説明

車両の車体前部

【課題】車両の正面に入力された衝撃(荷重)を吸収し、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を短縮した車両の車体前部を提供する。
【解決手段】車体前部12は、左右のフロントサイドフレーム16にサブフレーム15を取付け、サブフレーム15から車体前部12の正面枠部37まで延びるサイドビーム74を有する。サイドビーム74は、サブフレーム15の前壁75に接合し、中央に下方に下げた湾曲部76を形成して、湾曲部76に連ねて水平直線部77とした下部緩衝ビーム部材78と、水平直線部77及び正面枠部37に接合し車両11の正面79からの入力で圧縮変形する衝撃吸収部材81と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の床の前に設けたサブフレームから車両正面近傍まで衝撃吸収用のビームを延ばした車両の車体前部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部には、車両の正面に第1衝撃吸収部、この下に第2衝撃吸収部を設けたものがある。
この車体前部は、前輪に沿うフロントサイドフレームの先端に設けた第1衝撃吸収部、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の先端に設けた第2衝撃吸収部によって、車両前方からの衝撃を吸収することができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の衝撃吸収量が小さくなることがある。
すなわち、エプロンロアメンバに入力された衝撃(荷重)は、エプロンロアメンバからエプロンロアメンバの根本を接続しているサスペンションフレーム(サブフレーム)に一直線に伝わるため、エプロンロアメンバの座屈強度が大きく、エプロンロアメンバは衝撃を十分吸収することができない。
また、車両正面に入力される衝撃を十分に吸収することができないと、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を長くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両の正面に入力された衝撃(荷重)を吸収し、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を短縮した車両の車体前部を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、サブフレームから車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合し、中央に車両の下方に下げた湾曲部を形成して、湾曲部に連ねて水平直線部とした下部緩衝ビーム部材と、水平直線部及び正面枠部に接合し車両の正面からの入力で圧縮変形する衝撃吸収部材と、からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、衝撃吸収部材の上面を正面枠部の下面に結合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収部材は、車両側面視、車両前後に延びて、下部緩衝ビーム部材の湾曲部より車両上方に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、サブフレームは、前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、前アーム連結部を設けた前壁に下部緩衝ビーム部材の後部を結合していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、衝撃吸収部材は、閉断面形状で、車両の上方へ向く平板状の天部と、天部に接合され車両の下方へ膨出した略U字形の溝部と、からなり、衝撃吸収部材の内側に下部緩衝ビーム部材を挿入し接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合し、中央に車両の下方に下げた湾曲部を形成して、湾曲部に連ねて水平直線部とした下部緩衝ビーム部材と、水平直線部及び正面枠部に接合し車両の正面からの入力で圧縮変形する衝撃吸収部材と、からなるので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、まず衝撃吸収部材が圧縮変形することによって衝撃(荷重)を吸収する。続いて、下部緩衝ビーム部材は、中央からV字状に屈曲するので、衝撃を吸収する。その結果、サブフレームの前方で衝撃を吸収することができ、車体前部の前後の長さを短縮することができ、結果的に、車両の全長を短くすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明では、衝撃吸収部材の上面を正面枠部の下面に結合しているので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、上面を有する衝撃吸収部材の天部に伝わり、天部を優先的に圧縮するように衝撃吸収部材は圧縮変形する。
従って、より確実に衝撃吸収部材を衝撃吸収部材の軸方向に圧縮変形させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明では、衝撃吸収部材は、車両側面視、車両前後に延びて、下部緩衝ビーム部材の湾曲部より車両上方に配置されているので、衝撃吸収部材の圧縮変形に続いて下部緩衝ビーム部材が変形し始めるときに、下部緩衝ビーム部材は、その上面を谷折りするように確実に座屈し始めるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、サブフレームは、前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、前アーム連結部を設けた前壁に下部緩衝ビーム部材の後部を結合しているので、衝撃(荷重)は下部緩衝ビーム部材から前壁に伝達され、さらに、ロアアーム前連結端、ロアアーム後連結端、後アーム連結部に順に伝わる。そして、後アーム連結部に一体に連なる後締結部に伝わると、後締結部の変形によって、衝撃を吸収することができる。
【0015】
ロアアームは、サブフレームの左右の端部に比べ強度が大きいため、前アーム連結部から後アーム連結部までの間は変形し難く、車体に結合している後締結部に変形が起き始める。
【0016】
また、後締結部から車体(車室の床の前部)に衝撃(荷重)が伝わるので、車室の床の前部に衝撃(荷重)を分散させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、衝撃吸収部材は、閉断面形状で、車両の上方へ向く平板状の天部と、天部に接合され車両の下方へ膨出した略U字形の溝部と、からなり、衝撃吸収部材の内側に下部緩衝ビーム部材を挿入し接合したので、衝撃吸収部材に衝撃(荷重)が入力されると、閉断面形状を形成している天部と溝部の接合代部は剥離し始める。従って、衝撃吸収部材をより確実に圧縮変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る車両の概要を示す断面図である。
【図2】右下から見た車体前部の斜視図である。
【図3】車体前部の分解斜視図である。
【図4】下から見た車体前部の左部の下面図である。
【図5】実施例に係るサブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図6】サブフレームの平面図である。
【図7】サブフレームの左で、(a)は詳細図、(b)は分解図である。
【図8】実施例に係る正面枠部、サブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図9】実施例に係るサイドビームを取り外した状態を示す斜視図である。
【図10】図8の10−10線断面図である。
【図11】図8の11矢視図である。
【図12】図8の12−12線断面図である。
【図13】正面枠部に取付けるサイドビームの斜視図である。
【図14】図9の14矢視図である。
【図15】図9の15−15線断面図である。
【図16】図9の16−16線断面図である。
【図17】実施例に係る車体前部の衝撃を吸収する機構を説明する図である。
【図18】図17(b)の18−18線断面図である。
【図19】車体前部の衝撃を吸収する機構を説明する図で、(a)は衝撃を入力する前の斜視図、(b)は(a)のb矢視図、(c)は衝撃を入力した後の斜視図、(d)は(c)のd矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
車両11は、図1〜図3に示すように、実施例に係る車体前部12を採用している。
車体前部12は、車体14のフロントボデーであり、サブフレーム15を備える。このサブフレーム15および左右のフロントサイドフレーム16、17にエンジン18を載せ、前サスペンション装置21を支持している。
【0021】
ここで、車両11前後方向をX軸方向、車両11左右方向(車幅方向)をY軸方向、車両11上下方向をZ軸方向とする。
左右は、運転手を基準とし、運転席に座って正面を見た状態で、運転手の右が右とする。
【0022】
エンジン18は、図1、図5、図6に示すように、既存の横置(Y軸方向)きで、右に配置したエンジン本体23と、エンジン本体23に接続し左に配置した変速装置24を有する。
前サスペンション装置21は、図5、図6、図9に示す通り、マクファーソンストラット式で、前輪26(図1)を支持するロアアーム27と、このロアアーム27に下端を取付け立設したダンパー(ストラット)28と、を備える。
【0023】
ロアアーム27は、既存のもので、鉄(鋼)またはアルミニウム合金を用いた鋳造品(中実)であり、鋼板を用いたサブフレーム15に比べ強度が大きい。
そして、サブフレーム15に連結するロアアーム前連結端31と、ロアアーム後連結端32と、前輪26を支持したダンパー28の下端を連結する先端リンク部33と、を備える。なお、ダンパー28の上端を車体前部12のダンパーハウジング34(図2)に締結する。
【0024】
車体前部(フロントボデー)12は、左右のフロントサイドフレーム16、17、このフロントサイドフレーム16、17の先端に取付けた正面枠部(バルクヘッド)37、フロントサイドフレーム16、17に立設したダンパーハウジング34と、を備える。
【0025】
フロントサイドフレーム16、17は、図1〜図4に示すように、ほぼ水平なフレーム本体38と、フレーム本体38から後方下方(矢印a1の方向)に下がり傾斜したフロントフロアフレーム41と、を有する。
フロントフロアフレーム41の中央に設けた前フレーム締結部43、後部に設けた後フレーム締結部44に下方からサブフレーム15を締結し、フロントフロアフレーム41を床(アンダボデー)45に一体的に接合している。
【0026】
アンダボデー45は、図2に示す通り、フロントフロアパネル46の左右の端を左右のサイドボデー47、48のサイドシル51に接合している。
【0027】
また、フロントフロアパネル46と、フロントフロアパネル46の左右の中央に設けたトンネル部52と、図2〜図4に示すフロントフロアフレーム41から延びるフロアセンタフレーム54、フロアフレーム55、アウトリガー56と、を備える。
これらフロアフレーム55の後端、アウトリガー56の外端を左右のフロントサイドフレーム16、17の後方でサイドシル51に接合している。
【0028】
フロントサイドフレーム16、17はまた、フレーム本体38の前部を前衝撃吸収部58とし、この前衝撃吸収部58にバンパ装置61のバンパビーム62を取付けている。
前衝撃吸収部58はバンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を直接吸収する。
【0029】
バンパビーム62は、前衝撃吸収部58の先端に直接締結したものである。すなわち、バンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を吸収するものをフロントサイドフレーム16、17との間に介在させていない。
【0030】
前衝撃吸収部58の車両11内側には正面枠部(バルクヘッド)37を取付けている。
正面枠部(バルクヘッド)37は、左右のフロントサイドフレーム16、17に立設したフロントサイドバルクヘッド64、フロントサイドバルクヘッド64の上部に接合したバルクヘッドアッパフレーム65、フロントサイドバルクヘッド64の下部に接合したフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66を備える。68はフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に接合した足払いプレートである。
【0031】
次に、車体前部12の主要構成を図1〜図16で説明する。
車体前部12は、車両11の車室71に連続する車体前部12の左右のフロントサイドフレーム16、17に車室71の床(アンダボデー)45の前に配置され左右に延びるサブフレーム15を取付けた。
【0032】
そして、サブフレーム15から車体前部12の正面枠部37まで延びるサイドビーム74を有する。
サイドビーム74は、車両11の前方へ向くサブフレーム15の前壁75に接合し、中央に車両11の下方に下げた湾曲部76を形成して、湾曲部76に連ねて水平直線部77とした下部緩衝ビーム部材78と、水平直線部77及び正面枠部37に接合し車両11の正面79からの入力で圧縮変形する衝撃吸収部材81と、からなる。
【0033】
衝撃吸収部材81の上面82(図9、図12)を正面枠部37の下面83(図11、図12)に結合している。
衝撃吸収部材81は、車両側面視(図1、図17(a)の視点)、車両11前後に延びて、下部緩衝ビーム部材78の湾曲部76より車両上方(図17の距離α)に配置されている。
【0034】
サブフレーム15は、前壁75と、前壁75に連なり左右の端部にサスペンション装置(前サスペンション装置)21のロアアーム27を支持している前アーム連結部85を有する。
前アーム連結部85を設けた前壁75に下部緩衝ビーム部材78の後部86(図9)を結合している。
【0035】
また、衝撃吸収部材81は、閉断面形状(図15、図16)で、車両11の上方へ向く平板状の天部88(図14〜図16)と、天部88に接合され車両11の下方へ膨出した略U字形の吸収フレーム部91と、からなる。
衝撃吸収部材81の内側に下部緩衝ビーム部材78を挿入し接合した(図9、図12、図15)。
【0036】
また、サブフレーム15は、ロアアーム27を支持している後アーム連結部94と、サブフレーム15の上部95にエンジン18へ向けて設けたエンジン当て部96と、エンジン当て部96から後アーム連結部94までの間(図5の連続部97)に設けられ、フロントサイドフレーム16、17に締結する後締結部98と、を備えている(図5、図6)。
【0037】
さらに、フロントサイドフレーム16、17は、後締結部98を締結したフレーム締結部(後フレーム締結部)44に車両11の左右(Y軸方向)へ分岐している分岐部102を接続している(図2、図4)。
【0038】
さらに、サブフレーム15は、車両11平面視(図6の視点)、左右(Y軸方向)に延びる横メンバー103と、横メンバー103の左右の端部からそれぞれY字状に前後に分かれることで形成された一方の前枝メンバー104、他方の後枝メンバー105と、を備える。
【0039】
そして、後枝メンバー105に後アーム連結部94が形成され、後アーム連結部94とエンジン当て部96との間に配置され、且つ、後枝メンバー105から車両11後方へ向け突出した枝部106に後締結部98が形成されている。
【0040】
次に、車体前部12を詳しく説明していく。
車体前部12は、既に述べた下部緩衝ビーム部材78と、衝撃吸収部材81と、を有する。
【0041】
下部緩衝ビーム部材78は、図17に示す通り、後部86よりも水平直線部77を距離Hfだけ上位に配置している。なお、水平直線部77に前部151(図12)を含める。
また、図1、図9に示す通り、サブフレーム15に後部86を締結する締結ブラケット152を有する。
締結ブラケット152は、断面U状で、開口を下方に向け前壁75に溶接(図10の溶接部154)で接合されている。
後部86には、ボルト155を通して締結力(軸力)を伝える締結力伝達部156を形成している。
【0042】
水平直線部77は、図11、図12、図14に示す通り、前部151を衝撃吸収部材81内に挿入して、溶接(溶接部157)で接合されている。
【0043】
衝撃吸収部材81は、図11、図14〜図16に示す通り、短角管状で、天部88に吸収フレーム部91のフランジ161を重ねてスポット溶接を施し、溶接部162(図14では×印で示した)で接合している。締結力伝達部163を形成し、締結力伝達部163にボルト164を通している。
【0044】
締結力伝達部163の孔にボルト164を通して、バルクヘッド下部ブラケット167に締結することで、正面枠部(バルクヘッド)37のフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に結合している。
より詳しくは、図12に示す通り、衝撃吸収部材81の上部166がフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に干渉する位置に配置されている。
【0045】
「衝撃吸収部材81の上部166」とは、衝撃吸収部材81の高さHaの上半分の範囲とする。
「フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に干渉する」とは、フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66が衝撃(荷重)で後退したときに、バルクヘッド下部ブラケット167を挟んで、干渉するということ。
【0046】
バルクヘッド下部ブラケット167は、図11〜図13に示すように、天部88に重ねる重ね締結部171が形成され、この重ね締結部171に連ね、フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66の後壁172、フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66の下面83に重ねるL字状の重ね接合部174が形成されている。
【0047】
ここで、サブフレーム15の後締結部98は、図1、図5に示すように、フロントサイドフレーム16の後フレーム締結部44内のカラーナット122にねじ込んだボルト193で締結されている。
【0048】
次に、実施例に係る車体前部12の作用を説明する。
車体前部12の衝撃を吸収する機構を説明する(図4、図17〜図19参照)。
車体前部12では、図17に示す通り、車両11の正面79(図1)に他の自動車など障害物が接触すると、衝撃吸収部材81が変形することによって、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0049】
具体的には、図17(a)に示す通り、車両11の正面79に障害物が接触し、正面79に衝撃(荷重)が矢印b1のように入力されると、図17(b)に示す通り、衝撃吸収部材81がくの字に折れて変形するので、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0050】
衝撃吸収部材81では、軸線方向(X軸方向)に上部(上半分)166(図12)に衝撃(荷重)が入力されると、偏心した荷重となるため、衝撃吸収部材81は天部88を谷折りするように曲がり始める。
そして、図18に示す通り、スポット溶接の溶接部(ナゲットを含む)162(図14)で接合していないところは、天部88とフランジ161が矢印b2のように離れ、開くので、より確実に衝撃吸収部材81を折り曲げることができる。
【0051】
衝撃吸収部材81の変形に続いて、図17(b)に示す通り、下部緩衝ビーム部材78の中央から矢印b3のように折れ曲がるので、衝撃(荷重)を吸収することができる。
下部緩衝ビーム部材78は、軸線方向(X軸方向)に水平直線部77に荷重を入力すると、中央の湾曲部76に対し上方に偏心しているため、偏心した荷重となり、湾曲部76から曲がり始める。
【0052】
このように、車体前部12では、サブフレーム15の前方で衝撃を吸収することができ、車体前部12の前後の長さ(衝撃吸収代(クラッシャブルゾーン))を短縮することができ、結果的に、車両11の全長を短くすることができる。
【0053】
また、車体前部12では、下部緩衝ビーム部材78が変形しつつ、サブフレーム15の前壁75に衝撃(荷重)を伝えると、前壁75は前アーム連結部85に衝撃(荷重)を矢印b4のように伝える。
【0054】
そして、図19(c)(d)に示す通り、前アーム連結部85はロアアーム27に衝撃(荷重)を矢印b5のように伝えるので、ロアアーム27は後退してサブフレーム15の後締結部98を矢印b6のように変形させることによって、サブフレーム15は衝撃を吸収する。
【0055】
加えて、フロントサイドフレーム16内のカラーナット122にねじ込んだボルト193を曲げることによって、衝撃を吸収する。
【0056】
さらに、後締結部98はフロントサイドフレーム16の後フレーム締結部44に衝撃(荷重)を矢印b7のように伝えるので、図4に示す通り、後フレーム締結部44、分岐部102はフロアセンタフレーム54に衝撃(荷重)を矢印b8のように分散し、同時にフロアフレーム55に矢印b9のように分散することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の車両の車体前部は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0058】
11…車両、12…車体前部、15…サブフレーム、16…左のフロントサイドフレーム、17…右のフロントサイドフレーム、21…サスペンション装置(前サスペンション装置)、27…ロアアーム、37…正面枠部、45…床(アンダボデー)、71…車室、74…サイドビーム、75…サブフレームの前壁、76…湾曲部、77…水平直線部、78…下部緩衝ビーム部材、79…車両の正面、81…衝撃吸収部材、82…衝撃吸収部材の上面、83…正面枠部の下面、85…前アーム連結部、86…下部緩衝ビーム部材の後部、88…天部、91…吸収フレーム部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに前記車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、
前記サブフレームから前記車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、
前記サイドビームは、前記車両の前方へ向く前記サブフレームの前壁に接合し、中央に車両の下方に下げた湾曲部を形成して、該湾曲部に連ねて水平直線部とした下部緩衝ビーム部材と、前記水平直線部及び前記正面枠部に接合し前記車両の正面からの入力で圧縮変形する衝撃吸収部材と、からなることを特徴とする車両の車体前部。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材の上面を前記正面枠部の下面に結合していることを特徴とする請求項1記載の車両の車体前部。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、車両側面視、前記車両前後に延びて、前記下部緩衝ビーム部材の前記湾曲部より車両上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の車体前部。
【請求項4】
前記サブフレームは、前記前壁と、該前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、
前記前アーム連結部を設けた前記前壁に前記下部緩衝ビーム部材の後部を結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の車体前部。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材は、閉断面形状で、車両の上方へ向く平板状の天部と、該天部に接合され車両の下方へ膨出した略U字形の溝部と、からなり、
前記衝撃吸収部材の内側に前記下部緩衝ビーム部材を挿入し接合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の車体前部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−153255(P2012−153255A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14175(P2011−14175)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】