車両の車体構造及びその製造方法
【課題】車両の車体構造において、閉断面部を有する部位の剛性を向上させながら、振動の伝達を抑制することを課題とするとする。
【解決手段】断面ハット状の第1部材1と平板状の第2部材2とを接合してなる閉断面部3を有するフレーム4において、前記閉断面部3内に補強体としてのバルクヘッド5を配設すると共に、該バルクヘッド5のフランジ5a…5aと前記第1、第2部材1、2とを、スポット溶接によって結合した剛結合部Xと、減衰部材6を介して結合した柔結合部Yとで結合する。
【解決手段】断面ハット状の第1部材1と平板状の第2部材2とを接合してなる閉断面部3を有するフレーム4において、前記閉断面部3内に補強体としてのバルクヘッド5を配設すると共に、該バルクヘッド5のフランジ5a…5aと前記第1、第2部材1、2とを、スポット溶接によって結合した剛結合部Xと、減衰部材6を介して結合した柔結合部Yとで結合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造、特に車体における閉断面部における構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、乗り心地や安全性を向上させるために車体の剛性を高めることが必要で、剛性を高める技術として、例えば特許文献1、2には、車体構成部材で形成された閉断面部内に補強体を配設したものが開示されている。
【0003】
このうち、特許文献1には、サイドシルアウタとサイドシルインナとで形成されるサイドシルの閉断面部内にバルクヘッドを節状に配設し、その周囲に設けたフランジを前記サイドシルアウタ及びサイドシルインナの内面にスポット溶接と接着剤とを併用して接合した構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アッパメンバとロアメンバとで形成されるフロントサスペンションメンバの閉断面部内に同じくバルクヘッドを節状に配設し、その周囲に設けたフランジを前記アッパメンバの内面に構造用接着剤を用いて接合した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−182472号公報
【特許文献2】実開昭60−097673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記公報に開示された構造では、剛性の向上は実現されるものの、その配設部位や形状等によっては、車両各部で発生する振動の車室内への伝達を効果的に抑制できない場合があり、乗員に伝達される振動を抑制して乗り心地を向上させ、また騒音を低減させるためには、車体構造のさらなる改善が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造であって、前記車体構成部材と補強体との接合部は、互に当接した状態で結合された剛結合部と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の車体構造であって、前記減衰部材は粘弾性部材であり、その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造であって、前記補強体は、周囲に1又は2以上のフランジ部を有するバルクヘッドであり、前記接合部は、前記フランジ部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の車体構造であって、前記バルクヘッドは、前記閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4に記載の車両の車体構造であって、前記フランジの1つに前記剛結部と前記柔結合部とが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の車体構造であって、前記閉断面部は、2つの車体構成部材で構成されていることを特徴とする。
【0014】
一方、請求項7に記載の発明は、閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造を製造する方法であって、前記車体構成部材と補強体とを接合する工程として、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、例えば中空管状の単一の車体構成部材により、或いは2以上の車体構成部材を接合することにより形成される閉断面部内に補強体が配設されることにより、前記車体構成部材ないし該車体構成部材で構成される車体の当該部位の剛性が向上され、該部位の変形や前記閉断面部の型崩れ等が抑制されることになる。
【0017】
その場合に、前記車体構成部材と補強体との接合部は、溶接やボルト締め等による剛結合部と、減衰部材を介設した柔結合部とを有し、剛結合部により車体構成部材と補強体とが強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部の減衰部材によって車体構成部材の振動が減衰されることになる。
【0018】
これにより、車体構造として所要の剛性を確保しつつ振動の伝達を抑制して、当該車両の乗り心地を向上させ、また騒音を低減させることが可能となり、その場合に、この発明によれば、振動伝達の抑制のために新たな部材を設ける必要がなく、車体の重量増等を回避しながら前記効果が達成される利点がある。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記減衰部材として粘弾性部材が用いられ、その物性としての貯蔵弾性率と損失係数とが、振動減衰効果が確認された所定の範囲内の値に特定されるから、車体構成部材の振動を減衰する請求項1の発明の効果が確実に達成されることになる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、補強体が周囲にフランジを有するバルクヘッドとされ、そのフランジに前記車体構成部材との接合部が設けられるので、該接合部による前記剛性向上効果及び振動減衰効果が、具体的構造として確実に達成されることになる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記バルクヘッドが、閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有する構成とされるので、バルクヘッドによる剛性向上効果が閉断面部を形成する車体構成部材の広範囲に及ぶと共に、閉断面部内の近接する2箇所に個々にバルクヘッドを配設する場合に比べて、部品点数が半減して部品管理や組付作業の能率が向上することになる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、車体構成部材とバルクヘッドとの接合部を構成する前記剛結合部と前記柔結合部とが一つのフランジに設けられるので、このフランジによる接合部でバルクヘッドと車体構成部材との接合強度が確保されると共に、振動減衰効果も実現されることになる。
【0023】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、前記請求項1〜5の発明による効果が、2つの車体構成部材で閉断面部が形成される部位、例えば、サイドシル、ピラー、ルーフレール等で達成されることになる。
【0024】
そして、請求項7に記載の発明によれば、車体構成部材で形成される閉断面部内に補強体を配設して所定の車体構造を製造するときに、前記車体構成部材と補強体とを、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とで接合するので、この方法で製造された車体構造について前記請求項1の発明の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態についてのシミュレーションモデルを示す図である。
【図2】同シミュレーションの結果を示すイナータンスの周波数特性図である。
【図3】同じく貯蔵弾性率及び損失係数に対するモード減衰比増減特性図である。
【図4】図3の結果に基づいて作成した有効範囲を示す図である。
【図5】本発明の第1、第2実施形態が適用される車体前部の斜視図である。
【図6】図5のa−a断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図7】図6のc−c断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図8】図6のd−d断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図9】第1実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図10】第1実施系他の製造過程の説明図である。
【図11】図5のb−b断面で切断した第2実施形態の断面図である。
【図12】図11のe−e断面で切断した第2実施形態の断面図である。
【図13】第2実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図14】第3、第4実施形態が適用される車室前部の斜視図である。
【図15】図14に示す車室前部の要部拡大斜視図である。
【図16】図15のf−f断面で切断した第3実施形態の断面図である。
【図17】図16のh−h断面で切断した第3実施形態の断面図である。
【図18】第3実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図19】図15のg−g断面で切断した第4実施形態の断面図である。
【図20】図19のi−i断面で切断した第4実施形態の断面図である。
【図21】第4実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図22】第5実施形態が適用される車体前部の下方からの斜視図である。
【図23】図22に示す部位の車内側からの要部拡大斜視図である。
【図24】図23のj−j断面で切断した第5実施形態の断面図である。
【図25】図24のk−k断面で切断した第5実施形態の断面図である。
【図26】第5実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図27】第6、第7実施形態が適用される車体の側面図である。
【図28】図27のl−l断面で切断した第6実施形態の断面図である。
【図29】第6実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図30】図27のm−m断面で切断した第7実施形態の断面図である。
【図31】第7実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図32】第8実施形態が適用される車室底部の斜視図である。
【図33】図32に示す車室底部の要部拡大斜視図である。
【図34】図33のn−n断面で切断した第8実施形態の断面図である。
【図35】第8実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図36】第9実施形態が適用される車体後部の斜視図である。
【図37】図36のo−o断面で切断した第9実施形態の断面図である。
【図38】図37のp−p断面で切断した第9実施形態の断面図である。
【図39】第9実施形態に係る補強体の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、具体的な車体への適用構造についての説明に先立ち、本発明の請求項に記載の構造について行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0027】
図1(a)、(b)は、このシミュレーションに用いた剛結合モデルAと、剛結合・柔結合併用モデルBとを示すもので、いずれも、車体構成部材として断面ハット状の第1部材
1と平板状の第2部材2とを用い、第1部材1の両側のフランジに第2部材2の両側端部を接合することにより、断面ほぼ長方形状の閉断面部3を有する中空フレーム4とされている。
【0028】
そして、このフレーム4の閉断面部3内に補強体としてのバルクヘッド5が配設され、該バルクヘッド5は周囲4辺に設けられたフランジ5a…5aが前記第1、第2部材1、2の内面にそれぞれ接合されることにより、該バルクヘッド5がフレーム4内に固定されておいる。
【0029】
その場合に、同図(a)に示す剛結合モデルAにおいては、バルクヘッド5の各フランジ5a…5aが中央部でスポット溶接されることにより前記第1、第2部材1、2に接合されており、同図(b)に示す剛結合・柔結合併用モデルBにおいては、各フランジ5a…5aが、中央部でスポット溶接される共に、その両側で減衰部材6を介して第1、第2部材1、2の内面に接合されており、これらのスポット溶接部が剛結合部X、減衰部材6を介して接合された部位が柔結合部Yとなる。
【0030】
ここで、モデルBは、柔結合部Yを有する分だけ剛結部XのみのモデルAより剛性が高くなり、両モデルA、Bで共振周波数が異なることになるが、このシミュレーションにおいては、共振周波数をそろえて比較するために、剛結部Xの面積をモデルAの方をモデルBより多少大きく設定している。また、柔結合部Yにおける減衰部材6は、損失係数が0.4、貯蔵弾性率が200MPa(20℃、30Hz)の粘弾性部材とした。
【0031】
図2はシミュレーション結果を示すもので、前記モデルA、Bについて、フレーム4の一端における閉断面部の所定の角部を加振点x、他端の閉断面部の前記角部と対角上に位置する角部を応答点yとしたときの、この応答点yにおけるイナータンス(単位加振力当りの加速度振幅の大きさ:m/s2/N)を比較して示している。
【0032】
この図から明らかなように、剛結合モデルAに比べて、剛結合・柔結合併用モデルBの方がイナータンスのピーク値が低くなっており、柔結合部Yを設けることにより、加振点xから応答点yまで振動が伝達される過程での減衰量が多くなることが示されている。
【0033】
図3は、前記剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、減衰部材6として損失係数の異なる複数の粘弾性部材を用い、その損失係数と貯蔵弾性率とに対するモード減衰比増減の特性をシミュレーションした結果を示すものである。なお、損失係数が0.05の減衰部材は比較例として示すもので、一般的に車体で使用される構造用接着剤である。
【0034】
この図から明らかなように、粘弾性部材を用いることにより、一般的に車体で使用される構造用接着剤(損失係数0.05)を用いた場合よりも、全貯蔵弾性率の領域でモード減衰比増減が大きくなり、振動が減衰し易くなることが示されている。特に損失係数が大きいほどモード減衰比増減が大きくなると共に、いずれの損失係数においても、貯蔵弾性率が100MPaでモード減衰比増減が最大となることが示されている。
【0035】
図4は、図3のシミュレーション結果から、減衰部材6として粘弾性部材を用いた場合の実質的に減衰効果が得られるときの損失係数と貯蔵弾性率の関係を示すもので、モード減衰比増減が図3に示す閾値m以上で効果あり、閾値m未満で効果なしと判定したものである。
【0036】
この結果、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内と、損失係数0.4を超える範囲とで、実質的に減衰効果が得られることが判明する。
【0037】
次に、本発明の構造を車体へ適用した実施形態について説明する。
【0038】
図5は、第1、2実施形態が適用される車体の前部の構造を示すもので、該車体前部のエンジンルーム周辺の骨格を構成する部材として、前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム11、11(一方のみ図示、以下同様)と、該フロントサイドフレーム11、11の前端部から前方へ延びるバンパステー12、12と、これらのバンパステー12、12の前端部に左右両端部が連結された車幅方向に延びるバンパレイン13と、該バンパレイン13の後方で車幅方向に配設されたサスクロス14と、該サスクロス14の左右両端部と前記フロントサイドフレーム11、11とをそれぞれ連結する左右のメンバーブラケット15と、左右のフロントサイドフレーム11、11の上方で前後方向に延びるエプロンレイン16、16とが備えられている。
【0039】
また、エンジンルームの後方に、該エンジンルームと車室とを仕切るダッシュアッパパネル17とダッシュロアパネル18とが配設されていると共に、ダッシュアッパパネル17の上方には車幅方向に延びるカウルパネル19が配設され、さらに、ダッシュロアパネル18の左右両端部と前記エプロンレイン16、16の後端部とが交わるエンジンルームの後部の左右両側の角部には、サスハウジングアッパ20とサスハウジングロア21とでサスタワーが形成されている。
【0040】
そして、前記ダッシュロアパネル18の下辺の車幅方向中央部は上方に切り開かれ、トンネル22の入口部とされていると共に、この入口部に沿って正面視が略山形で、断面ハット状のダッシュロアレイン23が配設されている。
【0041】
以上のような構成の車体の前部において、第1実施形態は前記フロントサイドフレーム11に適用されており、次に、この第1実施形態について説明する。
【0042】
図6〜8に示すように、フロントサイドフレーム11は、略平板状のフロントサイドフレームアウタパネル(以下、「アウタパネル」という)31と、断面略ハット状のフロントサイドフレームインナパネル(以下、「インナパネル」という)32とで構成され、上方のフランジ同士、下方のフランジ同士をそれぞれ接合することにより、前後方向に延びる閉断面部33を有する中空構造とされている。
【0043】
そして、前記閉断面部33内において、インナパネル32の下方の水平面部32a上にナット34が溶接によって固着されており、前記メンバブラケット15の先端に取り付けられたスリーブ15aに挿通されるボルト35が、インナパネル32の前記水平面部32aに設けられた孔(図示せず)を通って該ナット34に螺合されることにより、メンバブラケット15がフロントサイドフレーム11に連結されるようになっている。
【0044】
また、このフロントサイドフレーム11の閉断面部33内における前記ナット34の溶接部の前方側近傍に、該閉断面部33を前後に仕切る補強体としてのバルクヘッド40が配設されている。
【0045】
このバルクヘッド40は、図9に示すように、前記閉断面部33を仕切る仕切面部41と、その上辺部と車外側の側辺部とにそれぞれ設けられた後方へ延びる第1、第2フランジ部42、43と、仕切面部41の車内側の側辺部と下辺部に設けられた前方へ延びる第3、第4フランジ部44、45とを有し、第2フランジ部43には、後述する粘弾性部材48、48を配置するための一段低くされた座部43a、43aが設けられている。
【0046】
また、前記仕切面部41の下部と第4フランジ45とが交わる角部には、前記ナット34の下端部の大径部34aとの干渉を避けるために、前方へ膨出する平面視で略半円状の膨出部46が設けられていると共に、この膨出部46の上方には、前記ナット34の上部34bを溶接するための上下に延びる後方への膨出部47が設けられている。
【0047】
そして、このバルクヘッド40は、前記第1、第3フランジ部42、44が、インナパネル32の上方の水平面部32b及び縦面部32cの内面にそれぞれスポット溶接により接合されていると共に、第2フランジ部43が、アウタパネル31の内面に対向し、該第2フランジ部43の座部43a、43aに配置されて該座部43a、43aに一方の面が接着された振動減衰部材としての粘弾性部材48、48の他方の面がアウタパネル31の内面に接着され、該粘弾性部材48、48を介してバルクヘッド40の第2フランジ部43とアウタパネル31とが接合されており、また、該第2フランジ部43は、アウタパネル31の内面にスポット溶接により接合されている。
【0048】
また、前記後方への膨出部47と前記ナット34の上部34bとが溶接によって結合され、該ナット上部34bへの溶接部位と前記スポット溶接部位とが剛結合部X…Xとされ、前記粘弾性部材48、48を介して接合された部位が柔結合部Y、Yとされている。
【0049】
このように、この第1実施形態に係るフロントサイドフレーム11の構造によれば、閉断面部33内に配設されたバルクヘッド40により該フレーム11の剛性が向上し、該フレーム11の変形や前記閉断面部33の型崩れ等が抑制されることになる。
【0050】
その場合に、前記バルクヘッド40は、第1、第3フランジ部42、44がインナパネル32の上面部32b及び縦面部32cに、仕切面部41がナット34を介して該インナパネル32の下方の水平面部32aにそれぞれスポット溶接により剛結合され、第2フランジ部43が粘弾性部材48、48を介してアウタパネル31に柔結合されていることにより、剛結合部によって前記インナパネル32に強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部によってフロントサイドフレーム11の振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0051】
なお、この第1実施形態に係るフロントサイドフレーム11は、図10に示す工程により製造される。
【0052】
即ち、まず、同図(a)に示すように、インナパネル32の下方の水平面部32a上にナット34を載置して下端部を溶接し、これらを結合する一体化し、次に、同図(b)に示すように、バルクヘッド40をインナパネル32内に配置して、第1、第3フランジ部42、44をインナパネル32の上方の水平面部32b及び縦面部32cにそれぞれスポット溶接すると共に、仕切面部41の後方への膨出部47を前記ナット34の上部34bに溶接する。
【0053】
その後、同図(c)に示すように、バルクヘッド40の第2フランジ部43の座部43a、43aに比較的厚手のシート状の粘弾性部材48、48を配置して、その一方の面を自らの粘着力によって接着すると共に、同図(d)に示すように、該粘弾性部材48、48が接着されたバルクヘッド40の第2フランジ部43に重ねるようにアウタパネル31を配置し、該アウタパネル31の上下のフランジとインナパネル32の上下のフランジとをそれぞれ溶接して接合する。また、アウタパネル31とバルクヘッド40の第2フランジ部43とをスポット溶接で接合する。このとき、前記粘弾性部材48、48の他方の面がアウタパネル31に押し付けられてその内面に接合し、フロントサイドフレーム11が完成する。
【0054】
次に、前記第1実施形態と同様、車体の前部に適用された第2実施形態について説明する。
【0055】
この第2実施形態は、図5に示すダッシュロアパネル18の下辺の車幅方向中央部に設けられたトンネル22の入口部を補強する正面視が該入口部に沿って略山形とされたダッシュロアレイン23に適用されたもので、該ダッシュロアレイン23は、図11に示すように、断面形状が略ハット状とされ、その周縁部がダッシュロアパネル18の前面に接合されることにより、該ダッシュロアパネル18との間に、車幅方向に延びる正面視略山形の閉断面部24が形成されている。
【0056】
そして、図11、12に示すように、この閉断面部24内に補強体としてのバルクヘッド50が配設され、該バルクヘッド50により、閉断面部が左右に仕切られている。
【0057】
このバルクヘッド50は、図13に示すように、前記閉断面部24を仕切る仕切面部51と、該仕切面部51の上辺部、前辺部及び下辺部にそれぞれ設けられて車体中央側へ延びる第1、第2、第3フランジ部52、53、54と、仕切面部51の後辺部に設けられ車外側へ延びる第4フランジ部55とを有し、第4フランジ部55には、粘弾性部材56、56を配置するための一段後退した座部55a、55aが設けられている。
【0058】
そして、このバルクヘッド50は、まず、第1、第2、第3フランジ部52、53、54が、ダッシュロアレイン23の上面部23a、前面部23b及び下面部23cの内面にそれぞれスポット溶接により接合されると共に、第4フランジ部55の座部55a、55aに粘弾性部材56、56が配置されてその一方の面が接着され、この状態で、該粘弾性部材56、56の他方の面をダッシュロアパネル18の前面に押し付けて該パネル18に接着しながら、ダッシュロアレイン23がダッシュパネル18の前面に配設され、その周縁部がダッシュロアパネル18に接合される。また、該第4フランジ部55における前記座部55a、55aの間の部位がダッシュロアパネル18にスポット溶接により接合される。
【0059】
これにより、ダッシュロアパネル18とダッシュロアレイン23との間に、バルクヘッド50によって仕切られた閉断面部24を有する構造が形成されることになり、その場合に、前記バルクヘッド50とダッシュロアパネル18及びダッシュロアレイン23との前記スポット溶接部位が剛結合部X…Xとされ、ダッシュロアパネル18に粘弾性部材56を介して接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0060】
したがって、この第2実施形態に係るダッシュロアパネル18の下部のトンネル入口部においても剛性が向上すると共に、該バルクヘッド50とダッシュロアパネル18との間の柔結合部Y、Yの存在により、該ダッシュロアパネル18の下部で振動が減衰されることになる。
【0061】
次に、車室の前部に適用された第3、第4実施形態について説明する。
【0062】
図14、15に示すように、車室の前部は、該車室の前面を形成するダッシュロアパネル61と、底面を形成するフロントフロアパネル62と、これらのパネル61、62の間の前席の足元部に配設されたフロントフレームレイン63等で構成されており、該車室の底部の中央には、前後方向に延びるトンネルレイン64が配設されている。
【0063】
また、車室側部における前記ダッシロアパネル61の側部の下方には、フロントドアを支持するヒンジピラーの下端部と車体の側面下部に配設されるサイドシルとが交わる角部に、サイドシルインナフロント65と、その後端に連続するサイドシルインナ66とが配設されており、さらに、前記フロントフロアパネル62の上面には、車幅方向に延びてトンネルレイン64とサイドシルインナ66とを連結するNo.2クロスメンバ67、No.2.5クロスメンバ68が配設されている。
【0064】
そして、第3、第4実施形態は、前記サイドシルインナフロント65が配設されたヒンジピラーの下端部と、その後方のサイドシルインナ66が配設されたサイドシルの前部における前記No.2クロスメンバ67の接合部前方の部位にそれぞれ適用されており、まず、前記ヒンジピラー下端部の第3実施形態について説明する。
【0065】
図16、17に示すように、ヒンジピラーの下端部におけるサイドシルの前端部が交わる角部は、車外側がサイドフレームアウタ71により、車内側がサイドシルインナフロント65によりそれぞれ形成され、これらの前縁部、下縁部、後縁部にかけて設けられたフランジが接合されることにより、該サイドフレームアウタ71とサイドシルインナフロント65との間に閉断面部73が形成されている。ここで、前記サイドフレームアウタ71は、サイドシルアウタ101、ルーフレールアウタ、ヒンジピラーアウタ、センタピラーアウタ、リヤピラーアウタ、フロントピラーアウタ、リヤフェンダを一体にしたものである。
【0066】
また、この閉断面部73内には、前記サイドフレームアウタ71の内面に沿って配設されたヒンジピラーレイン74と、その下部に接合されたサイドシルアウタレイン75と、前記サイドシルインナフロント65の下部の内面に沿って配設されたサイドシルインナ76とが設けられており、さらに、サイドシルインナフロント65の下端部の車内側の面には、前記ダッシュロアパネル61と、その下方に配設されたトルクボックス77の車外側の端部が接合されている。
【0067】
そして、前記閉断面部73内において、車外側のヒンジピラーレイン74と車内側のサイドシルインナフロント65との間に補強体としてのバルクヘッド80が配設されている。
【0068】
このバルクヘッド80は、図18に示すように、上部と下部にほぼ水平方向に延びる第1、第2仕切面部81、82を有し、これらの仕切面部81、82の車外側の端部が連結部としての縦面部83によって連結され、図16に示すように断面形状が略コ字状とされている。
【0069】
また、前記縦面部83の前後の縁部から車内側に折曲された第1、第2折曲面部84,85が設けられており、前方の第1折曲面部84の上下両端部が、前記第1、第2仕切面部81,82の前辺部に接合され、後方の第2折曲面部85の上下両端部が、前記第1、第2仕切面部81、82の後辺部に接合され、これにより、バルクヘッド80の全体が、車内側の面が開口した略箱状とされている。
【0070】
さらに、第1、第2仕切面部81、82の車内側の辺部には、上方および下方にそれぞれ延びる第1、第2フランジ部86、87が設けられており、これらのフランジ部86、87に、車内側へ突出する3箇所の溶接用の平面部86a…86a、87a…87aと、該平面部より車外側へ後退した2箇所の粘弾性部材配置用の座部86b、86b、87b、87bとが交互に設けられており、また、前記縦面部83の内面には、ボルト挿通孔(図示せず)に位置を合わせて、ナット88が溶接によって固着されている。
【0071】
そして、このバルクヘッド80は、まず、前記縦面部83がサイドフレームアウタ71の内側に配設されたヒンジピラーレイン74の内面に重ねられた状態で、該サイドフレームアウタ71、ヒンジピラーレイン74及び該バルクヘッド80の縦面部83のボルト挿通孔を通してボルト89が挿通されて、該縦面部83の内面に固着されたナット88に螺合されることにより、前記ヒンジピラーレイン74を介してサイドフレームアウタ71に締結される。
【0072】
次いで、バルクヘッド80の第1、第2フランジ部86、87に設けられた座部86b、87bに粘弾性部材90…90がそれぞれ配置され、その一方の面が座部86b、87bに接着された状態で、これらの粘弾性部材90…90を押し付けながら、サイドシルインナフロント65がサイドフレームアウタ71に重ね合わせられ、両者のフランジが接合される。
【0073】
このとき、粘弾性部材90…90の他方の面がサイドシルインナフロント65の内面に接着されると共に、この状態で、第1、第2フランジ部86、87に設けられた平面部86a…86a、87a…87aがサイドシルインナフロント65の内面に対接され、これらの対接部が、サイドシルインナフロント65の外側(車内側)から片側溶接によって接合される。
【0074】
これにより、前記サイドフレームアウタ71とサイドシルインナフロント65とで、バルクヘッド80が内部に配設された状態で閉断面部73が形成されることになり、該バルクヘッド80の第1、第2フランジ部86、87における片側溶接部位、及び縦面部83におけるボルト89とナット88とによる締結部位が剛結合部X…Xとされ、前記第1、第2フランジ部86、87とサイドシルインナフロント65とが粘弾性部材90…90を介して接合された部位が柔結合部Y…Yとされる。
【0075】
したがって、この第3実施形態によれば、サイドシルの前端部が交わるヒンジピラーの下端部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y…Yの存在によって当該部位の振動が減衰されることになる。なお、この実施形態においては、バルクヘッド80が、剛結合部X及び柔結合部Yが形成される2つの仕切面部81、82を有するので、ヒンジピラーの下端部の広い範囲に剛性向上効果と振動減衰効果が得られることになる。
【0076】
次に、第4実施形態について説明すると、図14、15に示すサイドシルの前端部は、図19、20に示すように、該サイドシルの車外側を形成するサイドシルアウタ101と、車内側を形成する前記サイドシルインナ66と、これらの間に配設されて断面形状が車外側に膨出するハット状とされた前記サイドシルアウタレイン75とで構成され、これらの上縁部及び下縁部に設けられたフランジ同士がそれぞれ三重に接合されて、サイドシル内にサイドシルアウタレイン75で仕切られた前後に延びる第1、第2閉断面部102、103が形成されている。
【0077】
そして、サイドシルアウタレイン75とサイドシルインナ76とで形成される断面積が大きい方の第1閉断面部102内にバルクヘッド110が該閉断面部102を前後に仕切るように配設されている。
【0078】
このバルクヘッド110は、図21に示すように、第1、第2部材110A、110Bで形成され、第1部材111は、前記閉断面部102を仕切る仕切面部111と、該仕切面部111の上下の辺部と車外側の辺部とにそれぞれ設けられた後方へ延びる第1、第2、第3フランジ部112、113、114と、仕切面部111の車内側の辺部に設けられた前方へ延びる第4フランジ部115とを有する。
【0079】
また、第2部材110Bは、前記第1部材110Aの仕切面部111の前方に略平行に位置する第1面部116と、該第1面部116の車外側の辺部から後方に折曲された第2面部117とを有し、該第2面部117の後端部に設けられて車外側に延びる第5フランジ部118が、前記第1部材110Aの仕切面部111の前面の車幅方向のほぼ中央部に溶接されている。これにより、第1、第2部材110A、110Bが一体化され、バルクヘッド110は、図20に示すように、平面形状が略h状とされている。
【0080】
そして、該バルクヘッド110の第2部材110Bには、前記第1面部116の車内側の辺部に設けられた前方へ延びる第6フランジ部119が設けられ、この第6フランジ部と119前記第1部材110Aの第4フランジ部115とが略同一面上に配置されている。
【0081】
この第4実施形態では、まず、ハット状のサイドシルアウタレイン75の内側に、バルクヘッド110における第1部材110Aの車外側の半部が嵌め込まれて、該第1部材110Aの第1、第2、第3フランジ部112、113、114が前記サイドシルアウタレイン75の上面部75a、下面部75b、及び車外側の縦面部75cの内面にスポット溶接によりぞれぞれ接合され、該バルクヘッド110とサイドシルアウタレイン75とが一体化される。
【0082】
次いで、バルクヘッド110の第1部材110Aにおける第4フランジ部115及び第2部材110Bの第6フランジ部119の車内側の面に、粘弾性部材120、120の一方の面がそれぞれ接着された状態で、これらの粘弾性部材120、120を押し付けるようにサイドシルインナ66がサイドシルアウタレイン75に車内側から重ねられ、さらに、車外側からサイドシルアウタ101が重ねられて、これらの上下のフランジがそれぞれ三重接合される。このとき、前記粘弾性部材120、120の他方の面がサイドシルインナ66の内面に接着される。
【0083】
これにより、前記サイドシルインナ66とサイドシルアウタレイン75とで形成される第1閉断面部102内にバルクヘッド110が配設された状態でサイドシルが形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド110の第1部材110Aにおける第1、第2、第3フランジ部112,113、114と、サイドシルアウタレイン75とのスポット溶接部が剛結合部X…Xとなり、前記第1部材110Aの第4フランジ部115と第2部材110Bの第6フランジ部119とが粘弾性部材120、120を介してサイドシルインナ66に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0084】
したがって、この第4実施形態によれば、サイドシル前部の剛性が向上すると共に、柔結合部Y、Yの存在により、当該部位の振動が減衰されることになる。
【0085】
次に、車室の前端部の下方に適用された第5実施形態について説明する。
【0086】
図22に示すように、車室前部の下面は、ダッシュロアパネル131とフロアパネル132とで形成されていると共に、エンジンルーム側から後方へ延びるフロントフロアフレーム133が前記フロアパネル132の下面に接合され、サイドシルインナ134とトンネルレイン135との間を通って後方に延びている。
【0087】
このフロントフロアフレーム133は、前記ダッシュロアパネル131とフロアパネル132との接合部で後方側が低くなるように屈曲されており、この屈曲部の剛性を確保するために、前記ダッシュロアパネル131とフロアパネル132との接合部に、該フロントフロアフレーム133と前記サイドシルインナ134とを連結するようにトルクボックス136が配設されている。
【0088】
このトルクボックス136の車内側には、図23に示すように、フロントフレームレイン137が配設されており、図24、25に示すように、この上下に略平行に配置されたフロントフレームレイン137とトルクボックス136、及び、その車内側、車外側にそれぞれ位置するフロントフロアフレーム133とサイドシルインナ134とにより閉断面部138が形成され、この閉断面部138内を左右に仕切るように、該閉断面部138内にバルクヘッド140が配設されている。
【0089】
このバルクヘッド140は、図26に示すように、仕切面部141と、その上辺部から車内側に延びる第1フランジ部142と、仕切面部141の下辺部から車外側へ延びる第2フランジ部143とを有する。第1フランジ部142は、後側より前側が高くなるように全体的にやや湾曲され、その前端部、中間部、及び後端部の3箇所に溶接用の平面部142a…142aが、これらの平面部142a…142aの間に2箇所の粘弾性部材の座部142b、142bが設けれている。また、前記仕切面部141と第2フランジ部143の後端部には、溶接用の折曲片部141a、143aが同一面上に位置するように設けられている。
【0090】
そして、この第5実施形態では、まず、前記バルクヘッド140をトルクボックス136内に配設して、第2フランジ部143と、該第2フランジ部143及び仕切面部141の後端部に設けられた折曲片部143a、141aを該トルクボックス136の内面にスポット溶接により接合しし、該トルクボックス136とバルクヘッド140とを一体化する。
【0091】
次に、バルクヘッド140の第1フランジ部142おける座部142b、142bに粘弾性部材144、144をそれぞれ配置し、その一方の面を該座部142b、142bに接着させると共に、その状態で、該粘弾性部材144、144をフロントフレームレイン137の下面に押し付けて他方の面を接着させるように、トルクボックス136をフロントフレームレイン137の下面に配設する。そして、トルクボックス136の周囲のフランジをフロントフレームレイン137に溶接し、かつ、該フロントフレームレイン137と前記バルクヘッド140の第1フランジ部142における平面部142a…142aとを片側溶接する。
【0092】
これにより、前記トルクボックス136、フロントフレームレイン137、フロントフロアフレーム133及びサイドシルインナ134により形成される閉断面部138がバルクヘッド140により左右に仕切られた状態で、車室前端の下面部が構成されることになる。
【0093】
その場合に、前記バルクヘッド140の仕切面部141及び第2面部143とトルクボックス136とのスポット溶接部、並びにバルクヘッド140の第1面部142とフロントフレームレイン137との片側溶接部とが剛結合部X…Xとなり、バルクヘッド140の第1フランジ部142が粘弾性部材144を介してフロントフレームレイン137に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0094】
したがって、この第5実施形態によれば、車室の前端部下方の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、当該部位において振動が減衰されることになる。
【0095】
次に、車体の側面上部におけるセンタピラー及びルーフレールにそれぞれ適用された第6、第7実施形態について説明する。
【0096】
図27は、車体の右側面を車内側から見た図で、車体側面は、下部に前後方向に延びるサイドシル151が、上部に同じく前後方向に延びるルーフレール152が配設されていると共に、これらの間の前部には、上下に連結されたフロントピラー153とヒンジピラー154とが、中間部には、前記サイドシル151とルーフレール152とを連結するセンタピラー155が、後部には、リヤホイールハウス156と該リヤホイールハウス156から上方に延びて前記ルーフレール152につながるリヤピラー157とが設けられる。
【0097】
そして、第6、第7実施形態は、前記センタピラー155の上端部と前記ルーフレール152の後部とにそれぞれ適用されており、まず、前記センタピラー155の上端部の第6実施形態について説明する。
【0098】
図28に示すように、センタピラー155は、車内側のセンタピラーインナ161と、車外側のサイドフレームアウタ162と、これらの間に配設されて断面形状が車外側に膨出するハット状とされたセンタピラーアウタレイン163とで構成され、これらの前縁部及び後縁部に設けられたフランジ同士がそれぞれ三重に接合されて、センタピラーアウタレイン163で仕切られた上下に延びる第1、第2閉断面部164、165が設けられている。
【0099】
そして、センタピラーインナ161とセンタピラーアウタレイン163とで形成される断面積が大きい方の第1閉断面部164内に、該閉断面部164を上下に仕切るようにバルクヘッド170が設けられている。
【0100】
このバルクヘッド170は、図29に示すように、前記第1閉断面部164を仕切る仕切面部171と、該仕切面部171の前後の辺部と車外側の辺部とにそれぞれ設けられた下方へ延びる第1、第2、第3フランジ部172、173、174と、仕切面部171の車内側の辺部に設けられた上方へ延びる第4フランジ部175とを有し、この第4フランジ部175には、粘弾性部材を配置するための一段後退した2箇所の座部175a、175aと、その間の溶接用の平面部175bとが設けられている。
【0101】
この第6実施形態では、まず、ハット状のセンタピラーアウタレイン163の内側に、バルクヘッド170が嵌め込まれて、第1、第2、第3フランジ部172、173、174が該センタピラーアウタレイン163の前面部163a、後面部163b、及び車外側の縦面部163cの内面にスポット溶接により接合されて、該バルクヘッド170とセンタピラーアウタレイン163とが一体化される。
【0102】
次いで、バルクヘッド170の第4フランジ部175における座部175a、175aに粘弾性部材176、176がそれぞれ配設されて一方の面が接着され、その状態で、これらの粘弾性部材176、176の他方の面が押し付けられて接着されるように、センタピラーインナ161がセンタピラーアウタレイン163に車内側から重ねられ、さらに、第4フランジ部175の平面部175bが車内側から片側溶接される。そして、車外側からサイドフレームアウタ162が重ねられて、これらの前後のフランジがそれぞれスポット溶接で三重接合される。
【0103】
これにより、前記センタピラーインナ161とセンタピラーアウタレイン163とで形成される第1閉断面部164内にバルクヘッド170が配設された状態でセンタピラー155が形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド170の第1、第2、第3フランジ部172、173、174とセンタピラーアウタレイン163とのスポット溶接部及び第4フランジ部175とセンタピラーインナ161との片側溶接部が剛結合部X…Xとなり、第4フランジ部175が粘弾性部材176、176を介してセンタピラーインナ161に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0104】
したがって、この第6実施形態によれば、センタピラー155の上部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、センタピラー155の上部で振動が減衰されることになる。
【0105】
次に、ルーフレール152の後部に適用された第7実施形態について説明すると、図30に示すように、ルーフレール152は、車内側のルーフレールインナ181と、車外側のルーフレールレイン182と、該ルーフレールレイン182の外側に配設された前記サイドフレームアウタ162とで構成され、ルーフレールレイン182で仕切られた前後に延びる第1、第2閉断面部183、184が設けられていると共に、該ルーフレールインナ181、ルーフレールレイン182及びサイドフレームアウタ162は、これらの下縁部に設けられたフランジ同士が三重に接合され、上縁部はルーフパネル185の側縁部を含めて四重に接合されている。
【0106】
そして、ルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とで形成される第1閉断面部183内にバルクヘッド190が配設され、該第1閉断面部183が前後に仕切られている。
【0107】
このバルクヘッド190は、図31に示すように、前記第1閉断面部183を仕切る仕切面部191と、該仕切面部191の車外側の辺部に設けられた前方へ延びる第1、第2フランジ部192、193と、仕切面部191の車内側の辺部に設けられた後方へ延びる第3フランジ部194とを有し、この第3フランジ部194には、粘弾性部材を配置するための2箇所の座部194a、194aと、その間に設けられて車内側へ突出する溶接用の平面部194bとが設けられている。
【0108】
この第7実施形態では、まず、ルーフレールレイン182の車内側の面にバルクヘッド190の第1、第2フランジ部192、193がスポット溶接により接合されて、該バルクヘッド190とルーフレールレイン182とが一体化される。
【0109】
次いで、バルクヘッド190の第3フランジ部194の座部194a、194aに粘弾性部材195、195がそれぞれ配設されて、一方の面が該座部194a、194aに接着された状態で、ルーフレールインナ181の内面にこれらの粘弾性部材195、195の他方の面が接着されるように、該ルーフレールインナ181がルーフレールレイン182に車内側から重ねられ、これにより、前記粘弾性部材195、195を介してルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とが接合され、さらに、前記第3フランジ部194の平面部194bとルーフレールインナ181の当接部が車内側からの片側溶接により接合される。
【0110】
そして、前記ルーフレールレイン182の車外側にサイドフレームアウタ162が重ねられると共に、これらとルーフパネル185とが接合される。
【0111】
これにより、前記ルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とで形成される第1閉断面部183内にバルクヘッド190が配設された状態でルーフレール152が形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド190の第1、第2フランジ部192、193とルーフレールレイン182とのスポット溶接部、及び、第3フランジ部194とルーフレールインナ181との片側溶接部が剛結合部X…Xとなり、第3フランジ部184が粘弾性部材195、195を介してルーフレールインナ181に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0112】
したがって、この第7実施形態によれば、ルーフレール152の後部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、該ルーフレール152の後部で振動が減衰されることになる。
【0113】
次に、車室のフロアに適用された第8実施形態について説明すると、図32に示すように、車室の前部はダッシュロアパネル201により、底部はフロアパネル202により形成されていると共に、車室の後部は、前記フロアパネル202に連続するセンタフロアパン203で底部が形成され、その後方には、一段高くされてトランクフロアパン204が設けられている。
【0114】
また、前記フロアパネル202の左右両側部には前後方向に延びるサイドシル205、205が設けれていると共に、該フロアパネル202の車幅方向の中央部には、ダッシュパネル201から前記センタフロアパン203の前端部まで延びるトンネルレイン206が配設されており、さらに、左右のサイドシル205、205とトンネルレイン206との間には、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ207、No.2.5クロスメンバ208がダッシュパネル201側から順に配設されており、さらにフロアパネル202とセンタフロアパネル203との境界部にはNo.3クロスメンバ209が配設されているいる。
【0115】
No.2クロスメンバ207は、図33、34に示すように、前面部210と後面部(図示せず)と上面部211とで断面が下開きの略ハット状とされ、前後のフランジが前記フロアパネル202の上面に接合されて、該フロアパネル202との間に車幅方向に延び、車外側及び車内側の端部がサイドシルインナ212と前記トンネルレイン206とで閉鎖された閉断面部213が形成されていると共に、上面部211のサイドシルインナ212側及びトンネルレイン206側の端部の上面にはシートレール取付用のボルト穴211a、211bが設けられており、このうち、サイドシル側のボルト穴211aの下方に、補強体としてのバルクヘッド220が前記閉断面部213を仕切るように配設されている。
【0116】
このバルクヘッド220は、図35に示すように、前記閉断面部213を仕切る傾斜した仕切面部221と、該仕切面部221の上端部から車外側へ延びる比較的面積の広い第1フランジ部222と、該仕切面部221の下端部から車内側へ延びる第2フランジ部223とを有し、第1フランジ部222には前記No.2クロスメンバ207の上面部211におけるボルト穴211aと重なるボルト穴222aが形成され、その下面にボルト締結用のナット224が溶接によって固着されている。なお、仕切面部221と第1フランジ部222の前後両縁部にはこれらの部位の剛性を高めるための折曲片部225、226が設けられている。
【0117】
このバルクヘッド220は、No.2クロスメンバ207の車外側の端部の内側に配設され、第1フランジ部222を該クロスメンバ207の上面部211の裏側に重ねられた状態で、ボルト穴211a、222aに相通されてナット224に螺合されるボルト227により、シートレール228と共に締結される。
【0118】
そして、第2フランジ部223の下面に粘弾性部材228を配置し、一方の面を該第2フランジ部223の下面に接着させた状態で、該粘弾性部材228がフロアパネル202上に押し付けられるように、No.2クロスメンバ207がフロアパネル202の上面に配置され、該クロスメンバ207の周囲のフランジがフロアパネル202、サイドシルインナ211及びトンネルレイン206に接合される。
【0119】
これにより、前記粘弾性部材228の他方の面がフロアパネル202に接着され、No.2クロスメンバ207とフロアパネル202とで形成される閉断面部213内にバルクヘッド220が配設されることになり、その場合に、前記バルクヘッド220の第1フランジ部222とNo.2クロスメンバ207の上面部211とのボルト227による締結部が剛結合部X…Xとなり、第2フランジ部223が粘弾性部材228を介してフロアパネル202に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0120】
したがって、この第8実施形態によれば、車室のフロアに配設されたNo.2クロスメンバ207の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、当該部位において振動が減衰されることになる。
【0121】
次に、車体の後部側面のリヤホイールハウス上部に適用された第9実施形態について説明する。
【0122】
図36は車体の後部側面を示すもので、リヤホイールハウス231の上方にリヤピラーインナ232が配設されていると共に、その上端部にはルーフレール233に沿って前方に延びるリヤピラーレイン234が配設されている。そして、前記リヤピラーインナ232の外面には、上下に延びて、下端部が前記リヤホイールハウス231に、上端部が前記リヤピラーレイン234にそれぞれ連結されたサスハウジングレイン240が配設されている。
【0123】
そして、図37、38に示すように、前記サスハウジングレイン240を覆うようにサイドフレームアウタ235が配設され、該サイドフレームアウタ235と前記リヤピラーインナ232とリヤホイールハウス231で形成される閉断面部236内に前記サスハウジングレイン240が補強体として配設された状態となる。
【0124】
このサスハウジングレイン240は、図39に示すように、前記リヤピラーインナ232の車外側の面に略沿って延びる基本面部241と、その上端部及び下端部に設けられて、前記リヤピラーレイン234及びリヤホイールハウス231にそれぞれ接合される第1、第2フランジ部242、243と、基本面部241の前後両側部に設けられて前記リヤピラーインナ232に接合される第3、第4フランジ部244、245とを有する。そして、前記基本面部241の上部には車外側へ盛り上がった第1座部246が設けられていると共に、該基本面部241の下部には車外側へ切り起こされてなる第2、第3座部247、248が設けられており、これらの座部246、247、248にそれぞれ粘弾性部材249…249が配置されるようになっている。
【0125】
そして、サスハウジングレイン240の前記各フランジ部242,243、244、245が、リヤピラーレイン234、リヤホイールハウス231及びリヤピラーインナ232の外面にそれぞれスポット溶接によって接合されると共に、該サスハウジングレイン240の前記第1〜第3座部246、247、248に粘弾性部材249…249がそれぞれ配置されて一方の面が接着された状態で、これらの粘弾性部材249…249を押し付けてその他方の面が接着されるように、サイドフレームアウタ235が車外側から重ねられ、前記リヤピラーレイン234及びリヤホイールハウス231に接合される。
【0126】
これにより、前記サイドフレームアウタ235と前記リヤピラーインナ232と前記リヤホイールハウス231とで形成される閉断面部236内にサスハウジングレイン240が配設されて、リヤホイールハウス231の上部が構成されることになる。その場合に、前記サスハウジングレイン240の第1〜第4フランジ部242〜245と、リヤピラーレイン234、リヤホイールハウス231及びリヤピラーインナ232とのスポット溶接部が剛結合部X…Xとなり、基本面部241とサイドフレームアウタ235とが粘弾性部材249…249を介して接合される部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0127】
したがって、この第9実施形態によれば、リヤホイールハウス231の上部における剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、該リヤホイールハウス上部で振動が減衰されることになる。
【0128】
なお以上の実施形態においては、比較的厚手の粘弾性部材を用いたが、シート状の薄い粘弾性部材を用い、或いは、補強体のフランジ部等に塗布するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明によれば、各種の車体構成部材によって形成される閉断面部の剛性が向上すると共に該閉断面部位で振動が減衰されることになって、この種の閉断面部位を有する車体の製造分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0130】
31、32、18、23、65、74,66,75,136,137、161,163,181,182,202、207、232,235…車体構成部材
40、50、80,110、140,170、190、220、240…補強体
48、56、90、120、144、176、195、228、249…粘弾性部材
X…剛結合部
Y…柔結合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造、特に車体における閉断面部における構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、乗り心地や安全性を向上させるために車体の剛性を高めることが必要で、剛性を高める技術として、例えば特許文献1、2には、車体構成部材で形成された閉断面部内に補強体を配設したものが開示されている。
【0003】
このうち、特許文献1には、サイドシルアウタとサイドシルインナとで形成されるサイドシルの閉断面部内にバルクヘッドを節状に配設し、その周囲に設けたフランジを前記サイドシルアウタ及びサイドシルインナの内面にスポット溶接と接着剤とを併用して接合した構造が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、アッパメンバとロアメンバとで形成されるフロントサスペンションメンバの閉断面部内に同じくバルクヘッドを節状に配設し、その周囲に設けたフランジを前記アッパメンバの内面に構造用接着剤を用いて接合した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59−182472号公報
【特許文献2】実開昭60−097673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記公報に開示された構造では、剛性の向上は実現されるものの、その配設部位や形状等によっては、車両各部で発生する振動の車室内への伝達を効果的に抑制できない場合があり、乗員に伝達される振動を抑制して乗り心地を向上させ、また騒音を低減させるためには、車体構造のさらなる改善が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造であって、前記車体構成部材と補強体との接合部は、互に当接した状態で結合された剛結合部と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の車体構造であって、前記減衰部材は粘弾性部材であり、その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造であって、前記補強体は、周囲に1又は2以上のフランジ部を有するバルクヘッドであり、前記接合部は、前記フランジ部に設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両の車体構造であって、前記バルクヘッドは、前記閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項3または請求項4に記載の車両の車体構造であって、前記フランジの1つに前記剛結部と前記柔結合部とが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の車体構造であって、前記閉断面部は、2つの車体構成部材で構成されていることを特徴とする。
【0014】
一方、請求項7に記載の発明は、閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造を製造する方法であって、前記車体構成部材と補強体とを接合する工程として、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、例えば中空管状の単一の車体構成部材により、或いは2以上の車体構成部材を接合することにより形成される閉断面部内に補強体が配設されることにより、前記車体構成部材ないし該車体構成部材で構成される車体の当該部位の剛性が向上され、該部位の変形や前記閉断面部の型崩れ等が抑制されることになる。
【0017】
その場合に、前記車体構成部材と補強体との接合部は、溶接やボルト締め等による剛結合部と、減衰部材を介設した柔結合部とを有し、剛結合部により車体構成部材と補強体とが強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部の減衰部材によって車体構成部材の振動が減衰されることになる。
【0018】
これにより、車体構造として所要の剛性を確保しつつ振動の伝達を抑制して、当該車両の乗り心地を向上させ、また騒音を低減させることが可能となり、その場合に、この発明によれば、振動伝達の抑制のために新たな部材を設ける必要がなく、車体の重量増等を回避しながら前記効果が達成される利点がある。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記減衰部材として粘弾性部材が用いられ、その物性としての貯蔵弾性率と損失係数とが、振動減衰効果が確認された所定の範囲内の値に特定されるから、車体構成部材の振動を減衰する請求項1の発明の効果が確実に達成されることになる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、補強体が周囲にフランジを有するバルクヘッドとされ、そのフランジに前記車体構成部材との接合部が設けられるので、該接合部による前記剛性向上効果及び振動減衰効果が、具体的構造として確実に達成されることになる。
【0021】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記バルクヘッドが、閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有する構成とされるので、バルクヘッドによる剛性向上効果が閉断面部を形成する車体構成部材の広範囲に及ぶと共に、閉断面部内の近接する2箇所に個々にバルクヘッドを配設する場合に比べて、部品点数が半減して部品管理や組付作業の能率が向上することになる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、車体構成部材とバルクヘッドとの接合部を構成する前記剛結合部と前記柔結合部とが一つのフランジに設けられるので、このフランジによる接合部でバルクヘッドと車体構成部材との接合強度が確保されると共に、振動減衰効果も実現されることになる。
【0023】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、前記請求項1〜5の発明による効果が、2つの車体構成部材で閉断面部が形成される部位、例えば、サイドシル、ピラー、ルーフレール等で達成されることになる。
【0024】
そして、請求項7に記載の発明によれば、車体構成部材で形成される閉断面部内に補強体を配設して所定の車体構造を製造するときに、前記車体構成部材と補強体とを、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とで接合するので、この方法で製造された車体構造について前記請求項1の発明の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態についてのシミュレーションモデルを示す図である。
【図2】同シミュレーションの結果を示すイナータンスの周波数特性図である。
【図3】同じく貯蔵弾性率及び損失係数に対するモード減衰比増減特性図である。
【図4】図3の結果に基づいて作成した有効範囲を示す図である。
【図5】本発明の第1、第2実施形態が適用される車体前部の斜視図である。
【図6】図5のa−a断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図7】図6のc−c断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図8】図6のd−d断面で切断した第1実施形態の断面図である。
【図9】第1実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図10】第1実施系他の製造過程の説明図である。
【図11】図5のb−b断面で切断した第2実施形態の断面図である。
【図12】図11のe−e断面で切断した第2実施形態の断面図である。
【図13】第2実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図14】第3、第4実施形態が適用される車室前部の斜視図である。
【図15】図14に示す車室前部の要部拡大斜視図である。
【図16】図15のf−f断面で切断した第3実施形態の断面図である。
【図17】図16のh−h断面で切断した第3実施形態の断面図である。
【図18】第3実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図19】図15のg−g断面で切断した第4実施形態の断面図である。
【図20】図19のi−i断面で切断した第4実施形態の断面図である。
【図21】第4実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図22】第5実施形態が適用される車体前部の下方からの斜視図である。
【図23】図22に示す部位の車内側からの要部拡大斜視図である。
【図24】図23のj−j断面で切断した第5実施形態の断面図である。
【図25】図24のk−k断面で切断した第5実施形態の断面図である。
【図26】第5実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図27】第6、第7実施形態が適用される車体の側面図である。
【図28】図27のl−l断面で切断した第6実施形態の断面図である。
【図29】第6実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図30】図27のm−m断面で切断した第7実施形態の断面図である。
【図31】第7実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図32】第8実施形態が適用される車室底部の斜視図である。
【図33】図32に示す車室底部の要部拡大斜視図である。
【図34】図33のn−n断面で切断した第8実施形態の断面図である。
【図35】第8実施形態に係る補強体の斜視図である。
【図36】第9実施形態が適用される車体後部の斜視図である。
【図37】図36のo−o断面で切断した第9実施形態の断面図である。
【図38】図37のp−p断面で切断した第9実施形態の断面図である。
【図39】第9実施形態に係る補強体の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
まず、具体的な車体への適用構造についての説明に先立ち、本発明の請求項に記載の構造について行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0027】
図1(a)、(b)は、このシミュレーションに用いた剛結合モデルAと、剛結合・柔結合併用モデルBとを示すもので、いずれも、車体構成部材として断面ハット状の第1部材
1と平板状の第2部材2とを用い、第1部材1の両側のフランジに第2部材2の両側端部を接合することにより、断面ほぼ長方形状の閉断面部3を有する中空フレーム4とされている。
【0028】
そして、このフレーム4の閉断面部3内に補強体としてのバルクヘッド5が配設され、該バルクヘッド5は周囲4辺に設けられたフランジ5a…5aが前記第1、第2部材1、2の内面にそれぞれ接合されることにより、該バルクヘッド5がフレーム4内に固定されておいる。
【0029】
その場合に、同図(a)に示す剛結合モデルAにおいては、バルクヘッド5の各フランジ5a…5aが中央部でスポット溶接されることにより前記第1、第2部材1、2に接合されており、同図(b)に示す剛結合・柔結合併用モデルBにおいては、各フランジ5a…5aが、中央部でスポット溶接される共に、その両側で減衰部材6を介して第1、第2部材1、2の内面に接合されており、これらのスポット溶接部が剛結合部X、減衰部材6を介して接合された部位が柔結合部Yとなる。
【0030】
ここで、モデルBは、柔結合部Yを有する分だけ剛結部XのみのモデルAより剛性が高くなり、両モデルA、Bで共振周波数が異なることになるが、このシミュレーションにおいては、共振周波数をそろえて比較するために、剛結部Xの面積をモデルAの方をモデルBより多少大きく設定している。また、柔結合部Yにおける減衰部材6は、損失係数が0.4、貯蔵弾性率が200MPa(20℃、30Hz)の粘弾性部材とした。
【0031】
図2はシミュレーション結果を示すもので、前記モデルA、Bについて、フレーム4の一端における閉断面部の所定の角部を加振点x、他端の閉断面部の前記角部と対角上に位置する角部を応答点yとしたときの、この応答点yにおけるイナータンス(単位加振力当りの加速度振幅の大きさ:m/s2/N)を比較して示している。
【0032】
この図から明らかなように、剛結合モデルAに比べて、剛結合・柔結合併用モデルBの方がイナータンスのピーク値が低くなっており、柔結合部Yを設けることにより、加振点xから応答点yまで振動が伝達される過程での減衰量が多くなることが示されている。
【0033】
図3は、前記剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、減衰部材6として損失係数の異なる複数の粘弾性部材を用い、その損失係数と貯蔵弾性率とに対するモード減衰比増減の特性をシミュレーションした結果を示すものである。なお、損失係数が0.05の減衰部材は比較例として示すもので、一般的に車体で使用される構造用接着剤である。
【0034】
この図から明らかなように、粘弾性部材を用いることにより、一般的に車体で使用される構造用接着剤(損失係数0.05)を用いた場合よりも、全貯蔵弾性率の領域でモード減衰比増減が大きくなり、振動が減衰し易くなることが示されている。特に損失係数が大きいほどモード減衰比増減が大きくなると共に、いずれの損失係数においても、貯蔵弾性率が100MPaでモード減衰比増減が最大となることが示されている。
【0035】
図4は、図3のシミュレーション結果から、減衰部材6として粘弾性部材を用いた場合の実質的に減衰効果が得られるときの損失係数と貯蔵弾性率の関係を示すもので、モード減衰比増減が図3に示す閾値m以上で効果あり、閾値m未満で効果なしと判定したものである。
【0036】
この結果、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内と、損失係数0.4を超える範囲とで、実質的に減衰効果が得られることが判明する。
【0037】
次に、本発明の構造を車体へ適用した実施形態について説明する。
【0038】
図5は、第1、2実施形態が適用される車体の前部の構造を示すもので、該車体前部のエンジンルーム周辺の骨格を構成する部材として、前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム11、11(一方のみ図示、以下同様)と、該フロントサイドフレーム11、11の前端部から前方へ延びるバンパステー12、12と、これらのバンパステー12、12の前端部に左右両端部が連結された車幅方向に延びるバンパレイン13と、該バンパレイン13の後方で車幅方向に配設されたサスクロス14と、該サスクロス14の左右両端部と前記フロントサイドフレーム11、11とをそれぞれ連結する左右のメンバーブラケット15と、左右のフロントサイドフレーム11、11の上方で前後方向に延びるエプロンレイン16、16とが備えられている。
【0039】
また、エンジンルームの後方に、該エンジンルームと車室とを仕切るダッシュアッパパネル17とダッシュロアパネル18とが配設されていると共に、ダッシュアッパパネル17の上方には車幅方向に延びるカウルパネル19が配設され、さらに、ダッシュロアパネル18の左右両端部と前記エプロンレイン16、16の後端部とが交わるエンジンルームの後部の左右両側の角部には、サスハウジングアッパ20とサスハウジングロア21とでサスタワーが形成されている。
【0040】
そして、前記ダッシュロアパネル18の下辺の車幅方向中央部は上方に切り開かれ、トンネル22の入口部とされていると共に、この入口部に沿って正面視が略山形で、断面ハット状のダッシュロアレイン23が配設されている。
【0041】
以上のような構成の車体の前部において、第1実施形態は前記フロントサイドフレーム11に適用されており、次に、この第1実施形態について説明する。
【0042】
図6〜8に示すように、フロントサイドフレーム11は、略平板状のフロントサイドフレームアウタパネル(以下、「アウタパネル」という)31と、断面略ハット状のフロントサイドフレームインナパネル(以下、「インナパネル」という)32とで構成され、上方のフランジ同士、下方のフランジ同士をそれぞれ接合することにより、前後方向に延びる閉断面部33を有する中空構造とされている。
【0043】
そして、前記閉断面部33内において、インナパネル32の下方の水平面部32a上にナット34が溶接によって固着されており、前記メンバブラケット15の先端に取り付けられたスリーブ15aに挿通されるボルト35が、インナパネル32の前記水平面部32aに設けられた孔(図示せず)を通って該ナット34に螺合されることにより、メンバブラケット15がフロントサイドフレーム11に連結されるようになっている。
【0044】
また、このフロントサイドフレーム11の閉断面部33内における前記ナット34の溶接部の前方側近傍に、該閉断面部33を前後に仕切る補強体としてのバルクヘッド40が配設されている。
【0045】
このバルクヘッド40は、図9に示すように、前記閉断面部33を仕切る仕切面部41と、その上辺部と車外側の側辺部とにそれぞれ設けられた後方へ延びる第1、第2フランジ部42、43と、仕切面部41の車内側の側辺部と下辺部に設けられた前方へ延びる第3、第4フランジ部44、45とを有し、第2フランジ部43には、後述する粘弾性部材48、48を配置するための一段低くされた座部43a、43aが設けられている。
【0046】
また、前記仕切面部41の下部と第4フランジ45とが交わる角部には、前記ナット34の下端部の大径部34aとの干渉を避けるために、前方へ膨出する平面視で略半円状の膨出部46が設けられていると共に、この膨出部46の上方には、前記ナット34の上部34bを溶接するための上下に延びる後方への膨出部47が設けられている。
【0047】
そして、このバルクヘッド40は、前記第1、第3フランジ部42、44が、インナパネル32の上方の水平面部32b及び縦面部32cの内面にそれぞれスポット溶接により接合されていると共に、第2フランジ部43が、アウタパネル31の内面に対向し、該第2フランジ部43の座部43a、43aに配置されて該座部43a、43aに一方の面が接着された振動減衰部材としての粘弾性部材48、48の他方の面がアウタパネル31の内面に接着され、該粘弾性部材48、48を介してバルクヘッド40の第2フランジ部43とアウタパネル31とが接合されており、また、該第2フランジ部43は、アウタパネル31の内面にスポット溶接により接合されている。
【0048】
また、前記後方への膨出部47と前記ナット34の上部34bとが溶接によって結合され、該ナット上部34bへの溶接部位と前記スポット溶接部位とが剛結合部X…Xとされ、前記粘弾性部材48、48を介して接合された部位が柔結合部Y、Yとされている。
【0049】
このように、この第1実施形態に係るフロントサイドフレーム11の構造によれば、閉断面部33内に配設されたバルクヘッド40により該フレーム11の剛性が向上し、該フレーム11の変形や前記閉断面部33の型崩れ等が抑制されることになる。
【0050】
その場合に、前記バルクヘッド40は、第1、第3フランジ部42、44がインナパネル32の上面部32b及び縦面部32cに、仕切面部41がナット34を介して該インナパネル32の下方の水平面部32aにそれぞれスポット溶接により剛結合され、第2フランジ部43が粘弾性部材48、48を介してアウタパネル31に柔結合されていることにより、剛結合部によって前記インナパネル32に強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部によってフロントサイドフレーム11の振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0051】
なお、この第1実施形態に係るフロントサイドフレーム11は、図10に示す工程により製造される。
【0052】
即ち、まず、同図(a)に示すように、インナパネル32の下方の水平面部32a上にナット34を載置して下端部を溶接し、これらを結合する一体化し、次に、同図(b)に示すように、バルクヘッド40をインナパネル32内に配置して、第1、第3フランジ部42、44をインナパネル32の上方の水平面部32b及び縦面部32cにそれぞれスポット溶接すると共に、仕切面部41の後方への膨出部47を前記ナット34の上部34bに溶接する。
【0053】
その後、同図(c)に示すように、バルクヘッド40の第2フランジ部43の座部43a、43aに比較的厚手のシート状の粘弾性部材48、48を配置して、その一方の面を自らの粘着力によって接着すると共に、同図(d)に示すように、該粘弾性部材48、48が接着されたバルクヘッド40の第2フランジ部43に重ねるようにアウタパネル31を配置し、該アウタパネル31の上下のフランジとインナパネル32の上下のフランジとをそれぞれ溶接して接合する。また、アウタパネル31とバルクヘッド40の第2フランジ部43とをスポット溶接で接合する。このとき、前記粘弾性部材48、48の他方の面がアウタパネル31に押し付けられてその内面に接合し、フロントサイドフレーム11が完成する。
【0054】
次に、前記第1実施形態と同様、車体の前部に適用された第2実施形態について説明する。
【0055】
この第2実施形態は、図5に示すダッシュロアパネル18の下辺の車幅方向中央部に設けられたトンネル22の入口部を補強する正面視が該入口部に沿って略山形とされたダッシュロアレイン23に適用されたもので、該ダッシュロアレイン23は、図11に示すように、断面形状が略ハット状とされ、その周縁部がダッシュロアパネル18の前面に接合されることにより、該ダッシュロアパネル18との間に、車幅方向に延びる正面視略山形の閉断面部24が形成されている。
【0056】
そして、図11、12に示すように、この閉断面部24内に補強体としてのバルクヘッド50が配設され、該バルクヘッド50により、閉断面部が左右に仕切られている。
【0057】
このバルクヘッド50は、図13に示すように、前記閉断面部24を仕切る仕切面部51と、該仕切面部51の上辺部、前辺部及び下辺部にそれぞれ設けられて車体中央側へ延びる第1、第2、第3フランジ部52、53、54と、仕切面部51の後辺部に設けられ車外側へ延びる第4フランジ部55とを有し、第4フランジ部55には、粘弾性部材56、56を配置するための一段後退した座部55a、55aが設けられている。
【0058】
そして、このバルクヘッド50は、まず、第1、第2、第3フランジ部52、53、54が、ダッシュロアレイン23の上面部23a、前面部23b及び下面部23cの内面にそれぞれスポット溶接により接合されると共に、第4フランジ部55の座部55a、55aに粘弾性部材56、56が配置されてその一方の面が接着され、この状態で、該粘弾性部材56、56の他方の面をダッシュロアパネル18の前面に押し付けて該パネル18に接着しながら、ダッシュロアレイン23がダッシュパネル18の前面に配設され、その周縁部がダッシュロアパネル18に接合される。また、該第4フランジ部55における前記座部55a、55aの間の部位がダッシュロアパネル18にスポット溶接により接合される。
【0059】
これにより、ダッシュロアパネル18とダッシュロアレイン23との間に、バルクヘッド50によって仕切られた閉断面部24を有する構造が形成されることになり、その場合に、前記バルクヘッド50とダッシュロアパネル18及びダッシュロアレイン23との前記スポット溶接部位が剛結合部X…Xとされ、ダッシュロアパネル18に粘弾性部材56を介して接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0060】
したがって、この第2実施形態に係るダッシュロアパネル18の下部のトンネル入口部においても剛性が向上すると共に、該バルクヘッド50とダッシュロアパネル18との間の柔結合部Y、Yの存在により、該ダッシュロアパネル18の下部で振動が減衰されることになる。
【0061】
次に、車室の前部に適用された第3、第4実施形態について説明する。
【0062】
図14、15に示すように、車室の前部は、該車室の前面を形成するダッシュロアパネル61と、底面を形成するフロントフロアパネル62と、これらのパネル61、62の間の前席の足元部に配設されたフロントフレームレイン63等で構成されており、該車室の底部の中央には、前後方向に延びるトンネルレイン64が配設されている。
【0063】
また、車室側部における前記ダッシロアパネル61の側部の下方には、フロントドアを支持するヒンジピラーの下端部と車体の側面下部に配設されるサイドシルとが交わる角部に、サイドシルインナフロント65と、その後端に連続するサイドシルインナ66とが配設されており、さらに、前記フロントフロアパネル62の上面には、車幅方向に延びてトンネルレイン64とサイドシルインナ66とを連結するNo.2クロスメンバ67、No.2.5クロスメンバ68が配設されている。
【0064】
そして、第3、第4実施形態は、前記サイドシルインナフロント65が配設されたヒンジピラーの下端部と、その後方のサイドシルインナ66が配設されたサイドシルの前部における前記No.2クロスメンバ67の接合部前方の部位にそれぞれ適用されており、まず、前記ヒンジピラー下端部の第3実施形態について説明する。
【0065】
図16、17に示すように、ヒンジピラーの下端部におけるサイドシルの前端部が交わる角部は、車外側がサイドフレームアウタ71により、車内側がサイドシルインナフロント65によりそれぞれ形成され、これらの前縁部、下縁部、後縁部にかけて設けられたフランジが接合されることにより、該サイドフレームアウタ71とサイドシルインナフロント65との間に閉断面部73が形成されている。ここで、前記サイドフレームアウタ71は、サイドシルアウタ101、ルーフレールアウタ、ヒンジピラーアウタ、センタピラーアウタ、リヤピラーアウタ、フロントピラーアウタ、リヤフェンダを一体にしたものである。
【0066】
また、この閉断面部73内には、前記サイドフレームアウタ71の内面に沿って配設されたヒンジピラーレイン74と、その下部に接合されたサイドシルアウタレイン75と、前記サイドシルインナフロント65の下部の内面に沿って配設されたサイドシルインナ76とが設けられており、さらに、サイドシルインナフロント65の下端部の車内側の面には、前記ダッシュロアパネル61と、その下方に配設されたトルクボックス77の車外側の端部が接合されている。
【0067】
そして、前記閉断面部73内において、車外側のヒンジピラーレイン74と車内側のサイドシルインナフロント65との間に補強体としてのバルクヘッド80が配設されている。
【0068】
このバルクヘッド80は、図18に示すように、上部と下部にほぼ水平方向に延びる第1、第2仕切面部81、82を有し、これらの仕切面部81、82の車外側の端部が連結部としての縦面部83によって連結され、図16に示すように断面形状が略コ字状とされている。
【0069】
また、前記縦面部83の前後の縁部から車内側に折曲された第1、第2折曲面部84,85が設けられており、前方の第1折曲面部84の上下両端部が、前記第1、第2仕切面部81,82の前辺部に接合され、後方の第2折曲面部85の上下両端部が、前記第1、第2仕切面部81、82の後辺部に接合され、これにより、バルクヘッド80の全体が、車内側の面が開口した略箱状とされている。
【0070】
さらに、第1、第2仕切面部81、82の車内側の辺部には、上方および下方にそれぞれ延びる第1、第2フランジ部86、87が設けられており、これらのフランジ部86、87に、車内側へ突出する3箇所の溶接用の平面部86a…86a、87a…87aと、該平面部より車外側へ後退した2箇所の粘弾性部材配置用の座部86b、86b、87b、87bとが交互に設けられており、また、前記縦面部83の内面には、ボルト挿通孔(図示せず)に位置を合わせて、ナット88が溶接によって固着されている。
【0071】
そして、このバルクヘッド80は、まず、前記縦面部83がサイドフレームアウタ71の内側に配設されたヒンジピラーレイン74の内面に重ねられた状態で、該サイドフレームアウタ71、ヒンジピラーレイン74及び該バルクヘッド80の縦面部83のボルト挿通孔を通してボルト89が挿通されて、該縦面部83の内面に固着されたナット88に螺合されることにより、前記ヒンジピラーレイン74を介してサイドフレームアウタ71に締結される。
【0072】
次いで、バルクヘッド80の第1、第2フランジ部86、87に設けられた座部86b、87bに粘弾性部材90…90がそれぞれ配置され、その一方の面が座部86b、87bに接着された状態で、これらの粘弾性部材90…90を押し付けながら、サイドシルインナフロント65がサイドフレームアウタ71に重ね合わせられ、両者のフランジが接合される。
【0073】
このとき、粘弾性部材90…90の他方の面がサイドシルインナフロント65の内面に接着されると共に、この状態で、第1、第2フランジ部86、87に設けられた平面部86a…86a、87a…87aがサイドシルインナフロント65の内面に対接され、これらの対接部が、サイドシルインナフロント65の外側(車内側)から片側溶接によって接合される。
【0074】
これにより、前記サイドフレームアウタ71とサイドシルインナフロント65とで、バルクヘッド80が内部に配設された状態で閉断面部73が形成されることになり、該バルクヘッド80の第1、第2フランジ部86、87における片側溶接部位、及び縦面部83におけるボルト89とナット88とによる締結部位が剛結合部X…Xとされ、前記第1、第2フランジ部86、87とサイドシルインナフロント65とが粘弾性部材90…90を介して接合された部位が柔結合部Y…Yとされる。
【0075】
したがって、この第3実施形態によれば、サイドシルの前端部が交わるヒンジピラーの下端部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y…Yの存在によって当該部位の振動が減衰されることになる。なお、この実施形態においては、バルクヘッド80が、剛結合部X及び柔結合部Yが形成される2つの仕切面部81、82を有するので、ヒンジピラーの下端部の広い範囲に剛性向上効果と振動減衰効果が得られることになる。
【0076】
次に、第4実施形態について説明すると、図14、15に示すサイドシルの前端部は、図19、20に示すように、該サイドシルの車外側を形成するサイドシルアウタ101と、車内側を形成する前記サイドシルインナ66と、これらの間に配設されて断面形状が車外側に膨出するハット状とされた前記サイドシルアウタレイン75とで構成され、これらの上縁部及び下縁部に設けられたフランジ同士がそれぞれ三重に接合されて、サイドシル内にサイドシルアウタレイン75で仕切られた前後に延びる第1、第2閉断面部102、103が形成されている。
【0077】
そして、サイドシルアウタレイン75とサイドシルインナ76とで形成される断面積が大きい方の第1閉断面部102内にバルクヘッド110が該閉断面部102を前後に仕切るように配設されている。
【0078】
このバルクヘッド110は、図21に示すように、第1、第2部材110A、110Bで形成され、第1部材111は、前記閉断面部102を仕切る仕切面部111と、該仕切面部111の上下の辺部と車外側の辺部とにそれぞれ設けられた後方へ延びる第1、第2、第3フランジ部112、113、114と、仕切面部111の車内側の辺部に設けられた前方へ延びる第4フランジ部115とを有する。
【0079】
また、第2部材110Bは、前記第1部材110Aの仕切面部111の前方に略平行に位置する第1面部116と、該第1面部116の車外側の辺部から後方に折曲された第2面部117とを有し、該第2面部117の後端部に設けられて車外側に延びる第5フランジ部118が、前記第1部材110Aの仕切面部111の前面の車幅方向のほぼ中央部に溶接されている。これにより、第1、第2部材110A、110Bが一体化され、バルクヘッド110は、図20に示すように、平面形状が略h状とされている。
【0080】
そして、該バルクヘッド110の第2部材110Bには、前記第1面部116の車内側の辺部に設けられた前方へ延びる第6フランジ部119が設けられ、この第6フランジ部と119前記第1部材110Aの第4フランジ部115とが略同一面上に配置されている。
【0081】
この第4実施形態では、まず、ハット状のサイドシルアウタレイン75の内側に、バルクヘッド110における第1部材110Aの車外側の半部が嵌め込まれて、該第1部材110Aの第1、第2、第3フランジ部112、113、114が前記サイドシルアウタレイン75の上面部75a、下面部75b、及び車外側の縦面部75cの内面にスポット溶接によりぞれぞれ接合され、該バルクヘッド110とサイドシルアウタレイン75とが一体化される。
【0082】
次いで、バルクヘッド110の第1部材110Aにおける第4フランジ部115及び第2部材110Bの第6フランジ部119の車内側の面に、粘弾性部材120、120の一方の面がそれぞれ接着された状態で、これらの粘弾性部材120、120を押し付けるようにサイドシルインナ66がサイドシルアウタレイン75に車内側から重ねられ、さらに、車外側からサイドシルアウタ101が重ねられて、これらの上下のフランジがそれぞれ三重接合される。このとき、前記粘弾性部材120、120の他方の面がサイドシルインナ66の内面に接着される。
【0083】
これにより、前記サイドシルインナ66とサイドシルアウタレイン75とで形成される第1閉断面部102内にバルクヘッド110が配設された状態でサイドシルが形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド110の第1部材110Aにおける第1、第2、第3フランジ部112,113、114と、サイドシルアウタレイン75とのスポット溶接部が剛結合部X…Xとなり、前記第1部材110Aの第4フランジ部115と第2部材110Bの第6フランジ部119とが粘弾性部材120、120を介してサイドシルインナ66に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0084】
したがって、この第4実施形態によれば、サイドシル前部の剛性が向上すると共に、柔結合部Y、Yの存在により、当該部位の振動が減衰されることになる。
【0085】
次に、車室の前端部の下方に適用された第5実施形態について説明する。
【0086】
図22に示すように、車室前部の下面は、ダッシュロアパネル131とフロアパネル132とで形成されていると共に、エンジンルーム側から後方へ延びるフロントフロアフレーム133が前記フロアパネル132の下面に接合され、サイドシルインナ134とトンネルレイン135との間を通って後方に延びている。
【0087】
このフロントフロアフレーム133は、前記ダッシュロアパネル131とフロアパネル132との接合部で後方側が低くなるように屈曲されており、この屈曲部の剛性を確保するために、前記ダッシュロアパネル131とフロアパネル132との接合部に、該フロントフロアフレーム133と前記サイドシルインナ134とを連結するようにトルクボックス136が配設されている。
【0088】
このトルクボックス136の車内側には、図23に示すように、フロントフレームレイン137が配設されており、図24、25に示すように、この上下に略平行に配置されたフロントフレームレイン137とトルクボックス136、及び、その車内側、車外側にそれぞれ位置するフロントフロアフレーム133とサイドシルインナ134とにより閉断面部138が形成され、この閉断面部138内を左右に仕切るように、該閉断面部138内にバルクヘッド140が配設されている。
【0089】
このバルクヘッド140は、図26に示すように、仕切面部141と、その上辺部から車内側に延びる第1フランジ部142と、仕切面部141の下辺部から車外側へ延びる第2フランジ部143とを有する。第1フランジ部142は、後側より前側が高くなるように全体的にやや湾曲され、その前端部、中間部、及び後端部の3箇所に溶接用の平面部142a…142aが、これらの平面部142a…142aの間に2箇所の粘弾性部材の座部142b、142bが設けれている。また、前記仕切面部141と第2フランジ部143の後端部には、溶接用の折曲片部141a、143aが同一面上に位置するように設けられている。
【0090】
そして、この第5実施形態では、まず、前記バルクヘッド140をトルクボックス136内に配設して、第2フランジ部143と、該第2フランジ部143及び仕切面部141の後端部に設けられた折曲片部143a、141aを該トルクボックス136の内面にスポット溶接により接合しし、該トルクボックス136とバルクヘッド140とを一体化する。
【0091】
次に、バルクヘッド140の第1フランジ部142おける座部142b、142bに粘弾性部材144、144をそれぞれ配置し、その一方の面を該座部142b、142bに接着させると共に、その状態で、該粘弾性部材144、144をフロントフレームレイン137の下面に押し付けて他方の面を接着させるように、トルクボックス136をフロントフレームレイン137の下面に配設する。そして、トルクボックス136の周囲のフランジをフロントフレームレイン137に溶接し、かつ、該フロントフレームレイン137と前記バルクヘッド140の第1フランジ部142における平面部142a…142aとを片側溶接する。
【0092】
これにより、前記トルクボックス136、フロントフレームレイン137、フロントフロアフレーム133及びサイドシルインナ134により形成される閉断面部138がバルクヘッド140により左右に仕切られた状態で、車室前端の下面部が構成されることになる。
【0093】
その場合に、前記バルクヘッド140の仕切面部141及び第2面部143とトルクボックス136とのスポット溶接部、並びにバルクヘッド140の第1面部142とフロントフレームレイン137との片側溶接部とが剛結合部X…Xとなり、バルクヘッド140の第1フランジ部142が粘弾性部材144を介してフロントフレームレイン137に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0094】
したがって、この第5実施形態によれば、車室の前端部下方の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、当該部位において振動が減衰されることになる。
【0095】
次に、車体の側面上部におけるセンタピラー及びルーフレールにそれぞれ適用された第6、第7実施形態について説明する。
【0096】
図27は、車体の右側面を車内側から見た図で、車体側面は、下部に前後方向に延びるサイドシル151が、上部に同じく前後方向に延びるルーフレール152が配設されていると共に、これらの間の前部には、上下に連結されたフロントピラー153とヒンジピラー154とが、中間部には、前記サイドシル151とルーフレール152とを連結するセンタピラー155が、後部には、リヤホイールハウス156と該リヤホイールハウス156から上方に延びて前記ルーフレール152につながるリヤピラー157とが設けられる。
【0097】
そして、第6、第7実施形態は、前記センタピラー155の上端部と前記ルーフレール152の後部とにそれぞれ適用されており、まず、前記センタピラー155の上端部の第6実施形態について説明する。
【0098】
図28に示すように、センタピラー155は、車内側のセンタピラーインナ161と、車外側のサイドフレームアウタ162と、これらの間に配設されて断面形状が車外側に膨出するハット状とされたセンタピラーアウタレイン163とで構成され、これらの前縁部及び後縁部に設けられたフランジ同士がそれぞれ三重に接合されて、センタピラーアウタレイン163で仕切られた上下に延びる第1、第2閉断面部164、165が設けられている。
【0099】
そして、センタピラーインナ161とセンタピラーアウタレイン163とで形成される断面積が大きい方の第1閉断面部164内に、該閉断面部164を上下に仕切るようにバルクヘッド170が設けられている。
【0100】
このバルクヘッド170は、図29に示すように、前記第1閉断面部164を仕切る仕切面部171と、該仕切面部171の前後の辺部と車外側の辺部とにそれぞれ設けられた下方へ延びる第1、第2、第3フランジ部172、173、174と、仕切面部171の車内側の辺部に設けられた上方へ延びる第4フランジ部175とを有し、この第4フランジ部175には、粘弾性部材を配置するための一段後退した2箇所の座部175a、175aと、その間の溶接用の平面部175bとが設けられている。
【0101】
この第6実施形態では、まず、ハット状のセンタピラーアウタレイン163の内側に、バルクヘッド170が嵌め込まれて、第1、第2、第3フランジ部172、173、174が該センタピラーアウタレイン163の前面部163a、後面部163b、及び車外側の縦面部163cの内面にスポット溶接により接合されて、該バルクヘッド170とセンタピラーアウタレイン163とが一体化される。
【0102】
次いで、バルクヘッド170の第4フランジ部175における座部175a、175aに粘弾性部材176、176がそれぞれ配設されて一方の面が接着され、その状態で、これらの粘弾性部材176、176の他方の面が押し付けられて接着されるように、センタピラーインナ161がセンタピラーアウタレイン163に車内側から重ねられ、さらに、第4フランジ部175の平面部175bが車内側から片側溶接される。そして、車外側からサイドフレームアウタ162が重ねられて、これらの前後のフランジがそれぞれスポット溶接で三重接合される。
【0103】
これにより、前記センタピラーインナ161とセンタピラーアウタレイン163とで形成される第1閉断面部164内にバルクヘッド170が配設された状態でセンタピラー155が形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド170の第1、第2、第3フランジ部172、173、174とセンタピラーアウタレイン163とのスポット溶接部及び第4フランジ部175とセンタピラーインナ161との片側溶接部が剛結合部X…Xとなり、第4フランジ部175が粘弾性部材176、176を介してセンタピラーインナ161に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0104】
したがって、この第6実施形態によれば、センタピラー155の上部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、センタピラー155の上部で振動が減衰されることになる。
【0105】
次に、ルーフレール152の後部に適用された第7実施形態について説明すると、図30に示すように、ルーフレール152は、車内側のルーフレールインナ181と、車外側のルーフレールレイン182と、該ルーフレールレイン182の外側に配設された前記サイドフレームアウタ162とで構成され、ルーフレールレイン182で仕切られた前後に延びる第1、第2閉断面部183、184が設けられていると共に、該ルーフレールインナ181、ルーフレールレイン182及びサイドフレームアウタ162は、これらの下縁部に設けられたフランジ同士が三重に接合され、上縁部はルーフパネル185の側縁部を含めて四重に接合されている。
【0106】
そして、ルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とで形成される第1閉断面部183内にバルクヘッド190が配設され、該第1閉断面部183が前後に仕切られている。
【0107】
このバルクヘッド190は、図31に示すように、前記第1閉断面部183を仕切る仕切面部191と、該仕切面部191の車外側の辺部に設けられた前方へ延びる第1、第2フランジ部192、193と、仕切面部191の車内側の辺部に設けられた後方へ延びる第3フランジ部194とを有し、この第3フランジ部194には、粘弾性部材を配置するための2箇所の座部194a、194aと、その間に設けられて車内側へ突出する溶接用の平面部194bとが設けられている。
【0108】
この第7実施形態では、まず、ルーフレールレイン182の車内側の面にバルクヘッド190の第1、第2フランジ部192、193がスポット溶接により接合されて、該バルクヘッド190とルーフレールレイン182とが一体化される。
【0109】
次いで、バルクヘッド190の第3フランジ部194の座部194a、194aに粘弾性部材195、195がそれぞれ配設されて、一方の面が該座部194a、194aに接着された状態で、ルーフレールインナ181の内面にこれらの粘弾性部材195、195の他方の面が接着されるように、該ルーフレールインナ181がルーフレールレイン182に車内側から重ねられ、これにより、前記粘弾性部材195、195を介してルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とが接合され、さらに、前記第3フランジ部194の平面部194bとルーフレールインナ181の当接部が車内側からの片側溶接により接合される。
【0110】
そして、前記ルーフレールレイン182の車外側にサイドフレームアウタ162が重ねられると共に、これらとルーフパネル185とが接合される。
【0111】
これにより、前記ルーフレールインナ181とルーフレールレイン182とで形成される第1閉断面部183内にバルクヘッド190が配設された状態でルーフレール152が形成されることになり、このとき、前記バルクヘッド190の第1、第2フランジ部192、193とルーフレールレイン182とのスポット溶接部、及び、第3フランジ部194とルーフレールインナ181との片側溶接部が剛結合部X…Xとなり、第3フランジ部184が粘弾性部材195、195を介してルーフレールインナ181に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0112】
したがって、この第7実施形態によれば、ルーフレール152の後部の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、該ルーフレール152の後部で振動が減衰されることになる。
【0113】
次に、車室のフロアに適用された第8実施形態について説明すると、図32に示すように、車室の前部はダッシュロアパネル201により、底部はフロアパネル202により形成されていると共に、車室の後部は、前記フロアパネル202に連続するセンタフロアパン203で底部が形成され、その後方には、一段高くされてトランクフロアパン204が設けられている。
【0114】
また、前記フロアパネル202の左右両側部には前後方向に延びるサイドシル205、205が設けれていると共に、該フロアパネル202の車幅方向の中央部には、ダッシュパネル201から前記センタフロアパン203の前端部まで延びるトンネルレイン206が配設されており、さらに、左右のサイドシル205、205とトンネルレイン206との間には、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ207、No.2.5クロスメンバ208がダッシュパネル201側から順に配設されており、さらにフロアパネル202とセンタフロアパネル203との境界部にはNo.3クロスメンバ209が配設されているいる。
【0115】
No.2クロスメンバ207は、図33、34に示すように、前面部210と後面部(図示せず)と上面部211とで断面が下開きの略ハット状とされ、前後のフランジが前記フロアパネル202の上面に接合されて、該フロアパネル202との間に車幅方向に延び、車外側及び車内側の端部がサイドシルインナ212と前記トンネルレイン206とで閉鎖された閉断面部213が形成されていると共に、上面部211のサイドシルインナ212側及びトンネルレイン206側の端部の上面にはシートレール取付用のボルト穴211a、211bが設けられており、このうち、サイドシル側のボルト穴211aの下方に、補強体としてのバルクヘッド220が前記閉断面部213を仕切るように配設されている。
【0116】
このバルクヘッド220は、図35に示すように、前記閉断面部213を仕切る傾斜した仕切面部221と、該仕切面部221の上端部から車外側へ延びる比較的面積の広い第1フランジ部222と、該仕切面部221の下端部から車内側へ延びる第2フランジ部223とを有し、第1フランジ部222には前記No.2クロスメンバ207の上面部211におけるボルト穴211aと重なるボルト穴222aが形成され、その下面にボルト締結用のナット224が溶接によって固着されている。なお、仕切面部221と第1フランジ部222の前後両縁部にはこれらの部位の剛性を高めるための折曲片部225、226が設けられている。
【0117】
このバルクヘッド220は、No.2クロスメンバ207の車外側の端部の内側に配設され、第1フランジ部222を該クロスメンバ207の上面部211の裏側に重ねられた状態で、ボルト穴211a、222aに相通されてナット224に螺合されるボルト227により、シートレール228と共に締結される。
【0118】
そして、第2フランジ部223の下面に粘弾性部材228を配置し、一方の面を該第2フランジ部223の下面に接着させた状態で、該粘弾性部材228がフロアパネル202上に押し付けられるように、No.2クロスメンバ207がフロアパネル202の上面に配置され、該クロスメンバ207の周囲のフランジがフロアパネル202、サイドシルインナ211及びトンネルレイン206に接合される。
【0119】
これにより、前記粘弾性部材228の他方の面がフロアパネル202に接着され、No.2クロスメンバ207とフロアパネル202とで形成される閉断面部213内にバルクヘッド220が配設されることになり、その場合に、前記バルクヘッド220の第1フランジ部222とNo.2クロスメンバ207の上面部211とのボルト227による締結部が剛結合部X…Xとなり、第2フランジ部223が粘弾性部材228を介してフロアパネル202に接合された部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0120】
したがって、この第8実施形態によれば、車室のフロアに配設されたNo.2クロスメンバ207の剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、当該部位において振動が減衰されることになる。
【0121】
次に、車体の後部側面のリヤホイールハウス上部に適用された第9実施形態について説明する。
【0122】
図36は車体の後部側面を示すもので、リヤホイールハウス231の上方にリヤピラーインナ232が配設されていると共に、その上端部にはルーフレール233に沿って前方に延びるリヤピラーレイン234が配設されている。そして、前記リヤピラーインナ232の外面には、上下に延びて、下端部が前記リヤホイールハウス231に、上端部が前記リヤピラーレイン234にそれぞれ連結されたサスハウジングレイン240が配設されている。
【0123】
そして、図37、38に示すように、前記サスハウジングレイン240を覆うようにサイドフレームアウタ235が配設され、該サイドフレームアウタ235と前記リヤピラーインナ232とリヤホイールハウス231で形成される閉断面部236内に前記サスハウジングレイン240が補強体として配設された状態となる。
【0124】
このサスハウジングレイン240は、図39に示すように、前記リヤピラーインナ232の車外側の面に略沿って延びる基本面部241と、その上端部及び下端部に設けられて、前記リヤピラーレイン234及びリヤホイールハウス231にそれぞれ接合される第1、第2フランジ部242、243と、基本面部241の前後両側部に設けられて前記リヤピラーインナ232に接合される第3、第4フランジ部244、245とを有する。そして、前記基本面部241の上部には車外側へ盛り上がった第1座部246が設けられていると共に、該基本面部241の下部には車外側へ切り起こされてなる第2、第3座部247、248が設けられており、これらの座部246、247、248にそれぞれ粘弾性部材249…249が配置されるようになっている。
【0125】
そして、サスハウジングレイン240の前記各フランジ部242,243、244、245が、リヤピラーレイン234、リヤホイールハウス231及びリヤピラーインナ232の外面にそれぞれスポット溶接によって接合されると共に、該サスハウジングレイン240の前記第1〜第3座部246、247、248に粘弾性部材249…249がそれぞれ配置されて一方の面が接着された状態で、これらの粘弾性部材249…249を押し付けてその他方の面が接着されるように、サイドフレームアウタ235が車外側から重ねられ、前記リヤピラーレイン234及びリヤホイールハウス231に接合される。
【0126】
これにより、前記サイドフレームアウタ235と前記リヤピラーインナ232と前記リヤホイールハウス231とで形成される閉断面部236内にサスハウジングレイン240が配設されて、リヤホイールハウス231の上部が構成されることになる。その場合に、前記サスハウジングレイン240の第1〜第4フランジ部242〜245と、リヤピラーレイン234、リヤホイールハウス231及びリヤピラーインナ232とのスポット溶接部が剛結合部X…Xとなり、基本面部241とサイドフレームアウタ235とが粘弾性部材249…249を介して接合される部位が柔結合部Y、Yとされる。
【0127】
したがって、この第9実施形態によれば、リヤホイールハウス231の上部における剛性が向上すると共に、前記柔結合部Y、Yの存在により、該リヤホイールハウス上部で振動が減衰されることになる。
【0128】
なお以上の実施形態においては、比較的厚手の粘弾性部材を用いたが、シート状の薄い粘弾性部材を用い、或いは、補強体のフランジ部等に塗布するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明によれば、各種の車体構成部材によって形成される閉断面部の剛性が向上すると共に該閉断面部位で振動が減衰されることになって、この種の閉断面部位を有する車体の製造分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0130】
31、32、18、23、65、74,66,75,136,137、161,163,181,182,202、207、232,235…車体構成部材
40、50、80,110、140,170、190、220、240…補強体
48、56、90、120、144、176、195、228、249…粘弾性部材
X…剛結合部
Y…柔結合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造であって、
前記車体構成部材と補強体との接合部は、互に当接した状態で結合された剛結合部と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車体構造であって、
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造であって、
前記補強体は、周囲に1又は2以上のフランジ部を有するバルクヘッドであり、
前記接合部は、前記フランジ部に設けられていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の車体構造であって、
前記バルクヘッドは、前記閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両の車体構造であって、
前記フランジの1つに前記剛結部と前記柔結合部とが設けられていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の車体構造であって、
前記閉断面部は、2つの車体構成部材で構成されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項7】
閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造を製造する方法であって、
前記車体構成部材と補強体とを接合する工程として、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とを有することを特徴とする車両の車体構造の製造方法。
【請求項1】
閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造であって、
前記車体構成部材と補強体との接合部は、互に当接した状態で結合された剛結合部と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の車体構造であって、
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(2、0.2)、(10、0.1)、(2000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の車体構造であって、
前記補強体は、周囲に1又は2以上のフランジ部を有するバルクヘッドであり、
前記接合部は、前記フランジ部に設けられていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の車体構造であって、
前記バルクヘッドは、前記閉断面部を仕切る2枚の仕切面部と、これらの仕切面部を連結する連結部とを有することを特徴とする車両の車体構造。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両の車体構造であって、
前記フランジの1つに前記剛結部と前記柔結合部とが設けられていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両の車体構造であって、
前記閉断面部は、2つの車体構成部材で構成されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項7】
閉断面部を形成する1又は2以上の車体構成部材と、前記閉断面部内に配設されて前記車体構成部材に接合された補強体とを有する車両の車体構造を製造する方法であって、
前記車体構成部材と補強体とを接合する工程として、互に当接した状態で結合する剛結合工程と、該車体構成部材と補強体との間に配設された減衰部材を介して結合する柔結合工程とを有することを特徴とする車両の車体構造の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2013−49375(P2013−49375A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189058(P2011−189058)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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