車両の車体構造及びその製造方法
【課題】サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、前記支持部材の振動を抑制する。
【解決手段】車体に対するサスペンション構成部材90,92の取付部における車両の車体構造において、前記サスペンション構成部材92が貫通する第1面部61と、該第1面部61に対向配置された第2面部31と、前記第1面部61と前記第2面部31との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材90,92を支持する支持部材70と、を設けて、該支持部材70を、該支持部材と一体または別体の補強体80を介して前記第2面部31に接合する。
【解決手段】車体に対するサスペンション構成部材90,92の取付部における車両の車体構造において、前記サスペンション構成部材92が貫通する第1面部61と、該第1面部61に対向配置された第2面部31と、前記第1面部61と前記第2面部31との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材90,92を支持する支持部材70と、を設けて、該支持部材70を、該支持部材と一体または別体の補強体80を介して前記第2面部31に接合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造、特に、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配置される支持部材により前記サスペンション構成部材が支持される車両の車体構造および該車体構造の製造方法に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、サスペンション装置の一部を構成するボルト、ナット又はトレーリングアーム等の各種部材(以下、「サスペンション構成部材」という。)を支持するための構成として、該サスペンション構成部材を、各種のフレームやブラケット等を構成する略水平な板状部材を上下方向に貫通して配設するとともに、該板状部材の上方に間隔を空けて配置されるように該板状部材に固定された支持部材により支持する構成が採用されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、同文献の図3を参照すると、サブフレームの後端部を固定するためのボルトが、フロアパネルとダッシュパネルとの境界部を下側から跨ぐようにしてこれら両パネルの下面に固定されたアウトリガの底面部を貫通して配設されるとともに、該底面部の上方で且つダッシュパネルの下方に配置されるようにアウトリガに固定された支持部材と、アウトリガにおける前記貫通部との上下2箇所において支持される構造が開示されている。この特許文献1の技術によれば、アウトリガとダッシュパネルとの間の空間を利用することで、サスペンション装置にとって好適な高さにサブフレーム固定用の前記ボルトを配設することができるとともに、該ボルトを前記の上下2箇所で安定的に支持することができる。
【0004】
また、特許文献2には、同文献の図5を参照すると、サスクロス取付用のボルトが、フロアパネルの下面に固定されたサイドフレームの底面部を貫通して配設されるとともに、該底面部の上方で且つフロアパネルの下方に配置されるようにサイドフレームに固定された支持部材と、サイドフレームにおける前記貫通部との上下2箇所において支持される構造が開示されている。この特許文献2の技術によっても、サイドフレームとフロアパネルとの間の空間を利用することで、サスペンション装置にとって好適な高さに前記サスクロス取付用のボルトを配設することができるとともに、該ボルトを前記の上下2箇所において安定的に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−048050号公報
【特許文献2】特開2006−306135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2の技術のように、サスペンション構成部材を支持するための支持部材を、サスペンション構成部材が貫通する第1の板状部材と、該第1の板状部材に対向する第2の板状部材との間に配設した場合、サスペンション構成部材に接合された前記支持部材が、サスペンション装置側からの振動伝達により振動しやすくなる問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、前記支持部材の振動を抑制することができる車両の車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車体に対するサスペンション構成部材の取付部における車両の車体構造であって、
前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、
該第1面部に対向配置された第2面部と、
前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材を支持する支持部材と、を備え、
該支持部材は、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記支持部材は、前記第1面部に接合されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記第1面部と前記第2面部とを繋ぐことで該第1及び第2面部と共に閉断面を形成する少なくとも1つの第3面部を備え、
該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されていることを特徴とする。
【0012】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記補強体と該補強体以外の部材との接合部は、互いに当接した状態で結合された剛結合部と、減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、
前記柔結合部は、前記補強体と前記第2面部との接合部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の発明において、
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする。
【0015】
一方、請求項7に記載の発明は、
車体に対するサスペンション構成部材の取付部において、前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向配置された第2面部と、前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材が接合される支持部材と、を備える車両の車体構造を製造する方法であって、
前記支持部材を、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、該支持部材が補強体を介して前記第2面部に接合されるため、該第2面部により支持部材の動きが規制されることで、該支持部材の振動を抑制することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記支持部材が前記第1面部にも接合されるため、支持部材の振動を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記の第1及び第2面部が第3面部と共に閉断面を形成する場合において、該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されるため、支持部材の動きが第3面部によっても規制されることで、支持部材の振動をさらに効果的に抑制することができる。
【0019】
またさらに、請求項4に記載の発明によれば、前記補強体と該補強体以外の部材との接合部が、溶接やボルト締め等による剛結合部と、減衰部材を介設した柔結合部とを有するため、剛結合部により補強体と他の部材とが強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部の減衰部材によって補強体および前記支持部材の振動が減衰されることになる。これにより、車体構造として所要の剛性を確保しつつ振動の伝達を抑制して、当該車両の乗り心地を向上させ、また騒音を低減させることが可能となる。また、この振動伝達の抑制のために新たな部材を設ける必要がなく、車体の重量増等を回避しながら前記効果が達成される利点がある。
【0020】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記補強体と前記第2面部との接合部に柔結合部が設けられるため、該柔結合部の減衰部材により、補強体に集中した歪エネルギーを効果的に減衰させることができる。したがって、前記支持部材および補強体の振動を効果的に減衰させることができる。
【0021】
またさらに、請求項6に記載の発明を請求項4又は請求項5に記載の発明に適用すれば、前記減衰部材として粘弾性部材が用いられ、その物性としての貯蔵弾性率と損失係数とが、振動減衰効果が確認された所定の範囲内の値に特定されるから、補強体および支持部材の振動を減衰させる請求項4に記載の発明の効果が確実に達成されることになる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記バルクヘッドとして、一対の隔壁部と、該一対の隔壁部を連結する連結部とを有するバルクヘッドが用いられることで、上記の各請求項の効果を実現することができる。
【0023】
加えて、請求項8に記載の発明によれば、サスペンション構成部材を支持するための支持部材を、該サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設して、所定の車体構造を製造するときに、前記支持部材を、補強体を介して前記第2面部に接合するため、この方法で製造された車体構造について前記請求項1の発明の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態についてのシミュレーションに用いた剛結合モデルAを示す図である。
【図2】上記シミュレーションに用いた剛結合・柔結合併用モデルBを示す図である。
【図3】上記シミュレーションの結果を示すイナータンスの周波数特性図である。
【図4】同じく貯蔵弾性率に対するモード減衰比増減特性図である。
【図5】図4の結果に基づいて作成した有効範囲を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図7】図6のa−a線で切断した第1の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図8】図7に示す車体構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図10】図9のb−b線で切断した第2の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図11】第2の実施形態における支持部材を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図13】図12のc−c線で切断した第3の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図14】図13のd−d線で切断した第3の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図15】第3の実施形態における支持部材を示す斜視図である。
【図16】本発明の第4の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図17】図16のe−e線で切断した第4の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図18】図17のf−f線で切断した第4の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図19】第4の実施形態における支持部材及び補強体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、具体的な車体への適用構造についての説明に先立ち、本発明の請求項に記載の構造について行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0026】
図1は、このシミュレーションに用いた剛結合モデルAを示し、図2は、このシミュレーションに用いた剛結合・柔結合併用モデルBを示す。いずれのモデルについても、車体構成部材として断面ハット状の第1部材1と平板状の第2部材2とを用い、第1部材1の両側のフランジに第2部材2の両側端部を接合することにより、断面略長方形状の閉断面部3を有する中空フレーム4とされている。この中空フレーム4の閉断面部3は、第2部材2からなる第1面部と、第1部材1の上面部11からなり第1面部に対向配置された第2面部と、第1部材1の側面部12,13からなり第1面部と第2面部とを繋ぐ一対の第3面部とによって形成されている。
【0027】
また、いずれのモデルについても、図示しないサスペンション構成部材を支持するための支持部材10が第1面部2と第2面部11との間に配設され、該支持部材10は、補強体8を介して第2面部11に接合されている。支持部材10は、第1面部2の上方に対向配置される矩形板状の上面部5と、中空フレーム4の長さ方向において上面部5の両端からそれぞれ垂下した矩形板状の一対の脚部6,7とを備えている。各脚部6,7の周縁の各辺にはフランジ6a,7aが設けられ、上側のフランジ6a,7aは上面部5に、下側のフランジ6a,7aは第1面部2に、側方のフランジ6a,7aは第3面部12,13にそれぞれ接合されている。補強体8は、支持部材10の上面部5に対して垂直に配設された矩形板状であり、周縁の各辺にフランジ8aが設けられている。補強体8の上側のフランジ8aは第2面部11に、下側のフランジ8aは支持部材10の上面部5に、側方のフランジ8aは第3面部12,13にそれぞれ接合されている。
【0028】
図1に示す剛結合モデルAにおいて、補強体8は、支持部材10の上面部5、第3面部12,13及び第2面部11に対して全てスポット溶接により接合されている。一方、図2に示す剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、補強体8は、支持部材10の上面部5及び第3面部12,13に対してスポット溶接のみにより接合されているが、第2面部11に対する接合には、剛結合と柔結合とが併用されている。具体的に、補強体8の上側のフランジ8aは、その中央部で第2面部11にスポット溶接されるとともに、その両側で減衰部材9を介して第2面部11に接合されており、このスポット溶接部が剛結合部X、減衰部材6を介して接合された部位が柔結合部Yとなる。
【0029】
ここで、モデルBは、柔結合部Yを有する分だけ剛結合部XのみのモデルAに比べて剛性が高くなり、両モデルA,Bで共振周波数が異なることになるが、このシミュレーションにおいては、共振周波数を揃えて比較するために、剛結合部Xの面積をモデルAの方をモデルBよりも多少大きく設定している。また、柔結合部Yにおける減衰部材6は、損失係数が0.4、貯蔵弾性率が200MPa(20℃、30Hz)の粘弾性部材とした。
【0030】
図3はシミュレーション結果を示すものであり、前記モデルA,Bについて、フレーム4の一端における閉断面部3の所定の角部を加振点x、他端の閉断面部3の前記角部と対角上に位置する角部を応答点yとしたときの、この応答点yにおけるイナータンス(単位加振力当たりの加速度振幅の大きさ:m/s2/N)を比較して示している。
【0031】
この図から明らかなように、剛結合モデルAに比べて、剛結合・柔結合併用モデルBの方がイナータンスのピーク値が低くなっており、柔結合部Yを設けることにより、加振点xから応答点yまで振動が伝達される過程での減衰量が多くなることが示されている。
【0032】
図4は、剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、減衰部材6として損失係数の異なる複数の粘弾性部材を用い、その損失係数と貯蔵弾性率とに対するモード減衰比増減の特性をシミュレーションした結果を示すものである。なお、損失係数が0.05の減衰部材は比較例として示すものであり、一般的に車体で使用される構造用接着剤である。
【0033】
この図から明らかなように、粘弾性部材を用いることにより、一般的に車体で使用される構造用接着剤(損失係数0.05)を用いた場合に比べて、全貯蔵弾性率の領域でモード減衰比増減が大きくなり、振動が減衰し易くなることが示されている。特に損失係数が大きいほどモード減衰比増減が大きくなると共に、いずれの損失係数においても、貯蔵弾性率が100MPaでモード減衰比増減が最大となることが示されている。
【0034】
図5は、図4のシミュレーション結果から、減衰部材6として粘弾性部材を用いた場合の実質的に減衰効果が得られるときの損失係数と貯蔵弾性率との関係を示すものであり、モード減衰比増減が図4に示す閾値M以上で効果あり、閾値M未満で効果なしと判定したものである。
【0035】
この結果、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内と、損失係数0.4を超える範囲とで、実質的に減衰効果が得られることが判明する。
【0036】
次に、本発明の構造を車体へ適用した実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0037】
[第1の実施形態]
図6は、第1の実施形態が適用される車体の構造を前側斜め下方から見た斜視図である。図6に示すように、該車体前部のエンジンルーム周辺の骨格を構成する部材として、前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム22と、該フロントサイドフレーム22の前端部から前方へ延びるバンパステー24と、これらのバンパステー24の前端部に左右両端部が連結されて車幅方向に延びるバンパレイン26と、該バンパレイン26の後方で車幅方向に配設されたフロントサスクロス34とが設けられ、該フロントサスクロス34の車幅方向両端部近傍には、前輪のサスペンション装置の一部である左右のロアアーム36がそれぞれ配設されている。
【0038】
また、エンジンルームの後方に、該エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル31が配設されており、該ダッシュパネル31の下端から後方に向かってフロアパネル32が設けられている。該フロアパネル32の左右両側部には前後方向に延びるサイドシル44が設けられている。一方、車体の左右両側部の上部には、ルーフレール52が前後方向に延設され、該ルーフレール52とサイドシル44とに跨って、フロントピラー45及びヒンジピラー46、センタピラー48、並びにリアホイールハウス50が設けられている。
【0039】
フロアパネル32の車幅方向の中央部には、ダッシュパネル31から後方へ延びるトンネルレイン33が配設されている。さらに、左右のサイドシル44とトンネルレイン33との間には、前記フロントサイドフレーム22の後端部から後方へ延びるフロントフロアフレーム42がそれぞれ配設されている。フロアパネル32の下面には、トンネルレイン33から左右のフロントフロアフレーム42に跨ってそれぞれロアアームブラケット38が取り付けられており、該ロアアームブラケット38に、前記ロアアーム36の後端部が固定されている。
【0040】
図7は、前記ロアアームブラケット38及びその周辺の構造を示す図6のa−a線断面図であり、図8は、図7に示す構造を後側斜め上方から見た斜視図である。なお、図7及び図8は、右側のロアアームブラケット38及びその周辺の構造を示しているが、左側のロアアームブラケット38及びその周辺の構造も同様である。また、図8に付された「×」印はスポット溶接部位を示し、このことは他の図面についても同様である。
【0041】
図7及び図8に示すように、ロアアームブラケット38は、ダッシュパネル31の下方に間隔を空けて配置される底面部61と、該底面部61の前端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる前面部62と、底面部61の後端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる後面部63と、底面部61の車幅方向内側端部からダッシュパネル31に向かって立ち上がる側壁部64とを有し、前面部62、側壁部64及び後面部63の各上縁部にかけて、ダッシュパネル31の下面に接合されるフランジ65が設けられている。
【0042】
また、図8に示すように、ロアアームブラケット38は、車幅方向外側に開放した形状を有するが、このロアアームブラケット38の開放面はフロントフロアフレーム42の側面により塞がれるようになっており、該フロントフロアフレーム42の側面と、ダッシュパネル31と、ロアアームブラケット38の側壁部64及び底面部61とによって閉断面が形成されている。なお、ロアアームブラケット38には、前面部62の車幅方向外側端部から底面部61の車幅方向外側端部にかけて、フロントフロアフレーム42に接合されるフランジ66が設けられている。
【0043】
図7に示すように、前記ロアアーム36の後端部は、サイドアッパメンバ36aと、該サイドアッパメンバ36aの下方に対向配置されて該サイドアッパメンバ36aに接合されたサイドロアメンバ36bとを有する。これらサイドアッパメンバ36a及びサイドロアメンバ36bは、ロアアームブラケット38の底面部61の上面に溶接により接合されたナット90と、サイドロアメンバ36b、サイドアッパメンバ36a及びロアアームブラケット38の底面部61を下側から貫通するボルト92とによって、ロアアームブラケット38に固定されている。
【0044】
前記ボルト92が貫通する第1面部としてのロアアームブラケット38の底面部61と、該底面部61の上方に対向配置された第2面部としてのダッシュパネル31との間には、前記ボルト92を支持するための支持部材70が設けられている。
【0045】
図7及び図8に示すように、支持部材70は、ロアアームブラケット38の底面部61の上方に対向配置されて前記ナット90を介して前記ボルト92を支持する支持部71と、該支持部71の後端から後方に向かって斜め下方に延びる傾斜部72と、支持部71の前端から立ち上がる前側フランジ73と、傾斜部72の後端から立ち上がる後側フランジ74と、支持部71及び傾斜部72の車幅方向両端からそれぞれ立ち上がる一対の側方フランジ75,76とを有する。支持部71には、前記ナット90が貫通するとともに溶接により接合されている。前側フランジ73はロアアームブラケット38の前面部62に、後側フランジ74はロアアームブラケット38の後面部63に、車幅方向内側の側方フランジ76はロアアームブラケット38の側壁部64に、車幅方向外側の側方フランジ75はフロントフロアフレーム42の側面にそれぞれ溶接により接合されている。
【0046】
この支持部材70は、補強体80を介してダッシュパネル31の下面に接合されており、これにより、支持部材70の動きがダッシュパネル31により規制されるため、該支持部材70の振動を効果的に抑制することができる。
【0047】
補強体80は、支持部材70の支持部71の上面に接合されるベース部82と、該ベース部82の前端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる立ち上がり部81と、該立ち上がり部81の上端から前方へ延出してダッシュパネル31の下面に接合される被接合部85とを有する。また、補強体80は、立ち上がり部82の車幅方向両端から後方へ延びる一対の側方フランジ83,84を備えている。車幅方向内側の側方フランジ84は、その上半部がロアアームブラケット38の側壁部64に、下半部が支持部材70の側方フランジ76にそれぞれ接合され、車幅方向外側の側方フランジ83は、その上半部がフロントフロアフレーム42の側面に、下半部が支持部材70の側方フランジ75にそれぞれ接合されている。
【0048】
なお、立ち上がり部81には、軽量化を図るための複数の開口部86が形成され、ベース部82には、前記ナット90との干渉を避けるための切り欠き87が形成されている。
【0049】
補強体80の前記各接合部のうち、ベース部82における支持部材70の支持部71との接合部、車幅方向内側の側方フランジ84におけるロアアームブラケット38の側壁部64及び支持部材70の側方フランジ76との接合部、並びに、車幅方向外側の側方フランジ83におけるフロントフロアフレーム42の側面及び支持部材の側方フランジ75との接合部では、いずれもスポット溶接による接合がなされ、各溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0050】
一方、補強体80の残りの接合部、すなわち、被接合部85におけるダッシュパネル31との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材100を介した接合がなされ、該接合部位が柔結合部Yとされている。
【0051】
粘弾性部材100は、歪エネルギーを発生させ(貯蔵し)、そのエネルギーを熱エネルギーに変換し、散逸することにより振動を減衰可能な部材であり、接着剤または粘弾性部材100自身の粘着性により両接合面に接合されるが、塗布により接合されるようにしてもよい。また、粘弾性部材100は、圧縮された状態で両接合面間に介装されることが好ましく、これにより、これら両接合面に対する高い密着力を得ることができる。該粘弾性部材100の具体的な材料は特に限定されるものでないが、例えば、シリコーン系材料またはアクリル系材料が使用される。なお、本段落で説明した粘弾性部材100に関する構成は、後述の各実施形態における粘弾性部材にも該当するものであり、以下においては同様の説明を省略する。
【0052】
この第1の実施形態に係る車体構造によれば、上記のように補強体80が設けられるため、上記の剛結合部Xによって支持部材70及びロアアームブラケット38の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としての前記ボルト92及びナット90から支持部材70及び補強体80を介してダッシュパネル31に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0053】
また、第1の実施形態によれば、粘弾性部材100を用いた柔結合部Yが、補強体80よりも上方に配設されたダッシュパネル31との接合部に設けられているため、柔結合部Yが支持部材71の下方に設けられる場合に比し、柔結合部Yにおける錆の発生を防止することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図9〜図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態で用いられる第1の実施形態と同一の部材については、図9〜図11において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0055】
図9は、第2の実施形態が適用される車体の構造を示すものである。図9に示すように、車室の前部はダッシュパネル31により、底部はフロアパネル32により形成されていると共に、車室の後部は、前記フロアパネル32に連続するセンタフロアパン56で底部が形成され、その後方には、一段高くされてトランクフロアパン57が設けられている。
【0056】
また、左右のサイドシル44とトンネルレイン33との間には、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ51及びNo.2.5クロスメンバ52がダッシュパネル31側から順に配設されており、さらにフロアパネル32とセンタフロアパネル56との境界部にはNo.3クロスメンバ53が、センタフロアパネル56とトランクフロアパン57との境界部にはNo.4クロスメンバ54がそれぞれ配設されている。
【0057】
さらに、車体の後部における車幅方向両端部には、前記フロントフロアフレーム42の後端部から後方へ延びるリアサイドフレーム142がそれぞれ配設されている。
【0058】
図10は、リアサイドフレーム142に後輪のサスペンション装置の一部を固定するためのボルト192及びその周辺の構造を示す図9のb−b線断面図であり、図11は、前記ボルト192を支持するための支持部材170を示す斜視図である。なお、図10及び図11は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0059】
図10において、リアサイドフレーム142は、その底部143のみが図示されているが、図10に示された部分において、リアサイドフレーム142は、上端に左右一対のフランジを有する断面ハット状とされている。リアサイドフレーム142の底部143の上方には、リアフレームレイン140が対向配置され、該リアフレームレイン140にリアサイドフレーム142上端の前記一対のフランジが接合されることで、閉断面が形成されている。リアフレームレイン140は、前記ボルト192の前方近傍で立ち上がるようにして段状に形成されており、該リアフレームレイン140の上面には、前記立ち上がり部の直後方において、断面ハット状のブレースブラケット138における前後一対のフランジが接合されている。
【0060】
図10に示すように、前記ボルト192は、リアサイドフレーム142の底部143及び該底部143の下面に接合されたリアフレーム130を上側から貫通して設けられ、該ボルト192の頭部が、溶接により前記支持部材170に接合されている。該支持部材170は、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底部143と、第2面部としてのリアフレームレイン140との間に配設されている。
【0061】
図10及び図11に示すように、支持部材170は、リアサイドフレーム142の上方に対向配置されて前記ボルト192を支持する支持部171と、該支持部171の前端から前方に向かって斜め下方に延びる傾斜部172と、該傾斜部172の前端から前方に延設されてリアサイドフレーム142の上面に溶接により接合される下側被接合部173とを有する。支持部171の略中央部には、前記ボルト192を挿通させるためのボルト穴168が設けられ、支持部171、傾斜部172及び下側被接合部173の各車幅方向両端にはフランジ174,175,176,177,178,179が設けられ、これらのフランジ174〜179はリアサイドフレーム142の側面部に溶接により接合される。
【0062】
また、本実施形態において、支持部材170は、補強体部180を一体に備え、該補強体部180は、前記支持部171の後端からリアフレームレイン140に向かって立ち上がる立ち上がり部181と、該立ち上がり部181の上端から後方へ延出してリアフレームレイン140の下面に接合される上側被接合部182とを有する。
【0063】
立ち上がり部181は、後方に向かって斜め上方へ傾斜して設けられている。さらに、立ち上がり部181の車幅方向両端にはそれぞれフランジ183,184が設けられており、これらのフランジ183,184は、リアサイドフレーム142の側面部にそれぞれスポット溶接により接合され、これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0064】
一方、上側被接合部182は、前記ブレースブラケット138の後側フランジとリアフレームレイン140との接合部の下方において該リアフレームレイン140の下面に接合されるようになっている。該上側被接合部182におけるリアフレームレイン140との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材200を介した接合がなされ、該接合部位が柔結合部Yとされている。
【0065】
この第2の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材170は、補強体部180を介してリアフレームレイン140の下面に接合されるため、支持部材170の動きがリアフレームレイン140により規制されることで、該支持部材170の振動を効果的に抑制することができる。
【0066】
また、第2の実施形態によれば、支持部材170は、第2面部としてのリアフレームレイン140のみならず、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底部143にも接合されているため、支持部材170の振動が一層効果的に抑制される、
【0067】
さらに、第2の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材170及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としての前記ボルト192から支持部材170を介してリアフレームレイン140及びリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0068】
[第3の実施形態]
図12〜図15を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態で用いられる第1又は第2の実施形態と同一の部材については、図12〜図15において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0069】
図12は、第3の実施形態が適用される車体の構造を示すものであり、図12のc−c線断面図を図13に示し、図13のd−d線断面図を図14に示し、第3の実施形態における支持部材270の分解斜視図を図15に示す。
【0070】
図13及び図14に示すように、第3の実施形態では、リアサイドフレーム142に対する、後輪のサスペンション装置の一部であるトレーリングブラケット210の取付部の構造について説明する。なお、図13及び図14は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0071】
図13及び図14に示す部分において、リアサイドフレーム142は、下向きに開放する断面ハット状とされ、上面部242と、該上面部242の車幅方向両端からそれぞれ垂下する一対の側面部243,244とを有する。リアサイドフレーム142の上面部242の下方にはリアフレームレイン240が対向配置され、該リアフレームレイン240の上面にリアサイドフレーム142の両側面部243,244の下端が接合されることで、閉断面が形成されている。
【0072】
図13に示すように、リアフレームレイン240には、トレーリングブラケット210との干渉を避けるための開口部242が設けられており、トレーリングブラケット210の前端部は、該開口部242に挿通されることでリアフレームレイン240を貫通して配設されている。図13及び図14に示すように、トレーリングブラケット210の前端部は、リアフレームレイン240の上方で且つリアサイドフレーム142の上面部242の下方において車幅方向に延設された軸212により、回転可能に支持されている。該軸212は、リアサイドフレーム142の内部において車幅方向に間隔を空けて配設された一対の軸固定部材214,215間に架設されており、これら軸固定部材214,215は前記支持部材270に固定されている。
【0073】
支持部材270は、第1面部としてのリアフレームレイン240と、第2面部としてのリアサイドフレーム142の上面部242との間に配設されており、図15に示すように、支持部材本体271と、該支持部材本体271に連結される第1及び第2の連結部材280,290とを有する。
【0074】
支持部材本体271は、リアフレームレイン240の上方に対向配置されてトレーリングブラケット210を支持する支持部272と、該支持部272の前端から垂下する前面部276と、支持部272の後端から垂下する後面部275とを有する。支持部272の略中央部には、トレーリングブラケット210の前端部との干渉を回避するために上方へ膨出した膨出部273が設けられている。また、支持部272の後端部には、後方へ突出した半円状の突出部274が設けられ、該突出部274の下方において、前記後面部275は、平面視において突出部274の外縁形状に合致した半円形となっている。図14に示すように、支持部272の下面には、膨出部273を挟んだ車幅方向両側において、前記軸固定部材214,215が例えばボルト216,217により固定されており、これにより、支持部材270は、軸固定部材214,215及び軸212を介してトレーリングブラケット210を支持するようになっている。
【0075】
さらに、支持部材本体271の車幅方向両端部には一対のフランジ277,278が設けられ、各フランジ277,278は、支持部272の車幅方向両端から上方へ且つ前面部276の車幅方向両端から前方へそれぞれ延びるように設けられ、リアサイドフレーム142の各側面部243,244にそれぞれ溶接により接合されるようになっている。
【0076】
第1の連結部材280は、リアフレームレイン240の上面に接合される下側被接合部282と、該下側被接合部282の後端から立ち上がる立ち上がり部281と、該立ち上がり部281の上端から後方へ延設された上側被接合部283とを有する。
【0077】
該上側被接合部283は、リアサイドフレーム142の上面部242の下面に接合されるようになっており、これにより、第1の連結部材280が補強体として機能するようになっている。上側被接合部283におけるリアサイドフレーム142との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材299を介した接合がなされ、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0078】
また、第1の連結部材280において、立ち上がり部281の車幅方向両端には、それぞれ前方へ延びる一対のフランジ284,285が設けられ、各フランジ284,285は、リアサイドフレーム142の各側面部243,244と、支持部材本体271の各フランジ277,278の前端部とに対して、スポット溶接により接合されるようになっている。さらに、立ち上がり部281の後面は、支持部材本体271の前面部276にスポット溶接により接合され、これにより、第1の連結部材280が支持部材本体271に連結されるようになっている。これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0079】
第2の連結部材290は、リアフレームレイン240の上面に接合される下側被接合部296と、該下側被接合部296の前端から立ち上がる立ち上がり部291と、該立ち上がり部291の上端から前方へ延設された上側被接合部293とを有する。
【0080】
該上側被接合部293は、リアサイドフレーム142の上面部242の下面に接合されるようになっており、これにより、第2の連結部材290は補強体として機能するようになっている。上側被接合部293におけるリアサイドフレーム142との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材300を介した接合がなされ、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0081】
また、第2の連結部材290において、立ち上がり部291の車幅方向両端には、それぞれ後方へ延びる一対のフランジ294,295が設けられ、各フランジ294,295は、リアサイドフレーム142の各側面部243,244にスポット溶接により接合されるようになっている。さらに、立ち上がり部291の下部には、支持部材本体271の前記突出部274の形状に合致した半円形の凹部292が、後方へ凹入して設けられている。この第2の連結部材290は、前記凹部292に支持部材本体271の突出部274が嵌合した状態で、立ち上がり部291の前面に支持部材本体271の後面部275の後面がスポット溶接により接合されることで、支持部材本体271に連結されるようになっている。これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0082】
この第3の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材270は、補強体としての第1及び第2の連結部材280,290を介してリアサイドフレーム142の上面部242に接合されるため、支持部材270の動きがリアサイドフレーム142により規制されることで、該支持部材270の振動を効果的に抑制することができる。
【0083】
また、第3の実施形態によれば、支持部材270は、第2面部としてのリアサイドフレーム142の上面部242のみならず、第1面部としてのリアフレームレイン240にも接合されているため、支持部材270の振動が一層効果的に抑制される、
【0084】
さらに、第3の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材270及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としてのトレーリングブラケット210から支持部材270を介してリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0085】
[第4の実施形態]
図16〜図19を参照しながら、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態で用いられる第1〜第3の実施形態と同一の部材については、図16〜図19において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0086】
図16は、第4の実施形態が適用される車体の構造を示すものである。図16に示すように、車体後部において、No.4クロスメンバ54の後方には、No.4.5クロスメンバ58が、左右のリアサイドフレーム142間に跨って車幅方向に延設されている。
【0087】
図17は、図16のe−e線断面図を示し、図18は、図17のf−f線断面図を示し、図19は、第4の実施形態における支持部材380及び補強体390の斜視図を示す。
【0088】
図17及び図18に示すように、第4の実施形態では、リアサイドフレーム142に対する、後輪のサスペンション装置の一部を取り付けるためのメンバーブラケット320の取付部の構造について説明する。なお、図17及び図18は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0089】
図17及び図18に示す部分において、リアサイドフレーム142は、上向きに開放する断面ハット状とされ、底面部302と、該底面部302の車幅方向両端からそれぞれ立ち上がる一対の側面部304,306とを有する。なお、リアサイドフレーム142の底面部302の上面には補強板310が重ねて接合されている。
【0090】
リアサイドフレーム142の底面部302の上方にはリアフレームレイン140が対向配置され、該リアフレームレイン140の下面にリアサイドフレーム142の両側面部304,306の上端が接合されることで、閉断面が形成されている。
【0091】
メンバーブラケット320は、リアサイドフレーム142の底面部302の下面にボルト340により固定されている。該ボルト340は、リアサイドフレーム142の底面部302とメンバーブラケット320とを貫通して設けられ、前記補強板310の上面に重ねられた上側のナット344と、メンバーブラケット320の下面に重ねられた下側のナット346とによって締め付けられている。また、該ボルト340の頭部は前記支持部材380により支持されている。
【0092】
図19に示すように、支持部材380は、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底面部302と第2面部としてのリアフレームレイン140との間に配設される支持部381と、該支持部381の前端から垂下する前面部382と、支持部381の後端から垂下する後面部383とを有する。
【0093】
また、前面部382の車幅方向両端には、前方へ延びる一対のフランジ384,388が設けられ、各フランジ384,388は、リアサイドフレーム142の各側面部304,306に溶接により接合されている。さらに、前面部382の下端にも、前方へ延びるフランジ386が設けられ、該フランジ386は前記補強板310の上面に溶接により接合されている。
【0094】
一方、後面部383の車幅方向両端には、後方へ延びる一対のフランジ385,389が設けられ、各フランジ385,389は、リアサイドフレーム142の各側面部304,306に溶接により接合されている。また、後面部383の下端にも、後方へ延びるフランジ387(図17参照)が設けられ、該フランジ387は前記補強板310の上面に溶接により接合されている。
【0095】
この支持部材380は、前記補強体390を介して、第2面部としてのリアフレームレイン140に接合されるようになっている。補強体390は、リアフレームレイン140の下面に接合される被接合部391と、該被接合部391の前端から垂下する前面部392と、被接合部391の後端から垂下する後面部393とを有し、全体として側面視コ字形となっている。該補強体390は、被接合部391が支持部材380の前記支持部381の上方に間隔を空けて配置されるようにして支持部材380に接合されている。
【0096】
具体的には、補強体390の前面部392が支持部材380の前面部382の前面に、補強体390の後面部393が支持部材380の後面部383の後面にそれぞれスポット溶接により接合され、該接合部位が剛結合部Xとされている。
【0097】
一方、補強体390の被接合部391とリアフレームレイン140とは、振動減衰部材としての粘弾性部材400を介して接合され、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0098】
この第4の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材380は、補強体390を介してリアフレームレイン140に接合されるため、支持部材380の動きがリアフレームレイン140により規制されることで、該支持部材380の振動を効果的に抑制することができる。
【0099】
また、第4の実施形態によれば、支持部材380は、第2面部としてのリアフレームレイン140のみならず、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底面部302にも接合されているため、支持部材380の振動が一層効果的に抑制される、
【0100】
さらに、第4の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材380、補強体390及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としてのボルト340から支持部材380及び補強体390を介してリアフレームレイン140及びリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0101】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0102】
例えば、上述の実施形態では、溶接により剛結合部が構成される場合について説明したが、本発明において、剛結合部は、溶接に限られるものでなく、ボルト締め等により構成されるようにしてもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、補強体と第2面部との接合部にのみ柔結合部Yを設ける場合について説明したが、本発明では、補強体と第2面部以外の部材との接合部にも柔結合部Yを設けるようにしてもよい。
【0104】
さらに、上述の実施形態では、補強体と該補強体以外の部材との各接合部において、剛結合部X又は柔結合部Yの一方のみを設ける場合について説明したが、本発明では、1つの接合部に、剛結合部Xと柔結合部Yの両方を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明によれば、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、前記支持部材の振動を抑制することが可能となるから、この種の支持部材を有する車体の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0106】
1:第1部材、2:第2部材(第1面部)、3:閉断面部、4:中空フレーム、8:補強体、9:減衰部材、10:支持部材、11:第2面部、31:ダッシュパネル、32:フロアパネル、36:ロアアーム、38:ロアアームブラケット、42:フロントフロアフレーム、53:No.3クロスメンバ、54:No.4クロスメンバ、57:トランクフロアパン、58:No.4.5クロスメンバ、70:支持部材、80:補強体、90:ナット、92:ボルト、100:粘弾性部材、140:リアフレームレイン140、142:リアサイドフレーム、170:支持部材、180:補強体部、192:ボルト、200:粘弾性部材、210:トレーリングブラケット、240:リアフレームレイン、270:支持部材、271:支持部材本体、280:第1の連結部材、290:第2の連結部材、299,300:粘弾性部材、320:メンバーブラケット、380:支持部材、390:補強体、400:粘弾性部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造、特に、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配置される支持部材により前記サスペンション構成部材が支持される車両の車体構造および該車体構造の製造方法に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、サスペンション装置の一部を構成するボルト、ナット又はトレーリングアーム等の各種部材(以下、「サスペンション構成部材」という。)を支持するための構成として、該サスペンション構成部材を、各種のフレームやブラケット等を構成する略水平な板状部材を上下方向に貫通して配設するとともに、該板状部材の上方に間隔を空けて配置されるように該板状部材に固定された支持部材により支持する構成が採用されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、同文献の図3を参照すると、サブフレームの後端部を固定するためのボルトが、フロアパネルとダッシュパネルとの境界部を下側から跨ぐようにしてこれら両パネルの下面に固定されたアウトリガの底面部を貫通して配設されるとともに、該底面部の上方で且つダッシュパネルの下方に配置されるようにアウトリガに固定された支持部材と、アウトリガにおける前記貫通部との上下2箇所において支持される構造が開示されている。この特許文献1の技術によれば、アウトリガとダッシュパネルとの間の空間を利用することで、サスペンション装置にとって好適な高さにサブフレーム固定用の前記ボルトを配設することができるとともに、該ボルトを前記の上下2箇所で安定的に支持することができる。
【0004】
また、特許文献2には、同文献の図5を参照すると、サスクロス取付用のボルトが、フロアパネルの下面に固定されたサイドフレームの底面部を貫通して配設されるとともに、該底面部の上方で且つフロアパネルの下方に配置されるようにサイドフレームに固定された支持部材と、サイドフレームにおける前記貫通部との上下2箇所において支持される構造が開示されている。この特許文献2の技術によっても、サイドフレームとフロアパネルとの間の空間を利用することで、サスペンション装置にとって好適な高さに前記サスクロス取付用のボルトを配設することができるとともに、該ボルトを前記の上下2箇所において安定的に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−048050号公報
【特許文献2】特開2006−306135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2の技術のように、サスペンション構成部材を支持するための支持部材を、サスペンション構成部材が貫通する第1の板状部材と、該第1の板状部材に対向する第2の板状部材との間に配設した場合、サスペンション構成部材に接合された前記支持部材が、サスペンション装置側からの振動伝達により振動しやすくなる問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、前記支持部材の振動を抑制することができる車両の車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
車体に対するサスペンション構成部材の取付部における車両の車体構造であって、
前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、
該第1面部に対向配置された第2面部と、
前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材を支持する支持部材と、を備え、
該支持部材は、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記支持部材は、前記第1面部に接合されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記第1面部と前記第2面部とを繋ぐことで該第1及び第2面部と共に閉断面を形成する少なくとも1つの第3面部を備え、
該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されていることを特徴とする。
【0012】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記補強体と該補強体以外の部材との接合部は、互いに当接した状態で結合された剛結合部と、減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項4に記載の発明において、
前記柔結合部は、前記補強体と前記第2面部との接合部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記請求項4または請求項5に記載の発明において、
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする。
【0015】
一方、請求項7に記載の発明は、
車体に対するサスペンション構成部材の取付部において、前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向配置された第2面部と、前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材が接合される支持部材と、を備える車両の車体構造を製造する方法であって、
前記支持部材を、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、該支持部材が補強体を介して前記第2面部に接合されるため、該第2面部により支持部材の動きが規制されることで、該支持部材の振動を抑制することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記支持部材が前記第1面部にも接合されるため、支持部材の振動を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記の第1及び第2面部が第3面部と共に閉断面を形成する場合において、該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されるため、支持部材の動きが第3面部によっても規制されることで、支持部材の振動をさらに効果的に抑制することができる。
【0019】
またさらに、請求項4に記載の発明によれば、前記補強体と該補強体以外の部材との接合部が、溶接やボルト締め等による剛結合部と、減衰部材を介設した柔結合部とを有するため、剛結合部により補強体と他の部材とが強固に接合されて、前記剛性向上の効果が確保されると共に、柔結合部の減衰部材によって補強体および前記支持部材の振動が減衰されることになる。これにより、車体構造として所要の剛性を確保しつつ振動の伝達を抑制して、当該車両の乗り心地を向上させ、また騒音を低減させることが可能となる。また、この振動伝達の抑制のために新たな部材を設ける必要がなく、車体の重量増等を回避しながら前記効果が達成される利点がある。
【0020】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記補強体と前記第2面部との接合部に柔結合部が設けられるため、該柔結合部の減衰部材により、補強体に集中した歪エネルギーを効果的に減衰させることができる。したがって、前記支持部材および補強体の振動を効果的に減衰させることができる。
【0021】
またさらに、請求項6に記載の発明を請求項4又は請求項5に記載の発明に適用すれば、前記減衰部材として粘弾性部材が用いられ、その物性としての貯蔵弾性率と損失係数とが、振動減衰効果が確認された所定の範囲内の値に特定されるから、補強体および支持部材の振動を減衰させる請求項4に記載の発明の効果が確実に達成されることになる。
【0022】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記バルクヘッドとして、一対の隔壁部と、該一対の隔壁部を連結する連結部とを有するバルクヘッドが用いられることで、上記の各請求項の効果を実現することができる。
【0023】
加えて、請求項8に記載の発明によれば、サスペンション構成部材を支持するための支持部材を、該サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設して、所定の車体構造を製造するときに、前記支持部材を、補強体を介して前記第2面部に接合するため、この方法で製造された車体構造について前記請求項1の発明の効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態についてのシミュレーションに用いた剛結合モデルAを示す図である。
【図2】上記シミュレーションに用いた剛結合・柔結合併用モデルBを示す図である。
【図3】上記シミュレーションの結果を示すイナータンスの周波数特性図である。
【図4】同じく貯蔵弾性率に対するモード減衰比増減特性図である。
【図5】図4の結果に基づいて作成した有効範囲を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図7】図6のa−a線で切断した第1の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図8】図7に示す車体構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図10】図9のb−b線で切断した第2の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図11】第2の実施形態における支持部材を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図13】図12のc−c線で切断した第3の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図14】図13のd−d線で切断した第3の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図15】第3の実施形態における支持部材を示す斜視図である。
【図16】本発明の第4の実施形態が適用される車体を示す斜視図である。
【図17】図16のe−e線で切断した第4の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図18】図17のf−f線で切断した第4の実施形態に係る車体構造の断面図である。
【図19】第4の実施形態における支持部材及び補強体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、具体的な車体への適用構造についての説明に先立ち、本発明の請求項に記載の構造について行ったシミュレーションの結果について説明する。
【0026】
図1は、このシミュレーションに用いた剛結合モデルAを示し、図2は、このシミュレーションに用いた剛結合・柔結合併用モデルBを示す。いずれのモデルについても、車体構成部材として断面ハット状の第1部材1と平板状の第2部材2とを用い、第1部材1の両側のフランジに第2部材2の両側端部を接合することにより、断面略長方形状の閉断面部3を有する中空フレーム4とされている。この中空フレーム4の閉断面部3は、第2部材2からなる第1面部と、第1部材1の上面部11からなり第1面部に対向配置された第2面部と、第1部材1の側面部12,13からなり第1面部と第2面部とを繋ぐ一対の第3面部とによって形成されている。
【0027】
また、いずれのモデルについても、図示しないサスペンション構成部材を支持するための支持部材10が第1面部2と第2面部11との間に配設され、該支持部材10は、補強体8を介して第2面部11に接合されている。支持部材10は、第1面部2の上方に対向配置される矩形板状の上面部5と、中空フレーム4の長さ方向において上面部5の両端からそれぞれ垂下した矩形板状の一対の脚部6,7とを備えている。各脚部6,7の周縁の各辺にはフランジ6a,7aが設けられ、上側のフランジ6a,7aは上面部5に、下側のフランジ6a,7aは第1面部2に、側方のフランジ6a,7aは第3面部12,13にそれぞれ接合されている。補強体8は、支持部材10の上面部5に対して垂直に配設された矩形板状であり、周縁の各辺にフランジ8aが設けられている。補強体8の上側のフランジ8aは第2面部11に、下側のフランジ8aは支持部材10の上面部5に、側方のフランジ8aは第3面部12,13にそれぞれ接合されている。
【0028】
図1に示す剛結合モデルAにおいて、補強体8は、支持部材10の上面部5、第3面部12,13及び第2面部11に対して全てスポット溶接により接合されている。一方、図2に示す剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、補強体8は、支持部材10の上面部5及び第3面部12,13に対してスポット溶接のみにより接合されているが、第2面部11に対する接合には、剛結合と柔結合とが併用されている。具体的に、補強体8の上側のフランジ8aは、その中央部で第2面部11にスポット溶接されるとともに、その両側で減衰部材9を介して第2面部11に接合されており、このスポット溶接部が剛結合部X、減衰部材6を介して接合された部位が柔結合部Yとなる。
【0029】
ここで、モデルBは、柔結合部Yを有する分だけ剛結合部XのみのモデルAに比べて剛性が高くなり、両モデルA,Bで共振周波数が異なることになるが、このシミュレーションにおいては、共振周波数を揃えて比較するために、剛結合部Xの面積をモデルAの方をモデルBよりも多少大きく設定している。また、柔結合部Yにおける減衰部材6は、損失係数が0.4、貯蔵弾性率が200MPa(20℃、30Hz)の粘弾性部材とした。
【0030】
図3はシミュレーション結果を示すものであり、前記モデルA,Bについて、フレーム4の一端における閉断面部3の所定の角部を加振点x、他端の閉断面部3の前記角部と対角上に位置する角部を応答点yとしたときの、この応答点yにおけるイナータンス(単位加振力当たりの加速度振幅の大きさ:m/s2/N)を比較して示している。
【0031】
この図から明らかなように、剛結合モデルAに比べて、剛結合・柔結合併用モデルBの方がイナータンスのピーク値が低くなっており、柔結合部Yを設けることにより、加振点xから応答点yまで振動が伝達される過程での減衰量が多くなることが示されている。
【0032】
図4は、剛結合・柔結合併用モデルBにおいて、減衰部材6として損失係数の異なる複数の粘弾性部材を用い、その損失係数と貯蔵弾性率とに対するモード減衰比増減の特性をシミュレーションした結果を示すものである。なお、損失係数が0.05の減衰部材は比較例として示すものであり、一般的に車体で使用される構造用接着剤である。
【0033】
この図から明らかなように、粘弾性部材を用いることにより、一般的に車体で使用される構造用接着剤(損失係数0.05)を用いた場合に比べて、全貯蔵弾性率の領域でモード減衰比増減が大きくなり、振動が減衰し易くなることが示されている。特に損失係数が大きいほどモード減衰比増減が大きくなると共に、いずれの損失係数においても、貯蔵弾性率が100MPaでモード減衰比増減が最大となることが示されている。
【0034】
図5は、図4のシミュレーション結果から、減衰部材6として粘弾性部材を用いた場合の実質的に減衰効果が得られるときの損失係数と貯蔵弾性率との関係を示すものであり、モード減衰比増減が図4に示す閾値M以上で効果あり、閾値M未満で効果なしと判定したものである。
【0035】
この結果、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内と、損失係数0.4を超える範囲とで、実質的に減衰効果が得られることが判明する。
【0036】
次に、本発明の構造を車体へ適用した実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0037】
[第1の実施形態]
図6は、第1の実施形態が適用される車体の構造を前側斜め下方から見た斜視図である。図6に示すように、該車体前部のエンジンルーム周辺の骨格を構成する部材として、前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム22と、該フロントサイドフレーム22の前端部から前方へ延びるバンパステー24と、これらのバンパステー24の前端部に左右両端部が連結されて車幅方向に延びるバンパレイン26と、該バンパレイン26の後方で車幅方向に配設されたフロントサスクロス34とが設けられ、該フロントサスクロス34の車幅方向両端部近傍には、前輪のサスペンション装置の一部である左右のロアアーム36がそれぞれ配設されている。
【0038】
また、エンジンルームの後方に、該エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル31が配設されており、該ダッシュパネル31の下端から後方に向かってフロアパネル32が設けられている。該フロアパネル32の左右両側部には前後方向に延びるサイドシル44が設けられている。一方、車体の左右両側部の上部には、ルーフレール52が前後方向に延設され、該ルーフレール52とサイドシル44とに跨って、フロントピラー45及びヒンジピラー46、センタピラー48、並びにリアホイールハウス50が設けられている。
【0039】
フロアパネル32の車幅方向の中央部には、ダッシュパネル31から後方へ延びるトンネルレイン33が配設されている。さらに、左右のサイドシル44とトンネルレイン33との間には、前記フロントサイドフレーム22の後端部から後方へ延びるフロントフロアフレーム42がそれぞれ配設されている。フロアパネル32の下面には、トンネルレイン33から左右のフロントフロアフレーム42に跨ってそれぞれロアアームブラケット38が取り付けられており、該ロアアームブラケット38に、前記ロアアーム36の後端部が固定されている。
【0040】
図7は、前記ロアアームブラケット38及びその周辺の構造を示す図6のa−a線断面図であり、図8は、図7に示す構造を後側斜め上方から見た斜視図である。なお、図7及び図8は、右側のロアアームブラケット38及びその周辺の構造を示しているが、左側のロアアームブラケット38及びその周辺の構造も同様である。また、図8に付された「×」印はスポット溶接部位を示し、このことは他の図面についても同様である。
【0041】
図7及び図8に示すように、ロアアームブラケット38は、ダッシュパネル31の下方に間隔を空けて配置される底面部61と、該底面部61の前端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる前面部62と、底面部61の後端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる後面部63と、底面部61の車幅方向内側端部からダッシュパネル31に向かって立ち上がる側壁部64とを有し、前面部62、側壁部64及び後面部63の各上縁部にかけて、ダッシュパネル31の下面に接合されるフランジ65が設けられている。
【0042】
また、図8に示すように、ロアアームブラケット38は、車幅方向外側に開放した形状を有するが、このロアアームブラケット38の開放面はフロントフロアフレーム42の側面により塞がれるようになっており、該フロントフロアフレーム42の側面と、ダッシュパネル31と、ロアアームブラケット38の側壁部64及び底面部61とによって閉断面が形成されている。なお、ロアアームブラケット38には、前面部62の車幅方向外側端部から底面部61の車幅方向外側端部にかけて、フロントフロアフレーム42に接合されるフランジ66が設けられている。
【0043】
図7に示すように、前記ロアアーム36の後端部は、サイドアッパメンバ36aと、該サイドアッパメンバ36aの下方に対向配置されて該サイドアッパメンバ36aに接合されたサイドロアメンバ36bとを有する。これらサイドアッパメンバ36a及びサイドロアメンバ36bは、ロアアームブラケット38の底面部61の上面に溶接により接合されたナット90と、サイドロアメンバ36b、サイドアッパメンバ36a及びロアアームブラケット38の底面部61を下側から貫通するボルト92とによって、ロアアームブラケット38に固定されている。
【0044】
前記ボルト92が貫通する第1面部としてのロアアームブラケット38の底面部61と、該底面部61の上方に対向配置された第2面部としてのダッシュパネル31との間には、前記ボルト92を支持するための支持部材70が設けられている。
【0045】
図7及び図8に示すように、支持部材70は、ロアアームブラケット38の底面部61の上方に対向配置されて前記ナット90を介して前記ボルト92を支持する支持部71と、該支持部71の後端から後方に向かって斜め下方に延びる傾斜部72と、支持部71の前端から立ち上がる前側フランジ73と、傾斜部72の後端から立ち上がる後側フランジ74と、支持部71及び傾斜部72の車幅方向両端からそれぞれ立ち上がる一対の側方フランジ75,76とを有する。支持部71には、前記ナット90が貫通するとともに溶接により接合されている。前側フランジ73はロアアームブラケット38の前面部62に、後側フランジ74はロアアームブラケット38の後面部63に、車幅方向内側の側方フランジ76はロアアームブラケット38の側壁部64に、車幅方向外側の側方フランジ75はフロントフロアフレーム42の側面にそれぞれ溶接により接合されている。
【0046】
この支持部材70は、補強体80を介してダッシュパネル31の下面に接合されており、これにより、支持部材70の動きがダッシュパネル31により規制されるため、該支持部材70の振動を効果的に抑制することができる。
【0047】
補強体80は、支持部材70の支持部71の上面に接合されるベース部82と、該ベース部82の前端からダッシュパネル31に向かって立ち上がる立ち上がり部81と、該立ち上がり部81の上端から前方へ延出してダッシュパネル31の下面に接合される被接合部85とを有する。また、補強体80は、立ち上がり部82の車幅方向両端から後方へ延びる一対の側方フランジ83,84を備えている。車幅方向内側の側方フランジ84は、その上半部がロアアームブラケット38の側壁部64に、下半部が支持部材70の側方フランジ76にそれぞれ接合され、車幅方向外側の側方フランジ83は、その上半部がフロントフロアフレーム42の側面に、下半部が支持部材70の側方フランジ75にそれぞれ接合されている。
【0048】
なお、立ち上がり部81には、軽量化を図るための複数の開口部86が形成され、ベース部82には、前記ナット90との干渉を避けるための切り欠き87が形成されている。
【0049】
補強体80の前記各接合部のうち、ベース部82における支持部材70の支持部71との接合部、車幅方向内側の側方フランジ84におけるロアアームブラケット38の側壁部64及び支持部材70の側方フランジ76との接合部、並びに、車幅方向外側の側方フランジ83におけるフロントフロアフレーム42の側面及び支持部材の側方フランジ75との接合部では、いずれもスポット溶接による接合がなされ、各溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0050】
一方、補強体80の残りの接合部、すなわち、被接合部85におけるダッシュパネル31との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材100を介した接合がなされ、該接合部位が柔結合部Yとされている。
【0051】
粘弾性部材100は、歪エネルギーを発生させ(貯蔵し)、そのエネルギーを熱エネルギーに変換し、散逸することにより振動を減衰可能な部材であり、接着剤または粘弾性部材100自身の粘着性により両接合面に接合されるが、塗布により接合されるようにしてもよい。また、粘弾性部材100は、圧縮された状態で両接合面間に介装されることが好ましく、これにより、これら両接合面に対する高い密着力を得ることができる。該粘弾性部材100の具体的な材料は特に限定されるものでないが、例えば、シリコーン系材料またはアクリル系材料が使用される。なお、本段落で説明した粘弾性部材100に関する構成は、後述の各実施形態における粘弾性部材にも該当するものであり、以下においては同様の説明を省略する。
【0052】
この第1の実施形態に係る車体構造によれば、上記のように補強体80が設けられるため、上記の剛結合部Xによって支持部材70及びロアアームブラケット38の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としての前記ボルト92及びナット90から支持部材70及び補強体80を介してダッシュパネル31に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0053】
また、第1の実施形態によれば、粘弾性部材100を用いた柔結合部Yが、補強体80よりも上方に配設されたダッシュパネル31との接合部に設けられているため、柔結合部Yが支持部材71の下方に設けられる場合に比し、柔結合部Yにおける錆の発生を防止することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
図9〜図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態で用いられる第1の実施形態と同一の部材については、図9〜図11において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0055】
図9は、第2の実施形態が適用される車体の構造を示すものである。図9に示すように、車室の前部はダッシュパネル31により、底部はフロアパネル32により形成されていると共に、車室の後部は、前記フロアパネル32に連続するセンタフロアパン56で底部が形成され、その後方には、一段高くされてトランクフロアパン57が設けられている。
【0056】
また、左右のサイドシル44とトンネルレイン33との間には、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ51及びNo.2.5クロスメンバ52がダッシュパネル31側から順に配設されており、さらにフロアパネル32とセンタフロアパネル56との境界部にはNo.3クロスメンバ53が、センタフロアパネル56とトランクフロアパン57との境界部にはNo.4クロスメンバ54がそれぞれ配設されている。
【0057】
さらに、車体の後部における車幅方向両端部には、前記フロントフロアフレーム42の後端部から後方へ延びるリアサイドフレーム142がそれぞれ配設されている。
【0058】
図10は、リアサイドフレーム142に後輪のサスペンション装置の一部を固定するためのボルト192及びその周辺の構造を示す図9のb−b線断面図であり、図11は、前記ボルト192を支持するための支持部材170を示す斜視図である。なお、図10及び図11は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0059】
図10において、リアサイドフレーム142は、その底部143のみが図示されているが、図10に示された部分において、リアサイドフレーム142は、上端に左右一対のフランジを有する断面ハット状とされている。リアサイドフレーム142の底部143の上方には、リアフレームレイン140が対向配置され、該リアフレームレイン140にリアサイドフレーム142上端の前記一対のフランジが接合されることで、閉断面が形成されている。リアフレームレイン140は、前記ボルト192の前方近傍で立ち上がるようにして段状に形成されており、該リアフレームレイン140の上面には、前記立ち上がり部の直後方において、断面ハット状のブレースブラケット138における前後一対のフランジが接合されている。
【0060】
図10に示すように、前記ボルト192は、リアサイドフレーム142の底部143及び該底部143の下面に接合されたリアフレーム130を上側から貫通して設けられ、該ボルト192の頭部が、溶接により前記支持部材170に接合されている。該支持部材170は、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底部143と、第2面部としてのリアフレームレイン140との間に配設されている。
【0061】
図10及び図11に示すように、支持部材170は、リアサイドフレーム142の上方に対向配置されて前記ボルト192を支持する支持部171と、該支持部171の前端から前方に向かって斜め下方に延びる傾斜部172と、該傾斜部172の前端から前方に延設されてリアサイドフレーム142の上面に溶接により接合される下側被接合部173とを有する。支持部171の略中央部には、前記ボルト192を挿通させるためのボルト穴168が設けられ、支持部171、傾斜部172及び下側被接合部173の各車幅方向両端にはフランジ174,175,176,177,178,179が設けられ、これらのフランジ174〜179はリアサイドフレーム142の側面部に溶接により接合される。
【0062】
また、本実施形態において、支持部材170は、補強体部180を一体に備え、該補強体部180は、前記支持部171の後端からリアフレームレイン140に向かって立ち上がる立ち上がり部181と、該立ち上がり部181の上端から後方へ延出してリアフレームレイン140の下面に接合される上側被接合部182とを有する。
【0063】
立ち上がり部181は、後方に向かって斜め上方へ傾斜して設けられている。さらに、立ち上がり部181の車幅方向両端にはそれぞれフランジ183,184が設けられており、これらのフランジ183,184は、リアサイドフレーム142の側面部にそれぞれスポット溶接により接合され、これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0064】
一方、上側被接合部182は、前記ブレースブラケット138の後側フランジとリアフレームレイン140との接合部の下方において該リアフレームレイン140の下面に接合されるようになっている。該上側被接合部182におけるリアフレームレイン140との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材200を介した接合がなされ、該接合部位が柔結合部Yとされている。
【0065】
この第2の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材170は、補強体部180を介してリアフレームレイン140の下面に接合されるため、支持部材170の動きがリアフレームレイン140により規制されることで、該支持部材170の振動を効果的に抑制することができる。
【0066】
また、第2の実施形態によれば、支持部材170は、第2面部としてのリアフレームレイン140のみならず、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底部143にも接合されているため、支持部材170の振動が一層効果的に抑制される、
【0067】
さらに、第2の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材170及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としての前記ボルト192から支持部材170を介してリアフレームレイン140及びリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0068】
[第3の実施形態]
図12〜図15を参照しながら、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態で用いられる第1又は第2の実施形態と同一の部材については、図12〜図15において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0069】
図12は、第3の実施形態が適用される車体の構造を示すものであり、図12のc−c線断面図を図13に示し、図13のd−d線断面図を図14に示し、第3の実施形態における支持部材270の分解斜視図を図15に示す。
【0070】
図13及び図14に示すように、第3の実施形態では、リアサイドフレーム142に対する、後輪のサスペンション装置の一部であるトレーリングブラケット210の取付部の構造について説明する。なお、図13及び図14は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0071】
図13及び図14に示す部分において、リアサイドフレーム142は、下向きに開放する断面ハット状とされ、上面部242と、該上面部242の車幅方向両端からそれぞれ垂下する一対の側面部243,244とを有する。リアサイドフレーム142の上面部242の下方にはリアフレームレイン240が対向配置され、該リアフレームレイン240の上面にリアサイドフレーム142の両側面部243,244の下端が接合されることで、閉断面が形成されている。
【0072】
図13に示すように、リアフレームレイン240には、トレーリングブラケット210との干渉を避けるための開口部242が設けられており、トレーリングブラケット210の前端部は、該開口部242に挿通されることでリアフレームレイン240を貫通して配設されている。図13及び図14に示すように、トレーリングブラケット210の前端部は、リアフレームレイン240の上方で且つリアサイドフレーム142の上面部242の下方において車幅方向に延設された軸212により、回転可能に支持されている。該軸212は、リアサイドフレーム142の内部において車幅方向に間隔を空けて配設された一対の軸固定部材214,215間に架設されており、これら軸固定部材214,215は前記支持部材270に固定されている。
【0073】
支持部材270は、第1面部としてのリアフレームレイン240と、第2面部としてのリアサイドフレーム142の上面部242との間に配設されており、図15に示すように、支持部材本体271と、該支持部材本体271に連結される第1及び第2の連結部材280,290とを有する。
【0074】
支持部材本体271は、リアフレームレイン240の上方に対向配置されてトレーリングブラケット210を支持する支持部272と、該支持部272の前端から垂下する前面部276と、支持部272の後端から垂下する後面部275とを有する。支持部272の略中央部には、トレーリングブラケット210の前端部との干渉を回避するために上方へ膨出した膨出部273が設けられている。また、支持部272の後端部には、後方へ突出した半円状の突出部274が設けられ、該突出部274の下方において、前記後面部275は、平面視において突出部274の外縁形状に合致した半円形となっている。図14に示すように、支持部272の下面には、膨出部273を挟んだ車幅方向両側において、前記軸固定部材214,215が例えばボルト216,217により固定されており、これにより、支持部材270は、軸固定部材214,215及び軸212を介してトレーリングブラケット210を支持するようになっている。
【0075】
さらに、支持部材本体271の車幅方向両端部には一対のフランジ277,278が設けられ、各フランジ277,278は、支持部272の車幅方向両端から上方へ且つ前面部276の車幅方向両端から前方へそれぞれ延びるように設けられ、リアサイドフレーム142の各側面部243,244にそれぞれ溶接により接合されるようになっている。
【0076】
第1の連結部材280は、リアフレームレイン240の上面に接合される下側被接合部282と、該下側被接合部282の後端から立ち上がる立ち上がり部281と、該立ち上がり部281の上端から後方へ延設された上側被接合部283とを有する。
【0077】
該上側被接合部283は、リアサイドフレーム142の上面部242の下面に接合されるようになっており、これにより、第1の連結部材280が補強体として機能するようになっている。上側被接合部283におけるリアサイドフレーム142との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材299を介した接合がなされ、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0078】
また、第1の連結部材280において、立ち上がり部281の車幅方向両端には、それぞれ前方へ延びる一対のフランジ284,285が設けられ、各フランジ284,285は、リアサイドフレーム142の各側面部243,244と、支持部材本体271の各フランジ277,278の前端部とに対して、スポット溶接により接合されるようになっている。さらに、立ち上がり部281の後面は、支持部材本体271の前面部276にスポット溶接により接合され、これにより、第1の連結部材280が支持部材本体271に連結されるようになっている。これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0079】
第2の連結部材290は、リアフレームレイン240の上面に接合される下側被接合部296と、該下側被接合部296の前端から立ち上がる立ち上がり部291と、該立ち上がり部291の上端から前方へ延設された上側被接合部293とを有する。
【0080】
該上側被接合部293は、リアサイドフレーム142の上面部242の下面に接合されるようになっており、これにより、第2の連結部材290は補強体として機能するようになっている。上側被接合部293におけるリアサイドフレーム142との接合部では、振動減衰部材としての粘弾性部材300を介した接合がなされ、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0081】
また、第2の連結部材290において、立ち上がり部291の車幅方向両端には、それぞれ後方へ延びる一対のフランジ294,295が設けられ、各フランジ294,295は、リアサイドフレーム142の各側面部243,244にスポット溶接により接合されるようになっている。さらに、立ち上がり部291の下部には、支持部材本体271の前記突出部274の形状に合致した半円形の凹部292が、後方へ凹入して設けられている。この第2の連結部材290は、前記凹部292に支持部材本体271の突出部274が嵌合した状態で、立ち上がり部291の前面に支持部材本体271の後面部275の後面がスポット溶接により接合されることで、支持部材本体271に連結されるようになっている。これらの溶接部位は、互いに当接した状態で結合された剛結合部Xとされている。
【0082】
この第3の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材270は、補強体としての第1及び第2の連結部材280,290を介してリアサイドフレーム142の上面部242に接合されるため、支持部材270の動きがリアサイドフレーム142により規制されることで、該支持部材270の振動を効果的に抑制することができる。
【0083】
また、第3の実施形態によれば、支持部材270は、第2面部としてのリアサイドフレーム142の上面部242のみならず、第1面部としてのリアフレームレイン240にも接合されているため、支持部材270の振動が一層効果的に抑制される、
【0084】
さらに、第3の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材270及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としてのトレーリングブラケット210から支持部材270を介してリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0085】
[第4の実施形態]
図16〜図19を参照しながら、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態で用いられる第1〜第3の実施形態と同一の部材については、図16〜図19において同符号を付すとともに、既述の構成の説明を省略する。
【0086】
図16は、第4の実施形態が適用される車体の構造を示すものである。図16に示すように、車体後部において、No.4クロスメンバ54の後方には、No.4.5クロスメンバ58が、左右のリアサイドフレーム142間に跨って車幅方向に延設されている。
【0087】
図17は、図16のe−e線断面図を示し、図18は、図17のf−f線断面図を示し、図19は、第4の実施形態における支持部材380及び補強体390の斜視図を示す。
【0088】
図17及び図18に示すように、第4の実施形態では、リアサイドフレーム142に対する、後輪のサスペンション装置の一部を取り付けるためのメンバーブラケット320の取付部の構造について説明する。なお、図17及び図18は、右側のリアサイドフレーム142における構造を示しているが、左側のリアサイドフレーム142の構造も同様である。
【0089】
図17及び図18に示す部分において、リアサイドフレーム142は、上向きに開放する断面ハット状とされ、底面部302と、該底面部302の車幅方向両端からそれぞれ立ち上がる一対の側面部304,306とを有する。なお、リアサイドフレーム142の底面部302の上面には補強板310が重ねて接合されている。
【0090】
リアサイドフレーム142の底面部302の上方にはリアフレームレイン140が対向配置され、該リアフレームレイン140の下面にリアサイドフレーム142の両側面部304,306の上端が接合されることで、閉断面が形成されている。
【0091】
メンバーブラケット320は、リアサイドフレーム142の底面部302の下面にボルト340により固定されている。該ボルト340は、リアサイドフレーム142の底面部302とメンバーブラケット320とを貫通して設けられ、前記補強板310の上面に重ねられた上側のナット344と、メンバーブラケット320の下面に重ねられた下側のナット346とによって締め付けられている。また、該ボルト340の頭部は前記支持部材380により支持されている。
【0092】
図19に示すように、支持部材380は、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底面部302と第2面部としてのリアフレームレイン140との間に配設される支持部381と、該支持部381の前端から垂下する前面部382と、支持部381の後端から垂下する後面部383とを有する。
【0093】
また、前面部382の車幅方向両端には、前方へ延びる一対のフランジ384,388が設けられ、各フランジ384,388は、リアサイドフレーム142の各側面部304,306に溶接により接合されている。さらに、前面部382の下端にも、前方へ延びるフランジ386が設けられ、該フランジ386は前記補強板310の上面に溶接により接合されている。
【0094】
一方、後面部383の車幅方向両端には、後方へ延びる一対のフランジ385,389が設けられ、各フランジ385,389は、リアサイドフレーム142の各側面部304,306に溶接により接合されている。また、後面部383の下端にも、後方へ延びるフランジ387(図17参照)が設けられ、該フランジ387は前記補強板310の上面に溶接により接合されている。
【0095】
この支持部材380は、前記補強体390を介して、第2面部としてのリアフレームレイン140に接合されるようになっている。補強体390は、リアフレームレイン140の下面に接合される被接合部391と、該被接合部391の前端から垂下する前面部392と、被接合部391の後端から垂下する後面部393とを有し、全体として側面視コ字形となっている。該補強体390は、被接合部391が支持部材380の前記支持部381の上方に間隔を空けて配置されるようにして支持部材380に接合されている。
【0096】
具体的には、補強体390の前面部392が支持部材380の前面部382の前面に、補強体390の後面部393が支持部材380の後面部383の後面にそれぞれスポット溶接により接合され、該接合部位が剛結合部Xとされている。
【0097】
一方、補強体390の被接合部391とリアフレームレイン140とは、振動減衰部材としての粘弾性部材400を介して接合され、該接合部位は柔結合部Yとされている。
【0098】
この第4の実施形態に係る車体構造によれば、支持部材380は、補強体390を介してリアフレームレイン140に接合されるため、支持部材380の動きがリアフレームレイン140により規制されることで、該支持部材380の振動を効果的に抑制することができる。
【0099】
また、第4の実施形態によれば、支持部材380は、第2面部としてのリアフレームレイン140のみならず、第1面部としてのリアサイドフレーム142の底面部302にも接合されているため、支持部材380の振動が一層効果的に抑制される、
【0100】
さらに、第4の実施形態によれば、上記の剛結合部Xによって支持部材380、補強体390及びリアサイドフレーム142の変形や型崩れ等が抑制されると共に、柔結合部Yによって、サスペンション構成部材としてのボルト340から支持部材380及び補強体390を介してリアフレームレイン140及びリアサイドフレーム142に伝達される振動が減衰されて、車室内の乗員への振動の伝達が抑制されることになる。
【0101】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0102】
例えば、上述の実施形態では、溶接により剛結合部が構成される場合について説明したが、本発明において、剛結合部は、溶接に限られるものでなく、ボルト締め等により構成されるようにしてもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、補強体と第2面部との接合部にのみ柔結合部Yを設ける場合について説明したが、本発明では、補強体と第2面部以外の部材との接合部にも柔結合部Yを設けるようにしてもよい。
【0104】
さらに、上述の実施形態では、補強体と該補強体以外の部材との各接合部において、剛結合部X又は柔結合部Yの一方のみを設ける場合について説明したが、本発明では、1つの接合部に、剛結合部Xと柔結合部Yの両方を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明によれば、サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向する第2面部との間に配設された支持部材により、前記サスペンション構成部材が支持される場合において、前記支持部材の振動を抑制することが可能となるから、この種の支持部材を有する車体の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0106】
1:第1部材、2:第2部材(第1面部)、3:閉断面部、4:中空フレーム、8:補強体、9:減衰部材、10:支持部材、11:第2面部、31:ダッシュパネル、32:フロアパネル、36:ロアアーム、38:ロアアームブラケット、42:フロントフロアフレーム、53:No.3クロスメンバ、54:No.4クロスメンバ、57:トランクフロアパン、58:No.4.5クロスメンバ、70:支持部材、80:補強体、90:ナット、92:ボルト、100:粘弾性部材、140:リアフレームレイン140、142:リアサイドフレーム、170:支持部材、180:補強体部、192:ボルト、200:粘弾性部材、210:トレーリングブラケット、240:リアフレームレイン、270:支持部材、271:支持部材本体、280:第1の連結部材、290:第2の連結部材、299,300:粘弾性部材、320:メンバーブラケット、380:支持部材、390:補強体、400:粘弾性部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対するサスペンション構成部材の取付部における車両の車体構造であって、
前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、
該第1面部に対向配置された第2面部と、
前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材を支持する支持部材と、を備え、
該支持部材は、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記第1面部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記第1面部と前記第2面部とを繋ぐことで該第1及び第2面部と共に閉断面を形成する少なくとも1つの第3面部を備え、
該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記補強体と該補強体以外の部材との接合部は、互いに当接した状態で結合された剛結合部と、減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
前記柔結合部は、前記補強体と前記第2面部との接合部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両の車体構造。
【請求項6】
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の車体構造。
【請求項7】
車体に対するサスペンション構成部材の取付部において、前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向配置された第2面部と、前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材が接合される支持部材と、を備える車両の車体構造を製造する方法であって、
前記支持部材を、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合することを特徴とする車両の車体構造の製造方法。
【請求項1】
車体に対するサスペンション構成部材の取付部における車両の車体構造であって、
前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、
該第1面部に対向配置された第2面部と、
前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材を支持する支持部材と、を備え、
該支持部材は、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記第1面部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記第1面部と前記第2面部とを繋ぐことで該第1及び第2面部と共に閉断面を形成する少なくとも1つの第3面部を備え、
該第3面部に前記支持部材または前記補強体の少なくとも一方が接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記補強体と該補強体以外の部材との接合部は、互いに当接した状態で結合された剛結合部と、減衰部材を介して結合された柔結合部とを有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
前記柔結合部は、前記補強体と前記第2面部との接合部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車両の車体構造。
【請求項6】
前記減衰部材は粘弾性部材であり、
その物性が、X軸に貯蔵弾性率を、Y軸に損失係数をとったX、Y座標系における座標(1、0.4)、(1、0.2)、(2、0.1)、(1000、0.1)、(10000、0.2)、(10000、0.4)で示される6点で囲まれたこれらの点を含む範囲内、又は損失係数0.4を超える範囲に属することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の車体構造。
【請求項7】
車体に対するサスペンション構成部材の取付部において、前記サスペンション構成部材が貫通する第1面部と、該第1面部に対向配置された第2面部と、前記第1面部と前記第2面部との間に配設されるとともに前記サスペンション構成部材が接合される支持部材と、を備える車両の車体構造を製造する方法であって、
前記支持部材を、該支持部材と一体または別体の補強体を介して前記第2面部に接合することを特徴とする車両の車体構造の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−49379(P2013−49379A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189062(P2011−189062)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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