下幅の断面において延びるように、エンジンの吸気ダクトに接続される所定の容積を有するレゾネータが一体的に設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、レゾネータが所定の上下幅の足払い部材の断面において延びるように足払い部材に一体的に設けられている。従って、レゾネータをエンジンルーム内の配置の制約を受けずに配置することが可能となる。また、その一体的に設けられたレゾネータの分、エンジンルームにスペースが空き、他の補機類などの配設効率を高めたり、路面側に補機類が突出したりすることを防止することが出来る。また、レゾネータが足払い部材の所定上下幅の断面において延びるようにしているので、ラジエタへの導風を阻害することが無い。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材には、平板状の上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、レゾネータは、足払い部材の上面部より下方で足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる。
このように構成された本発明においては、レゾネータは、足払い部材の上面部より下方で足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びるので、リブにより強度を高めた上で、大容量のレゾネータを設けることが可能となる。また、リブ部の他、吸気ダクトによる足払い部材の剛性の確保が可能である。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及びレゾネータは樹脂製であり、レゾネータは複数のリブと一体成型されている。
このように構成された本発明においては、樹脂の一体成型によりリブ及びレゾネータが成型されているので、軽量化及び低コスト化を図ることが出来る。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、吸気ダクトは、シュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分を有し、レゾネータは、レゾネータ連結ダクトにより、シュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分に結合され、レゾネータ連結ダクトは、吸気ダクトのシュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分から分岐して一対のフロントサイドフレームの車幅方向内方側を降下し、一対のフロントサイドフレームのいずれか一方の下方を通過するように車幅方向に延び、シュラウド枠部の車幅方向外方側を通過するように車体前後方向に延び、足払い部材の車幅方向外方側の端縁部からレゾネータに接続されるようになっている。
このように構成された本発明においては、補機類で密度の高い車体前部の空間を避けてレゾネータ連結ダクトを配設することが出来る。また、一対のフロントサイドフレームの車幅方向内方側を降下しているので、タイヤハウスと干渉しないように連結ダクトを配置することが出来る。そして、従来であれば吸気ダクトを配設していた車体前部、特にエンジンルームにおけるスペースを削減し、他の補機類などの配設効率を高めたり、路面側に補機類が突出したりすることを防止することが出来る。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、レゾネータは、足払い部材の車幅方向のいずれかの端部側に配置され、レゾネータ連結ダクトはレゾネータのその端部側に接続されている。
このように構成された本発明においては、レゾネータ連結ダクトの長さを短くすることが出来る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車体前部のスペースにおける補機類などの配置効率を高めることができる車両の車体前部構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
先ず、本発明の一実施形態による車体前部の全体構造を説明する。図1は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に外装の構造を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に内部の構造を示す斜視図である。
図1に示すように、車両1は、エンジンルームを覆うボンネット2と、その左右両側で車輪4を囲むように延びるフロントフェンダ6と、ボンネット2及びフロントフェンダ6の前方に配置され、フロントフェンダ6とはパーティングライン8で区切られて設けられているフロントバンパフェイシャ10とを備える。このフロントバンパフェイシャ10には、空気をエンジンルームに導入するための中央開口部12及び側方開口部14が形成されている。
【0015】
次に、図2では、このフロントバンパフェイシャ10を取り外し、そのフロントバンパフェイシャ10、ボンネット2及びフロントフェンダ6の図示を仮想線で示した状態での車体前部構造を示す。
図2に示すように、車体前部には、車幅方向の左右両側でそれぞれ車体前後方向に延びるフロントサイドフレーム20と、このフロントサイドフレーム20において、その前方端部に設けられたクラッシュカン22と、フロントサイドフレーム20の上方に設けられたエプロンレインフォースメント24とが備えられている。
【0016】
一対のフロントサイドフレーム20の車幅方向内方側には、エンジン26やトランスミッション28等のエンジン構造体、及び、バッテリ等の補機類30が配置されている。さらに、フロントサイドフレーム20及びエプロンレインフォースメント24に隣接して、フロントサスペンション(図示せず)のばねやダンパ等を支持するサスタワー31が形成されている。
一対のフロントサイドフレーム20の前方側の端部(クラッシュカン22の前方側の端部)には、車幅方向に延び、平面視で弧状に延びるバンパレインフォースメント32と、このバンパレインフォースメント32の前方側に取り付けられ、同じく車幅方向に弧状に延びる、EA(衝突エネルギ吸収)部材34、即ち、歩行者の脚部等を保護するための衝撃吸収部材34が設けられている。
【0017】
さらに、一対のフロントサイドフレーム20の車幅方向内方側には、樹脂製のシュラウド枠部材38が設けられている。このシュラウド枠部材38は、フロントサイドフレーム20及びエプロンレインフォースメント24にブラケット36を介して取り付けられている。このシュラウド枠部材38には、クーラコンデンサ40やラジエタ42等(図3等参照)の冷却系装置、側方エアガイド板46、及び、足払い部材50が取り付けられている。また、フロントサイドフレーム20の車幅方向外方側にはインタークーラ48が設けられている。
【0018】
これらのシュラウド枠部材38、冷却系装置、側方エアガイド板46、インタークーラ48及び足払い部材50の構造及び配置について、図2乃至図5により説明する。図3は、図1において、フロントサイドフレーム20を含むように水平方向に切断し、上方から見た断面を示す車両前部構造の断面図であり、図4は、図3のIV-IV線に沿って見た断面図であり、図5は、図3のV-V線に沿って見た断面図である。
【0019】
先ず、図3に示すように、一対のフロントサイドフレーム20及びクラッシュカン22が、それぞれ車体前後方向に延びており、それらの先端部を連結するように、バンパレインフォースメント32が弧状に延びて取り付けられている。図4及び図5に示すように、バンパレインフォースメント32は閉断面を有し、その前方側の側面にエネルギ吸収部材34が取り付けられている。そして、図4及び図5に示すように、これらのバンパレインフォースメント32及びエネルギ吸収部材34を覆うように、バンパレインカバー35が設けられている。図1及び図2に示すように、バンパレインカバー35は、中央開口部12内で目視可能に車幅方向に延びており、ここに、ライセンスプレート(図示せず)を取付可能となっている。なお、このバンパレインカバー35は、中央開口部12にバンパフェイシャ10と一体成形されていても、別体として、バンパフェイシャ10或いはバンパレインフォースメント32及びエネルギ吸収部材34に取り付けるようにしても良い。
【0020】
次に、図3に示すように、エンジン26及びトランスミッション28のすぐ前方には、後方側から順に、ラジエタファン43、ラジエタ42、クーラコンデンサ40などのエンジン冷却用装置が設けられている。また、ラジエタファン43の周囲には、ラジエタファン43用の吸込みファンカバー45が設けられている。これらのラジエタ42やファンカバー45等の冷却系装置は、詳細な取付構造の説明は省略するが、図3乃至図5に示すように、シュラウド枠部材38に収容されると共に支持されて取り付けられている。
【0021】
図2乃至図5に示すように、シュラウド枠部材38には、その中央部に大きな開口部38aが形成されており、フロントバンパフェイシャ10の中央開口部12からの導入空気が確実にラジエタ42等に当たるようにしている。さらに、その開口部38aの周囲の枠部分で、ラジエタ42等を確実に保持するように全体が一体成形されている。本実施形態では、このシュラウド枠部材38をフロントサイドフレーム20に固定するためのブラケット36も、このシュラウド枠部材38と一体成型されている。
【0022】
次に、図2及び図3に示すように、側方エアガイド板46は、その後縁部がシュラウド枠部材38に取付られ、その取付部から車体前方に向けて延びている。この側方エアガイド板46は、バンパレインフォースメント32、エネルギ吸収部材34、バンパレインカバー35などと干渉しないように、一部が断面コ字状に切り欠かれて形成されている。この側方エアガイド板46は、中央開口部12から導入した空気が、車幅方向外方に逃げるのを防止して、導入空気のほとんどがラジエタ42等を通るようにして、エンジン冷却用装置の冷却効率を高めるためのものである。
また、図4に示すように、シュラウド枠部材38の上方の部分38bは、バンパフェイシャ10と共に仕切り板となっており、側方エアガイド板46と同様に、中央開口部12から導入した空気が、車体上方側に逃げるのを防止するようになっている。
【0023】
次に、図2、図4及び図5に示すように、シュラウド枠部材38の下縁部38cには、板状の足払い部材50が取り付けられている。この足払い部材50は、上述したエネルギ吸収部材34よりも下方に設けられ、そして、シュラウド枠部材38への取付部から車体前方側に向けて延びている。この足払い部材50は、側面視で、その断面が所定の上下幅を有して板状に延びている。詳細には後述するように、この足払い部材50は、上面部から下方に向けて複数のリブ54が設けられて、所定の剛性を保ちつつ、且つ、衝撃も吸収するようになっている。このように設けられた足払い部材50は、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその乗員の脚部を上方に払うようになっている。また、このような足払い部材50により、側方エアガイド板46と同様に、中央開口部12から導入した空気が、車体下方側に逃げるのを防止するようになっている。
【0024】
図2及び図6に示すように、足払い部材50の後縁部52cは、車幅方向にほぼ真っ直ぐに伸びている。ここで、図6は、足払い部材を下方且つ斜め前方から見た斜視図である。そして、ほぼ真っ直ぐ延びることで、シュラウド枠部材38の平らな前面に沿って延びるようにしている。足払い部材50の後縁部52cは、その車幅方向のほぼ全面にわたってシュラウド枠部材38に密着し、シュラウド枠部材38に取り付けられるようになっている。ここで、図7に示すように、足払い部材50のシュラウド枠部材38への取付部では、シュラウド枠部材38の下縁部38cと、足払い部材50のフランジ部50fとが、ボルト及びナット39により互いに固定されるようになっている。図7は、足払い部材とシュラウド枠部材との連結構造の一例を示す図である。
【0025】
図4及び図5に示すように、足払い部材50の上面部52は、側面視で、車体後方側からほぼ平らに延びる平面部52aと、車体前方側の湾曲した湾曲部52bを有している。図7に示すように、足払い部材50には、足払い部材50の上面部52から下方に向けて延びる複数のリブ54が上面部52と一体成型により形成されている。このように、本実施形態では、足払い部材50は、樹脂の一体成型で形成されている。複数のリブ54は、車幅方向に所定の間隔で設けられ、車体前後方向に延びている。そして、複数のリブ54は、後述するレゾネータ72と共に、歩行者の衝突時にその衝突エネルギを吸収し且つ脚部を払うように所定の剛性を得るようになっている。なお、足払い部材50に形成されたレゾネータ72については後述する。
【0026】
図4乃至図7に示すように、上面部52の湾曲部52bは、上面部52の前縁とリブ54の前縁とが車体前後方向に互いに一致する位置(上面部52の前縁部52d)まで湾曲して延びている。
次に、図2及び図6に示すように、足払い部材50の前縁部52dは、車幅方向に弧状に延びている。この弧状の形状は、フロントバンパフェイシャ10と同様の形状であり、フロントバンパフェイシャ10の内方側の側面に沿って延びている。本実施形態では、この前縁部52dは、フロントバンパフェイシャ10に取り付けられておらず、フロントバンパフェイシャ10とは所定の間隔を有している。なお、足払い部材50の前縁部52dを、何らかの方法でフロントバンパフェイシャ10に取り付けても良い。
なお、図2及び図5に示すように、シュラウド枠部材38の上縁部38dには、エンジンの吸気用の空気を取り入れる吸気用開口部38eが形成されている。
【0027】
次に、主に図8乃至図10により、本発明の一実施形態による車体前部構造の吸気系の構造を説明する。図8は、本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す斜視図であり、図9は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気系の構造を示す平面図であり、図10は、本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気系の構造を車体左側から見た状態を示す側面図である。
図8乃至図10に示すように、吸気系の構造として、先ず、空気を外部から取り入れる吸気口60が形成されている。この吸気口60は、図11に示すように、上述したシュラウド枠部材38の吸気用開口部38eのすぐ後方側に配置されており、空気を効率的に吸入することが出来るようになっている。図11は、シュラウド枠部材38の開口部と吸気ダクトの開口部との位置関係を示す断面図である。
【0028】
吸気系構造は、また、この吸気口60から後方に延びると共に車幅方向左側に向けて湾曲し、そして、シュラウド枠部38の上縁部の後方側で車幅方向の左側に向けて延びる第1吸気ダクト62を備える。この第1吸気ダクト62は、エアクリーナボックス64に接続されている。このエアクリーナボックス64には、第2吸気ダクト66が接続されている。吸気口60から吸入された空気は、第1吸気ダクト62及びエアクリーナボックス64を通った後、この第2吸気ダクト66を通る。第2吸気ダクト66は、エンジン26の吸気ポート(図示せず)に接続されている。
【0029】
ここで、本発明の実施形態では、エンジンルームのレイアウトの制約、例えば、吸気ダクトを通す空間やレゾネータを配置する空間が少ないことや、それらのダクトやレゾネータと他の機器との干渉が問題となること、さらに、エンジンの熱害が問題となること等に鑑み、レゾネータの配置を従来とは異なるものとしている。これについて具体的に説明する。
【0030】
つまり、上述した、特に図6に示すように、足払い部材50にはレゾネータ72が設けられている。図6に示すように、このレゾネータ72は、車体前後方向に延びる複数のリブ54と一体的に形成されている。上述したように、足払い部材50は樹脂の一体成型品であり、このレゾネータ72も一体成形されている。本実施形態では、レゾネータ72は、リブの断面内に完全に収まるように形成されている。
【0031】
図8乃至図10に示すように、このレゾネータ72には、レゾネータ連結ダクト74が接続されている。また、レゾネータ連結ダクト74は、上述した第1吸気ダクト62に接続されている。より詳細には、レゾネータ連結ダクト74の一端部は、エアクリーナボックス64に隣接した位置で、第1吸気ダクト62から下方に分岐するように、第1吸気ダクト62に接続されている。
【0032】
図8及び図10に示すように、レゾネータ連結ダクト74は、その分岐部74aから、フロントサイドフレーム20の車幅方向内方側で下方に延び、その後、フロントサイドフレーム20の下方を車幅方向外方に延びている。図8乃至図10に示すように、レゾネータ連結ダクト74は、その後、車体前方側に向かって延び、そして、車幅方向内方に向かって延びている。
【0033】
車幅方向内方に向かって延びた、その先端部(レゾネータ連結ダクト74の他端部)は、足払い部材50の車幅方向左側の端縁部において、レゾネータ72の端縁部に接続されている。図6や図9に示すように、レゾネータ72は、車幅方向左側の端部側に配置されている。なお、吸気ダクトとの関係で、車幅方向右側の端部側に配置しても、或いは、車幅方向の中央部に設けても良い。
【0034】
レゾネータ72の断面を図12に示す。図12は、図6のXII-XII線に沿って見た足払い部材の断面図である。図6及び図12に示すように、レゾネータ72は、リブ54を貫通して延びている。そして、レゾネータ72は、所定の容量を有する箱型の容器として形成され、上述したレゾネータ連結ダクト74への接続部のみ、開口している。
なお、レゾネータ72の変形例として、図13に示すように、レゾネータ72’の断面を円形状に形成してもよく、また、図13に示すように、レゾネータが吸気ダクト72’の一部がリブの断面内にあり、他方の部分がリブの断面内からはみ出るように形成しても良い。
【0035】
また、図14に示すように、予め、足払い部材50の上面部52’、及び、それぞれ孔73’を開けたリブ54’を形成しておき、それらの孔73’にレゾネータとなる角パイプ(或いは、丸パイプ)72’を通すようにしても良い。また、図示しないが、リブ54’に凹部を形成し、その凹部に角パイプ(或いは、丸パイプ)72’を取り付けるようにしても良い。このような構成は、主に、足払い部材50をアルミ合金などの金属で作成し、その孔73’に同じくアルミ合金等の角パイプ72’を通して、溶接などにより固定するとき等に有効である。なお、樹脂製であっても、リブ54’と角パイプ72’とを別々に作製し、その後、リブ54’の孔に角パイプ72’を取り付けるように構成しても良い。
【0036】
このようにして、板状の足払い部材50の内方の空間を有効に利用して、エンジンルームのレイアウトの制約を受けずに、レゾネータ72を配置することが出来る。つまり、レゾネータ72を足払い部材50に形成すれば、エンジンルームのレイアウトの制約を受けずにレゾネータ72及びレゾネータ連結ダクト74を配置し易くなる。その結果、他の機器類も配置が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に外装の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両の車体前部の主に内部の構造を示す斜視図である。
【図3】図1において、フロントサイドフレームを含むように水平方向に切断し、上方から見た断面を示す車両前部構造の断面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【図5】図3のV-V線に沿って見た断面図である。
【図6】足払い部材を下方且つ右斜め前方から見た斜視図である。
【図7】足払い部材とシュラウド枠部材との連結構造の一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による車両の車体前部の吸気系の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気系の構造を示す平面図である。
【図10】本発明の一実施形態による車両の車体前部のエンジンや吸気系の構造を車体左側から見た状態を示す側面図である。
【図11】シュラウド枠部材の開口部と吸気ダクトの開口部との位置関係を示す断面図である。
【図12】図6のXII-XII線に沿って見た足払い部材の断面図である。
【図13】足払い部材の断面形状の変形例を示す断面図である。
【図14】足払い部材を主に金属製の部材で作製する場合の足払い部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
10 フロントバンパフェイシャ
20 フロントサイドフレーム
26 エンジン
32 バンパレインフォースメント
34 衝突エネルギ吸収部材
38 シュラウド枠部材
38a 開口部
38e 吸気用開口部
42 ラジエタ
48 インタークーラ
50 足払い部材
52 足払い部材の上面部
54 足払い部材のリブ
60 吸気口
62 第1吸気ダクト
64 エアクリーナボックス
66 第2吸気ダクト
72 レゾネータ
74 レゾネータ連結ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエタと、このラジエタを収容するシュラウド枠部と、車体前部の外表面をなすバンパフェイシャと、このバンパフェイシャの内方に配置された衝撃吸収部材と、歩行者の車両前部への衝突時にその歩行者の膝よりも下方で歩行者の脚部に当接して衝撃を吸収すると共にその脚部を上方に払うように上記衝撃吸収部材の下方に配置された足払い部材と、を備えた車両の車体前部構造であって、
上記足払い部材は、上記シュラウド枠部の下部と、上記バンパフェイシャの下部との間に配置され、所定の上下幅を有してほぼ水平方向に広がっており、この足払い部材には、その足払い部材の上記所定の上下幅の断面において延びるように、エンジンの吸気ダクトに接続される所定の容積を有するレゾネータが一体的に設けられていることを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
上記足払い部材には、平板状の上面部及びこの上面部から下方に突出するリブ部が形成され、上記レゾネータは、上記足払い部材の上面部より下方で上記足払い部材のリブ部の少なくとも一部を貫通して車幅方向に延びる請求項1に記載の車両の車体前部構造。
【請求項3】
上記足払い部材のリブ部は、車体前後方向に延びる複数のリブが車幅方向に複数個並ぶように形成されたものであり、これらの複数のリブ及び上記レゾネータは樹脂製であり、上記レゾネータは上記複数のリブと一体成型されている請求項2に記載の車両の車体前部構造。
【請求項4】
上記吸気ダクトは、上記シュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分を有し、
上記レゾネータは、レゾネータ連結ダクトにより、上記シュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分に結合され、
上記レゾネータ連結ダクトは、上記吸気ダクトの上記シュラウド枠部の上縁部の後方側で延びる部分から分岐して上記一対のフロントサイドフレームの車幅方向内方側を降下し、上記一対のフロントサイドフレームのいずれか一方の下方を通過するように車幅方向に延び、上記シュラウド枠部の車幅方向外方側を通過するように車体前後方向に延び、上記足払い部材の車幅方向外方側の端縁部から上記レゾネータに接続されるようになっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の車体前部構造。
【請求項5】
レゾネータは、上記足払い部材の車幅方向のいずれかの端部側に配置され、上記レゾネータ連結ダクトは上記レゾネータのその端部側に接続されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−137592(P2008−137592A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328197(P2006−328197)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】