説明

車両の運転支援装置

【課題】低コストで且つ利便性の高い車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、水平方向の一部に撮像範囲の重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段1,2と、撮像手段1,2の出力画像信号の処理を行う画像信号処理手段10とを備え、画像信号処理手段10が、1対の撮像手段1,2より取り込まれた2つの出力画像信号から重複領域内の対象物をそれぞれ検出する対象物検出部14と、2つの出力画像信号を用いて、対象物検出部14で検出された対象物に対する車両からの距離を算出する距離算出部15と、撮像手段1,2から取り込まれた出力画像信号を合成して俯瞰画像を生成する俯瞰画像生成部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された撮像手段を用いて自車両周辺を監視する車両の運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に撮像手段を搭載し、撮像手段で撮像した画像を車内モニタに表示させて自車両周辺を監視する車両の運転支援装置が実用化されている。さらに近年は、撮像手段で撮像した画像に特定の画像処理をすることにより、車両周囲の監視において利便性を高め、付加価値を持たせるようにした技術が提案、実用化されている。
【0003】
例えば、図10に示すように、車両50の前方に設置した撮像手段51で撮像した前方画像と、車両50の左右側方に設置した撮像手段52、53で撮像した側方画像と、車両50の後方に設置した撮像手段54で撮像した後方画像とをそれぞれ上方から見た画像に視点変換し、各画像を合成して、図11に示すような車両周囲の俯瞰画像を取得する装置が知られている。そして、得られた俯瞰画像に自車両の位置を重ね合わせることにより、自車両と他の車両61、62や白線60との位置関係を客観的に把握しながら車両を操作することが可能となり、特に、駐車操作を支援する装置などに好適に用いられている。
【0004】
このような駐車支援装置として、特許文献1(特許第4156181号公報)に、目標駐車場を側方カメラで撮像し、車両後退中に車両進行方向を後方カメラで撮像し、目標駐車場の映像と車両進行方向の映像とから自車両の現在位置を検出し、目標駐車場の映像上に自車両の画像を合成する装置が開示されている。
【0005】
また、複数の撮像手段で撮像した画像を用いて、対象物との距離を検出する装置も知られている。例えば、特許文献2(特許第3965078号公報)には、複数のステレオカメラにより撮像した画像を用いて対象物との距離を検出する車外監視装置が開示されている。この車外監視装置は、画像処理負荷を軽減するために車両の走行状態をセンサで検出し、センサ信号に基づいていずれかのステレオカメラを選択し、画像処理を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4156181号公報
【特許文献2】特許第3965078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載される装置では、車両と周囲の対象物との相対的な位置関係は把握できるが、車両と対象物との具体的な距離までは検出できず、周辺の障害物との衝突回避はあくまでも運転者の画像確認に頼らざるを得なかった。
一方、上記特許文献2に記載される装置では、車両周囲の対象物との距離を検出することはできるが、俯瞰画像を得ることはできなかった。また、選択されたステレオカメラで撮像された画像のみを画像処理することにより画像処理にかかるコストを抑えることはできるが、高価なステレオカメラを複数台設置しなければならず、装置自体のコストは削減できなかった。
【0008】
そのため本発明においては、車両周囲の俯瞰画像を取得するとともに対象物との距離を測定可能とし、低コストで且つ利便性の高い車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両の運転支援装置は、車両に搭載され、水平方向の一部に撮像範囲の重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段と、前記撮像手段の出力画像信号の処理を行う画像信号処理手段とを備え、前記画像信号処理手段が、前記1対の撮像手段より取り込まれた2つの出力画像信号から前記重複領域内の対象物をそれぞれ検出する対象物検出部と、前記2つの出力画像信号を用いて、前記対象物検出部で検出された前記対象物に対する前記車両からの距離を算出する距離算出部と、前記撮像手段から取り込まれた出力画像信号を合成して俯瞰画像を生成する俯瞰画像生成部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、撮像範囲に重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段を備えることにより、車両周囲の俯瞰画像を取得するとともに対象物との距離を測定することができ、低コストで且つ利便性の高い運転支援装置を提供することが可能となる。
すなわち、1対の撮像手段により撮像された2つの画像信号が重複領域を有するため、ステレオ法を用いて対象物との距離を測定することが可能である。また、1対の撮像手段は異なる向きに配置されているため画像信号に重複していない領域が存在する。したがって、この2つの画像信号を視点変換して合成することにより、車両周囲の俯瞰画像を取得することができる。このように本発明は、車両と対象物との距離と、車両周囲の俯瞰画像との両方を取得可能であるため、利便性を向上できる。また、1対の撮像手段を俯瞰画像の生成と距離測定の両方に用いているため、撮像手段の設置数を最小限に抑えることができ、コストを低減できる。
【0011】
また、前記俯瞰画像生成部で生成された俯瞰画像に、前記距離算出部で算出された距離を反映させる距離情報付加部をさらに有することが好ましい。
このように、俯瞰画像に対象物との距離を反映させることにより、運転者は車両周囲の俯瞰画像で車両周囲の状況を把握できるとともに、対象物との具体的な距離を把握することが同時に可能となり、利便性が高く安全な運転支援装置とすることができる。
【0012】
さらに、前記一対の撮像手段は、前記重複領域と対面する車体の一壁側に配置されることが好ましい。
本構成において、重複領域は車体の一壁側に対面する位置に存在するため、車両の前方、後方、左側方、右側方の少なくともいずれかに重複領域が位置することとなる。運転操作で特に注意すべき対象物は、車体の斜め方向に位置する対象物よりも車両の前方、後方、左側方、右側方に位置する対象物であると考えられる。例えば、駐車時は、車両の後方や側方に位置する車止めや障害物、人物等との距離を正確に把握することが求められる。また車両の走行時は、車両側方の他車両とのすれ違い距離や車両前方の他車両との車間距離を正確に把握することが求められる。したがって、本構成のように、一対の撮像手段を重複領域と対面する車体の一壁側に配置することで、車両の前方、後方、左側方、右側方に位置する対象物との距離を測定することが可能となり、運転操作においてより利便性の高い運転支援装置とすることができる。
【0013】
また、前記撮像手段は、魚眼レンズを有することが好ましく、これにより撮像範囲の重複領域を大きく取ることができ、対象物の距離検出範囲を大きくすることが可能となる。
【0014】
さらに、前記画像信号処理手段は、前記距離算出部で算出された前記対象物の距離に応じて警告を出力する警告出力部をさらに有することが好ましい。
このように、対象物の距離に応じて警告を出力することにより、運転者へ積極的に注意喚起することが可能となり、より安全性の高い運転支援装置とすることができる。
【0015】
さらにまた、前記画像信号処理手段は、前記俯瞰画像生成部で生成された俯瞰画像に前記車両の位置を重畳する自車両位置重畳部をさらに有することが好ましい。
このように、俯瞰画像に自車両位置を重畳することにより、車両周囲の対象物と自車両との相対的な位置関係を把握することが可能となり、より安全性の高い運転支援装置とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮像範囲に重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段を備えることにより、車両周囲の俯瞰画像を取得するとともに対象物との距離を測定することができ、低コストで且つ利便性の高い運転支援装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る運転支援装置の全体構成図である。
【図2】撮像手段の配置構成と撮像範囲を示す模式図である。
【図3】撮像範囲の重複領域を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る運転支援装置の処理フローを示す図である。
【図5】画像補正処理を説明する図である。
【図6】歪曲補正を説明する図で、3次元座標系に表した被写体Pを示す図である。
【図7】歪曲補正を説明する図で、2次元座標系に表した写像点P’を示す図である。
【図8】(A)は歪曲補正前の画像で、(B)は歪曲補正後の画像である。
【図9】距離情報と自車両位置を付加した俯瞰画像の一例を示す図である。
【図10】従来の撮像手段の配置構成を示す車両の平面図である。
【図11】従来の車両周囲の俯瞰画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実例に記載されている構成部品の形状等は、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る運転支援装置の全体構成図である。車両の運転支援装置は、主に、車両に搭載された撮像手段1,2と、撮像手段1,2に接続された画像信号処理手段10とを備える。
撮像手段は、車両に搭載され、水平方向の一部に撮像範囲の重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも一対の撮像手段1,2を有する。また、一対の撮像手段1,2は、重複領域と対面する車体の一壁側に配置されていることが好ましく、これにより車両の前方、後方、左右側方の対象物の距離を測定することが可能で、より利便性を高くすることができる。さらに、撮像手段1,2は魚眼レンズを有していることが好ましく、これにより撮像範囲の重複領域を大きく取り、対象物の距離検出範囲を大きくすることができる。
【0020】
図2では一例として、車両5の車体隅部に4台の撮像手段1〜4を配置した構成を示している。これらの撮像手段1〜4は、車体の方向(図中の矢印X)に対して水平面内で45°傾いて、左右斜め前方、左右斜め後方を向くようにそれぞれ配置されている。これにより図中ハッチングで示す領域6が4台の撮像手段1〜4による撮像領域となる。このように車体の4隅にそれぞれ90°ずつ向きをずらして撮像手段1〜4を配置することが好ましく、これにより車両の周囲全方位を撮像することができる。
これらの撮像手段1〜4が、180°の視野角を有する魚眼レンズを備えている場合、図3に示すように、車両5の前方、後方、左右側方に位置する領域9が撮像範囲の重複領域となり、斜め前方、斜め後方に位置する領域8は撮像範囲が重複しない領域となる。
【0021】
図1に戻り、画像信号処理手段10は、主として、フレームメモリ11と、画像補正部12と、俯瞰画像生成部13と、対象物検出部14と、距離算出部15と、表示設定部17とを有する。
フレームメモリ11は、撮像手段1,2からインタフェース(図示略)を介して入力された画像信号を格納する。
画像補正部12は、撮像手段1,2で撮像された複数の画像信号を、平面画像に補正する処理等を行う。例えば、魚眼レンズを有する撮像手段1,2で撮像された画像信号に対しては、歪曲補正処理、透視投影変換処理を行う。
【0022】
俯瞰画像生成部13は、画像補正部12で平面画像に補正された画像をそれぞれ視点変換処理して合成し、車両上方から見た車両周囲の俯瞰画像を生成する。
対象物検出部14は、一対の撮像手段1,2で撮像された2つの画像信号から同一の対象物を検出する。具体的には、オブジェクト抽出処理、マッチング、領域設定等を行う。
距離算出部15は、一対の撮像手段1,2で撮像された2つの画像信号を用いて、対象物検出部14で検出された対象物の距離を算出する。
表示設定部17は、距離を検出する対象物の設定等を行なう。
さらに、画像信号処理手段10は、俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像に、距離算出部15で算出された距離を反映させる距離情報付加部16を有していてもよい。
【0023】
上記した各部の具体的な処理については後述する。
なお、画像信号処理手段10は、CPUからなる演算装置と、上記した各部の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体とを備え、必要に応じて演算装置が記憶媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによって各部の機能が実現されることは当然である。
【0024】
また、本実施形態の運転支援装置は、入力手段20と、表示手段21とをさらに備えていることが好ましい。
入力手段20は、画像信号処理手段10に対して各種設定を行なう。例えば、表示設定部17を介して、車両周囲の物体(人物を含む)から距離を測定する対象物を選択したり、後述する警告出力手段18に警告の出力の有無を設定したりする。
表示手段21は、俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像や、この俯瞰画像に距離情報を付加した画像などを表示する。表示手段21には、カーナビのモニタ等が用いられる。
【0025】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態に係る運転支援装置の処理フローを説明する。ここでは一例として、撮像手段1〜4は、180°の視野角を有する魚眼レンズを備え、且つ図2に示すように車体の4隅に配置されているものとする。
撮像手段1〜4の出力画像信号は、画像信号処理手段10のフレームメモリ11に格納され、随時読み出されて各種演算処理が行われる。
フレームメモリ11に格納された撮像手段1、2の画像信号は、図5に示すように、それぞれ画像補正部12で歪曲補正処理された後、透視投影変換処理される。
【0026】
歪曲補正処理は、例えば以下のように行われる。
図6及び図7に示すように、xyz空間上の被写体P(x,y,z)の、xy平面とuv平面(撮像画像)上への写像p’(u,v)を考える。
図6の3次元座標系で点Pを極座標(r,θ,φ)で表すと、以下の数1で表せる。
【数1】

【0027】
一方、写像点P’の像高Lはレンズの射影方式で決まる。
レンズの焦点距離f、撮影円形画像の半径をRとすると、Rはφ=π/2での像高Lに等しいため、以下の数2が成り立つ。
【数2】

【0028】
また、図7に示す2次元座標系において、以下の数3が成り立つ。
【数3】

【0029】
数3より、三角関数を用いることにより以下の数4が得られる。
【数4】

【0030】
これらより、以下の数5が導ける。
【数5】

【0031】
上記数5を用い、(x,y,z)から魚眼レンズで撮像された画像信号の座標点(u,v)への変換ができる。なお、z軸の成分はズーム率に相当するため、基本的には(x,y)から(u,v)への2次元2次元変換となる。
このように歪曲補正処理することにより、図8(A)に示すような魚眼レンズで撮像された画像信号から図8(B)に示すような平面化された画像が得られる。
【0032】
透視投影変換処理は、例えば以下のように行われる。
xyz空間上の被写体P(x,y,z)の、xy平面と平行なuv平面(撮像画像)上への写像P’(u,v)は、等面積(等立体角)射影の場合、以下の数6のように表される。
【数6】

【0033】
上記したように、画像補正部12で歪曲補正処理と透視投影変換処理を行うことにより、同一平面上の2つの平面画像が得られる。
次に、この2つの画像信号を用いて、以下の処理フローにより車両と対象物との距離を算出する。
まず、対象物検出部14により2つの画像信号から指定された同一の対象物をそれぞれ検出する。対象物の検出は、2つの画像信号のそれぞれにおいて物体認識を行い、対象物に該当すると推定されるオブジェクトをそれぞれの画像信号から抽出し、オブジェクトを含む領域設定を行なう。この領域設定した2つのオブジェクトをマッチングし、2つのオブジェクトが同一である場合にこれを対象物と判断し、距離算出部15にて2つの画像信号を用いてステレオ法により対象物との距離を算出する。
【0034】
以下に、具体的な処理の内容を示す。
オブジェクト抽出は、画像信号の中から特定のオブジェクトを抽出する処理である。オブジェクト抽出の手法は特に限定されないが、例えば、色や形状等の特徴量を用いて、予め登録された基準画像パターンとの相関度を算出し、相関度がしきい値よりも大きい場合にオブジェクトを検出する方法などが用いられる。
具体的には、歩行者の認識に対してはHaar−like特徴量やHOG特徴量を用いたオブジェクト抽出が適しており、標識などの対象物に対してはSIFT特徴量を用いたオブジェクト抽出が適しており、これらはいずれも公知の方法である。対象物検出部14は、オブジェクト抽出処理を実行するプログラムを複数有し、検出する対象物の種類に応じてプログラムを使い分けてもよいし、一つのプログラムで全ての対象物を検出してもよい。
【0035】
オブジェクト抽出の一例として、Haar−like特徴量とAdaBoost識別器を用いた方法を説明する。AdaBoost識別器は、判別能力の高くない弱識別器を、その重要度に合わせて重みをつけ多数組み合わせることによって作成された強い識別器である。
Haar−like特徴量は、近接する2つの矩形領域の明度差を求めることで得られる特徴量であり、照明条件の変動やノイズの影響を受け難い特徴量として知られている。すなわち、画像上に所定の検出窓をおいた場合、検出窓の中の画像の特徴量は、矩形特徴の黒領域の画素値の合計から矩形特徴の白領域の画素値の合計を差し引いた値となる。この矩形領域の白黒パターンはHaar−like特徴と呼ばれるもので、予め複数のパターンを有している。検出窓内の矩形の位置とパターンの組み合わせによって、多数のオブジェクト検出特徴が用いられる。この特徴パターンの一つ一つがAdaBoost識別器の弱識別器の役割を果たす。そして、検出窓で画像をスキャンして、その都度AdaBoost識別器で判別していくことで、オブジェクトの検出を行なうことができる。
【0036】
マッチングは、例えば、一対の撮像手段1,2で撮像されたそれぞれの画像信号において抽出されたオブジェクトの特徴量に着目し、一定のしきい値を設け、特徴量の差がしきい値内に収まるものを同一物体と見なす方法などが用いられる。
また、対象物検出の別の方法として、一対の撮像手段1,2のうち一方の撮像手段の出力画像信号を用いて物体認識を行い、対象物に該当すると推定されるオブジェクトを抽出し、オブジェクトを含む領域設定を行なう。さらに、この領域設定したオブジェクトと同一のオブジェクトを、他方の撮像手段の出力画像信号から探索(マッチング)し、探索したオブジェクトを含む領域設定を行なう。これにより、2画像から同一の対象物をそれぞれ検出することができる。
距離算出は、画像補正部12で補正した同一平面上の2画像を用い、各画像上での対象物間の視差に基づいて対象物までの距離を算出する、公知のステレオ法を用いた測距方法が適用できる。
【0037】
一方、画像補正部12で補正した複数の画像を用いて、俯瞰画像生成部13で俯瞰画像を生成する。
まず、画像補正部12で補正した複数の画像をそれぞれ視点変換処理した後、合成して、車両上方から見た車両周囲の画像を生成する。
視点変換処理は、車両に搭載された撮像手段1,2で撮像された画像信号を、車両上方の任意の仮想視点から俯瞰したような画像へ変換する公知の方法である。
視点変換処理で各画像を俯瞰画像に変換した後、これらの画像を合成する。
そして、距離算出部15で算出された対象物との距離情報を、俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像に付加する。
なお、表示設定部17で、距離を表示する対象物を選択するようにしてもよい。
【0038】
このように、本実施形態によれば、撮像範囲に重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段1,2を備えることにより、車両周囲の俯瞰画像を取得するとともに対象物との距離を測定することができ、低コストで且つ利便性の高い運転支援装置を提供することが可能となる。
すなわち、1対の撮像手段1,2により撮像された画像信号が重複画像を有するため、距離算出部15でステレオ法を用いて対象物との距離を測定することが可能である。また、1対の撮像手段1,2は異なる向きに配置されているため画像信号に重複していない領域が存在する。したがって、この2つの画像信号を俯瞰画像生成部13で視点変換して合成することにより、車両周囲の俯瞰画像を取得することができる。
【0039】
また、一対の撮像手段1,2は、重複領域と対面する車体の一壁側に配置されることが好ましく、これにより車両5の前方、後方、左側方、右側方の少なくともいずれかに重複領域が位置し、この重複領域に存在する対象物との距離を測定することが可能となるため、運転操作においてより利便性の高い運転支援装置とすることができる。
【0040】
そして、距離情報付加部16にて、距離算出部15で算出された対象物の距離を俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像に反映させることにより、運転者は車両周囲の俯瞰画像で車両周囲の状況を把握できるとともに、対象物との具体的な距離を把握することが同時に可能となり、利便性が高く安全な運転支援装置とすることができる。また、1対の撮像手段1,2を俯瞰画像の生成と距離測定の両方に用いているため、撮像手段1,2の設置数を最小限に抑えることができ、コストを低減できる。
【0041】
また、画像信号処理手段10は、距離算出部15で算出された対象物の距離に応じて警告を出力する警告出力部18を有していてもよい。
警告出力部18は、例えば、対象物に対する距離のしきい値を設定しておき、対象物との距離がこのしきい値よりも近づいたら、表示手段21に警告を画面表示したり、音声出力手段22により警告を音声出力したりし、運転者に警告を発する。
このように、対象物の距離に応じて警告出力部18で警告を出力することにより、運転者へ積極的に注意喚起することが可能となり、より安全性の高い運転支援装置とすることができる。
【0042】
さらに、画像信号処理手段10は、俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像に車両の位置を重畳する自車両位置重畳部19を有していてもよい。
自車両位置の重畳は、例えば以下のように行う。
俯瞰画像生成部13では、車両周囲の俯瞰画像、すなわち図2の領域6で示した部分の俯瞰画像が得られるため、自車両位置重畳部19で俯瞰画像の空白領域に車体画像を重畳して表示する。車体画像は、自車両を上方から撮像した車体撮像画像であってもよいし、グラフィック等により描画された車体イメージ画像であってもよく、この車体画像を予め記憶部(図示略)に記憶させておき、俯瞰画像生成部13で俯瞰画像に車体画像を重畳する。
なお、俯瞰画像生成部13で生成された俯瞰画像は、撮像手段1〜4の撮像範囲外(例えば、車両位置)が空白領域となるが、他の時間に撮像された撮像画像等で補間処理してもよい。
このように、自車両位置重畳部19で俯瞰画像に自車両位置を重畳することにより、車両周囲の対象物と自車両との相対的な位置関係を把握することが可能となり、より安全性の高い運転支援装置とすることができる。
【0043】
図9は距離情報と自車両位置を付加した俯瞰画像の一例を示す図である。自車両5を含む俯瞰画像において、対象物である人物31の近傍に、自車両5から人物31までの距離(ここでは10m)が吹き出し枠内に表示されている。また、対象物である車両32の近傍に、自車両5から車両32までの距離(ここでは30m)が吹き出し枠内に表示されている。
このように、俯瞰画像に距離情報を付加することにより、運転者が周囲の状況を把握しながら対象物との具体的な距離を把握することができ、利便性が高く安全な運転支援装置とすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1〜4 撮像手段
10 画像信号処理手段
11 フレームメモリ
12 画像補正部
13 俯瞰画像生成部
14 対象物検出部
15 距離算出部
16 距離情報付加部
17 表示設定部
18 警告出力部
19 自車両位置重畳部
20 入力手段
21 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、水平方向の一部に撮像範囲の重複領域が存在するように、異なる向きに配置された少なくとも1対の撮像手段と、
前記撮像手段の出力画像信号の処理を行う画像信号処理手段とを備え、
前記画像信号処理手段が、前記1対の撮像手段より取り込まれた2つの出力画像信号から前記重複領域内の対象物をそれぞれ検出する対象物検出部と、前記2つの出力画像信号を用いて、前記対象物検出部で検出された前記対象物に対する前記車両からの距離を算出する距離算出部と、前記撮像手段から取り込まれた出力画像信号を合成して俯瞰画像を生成する俯瞰画像生成部とを有することを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記俯瞰画像生成部で生成された俯瞰画像に、前記距離算出部で算出された距離を反映させる距離情報付加部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記一対の撮像手段は、前記重複領域と対面する車体の一壁側に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、魚眼レンズを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記画像信号処理手段は、前記距離算出部で算出された前記対象物の距離に応じて警告を出力する警告出力部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。
【請求項6】
前記画像信号処理手段は、前記俯瞰画像生成部で生成された俯瞰画像に前記車両の位置を重畳する自車両位置重畳部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−131740(P2011−131740A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293442(P2009−293442)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)