説明

車両の車体前部構造

【課題】車体前部を構成するカウルルーバが、ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板を有する場合に、車体前部の構成を簡単にできるようにする。
【解決手段】カウルルーバ18が、アッパ、ロアルーバ19,20と、ロアルーバ20から上方に向かって一体的に突出する支持台33と、支持台33の基部周りのロアルーバ20の部分に形成される脆弱部41と、ロアルーバ20の上面側に落下する雨水Aを所定方向に案内する水案内板50とを有する。支持台35が、支持台35の側部を構成し、車体2の前後方向かつ上下方向に延びる側面板38を有する。側面板38の外側方に水案内板50を配置し、水案内板50をロアルーバ20に一体的に形成すると共に、水案内板50の側縁部を側面板38に一体的に形成する。水案内板50の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔53を形成し、かつ、水抜き孔53を脆弱部41に隣接するよう形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の幅方向に延び、フロントカウルの前方に配置されるカウルルーバを設けた車両の車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものに依れば、車両の車体前部は、車体の幅方向に延びるフロントカウルとこのフロントカウルの前方に離れて配置されるフードとの間に配置されるカウルルーバを備えている。また、このカウルルーバは、車体の幅方向に延びると共に上記フードの後端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの上方に位置するアッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、車体の幅方向に延びると共に上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルの下部に連結されるロアルーバと、上記フロントカウルの上面側から上記ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板である雨樋とを備えている。
【0003】
また、上記構成において、従来、カウルルーバが、上記ロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部とを有したものがある。
【0004】
そして、上記雨樋は、上記フロントカウルの上面側から上記ロアルーバの上面側に落下する雨水がワイパモータなど防水すべき部位に向かわないよう、所定方向に上記雨水を案内する。
【0005】
一方、上記車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)したとする。この場合、この前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバのアッパルーバの上面に落下して衝突することがある。そして、この場合には、物体の衝突により、上記アッパルーバには、上記物体から衝撃力が与えられる。
【0006】
ここで、上記衝撃力は、この衝撃力に基づくエネルギーが上記アッパルーバから支持台とロアルーバとを順次伝達した後、最終的に上記フロントカウルで強固に支持されるが、上記エネルギーの伝達途中において、上記脆弱部が円滑に屈曲することにより、上記エネルギーが吸収される。これにより、上記フロントカウルなど車体側に与えられる衝撃力が緩和されると共に、上記カウルルーバから物体に対し与えられる反力も緩和されて、この物体に生じる傷害値が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−126188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の技術では、水案内板である雨樋は上記アッパ、ロアルーバとは別体に設けられている。このため、車体前部の部品点数が増加して、その構成が複雑になるおそれがある。
【0009】
そこで、上記雨樋を上記カウルルーバのいずれかの部位に一体的に形成することとし、これにより、上記した部品点数の増加を回避することが考えられる。しかし、上記したようにカウルルーバに雨樋を単に一体的に形成すると、この雨樋により上記カウルルーバの剛性が増大する傾向となる。このため、前突時に、物体が上記カウルルーバに衝撃力を与えるとき、この衝撃力によるカウルルーバの屈曲が抑制されて、上記衝撃力に基づくエネルギーの吸収が阻害されるおそれがある。この結果、上記衝撃力の緩和が抑制され、この衝撃力の反力に因って物体に生じる傷害値の低減が阻害されるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車体前部を構成するカウルルーバが、そのロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板を有する場合に、この車体前部の構成を簡単にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車両の前突により跳ね上げられた物体が上記カウルルーバに衝撃力を与えるとき、この衝撃力の反力に因って物体に生じる傷害値を、より効果的に低減できるようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、車体2の幅方向に延び、フロントカウル3の前方に配置されるカウルルーバ18を設け、このカウルルーバ18が、アッパルーバ19と、このアッパルーバ19の下方域で、上記アッパルーバ19の前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウル3に連結されるロアルーバ20と、このロアルーバ20から上方に向かって一体的に突出し、その上端面33aで上記アッパルーバ19を支持可能とする支持台33と、この支持台33の基部周りの上記ロアルーバ20の部分に形成される脆弱部41と、上記フロントカウル3の上面側から上記ロアルーバ20の上面側に落下する雨水Aを所定方向に案内する水案内板50とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台35が、この支持台35の側部を構成し、車体2の前後方向かつ上下方向に延びる側面板38を有し、この側面板38の外側方に上記水案内板50を配置し、この水案内板50を上記ロアルーバ20に一体的に形成すると共に、上記水案内板50の側縁部を上記側面板38に一体的に形成し、
上記水案内板50の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔53を形成し、かつ、この水抜き孔53を上記脆弱部41に隣接するよう形成したことを特徴とする車両の車体前部構造である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、車体の幅方向に延び、フロントカウルの前方に配置されるカウルルーバを設け、このカウルルーバが、アッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部と、上記フロントカウルの上面側から上記ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台が、この支持台の側部を構成し、車体の前後方向かつ上下方向に延びる側面板を有し、この側面板の外側方に上記水案内板を配置し、この水案内板を上記ロアルーバに一体的に形成すると共に、上記水案内板の側縁部を上記側面板に一体的に形成している。
【0015】
このため、上記水案内板により所定方向に案内される雨水の少なくとも一部の雨水が車体の幅方向で上記支持台側に向かって流動した場合、上記した一部の雨水は、上記支持台の側面板に案内されて流下させられる。よって、上記雨水が、より確実に所定方向に案内されて、上記ワイパモータなど防水すべき部位に向かうことが、より確実に防止される。
【0016】
また、上記水案内板の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔を形成し、かつ、この水抜き孔を上記脆弱部に隣接するよう形成している。
【0017】
このため、上記水案内板により所定方向に案内されて流下した雨水の少なくとも一部の雨水は、上記水抜き孔を通り抜けることにより、更に、所定方向に案内される。よって、上記した一部の雨水が、上記ワイパモータなど防水すべき部位に向かうことは、更に確実に防止される。
【0018】
そして、上記したように、雨水を、より確実に所定方向に案内することは、上記水案内板に加えて上記アッパルーバ支持用の支持台を利用することにより達成されたことから、このように支持台を利用した分、上記した雨水の所定方向への案内は、簡単な構成、かつ、安価に達成される。
【0019】
ここで、上記したように、支持台の側面板に水案内板を一体的に形成すると、この水案内板により上記支持台の剛性が増大する傾向となる。しかし、上記したように水案内板の下端部に水抜き孔を形成したため、この水抜き孔の形成により上記水案内板の基部に脆弱部が形成されたこととなり、よって、上記支持台の剛性の増大が抑制され、このため、次の作用効果が生じる。
【0020】
即ち、上記車両の前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバのアッパルーバの上面に落下して衝突したとする。この場合には、物体の衝突により、上記アッパルーバには、上記物体から衝撃力が与えられる。
【0021】
そして、上記したように、アッパルーバに衝撃力が与えられたときには、上記支持台の基部の周りのロアルーバに形成された脆弱部と、この脆弱部と隣接した上記水抜き孔により、上記水案内板の基部に形成された脆弱部とによって、上記支持台と水案内板とが共に円滑に座屈する。
【0022】
よって、上記したように前突により物体がアッパルーバの上面に衝突して衝撃力を与えるときには、上記した支持台と水案内板との円滑な屈曲によって上記衝撃力に基づくエネルギーが吸収され、この衝撃力が緩和される。この結果、上記カウルルーバから物体に向かう反力も緩和されることから、この反力に因り上記物体に生じる傷害値は、より確実に低減可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2のI−I線矢視断面図である。
【図2】車体前部の部分平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】カウルルーバの斜視展開図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5に相当する図で作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両の車体前部構造に関し、車体前部を構成するカウルルーバが、ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板を有する場合に、この車体前部の構成を簡単にできるようにし、かつ、このようにした場合でも、車両の前突により跳ね上げられた物体が上記カウルルーバに衝撃力を与えるとき、この衝撃力の反力に因って物体に生じる傷害値を、より効果的に低減できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0025】
即ち、車体の幅方向に延び、フロントカウルの前方に配置されるカウルルーバが設けられる。このカウルルーバは、アッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部と、上記フロントカウルの上面側から上記ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板とを有している。
【0026】
上記支持台は、この支持台の側部を構成し、車体の前後方向かつ上下方向に延びる側面板を有している。この側面板の外側方に上記水案内板が配置され、この水案内板は上記ロアルーバに一体的に形成されると共に、上記水案内板の側縁部が上記側面板に一体的に形成される。上記水案内板の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔が形成され、かつ、この水抜き孔は上記脆弱部に隣接するよう形成される。
【実施例】
【0027】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0028】
図1〜5において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての上記車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0029】
上記車両1の車体2は、この車体2の幅方向に延びてその各端部が車体2の骨格部材である左右フロントピラー(不図示)に両端支持されるフロントカウル3を備えている。このフロントカウル3は、上下方向で互いに対向するよう設けられる板金製のアッパ、ロアカウル4,5を有している。
【0030】
上記アッパカウル4は、車体2の側面断面視(図1)で、倒立U字形状とされる。また、上記ロアカウル5は、車体2の側面断面視(図1)で、U字形状とされる。上記アッパ、ロアカウル4,5の各後端縁部は互いにスポット溶接され、各前端縁部は互いに上下に離間し、これら前端縁部の間には前方に向かって開く開口6が形成されている。上記ロアカウル5の下端面には不図示のダッシュパネルの上端縁部がスポット溶接されている。そして、上記構成のフロントカウル3は十分の強度と剛性とを備えて、車体2の骨格部材とされている。
【0031】
上記フロントカウル3およびダッシュパネル7の後方における車体2の内部が車室10とされ、上記ダッシュパネル7の前方における車体2の内部がエンジンルーム11とされている。上記フロントカウル3の後上方が上記車室10の内外を連通させるウィンド開口12とされている。このウィンド開口12を、その前上方から閉じるウィンドガラス13が設けられ、このウィンドガラス13の前下端縁部は上記フロントカウル3のアッパカウル4の上面に接着剤14により接着されている。一方、上記エンジンルーム11の上端開口を車体2の上方から開閉可能に閉じる板金製のフード15が設けられている。
【0032】
車体2の前後方向で、上記フロントカウル3とフード15の後端縁部との間にカウルルーバ18が配置されている。このカウルルーバ18は、上下方向で互いに対向するよう設けられる樹脂製のアッパ、ロアルーバ19,20を有している。
【0033】
上記アッパルーバ19は、車体2の幅方向に延びると共に上記フード15の後端縁部の下側から後方に延び、その後端縁部は上記フロントカウル3のアッパカウル4の上方、かつ、上記ウィンドガラス13の前下端縁部の上面に当接するよう位置している。上記ロアルーバ20は、上記アッパルーバ19の下方域で、車体2の幅方向に延びると共に上記アッパルーバ19の前端縁部側から後方に延びている。このアッパルーバ19の前端縁部にはシール材21が取り付けられ、このシール材21は上記フード15の後端縁部の下面に圧接し、上記アッパルーバ19の後端縁部は上記フロントカウル3のロアカウル5の前端縁部に他のシール材22を介して連結されている。
【0034】
より具体的には、上記アッパルーバ19は、車体2の側面断面視(図1,3)で、上記アッパルーバ19の前部を構成する縦向きパネル24と、この縦向きパネル24の上端縁部から後方に延出する横向きパネル25と、上記縦向きパネル24の下端縁部から前方に延出する外向きフランジ26と、上記横向きパネル25の後端縁部から後上方に延出する外向きフランジ27とを備えている。上記横向きパネル25には、上下方向に貫通する多数の通気孔28が形成されている。
【0035】
上記ロアルーバ20の前後方向の中途部には上方に膨出する左右一対の支持突起31,31が形成されている。上記アッパルーバ19の前側の外向きフランジ26とロアルーバ20の前縁部とが互いに熱溶着Wされると共に、上記アッパルーバ19と各支持突起31の突出端部とが互いに熱溶着Wされ、これにより、上記アッパ、ロアルーバ19,20の各前部側が互いに強固に結合されている。
【0036】
上記ロアルーバ20における左側部、車体2の幅方向での中央部、および右側部の各部から、それぞれ上方に向かって一体的に突出し、その各上端面が上記アッパルーバ19の後部側を支持可能とする複数(3つ)の左側部支持台33、中央部支持台34、および右側部支持台35が設けられている。そして、上記各支持台33〜35を介してのロアルーバ20によるアッパルーバ19の後部側の支持により、静荷重に対する上記カウルルーバ18の剛性が十分に確保されている。
【0037】
上記右側部支持台35の前方における上記カウルルーバ18の部分18aでは、上記アッパルーバ19の前側の外向きフランジ26は上記ロアルーバ20の前端縁部に一体的に結合され、上記カウルルーバ18の部分18aは、他の部分に対し着脱可能に分断されている。また、上記右側部支持台35が突設された上記ロアルーバ20の部分は、後下がり状に傾斜させられている。
【0038】
上記右側部支持台35は、後方に向かって開口する箱形状をなし、互いに一体的に形成される前面板37、左右側面板38,38、および上面板39を備えている。上記前面板37は、上記支持台35の前部を構成し、車体2の幅方向かつ上下方向に延びている。また、上記各側面板38は、上記支持台35の左右各側部を構成し、車体2の前後方向かつ上下方向に延びている。また、上記上面板39は、上記支持台35の上部を構成し、前下方に向かうよう傾斜している。
【0039】
上記右側部支持台35の基部(下端部)周りの上記ロアルーバ20の部分に脆弱部41が形成されている。この脆弱部41は、上記ロアルーバ20の部分の下面に溝を形成することにより形成されている。また、上記脆弱部41は、上記支持台35の基部の前、後方近傍と、各側方近傍とにおける上記ロアルーバ20の各部分に形成され、車体2の平面視で、上記支持台35の基部を囲む矩形枠形状とされている。
【0040】
上記右側部支持台35の上面板39、上記フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部、および上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27は、互いに平行となるよう傾斜して互いに重ね合わされ、これら39,4,27にそれぞれ形成されたクリップ孔42に挿通されたクリップ45により互いに連結されている。また、上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27に形成されたクリップ孔42の周りの部分には脆弱部46が形成されている。この脆弱部46は、上記外向きフランジ27の下面に溝を十字形状に形成することにより形成されている。
【0041】
上記フロントカウル3の右側部におけるアッパ、ロアカウル4,5の間にはワイパモータ49が設けられ、この上面板49は上記フロントカウル3に支持されている。上記ワイパモータ49は、上記ウィンドガラス13の前面に付着した雨水を払拭する不図示のワイパを往復回動可能にさせる駆動源である。
【0042】
上記右側部支持台35の右側方に隣接して水案内板50が設けられる。この水案内板50は、上記フロントカウル3のアッパカウル4の上面側である上記ウィンドガラス13の上面から上記カウルルーバ18のロアルーバ20の上面側に落下する雨水Aが上記ワイパモータ49に向かわないようこのワイパモータ49の前下方である所定方向に案内する。
【0043】
上記水案内板50は、全体として上下方向、かつ、車両1の幅方向に延び、その下端部は上記ロアルーバ20に一体的に結合され、上記水案内板50は上記ロアルーバ20に一体的に形成されている。上記水案内板50は、上記右側部支持台35の左右側面板38,38のうち、右側の側面板38の外側方に配置されている。上記水案内板50の側縁部は、上記側面板38の後端縁部に一体的に結合されている。つまり、上記ロアカウル5、支持台35、および水案内板50は互いに一体的に形成されている。
【0044】
上記水案内板50の下端部に前後方向に貫通する複数(左右一対)の水抜き孔53,53が形成されている。これら水抜き孔53,53は、車体2の幅方向に長い長方形状をなし、上記右側部支持台35の基部の周りで上記ロアルーバ20に形成された前記脆弱部41の右側方に隣接するよう形成されている。
【0045】
フロントカウル3の側面視(図1,3)で、上記水案内板50の上部50aと下部50bとは水平面に対しそれぞれほぼ垂直に延び、上下方向の中途部50cは、上記右側部支持台35の上面板39、上記フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部、および上記アッパルーバ19の後側の外向きフランジ27とに対し互いにほぼ平行となるよう傾斜させられている。なお、上記水案内板50の上部50aは上記中途部50cと同様に傾斜させてもよい。
【0046】
上記構成によれば、支持台35が、この支持台35の側部を構成し、車体2の前後方向かつ上下方向に延びる側面板38を有し、この側面板38の外側方に水案内板50を配置し、この水案内板50をロアルーバ20に一体的に形成すると共に、上記水案内板50の側縁部を上記側面板38に一体的に形成している。
【0047】
このため、上記水案内板50により所定方向に案内される雨水Aの少なくとも一部の雨水Bが車体2の幅方向で上記右側部支持台35側に向かって流動した場合、上記した一部の雨水Bは、上記支持台35の側面板38に案内されて流下させられる。よって、上記雨水A,Bが、より確実に所定方向に案内されて、上記ワイパモータ49など防水すべき部位に向かうことが、より確実に防止される。
【0048】
また、上記水案内板50の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔53を形成し、かつ、この水抜き孔53を上記脆弱部41に隣接するよう形成している。
【0049】
このため、上記水案内板50により所定方向に案内されて流下した雨水A,Bの少なくとも一部の雨水Cは、上記水抜き孔53を後方に通り抜けることにより、更に、所定方向に案内される。よって、上記した一部の雨水Cが、上記ワイパモータ49など防水すべき部位に向かうことは、更に確実に防止される。
【0050】
そして、上記したように、雨水A,B,Cを、より確実に所定方向に案内することは、上記水案内板50に加えて上記アッパルーバ19支持用の右側部支持台35を利用することにより達成されたことから、このように支持台35を利用した分、上記した雨水A,B,Cの所定方向への案内は、簡単な構成、かつ、安価に達成される。
【0051】
ここで、上記したように、右側部支持台35の側面板38に水案内板50を一体的に形成すると、この水案内板50により上記支持台35の剛性が増大する傾向となる。しかし、上記したように水案内板50の下端部に水抜き孔53を形成したため、この水抜き孔53の形成により上記水案内板50の基部(下端部)に脆弱部が形成されたこととなり、よって、上記支持台35の剛性の増大が抑制され、このため、次の作用効果が生じる。
【0052】
即ち、上記車両1の前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバ18のアッパルーバ19の上面に落下して衝突したとする。この場合には、物体の衝突により、上記アッパルーバ19には、上記物体から衝撃力Fが与えられる。
【0053】
そして、上記したように、アッパルーバ19に衝撃力Fが与えられたときには、図6で示すように、上記右側部支持台35の基部の周りのロアルーバ20に形成された脆弱部41と、この脆弱部41と隣接した上記水抜き孔53により、上記水案内板50の基部に形成された脆弱部とによって、上記支持台35と水案内板50とが共に円滑に座屈する。
【0054】
よって、上記したように前突により物体がアッパルーバ19の上面に衝突して衝撃力Fを与えるときには、上記した右側部支持台35と水案内板50との円滑な屈曲によって上記衝撃力Fに基づくエネルギーが吸収され、この衝撃力Fが緩和される。この結果、上記カウルルーバ18から物体に向かう反力も緩和されることから、この反力に因り上記物体に生じる傷害値は、より確実に低減可能とされる。
【0055】
ここで、上記脆弱部41におけるロアルーバ20の厚さ寸法(溝底部におけるロアルーバ20の厚さ寸法)tよりも、上記水抜き孔53の高さ寸法Hの方が大きくされている。
【0056】
このため、上記衝撃力Fにより上記右側部支持台35が上記脆弱部41に基づき屈曲する場合、上記水案内板50は上記水抜き孔53による脆弱部により十分に屈曲して、上記水案内板50が支持台35の屈曲を阻害することは防止される。
【0057】
また、前記したように、水案内板50の少なくとも上下方向の中途部50cは、上記右側部支持台35の上面板39、上記フロントカウル3のアッパカウル4の前端縁部、およびアッパルーバ19の後側の外向きフランジ27と互いにほぼ平行となるよう傾斜させられている。
【0058】
このため、上記衝撃力Fは、上記水案内板50の中途部50cに対し、この中途部50cの厚さ方向に作用しがちとなることから、この中途部50cは上記衝撃力Fによって、より円滑に屈曲する。よって、この円滑な屈曲により、上記衝撃力Fは、より確実に緩和されて、上記物体に生じる傷害値は、更に確実に低減可能とされる。
【0059】
なお、以上は図示の例によるが、上記水案内板50を、前記左側部支持台33、および/もしくは中央部支持台34に適用してもよい。また、通常、上記フロントカウル3のロアカウル5の左側部には車体2の外部から車室10内に外気を導入する空気導入口が形成される。そこで、この空気導入口に雨水が向かわないよう上記水案内板50を設けて、上記雨水を所定方向に案内するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 車両
2 車体
3 フロントカウル
4 アッパカウル
5 ロアカウル
10 車室
11 エンジンルーム
12 ウィンド開口
13 ウィンドガラス
15 フード
18 カウルルーバ
19 アッパルーバ
20 ロアルーバ
35 支持台
37 前面板
38 側面板
39 上面板
41 脆弱部
49 ワイパモータ
50 水案内板
50a 上部
50b 下部
50c 中途部
53 水抜き孔
A,B,C 雨水
F 衝撃力
W 熱溶着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に延び、フロントカウルの前方に配置されるカウルルーバを設け、このカウルルーバが、アッパルーバと、このアッパルーバの下方域で、上記アッパルーバの前端縁部側から後方に延び、その後端縁部が上記フロントカウルに連結されるロアルーバと、このロアルーバから上方に向かって一体的に突出し、その上端面で上記アッパルーバを支持可能とする支持台と、この支持台の基部周りの上記ロアルーバの部分に形成される脆弱部と、上記フロントカウルの上面側から上記ロアルーバの上面側に落下する雨水を所定方向に案内する水案内板とを有した車両の車体前部構造において、
上記支持台が、この支持台の側部を構成し、車体の前後方向かつ上下方向に延びる側面板を有し、この側面板の外側方に上記水案内板を配置し、この水案内板を上記ロアルーバに一体的に形成すると共に、上記水案内板の側縁部を上記側面板に一体的に形成し、
上記水案内板の下端部に前後方向に貫通する水抜き孔を形成し、かつ、この水抜き孔を上記脆弱部に隣接するよう形成したことを特徴とする車両の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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