説明

車両の車体前部構造

【課題】 ラジエータの搭載性やエンジンルーム内への部品の組付性を確保しながら、車両の正面衝突時の衝撃吸収性能を高める。
【解決手段】 フロントサイドフレーム11の下方に支持したサブフレーム16の前部横メンバ18から下部ラジエータ支持ブラケット23を車体前方に突設してラジエータ32の下部を支持したので、下部ラジエータ支持ブラケット23に入力された衝突荷重を前部横メンバ18から直接サブフレーム16に伝達して衝撃吸収効果を高めることができる。またフロントサイドフレーム11の前端に突設したラジエータサイドステー14の上端間をラジエータアッパーステー15で連結し、そこにラジエータ32の上部を支持したので、従来の四角枠状のラジエータサポートにラジエータを支持する場合に比べて大型のラジエータを搭載することができるだけでなく、重量の軽減を図ることができ、しかも従来のラジエータサポートに比べて車体前面が広く開口するので部品の組付性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前後方向に延びる左右一対の縦メンバの前部間および後部間をそれぞれ前部横メンバおよび後部横メンバで連結したサブフレームを、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームの下方に支持し、前記左右一対のフロントサイドフレームの前端間にラジエータを支持する車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のフロントサイドメンバの前端間に、左右一対のラジエータサポートサイドと、ラジエータサポートアッパと、ラジエータサポートロアとで四角枠状に形成したラジエータサポートを固定し、このラジエータサポートの内部に冷却系部品(ラジエータ)を支持するものが、下記特許文献1により公知である。
【0003】
また左右一対のサイドメンバの下方にエンジン等を搭載するサブフレームを支持し、ファーストクロスメンバを両サイドメンバの前端よりも車体前方側に位置させるとともに、そのファーストクロスメンバの後面にサブフレームの前部を対向させたものが、下記特許文献2により公知である。
【特許文献1】特開2005−262940号公報
【特許文献2】特開2003−160060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものの如く、フロントサイドメンバの前端間に四角枠状のラジエータサポートを固定したものでは、ラジエータの寸法がラジエータサポートの寸法により制限されてしまい、大型のラジエータを搭載することが難しくなるだけでなく、エンジンルーム内に部品を組み付ける際に四角枠状のラジエータサポートが邪魔になって組付作業性が悪いという問題があった。
【0005】
また上記特許文献2に記載されたものは、車両の正面衝突時にファーストクロスメンバに入力された衝突荷重をサブフレームに効果的に伝達することは可能であるが、ラジエータの搭載性については考慮されていない。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ラジエータの搭載性やエンジンルーム内への部品の組付性を確保しながら、車両の正面衝突時の衝撃吸収性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車体前後方向に延びる左右一対の縦メンバの前部間および後部間をそれぞれ前部横メンバおよび後部横メンバで連結したサブフレームを、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレームの下方に支持し、前記左右一対のフロントサイドフレームの前端間にラジエータを支持する車両の車体前部構造であって、前記前部横メンバから左右一対の下部ラジエータ支持ブラケットを車体前方に突設するとともに、前記フロントサイドフレームの前端からそれぞれ上向きに突設した左右一対のラジエータサイドステーの上端間をラジエータアッパーステーで連結し、前記下部ラジエータ支持ブラケットと、前記ラジエータアッパーステーから前方に突設した上部ラジエータ支持ブラケットとに、前記ラジエータの下部および上部をそれぞれ支持することを特徴とする車両の車体前部構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記下部ラジエータ支持ブラケットは、前記前部横メンバに固定される後端部から前方に向かって左右方向に幅が減少する板状の部材であり、上下方向の曲げ剛性を高めるべく車体前後方向に延びる折り線において折り曲げられることを特徴とする車両の車体前部構造が提案される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、左右一対のフロントサイドフレームの下方に支持したサブフレームの前部横メンバから左右一対の下部ラジエータ支持ブラケットを車体前方に突設したので、車両の正面衝突時に前方に突出する下部ラジエータ支持ブラケットに入力された衝突荷重を前部横メンバから直接サブフレームに伝達して衝撃吸収効果を高めることができる。また左右一対のフロントサイドフレームの前端からそれぞれ上向きに突設した左右一対のラジエータサイドステーの上端間をラジエータアッパーステーで連結し、ラジエータアッパーステーから前方に突設した上部ラジエータ支持ブラケットにラジエータの上部を支持したので、従来の四角枠状のラジエータサポートの内部にラジエータを支持する場合に比べて大型のラジエータを搭載することができるだけでなく、従来の四角枠状のラジエータサポートに比べて軽量化を図ることができ、しかも従来の四角枠状のラジエータサポートに比べて車体前面が広く開口するのでエンジンルーム内への部品の組付性が向上する。
【0010】
また請求項2の構成によれば、下部ラジエータ支持ブラケットを、前部横メンバに固定される後端部から前方に向かって左右方向に幅が減少する板状の部材で構成したので、それを前部横メンバに対して固定する部分の取付剛性を確保することができ、しかも下部ラジエータ支持ブラケットを車体前後方向に延びる折り線において折り曲げたので、上下方向の曲げ剛性を高めてラジエータの重量を確実に支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0012】
図1〜図7は本発明の実施の形態を示すもので、図1は車両の車体前部の斜視図、図2は図1からエアコン用コンデンサおよびラジエータを分離した状態を示す図、図3は図2の3方向矢視図、図4は図3の4−4線矢視図、図5は図4の5−5線拡大断面図、図6は図4の6−6線拡大断面図、図7は図1からエアコン用コンデンサ、ラジエータおよびサブフレームを取り除いた図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、自動車の車体前部の左右両側部に車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム11,11が配置される。左右一対のフロントピラー(不図示)の前端から車体前下方に延びる左右一対のアッパーメンバ12,12の前端が、車体左右方向に延びる連結部材13,13を介して両フロントサイドフレーム11,11の前端部外側面に連結される。両フロントサイドフレーム11,11の前端部上面から左右一対のラジエータサイドステー14,14が上方に立ち上がり、それらの上端間が左右方向に延びるラジエータアッパーステー15で連結される。両ラジエータサイドステー14,14およびラジエータアッパーステー15は、正面視で下方に開口する「コ」字状に構成される。
【0014】
両フロントサイドフレーム11,11の下方に配置される四角枠状のサブフレーム16は、車体前後方向に延びる左右一対の縦メンバ17,17と、車体左右方向に延びて両縦メンバ17,17の前端間を連結する前部横メンバ18と、車体左右方向に延びて両縦メンバ17,17の後端間を連結する後部横メンバ19とを結合して構成されるもので、そこに図示せぬエンジン、トランスミッション、サスペンション等が組み付けられる。
【0015】
サブフレーム16は、その左右前端部が、両フロントサイドフレーム11,11の前端部下面から下向きに突出する左右一対の連結部材20,20の下端にボルト21,21を介して支持され、その左右後端部が、両フロントサイドフレーム11,11の下方への屈曲部の下面にボルト22,22を介して支持される。
【0016】
図4〜図6から明らかなように、サブフレーム16の前部横メンバ18の前面に左右一対の下部ラジエータ支持ブラケット23,23が固定される。各下部ラジエータ支持ブラケット23は概ね板状の部材であって、前部横メンバ18に固定される後端部の横幅が広く、そこから前方に向かって横幅が次第に減少する台形状に形成される。下部ラジエータ支持ブラケット23の両側縁には下向きに折り曲げられたフランジ23a,23aが形成されるとともに、その左右方向中央部には前後方向に延びる2本の折り線23b,23bにおいて段差が生じるように折り曲げられる。
【0017】
図2〜図5から明らかなように、エアコン用コンデンサ24はロアタンク25と、アッパータンク26と、両タンク25,26を接続するコア27とで構成されており、ロアタンク25の下面に突設した左右一対の支持ピン25a,25aが、両下部ラジエータ支持ブラケット23,23に形成した支持孔23c,23cに保持したゴムブッシュジョイント28,28に嵌合して支持される。またアッパータンク26が、ラジエータアッパーステー15の前面にボルト29,29で固定した左右一対のコンデンサ支持ブラケット30,30にボルト31で固定される。
【0018】
ラジエータ32はロアタンク33と、アッパータンク34と、両タンク33,34を接続するコア35とで構成されており、ロアタンク33の下面に突設した左右一対の支持ピン33a,33aが、両下部ラジエータ支持ブラケット23,23に形成した支持孔23d,23dに保持したゴムブッシュジョイント36,36に嵌合して支持される。またアッパータンク34の上面に突設した左右一対の支持ピン34b,34bが、ラジエータアッパーステー15の前面にボルト37,37で固定した左右一対の上部ラジエータ支持ブラケット38,38に支持したゴムブッシュジョイント39,39に嵌合して支持される。
【0019】
この状態で、車体前方側に位置するエアコン用コンデンサ24と、車体後方側に位置するラジエータ32とは、前後方向に重なるように平行に支持される。
【0020】
しかして、車両の正面衝突時にフロントサイドフレーム11,11よりも前方に突出している下部ラジエータ支持ブラケット23,23に衝突荷重が入力すると、その衝突荷重は下部ラジエータ支持ブラケット23,23が固定されている前部横メンバ18からサブフレーム16に伝達されて衝撃吸収効果を発揮し、更にサブフレーム16からそれを支持するフロントサイドフレーム11,11に伝達されて更なる衝撃吸収効果を発揮することができる。そして軽度の衝突時には下部ラジエータ支持ブラケット23,23と共にラジエータ32が後退するので、ラジエータ32の損傷を最小限に抑えることができる。
【0021】
また下部ラジエータ支持ブラケット23は、前部横メンバ18に固定される後端部から前方に向かって台形状に左右方向の幅が減少するので、下部ラジエータ支持ブラケット23が前部横メンバに18に固定される部分の長さを確保して取付剛性を高めることができる。しかも下部ラジエータ支持ブラケット23の両側縁にフランジ23a,23aを設けるとともに、車体前後方向に延びる折り線23b,23において折り曲げたので、板状の軽量な部材でありながら上下方向の曲げ剛性を高めてラジエータ32およびエアコン用コンデンサ24の重量を確実に支持することができる。
【0022】
また本実施の形態では、ラジエータ32の上半部がラジエータサイドステー14,14およびラジエータアッパーステー15で囲まれるだけなので、ラジエータの全周を囲む従来の四角枠状のラジエータサポートを用いる場合に比べて重量を削減することができる。しかも従来の四角枠状のラジエータサポートを用いる場合に比べてラジエータ32の周囲に空間を確保し易いので、大型のラジエータ32を搭載することが容易になる。
【0023】
更に、車体前面からエンジンルーム内に部品を組み付ける場合に、従来の四角枠状のラジエータサポートは組付作業の邪魔になる問題があるが、本実施の形態では、図7に示すように、フロントサイドフレーム11,11からサブフレーム16を取り外した状態では、ラジエータサイドステー14,14およびラジエータアッパーステー15の下方に殆ど障害物のない大きい開口が形成されるので、エンジンルーム内に部品を組み付ける際の作業性が大幅に高められる。
【0024】
またラジエータサイドステー14,14とラジエータアッパーステー15とをボルト締結部品とすれば、それらを予め外しておくことで、サブフレーム16の組付性が一層向上する。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、実施の形態の車両は下部ラジエータ支持ブラケット23,23を利用してエアコン用コンデンサ24を支持しているが、エアコン用コンデンサ24の下部を支持する別個のブラケットを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】車両の車体前部の斜視図
【図2】図1からエアコン用コンデンサおよびラジエータを分離した状態を示す図
【図3】図2の3方向矢視図
【図4】図3の4−4線矢視図
【図5】図4の5−5線拡大断面図
【図6】図4の6−6線拡大断面図
【図7】図1からエアコン用コンデンサ、ラジエータおよびサブフレームを取り除いた図
【符号の説明】
【0028】
11 フロントサイドフレーム
14 ラジエータサイドステー
15 ラジエータアッパーステー
16 サブフレーム
17 縦メンバ
18 前部横メンバ
19 後部横メンバ
23 下部ラジエータ支持ブラケット
23b 折り線
32 ラジエータ
38 上部ラジエータ支持ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右一対の縦メンバ(17)の前部間および後部間をそれぞれ前部横メンバ(18)および後部横メンバ(19)で連結したサブフレーム(16)を、車体前後方向に延びる左右一対のフロントサイドフレーム(11)の下方に支持し、前記左右一対のフロントサイドフレーム(11)の前端間にラジエータ(32)を支持する車両の車体前部構造であって、
前記前部横メンバ(18)から左右一対の下部ラジエータ支持ブラケット(23)を車体前方に突設するとともに、前記フロントサイドフレーム(11)の前端からそれぞれ上向きに突設した左右一対のラジエータサイドステー(14)の上端間をラジエータアッパーステー(15)で連結し、前記下部ラジエータ支持ブラケット(23)と、前記ラジエータアッパーステー(15)から前方に突設した上部ラジエータ支持ブラケット(38)とに、前記ラジエータ(32)の下部および上部をそれぞれ支持することを特徴とする車両の車体前部構造。
【請求項2】
前記下部ラジエータ支持ブラケット(23)は、前記前部横メンバ(18)に固定される後端部から前方に向かって左右方向に幅が減少する板状の部材であり、上下方向の曲げ剛性を高めるべく車体前後方向に延びる折り線(23b)において折り曲げられることを特徴とする、請求項1に記載の車両の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−195094(P2008−195094A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29124(P2007−29124)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】