説明

車両の軽金属製サスペンションフレーム

【課題】ロアアームの後方取付部で破断した場合であっても、その破断面の他部品への当接を防いで該他部品を保護することができる車両の軽金属製サスペンションフレームを提供すること。
【解決手段】左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のサイドメンバ30間に架設され、前輪を懸架する左右のロアアーム7を上下揺動可能に取り付けて成る車両の軽金属製サスペンションフレーム1の前記ロアアーム7の後方取付部の上方に板状部材16を近接配置する。又、前記ロアアーム7の後方取付部であるボス1aにロアアーム取付ボルトのネジ孔を形成し、該ネジ孔の上方にこれを覆うように前記板状部材16を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドメンバ間に架設される車両の軽金属製サスペンションフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションフレームは、前輪を懸架する左右のロアアームを上下揺動可能に支持するとともに、車両前後方向に沿って配置された左右一対のサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0003】
従来、斯かるサスペンションフレームは、板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、その左右両端部にブラケットを溶接してロアアームの取付部とし、左右の各取付部にブッシュを介して左右の各ロアアームを揺動可能に支持する構成が採用されていた。このような構成においては、サスペンションフレームの左右の各取付部を構成するブラケットには前後に相対向する縦壁が形成され、これらの縦壁の間に左右の各サスペンションフレームに設けられたブッシュを配置し、縦壁とブッシュの内筒を貫通するボルトを締め付けることによって左右の各ロアアームがサスペンションフレームの左右両端部にそれぞれ揺動可能に支持されていた。
【0004】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等を目的としてサスペンションフレームをアルミニウム合金等の軽金属で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、軽金属製サスペンションフレームの一例を図7及び図8に示す。
【0006】
即ち、図7は軽金属製サスペンションフレームの斜視図、図8は図7のB−B線断面図であり、図示の軽金属製サスペンションフレーム1は、アルミニウム合金によって下方が開放された断面形状に一体成形されており、その上面には車幅方向に配されたステアリングギヤボックス2が取り付けられている。この軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端前側には車体取付部を構成する支柱1Aがそれぞれ立設されており、同軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端の後端角部には車体への後方取付部を構成する取付座1Bがそれぞれ形成されている。そして、各支柱1Aの上端部と各取付座1Bには円孔状のボルト挿通孔3,4がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0007】
又、図7に示すように、軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端部の各前側部分には前後2つのボス1C](図7には一方のみ図示)が一体に形成されており、同軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端の各後方部には左右方向に開口する扁平な矩形筒状の取付部1D(図7及び図8には一方のみ図示)が一体に形成されている。そして、図8に示すように、各取付部1Dの下壁には円孔状のボルト挿通孔5が形成され、該ボルト挿通孔5の上方の上壁上には円柱状のボス1aが立設されており、各ボス1aにはネジ孔6がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0008】
而して、軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端部には平面視Y字状を成すロアアーム7の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられている。
【0009】
即ち、図7に示すように、左右の各ロアアーム7の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス7a(図7には一方のみ図示)がそれぞれ一体に形成されており、各ボス7aにはブッシュ8が前後方向に圧入されている。又、各ロアアーム7の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔9(図8参照)がそれぞれ形成されており、各嵌合孔9にはブッシュ10が上下方向に圧入されている。ここで、ブッシュ10は、図8に示すように、内外二重筒状の内筒10aと外筒10bの間にゴム等の弾性部材10cを充填して構成されている。
【0010】
各ロアアーム7の車幅方向内端部の前側に形成された前記ボス7aとこれに圧入されたブッシュ8を軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端前側に形成された前後2つのボス1Cの間に嵌め込み、ブッシュ8の不図示の軸の両端に形成された平坦な締付固定部を前後2つのボス1Cの下面に下方から押し当て、該締付固定部に下方から相通する不図示のボルトを軽金属製サスペンションフレーム1の前後2つのボス1Cに形成された不図示のネジ孔にねじ込むことによって、各ロアアーム7の車幅方向内端部の前側が軽金属製サスペンションフレーム1にブッシュ8の軸を中心として上下に揺動可能に取り付けられている。
【0011】
又、各ロアアーム7の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔9に圧入されたブッシュ10を軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端部後方に形成された矩形筒状の取付部1Dの内部に挿入し、取付部1Dの下壁に形成されたボルト挿通孔5に下方から挿通するボルト11をブッシュ10の内筒10aに通し、該ボルト11の先端を取付部1Dの上壁に立設されたボス1aのネジ孔6にねじ込むことによって、各ロアアーム7の車幅方向内端部の後側が軽金属製サスペンションフレーム1にブッシュ10の弾性部材10cの弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられている。
【0012】
尚、左右の各ロアアーム7の外端部は、ボールジョイント12を介して不図示の前輪ナックルにそれぞれ回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス2から左右に延びるタイロッド13の端部がボールジョイント14を介して連結されている。
【0013】
而して、以上のように左右両端部にロアアーム7がそれぞれ上下揺動可能に取り付けられた軽金属製サスペンションフレーム1は図9に示すように車体の左右一対のサイドメンバ30に取り付けられている。
【0014】
即ち、図9は軽金属製サスペンションフレーム1の車体への取付構造を示す車両前部の側面図であり、軽金属製サスペンションフレーム1の前端部と後端部の左右は、車両の左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のサイドメンバ30(図9には一方のみ図示)の下面に取り付けられている。即ち、軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端前側に立設された各支柱1Aを左右の各サイドメンバ30の下面に下方から押し当て、該支柱1Aに形成されたボルト挿通孔3(図7参照)に下方から挿通する不図示のボルトを各サイドメンバ30にねじ込むことによって軽金属製サスペンションフレーム1の前端部の左右が左右のサイドメンバ30の下面にそれぞれ取り付けられている。又、軽金属製サスペンションフレー1ムの左右両端後側端部の角部に形成された取付座1Bを左右の各サイドメンバ30の下面に下方から押し当て、該取付座1Bに形成されたボルト挿通孔4(図7参照)に下方から挿通する不図示のボルトを各サイドメンバ30にねじ込むことによって軽金属製サスペンションフレーム1の後端部の左右が左右のサイドメンバ30の下面にそれぞれ取り付けられている。
【0015】
ところで、一般に、車両に高い走行安定性や剛性感を確保するためにはサスペンションフレームの剛性を高める必要がある反面、車両の衝撃吸収性を高めるためにサスペンションフレームには車両前方からの衝撃エネルギーを吸収する構造が必要となる。
【0016】
ところが、アルミニウム合金等の軽金属は鉄に比べて延性に乏しく伸びが小さいという特性を有しているため、軽金属製サスペンションフレームは板金製サスペンションフレームに比べて衝撃エネルギーの吸収性に劣るという問題がある。
【0017】
そこで、例えば特許文献2には、鋳造サスペンションメンバの両側部に、フロント側取付部とリヤ側取付部とを結ぶ第1補強リブを立設するとともに、該第1補強リブを複数の第2補強リブで補強することによって鋳造サスペンションメンバのサスペンションアームからの入力に対する剛性を高める一方、リヤ側取付部の前方側に平面視三角形状の範囲で薄肉部を形成し、該薄肉部にクラッシュビードを形成することによってエネルギー吸収性能を高める構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003−127892号公報
【特許文献2】特開2005−014728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、図7及び図8に示す軽金属製サスペンションフレーム1においては、その左右両端部後方に形成された矩形筒状の取付部1Dの上壁と下壁との間に左右のロアアーム7の各後方取付部を挿入し、該後方取付部をブッシュ10の内筒10aに縦方向に挿通するボルト11によって軽金属製サスペンションフレーム1の取付部1Dに取り付ける構成を採用しているため、車両衝突時等において車両前後方向及び左右方向の大きな衝撃荷重をロアアーム7を介してブッシュ10の外筒10bが受け、軽金属製サスペンションフレーム1とロアアーム7との取付部に作用する。
【0020】
又、ロアアーム7を介さずに軽金属製サスペンションフレーム1に車両衝突時等の大きな衝撃荷重が車両前方から伝達される場合、その衝撃荷重は軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端前側に立設された各支柱1Aと左右のサイドメンバ30の下面との取付部である左右両端前側取付部と、軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端後側端部の角部に形成された取付座1Bと左右の各サイドメンバ30の下面との取付部である左右両端後側端部取付部とに作用することになる。このとき、左右両端前側取付部、取付部1D及び左右両端後側端部取付部の車両上下方向の位置が異なっている(図10参照)ことと、取付部1Dと左右両端後側端部取付部が近接配置されていることから、矩形筒状の取付部1Dの上壁と下壁に曲げ応力が発生する。このため、図10に示すように軽金属製サスペンションフレーム1の取付部1Dの上壁と下壁がボルト11による締結部分で破断する可能性がある。破断した場合には、前側部分が支柱1Aによるサイドメンバ30への前側取付部(左右両端前側取付部、支柱1Aの上端部)を中心として回動して後側上方に移動し、その破断面がダッシュパネル40の方向に向かう可能性がある。ここで、ダッシュパネル40には、ダッシュパネル40の面に沿って各種配管やハーネスが配索されており、軽金属製サスペンションフレーム1の前側部分が移動してダッシュパネル40に沿って配置された配管50等の他部品に当接するという問題が発生する可能性がある。
【0021】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ロアアームの後方取付部分で破断した場合であっても、その破断面の他部品への当接を防いで該他部品を保護することができる車両の軽金属製サスペンションフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のサイドメンバ間に架設され、前輪を懸架する左右のロアアームを上下揺動可能に取り付けて成る車両の軽金属製サスペンションフレームに板状部材を取り付け、前記ロアアームの後方取付部の上方に前記板状部材を近接配置したことを特徴とする。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ロアアームの後方取付部にロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔を形成し、該挿通孔又はネジ孔の上方にこれらを覆うように前記板状部材を配置したことを特徴とする。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記板状部材を前記ロアアームの後方取付部よりも車幅方向中央側に取り付け、該板状部材を前記ロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔の上方を通過するよう車両側方に向かって延設したことを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記板状部材をスタビライザ取付用ネジ孔を利用して取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、車両衝突時等における大きな衝撃荷重によって軽金属製サスペンションフレームがロアアームの後方取付部で変形又は破断して後方に移動した場合であっても、該軽金属製サスペンションフレームに設けられた板状部材が破断面を覆うため、破断面が他部品に直接当接することがなく、他部品が板状部材によって保護される。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、軽金属製サスペンションフレームの衝撃荷重による破断が発生し易い箇所、即ち、ロアアームの後方取付部に形成されたロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔の上方にこれらを覆うように板状部材を配置したため、その破断し易い箇所が破断した場合には、その上方に配置された板状部材によって破断面が覆われ、破断面が他部品に直接当接することがなく、他部品が板状部材によって確実に保護される。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、板状部材を軽金属製サスペンションフレームのロアアームの後方取付部よりも車幅方向中央側に取り付け、該板状部材をロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔の上方を通過するよう車両側方に向かって延設したため、板状部材は片持ち状態で支持され、支持部からオーバーハングした部分に他部品や軽金属製サスペンションフレームの破断面が当接した場合、板状部材のオーバーハングした部分が容易に変形し、この変形によって板状部材が他部品にソフトに当接するために他部品が効果的に保護される。又、板状部材によって軽金属製サスペンションフレームのロアアームの後方取付部よりも車幅方向中央側が補強されるため、車幅方向中央方向への破断の進行が食い止められる。このため、軽金属製サスペンションフレームの破断面の長さを短く抑えることができ、破断面を覆う板状部材の長さが短くて済むために該板状部材を小型化することができる。
【0029】
請求項4記載の発明によれば、軽合金製サスペンションフレームに既に形成されてあるスタビライザ取付用ネジ孔を利用して板状部材を取り付けるため、軽金属製サスペンションフレームの加工工数が削減されてコストダウンが図られるとともに、板状部材の取付スペースを容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】本発明に係る軽金属製サスペンションフレームの平面図である。
【図3】本発明に係る軽金属製サスペンションフレームの部分平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係る軽金属製サスペンションフレームの車体への取付構造を示す車両前部の側面図である。
【図6】本発明に係る軽金属製サスペンションフレームが破断した状態を示す車両前部の側面図である。
【図7】従来の軽金属製サスペンションフレームの斜視図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】従来の軽金属製サスペンションフレームの車体への取付構造を示す車両前部の側面図である。
【図10】従来の軽金属製サスペンションフレームが破断した状態を示す車両前部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図であり、図示のように車両前部のエンジンルームSには左右一対のサイドメンバ30(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのサイドメンバ30の下方には左右一対のエプロンロアメンバ31(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ31の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ32が架設されており、同エプロンサイドメンバ31の後端にはエンジンルームSの下部に配置された軽金属製サスペンションフレーム1が連結されている。
【0033】
上記各サイドメンバ30の前端には、変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス33が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス33の前端にはアッパバンパメンバ34が連結されており、該アッパバンパメンバ34の車両前方にはバンパフェイシア35が配設されている。
【0034】
又、左右一対の前記クラッシュボックス33の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース36がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース36の前端にはロアバンパメンバ37が連結されており、該ロアバンパメンバ37の車両前方にはバンパフェイシア38が配設されている。
【0035】
次に、本発明に係る前記軽金属製サスペンションフレーム1の構成を図2〜図4に基づいて以下に説明する。
【0036】
図2は本発明に係る軽金属製サスペンションフレームの平面図、図3は同軽金属製サスペンションフレームの部分平面図、図4は図3のA−A線断面図である。
【0037】
本発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1の基本構成は図7及び図8に示した従来のものと同様であるため、図2〜図4においては図7及び図8において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略し、本発明の特徴的な構成についてのみ説明する。
【0038】
図2に示すように、本発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1は、車両の左右方向の中央部に対して、左右端部では車両の前側及び後側に延設され各取付部が形成されている。そして、本発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1の上面の後方側の左右には不図示のスタビライザを取り付けるための取付座1bが形成されており、各取付座1bには前後2つのネジ孔15がそれぞれ形成されている。ここで、取付座1bは、軽金属サスペンションフレーム1のロアアーム7の後方取付部であるボス1aよりも車幅方向中央側(図3及び図4の左側)に配置され、車両の前後方向で取付座1bはボス1aの前後に亘って形成されている。尚、本実施の形態に係る車両は、フロントサスペンションにスタビライザを備えない仕様のものであって、本実施の形態では、軽金属製サスペンションフレーム1の上面に形成された前記取付座1bとこれに形成されたネジ孔15はスタビライザの取り付けには使用されない。
【0039】
而して、本実施の形態に係る車両においては、上方が開放されたハット断面形状に形成されているサイドメンバ30の上方の開口を塞ぐようにダッシュパネル40が取り付けられ、このダッシュパネル40は本発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1の後ろ側に、車両前方側が高くなるように斜めに配置されている。このダッシュパネル40には、ダッシュパネル40の面に沿って配管50等各種配管やハーネスが配索されている。図4に示すようにダッシュパネル40の前面左側(左側のサイドメンバ30の内側)に配管50が上下方向に配置されており、発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1においては、図3及び図4に示すように、配管50が配置される左側のロアアーム7の後方取付部であるボス1aの上方に鋼板製の矩形の板状部材16が近接配置されている。本実施の形態では、板状部材16は、スタビライザを取り付けるための左側の取付座1b(実際には使用されていない)及びこれに形成された2つのネジ孔15を利用して取り付けられている。
【0040】
即ち、板状部材16は、その右端部が軽金属製サスペンションフレーム1の左側の取付座1bの上面に載せられ、その前後2箇所に形成された不図示のボルト挿通孔に上方から相通するボルト17を取付座1bに形成された前後2つのネジ孔15にねじ込むことによって略水平に取り付けられている。ここで、板状部材16のボルト17による取付箇所は、軽金属サスペンションフレーム1のロアアーム7の後方取付部であるボス1aよりも車幅方向中央側(図3及び図4の左側)に配置され、板状部材16はボルト17による取付部からボス1aとこれに形成されたネジ孔6(図8参照)の上方を車両左側方に向かって延設されている。尚、本実施の形態では、軽金属製サスペンションフレーム1のロアアーム7の後方取付部であるボス1aにネジ孔6を形成したが、ロアアーム7の取り付けをボルト11とこれに螺合する不図示のナットによって行う場合には、ボスにはボルト挿通孔が形成される。
【0041】
而して、以上のように板状部材16が取り付けられた軽金属製サスペンションフレーム1は従来と同様の取付構造によって図5に示すように左右一対のサイドメンバ30に取り付けられている。
【0042】
即ち、図5は軽金属製サスペンションフレーム1の車体への取付構造を示す車両前部の側面図であり、軽金属製サスペンションフレーム1の前端部と後端部の左右は、車両の左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のサイドメンバ30(図5には一方のみ図示)の下面に取り付けられている。即ち、軽金属製サスペンションフレーム1の左右両端前側に立設された各支柱1Aを左右の各サイドメンバ30の下面に下方から押し当て、該支柱1Aに形成されたボルト挿通孔3(図2及び図3参照)に下方から挿通する不図示のボルトを各サイドメンバ30にねじ込むことによって軽金属製サスペンションフレーム1の前端部の左右が左右のサイドメンバ30の下面にそれぞれ取り付けられている。又、軽金属製サスペンションフレーム1の左右後端部の角部に形成された取付座1Bを左右の各サイドメンバ30の下面に下方から押し当て、該取付座1Bに形成されたボルト挿通孔4(図2及び図3参照)に下方から挿通する不図示のボルトを各サイドメンバ30にねじ込むことによって軽金属製サスペンションフレーム1の後端部の左右が左右のサイドメンバ30の下面にそれぞれ取り付けられている。ここで、支柱1Aの上端、取付部1D及び取付座1Bでは、車両上下方向の位置が異なっている(図5参照)。そして、取付部1Dと取付座1Bは近接配置されており、取付座1Bは、取付部1Dの下壁とほぼ同じ車両上下方向の位置となっている。尚、取付座1bが形成されている軽金属製サスペンションフレーム1の上面は、取付部1Dの上壁とほぼ同じ車両上下方向の位置で連続している。
【0043】
上述のように左右一対のサイドメンバ30にその前端部と後端部の左右が取り付けられた軽金属製サスペンションフレーム1においては、その左右両端部の後方に形成された矩形筒状の取付部1Dの上壁と下壁との間に左右のロアアーム7の各後方取付部を挿入し、該後方取付部をブッシュ10の内筒10aに縦方向に挿通するボルト11によって軽金属製サスペンションフレーム1の取付部に取り付ける構成を採用しているため(図8参照)、車両衝突時等において軽金属製サスペンションフレーム1が車両前方から大きな衝撃荷重を受けると、図6に示すように該軽金属製サスペンションフレーム1はボルト11による締結部分で変形し、変形或いは破断した前側部分が支柱1Aによるサイドメンバ30への前側取付部を中心として後方に回動し、その変形部或いは破断面がダッシュパネル40の方向に向かって上向きに移動する。
【0044】
然るに、本発明に係る軽金属製サスペンションフレーム1においては、左側のロアアーム7の後方取付部であるボス1aの上方に板状部材16を近接配置したため、軽金属製サスペンションフレーム1が図6に示すようにロアアーム7の後方取付部で変形部或いは破断した場合であっても、板状部材16が破断面を覆うため、破断面が配管50に直接当接することがなく、配管50が板状部材によって保護される。
【0045】
特に、本実施の形態では、軽金属製サスペンションフレーム1の衝撃荷重による変形或いは破断が発生し易い箇所、即ち、ロアアーム7の後方取付部であるボス1aに形成されたネジ孔6の上方にこれらを覆うように板状部材16を配置したため、その変形或いは破断し易い箇所が破断した場合には、その上方に配置された板状部材16によって破断面が覆われ、該破断面が配管50に直接当接することがなく、配管50が板状部材16によって確実に保護される。
【0046】
又、本実施の形態では、板状部材16を軽金属製サスペンションフレーム1のロアアーム7の後方取付部であるボス1aよりも車幅方向中央側に取り付け、該板状部材16をボス1aに形成されたネジ孔6の上方を通過するよう車両側方に向かって延設したため、板状部材16は片持ち状態で支持され、支持部からオーバーハングした部分に軽金属製サスペンションフレーム1の破断面が当接した場合、板状部材のオーバーハングした部分が容易に変形し、この変形によって板状部材16が配管50にソフトに当接するために該配管50が効果的に保護される。そして、板状部材16によって軽金属製サスペンションフレーム1のロアアーム7の後方取付部よりも車幅方向中央側が補強されるため、車幅方向中央方向への破断の進行が食い止められる。このため、軽金属製サスペンションフレーム1の破断面の長さを短く抑えることができに、破断面を覆う板状部材16の長さが短くて済むために該板状部材16を小型化することができる。
【0047】
更に、本実施の形態では、軽合金製サスペンションフレーム1に既に形成されてあるスタビライザ取付用の取付座1bとこれに形成されたネジ孔15を利用して板状部材16をボルト17によって取り付けるようにしたため、軽金属製サスペンションフレーム1の加工工数が削減されてコストダウンが図られるとともに、板状部材16の取付スペースを容易に確保することができるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 軽金属製サスペンションフレーム
1D 軽金属製サスペンションフレームの取付部
1a 軽金属製サスペンションフレームのボス
1b 軽金属製サスペンションフレームの取付座
6 ボスのネジ孔
7 ロアアーム
10 ブッシュ
11 ボルト
15 ネジ孔
16 板状部材
17 ボルト
30 サイドメンバ
40 ダッシュパネル
50 配管(他部品)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のサイドメンバ間に架設され、前輪を懸架する左右のロアアームを上下揺動可能に取り付けて成る車両の軽金属製サスペンションフレームに板状部材を取り付け、
前記ロアアームの後方取付部の上方に、前記板状部材を当該サスペンションフレームの外形形状にほぼ沿って近接配置したことを特徴とする車両の軽金属製サスペンションフレーム。
【請求項2】
前記ロアアームの後方取付部にロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔を形成し、該挿通孔又はネジ孔の上方にこれらを覆うように前記板状部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の車両の軽金属製サスペンションフレーム。
【請求項3】
前記板状部材を前記ロアアームの後方取付部よりも車幅方向中央側に取り付け、該板状部材を前記ロアアーム取付ボルトの挿通孔又はネジ孔の上方を通過するよう車両側方に向かって延設したことを特徴とする請求項2記載の車両の軽金属製サスペンションフレーム。
【請求項4】
前記板状部材をスタビライザ取付用ネジ孔を利用して取り付けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の軽金属製サスペンションフレーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−236514(P2012−236514A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107026(P2011−107026)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】