説明

車両の車体前部構造

【課題】、車両の前突により跳ね上げられた物体がカウルルーバーの上面に落下して衝突し、カウルルーバーに衝撃力を与える場合において、衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにする。
【解決手段】車両の車体前部構造は、フロントカウル3内を前、後空間12a,12bに区画し、上端縁部がカウルルーバー24の支持片38に連結具39により連結される遮水パネル40を備える。連結具39が、遮水パネル40の上端縁部から上方に向かって突出し、支持片38を前後から挟む一対の連結片43,44を有する。前後いずれか一方向側の連結片43を、車体2の側面視でくの字形状にして、上端部を支持片38の一方向側の面に当接させ、下端部を支持片38よりも下方に位置させる。他方向側の連結片44を支持片38の他方向側の面に面接触させる。遮水パネル40の上部側に対し下部側を他方向に向けて屈曲させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバーから下方に向かって突出し、フロントカウル内を前、後空間に区画する遮水パネルを備えた車両の車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体前部構造は、車体の幅方向に延び、その長手方向の各部断面がU字形状をなすフロントカウルと、車体の幅方向に延び、上記フロントカウルをその上方から覆うカウルルーバーと、このカウルルーバーにおける車体の前後方向での中途部から下方に向かって突出する支持片と、上下方向に延びて上記フロントカウル内を前、後空間に区画するよう設けられ、その上端縁部が上記支持片に連結具により連結される遮水パネルとを備えている。
【0003】
また、上記フロントカウルの後部には、車室用空調装置の空気導入ダクトが連結され、この空気導入ダクト内の空気導入口が上記フロントカウル内の上記後空間に開口している。
【0004】
車両の走行中などにおいて、上記空調装置を駆動させれば、まず、車両の外部の空気が上記カウルルーバーの各通気孔を通り上記遮水パネルで区画されたフロントカウル内の前空間に吸入される。次に、上記空気は、この前空間から上記遮水パネルを迂回して上記後空間と上記空気導入口とを順次通り上記空調装置の内部に導入される。そして、その後、車室に向けて供給されることにより、この車室の空調がなされるようになっている。
【0005】
また、上記したように、遮水パネルで区画された上記フロントカウル内の前空間から上記遮水パネルを迂回して後空間に向けて空気が流動するとき、この空気に含まれる雨水などの水滴は、上記遮水パネルに衝突したり上記フロントカウルの内面に向かうような慣性力を与えられたりして捕捉され、空気から分離される。これにより、上記空気導入口を通り水滴が空調装置の内部に導入されて車室に流入する、という不都合の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−58722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバーの上面に落下して大きい衝撃力で衝突したとする。
【0008】
上記の場合、一般に、物体からの衝撃力によりカウルルーバーは下方に撓むよう変形して上記衝撃力はある程度緩和されるが、上記カウルルーバーの下方への変形と共に上記遮水パネルが下降してその下端部がフロントカウルの内面に圧接した場合には、上記カウルルーバーのそれ以上の下方への変形が阻止されがちとなる。すると、上記物体からカウルルーバーなど車体側に与えられる衝撃力の緩和が阻害されて、この衝撃力に対する反力が大きくなり、もって、この反力により物体に生じる傷害値が大きくなるおそれを生じる。
【0009】
そこで、上記物体の衝突時における上記傷害値を低減させるため、次のように構成することが考えられる。即ち、上記支持片に対し遮水パネルの上端部を剪断ピンや熱溶着部により連結させる。そして、上記したように物体の衝突時に遮水パネルがフロントカウルの内面に圧接して、上記衝撃力が所定値以上になった場合、この衝撃力により上記剪断ピンや熱溶着部を破断することとさせる。このようにすれば、上記衝撃力による破断により、上記支持片から遮水パネルが離脱して上記衝撃力が緩和され、もって、上記傷害値が低減されると考えられる。しかし、このように構成した場合には、この構成が複雑になり、かつ、これの形成作業が煩雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の前突により跳ね上げられた物体がカウルルーバーの上面に落下して衝突し、このカウルルーバーに衝撃力を与える場合において、この衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにすることである。
【0011】
また、上記した傷害値の効果的な低減が、簡単な構成で、容易な形成作業により達成できるようにすることである。
【0012】
請求項1の発明は、車体2の幅方向に延び、その長手方向の各部断面がU字形状をなすフロントカウル3と、車体2の幅方向に延び、上記フロントカウル3をその上方から覆うカウルルーバー24と、このカウルルーバー24における車体2の前後方向での中途部から下方に向かって突出すると共に車体2の幅方向に延びる支持片38と、上下方向に延びて上記フロントカウル3内を前、後空間12a,12bに区画するよう設けられ、その上端縁部が上記支持片38に連結具39により連結される遮水パネル40とを備えた車両の車体前部構造において、
上記連結具39が、上記遮水パネル40の上端縁部から上方に向かって突出し、上記支持片38を前後から挟む一対の連結片43,44を有し、これら両連結片43,44のうち、前後いずれか一方向側の連結片43を、車体2の側面視(図1)で上記一方向に向かって突出するくの字形状にして、その上端部を上記支持片38の上記一方向側の面に当接させ、下端部を上記支持片38よりも下方に位置させ、一方、他方向側の連結片44を上記支持片38の上記他方向側の面に面接触させ、上記遮水パネル40の上部側に対し下部側を上記他方向に向けて屈曲させたことを特徴とする車両の車体前部構造である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、車体の幅方向に延び、その長手方向の各部断面がU字形状をなすフロントカウルと、車体の幅方向に延び、上記フロントカウルをその上方から覆うカウルルーバーと、このカウルルーバーにおける車体の前後方向での中途部から下方に向かって突出すると共に車体の幅方向に延びる支持片と、上下方向に延びて上記フロントカウル内を前、後空間に区画するよう設けられ、その上端縁部が上記支持片に連結具により連結される遮水パネルとを備えた車両の車体前部構造において、
上記連結具が、上記遮水パネルの上端縁部から上方に向かって突出し、上記支持片を前後から挟む一対の連結片を有し、これら両連結片のうち、前後いずれか一方向側の連結片を、車体の側面視で上記一方向に向かって突出するくの字形状にして、その上端部を上記支持片の上記一方向側の面に当接させ、下端部を上記支持片よりも下方に位置させ、一方、他方向側の連結片を上記支持片の上記他方向側の面に面接触させ、上記遮水パネルの上部側に対し下部側を上記他方向に向けて屈曲させており、次の効果が生じる。
【0016】
即ち、車両の走行中に、この車両がその前方の何らかの物体に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバーの上面に落下して大きい衝撃力で衝突したとする。
【0017】
すると、上記物体からの衝撃力により、まず、上記カウルルーバーは下方に向かって撓むよう変形し、このカウルルーバーの下方への変形と共に上記遮水パネルが下降する。次に、上記カウルルーバーの下方への変形と共に下降した上記遮水パネルの下端部が上記フロントカウルの内底面に圧接し始める。そして、この状態から、上記衝撃力によるカウルルーバーの下方への変形が進行して、上記遮水パネルが更に下降させられるとする。
【0018】
ここで、本発明によれば、前記したように遮水パネルの下部側は他方向側に向けて屈曲させられている。このため、上記のように下降させられる遮水パネルの下端部が上記フロントカウルの内底面に圧接すると、上記遮水パネルの下端部は直ちに上記内底面を他方向側に向かって円滑に摺動して、上記遮水パネルは上記連結具を中心として他方向側に回動する。すると、上記支持片の他方向側の面から上記他方向側の連結片の下部側が他方向側に離反する一方、上記支持片の一方向側の面に対し少なくとも上記一方向側の連結片が面接触するまで、上記したように遮水パネルは上記連結具を中心として円滑に他方向側に回動する。
【0019】
よって、上記したように遮水パネルが上記連結具を中心として円滑に他方向側に回動する分、上記衝撃力によるカウルルーバーの下方への変形は、上記フロントカウルの内底面に圧接した上記遮水パネルに邪魔されることなく円滑に許容される。このため、上記カウルルーバーなど車体側に与えられる衝撃力は効果的に緩和され、この結果、上記カウルルーバーなど車体側から物体に与えられる反力は効果的に緩和されることから、この反力により物体に生じようとする傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【0020】
また、上記したように、カウルルーバーの下方への変形と共に下降した遮水パネルの下端部が上記フロントカウルの内底面に圧接し始めると、上記遮水パネルは直ちに連結具を中心に他方向側に回動して上記カウルルーバーの下方への変形を許容するため、物体の衝突時には直ちに物体に与えられる反力が緩和されて、その傷害値の低減がより迅速かつ確実に達成可能とされる。
【0021】
また、上記した傷害値の効果的な低減は、上記支持片に遮水パネルを連結させるための連結具と上記遮水パネルとの各形状の工夫により達成されることから、上記した傷害値の効果的な低減は、部品点数の増加を抑制しつつ、簡単な構成で達成できると共に、部品点数を少なく抑制できる分、その形成作業が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図2のI−I線矢視拡大断面図である。
【図2】車体前部の平面図である。
【図3】カウルルーバーの斜視図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視拡大断面図である。
【図5】図1の部分拡大作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両の車体前部構造に関し、車両の前突により跳ね上げられた物体がカウルルーバーの上面に落下して衝突し、このカウルルーバーに衝撃力を与える場合において、この衝撃力の反力により物体に生じようとする傷害値を、より効果的に低減できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、車両の車体前部構造は、車体の幅方向に延び、その長手方向の各部断面がU字形状をなすフロントカウルと、車体の幅方向に延び、上記フロントカウルをその上方から覆うカウルルーバーと、このカウルルーバーにおける車体の前後方向での中途部から下方に向かって突出すると共に車体の幅方向に延びる支持片と、上下方向に延びて上記フロントカウル内を前、後空間に区画するよう設けられ、その上端縁部が上記支持片に連結具により連結される遮水パネルとを備えている。
【0025】
上記連結具は、上記遮水パネルの上端縁部から上方に向かって突出し、上記支持片を前後から挟む一対の連結片を有している。これら両連結片のうち、前後いずれか一方向側の連結片が、車体の側面視で上記一方向に向かって突出するくの字形状とされて、その上端部が上記支持片の上記一方向側の面に当接させられ、下端部を上記支持片よりも下方に位置させられる。一方、他方向側の連結片は上記支持片の上記他方向側の面に面接触させられる。また、上記遮水パネルの上部側に対し下部側が上記他方向に向けて屈曲させられる。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図1〜4において、符号1は、自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0028】
上記車体2は、この車体2の幅方向に長く延びてその各端部が不図示の左右フロントピラーの上下方向の中途部に両端支持されるフロントカウル3を備えている。これら各フロントピラーとフロントカウル3とは車体2の骨格部材を構成している。上記フロントカウル3は板金製で、その長手方向の各部断面がU字形状をなしている。具体的には、上記フロントカウル3は、前後方向で離れて対面する前、後部板6,7と、ほぼ水平方向に延び、これら前、後部板6,7の各下端縁部同士を一体的に結合する底部板8と、上記前、後部板6,7の各上端縁部にそれぞれ一体的に結合される前、後外向きフランジ9,10とを備えている。
【0029】
上記フロントカウル3の内部空間12の後部をその上方から覆うよう板金製のカウル補強パネル13が設けられる。上記フロントカウル3の後外向きフランジ10に上記カウル補強パネル13の後端縁部がスポット溶接S1され、このカウル補強パネル13により上記フロントカウル3が車体2の幅方向の全体にわたり補強されている。上記フロントカウル3の下方で、車体2の幅方向かつ上下方向に延びる板金製のダッシュパネル14が設けられ、上記フロントカウル3の底部板8と上記ダッシュパネル14の上端縁部とがスポット溶接S2されている。
【0030】
上記左右フロントピラーの各上部とカウル補強パネル13とで囲まれたフロントウィンド開口17を閉じるフロントウィンドパネル18が設けられる。上記フロントカウル3、ダッシュパネル14、およびウィンドパネル18の後方における車体2後部の内部空間が車室20とされ、上記ダッシュパネル14の前方における車体2前部の内部空間がエンジンルーム21とされる。
【0031】
車体2の幅方向に長く延びると共に前後方向に延び、上記フロントカウル3の内部空間12の前部をその上方から覆う樹脂製のカウルルーバー24が設けられる。このカウルルーバー24の前端縁部は上記フロントカウル3の前外向きフランジ9の上面に支持されている。また、上記カウルルーバー24の後端縁部は、上記ウィンドパネル18の前端縁部の上面に支持され、かつ、このウィンドパネル18の前端縁部とカウル補強パネル13とを介して上記フロントカウル3の後外向きフランジ10に支持されている。つまり、上記カウルルーバー24は、上記フロントカウル3の前、後端縁部に両端支持されている。
【0032】
上記カウルルーバー24の前方空間は、上記エンジンルーム21を上方に向かって開く車体開口26とされ、この車体開口26をその上方から開閉可能に閉じるフード27が設けられている。上記カウルルーバー24の前端縁部に取り付けられ、このカウルルーバー24の前端縁部とフード27の後端部の下面との間をシールする弾性のシール28が設けられている。
【0033】
上記カウルルーバー24の左側部の前部には、車両1の外部の空気30を上記フロントカウル3の内部空間12に導入可能とさせる多数の通気孔31が形成されている。また、車体2の幅方向で、上記通気孔31と同位置における上記フロントカウル3の左側部の後部板7には、上記フロントカウル3の内部空間12の空気30を導入する車室20用空調装置33の空気導入ダクト34が取り付けられ、この空気導入ダクト34内の空気導入口35は上記フロントカウル3内の内部空間12に開口している。
【0034】
上記カウルルーバー24の左側部において、このカウルルーバー24の前後方向での中途部から下方に向かって一体的に突出すると共に車体2の幅方向に延びる支持片38が設けられている。また、上下方向であって後下方の傾斜方向に延び、かつ、車体2の幅方向に延びるよう形成され、その上端縁部が上記支持片38に連結具39により連結される樹脂製の遮水パネル40が設けられている。
【0035】
上記カウルルーバー24の通気孔31群と上記遮水パネル40とは、車体2の幅方向で同じところに配置され、かつ、車体2の幅方向の各寸法が互いにほぼ同じとされている。そして、上記遮水パネル40は、上記フロントカウル3の左側部における内部空間12の上部側を前、後空間12a,12bに区画し、かつ、上記通気孔31群と上記空気導入口35とを前後に仕切るよう設けられている。
【0036】
上記連結具39は、上記遮水パネル40の上端縁部から上方に向かって一体的に突出し、上記支持片38を前後から圧接状に挟む前後一対の連結片43,44を有している。これら前、後連結片43,44は、それぞれ車体2の幅方向で複数設けられている。また、上記前、後連結片43,44は、車体2の幅方向で一つずつ交互に千鳥状に配置されている。
【0037】
上記前、後連結片43,44のうち、前連結片43は、車体2の側面視(図1)で、前方に向かって突出するくの字形状とされている。そして、上記前連結片43の上端部は上記支持片38の前面に当接(圧接含む)させられ、上記前連結片43の下端部は上記支持片38よりも下方に位置させられている。一方、上記後連結片44は、上記支持片38の後面に面接触(面圧接含む)させられている。また、上記遮水パネル40は、その上部側に対し下部側が後方に向けて屈曲させられ、上記遮水パネル40は、その上下方向の中途部に前方に向かって突出するくの字形状の屈曲部45を有している。この屈曲部45は、車体2の幅方向で上記遮水パネル40の全体にわたり形成されている。
【0038】
また、上記支持片38には車体2の幅方向で複数の係止部47が形成され、上記連結具39の後連結片44には、上記各係止部47に係止、離脱可能に係止される被係止部48が形成されている。具体的には、上記係止部47は上記支持片38に貫設される係止孔であり、上記被係止部48は、上記係止部47に嵌入(圧入含む)されて係止される係止突起である。そして、上記係止部47に被係止部48が係止されることにより、上記支持片38に対する上記連結具39および遮水パネル40の位置決めがなされ、かつ、上記支持片38に対し遮水パネル40が、より確実に連結されて、支持片38からの遮水パネル40の脱落が防止される。
【0039】
車両1の走行中などにおいて、上記空調装置33を駆動させれば、まず、車両1の外部の空気30が上記カウルルーバー24の各通気孔31を通り上記遮水パネル40で区画されたフロントカウル3内の前空間12aに吸入される。次に、上記空気30は、この前空間12aから上記遮水パネル40を迂回して上記後空間12bと上記空気導入口35とを順次通り上記空調装置33の内部に導入される。そして、その後、車室20に向けて供給されることにより、この車室20の空調がなされるようになっている。
【0040】
また、上記したように、遮水パネル40で区画された上記フロントカウル3内の前空間12aから上記遮水パネル40を迂回して後空間12bに向けて空気30が流動するとき、この空気30に含まれる雨水などの水滴は、上記遮水パネル40に衝突したり上記フロントカウル3の内面に向かうような慣性力を与えられたりして捕捉され、空気30から分離される。これにより、上記空気導入口35を通り水滴が空調装置33の内部に導入されて車室20に流入する、という不都合の発生が防止される。
【0041】
一方、上記構成の車両1の走行中に、この車両1がその前方の何らかの物体に衝突(前突)し、この前突により跳ね上げられた物体が、上記カウルルーバー24の上面に落下して大きい衝撃力Fで衝突したとする。
【0042】
上記の場合、物体の衝突の初期では、この物体からの衝撃力Fにより、まず、上記カウルルーバー24は下方に向かって撓むよう変形し、このカウルルーバー24の下方への変形と共に上記遮水パネル40が下降する。
【0043】
図5において、上記物体の衝突の中期では、上記カウルルーバー24の下方への変形と共に下降した上記遮水パネル40の下端部が上記フロントカウル3の内底面である底部板8の上面に圧接し始める(図5中実線)。そして、この状態から、図5中一点鎖線で示すように、上記カウルルーバー24の下方への変形が進行して、上記遮水パネル40が更に下降させられるとする。
【0044】
ここで、前記したように遮水パネル40の下部側は後方に向けて屈曲させられている。このため、上記のように下降させられる遮水パネル40の下端部が上記フロントカウル3の底部板8の上面に圧接すると、上記遮水パネル40の下端部は直ちに上記底部板8の上面を後方に向かって円滑に摺動して、上記遮水パネル40は上記連結具39を中心として後方回動Rする。すると、上記係止部47への被係止部48の係止が解除されて、上記支持片38の後面から上記後連結片44の下部側が後方に離反する一方、上記支持片38の前面に対し少なくとも上記前連結片43が面接触するまで、上記したように遮水パネル40は上記連結具39を中心として円滑に後方回動Rする。
【0045】
よって、上記したように遮水パネル40が上記連結具39を中心として円滑に後方回動Rする分、上記衝撃力Fによるカウルルーバー24の下方への変形は、上記底部板8の上面に圧接した上記遮水パネル40に邪魔されることなく円滑に許容される。このため、上記カウルルーバー24など車体2側に与えられる衝撃力Fは効果的に緩和され、この結果、上記カウルルーバー24など車体2側から物体に与えられる反力は効果的に緩和されることから、この反力により物体に生じようとする傷害値は、より効果的に低減可能とされる。
【0046】
また、上記したように、カウルルーバー24の下方への変形と共に下降した遮水パネル40の下端部が上記底部板8の上面に圧接し始めると、上記遮水パネル40は直ちに連結具39を中心に後方回動Rして上記カウルルーバー24の下方への変形を許容するため、物体の衝突時には直ちに物体に与えられる反力が緩和されて、その傷害値の低減がより迅速かつ確実に達成可能とされる。
【0047】
また、上記した傷害値の効果的な低減は、上記支持片38に遮水パネル40を連結させるための連結具39と上記遮水パネル40との各形状の工夫により達成されることから、上記した傷害値の効果的な低減は、部品点数の増加を抑制しつつ、簡単な構成で達成できると共に、部品点数を少なく抑制できる分、その形成作業が容易にできる。
【0048】
上記の場合、遮水パネル40の後方回動Rの回動量を所望値にすることは、上記前連結片43のくの字形状の角度を種々選択することにより達成できる。
【0049】
また、上記物体の衝突の後期として、上記遮水パネル40の下端部がフロントカウル3の底部板8の上面を後方に摺動した後、上記フロントカウル3の後部板7の前面に圧接する場合には、上記遮水パネル40の屈曲部45を屈曲するよう変形させて、上記衝撃力Fに基づくエネルギーを吸収し、この衝撃力Fを緩和させるようにしてもよい。
【0050】
なお、以上は図示の例によるが、上記支持片38、連結具39の前、後連結片43,44、遮水パネル40、係止部47、および被係止部48の各構成を上記実施例とは前後方向で逆に構成してもよい。また、上記連結具39は、上記遮水パネル40とは別体に形成され、この遮水パネル40の上端部に固着具により固着されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 車体
3 フロントカウル
6 前部板
7 後部板
8 底部板
9 外向きフランジ
10 外向きフランジ
12 内部空間
12a 前空間
12b 後空間
13 カウル補強パネル
20 車室
24 カウルルーバー
30 空気
31 通気孔
33 空調装置
34 空気導入ダクト
35 空気導入口
38 支持片
39 連結具
40 遮水パネル
43 連結片
44 連結片
45 屈曲部
47 係止部
48 被係止部
F 衝撃力
R 後方回動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に延び、その長手方向の各部断面がU字形状をなすフロントカウルと、車体の幅方向に延び、上記フロントカウルをその上方から覆うカウルルーバーと、このカウルルーバーにおける車体の前後方向での中途部から下方に向かって突出すると共に車体の幅方向に延びる支持片と、上下方向に延びて上記フロントカウル内を前、後空間に区画するよう設けられ、その上端縁部が上記支持片に連結具により連結される遮水パネルとを備えた車両の車体前部構造において、
上記連結具が、上記遮水パネルの上端縁部から上方に向かって突出し、上記支持片を前後から挟む一対の連結片を有し、これら両連結片のうち、前後いずれか一方向側の連結片を、車体の側面視で上記一方向に向かって突出するくの字形状にして、その上端部を上記支持片の上記一方向側の面に当接させ、下端部を上記支持片よりも下方に位置させ、一方、他方向側の連結片を上記支持片の上記他方向側の面に面接触させ、上記遮水パネルの上部側に対し下部側を上記他方向に向けて屈曲させたことを特徴とする車両の車体前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−60158(P2013−60158A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201102(P2011−201102)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】