説明

車両の車体構造

【課題】全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供する。
【解決手段】本発明によれば、車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシル6と、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロアと、車室フロア上に設けられた運転席及び同乗席と、これらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造であって、運転席は車幅方向のほぼ中央に配置された中央座席62であり、同乗席は運転席を挟むように運転席の車幅方向左右両側にそれぞれ配置された左右座席64、66であり、少なくとも運転席の運転者の足置き場となる第1フロア70と、この第1フロアよりも上方に膨出すると共に車両前後方向に延びるフロアトンネル部72と、を有し、このフロアトンネル部は車幅方向中央部に対し左側或いは右側にオフセットして配置され、このフロアトンネル部の下部に排気系部材35が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に係り、特に、車幅方向に並ぶ3人分の座席とこれらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界においては、以前にも増して、燃費をより向上させることが要望されている。そのため、従来に比べさらに小型な車の必要性が高まってきている。
なお、前後のシートを3座づつ車幅方向に並べて乗員を乗せることが出来る車が以前から知られている(例えば特許文献1に記載の車両など)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−066959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、上述した小型車両の要望に対し、使用目的を都市内での1〜3人での移動に特化した、つまり街乗り車(シティカー)について検討を行っている。さらに、このような街乗り車において、全長を例えば3m以下というように短くすることによって車体質量を大幅に軽減し、これによって燃費を向上させた車の実現性を検討している。
【0005】
そして、全長を短くするという制約内でいかに乗員を搭載するかを考えたとき、本発明者らは、3座のシートを車幅方向に並べ、その代わりに後席を無くせば、全長が短く且つ都市内移動に必要十分と考えられる最大3人乗車で数十分間の快適な移動が可能な車室内空間を有する街乗り用車両の実現性が高まるであろうことに着目した。
【0006】
一方、本発明者らは、全長をより確実に短くするために、車体の構造或いは各部のレイアウトを見直す必要に迫られていた。例えば、車幅方向に3座のシートを並べるために車両の横幅をむやみに大きくすることは、車重の増加や車両の取り回しの悪化につながってしまうことが問題となる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明によれば、車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシルと、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロアと、車室フロア上に設けられた運転席及び同乗席と、これらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造であって、運転席は車幅方向のほぼ中央に配置された中央座席であり、同乗席は運転席を挟むように運転席の車幅方向左右両側にそれぞれ配置された左右座席であり、少なくとも運転席の運転者の足置き場となる第1フロアと、この第1フロアよりも上方に膨出すると共に車両前後方向に延びるフロアトンネル部と、を有し、このフロアトンネル部は車幅方向中央部に対し左側或いは右側にオフセットして配置され、このフロアトンネル部の下部に排気系部材が配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明による車両の車体構造においては、フロアトンネル部は車幅方向中央部に対し左側或いは右側にオフセットして配置されているので、車幅方向のほぼ中央に配置された運転席の足もとの空間を有効に確保することが出来る。つまり、車幅方向のほぼ中央に配置された運転席の下方にフロアトンネルを設けないようにオフセットすることにより、運転者の膝下空間を有効に確保することが出来るのである。このようにして、運転者がブレーキやアクセルなどのペダルの踏み込み操作を支障なくできるよう、フロア上に十分な深さと奥行きを確保することが出来る。また、車室フロア上には、車幅方向のほぼ中央に配置された運転席と、この運転席を挟むように左右両側にそれぞれ配置された左右座席とが設けられ、これらの3座席の後方に荷室を設け、さらに、フロアトンネルの下部空間に排気系部材を配置しているので、車室内空間及び車体下部の空間を有効に利用することが出来、その結果、全長が短い3座シートの車両の車体構造を効果的に得ることが出来る。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、オフセットして配置されたフロアトンネル部は、そのオフセットした側のサイドシルに結合されており、さらに、ほぼ平らな上面部を有する。
このように構成された本発明においては、オフセットして配置されたフロアトンネル部がそのオフセットした側のサイドシルに結合されているので、車体強度を高めることが出来る。また、フロアトンネル部はほぼ平らな平面部を有するので、同乗席の乗員の足置き場として有効に利用できると共に、その下部空間に排気系部材を有効に配置し易くなる。
【0010】
また、本発明において、好ましくは、フロアトンネルの上面部の車幅方向外縁部がサイドシルに結合されている。
このように構成された本発明においては、フロアトンネルの上面部の車幅方向外縁部がサイドシルに結合されているので、フロアトンネルの下部空間を有効に確保することが出来る。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、さらに、第1フロアの後方に連続して形成されると共に第1フロアより一段高くなるように形成された車幅方向に延びる第2フロアを有し、この第2フロアの上面部に、運転席及び同乗席が配置され、この第2フロアの下部に燃料タンク及び/又はバッテリが配置されている。
このように構成された本発明においては、第1フロアの後方に連続して形成されると共に第1フロアより一段高くなるように形成された車幅方向に延びる第2フロアの上面部に運転席及び同乗席が配置され、この第2フロアの下部に燃料タンク及び/又はバッテリが配置されているので、第2フロアの上方及び下方の空間を有効に利用することが出来、その結果、より確実に、全長が短い3座シートの車両の車体構造を得ることが出来る。
【0012】
また、本発明において、好ましくは、フロアトンネル部は第2フロアに結合されて、フロアトンネル部と第2フロアとにより平面視でほぼL字状のフロア領域が形成され、このL字状のフロア領域の下部に排気系部材と、燃料タンク及び/又はバッテリとが配置されている。
このように構成された本発明においては、フロアトンネル部と第2フロアとにより平面視でほぼL字状のフロア領域が形成されているので、排気系部材や燃料タンク等の配置の自由度が高まる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、同乗席は、中央に配置された運転席に対して側面視で後方側にオフセットすると共に運転席をなす中央座席に対して側面視で後方側に位置すると共に平面視で座席の前部が中央座席とは離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向するように変位可能である。
このように構成された本発明においては、左右座席の少なくとも一方の座席に着座した同乗者の足の太股及び肩部を、中央座席に着座した運転者から遠ざけることが出来るので、より効果的に、運転者の運転動作を妨げることなく、乗員を車室内に有効に配置することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、全長が短い3座シートの車両の車体構造を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す平面図であり、図2は、本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す側面図であり、図3は、本発明の一実施形態の主にフロア部の構造及びエンジンやサイレンサ等のレイアウトを説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、車両1は、車輪2を有し、図1に示すように、後輪側ではホイールハウス4が車室内に突出している。車両の左右両側には、前輪及び後輪の間で車体前後方向に延びるサイドシル6が形成されている。また、前後車輪間には、左右それぞれにサイドドア8が設けられている。
【0016】
図3に示すように、車両1は、ダッシュパネル10、ダッシュロワパネル12、サイドシル6、ダッシュロワパネル12の左右両側部から上方に延びるAピラー14、サイドシル6の後端部から上方に延びるBピラー16、Cピラー18、ホイールハウス4、フロア部20などで構成されている。フロア部20の構成については後述する。
【0017】
図1及び図2に示すように、車両の前方側には、フロントウインド22及びインストルメントパネル(以下、インパネと称する)24が設けられている。インパネ24の車幅方向中央部からは、ステアリングコラム26が延び、その先端部にステアリングホイール28が取り付けられている。
【0018】
図1及び図3に示すように、車両1のエンジンルームには、4気筒のエンジン29、トランスミッション30、デファレンシャル31が配置されている。そして、エンジン29の車体前後方向のすぐ後方には、エンジンのそれぞれの排気ポートから延びるエキゾーストパイプ32を介して触媒装置33が設けられ、この触媒装置32から排気管34aが延びている。この排気管34aは、平面視で、車幅方向左側後方に向かって延び、排気系部材の一部であるサイレンサ35に接続されている。このサイレンサ35からは、後方に向けて排気管34bがさらに延びている。
また、フロア部20の下方には、平面視でL字状に延びる燃料タンク36が設けられており、その燃料タンク36からは、車両斜め上方且つ車幅方向外方に向けてフィラーパイプ37が延びており、左側面から給油可能となっている。
【0019】
また、フロア部20の下方には、リアサスペンション40が配置されている。このリアサスペンション40を図4に示す。図4に示すように、リアサスペンション40は、トーションビーム式サスペンションとなっており、主に、車体に取り付けられるピボット部42、ピボット部42と車輪との間で延びるアーム部44、各アーム部の中間部同士を連結するように車幅方向に延びるトーションビームアクスル46、ショックアブソーバ48及び全体としてほぼ垂直方向に延びるコイルスプリング50で構成されている。
なお、図1及び図2に示すように、車体前後方向に延びる排気管34は、車幅方向に延びるトーションビームアクスル46との干渉を防ぐために、トーションビームアクスル46をまたぐように上方に山なりに延びて形成されている。
【0020】
ここで、図1及び図3により、車体前方側での車体フレームの構造を説明する。
先ず、図1に示すように、車両1の車体前方側には、No.1クロスメンバ52が設けられている。図1及び図3に示すように、このNo.1クロスメンバ52の左右両端部から後方に向けて車体前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム54が設けられている。図1に示すように、これらのフロントサイドフレーム54の後端部は、それぞれ、連結部材56を介してサイドシル6に結合されている。また、フロントサイドフレーム54の後端部は、フロントサイドフレーム54から真っ直ぐ後方に延びるフロアサイドフレーム58の前端部に結合されている。
【0021】
フロアサイドフレーム58の後端部は、車幅方向に延びるNo.2クロスメンバ59に結合されている。なお、なお、No.2クロスメンバ59は、上方に開口した断面ハット状の形状(図示せず)を有し、その上部の左右両側に形成されたフランジ部(図示せず)が、第2フロア76のキックアップ部78の下方部分に結合され且つ一体となったフレームとして構成されている。図3に示すように、エンジン29は、フロントサイドフレーム54に取り付けられたエンジンマウント60により支持されている。
【0022】
次に、図1及び図3により、フロア部20の構造を説明する。
次に、図3に示すように、フロア部20は、先ず、第1フロア70を有する。第1フロア70は、車体前後方向には、ダッシュロワパネル12の後縁部から、後述する第2フロア76のキックアップ部78の前縁部まで延び、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。
【0023】
図1乃至図3に示すように、この第1フロア70には、車幅方向の左側位置において車体前後方向に延びるフロアトンネル72が形成されている。このフロアトンネル72は、上方に膨出して形成されており、その前縁部がダッシュロワパネル12に接続され、後縁部がキックアップ部78に接続されると共に第2フロア上面部80と同じ高さに形成されている。また、フロアトンネル72は、左側のサイドシル6と結合されている。図1に示すように、排気管34aは、図7に示すようにフロアサイドフレーム58の下部を通って車幅方向外方に向けてフロアトンネル72の内方(下部)まで延びている。排気管34aの後端部はサイレンサ35の側部に接続され、そのサイレンサ35の後方から排気管34bが車体後方に向けて、フロアトンネル72の内方(下部)を通って延びている。なお、このようなフロアトンネル72は、車幅方向右側に設けても良い。
【0024】
ここで、図5乃至図7により、フロアトンネル72の断面構造、フロアトンネル72のサイドシル6への結合構造、サイレンサ35の配置などについて説明する。図5は、図1のA−A線に沿った一部断面を含む車体前方側の構造を示す斜視図であり、図6は、図1のA−A線に沿ったフロアトンネル及びサイドシルの断面を示す断面図であり、図7は、図1のB−B線に沿って見たフロアサイドフレーム及び排気管の断面を示す斜視図である。
【0025】
先ず、図5及び図6に示すように、フロアサイドフレーム58は、車幅方向において、一方の縁部が第1フロア70の下部に結合され、他方の縁部がフロアトンネル72の下部に結合されて、閉断面を形成している。
図5及び図7に示すように、フロントサイドフレーム54の後端部は下方に湾曲している。フロアサイドフレーム58は、これらのフロントサイドフレーム54の後端部に接合され、フロントサイドフレーム54の後方で車体前後方向に延びている。
【0026】
図5及び図6に示すように、フロアトンネル72の車幅方向外方縁部は、サイドシルインナ6aに結合されている。より詳細に説明すると、フロアトンネルの上面部72aはほぼ平らに形成されており、その上面部72aの車幅方向外方縁部が上方に折り曲げられ、その折り曲げられた辺の部分が、サイドシルインナ6aの車幅方向内方側面に溶接により結合されている。
なお、サイドシル6は、サイドシルインナ6a、サイドシルアウタ6b及びサイドシルレインフォースメント6cで構成され、サイドシルインナ6a及びサイドシルアウタ6bで閉断面を形成している。
【0027】
図5及び図6に示すように、サイレンサ35は、フロアサイドフレーム58とサイドシル6との間で、且つ、フロアトンネル72の内方の空間に配置されている。サイレンサ35の車体前後方向の後方側からは、排気ガスを流出させるための排気管34bが延びている。
ここで、図1及び図3に示すように、サイレンサ35に排気ガスを流入させる側の排気管34aは、サイレンサ35の車幅方向内方側の側面に接続されている。この場合、図7に示すように、排気管34aがフロアサイドフレーム58と干渉しないように、フロアサイドフレーム58には、排気管34aを車幅方向に通すための凹部58aが形成されている。
【0028】
再び、図3により、フロア部20の構造の説明をする。
フロア部20は、第2フロア76を有する。この第2フロア76は、主に、キックアップ部78及び上面部80で構成されている。キックアップ部78は、第1フロア70から連続するように形成され、第1フロア70の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。キックアップ部78は、車幅方向には、右側のサイドシル6とフロアトンネル72との間で延びている。
【0029】
この第2フロア上面部80には、このキックアップ部78の上縁部から連続して後方に延び、ほぼ平らに形成された平面部82と、上面部80の車体前後方向の途中の部分から第3フロア84にかけて傾斜して延びるスロープ部83とが形成されている。これらのうち、平面部82の後縁部は、後述する第3フロア84のキックアップ部86の前縁部まで延び、車幅方向には各サイドシル6間で延びている。第2フロア76の下部空間には、主に燃料タンク36が配置されている。
【0030】
本実施形態では、第2フロア上面部80とフロアトンネル上面部72aとが、同一平面内に形成されている。つまり、側面視では、第2フロア上面部80とフロアトンネル上面部72aとが同一線上にある。また、図1及び図3に示すように、第2フロア上面部80とフロアトンネル上面部72aとで、ほぼL字状のフロア領域が形成されるようになっている。
【0031】
そして、図1乃至図3に示すように、サイレンサ35及び燃料タンク36が、このL字状のフロア領域の下部空間に配置されている。より詳細には、サイレンサ35がL字状の1辺部の下部に配置され、燃料タンク36はL字状に延びて配置されている。なお、図3に示すように、燃料タンク36の下部には、排気管34bを通すための凹部が形成されている。
【0032】
スロープ部83は、ほぼ平面状に形成されている。なお、そのスロープ面を平面状ではなく、側面視で湾曲するように形成しても良い。スロープ部83の後縁部は、第3フロア上面部88の車体前後方向の途中の部分まで延びている。このスロープ部83は、平面視では、前方から後方にかけて、ホイールハウス4を避けるように、車幅方向内方に向かうように湾曲して形成されている。
【0033】
次に、フロア部20は、第3フロア84を有する。この第3フロア84は、主に、キックアップ部86及び上面部88で構成されている。キックアップ部86は、第2フロア上面部80から連続して、第2フロア上面部80の後縁部から上方に立ち上がるように形成されている。また、この第3フロア上面部88は、このキックアップ部86の上縁部から連続して後方に延びている。この上面部88は、車両の後縁部まで延びている。
【0034】
ここで、図1及び図2に示すように、車両1の後方には、車体前後方向に延びるリアサイドフレーム90が設けられており、キックアップ部86はこれらのリアサイドフレーム90の間で車幅方向に延びている。各リアサイドフレーム90は、本実施形態では、その前端部の車外側の側面部が各サイドシル6の後端部の車幅方向内方側の側面部と結合されている。
【0035】
また、リアサイドフレーム90は、上方に開口した断面ハット状の形状(図示せず)を有し、その上部の左右両側に形成されたフランジ部(図示せず)が、後方から順に第3フロア88、キックアップ部86及び第2フロア上面部80のそれぞれの下面部に結合され且つ一体となったフレームとして構成されている。上述したトーションビーム44のピボット部42は、図2に示すように、リアサイドフレーム90の下面部にブラケット43を介して固定されている。
【0036】
次に、図1乃至図3、及び、図8により各座席の配置について説明する。図8は、本発明の車両の構造の一実施形態を示す斜視図である。
先ず、図1及び図8に示すように、車両1には、車幅方向に並ぶ3つの座席(シート)62、64、66が設けられている。本実施形態において、車幅方向中央の座席62は、ステアリングホイール28に対向して設けられた運転席となっている。その右隣及び左隣には、隣接して同乗者用の左右座席64、66が設けられている。
この図1や図8に示す状態(第1状態)において、左側座席64及び右側座席66は、第2フロア76上で且つ上述したスロープ部83の上方に設けられている。また、左側座席64及び右側座席66は、ホイールハウス4の前方でホイールハウス4と干渉しない位置に設けられている。
【0037】
図1、図2及び図8に示すように、これらの座席62、64、66は、いずれも、第2フロア76の上面部80に設けられている。ここで、図2に示す乗員モデルは、中央座席(運転席)62に着座した乗員モデルA、及び、左側座席64に着座した乗員モデルBを示している。乗員モデルAで表されているように、中央座席62に着座した乗員は、第1フロア70に足を置くことになる。なお、右側座席66に着座した乗員の同様に第1フロア70に足を置くことになる。一方、乗員モデルBで表されているように、左側座席64に着座した乗員は、第1フロア70のフロアトンネル72に足を置くようになっている。これらのように、第1フロア70は足載置部として形成されている。
【0038】
通常、このように乗員が足を載置するフロアは、乗員の膝下の空間を拡大できるように、その車体上下方向の位置が低いことが好ましい。特に運転席では、運転者がブレーキやアクセルなどのペダルの踏み込み操作を支障なくできるよう、十分な深さと、ダッシュパネル(ダッシュロワパネル)までの奥行きを確保しなければならない。一方で、フロア下では排気系部材を車体後方まで通さなければならないので、低い位置に延在するフロアには、従来、車幅方向中央部に車体前後方向に延びるフロアトンネルが設けてある。
【0039】
本発明は、このようなフロアトンネルを車幅方向左側或いは右側の位置にオフセットしている。一方、本発明は、座席を車幅方向に3つ並べた三座配置とし、その後方に荷室空間を設けたことにより車体の短縮化を図っている。そして、運転席62を車幅方向中央に、同乗者席64、66をその左右両側に配置している。
このような車両パッケージングにおいて、フロアトンネルを車幅方向左側或いは右側にオフセットした本発明によれば、車幅方向中央に配置した運転席62の膝下空間を従来の左右配置の運転席と同一或いはそれ以上に確保することと、排気管を前後方向に通す空間を確保することの両立を図ることが出来る。これは、フロアトンネル72をオフセットした側と反対側に配置された同乗者席(本実施形態では同乗者席66)においても同様である。
【0040】
もっとも、フロアトンネル72がオフセットされた側の同乗者席の乗員の膝下空間は小さくなる。本実施形態では、右側レーン走行を想定して、フロアトンネル72を左側にオフセットさせており、この場合、左側同乗者席64の膝下空間が小さくなる。このように本実施形態では、フロアトンネルが下方に存在する同乗者席64を、歩道側からの乗車機会の少ない車道側(右側レーン走行であれば左側(本実施形態が相当)、左側レーン走行であれば右側)に配置している。従って、より必要性の高い座席(右側レーン走行であれば右側座席(66)(本実施形態が相当)、左側レーン走行であれば左側座席)及び中央の運転席62のそれぞれの乗員について、十分な膝下空間をもった2名乗車の状態を実現することが出来る。
【0041】
次に、図2に示すように、第2フロア76及びフロアトンネル72の下部には、燃料タンク34が配置されており、それらの下部空間を有効に利用している。なお、ハイブリット車の場合には、このような燃料タンクと共にバッテリを配置し、また、電気自動車の場合には、燃料タンクの代わりにバッテリを配置するようにしても良い。
【0042】
次に、本発明の実施形態において、第3フロア84の上方の空間且つ各座席60、62、64の後方側の空間は、荷室空間となっている。一方、第3フロア84の下部には、上述したリアサスペンション40及びサイレンサ32が配置されており、第3フロア84の下部空間を有効に利用している。
【0043】
以上述べたような構成、例えば、車幅方向一列の座席62、64、66を、足もとフロア(第1フロア70)より高い第2フロア76に配置し、その下方に燃料タンク34(及び/又はバッテリ等)を配置しているので、車室空間及び車体下部の空間を有効に利用して、全長のより短い車両を得ることが出来る。この場合、例えば、第2フロア76を車体前後方向の中央部に寄せることによりヨーモーメントを低減することが出来る、などのメリットもある。
さらに、足もとフロア(第1フロア70)より高い第2フロア76に座席62、64、66を配置しているので、シート脚の必要高さを低減することが出来る。この場合、車両の軽量化にもつながる。
【0044】
次に、図1、図2、図8乃至図11により、シートの変位状態について説明する。図9、図10及び図11は、それぞれ、図1、図2及び図8に対応する平面図、側面図及び斜視図であり、いずれも、左側座席及び右側座席が図1、図2及び図8に示す第1位置に対して斜め方向に向くと共に後方且つ上方に変位した第2位置での状態を示す図である。
本発明の実施形態においては、左右座席64、66が、スライドレール機構(図示せず)により、平面視で、スロープ部83に沿って車体前後方向且つ車幅方向に斜めに変位すると共に、側面視で、車両上下方向に変位するようになっている。ここでは先ず、図1、図2及び図8により、左右座席64、66が、第1位置(前方且つ下方の位置、第1状態)にある場合について説明する。
【0045】
図1、図2及び図8に示すように、左右座席64、66が第1位置にある場合、それらの座席シート64、66のシートクッションの前縁部64a、66aの車体前後方向の位置が、中央シート(運転席シート)62のシートクッションの前縁部62aと一致している。また、各シートクッションの前縁部62a、64a、66aは、第2フロア76のキックアップ部78と平面視で同じ位置にある。
【0046】
同様に、図2及び図8に示すように、第1位置では、左右座席64、66の座席シートのシートクッションの座面64b、66bの高さが、中央シート62のシートクッションの座面62bと一致している。同様に、図1及び図8に示すように、第1位置では、その座席シートのシートバック64c、66cの位置が、中央シート62のシートバック62cと一致している。
【0047】
一方、同乗者用の左右座席64、66のシートクッションの座面64b、66b及びシートバック64c、66cは、それらの車幅方向の幅が、運転席である中央シート62の座面62b及びシートバック62cの幅より小さくなっている。
このような左右座席64、66を第1位置に配置することにより、例えば、左右座席64、66に乗員が着座しない場合や小さい子供が着座する場合などには、荷室の容量を大きくかせぐことが出来る。また、そのような左右座席64、66に物を置くことも出来る。
【0048】
次に、図9、図10及び図11により、左右側座64、66が、第2位置(後方且つ上方の位置、第2状態)にある場合について説明する。
左右座席64、66は、上述した第1位置から上述したスロープ部83に沿って、図9、図10及び図11に示すような第2位置まで変位する。
この第2位置では、左右座席64、66は、図10及び図11に示すように運転席をなす中央座席に対して側面視で後方側且つ上方側に位置すると共に、図9及び図11に示すように平面視で座席の前部が中央座席と離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向している。
【0049】
具体的には、図9及び図11に示すように、左右座席64、66のシートクッションの前縁部64a、66aの車体前後方向の位置は、中央シート62のシートクッションの前縁部62aよりも後方側になっている。この場合、左右座席64、66は、側面視でホイールハウス4と重なる位置まで後方に下げられている。
同様に、図10及び図11に示すように、第2位置では、左右座席64、66のシートクッションの座面64b、66bの高さ位置が、中央シート62のシートクッションの座面62bの高さ位置よりも高い位置となっている。
【0050】
同様に、図9、図10及び図11に示すように、第2位置では、左右座席64、66のシートバック64c、66cの位置が、中央シート62のシートバック62cより後方且つ上方になっている。さらに、平面視で、左右座席64、66のシートクッションの前縁部64a、66a及びシートバック64c、66cが延びる方向が、中央座席62のシートクッションの前縁部62a及びシートバック62cが延びる方向と一致せず、中央シート62の前縁部62a及びシートバック62cに対して斜め後方に向けて延びている。
【0051】
このように本発明の実施形態においては、左右座席64、66が、中央座席62と車幅方向に連続して一致する第1状態と、左右座席64、66が、中央座席62よりも後方且つ高い位置にあると共に車幅方向外方に向けて斜めに配置された第2状態の間で変位可能に構成されている。
そして、左右座席64、66を、上述したように中央座席62よりも後方且つ高い位置に配置可能にすると共に座席自体を斜めに向けることにより、左右座席64の乗員Bと、運転席62の乗員Aとの肩や股(もも)の干渉を、前後方向のみならず上下方向及び車幅方向においても回避することが出来る(図10及び図11参照)。特に、太股の干渉をより確実に回避することが出来る。
【0052】
また、左右座席64、66は、側面視でホイールハウス4と重なる位置まで後方に下げられるが、左右座席64、66の座席自体を斜めに向けることにより、左右座席64、66とホイールハウス4との干渉を防止することが出来る。
図10に示すように、このような第2位置では、中央座席に着座した乗員Bは、その足を第2フロア76の上面部80に置くようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明の車両の車体構造の一実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の主にフロア部の構造を説明するために車体構造の一部を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態によるリアサスペンションを示す斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿った一部断面を含む車体前方側の構造を示す斜視図である。
【図6】図1のA−A線に沿ったフロアトンネル及びサイドシルの断面を示す断面図である。
【図7】図1のB−B線に沿って見たフロアサイドフレーム及び排気管の断面を示す斜視図である。
【図8】本発明の車両の構造の一実施形態を示す斜視図である。
【図9】図1に対応する平面図であり、左右座席が図1、図2及び図5に示す第1位置に対して斜め方向に向くと共に後方且つ上方に変位した第2位置での状態を示す図である。
【図10】図2に対応する側面図であり、左右座席が図1、図2及び図5に示す第1位置に対して斜め方向に向くと共に後方且つ上方に変位した第2位置での状態を示す図である。
【図11】図8に対応する斜視図であり、左右座席が図1、図2及び図5に示す第1位置に対して斜め方向に向くと共に後方且つ上方に変位した第2位置での状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
6 サイドシル
20 フロア部
29 エンジン
35 サイレンサ
34a、34b 排気管
36 燃料タンク
40 リアサスペンション
62 中央座席(運転席)
64、66 左右座席(同乗者席)
70 第1フロア
72 フロアトンネル
72a フロアトンネル上面部
76 第2フロア
78 キックアップ部
80 上面部
82 平面部
84 第3フロア
86 キックアップ部
88 上面部
A 中央座席(運転席)に着座した乗員モデル
B 左側座席(同乗者席)に着座した乗員モデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向左右両側で車両前後方向に延びるサイドシルと、これらのサイドシルに両縁部が結合された車室フロアと、車室フロア上に設けられた運転席及び同乗席と、これらの座席の後方の荷室とを有する車両の車体構造であって、
上記運転席は車幅方向のほぼ中央に配置された中央座席であり、上記同乗席は上記運転席を挟むように上記運転席の車幅方向左右両側にそれぞれ配置された左右座席であり、
少なくとも上記運転席の運転者の足置き場となる第1フロアと、
この第1フロアよりも上方に膨出すると共に車両前後方向に延びるフロアトンネル部と、を有し、
このフロアトンネル部は車幅方向中央部に対し左側或いは右側にオフセットして配置され、このフロアトンネル部の下部に排気系部材が配置されていることを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
上記オフセットして配置されたフロアトンネル部は、そのオフセットした側のサイドシルに結合されており、さらに、ほぼ平らな上面部を有する請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
上記フロアトンネルの上記上面部の車幅方向外縁部が上記サイドシルに結合されている請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
さらに、上記第1フロアの後方に連続して形成されると共に上記第1フロアより一段高くなるように形成された車幅方向に延びる第2フロアを有し、
この第2フロアの上面部に、上記運転席及び上記同乗席が配置され、
この第2フロアの下部に燃料タンク及び/又はバッテリが配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
上記フロアトンネル部は上記第2フロアに結合されて、上記フロアトンネル部と上記第2フロアとにより平面視でほぼL字状のフロア領域が形成され、
このL字状のフロア領域の下部に排気系部材と、燃料タンク及び/又はバッテリとが配置されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の車体構造。
【請求項6】
上記同乗席は、上記中央に配置された運転席に対して側面視で後方側にオフセットすると共に上記運転席をなす中央座席に対して側面視で後方側に位置すると共に平面視で座席の前部が上記中央座席とは離れるように車幅方向外側の斜め方向に指向するように変位可能である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−120341(P2008−120341A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309290(P2006−309290)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】